図1は、実施例1の光伝送システムの一例を示す説明図である。図1に示す光伝送システム1は、光ファイバ等の光伝送路4で接続される複数の光伝送装置2と、複数の光伝送装置2を管理する管理装置3とを有する。光伝送装置2は、光伝送路4を通じて他の光伝送装置2との間で、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)光を伝送する。光伝送装置2は、例えば、WDM光に対する光挿入/光分岐を実行可能な光分岐挿入装置(OADM:Optical Add-Drop Multiplexer)や、OADM間を中継する、アンプ内蔵の中継ノードであるインラインアンプ(ILA:In-Line Amplifier)である。光伝送システム1内の複数の光伝送装置2のうち少なくともいずれか一つの光伝送装置2は、OADMであるものとする。
図2は、実施例1の光伝送システム内の光伝送装置及び管理装置の構成例を示す説明図である。図2では、説明の便宜を図るため、光伝送装置がOADMである場合の構成例のみが示され、光伝送装置がILAである場合の構成例が省略されるものとする。
図2に示す光伝送装置2は、プリアンプ21と、受信部22と、送信部23と、調整機能付きWSS(Wavelength Selective Switch)24と、ポストアンプ25と、制御部26とを有する。プリアンプ21は、光伝送路4を通じて受信したWDM光を増幅する。受信部22は、例えば、AWG(Array Waveguide Grating)及びTRP(Transponder)を含み、光伝送路4を通じて受信したWDM光から分岐される信号光を受信する機能を有する。送信部23は、例えば、AWG及びTRPを含み、所望の波長の信号光が挿入されたWDM光を光伝送路4上に送信する機能を有する。
調整機能付きWSS24は、汎用のWSSと同様に、受信したWDM光から所望の波長のチャネルの信号光を分岐するDrop機能や、送信部23から取得した信号光をWDM光に挿入するAdd機能を備えている。さらに、調整機能付きWSS24は、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整する。調整機能付きWSS24を具備する光伝送装置2が、管理装置3による調整対象の光伝送装置2となる。
制御部26は、管理装置3から設定される調整量に基づき、調整機能付きWSS24の透過特性を制御する。管理装置3から設定される調整量は、WDM光内の各チャネルの光パワーの利得を調整する減衰量等を含む。また、ポストアンプ25は、調整機能付きWSS24で調整されたWDM光を増幅して光伝送路4上に出力する。
管理装置3は、例えば、汎用のパーソナルコンピュータやワークステーション等で構成され、光伝送システム1内の全ての光伝送装置2とLAN(Local Area Network)等で接続される。管理装置3は、取得部31と、変換部32と、決定部33とを有する。なお、図2では、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整する信号調整処理に関わる構成のみを示し、説明の便宜上、その他の構成を省略した。
取得部31は、WDM光内の各チャネルを用いて提供されるサービスの品質を評価するための評価値を取得する。このような評価値は、SLA(Service Level Agreement)と呼ばれる。SLAは、WDM光内の各チャネルを用いたサービスの提供者が、サービスの内容や品質をサービスの利用者に保証する取り決めを指す。
詳細には、取得部31は、ユーザインタフェース等の入力部を用いて、「可用性(Availability)」と、「遅延」とをSLAとして取得する。ここで、可用性とは、WDM光内の各チャネルを用いてサービスが提供される時間に対する、WDM光が実際に伝送される時間の比率である。
また、遅延とは、WDM光の伝送時に許容される遅延時間である。遅延は、例えば、遅延時間の長短に応じて、「Premium」、「Normal」及び「Best−effort」等を含む複数のモードに分類される。「Premium」は、遅延時間が最も短い時間であることを示すモードである。「Best−effort」は、遅延時間が最も長い時間であることを示すモードである。「Normal」は、遅延時間が「Premium」と「Best−effort」との中間に存在する標準的な時間であることを示すモードである。可用性及び遅延等を含むSLAは、例えば、ユーザによって要求される光伝送装置2の組合せであって、かつ、WDM光の送信元及び送信先となる一対の光伝送装置2の組合せに関連付けて、取得される。
変換部32は、取得部31によって取得されたSLAを、WDM光内の各チャネルが満たすべきQ値の閾値Qthに変換する。Q値は、伝送品質の一例である。詳細には、変換部32は、取得部31によって取得されたSLAのうち可用性Paを、WDM光内の各チャネルが満たすべきQ値の閾値Qthに変換する。
ここで、可用性Paを閾値Qthに変換する処理の一例を説明する。まず、変換部32は、SLAのうち可用性Paに基づき、WDM光内の各チャネルに対応する光パスごとの伝送断率(Outage)Poを算出する。伝送断率とは、光パスの微分群遅延差(DGD:Differential Group Delay)が予め定められたDGDの最大値DGDmaxを超過することに起因して、光パス上で伝送の遮断が発生する確率を指す。以下では、WDM光内の各チャネルのうち、SLAが新たに設定される新設のチャネル(以下「新設チャネル」という)を例に挙げて説明する。
新設チャネルに対応する光パスの総数が「1」である場合、以下の式(1)に示す関係が成立する。
Pa=1−Po … (1)
また、新設チャネルに対応する光パスの総数が「2」である場合、以下の式(2)に示す関係が成立する。
Pa=(1−Po)×(1−Po)=1−2Po+Po2 … (2)
また、新設チャネルに対応する光パスの総数が「3」である場合、以下の式(3)に示す関係が成立する。
Pa=(1−Po)×(1−Po)×(1−Po)
=1−3Po+3Po2−Po3 … (3)
ここで、物理レイヤの設計において、Poは十分小さい値を用いることが多いため、Po2<<1であり、Po2やPo3等のPoをべき乗した項は、無視し得る。すると、新設チャネルに対応する光パスの総数が「n(nは、1以上の整数)」である場合、以下の式(4)に示す関係が成立する。なお、例えばPo=1.0×10−5とすると、Po2=1.0×10−10<<1が成立する。
Pa=1−nPo … (4)
変換部32は、SLAのうち可用性Paに基づき、上記式(4)を用いて、新設チャネルに対応する光パスごとの伝送断率Poを算出する。
続いて、変換部32は、伝送断率Poに基づき、下記式(5)及び式(6)を用いて、DGDの最大値DGDmaxを算出する。DGDの分布の一例を図3に示す。
続いて、変換部32は、DGDの最大値DGDmaxに基づき、閾値Qthを算出する。例えば、変換部32は、図4に示したような、DGDとQ値とを対応付けたDGD/Q値対応テーブルを保持する。図4は、DGD/Q値対応テーブルの一例を示す説明図である。変換部32は、DGDの最大値DGDmaxに対応するQ値をDGD/Q値対応テーブルから読み出すことによって、閾値Qthを算出する。なお、DGD/Q値対応テーブルは、伝送対象となるWDM光の信号種別に応じてシミュレーション等により予め作成される。このようにして、変換部32は、取得部31によって取得されたSLAのうち可用性Paを、WDM光内の各チャネルが満たすべきQ値の閾値Qthに変換する。
決定部33は、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24で調整するWDM光内の各チャネルの光パワーに基づき、各チャネルのQ値を算出する。そして、決定部33は、算出したQ値が閾値Qthを満たすように、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24の透過特性に設定する調整量を決定する。詳細には、決定部33は、取得部31によってSLAとして取得された遅延が最も短い時間であることを示す「Premium」である場合に、算出したQ値が閾値Qthを満たすように、調整量を決定する。
