JP6185956B2 - 長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents
長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6185956B2 JP6185956B2 JP2015083253A JP2015083253A JP6185956B2 JP 6185956 B2 JP6185956 B2 JP 6185956B2 JP 2015083253 A JP2015083253 A JP 2015083253A JP 2015083253 A JP2015083253 A JP 2015083253A JP 6185956 B2 JP6185956 B2 JP 6185956B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- raw material
- walled carbon
- reaction
- catalyst
- carbon nanotubes
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Carbon And Carbon Compounds (AREA)
Description
従来、カーボンナノチューブの製造方法として、化学気相成長法(CVD法)、レーザアブレーション法、およびアーク放電法等が知られている。
導電材料の用途では、カーボンナノチューブ同士の接点抵抗を低減でき、導電性を向上できることから、カーボンナノチューブの繊維長が長いことが好ましい。
しかしながら、反応容器の外部から反応容器の温度を1000〜4000℃に加熱制御する構造は非常に高価である。そのため、低コストに簡便にカーボンナノチューブを製造することは困難である。
特許文献4には、「カーボンナノチューブは例えば、直径は4〜50nm程度であり、長さは1〜10μmオーダである。」ことが記載されている(段落0002)。この文献には一応、数平均長が1.8μm以上の長繊維について記載がある。しかしながら、この文献は品質向上を目的とし、長繊維化を目的としたものではなく、長繊維化に好適な反応条件を開示していない。また、この文献は複層カーボンナノチューブに関し(段落0022)、単層カーボンナノチューブに関するものではない。
特許文献5は、高純度化を目的とし、長繊維化を目的としたものではなく、数平均長1.8μm以上の長繊維化について記載がなく、長繊維化に好適な反応条件を開示していない。また、この文献は複層カーボンナノチューブに関し(段落0048)、単層カーボンナノチューブに関するものではない。
特許文献6は、高純度化を目的とし、長繊維化を目的としたものではなく、数平均長1.8μm以上の長繊維化について記載がなく、長繊維化に好適な反応条件を開示していない。
この文献には、「水は反応に用いられた炭素源を基準として1〜2000重量%、特には30〜1000重量%、好ましくは50〜500重量%、更に好ましくは100〜300重量%の量で添加することができる。」ことが記載されている(請求項3、段落0018)。この水の量は、後記[実施例]の項において、本発明に係る実施例1〜3で使用されている水の量の10〜100倍である。この水の量は過多であり、カーボンナノチューブの長繊維化は難しい(後記[実施例]の項の比較例2を参照)。
特許文献7には、上記方法により、良質のカーボンナノ構造物を高効率に製造することができ、例えば全長7mmというこれまでに例の無いカーボンナノチューブの製造が可能となることが記載されている(要約書)。
特許文献8には、CVD法において、反応雰囲気中に水分を存在させる単層または複層のカーボンナノチューブの製造方法が開示されている(請求項1、請求項5〜7)。
特許文献7、8はCVD法に関し、炭素原料と触媒原料とを1500℃以上の温度に加熱する方法に関するものではない。
合成反応により得られた単層カーボンナノチューブを含む堆積物を捕集し、得られた堆積物に対して63%硝酸水溶液を添加し、85℃で2日間反応(湿式酸化)させた後、遠心分離により単層カーボンナノチューブを沈殿物として回収する。
上記反応後、回収した単層カーボンナノチューブに対して、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム水溶液を添加混合し、超音波分散することで、単層カーボンナノチューブ分散液を得る。この分散液に対して、孔径200nm程度の中空糸膜を用いたクロスフロー濾過を実施する。これにより、副生成物等の不純固形物および繊維長が概ね0.5μm以下の短繊維単層カーボンナノチューブを除去する。
以上のようにして精製および回収された単層カーボンナノチューブをシリコンウエハ上に塗布し、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察する。100本以上の単層カーボンナノチューブの繊維長を測定し、平均値を求める。
数平均長が1.8μm以上の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法であって、
