JP6196169B2 - 表面修飾バイオファイバーの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面修飾バイオファイバー、その製造方法、並びに、表面修飾バイオファイバーを含有する分散液及び樹脂組成物に関する。
セルロースファイバー等のバイオファイバーは、主に樹脂材料の充填材(フィラー)として用いられている。しかしながら、多糖類からなるバイオファイバーは凝集しやすいという問題や、親水性であるために有機溶媒や疎水性樹脂中において分散性が低いという問題を有していた。このため、従来から、バイオファイバーの分散性を高めるために、バイオファイバーの表面を改質する方法が提案されている。
例えば、特開2011−184816号公報(特許文献1)には、セルロースナノファイバーの水酸基をエーテル化、エステル化、又はシリル化により化学修飾し、水酸基の数を減じることによって高分子材料への分散性を高めることが記載されている。しかしながら、このように水酸基の数を調整するだけでは、前記セルロースナノファイバーの高分子材料への分散性を十分に制御することが困難であるという問題や、組み合わせることができる高分子材料が限られるという問題も有していた。
また、国際公開第2013/077354号(特許文献2)には、セルロース分子に直鎖状或いは分岐状分子を有するアミンが結合されたセルロースナノファイバーの分散液が記載されており、前記セルロースナノファイバーは更に合成高分子等の他の材料と複合化させることができることが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載されている方法においては、先ずセルロース分子に酸処理を行ってカルボン酸型の基を導入し、この基と、別途準備した前記アミンのアミノ基とを結合させるため、製造プロセスが多段階である、量産が困難であるといった問題を有していた。また、特定のアミンを用いる必要があることから、前記セルロースナノファイバーの分散性を十分に制御することが困難であるという問題や、組み合わせることができる合成高分子が限られるという問題も有していた。
さらに、特開2010−265357号公報(特許文献3)には、熱可塑性樹脂と表面処理されたセルロース繊維とを含有する樹脂材料の製造方法が記載されており、前記セルロース繊維の表面処理方法として、前述の酸処理等の化学修飾の他、シランカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法や、両親媒性ポリマーを用いる方法が挙げられている。しかしながら、前記シランカップリング剤を用いる方法は、前記セルロース繊維の表面をSiを含有するカップリング剤で覆うため、前記セルロース繊維が本来持つ物性や機能が十分に発揮されない、充填材として用いた際に充填率が低下する、溶媒に対する分散性が十分ではないといった問題を有していた。また、前記両親媒性ポリマーを用いる方法は、特定の両親媒性ポリマーを別途準備する必要があるため、製造プロセスが多段階である、量産が困難であるといった問題を有しており、また、このように別々に準備したセルロース繊維と両親媒性ポリマーとを単に接触させ、それに樹脂を混合して得られる樹脂材料においては、セルロース繊維の分散性や材料の安定性が十分ではないという問題を有していた。
特開2011−184816号公報 国際公開第2013/077354号 特開2010−265357号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、溶媒中での分散性に優れた表面修飾バイオファイバー、それを含有する分散液及び樹脂組成物、並びに、バイオファイバーの表面に重合性反応基や有機ポリマーとの結合のための反応基を導入する処理を施さなくとも、前記表面修飾バイオファイバーを容易に得ることが可能な表面修飾バイオファイバーの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、先ず、特定の条件を満たすバイオファイバー、第1のモノマー、及び溶媒を含有する反応溶液中において前記第1のモノマーを重合せしめることによって、前記バイオファイバーの表面に重合性反応基や有機ポリマーとの結合のための反応基を導入する処理を施さなくとも、得られた特定の第1のポリマーを前記バイオファイバーの表面に付着(好ましくは吸着)させて配置させることができ、前記バイオファイバーの表面に前記第1のポリマーからなる親水性ブロックを得ることができることを見出した。さらに、本発明者らは、次いで、前記反応溶液に特定の条件を満たす第2のモノマーを添加し、これを重合せしめることによって、得られた特定の第2のポリマーを前記親水性ブロックの外側に積層させることができ、前記親水性ブロックの表面に前記第2のポリマーからなる疎水性ブロックを得ることができることを見出した。そして、前記バイオファイバーの表面が前記親水性ブロック及び前記疎水性ブロックで覆われたこのような表面修飾バイオファイバーは安定性が高く、溶媒中での分散性に優れることを見出した。
さらに、本発明者らは、この方法が幅広いバイオファイバーに対して適用可能であり、このような方法によれば、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーからなるポリマーが前記バイオファイバー表面に高含有率で配置され、シランカップリング剤等の修飾剤を含有しない前記表面修飾バイオファイバーを、容易に製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法は、
バイオファイバー、第1のモノマー、及び溶媒を含有する反応溶液中において、前記第1のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた第1のポリマーを前記バイオファイバーの表面に付着させて、前記第1のポリマーからなり、前記バイオファイバーの表面に配置された親水性ブロック(A)を得る第1の重合工程と、
前記第1の重合工程の後、前記反応溶液に第2のモノマーを添加し、前記第2のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた第2のポリマーを前記第1のポリマーの伸長末端に重合せしめて、前記第2のポリマーからなり、前記親水性ブロック(A)の外側に積層された疎水性ブロック(B)を得る第2の重合工程とを含み、
前記バイオファイバー、前記第1のポリマー、前記第2のポリマー及び前記溶媒の表面自由エネルギーが、下記式(1):
BF>E>E>E ・・・(1)
[式(1)中、EBFはバイオファイバーの表面自由エネルギーを示し、Eは第1のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは第2のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは溶媒の表面自由エネルギーを示す。]
で表される条件を満たすものである。
また、本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法においては、前記バイオファイバーの平均直径が0.3〜10,000nmであり、かつ、アスペクト比が10,000以下であることが好ましく、前記バイオファイバーがセルロースからなるものであることが好ましい。
さらに、本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法においては、前記バイオファイバーの表面に反応基を導入する工程が含まれないことが好ましい。
なお、本発明によって上記目的が達成されるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、図1のフローチャートに示すように、先ず、表面自由エネルギーが大きく、比較的親水性である第1のポリマー(3)を得ることができる第1のモノマー(2)を、第1のモノマー(2)及び第2のモノマー(4)に対しては良溶媒であるが表面自由エネルギーが第1のポリマー(3)及び第2のポリマー(5)よりも小さい溶媒中において、第1のポリマー(3)よりも表面自由エネルギーが大きいバイオファイバーの存在下で重合せしめることにより、重合が進むにつれて得られる第1のポリマー(3)がバイオファイバーの表面を覆いつつ集積され、好ましくは吸着されて親水性ブロック(A)が形成される。次いで、前記溶媒に第2のモノマー(4)を添加して重合せしめると共に得られた第2のポリマー(5)を前記第1のポリマー(3)の伸長末端に重合せしめることにより、第2のポリマー(5)が前記親水性ブロック(A)の外側に積層されて疎水性ブロック(B)が形成される。