ここで、本実施例における調整量を決定する処理の一例を説明する。まず、決定部33は、各光伝送装置2との間で設定されたOSC(Optical Supervisory Channel)等の光監視チャネルを介して、WDM光内の各チャネルの監視情報を取得する。監視情報は、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24で調整するWDM光内の各チャネルの光パワーと、WDM光内の各チャネルに対応する雑音係数とを含む。
続いて、決定部33は、監視情報に含まれる、WDM光内の各チャネルの光パワーと雑音係数とに基づき、下記の式(7)〜(9)を用いて、WDM光内の各チャネルのQ値を算出する。算出されたQ値が、閾値Qthに対する判定対象のQ値となる。
続いて、決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値、すなわち、判定対象のQ値が閾値Qthを満たすか否かを判定する。決定部33は、判定対象のQ値が閾値Qthを満たす場合に、伝送品質が良好であると判定し、調整量の決定を行わない。一方、決定部33は、判定対象のQ値が閾値Qthを満たさない場合に、伝送品質が良好でないと判定し、SLAとして取得された遅延が最も短い時間であることを示す「Premium」であるか否かを判定する。そして、決定部33は、SLAとして取得された遅延が「Premium」である場合に、算出した判定対象のQ値が閾値Qthを満たすように、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量を決定する。
図5は、実施例1における調整量を決定する処理の一例を示す説明図である。図5において、波長λnewに対応するチャネルが、SLAが新たに設定される新設チャネルであり、波長λ1〜λNに対応するチャネルが、SLAが既に設定された既設チャネルであるものとする。また、図5(A)は、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量が未だ決定されていない状態を示すものとする。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、図5(B)に示すように、調整量を決定する。すなわち、決定部33は、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、既設チャネルの総数Nで増加量ΔPを除算して得られる減少量ΔP/Nだけ既設チャネルの光パワーを減少させる仮調整量(以下「第一の調整量」という)を決定する。その結果、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24の透過特性は、第一の調整量に基づき、WDM光内の各チャネルのうち新設チャネルの減衰量が小さくなり、かつ、既設チャネルの減衰量が大きくなるように、変更される。
さらに、決定部33は、第一の調整量を決定した後、既設チャネルのうち少なくとも1つのチャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、調整量を新たに決定する。すなわち、決定部33は、閾値Qthを満たさない既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させ、かつ、該既設チャネルの総数を減少量ΔP/Nに乗算した量だけ新設チャネルの光パワーを減少させる仮調整量(以下「第二の調整量」という)を決定する。例えば、図5(A)に示した波長λ1〜λNに対応する複数の既設チャネルのうち、波長λ2,λ4に対応する2つの既設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合を想定する。この場合、決定部33は、図5(C)に示すように、該2つの既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させ、該2つの既設チャネルの総数「2」をΔP/Nに乗算して得られる量だけ新設チャネルの光パワーを減少させる第二の調整量を新たに決定する。
決定部33は、第一の調整量及び第二の調整量等の仮調整量を決定した後、新設チャネル及び既設チャネルを含むWDM光内の全てのチャネルのQ値が閾値Qthを満たした場合には、伝送品質が改善されると判定する。そして、決定部33は、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量として仮調整量を決定する。そして、決定部33は、決定した調整量をLAN等を経由して調整対象の光伝送装置2に設定する。
光伝送装置2内の制御部26は、管理装置3からの調整量をLAN等を経由して受信した場合、調整量に基づき調整機能付きWSS24の透過特性を調整する。調整機能付きWSS24は、WDM光内の各チャネルのQ値が閾値Qthを満たすように、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整し、調整したWDM光を出力する。その結果、WDM光内の各チャネルを用いて提供されるサービスの品質が、WDM光内のチャネル間で異なるSLAを個別に満足することが可能となる。
次に、実施例1の光伝送システム1の動作を説明する。図6は、実施例1の光伝送システムの全体の処理の一例を示すフローチャートである。図6に示す全体の処理は、伝送対象のWDM光内の各チャネルのうち、SLAが新たに設定される新設チャネルの伝送品質が閾値Qthを満たさない場合に、管理装置3側で調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する処理である。
図6に示すように、光伝送システム1は、新設チャネルに新たに設定されるSLAの取得等を含む準備処理を実行する(ステップS101)。続いて、光伝送システム1は、光伝送システム1の設計時に調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する設計時信号調整処理を実行する(ステップS102)。続いて、光伝送システム1は、光伝送システム1の運用時に調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する運用時信号調整処理を実行する(ステップS103)。以下では、準備処理、設計時信号調整処理及び運用時信号調整処理それぞれの詳細を順に説明する。
まず、図6のステップS101に示した準備処理の詳細を説明する。図7は、実施例1の光伝送システムの準備処理の一例を示すフローチャートである。図7に示す準備処理は、図6に示したステップS101に対応する。図7に示すように、管理装置3は、ネットワークデマンド情報を図示しないユーザインタフェース等の入力部から取得する(ステップS111)。ネットワークデマンド情報には、ユーザによって要求される光伝送装置2の組合せであって、かつ、WDM光の送信元及び送信先となる一対の光伝送装置2の組合せの情報や、WDM光の信号種別の情報等が含まれる。
管理装置3の取得部31は、ユーザインタフェース等の入力部を用いて、可用性Paと、遅延とをSLAとして取得する(ステップS112)。例えば、取得部31は、ネットワークデマンド情報内のWDM光の送信元及び送信先となる一対の光伝送装置2の組合せの情報と、WDM光の信号種別の情報とに関連付けて、可用性Pa及び遅延を取得する。遅延は、「Premium」、「Normal」及び「Best−effort」のいずれかである。
管理装置3は、ネットワークデマンド情報に基づき、SLAが新たに設定される新設チャネルに対応する光パスを生成する(ステップS113)。新設チャネルに対応する光パスを生成する処理の一例を図8に示す。図8の例では、ネットワークデマンド情報が、Site1のOADMである光伝送装置2をWDM光の送信元として指定し、Site8のOADMである光伝送装置2をWDM光の送信先として指定したものとする。この場合、管理装置3は、図8に示すように、Site1のOADMである光伝送装置2と、Site8のOADMである光伝送装置2とを結ぶ光パス#1が生成される。光パス#1には、2つのOADM区間が含まれる。2つのOADM区間のうち一方は、Site1のOADMである光伝送装置2から、Site5のOADMである光伝送装置2へ至る区間であり、他方は、Site5のOADMである光伝送装置2から、Site8のOADMである光伝送装置2へ至る区間である。