固相または気相の炭素原料と固相または気相の触媒原料とを1500℃以上の温度に加熱し、酸化剤の存在下で反応を実施する反応工程を有するものである。
本発明は、数平均長が1.8μm以上の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法に関する。
一般に、カーボンナノチューブは、複数のカーボンナノチューブが束になったバンドルの形態で得られる。本発明の製造方法では、数平均長1.8μm以上の長繊維単層カーボンナノチューブが束になったバンドルの形態で得られる。
本発明の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法は、
固相または気相の炭素原料と固相または気相の触媒原料とを1500℃以上の温度に加熱し、酸化剤の存在下で反応を実施する反応工程を有する。
固相または気相の炭素原料と固相または気相の触媒原料とを1500℃以上の温度に加熱し、反応を実施する方法としては上記の他、電気炉を用いる方法およびプラズマを用いる方法がある。
上記の中でも、カーボンナノチューブの結晶性および収率の観点から、アーク放電法が特に好ましい。
以下、アーク放電法を例とし、図面を参照して、本発明に係る一実施形態の反応装置とこれを用いた反応工程について、説明する。
図1は、本実施形態の反応装置の模式断面図である。
図2は、設計変更例を示す模式断面図である。
ヘリウムガス、ネオンガス、およびアルゴンガス等の希ガス;
水素;
窒素;
アンモニア;
およびこれらの組合せ等が挙げられる。
図中、符号V1、V2はバルブであり、符号P1は圧力計である。
一方(図示左方)のアーク放電電極21は、反応容器10の外部から内部に延びて設けられた金属ロッド(電極支持材)23の先端部に取り付けられている。
同様に、他方(図示右方)のアーク放電電極22は、反応容器10の外部から内部に延びて設けられた金属ロッド(電極支持材)24の先端部に取り付けられている。
図中、符号11、12は、反応容器10において、一対の金属ロッド23、24を保持する電極保持部である。
電極保持部11、12は、反応容器10の胴部10Bに設けられている。
他方の金属ロッド24については、手動にて、図示矢印方向(図示左右方向)に平行移動させることが可能である。
上記構成により一対の金属ロッド23、24の位置が調整され、一対のアーク放電電極21、22の離間距離が調整される。
一対のアーク放電電極21、22の離間距離は特に制限なく、5mm程度が好ましい。
一対のアーク放電電極21、22間の電極離間部およびその近傍が、アーク放電場となる。
一対のアーク放電電極21、22のうち少なくとも一方は、グラファイト(黒鉛)およびコークス等の固相の炭素原料を含むことができる。
一対のアーク放電電極21、22のうち少なくとも一方は、タングステン等の非炭素原料を含むことができる。
一対のアーク放電電極21、22のうち少なくとも一方は、固相の触媒原料を含むことができる。
一対のアーク放電電極21、22のうち少なくとも一方に添加可能な触媒原料は、硫黄、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、白金、またはこれらの組合せ等を含むことが好ましい。
上記触媒原料は、1種または2種以上の遷移金属を含むことが好ましい。
触媒原料に含まれる遷移金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、およびこれらの組合せ等が好ましい。
反応開始に先立ち、一対のアーク放電電極21、22の離間距離を好適な範囲内に調整しておく。一対のアーク放電電極21、22の離間距離は例えば、5mm程度が好ましい。
ロータリーポンプ13を用いて反応容器10内を真空排気した後、ガス供給手段14より反応容器10内に不活性ガスを含むガスを導入する。この状態で、一対のアーク放電電極21、22間に電流および電圧を印加すると、アーク放電が生じる。アーク放電により発生した熱により、一対のアーク放電電極21、22から炭素原料と触媒原料とが蒸発する。
反応場に供給された触媒原料は、原子化され冷却される過程において、単層カーボンナノチューブCNTが成長する。
固体炭素をアーク放電により昇華する場合には、アーク放電場の最高温度は3500℃以上が好ましい。これによって、触媒原料の分解と原子状蒸気の生成が効率良く進む。
電極離間部から離れる程、温度は降下する。この温度降下の度合は、ガスの流入条件に影響を受ける。温度の降下に合わせて触媒の原子状蒸気が凝縮して触媒ナノ粒子NPの生成が効率良く進み、単層カーボンナノチューブCNTの合成に適した粒径の触媒ナノ粒子NPが効率良く生成されるとともに、触媒ナノ粒子NPによる炭素原料の分解と単層カーボンナノチューブCNTの生成が始まる。
炭素原料と触媒ナノ粒子NPとの反応温度は、1000〜1500℃が好ましい。
この場合、ガス供給手段14により、不活性ガスをキャリアガスとして、反応場に炭素原料を気相で供給することができる。
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、エチレン、プロピレン、およびアセチレン等の非芳香族炭化水素;