また、このとき、前記バイオファイバー、得られる第1のポリマー及び第2のポリマー、溶媒の表面自由エネルギーが特定の条件を満たすようにすることにより、前記親水性ブロック(A)が最表面に出ることが抑制され、前記親水性ブロック(A)の表面が前記疎水性ブロック(B)で覆われた安定な2層構造の有機ポリマー層を形成することができるため、前記バイオファイバー表面上に有機ポリマーが高含有率で安定に配置された複合体(表面修飾バイオファイバー)を得ることができ、溶媒中での優れた分散性を発揮することができるものと本発明者らは推察する。
さらに、本発明においては、前記バイオファイバーの表面にSi等を有する重合性反応基を導入する必要がないため、バイオファイバーが本来持つ物性や機能を十分に発揮することが可能となると本発明者らは推察する。また、前記バイオファイバーの表面にポリマーと結合させるための特定の反応基を導入する必要もないため、前記表面修飾バイオファイバーを容易に得ることが可能となる。このように、本発明は、バイオファイバー、モノマー、ポリマー、及び溶媒の表面自由エネルギー(表面張力)の違いのみを利用した方法であるため、バイオファイバーの種類を制限することなく、手軽で安価、かつ大量に、バイオファイバー表面が有機ポリマーによって改質された複合体(表面修飾バイオファイバー)を得ることができるものと本発明者らは推察する。さらに、本発明においては、このような特定の条件においてモノマーをリビングラジカル重合せしめてポリマーを合成しつつバイオファイバーの表面に積層させるため、バイオファイバーの表面に有機ポリマーが安定に付着した複合体を得ることができるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、溶媒中での分散性に優れた表面修飾バイオファイバー及びそれを含有する分散液、樹脂組成物、並びに、バイオファイバーの表面に重合性反応基や有機ポリマーとの結合のための反応基を導入する処理を施さなくとも、前記表面修飾バイオファイバーを容易に得ることが可能な表面修飾バイオファイバーの製造方法を提供することが可能となる。
本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法を示すフローチャートである。 実施例1で得られた複合体の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例1で得られた未修飾バイオファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られた複合体の走査型電子顕微鏡写真である。 比較例2で得られた未修飾バイオファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。 実施例1〜2及び比較例1で得られた複合体及び未修飾バイオファイバーのFTIR測定の結果を示すグラフである。 実施例1、比較例1〜2で得られた複合体及び未修飾バイオファイバーの分散液の外観をディスプレー上に表示した中間調画像である。 実施例4で得られた複合体の走査型電子顕微鏡写真である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<表面修飾バイオファイバーの製造方法>
先ず、本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法について説明する。本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法は、
バイオファイバー、第1のモノマー、及び溶媒を含有する反応溶液中において、前記第1のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた第1のポリマーを前記バイオファイバーの表面に付着させて、前記第1のポリマーからなり、前記バイオファイバーの表面に配置された親水性ブロック(A)を得る第1の重合工程と、
前記第1の重合工程の後、前記反応溶液に第2のモノマーを添加し、前記第2のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた第2のポリマーを前記第1のポリマーの伸長末端に重合せしめて、前記第2のポリマーからなり、前記親水性ブロック(A)の外側に積層された疎水性ブロック(B)を得る第2の重合工程とを含み、
前記バイオファイバー、前記第1のポリマー、前記第2のポリマー及び前記溶媒の表面自由エネルギーが、下記式(1):
BF>E>E>E ・・・(1)
[式(1)中、EBFはバイオファイバーの表面自由エネルギーを示し、Eは第1のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは第2のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは溶媒の表面自由エネルギーを示す。]
で表される条件を満たすものである。
なお、本発明において、親水性ブロック(A)及び疎水性ブロック(B)における親水性、疎水性とは、親水性ブロック(A)を構成する第1のポリマーと疎水性ブロック(B)を構成する第2のポリマーとを比較した際の相対的な水への親和性により定義されるものであり、表面自由エネルギーがより大きいポリマー(すなわち第1のポリマー)からなるブロックを親水性ブロック、表面自由エネルギーがより小さいポリマー(すなわち第2のポリマー)からなるブロックを疎水性ブロックという。
〔バイオファイバー〕
本発明に係るバイオファイバーとしては、最長径と最短径との比で表されるアスペクト比(最長径/最短径)が1以上であり、かつ、最長径が10,000nm以下であることが好ましい。本発明において、前記バイオファイバーの形態としては、繊維状であっても粒状であってもよく、得られる表面修飾バイオファイバーの用途に応じて選択することができる。前記粒状の形態としては、最長径と最短径との比で表されるアスペクト比(最長径/最短径)が1〜3であり、粒子径が10,000nm以下のものが好ましく、前記繊維状の形態としては、前記アスペクト比が3を超え(好ましくは5以上)かつ最長径が10,000nm以下のものが好ましい。本発明において、前記バイオファイバーの最長径及び最短径は走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって測定することができ、前記バイオファイバーが繊維状である場合の前記最短径とは、バイオファイバー(繊維)の短軸方向の断面の最大直径であり、断面が円形ではない場合には、その断面の外接円の直径のことをいう。また、前記ファイバーが粒状である場合の粒子径は、粒子の断面の外接円の直径のことをいう。
前記バイオファイバーとしては、例えば、セルロース、キチン、キトサン、生物から成分を化学的に取り出して再生した再生セルロース、微生物由来のバクテリアセルロース等の多糖類からなる繊維又は粒子が挙げられ、これらの中でも、後述の第1のポリマーがポリヒドロキシエチルアクリレートであり、第2のポリマーがポリスチレンである場合に、より表面修飾バイオファイバーの安定性が向上して溶媒に対する分散性が向上し、また、第1のポリマー及び第2のポリマーの合計含有率を向上させることが容易となる傾向にあるという観点から、セルロースからなる繊維又は粒子が好ましい。前記セルロースとしては、結晶性であっても非結晶性であってもよく、水和型であっても非水和型であってもよいが、有機溶媒や樹脂に対してより優れた分散性が発揮されるという観点から、結晶性であることがより好ましい。また、前記セルロースとしては、天然セルロースから精製したセルロースであっても合成したセルロースであってもよく、市販のものを適宜用いてもよい。なお、本発明の製造方法において、水分散液で供給されたバイオファイバーを用いる場合には、遠心分離により水和水以外の水分を除去して用いることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法に用いるバイオファイバーとしては、平均直径が0.3〜10,000nmであり、かつ、アスペクト比が10,000以下であることが好ましく、平均直径が0.3〜10,000nmであり、かつ、アスペクト比が1〜300であることがより好ましい。