次に、図6のステップS102に示した設計時信号調整処理の詳細を説明する。図9は、実施例1の光伝送システムの設計時信号調整処理の一例を示すフローチャートである。図9に示す設計時信号調整処理は、図6に示したステップS102に対応する。図9に示すように、管理装置3の変換部32は、SLAを閾値Qthに変換するSLA/閾値変換処理を実行する(ステップS121)。
ここで、図10を用いて、ステップS121のSLA/閾値変換処理の一例を説明する。図10は、実施例1の光伝送システムのSLA/閾値変換処理の一例を示すフローチャートである。
図10に示すように、管理装置3の変換部32は、SLAのうち可用性Paに基づき、WDM光内の各チャネルに対応する光パスごとの伝送断率Poを算出する(ステップS131)。変換部32は、伝送断率Poに基づき、DGDの最大値DGDmaxを算出する(ステップS132)。変換部32は、DGDの最大値DGDmaxに対応するQ値をDGD/Q値対応テーブルから読み出すことによって、閾値Qthを算出する(ステップS133)。DGD/Q値対応テーブルは、伝送対象となるWDM光の信号種別に応じて異なるテーブルが用いられる。
図9の説明に戻る。管理装置3の決定部33は、SLA/閾値変換処理によって得られた閾値Qthを用いて伝送品質を判定する伝送品質判定処理を実行する(ステップS122)。
ここで、図11を用いて、ステップS122の伝送品質判定処理の一例を説明する。図11は、実施例1の光伝送システムの伝送品質判定処理の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、管理装置3の決定部33は、OSC等の光監視チャネルを介して、WDM光内の各チャネルの光パワー等の監視情報を取得する(ステップS141)。決定部33は、監視情報に含まれる、WDM光内の各チャネルの光パワーと雑音係数とに基づき、WDM光内の各チャネルのQ値、すなわち、判定対象のQ値を算出する(ステップS142)。
決定部33は、判定対象のQ値が閾値Qthを満たすか否かを判定する(ステップS143)。決定部33は、判定対象のQ値が閾値Qthを満たす場合に(ステップS143;Yes)、伝送品質が良好であると判定する(ステップS144)。一方、決定部33は、判定対象のQ値が閾値Qthを満たさない場合に(ステップS143;No)、伝送品質が良好でないと判定する(ステップS145)。
図9の説明に戻る。決定部33は、伝送品質が良好である場合には(ステップS123;Yes)、調整量の決定を行うことなく、処理をステップS129に移行する。
一方、決定部33は、伝送品質が良好でない場合には(ステップS123;No)、SLAとして取得された遅延が「Premium」であるか否かを判定する(ステップS124)。
決定部33は、SLAとして取得された遅延が「Premium」でない場合には(ステップS124;No)、新設チャネルの光パス上に再生中継器(REG:REGenarator)を配置することによって、新設チャネルの光パスを分割する(ステップS125)。REGの配置手法としては、例えば、距離二等分法やスパン数二等分法等の既存の手法が用いられる。
一方、決定部33は、SLAとして取得された遅延が「Premium」である場合には(ステップS124;Yes)、伝送品質判定処理で算出した判定対象のQ値が閾値Qthを満たすように、調整量を決定する調整量決定処理を実行する(ステップS126)。
ここで、図12を用いて、ステップS126の調整量決定処理の一例を説明する。図12は、実施例1の光伝送システムの調整量決定処理の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、管理装置3の決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS151)。ステップS151の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好である場合には(ステップS152;Yes)、処理をステップS163に移行する。
一方、決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS152;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させる仮調整量を決定する(ステップS153)。
決定部33は、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値を超過する場合には(ステップS154;No)、調整量の増加によって伝送品質が改善されないと判定し(ステップS155)、処理を終了する。
一方、決定部33は、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値以下である場合には(ステップS154;Yes)、既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ減少させる仮調整量を決定する(ステップS156)。すなわち、決定部33は、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、減少量ΔP/Nだけ既設チャネルの光パワーを減少させる第一の調整量を決定する。
決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS157)。ステップS157の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち既設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、既設チャネルの伝送品質が良好である場合(ステップS158;Yes)、処理をステップS162に移行する。
一方、決定部33は、既設チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS158;No)、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」であるか否かを判定する(ステップS159)。
決定部33は、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」である場合(ステップS159;Yes)、既設チャネルの光パス上にREGを配置することによって、既設チャネルの光パスを分割する(ステップS160)。
一方、決定部33は、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」でない場合(ステップS159;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、既設チャネルのうち閾値Qthを満たさない既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させる仮調整量を新たに決定する(ステップS161)。
決定部33は、光パワーが増加した既設チャネルの総数mを減少量ΔP/Nに乗算した量(ΔP/N)×mだけ新設チャネルの光パワーを減少させる仮調整量を新たに決定し(ステップS162)、処理をステップS151に戻す。すなわち、決定部33は、第一の調整量を決定した後、閾値Qthを満たさない既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させ、かつ、該既設チャネルの総数を減少量ΔP/Nに乗算した量だけ新設チャネルの光パワーを減少させる第二の調整量を決定する。