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、エチルベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、およびアントラセン等の芳香族炭化水素;
フォルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メタノール、エタノール、一酸化炭素、および二酸化炭素等の炭素および酸素含有有機化合物;
およびこれらの組合せ等が挙げられる。
常温で液体の炭素原料は、蒸気化して使用する。
キャリアガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、およびアルゴンガス等の希ガス、水素、窒素、アンモニア、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
この場合、ガス供給手段14により、不活性ガスをキャリアガスとして、反応場に触媒原料を気相で供給することができる。
なお、炭素原料と触媒原料の双方を気相で反応場に供給する場合、気相の炭素原料を供給するガス供給管と、気相の触媒原料を供給するガス供給管とを別個に用意し、これらの原料が反応場に供給される前に互いに混じらないようにする。
上記触媒原料は、1種または2種以上の遷移金属を含むことが好ましい。
触媒原料に含まれる遷移金属としては、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、およびこれらの組合せ等が好ましい。
蒸気化が容易なことから、触媒原料は、遷移金属および1つ以上の配位子を含む有機金属化合物であることが好ましい。
上記配位子は、C、H、およびOの元素のみを含み、合成を阻害せず分解が容易な単純な分子であることが好ましい。
上記配位子は、カルボン酸塩、アルコキシド、ケトン、ジケトン、アミン、アミド、アルキル、およびアリルから選ばれる1つ以上の官能基を有していてもよい。
好ましい配位子としては、メチル、シクロヘキシル、カルボニル、シクロペンタジエニル、シクロオクタジエン、エチレン、ベータ− ジケトン、ホスフィン、有機リン配位子、ポリエーテル、ジチオカルバメート、大環状配位子(例えば、クラウンエーテル等) 、ベンゼン配位子、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
酸化剤としては特に制限されず、酸素、水、二酸化炭素、一酸化炭素、過酸化水素、メタノール、エタノール、および、イソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種の酸化剤が好ましい。
上記の中でも、反応性の観点から、水が特に好ましい。
なお、実際の反応場では、水は水蒸気またはOH−イオン等の形態で存在する。
酸化性ガスおよび/または蒸気化酸化剤は、ガス供給手段14により、不活性ガスをキャリアガスとして、反応場に供給することができる。
供給ガス中の酸化性ガス濃度は、酸化性ガスと不活性ガスの混合比により調整できる。これらのガスの混合比は、マスフローコントローラ(mass flow controller、MFC)およびニードルバルブ流量計等の公知のガス流量制御装置を用いて、調整できる。
上記のようにして得られた第1の酸化剤添加不活性ガスを供給ガスとして反応場にそのまま供給することができる。
好ましくは、第1の酸化剤添加不活性ガスにさらに不活性ガスを添加混合して第2の酸化剤添加不活性ガスを得、これを供給ガスとして反応場に供給する。この場合、供給ガス中の酸化剤濃度を容易に調整することができる。
酸化剤として水を用いる場合、第1の酸化剤添加不活性ガスまたは第2の酸化剤添加不活性ガス中の水分濃度は、露点計等を用いて測定することができる。
固相の炭素原料に添加可能な酸化剤としては、水、メタノール、およびエタノール等が挙げられる。
アーク放電電極の水分除去方法としては特に制限されず、加熱乾燥、減圧乾燥、および減圧加熱乾燥が好ましく、減圧加熱乾燥がより好ましい。12時間以上の減圧加熱乾燥が特に好ましい。
水蒸気含有ガスとしては、水蒸気添加不活性ガスが好ましい。
予め乾燥し水分を除去した固相のアーク放電電極と水蒸気含有ガスとの接触方法は特に制限されない。例えば、予め乾燥し水分を除去したアーク放電電極を、水蒸気含有ガスで満たされ、水分濃度が調整された空間内に載置する方法が挙げられる。この操作は、反応容器10とは別に用意された容器等を用いて実施してもよいし、反応容器10内にアーク放電電極をセットした状態で実施することもできる。
アーク放電電極に対する水添加量の調整方法は特に制限されない。例えば、水蒸気含有ガス中の水分濃度および/またはアーク放電電極と水蒸気含有ガスとの接触時間により、アーク放電電極に対する水添加量を調整することができる。
本発明の製造方法では、酸化剤によって触媒ナノ粒子NPの表面に堆積する不純物を酸化除去し、不純堆積物による触媒ナノ粒子NPの失活を抑制することができる。
特に酸化剤は炭素との反応性が高く、触媒ナノ粒子NPの表面に堆積するグラファイトおよび/またはアモルファスカーボン等の炭素含有副生成物を効果的に酸化除去することができる。