また、前記バイオファイバーとしては、樹脂を含む溶媒に対してより優れた分散性が発揮されるという観点から、ナノファイバー(以下、場合により「バイオナノファイバー」という。)であることが好ましく、セルロースナノファイバーであることがより好ましい。前記ナノファイバーとしては、具体的には、平均直径が0.3〜300nmであり、かつ、アスペクト比が10,000以下であることが好ましく、平均直径が0.3〜30nmであり、アスペクト比が3〜300であることがより好ましい。なお、本発明において、前記バイオファイバーの平均直径とは、前記バイオファイバーが繊維状である(アスペクト比が3を超える)場合には前記最短径の平均値であって、任意の200個のバイオファイバー(繊維)の最短径を計測してその平均値を算出することで求めることができる。また、前記バイオファイバーが粒状(アスペクト比が1〜3)である場合には、前記バイオファイバーの平均直径は前記粒子径の平均値であって、任意の200個のバイオファイバー(粒子)の粒子径を計測してその平均値を算出することで求めることができる。 本発明に係るバイオファイバーとしては、表面に反応基を導入する処理が施されていないものであっても好適に用いることができるため、本発明の製造方法においては、前記バイオファイバーの表面に反応基を導入する工程が含まれないことが好ましい。前記反応基としては、重合性反応基(例えば、メタクリル基、アクリル基、ビニル基等)や、有機ポリマー(第1のポリマー及び第2のポリマー)との結合のための前記重合性反応基以外の反応基(例えば、カルボキシル基、アミノ基、イソシアネート基、酸無水基等)が挙げられる。本発明においては、前記反応基を導入する処理による影響を受けないため、バイオファイバー、及び/又は、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーからなるポリマーが本来持つ物性や機能を十分に発揮させることができ、安定性が十分に高い表面修飾バイオファイバーを容易に大量に得ることが可能となる。
前記重合性反応基を導入する方法としては、前記重合性反応基を有するカップリング剤を用いた方法、及び前記重合性反応基を有する界面活性剤を用いた方法等が挙げられる。前記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられ、前記界面活性剤としては、カルボン酸誘導体、ホスホン酸誘導体、リン酸誘導体、アミン誘導体、スルホン酸誘導体等が挙げられる。
また、前記有機ポリマーとの結合のための反応基を導入する方法としては、例えば、前記有機ポリマーとの結合のための反応基を有するカップリング剤や界面活性剤を用いた方法、及び表面の水酸基やカルボン酸塩等の塩を酸、アルコール、ハロゲン化試薬、酸無水物、イソシアナート類等を用いて化学修飾する方法が挙げられる。このときのカップリング剤及び界面活性剤としては、前述のとおりである。
さらに、本発明に係るバイオファイバーとしては、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性をより向上させるという観点から、アルキレングリコール重合体や他の界面活性剤による表面処理も施されていないことが好ましい。なお、これらの反応基を導入する処理や表面処理が施されているバイオファイバーは、断面を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察する方法や、赤外吸収スペクトルによる解析により確認することができる。
〔第1のモノマー、第1のポリマー〕
本発明に係る第1のモノマーとしては、重合せしめて得られるポリマーが上記式(1)で表される条件を満たす後述の第1のポリマーとなるものであればよく、前記バイオファイバー及び後述する第2のポリマーの種類にも依るものであるため一該にはいえないが、得られる第1のポリマーの表面自由エネルギーが上記式(1)で表される条件を満たしやすい傾向にあるという観点から、親水性のラジカル重合性モノマーであることが好ましい。
前記親水性のラジカル重合性モノマーとしては、親水性基及びビニル基を有するモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、アリルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、アリル酢酸、アリルアルコール、アリルクロライド、アリルアミド、アリルイソシアネート、メチルビニルメチルケトン、酢酸ビニル、ビニルクロライド、ビニルエチルエステル、ビニルエチルケトン、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、得られる第1のポリマーの表面自由エネルギーが上記式(1)で表される条件を満たす限り、下記の疎水性のラジカル重合性モノマーを組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性がより向上し、製造中の重合過程において前記バイオファイバーの凝集をより抑制できる傾向にあるという観点から、本発明に係る第1のモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
このような第1のモノマーを重合せしめて得られる第1のポリマーとしては、前記親水性のラジカル重合性モノマーを単独重合又は共重合せしめてなる直鎖状又は分岐鎖状のポリマーであることが好ましい。これらの中でも、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性がより向上し、製造中の重合過程において前記バイオファイバーの凝集をより抑制できる傾向にあるという観点からは、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、及びポリヒドロキシエチルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
〔溶媒〕
本発明に係る溶媒としては、前記第1のモノマー及び後述する第2のモノマーを溶解又は混和することができるものであり、かつ、上記式(1)で表される条件を満たすものであることが必要である。このような溶媒としては、前記第1のモノマー、前記第1のポリマー、後述する第2のモノマー、及び後述する第2のポリマーの種類にも依るものであるため一該にはいえないが、例えば、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフランが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〔第2のモノマー、第2のポリマー〕
本発明に係る第2のモノマーとしては、重合せしめて得られるポリマーが上記式(1)で表される条件を満たす第2のポリマーとなるものであればよく、前記第1のポリマー及び前記溶媒の種類にも依るものであるため一該にはいえないが、得られる第2のポリマーの表面自由エネルギーが上記式(1)で表される条件を満たしやすい傾向ににあるという観点から、疎水性のラジカル重合性モノマーであることが好ましい。
前記疎水性のラジカル重合性モノマーとしては、親水性基を有さずかつビニル基を有するモノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルスチレン、ブチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリフルオロプロピルアクリレート、トリフルオロプロピルメタクリレート、イソプレン、1,4−ブタジエン等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、得られる第2のポリマーの表面自由エネルギーが上記式(1)で表される条件を満たす限り、上記の親水性のラジカル重合性モノマーを組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性がより向上し、樹脂中やトルエン等の有機溶媒中での分散性がより優れる傾向にあるという観点から、本発明に係る第2のモノマーとしては、スチレンが好ましい。