ステップS163において、決定部33は、新設チャネルの伝送品質が良好であるので、伝送品質が改善されると判定する(ステップS163)。そして、決定部33は、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量として、第一の調整量及び第二の調整量等の仮調整量を決定する(ステップS164)。そして、決定部33は、決定した調整量をLAN等を経由して調整対象の光伝送装置2に設定する(ステップS165)。
図9の説明に戻る。決定部33は、調整量決定処理によって伝送品質が改善されない場合(ステップS127;No)、処理をステップS125に移行する。
一方、決定部33は、調整量決定処理によって伝送品質が改善される場合(ステップS127;Yes)、調整量を設計結果として内部メモリ等に記録する(ステップS128)。
その後、決定部33は、新設チャネルの光パスが増加した場合(ステップS129;Yes)、処理をステップS121に戻し、新設チャネルの光パスが増加していない場合(ステップS129;No)、処理をステップS130に移行する。
調整対象の光伝送装置2の制御部26は、管理装置3から設定される調整量に基づき、調整機能付きWSS24の透過特性を調整し(ステップS130)、設計時信号調整処理を終了する。その結果、調整機能付きWSS24は、WDM光内の各チャネルのQ値が閾値Qthを満たすように、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整し、調整したWDM光を出力する。
次に、図6のステップS103に示した運用時信号調整処理の詳細を説明する。図13は、実施例1の光伝送システムの運用時信号調整処理の一例を示すフローチャートである。
図13に示すように、設計時信号調整処理が完了すると(ステップS171;Yes)、調整対象の光伝送装置2の制御部26は、管理装置3から設定される調整量に基づき、調整機能付きWSS24の透過特性を継続的に調整する(ステップS172)。
管理装置3の決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS173)。ステップS173の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好である場合には(ステップS174;Yes)、処理をステップS184に移行する。
一方、決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS174;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させる仮調整量を決定する(ステップS175)。
決定部33は、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値を超過する場合には(ステップS176;No)、運用時信号調整処理を終了する。
一方、決定部33は、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値以下である場合には(ステップS176;Yes)、既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ減少させる仮調整量を決定する(ステップS177)。すなわち、決定部33は、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、減少量ΔP/Nだけ既設チャネルの光パワーを減少させる第一の調整量を決定する。
決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS178)。ステップS178の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち既設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、既設チャネルの伝送品質が良好である場合(ステップS179;Yes)、処理をステップS183に移行する。
一方、決定部33は、既設チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS179;No)、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」であるか否かを判定する(ステップS180)。
決定部33は、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」である場合(ステップS180;Yes)、既設チャネルの光パス上にREGを配置することによって、既設チャネルの光パスを分割する(ステップS181)。
一方、決定部33は、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」でない場合(ステップS180;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、既設チャネルのうち閾値Qthを満たさない既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させる仮調整量を新たに決定する(ステップS182)。
決定部33は、光パワーが増加した既設チャネルの総数mを減少量ΔP/Nに乗算した量(ΔP/N)×mだけ新設チャネルの光パワーを減少させる仮調整量を新たに決定し(ステップS183)、処理をステップS173に戻す。すなわち、決定部33は、第一の調整量を決定した後、閾値Qthを満たさない既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させ、かつ、該既設チャネルの総数を減少量ΔP/Nに乗算した量だけ新設チャネルの光パワーを減少させる第二の調整量を決定する。
ステップS184において、決定部33は、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量として、第一の調整量及び第二の調整量等の仮調整量を決定する(ステップS184)。そして、決定部33は、決定した調整量をLAN等を経由して調整対象の光伝送装置2に設定する(ステップS185)。
上述したように、実施例1では、管理装置3側でSLAをWDM光内の各チャネルが満たすべきQ値の閾値Qthに変換し、各チャネルのQ値が閾値Qthを満たすように、調整対象の光伝送装置2の調整機能付きWSS24の透過特性に設定する調整量を決定する。このため、調整対象の光伝送装置2の調整機能付きWSS24は、WDM光内の各チャネルのQ値が閾値Qthを満たすように、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整し、調整したWDM光を出力することができる。その結果、実施例1によれば、SLAに応じてWDM光内の各チャネルの伝送品質を自律的に調整することができる。
また、実施例1の管理装置3は、SLAとして取得された可用性Paを閾値Qthに変換し、SLAとして取得された遅延が最も短い時間を示す場合に、WDM光内の各チャネルのQ値が閾値Qthを満たすように、調整量を決定する。その結果、実施例1によれば、SLAに含まれる複数の評価値のうち可用性Pa及び遅延に応じてWDM光内の各チャネルの伝送品質を自律的に調整することができる。
また、実施例1の管理装置3は、SLAが新たに設定される新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、新設チャネルの光パワーを増加させ、かつ、既設チャネルの光パワーを減少させる第一の調整量を調整量として決定する。その結果、実施例1によれば、既設チャネルの光パワーを均等に減少させるとともに、WDM光内の新設チャネルの伝送品質を改善させることができる。
また、実施例1の管理装置3は、第一の調整量を決定した後、既設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、既設チャネルの光パワーを増加させ、かつ、新設チャネルの光パワーを減少させる第二の調整量を調整量として新たに決定する。その結果、実施例1によれば、WDM光内の既設チャネルの伝送品質をSLAを満足可能なレベルに保持しつつ、WDM光内の新設チャネルの伝送品質を改善させることができる。