このような第2のモノマーを重合せしめて得られる第2のポリマーとしては、前記疎水性のラジカル重合性モノマーを単独重合又は共重合せしめてなる直鎖状又は分岐鎖状のポリマーであることが好ましい。これらの中でも、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性がより向上し、樹脂中やトルエン等の有機溶媒中での分散性がより優れる傾向にあるという観点からは、ポリスチレンが好ましい。
なお、本発明に係る第1のモノマー及び第2のモノマー、並びに、第1のポリマー及び第2のポリマーとしては、第1のポリマー及び第2のポリマーが上記式(1)で表される条件を満たせばよく、例えば、前記第1のモノマーとしてヒドロキシエチルメタクリレートを用い、前記第2のモノマーとしてメチルメタクリレートを用い、前記第1のポリマーをポリヒドロキシエチルメタクリレートに、前記第2のポリマーをポリメチルメタクリレートとすることも好ましい。
〔表面自由エネルギー〕
本発明の製造方法においては、前記バイオファイバー、前記第1のポリマー、前記第2のポリマー及び前記溶媒の表面自由エネルギーが、下記式(1):
BF>E>E>E ・・・(1)
[式(1)中、EBFはバイオファイバーの表面自由エネルギーを示し、Eは第1のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは第2のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは溶媒の表面自由エネルギーを示す。]
で表される条件を満たすことが必要である。EBFがE以下である場合、EがE以下である場合、或いは、EがE以下である場合には、バイオファイバーの表面に前記第1のポリマーを、前記第1のポリマーからなる親水性ブロック(A)の表面に前記第2のポリマーを、それぞれ安定に十分に付着(好ましくは吸着)させることができず、また、得られる表面修飾バイオファイバーの溶媒に対する分散性が低下する。
なお、表面自由エネルギーとは、固体又は液体表面の分子(或いは原子)が物質内部の分子(或いは原子)と比べて余分に持つエネルギーのことであり、本発明においては、20℃における表面自由エネルギーを指す。本発明において、前記表面エネルギーは公知の方法により求めることができ、例えば、固体の表面自由エネルギーは、固体サンプルの表面における水の水滴接触角を測定し、この測定値と水の既知の表面自由エネルギーとから、ヤング(Young)の式を用いて求めることができる。また、液体の表面自由エネルギーは、円環法により、デュヌーイ式張力計を用いて測定することにより求めることができる。具体的には、本発明に係るバイオファイバーの表面自由エネルギーは、同種のバイオファイバーからなる基板を作製し、該基板表面を清浄化したものを固体サンプルとして用い、上記固体の表面自由エネルギーの測定方法によって求めることができる。また、本発明に係る第1のポリマー及び第2のポリマーの表面自由エネルギーは、該当ポリマーからなるサンプルフィルムを作製し、該フィルム表面を清浄化したものを固体サンプルとして用い、上記固体の表面自由エネルギーの測定方法によって求めることができる。さらに、本発明に係る溶媒の表面自由エネルギーは、前述の円環法によって求めることができる。
前記バイオファイバーの表面自由エネルギー(EBF)は、通常、前記第1のポリマーの表面自由エネルギー(E)に比べて非常に大きいものであるが、EBFとEとの差(EBF−E)としては、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性及び溶媒に対する分散性がより向上するという観点から、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
また、前記第1のポリマーの表面自由エネルギー(E)と前記第2のポリマーの表面自由エネルギー(E)との差(E−E)としては、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性及び溶媒に対する分散性がより向上するという観点から、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
さらに、前記第2のポリマーの表面自由エネルギー(E)と前記溶媒の表面自由エネルギー(E)との差(E−E)としては、得られる表面修飾バイオファイバーの安定性及び溶媒に対する分散性がより向上するという観点から、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。
〔製造方法〕
本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法においては、先ず、前記バイオファイバー、前記第1のモノマー及び前記溶媒を含有する反応溶液中において、前記第1のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた前記第1のポリマーを前記バイオファイバーの表面に付着させて配置させ、前記第1のポリマーからなる親水性ブロック(A)を得る(第1の重合工程)。
本発明の製造方法に係る第1の重合工程においては、前記バイオファイバー、前記第1のモノマー及び前記溶媒を含有する反応溶液中において前記第1のモノマーをリビングラジカル重合せしめる。このようなリビングラジカル重合の方法としては、適宜公知の方法を採用することができ、例えば、ニトロキシドを介したラジカル重合(NMP)、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)が挙げられる。
このようなリビングラジカル重合に用いる開始剤としては、特に制限されないが、例えば、azobisisobutyronitrile(AIBN)、Benzoyl Peroxide(BPO)、Di−tert−Butyl Peroxide(DBPO)、2,2’−Azobis(2,4−dimethylvaleronitrile)(V−65)、2,2’−Azobis(4−methoxy−2,4−dimethylvaleronitrile)(V−70)、2−bromoisobutyrate(EBIB)、methyl 2−chloropropionate(MCP)が挙げられる。また、前記リビングラジカル重合に用いる触媒としても、特に制限されないが、例えば、2,2,6,6−tetramethylpiperidine 1−oxyl (TEMPO);Cu(I)Cl(配位子によって安定化されたもの);Cu(I)Br(配位子によって安定化されたもの);cumyl dithiobenzoate(CDB)等のdithiobenzoates;benzylpropyl trithiocarbonate等のtrithiocarbonates;Benzyl octadecyl trithiocarbonateが挙げられる。前記開始剤及び触媒の濃度としては、該開始剤及び触媒の種類にも依存するが、例えば、前記反応溶液中においてそれぞれ0.001〜100mMであることが好ましい。
本発明の製造方法に係る第1の重合工程において、前記リビングラジカル重合の条件としては、採用する反応方法、前記バイオファイバー及び前記第1のモノマーの種類にも依るものであるため一概にはいえないが、前記第1のモノマーの重合が完全に終了する条件であることが好ましく、反応温度としては、20〜150℃であることが好ましく、反応時間としては、2〜48時間であることが好ましい。本発明の製造方法においては、このようなリビングラジカル重合の条件を適宜調整することにより、得られる表面修飾バイオファイバーにおける前記第1のポリマーの数平均分子量、分子量分布、含有量等を制御することができ、用途に応じて所望の表面修飾バイオファイバーを得ることができる。
前記反応溶液中における前記バイオファイバーと前記第1のモノマーとの質量比(バイオファイバー質量:第1のモノマー質量)としては、1:100〜100:1であることが好ましく、1:10〜10:1であることがより好ましい。前記第1のモノマーの割合が前記下限未満である場合には、バイオファイバー表面における第1のポリマーの被覆率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、得られる表面修飾バイオファイバーにおけるバイオファイバーの含有比率が低下する傾向にある。
本発明の製造方法に係る第1の重合工程においては、前記反応溶液中において前記第1のモノマーをリビングラジカル重合せしめることにより、得られる前記第1のポリマーが前記溶媒に対して不溶、或いは混和することが困難となって析出し、前記バイオファイバーの表面に付着(好ましくは吸着)、集積される。その結果、前記バイオファイバーの表面に前記第1のポリマーが配置されてなる親水性ブロック(A)を得ることができる。
本発明の製造方法においては、前記第1の重合工程の後に、前記第1のポリマーが付着したバイオファイバーと、重合していない前記第1のモノマー及び前記バイオファイバーに付着していない前記第1のポリマーとを遠心分離によって分離する工程を更に含んでいてもよい。
本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法においては、次いで、前記第1の重合工程の後、前記反応溶液に第2のモノマーを添加し、前記第2のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた第2のポリマーを前記第1のポリマーの伸長末端に重合せしめて前記親水性ブロック(A)の外側に積層させ、前記第2のポリマーからなる疎水性ブロック(B)を得る(第2の重合工程)。
本発明の製造方法に係る第2の重合工程においては、前記第1の重合工程後の反応溶液中に前記第2のモノマーを添加し、該第2のモノマーをリビングラジカル重合せしめる。このようなリビングラジカル重合の種類、開始剤及び触媒の種類としては、前記第1の重合工程において述べたものが挙げられる。
また、本発明の製造方法に係る第2の重合工程において、前記リビングラジカル重合の条件としても前記第1の重合工程において述べた条件が挙げられ、採用する反応方法、前記第1のモノマー及び前記第2のモノマーの種類にも依るものであるため一概にはいえないが、例えば、反応温度としては、20〜150℃であることが好ましく、反応時間としては、2〜48時間であることが好ましい。本発明の製造方法においては、このようなリビングラジカル重合の条件を適宜調整することにより、得られる表面修飾バイオファイバーにおける前記第2のポリマーの数平均分子量、分子量分布、含有量等を制御することができ、用途に応じて所望の表面修飾バイオファイバーを得ることができる。
前記第1の重合工程で用いた第1のモノマーと前記第2のモノマーとの質量比(第1のモノマー質量:第2のモノマー質量)としては、1:1〜1:1,000であることが好ましく、1:2〜1:500であることがより好ましい。前記第2のモノマーの割合が前記下限未満である場合には、得られる表面修飾バイオファイバーの表面が十分に疎水性とならない傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーからなるポリマーが前記バイオファイバーの表面から脱離しやすくなる傾向にある。
本発明の製造方法に係る第2の重合工程においては、前記反応溶液中において前記第2のモノマーをリビングラジカル重合せしめることにより、前記第1のポリマーと得られる第2のポリマーとは重合して親水性ブロック(A)と疎水性ブロック(B)とからなるブロックポリマー(以下、場合により「有機ポリマー」という。)を形成する。また、得られる第2のポリマーの表面自由エネルギーが前記溶媒の表面自由エネルギーよりも大きいために、前記第1のポリマーからなる親水性ブロック(A)の外側に前記第2のポリマーからなる疎水性ブロック(B)が積層された複合体(表面修飾バイオファイバー)を得ることができる。このようにして、本発明の製造方法によれば、前記バイオファイバーと、前記第1のポリマーからなり前記バイオファイバーの表面に配置された前記親水性ブロック(A)と、前記第2のポリマーからなり前記親水性ブロック(A)の外側に積層された前記疎水性ブロック(B)とを含有する本発明の表面修飾バイオファイバーを得ることができる。
本発明の製造方法においては、前記第2の重合工程の後に、前記ブロックポリマーが付着したバイオファイバー(表面修飾バイオファイバー)と、重合していないモノマー(第1のモノマー及び/又は第2のモノマー)及び前記バイオファイバーに付着していない前記有機ポリマーとを遠心分離によって分離する工程を更に含んでいることが好ましい。
本発明の製造方法に係る第2の重合工程においては、前記本発明の表面修飾バイオファイバーが前記溶媒中に分散された分散液を得ることができる。本発明においては、前記分散液からろ過、遠心分離等の方法で前記表面修飾バイオファイバーを回収することによって本発明の表面修飾バイオファイバーを得ることができる。また、得られた分散液をそのまま本発明の分散液としてもよく、回収した表面修飾バイオファイバーを適宜溶媒及び/又は樹脂中に再分散させて本発明の分散液又は樹脂組成物としてもよい。
本発明の製造方法によれば、前記バイオファイバーに対して前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーを十分に安定に多く付着(好ましくは吸着)させることができ、また、前記バイオファイバーの平均直径やアスペクト比、前記第1のポリマー及び第2のポリマーの重合度を調整することにより、得られる表面修飾バイオファイバーの平均直径及びアスペクト比を容易に制御することも可能である。さらに、本発明の製造方法によれば、前記バイオファイバーの種類に制限されず、本発明の表面修飾バイオファイバーを量産(グラムオーダー以上、さらにはメートルトンオーダー以上)することが可能である。
<表面修飾バイオファイバー、それを含有する分散液及び樹脂組成物>
次いで、本発明の表面修飾バイオファイバー、並びに、前記表面修飾バイオファイバーを含有する分散液及び樹脂組成物について説明する。本発明の表面修飾バイオファイバーは、
前記本発明の表面修飾バイオファイバーの製造方法により得られる表面修飾バイオファイバーであり、
前記バイオファイバーと、前記第1のポリマーからなり前記バイオファイバーの表面に配置された前記親水性ブロック(A)と、前記第2のポリマーからなり前記親水性ブロック(A)の外側に積層された前記疎水性ブロック(B)とを含有しており、
前記バイオファイバー、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーの表面自由エネルギーが、下記式(2):
BF>E>E ・・・(2)
[式(2)中、EBFはバイオファイバーの表面自由エネルギーを示し、Eは第1のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは第2のポリマーの表面自由エネルギーを示す。]
で表される条件を満たすものである。
上記本発明の製造方法により得られる本発明の表面修飾バイオファイバーにおいては、比較的親水性の高い親水性ブロック(A)の外側に比較的親水性の低い疎水性ブロック(B)が積層された構造となるため、前記バイオファイバーの表面に重合性反応基や有機ポリマーとの結合のための反応基を導入する処理が施されていなくとも、前記バイオファイバーの表面に前記有機ポリマーが安定に配置され、優れた安定性及び分散性が発揮される。さらに、このように前記親水性ブロック(A)が前記バイオファイバー表面にカップリング剤等を介さずに配置されるため、前記バイオファイバー、及び/又は、前記有機ポリマーが本来持つ物性や機能を十分に発揮することができる。
本発明の表面修飾バイオファイバーにおいては、前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとが重合により結合して親水性ブロック(A)及び疎水性ブロック(B)とからなるブロックポリマー(有機ポリマー)を形成し、かつ、前記有機ポリマーと前記バイオファイバーとが安定に付着(好ましくは吸着)しているため、前記溶媒が前記第2のポリマーの良溶媒である場合にもポリマーが溶媒層に溶け出さず、前記第2のポリマーからなる疎水性ブロック(B)が前記第1のポリマーからなる親水性ブロック(A)の外側に安定に配置される。