ここで、実施例1におけるWDM光内の各チャネルの伝送品質の調整例を説明する。図14は、実施例1におけるWDM光内の各チャネルの伝送品質の調整例を示す説明図である。図14に示す調整例では、チャネル7(ch7)がSLAが新たに設定される新設チャネルであり、チャネル1〜6(ch1〜6)がSLAが既に設定された既設チャネルであるものとする。チャネル7には、可用性:99.9999%、遅延:PremiumがSLAとして設定された。管理装置3によってSLAを閾値Qthに変換した結果、ch7の閾値Qthは、10.3dBとなった。また、WDM光内の各チャネルのQ値は、初期状態において、ch1:14.5dB、ch3,5,6:11.1dB、ch2,4:9.85dB、ch7:9.55dBとなった。
図14に示す初期状態では、WDM光内のch7のQ値9.55dBが、ch7の閾値Qth:10.3dBを満たさなかった。そこで、管理装置3は、新設チャネルであるch7の光パワーを0.5dBずつ3回増加させ、かつ、既設チャネルであるch1〜6の光パワーを減少させる調整量を調整対象の光伝送装置2の調整機能付きWSS24の透過特性に設定した。このとき、ch2,4の光パワーは、Q値が閾値以下とならないように、保持された。このため、WDM光内のch7のQ値が、9.55dBからch7の閾値Qth:10.3dBに到達した。その結果、WDM光内の新設チャネルであるch7の伝送品質を改善することができた。
上記実施例1では、SLAが新たに設定される新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、新設チャネルの光パワーを増加させ、かつ、既設チャネルの光パワーを均等に減少させる調整量を決定する例を示した。しかしながら、SLAが新たに設定される新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、閾値Qthとの間の伝送品質差が最も大きい既設チャネルの光パワーを減少させる調整量を決定するようにしても良い。そこで、実施例2では、SLAが新たに設定される新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、閾値Qthとの間の伝送品質差が最も大きい既設チャネルの光パワーを減少させる調整量を決定する例について説明する。
図15は、実施例2の光伝送システム内の光伝送装置及び管理装置の構成例を示す説明図である。なお、上記実施例1の光伝送システム1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図15に示す管理装置3aは、図2に示した決定部33に代えて、決定部33aを有する。
決定部33aは、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24で調整するWDM光内の各チャネルの光パワーに基づき、各チャネルのQ値を算出する。そして、決定部33aは、算出したQ値が閾値Qthを満たすように、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24の透過特性に設定する調整量を決定する。詳細には、決定部33aは、取得部31によってSLAとして取得された遅延が最も短い時間であることを示す「Premium」である場合に、算出したQ値が閾値Qthを満たすように、調整量を決定する。
ここで、本実施例における調整量を決定する処理の一例を説明する。まず、決定部33aは、各光伝送装置2との間で設定されたOSC(Optical Supervisory Channel)等の光監視チャネルを介して、WDM光内の各チャネルの監視情報を取得する。監視情報は、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24で調整するWDM光内の各チャネルの光パワーと、WDM光内の各チャネルに対応する雑音係数とを含む。
続いて、決定部33aは、監視情報に含まれる、WDM光内の各チャネルの光パワーと雑音係数とに基づき、上記の式(7)〜(9)を用いて、WDM光内の各チャネルのQ値を算出する。算出されたQ値が、閾値Qthに対する判定対象のQ値となる。
続いて、決定部33aは、WDM光内の各チャネルのQ値、すなわち、判定対象のQ値が閾値Qthを満たすか否かを判定する。決定部33aは、判定対象のQ値が閾値Qthを満たす場合に、伝送品質が良好であると判定し、調整量の決定を行わない。一方、決定部33aは、判定対象のQ値が閾値Qthを満たさない場合に、伝送品質が良好でないと判定し、SLAとして取得された遅延が最も短い時間であることを示す「Premium」であるか否かを判定する。そして、決定部33aは、SLAとして取得された遅延が「Premium」である場合に、算出した判定対象のQ値が閾値Qthを満たすように、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量を決定する。
図16は、実施例2における調整量を決定する処理の一例を示す説明図である。図16において、波長λnewに対応するチャネルが、SLAが新たに設定される新設チャネルであり、波長λ1〜λNに対応するチャネルが、SLAが既に設定された既設チャネルであるものとする。また、図16(A)は、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量が未だ決定されていない状態を示すものとする。
決定部33aは、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、以下のように調整量を決定する。すなわち、決定部33aは、既設チャネルの中から、自チャネルのQ値と閾値Qthとの差ΔQが最も大きい既設チャネルを減衰対象チャネルとして選択する。そして、決定部33aは、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、減衰対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ減少させる仮調整量(以下「第一の調整量」)を決定する。例えば、図16(A)に示した波長λ1〜λNに対応する複数の既設チャネルのうち、波長λ1に対応する既設チャネルのQ値と閾値Qthとの差が最も大きい場合を想定する。この場合、決定部33は、図16(B)に示すように、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、波長λ1に対応する既設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ減少させる第一の調整量を決定する。その結果、調整対象の光伝送装置2内の調整機能付きWSS24の透過特性は、第一の調整量に基づき、新設チャネルの減衰量が小さくなり、かつ、閾値Qthとの間の伝送品質差が最も大きい既設チャネルの減衰量が大きくなるように、変更される。
さらに、決定部33aは、第一の調整量を決定した後、減衰対象チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、差ΔQが最も大きい既設チャネルに替えて、差ΔQが2番目に大きい既設チャネルを減衰対象チャネルとして新たに選択する。そして、決定部33aは、新たに選択した減衰対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ減少させる仮調整量(以下「第二の調整量」)を新たに決定する。例えば、図16(B)に示した波長λ1に対応する既設チャネルが減衰対象チャネルとして選択され、かつ、減衰対象チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合を想定する。さらに、図16(B)に示した波長λ2に対応する既設チャネルのQ値と閾値Qthとの差が2番目に大きいものとする。この場合、決定部33aは、図16(C)に示すように、波長λ2に対応する既設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ減少させる第二の調整量を決定する。