本発明の表面修飾バイオファイバーにおいては、前記有機ポリマーの親水性ブロック(A)と前記バイオファイバーとの間は、より優れた安定性及び分散性が発揮されるという観点から、分子間力により吸着(物理吸着)していることが好ましい。修飾する有機ポリマー自体を溶媒に溶解又は分散させた状態でバイオファイバーに付着(吸着)させる場合と異なり、本発明においては、重合させながら形成される有機ポリマーとバイオファイバー表面との間に随時相互作用が起こって吸着サイトが発生するため、有機ポリマー同士の重なり合いや絡み合いが少なくなり、有機ポリマーとバイオファイバー表面との間により多くの吸着サイトが存在することになる。そのため、本発明の表面修飾バイオファイバーにおいては、前記有機ポリマーの親水性ブロック(A)と前記バイオファイバーとの間の吸着力が十分に大きく、安定性が十分に優れる。このような吸着の強度としては、例えば、20℃において24時間以上、第1のポリマー及び第2のポリマーの良溶媒(後述)中に表面修飾バイオファイバーを分散させて放置した際に、バイオファイバーから脱離する有機ポリマーの量を全有機ポリマーの10質量%未満とすることができる。これに対して、有機ポリマー自体を溶媒に溶解又は分散させた状態でバイオファイバーに吸着させた場合には、数十質量%以上の有機ポリマーが脱離する。
本発明の表面修飾バイオファイバーにおいて、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマー(有機ポリマー)の数平均分子量としては、3,000〜1,000,000g/molであることが好ましく、5,000〜500,000g/molであることがより好ましい。数平均分子量が前記下限未満では、高分子の樹脂中における分散安定性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、液体溶媒中での分散安定性が低下する傾向にある。
また、本発明の表面修飾バイオファイバーにおいて、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマー(有機ポリマー)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、1.05〜2.0であることが好ましく、1.05〜1.7であることがより好ましい。分子量分布が前記上限を超えると前記有機ポリマー同士が絡まりやすくなるために樹脂を含む溶媒に対する分散性が低下する傾向にある。
さらに、本発明の表面修飾バイオファイバーにおいて、前記第1のポリマーと前記第2のポリマーとの質量比(第1のポリマーの質量:第2のポリマーの質量)としては、1:1〜1:1,000であることが好ましく、1:1〜1:500であることがより好ましく、1:2〜1:500であることがさらに好ましい。前記第1のポリマーの割合が前記下限未満である場合には、前記表面修飾バイオファイバーの表面が十分に疎水性とならない傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、前記有機ポリマーが前記バイオファイバーの表面から脱離しやすくなる傾向にある。
また、本発明の表面修飾バイオファイバーにおいて、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマー(有機ポリマー)の合計含有量としては、前記バイオファイバーの単位表面積あたりの分子数(鎖数)で0.0005〜1.0chains/nmであることが好ましく、0.001〜0.5chains/nmであることがより好ましい。前記単位表面積あたりにおける含有量が前記下限未満である場合には、樹脂を含む溶媒に対する分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、充填化せしめる際に前記バイオファイバーの充填率が低下する傾向にある。なお、本発明の製造方法によれば、前述のように前記バイオファイバーに対して前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーを十分に安定に多く付着(好ましくは吸着)させることができるため、前記有機ポリマーの合計含有量を0.001〜1.0chains/nmにすることができる。
さらに、本発明の表面修飾バイオファイバーにおいて、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマー(有機ポリマー)の合計含有率としては、前記バイオファイバーの表面積及び質量にも依存するが、1〜20質量%であることが好ましい。前記含有率が前記下限未満であると、樹脂を含む溶媒に対する分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、溶媒中に分散せしめる際に前記バイオファイバーの含有比率が低下する傾向にある。なお、本発明の製造方法によれば、前述のように前記バイオファイバーに対して前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーを十分に安定に多く付着(好ましくは吸着)させることができるため、前記有機ポリマーの合計含有率を2〜90質量%にすることができる。
なお、本発明において、前記第1のポリマー及び前記第2のポリマー(有機ポリマー)の合計含有量及び合計含有率は、バイオファイバーの比表面積とTGA(熱重量分析)、FTIR(フーリエ変換赤外分光)及びNMR(核磁気共鳴)等の測定結果とから求めることができる。
本発明の表面修飾バイオファイバーにおいては、より優れた安定性及び分散性が発揮される傾向にあるという観点から、前記バイオファイバーの表面が前記有機ポリマーにより隙間なく覆われていることが好ましく、前記バイオファイバーの表面に付着して配置された前記第1のポリマーからなる親水性ポリマー層(A)、及び前記親水性ポリマー層(A)の表面に積層された前記第2のポリマーからなる疎水性ポリマー層(B)を備えていることがより好ましい。
前記第1のポリマーが前記親水性ポリマー層(A)を形成する場合、その前記バイオファイバーの表面の被覆率としては、50面積%以上であることが好ましく、80面積%以上であることがより好ましい。また、前記第2のポリマーが前記疎水性ポリマー層(B)を形成する場合、その前記親水性ポリマー層(A)の表面の被覆率としては、30面積%以上であることが好ましく、50面積%以上であることがより好ましい。また、このとき、前記親水性ポリマー層(A)の厚みとしては0.1〜20nmであることが好ましく、前記疎水性ポリマー層(B)の厚みとしては0.2〜100nmであることが好ましい。
さらに、本発明の表面修飾バイオファイバーとしては、平均直径が0.9〜10,000nmであり、かつ、アスペクト比が10,000以下であることが好ましく、平均直径が0.9〜1,000nmであり、かつ、アスペクト比が1〜300であることがより好ましい。また、本発明の表面修飾バイオファイバーが繊維状である場合には、平均直径が0.9〜30nmであり、かつ、アスペクト比が3〜300であることがより好ましい。平均直径が前記下限未満である場合には、表面修飾バイオファイバーにおける有機ポリマーの含有比率が多くなり過ぎる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、溶媒又は樹脂に対する分散性が低下する傾向にある。また、前記アスペクト比が前記上限を超える場合には、表面修飾バイオファイバーが凝集しやすくなり、樹脂を含む溶媒に対する分散性が低下する傾向にある。
なお、本発明において、前記親水性ポリマー層(A)及び前記疎水性ポリマー層(B)の厚み、並びに、前記表面修飾バイオファイバーの平均直径及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により測定することができる。また、本発明の表面修飾バイオファイバーは非常に安定であり、分散媒から分離しても固体の状態が維持されるため、前記表面修飾バイオファイバーの平均直径及びアスペクト比は分散媒(溶媒及び又は樹脂)から分離した状態で測定される。
また、本発明の表面修飾バイオファイバーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、金属ナノ粒子等の金属粒子、界面活性剤、界面活性能を有する高分子、リビングラジカル重合開始剤、リビングラジカル重合触媒等を更に含有していてもよい。
次いで、本発明の分散液について説明する。本発明の分散液は、前記本発明の表面修飾バイオファイバーと溶媒とを含有するものである。前記本発明の表面修飾バイオファイバーを用いることにより、本発明の分散液は優れた分散性を有する。