決定部33aは、第一の調整量及び第二の調整量等の仮調整量を決定した後、新設チャネル及び既設チャネルを含むWDM光内の全てのチャネルのQ値が閾値Qthを満たした場合には、伝送品質が改善されると判定する。そして、決定部33aは、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量として仮調整量を決定する。そして、決定部33aは、決定した調整量をLAN等を経由して調整対象の光伝送装置2に設定する。
光伝送装置2内の制御部26は、管理装置3aからの調整量をLAN等を経由して受信した場合、調整量に基づき調整機能付きWSS24の透過特性を調整する。調整機能付きWSS24は、WDM光内の各チャネルのQ値が閾値Qthを満たすように、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整し、調整したWDM光を出力する。その結果、WDM光内の各チャネルを用いて提供されるサービスの品質が、WDM光内のチャネル間で異なるSLAを個別に満足することが可能となる。
次に、実施例2の光伝送システム1の動作を説明する。図17は、実施例2の光伝送システムの調整量決定処理の一例を示すフローチャートである。なお、図17に示した調整量決定処理は、図9のステップS126に示した調整量決定処理に対応する。
図17に示すように、管理装置3aの決定部33aは、伝送品質判定処理を実行する(ステップS251)。ステップS251の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33aは、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好である場合には(ステップS252;Yes)、処理をステップS263に移行する。
一方、決定部33aは、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS252;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33aは、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させる仮調整量を決定する(ステップS253)。
決定部33aは、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値を超過する場合には(ステップS254;No)、調整量の増加によって伝送品質が改善されないと判定し(ステップS255)、処理を終了する。
一方、決定部33aは、増加量ΔPの累積値が所定の上限値以下である場合には(ステップS254;Yes)、既設チャネルの中から自チャネルのQ値と閾値Qthとの差ΔQが最も大きい既設チャネルを減衰対象チャネルとして選択する(ステップS256)。そして、決定部33aは、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、減衰対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ減少させる仮調整量を決定する(ステップS257)。すなわち、決定部33aは、新設チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、減衰対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ減少させる第一の調整量を決定する。
決定部33aは、伝送品質判定処理を実行する(ステップS258)。ステップS258の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33aは、WDM光内の各チャネルのQ値のうち既設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、既設チャネルの伝送品質が良好である場合(ステップS259;Yes)、処理をステップS251に移行する。
一方、決定部33aは、WDM光内の各チャネルのQ値のうち既設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合(ステップS259;No)、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」であるか否かを判定する(ステップS260)。
決定部33aは、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」である場合(ステップS260;Yes)、既設チャネルの光パス上にREGを配置することによって、既設チャネルの光パスを分割する(ステップS261)。
一方、決定部33aは、既設チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」でない場合(ステップS260;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33aは、差ΔQが最も大きい既設チャネルに替えて、差ΔQが2番目に大きい既設チャネルを減衰対象チャネルとして新たに選択し(ステップS262)、処理をステップS257に戻す。そして、決定部33aは、ステップS257において、減衰対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ減少させる第二の調整量を新たに決定する。
ステップS263において、決定部33aは、新設チャネルの伝送品質が良好であるので、伝送品質が改善されると判定する(ステップS263)。そして、決定部33aは、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量として、第一の調整量及び第二の調整量等の仮調整量を決定する(ステップS264)。そして、決定部33aは、決定した調整量をLAN等を経由して調整対象の光伝送装置2に設定する(ステップS265)。
上述したように、実施例2の管理装置3aは、SLAが新たに設定される新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、新設チャネルの光パワーを増加させ、かつ、既設チャネルの光パワーを減少させる第一の調整量を調整量として決定する。その結果、実施例2によれば、既設チャネルの光パワーを均等に減少させるとともに、WDM光内の新設チャネルの伝送品質を改善させることができる。
また、実施例2の管理装置3aは、第一の調整量を決定した後、既設チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、既設チャネルの光パワーを増加させ、かつ、閾値Qthとの間の伝送品質差が最も大きい既設チャネルの光パワーを減少させる調整量を決定する。その結果、実施例1によれば、閾値Qthとの間の伝送品質差が最も大きい既設チャネルの光パワーを減少させるとともに、WDM光内の新設チャネルの伝送品質を改善させることができる。
上記実施例1では、WDM光内の各チャネルのうち、SLAが新たに設定される新設チャネルの伝送品質が閾値Qthを満たさない場合に、管理装置3側で調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する例を示した。しかしながら、WDM光内の各チャネルのうち、SLAが変更される既設チャネルの伝送品質が閾値Qthを満たさない場合に、管理装置3側で調整対象の光伝送装置2に調整量を設定するようにしても良い。そこで、WDM光内の各チャネルのうち、SLAが変更される既設チャネルの伝送品質が閾値Qthを満たさない場合に、管理装置3側で調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する例について説明する。なお、実施例3の光伝送システム内の光伝送装置及び管理装置の構成例は、図2に示した構成例と同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
図18は、実施例3の光伝送システムの全体の処理の一例を示すフローチャートである。図18に示す全体の処理は、WDM光内の各チャネルのうち、SLAが変更される既設チャネルの伝送品質が閾値Qthを満たさない場合に、管理装置3側で調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する処理である。