前記溶媒としては、表面修飾バイオファイバー表面に積層されている前記疎水性ブロック(B)を膨潤させることでバイオファイバー間の距離を維持することができ、本発明の表面修飾バイオファイバー子を分散させやすい傾向にあるという観点から、前記第2のポリマーに対する良溶媒であることが好ましい。本発明において、良溶媒とは、溶解させるポリマーのシータ温度(Flory温度、第2ビリアル係数A2=0となる温度で、ポリマー鎖同士の重なり合いが見かけ上無視できる、すなわち、ポリマー鎖が理想的なガウス鎖としてふるまう温度)が室温(20℃)未満の溶媒を指す。このような溶媒としては、前記第2のポリマーの種類にも依存するものであるため一概にはいえないが、例えば、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフランが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、前記良溶媒中において前記表面修飾バイオファイバーの表面を膨潤させて分散させた後、溶媒を貧溶媒に置換することにより、前記溶媒としては、前記第2のポリマーに対する貧溶媒を用いることもできる。なお、本発明において、貧溶媒とは、前記シータ温度が室温(20℃)以上の溶媒を指す。
また、前記溶媒に代えて、又は前記溶媒に加えて、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、オレフィン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の各種樹脂を用いることにより、本発明の分散液を樹脂組成物とすることもできる。
このような分散液及び樹脂組成物としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、金属ナノ粒子等の金属粒子、界面活性剤、界面活性能を有する高分子、リビングラジカル重合開始剤、リビングラジカル重合触媒等を更に含有していてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例における各測定及び評価はそれぞれ以下の方法により実施した。
<表面観察>
各実施例及び比較例で得られた複合体又は未修飾バイオファイバーをマイカ上にキャストしてPtコーティングした後、走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:S−4800、製造社:日立ハイテクノロジー)を用いて複合体又は未修飾バイオファイバー表面の状態を観察した。また、各複合体又は未修飾バイオファイバーの最長径及び最短径を測定し、アスペクト比(最長径/最短径)及び平均直径(任意の200個の繊維の最短径又は粒子の粒子径の平均)を算出した。なお、前記繊維の最短径は、各バイオファイバーの短軸方向の断面の最大直径とし、断面が円形ではない場合には、その断面の外接円の直径とした。また、前記粒子の粒子径は、各バイオファイバーの粒子の断面の外接円の直径とした。
<GPC測定>
各実施例及び比較例における反応後の反応溶液から遠心分離により回収されたバイオファイバーに付着していない有機ポリマーについて、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC、商品名:Alliance2695システム、製造社:WATERS)を用い、カラム:Shodex製、ガードカラムKF−G、KF−803L;排除限界:7×10D、KF−805L;排除限界:4×10D(D:ダルトン(g mol−1と同じ次元を持つ単位));検出器:示差屈折率計(RI);移動層:テトラヒドロフラン(THF);溶出速度:1mL/min;カラム温度:35℃の条件で溶出を行なった。また、PS標準試料(Polymer Standard Service、PSS−Kit(PS)、M.(ピークトップ分子量):682−1.67×10D)、及び、PMMA標準試料(PSS−Kit(PMMA)、M.:102−9.81×10D)を用いてキャリブレーションを行い、各有機ポリマーの数平均分子量(Mn[g/mol])、重量平均分子量(Mw[g/mol])、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。なお、得られたMn、Mw、及びMw/Mnは、それぞれ、バイオファイバーに付着している有機ポリマーのMn、Mw、及びMw/Mnに相当するものと認められる。
<分散性評価>
各実施例及び比較例で得られた複合体又は未修飾バイオファイバーの20質量%ジクロロメタン(CHCl)分散液及び20質量%テトラヒドロフラン(THF)分散液を調製し、これを20℃において1時間静置した後の分散性を目視により観察し、次の基準:
A:分散性が良好であり、沈殿はみられない
B:沈殿が確認され、ほぼ上清と沈殿とに分かれている
C:分散液を調製してすぐ(5分以内)に沈殿し、上清と沈殿とに分かれている
に従って評価を行った。
<FTIR測定>
各実施例及び比較例で得られた複合体又は未修飾バイオファイバーについて、フーリエ変換赤外分光(FTIR)による測定をKBr錠剤法で行った。先ず、よく乾燥させた各複合体又は未修飾バイオファイバー10mgに対し、1gのKBr粉末を添加して乳鉢を用いて混ぜ、これよりKBrディスク状試料を成形した。次いで、フーリエ変換赤外分光光度計(「FTS−7000」、Digilab社製)を用いて、分解能2cm−1、32回積算の条件で測定を行い、FTIRスペクトルを得た。
(実施例1 RAFT)
先ず、セルロース微結晶懸濁液(Gluconacetobacter(酢酸菌)由来、0.2%(w/v)、シナプテック(株)製)を、15,000rpm、10℃において20分間遠心分離し、沈殿した結晶性のセルロースナノファイバー(水和セルロースナノ結晶)をそのままバイオファイバーとして用いた。なお、前記水和セルロースナノ結晶は繊維状で、直径:10〜30nm(平均直径:20nm)、アスペクト比:30〜300、表面自由エネルギー:47mN/m以上であった。
次いで、アルゴン置換されたグローブボックス内において、2mLジクロロメタン(CHCl、表面自由エネルギー:27.89mN/m)中に7.8mMの2−Cyano−2−propyl dodecyl trithiocarbonate、1.5mMの2,2’−Azobis(4−methoxy−2,4−dimethylvaleronitrile)(V−70)、及び1gの2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA、ポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート(PHEA)の表面自由エネルギー:37.8mN/m)を添加したジクロロメタン溶液を調製し、冷凍庫内(−35℃)に保存しておいた。次いで、同グローブボックス内において、ねじ口試験管に上記で調製した1gのバイオファイバー(水和セルロースナノ結晶)、及び2mLの前記ジクロロメタン溶液を入れて攪拌し、反応溶液を調製した後、これを室温下でVortex攪拌機に設置し、攪拌をしながら重合を行った。重合開始から14時間後に前記反応溶液に3gのスチレン(ST、ポリスチレンの水滴接触角:84°、表面自由エネルギー:34.5mN/m)を添加してさらに24時間反応させた後、反応溶液をグローブボックスから取り出し、酸素リッチにしておいたジクロロメタンを加えて重合を完全に停止させた。次いで、反応後の反応溶液を15,000rmpにおいて30分間遠心して上清を取り除く操作を3回繰り返し、取り除いた上清中にバイオファイバーに付着していない有機ポリマーを、沈殿物としてバイオファイバーに有機ポリマーが付着した繊維状の複合体(表面修飾バイオファイバー)をそれぞれ得た。
(実施例2)
ジクロロメタンに代えてテトラヒドロフラン(THF、表面自由エネルギー:26.4mN/m)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてバイオファイバーに付着していない有機ポリマー及びバイオファイバーに有機ポリマーが付着した繊維状の複合体(表面修飾バイオファイバー)をそれぞれ得た。
(実施例3)
バイオファイバーとして、結晶性のセルロースナノファイバーに代えて繊維状で非結晶性のセルロースナノファイバー(分配クロマトグラフィー用の高純度セルロースパウダー、最長径:20,000nm、表面自由エネルギー:47mN/m以上、Aldrich社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてバイオファイバーに付着していない有機ポリマー及びバイオファイバーに有機ポリマーが付着した繊維状の複合体(表面修飾バイオファイバー)をそれぞれ得た。
(実施例4 ATRP)
先ず、アルゴン置換されたグローブボックス内において、2mLジクロロメタン(表面自由エネルギー:28.9mN/m)中に71mMの2−bromoisobutyrate(EBIB)、141mMのCu(I)Cl、290mMの4,4’−Dinonyl−2,2’−dipyridyl(dNbpy)及び0.5gの2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレートの表面自由エネルギー:37.1mN/m)を添加したジクロロメタン溶液を調製し、冷凍庫内(−35℃)に保存しておいた。次いで、同グローブボックス内において、ねじ口試験管に1gのバイオファイバー(セルロースからなる粒子、平均直径(平均粒子径):2μm、アスペクト比:1、表面自由エネルギー:47mN/m以上)、及び2mLの前記ジクロロメタン溶液を入れて攪拌し、反応溶液を調製した後、これを50℃に加熱しておいたアルミブロックヒーターに設置して重合を開始させた。重合開始から12時間後に前記反応溶液に1.5gのメチルメタクリレート(MMA、ポリメチルメタクリレートの表面自由エネルギー:34.5mN/m)を添加してさらに24時間反応させた後、反応溶液をヒーター並びにグローブボックスから取り出し、酸素リッチにしておいたクロロホルムを加えて重合を完全に停止させた。次いで、反応後の反応溶液を15,000rmpにおいて30分間遠心して上清を取り除く操作を3回繰り返し、取り除いた上清中にバイオファイバーに吸着していない有機ポリマーを、沈殿物としてバイオファイバーに有機ポリマーが吸着された粒状の複合体(表面修飾バイオファイバー)をそれぞれ得た。
(比較例1)
実施例1で用いたバイオファイバー(未修飾バイオファイバー)をそのまま各測定及び評価に用いた。
(比較例2)
実施例3で用いたバイオファイバー(未修飾バイオファイバー)をそのまま各測定及び評価に用いた。
各実施例及び比較例において得られた複合体及び未修飾バイオファイバーについて表面観察を実施した。実施例1、比較例1、実施例3、比較例2のSEM写真をそれぞれ図2〜図5に示す。図2及び図4に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法で得られた複合体(表面修飾バイオファイバー)はいずれも表面が滑らかであり、バイオファイバー(セルロースナノファイバー)の表面が有機ポリマーにより被覆されていることが確認された。また、実施例1で得られた繊維状の複合体のアスペクト比は30〜300の範囲内にあり、平均直径は25nmであった。さらに、実施例2で得られたファイバーのアスペクト比は30〜300の範囲内にあり、平均直径は25nmであった。
また、実施例1において得られたファイバーにおいて、バイオファイバーに付着している有機ポリマーのMn(g/mol)は40,000〜45,000g/molであり、Mw/Mnは約1.7であった。
さらに、実施例4のSEM写真を図8に示す。図8に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法で得られた複合体(表面修飾バイオファイバー)においても表面は滑らかであり、バイオファイバー(セルロース粒子)の表面が有機ポリマーにより被覆されていることが確認された。実施例4において得られた粒状の複合体において、バイオファイバーに付着している有機ポリマーのMn(g/mol)は41,000g/molであり、Mw/Mnは1.55であった。
さらに、実施例1、2及び比較例1において得られた複合体及び未修飾バイオファイバーについてFTIR測定を実施した。測定の結果を図6に示す。図6に示した結果から明らかなように、実施例1及び2で得られた複合体においては1700cm−1付近にPHEAの炭素−酸素二重結合(C=O)由来のピークが、3100〜3000cm−1付近にはベンゼン間の炭素−水素結合(C−H)由来のピークが観察され、バイオファイバーにポリ2−ヒドロキシエチルアクリレート及びポリスチレンが付着していることが確認された。これに対して、比較例1で得られた未修飾バイオファイバーにおいてはいずれのピークも観察されなかった。
また、実施例1で得られた複合体について分散性評価をおこなったところ、いずれの分散液においても分散性及び安定性に優れ、評価はAであった。実施例1で得られた複合体の各分散液を1日静置させた後の状態を示す写真を図7に示す。また、図7には、比較例1〜2で得られた未修飾バイオファイバーの3質量%水分散液を1日静置させた後の状態もあわせて示す。本来、セルロースナノファイバーは図7に示すように水に対しては優れた分散性を示す(比較例1、2)が、本発明のセルロースナノファイバーに有機ポリマーが付着した複合体は、CHClやTHF等の有機溶媒に対しても良好な分散性を示した。
図2〜図8に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法により、バイオファイバーの表面に重合性反応基や有機ポリマーと結合させるための反応基を導入する処理を施すことなく、バイオファイバーの表面を有機ポリマーで均一に覆うことができ、安定で分散性に優れた表面修飾バイオファイバーを得ることが可能であることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、溶媒中での分散性に優れた表面修飾バイオファイバー及びそれを含有する分散液、樹脂組成物、並びに、バイオファイバーの表面に重合性反応基や有機ポリマーとの結合のための反応基を導入する処理を施さなくとも、前記表面修飾バイオファイバーを容易に得ることが可能な表面修飾バイオファイバーの製造方法を提供することが可能となる。
本発明の表面修飾バイオファイバーは、例えば、ゴム等の樹脂材料の充填剤として、従来主に用いられていたシリカに代えて好適に用いることができ、前記シリカを用いた場合に比べて前記樹脂材料の軽量化や強度の向上を図ることが可能となる。
1…重合開始剤、2…第1のモノマー、3…第1のポリマー、4…第2のモノマー、5…第2のポリマー。

Claims (4)

  1. 表面修飾バイオファイバーの製造方法であって、
    バイオファイバー、第1のモノマー、及び溶媒を含有する反応溶液中において、前記第1のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた第1のポリマーを前記バイオファイバーの表面に付着させて、前記第1のポリマーからなり、前記バイオファイバーの表面に配置された親水性ブロック(A)を得る第1の重合工程と、
    前記第1の重合工程の後、前記反応溶液に第2のモノマーを添加し、前記第2のモノマーをリビングラジカル重合せしめると共に得られた第2のポリマーを前記第1のポリマーの伸長末端に重合せしめて、前記第2のポリマーからなり、前記親水性ブロック(A)の外側に積層された疎水性ブロック(B)を得る第2の重合工程とを含み、
    前記バイオファイバー、前記第1のポリマー、前記第2のポリマー及び前記溶媒の表面自由エネルギーが、下記式(1):
    BF>E>E>E ・・・(1)
    [式(1)中、EBFはバイオファイバーの表面自由エネルギーを示し、Eは第1のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは第2のポリマーの表面自由エネルギーを示し、Eは溶媒の表面自由エネルギーを示す。]
    で表される条件を満たすことを特徴とする、
    表面修飾バイオファイバーの製造方法。
  2. 前記バイオファイバーの平均直径が0.3〜10,000nmであり、かつ、アスペクト比が10,000以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面修飾バイオファイバーの製造方法。
  3. 前記バイオファイバーがセルロースからなるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の表面修飾バイオファイバーの製造方法。
  4. 前記バイオファイバーの表面に反応基を導入する工程が含まれないことを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の表面修飾バイオファイバーの製造方法。
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