図18に示すように、光伝送システム1は、既設チャネルのSLAのうち変更されるSLAの取得等を含む準備処理を実行する(ステップS301)。続いて、光伝送システム1は、光伝送システム1の設計時に調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する設計時信号調整処理を実行する(ステップS302)。続いて、光伝送システム1は、光伝送システム1の運用時に調整対象の光伝送装置2に調整量を設定する運用時信号調整処理を実行する(ステップS303)。以下では、準備処理、設計時信号調整処理及び運用時信号調整処理それぞれの詳細を順に説明する。
まず、図18のステップS301に示した準備処理の詳細を説明する。図19は、実施例3の光伝送システムの準備処理の一例を示すフローチャートである。図19に示す準備処理は、図18に示したステップS301に対応する。図19に示すように、管理装置3の取得部31は、ユーザインタフェース等の入力部を用いて、可用性Paと、遅延とをSLAとして取得する(ステップS311)。例えば、取得部31は、ネットワークデマンド情報内のWDM光の送信元及び送信先となる一対の光伝送装置2の組合せの情報と、WDM光の信号種別の情報とに関連付けて、可用性Pa及び遅延を取得する。遅延は、「Premium」、「Normal」及び「Best−effort」のいずれかである。
管理装置3は、ネットワークデマンド情報に基づき、SLAが変更される既設チャネル(以下「SLA変更対象チャネル」という)に対応する光パスを生成する(ステップS312)。
次に、図18のステップS302に示した設計時信号調整処理の詳細を説明する。図20は、実施例3の光伝送システムの設計時信号調整処理の一例を示すフローチャートである。図20に示す設計時信号調整処理は、図18に示したステップS302に対応する。図20に示すように、管理装置3の変換部32は、SLAを閾値Qthに変換するSLA/閾値変換処理を実行する(ステップS321)。ステップS321のSLA/閾値変換処理は、図10を用いて既に説明したSLA/閾値変換処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
管理装置3の決定部33は、SLA/閾値変換処理によって得られた閾値Qthを用いて伝送品質を判定する伝送品質判定処理を実行する(ステップS322)。ステップS322の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、伝送品質が良好である場合には(ステップS323;Yes)、調整量の決定を行うことなく、処理をステップS329に移行する。
一方、決定部33は、伝送品質が良好でない場合には(ステップS323;No)、SLAとして取得された遅延が「Premium」であるか否かを判定する(ステップS324)。
決定部33は、SLAとして取得された遅延が「Premium」でない場合には(ステップS324;No)、新設チャネルの光パス上に再生中継器(REG:REGenarator)を配置することによって、新設チャネルの光パスを分割する(ステップS325)。REGの配置手法としては、例えば、距離二等分法やスパン数二等分法等の既存の手法が用いられる。
一方、決定部33は、SLAとして取得された遅延が「Premium」である場合には(ステップS324;Yes)、伝送品質判定処理で算出した判定対象のQ値が閾値Qthを満たすように、調整量を決定する調整量決定処理を実行する(ステップS326)。
ここで、図21を用いて、ステップS326の調整量決定処理の一例を説明する。図21は、実施例3の光伝送システムの調整量決定処理の一例を示すフローチャートである。
図21に示すように、管理装置3の決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS351)。ステップS351の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好である場合には(ステップS352;Yes)、処理をステップS363に移行する。
一方、決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうちSLA変更対象チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合、すなわち、SLA変更対象チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS352;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、SLA変更対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させる仮調整量を決定する(ステップS353)。
決定部33は、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値を超過する場合には(ステップS354;No)、調整量の増加によって伝送品質が改善されないと判定し(ステップS355)、処理を終了する。
一方、決定部33は、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値以下である場合には(ステップS354;Yes)、SLAが変更されない既設チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ減少させる仮調整量を決定する(ステップS356)。SLAが変更されない既設チャネルを、以下では「非変更対象チャネル」と呼ぶ。すなわち、決定部33は、SLA変更対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、減少量ΔP/Nだけ非変更対象チャネルの光パワーを減少させる第一の調整量を決定する。
決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS357)。ステップS357の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち非変更対象チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、非変更対象チャネルの伝送品質が良好である場合(ステップS358;Yes)、処理をステップS362に移行する。
一方、決定部33は、非変更対象チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS358;No)、非変更対象チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」であるか否かを判定する(ステップS359)。
決定部33は、非変更対象チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」である場合(ステップS359;Yes)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、非変更対象チャネルの光パス上にREGを配置することによって、非変更対象チャネルの光パスを分割する(ステップS360)。
一方、決定部33は、非変更対象チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」でない場合(ステップS359;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、非変更対象チャネルのうち閾値Qthを満たさない非変更対象チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させる仮調整量を新たに決定する(ステップS361)。
決定部33は、光パワーが増加した既設チャネルの総数mを減少量ΔP/Nに乗算した量(ΔP/N)×mだけSLA変更対象チャネルの光パワーを減少させる仮調整量を新たに決定し(ステップS362)、処理をステップS351に戻す。すなわち、決定部33は、第一の調整量を決定した後、非変更対象チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させ、かつ、該チャネルの総数を減少量ΔP/Nに乗算した量だけSLA変更対象チャネルの光パワーを減少させる第二の調整量を決定する。
ステップS363において、決定部33は、新設チャネルの伝送品質が良好であるので、伝送品質が改善されると判定する(ステップS363)。そして、決定部33は、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量として、第一の調整量及び第二の調整量等の仮調整量を決定する(ステップS364)。そして、決定部33は、決定した調整量をLAN等を経由して調整対象の光伝送装置2に設定する(ステップS365)。
図20の説明に戻る。決定部33は、調整量決定処理によって伝送品質が改善されない場合(ステップS327;No)、処理をステップS325に移行する。
一方、決定部33は、調整量決定処理によって伝送品質が改善される場合(ステップS327;Yes)、調整量を設計結果として内部メモリ等に記録する(ステップS328)。
その後、決定部33は、SLA変更対象チャネルの光パスが増加した場合(ステップS329;Yes)、処理をステップS321に戻す。一方、決定部33は、SLA変更対象チャネルの光パスが増加していない場合(ステップS329;No)、処理をステップS330に移行する。
調整対象の光伝送装置2の制御部26は、管理装置3から設定される調整量に基づき、調整機能付きWSS24の透過特性を調整し(ステップS330)、設計時信号調整処理を終了する。その結果、調整機能付きWSS24は、WDM光内の各チャネルのQ値が閾値Qthを満たすように、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整し、調整したWDM光を出力する。
次に、図18のステップS303に示した運用時信号調整処理の詳細を説明する。図22は、実施例3の光伝送システムの運用時信号調整処理の一例を示すフローチャートである。
図22に示すように、設計時信号調整処理が完了すると(ステップS371;Yes)、調整対象の光伝送装置2の制御部26は、管理装置3から設定される調整量に基づき、調整機能付きWSS24の透過特性を継続的に調整する(ステップS372)。
管理装置3の決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS373)。ステップS373の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち新設チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、新設チャネルの伝送品質が良好である場合には(ステップS374;Yes)、処理をステップS384に移行する。
一方、決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうちSLA変更対象チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合、すなわち、SLA変更対象チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS374;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、SLA変更対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させる仮調整量を決定する(ステップS375)。
決定部33は、増加量ΔPの累積値が予め定められた上限値を超過する場合には(ステップS376;No)、運用時信号調整処理を終了する。
一方、決定部33は、増加量ΔPの累積値が所定の上限値以下である場合には(ステップS376;Yes)、非変更対象チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ減少させる仮調整量を決定する(ステップS377)。すなわち、決定部33は、SLA変更対象チャネルの光パワーを増加量ΔPだけ増加させるとともに、減少量ΔP/Nだけ非変更対象チャネルの光パワーを減少させる第一の調整量を決定する。
決定部33は、伝送品質判定処理を実行する(ステップS378)。ステップS378の伝送品質判定処理は、図11を用いて既に説明した伝送品質判定処理に対応するので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
決定部33は、WDM光内の各チャネルのQ値のうち非変更対象チャネルのQ値が閾値Qthを満たす場合、すなわち、非変更対象チャネルの伝送品質が良好である場合(ステップS379;Yes)、処理をステップS383に移行する。
一方、決定部33は、非変更対象チャネルの伝送品質が良好でない場合(ステップS379;No)、非変更対象チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」であるか否かを判定する(ステップS380)。
決定部33は、非変更対象チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」である場合(ステップS380;Yes)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、非変更対象チャネルの光パス上にREGを配置することによって、非変更対象チャネルの光パスを分割する(ステップS381)。
一方、決定部33は、非変更対象チャネルのSLAとして取得された遅延が「Best−effort」でない場合(ステップS380;No)、以下の処理を行う。すなわち、決定部33は、非変更対象チャネルのうち閾値Qthを満たさない非変更対象チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させる仮調整量を新たに決定する(ステップS382)。
決定部33は、光パワーが増加した非変更対象チャネルの総数mを減少量ΔP/Nに乗算した量(ΔP/N)×mだけ新設チャネルの光パワーを減少させる仮調整量を新たに決定し(ステップS383)、処理をステップS373に戻す。すなわち、決定部33は、第一の調整量を決定した後、非変更対象チャネルの光パワーを減少量ΔP/Nだけ増加させ、かつ、該チャネルの総数を減少量ΔP/Nに乗算した量だけSLA変更対象チャネルの光パワーを減少させる第二の調整量を決定する。
ステップS384において、決定部33は、調整対象の光伝送装置2に設定すべき調整量として、第一の調整量及び第二の調整量等の仮調整量を決定する(ステップS384)。そして、決定部33は、決定した調整量をLAN等を経由して調整対象の光伝送装置2に設定する(ステップS385)。
上述したように、実施例3の管理装置3は、SLA変更対象チャネルのQ値が閾値Qthを満たさない場合に、SLA変更対象チャネルの光パワーを増加させ、かつ、非変更対象チャネルの光パワーを減少させる調整量を決定する。その結果、実施例3によれば、SLAが変更されない既設チャネルの光パワーを均等に減少させるとともに、SLAが変更される既設チャネルの伝送品質を改善させることができる。
(変形例)
なお、上記実施例1の光伝送装置では、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整する調整機能付きWSS24を光伝送装置2に設けた。しかしながら、光伝送装置2は、図23に示すように、調整機能付きWSS24に代えて、WDM光内の各チャネルの光パワーを調整する調整機能付きVOA(Variable Optical Attenuator)24aを有しても良い。図23は、実施例1の変形例の光伝送システム内の光伝送装置及び管理装置の構成例を示す説明図である。実施例1の変形例によれば、実施例1と同様に、SLAに応じてWDM光内の各チャネルの伝送品質を自律的に調整することができる。