C + O2 → CO2、
C + H2O → CO + H2
触媒原料の量が少なくなる程、生成される触媒ナノ粒子NPの数が少なくなり、個々の触媒ナノ粒子NPに供給される炭素原料の量が増加して、長繊維成長しやすくなると考えられる。ただし、触媒原料の量が少なくなる程、生成される触媒ナノ粒子NPの数が少なくなるので、収率は低下すると考えられる。
反応場中の炭素原料と触媒原料との合計量を100質量%としたとき、
触媒原料の量は好ましくは9質量%以下である。
単層カーボンナノチューブを効果的に長繊維化でき、かつ、良好な収率が得られることから、
反応場中の炭素原料と触媒原料との合計量を100質量%としたとき、
触媒原料の量はより好ましくは3〜9質量%であり、特に好ましくは3〜5質量%である。
反応場中の炭素原料の量に対して酸化剤の量が過少あるいは過多では、単層カーボンナノチューブを効果的に長繊維化できない。
酸化剤の量が過少では、触媒ナノ粒子NPの表面に堆積するグラファイトおよび/またはアモルファスカーボン等の炭素含有副生成物の酸化除去効果による長繊維化の効果が不充分となると考えられる。
酸化剤の使用量が過多では、触媒ナノ粒子NPの表面が酸化剤で過度に酸化され、触媒活性が低下すると考えられる。
単層カーボンナノチューブCNTを効果的に長繊維化できることから、
反応場中の炭素原料の量を100質量%としたとき、
反応場に、酸化剤としての水を、好ましくは0.001〜0.05質量%、より好ましくは0.005〜0.02質量%、特に好ましくは0.005〜0.01質量%存在させる。
本明細書において、「反応場に酸化剤として水を存在させる」とは、酸化剤として水を用い、これを反応場に水蒸気またはOH−イオン等の形態で存在させることを指し、反応場中の水の実際の存在形態に関係なく、反応場中の量は水の量で規定してある。
単層カーボンナノチューブCNTを効果的に長繊維化できることから、
公知のヒータ等の加熱手段(図示略)を用いて放電部の装置外壁を加熱することが好ましい。
例えば、放電部の装置外壁を100〜800℃の温度に調温することが好ましい。
放電部の装置外壁を上記のように加熱することで、反応場の温度(反応容器10の温度)が単層カーボンナノチューブCNTの合成に適した温度よりも低下することを抑制し、反応場の温度を好適な範囲に保持することができる。これにより、単層カーボンナノチューブCNTをより効果的に長繊維化することができる。
本実施形態では、放電部の装置外壁は、反応容器10の外壁である。
反応容器10の胴部10Bの周りにヒータ等の加熱手段50を設けて、放電部の装置外壁を100〜800℃の温度に加熱することで、反応場の温度を好適な範囲に保持し、単層カーボンナノチューブCNTをより効果的に長繊維化することができる。
<捕集工程>
反応容器10内において放電場の下流側で、触媒ナノ粒子NPおよび単層カーボンナノチューブCNTを含む堆積物を捕集することができる。堆積物は、装置内壁に堆積するため、ブラシ等を用いて捕集することができる。
捕集された単層カーボンナノチューブCNTを含む堆積物は、公知方法により精製することができる。
精製方法は特に制限されず、単層カーボンナノチューブCNTを含む堆積物に対して60〜70質量%程度の硝酸水溶液を添加し、80〜90℃で1〜3日間反応(湿式酸化)させる方法等が好ましい。
上記反応後、回収した単層カーボンナノチューブに対して、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム水溶液を添加混合し、超音波分散することで、単層カーボンナノチューブ分散液を得ることができる。この分散液に対して、孔径200nm程度の中空糸膜を用いたクロスフロー濾過を実施することができる。これにより、副生成物等の不純固形物および繊維長が概ね0.5μm以下の短繊維単層カーボンナノチューブを除去することができる。
本発明の製造方法によれば、硝酸水溶液を用いた精製および濾過回収後において、例えば、数平均長が1.8〜3.5μmの長繊維単層カーボンナノチューブCNTを製造することができる(後記[実施例]の項の表2を参照)。
本発明の製造方法では、反応場に酸化剤を存在させることで、単層カーボンナノチューブCNTの長繊維化が可能である。
本発明の製造方法では、反応場に酸化剤を存在させるだけで長繊維化が可能であるので、従来のアーク放電装置等の製造装置を変更することなく、低コストかつ簡便に長繊維単層カーボンナノチューブCNTを製造することができる。
本発明の製造方法により製造される単層カーボンナノチューブCNTは長繊維であるので、導電材料として使用する場合、カーボンナノチューブ同士の接点抵抗が低く、良好な導電性を発現することができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
図1に示したのと同様の反応装置(アーク放電装置)を用意し、固相の炭素原料と固相の触媒原料とを用い、アーク放電法により単層カーボンナノチューブの製造を実施した。
陰極として、直径8mm長さ200mmの純グラファイト棒を用意した。
上記の陽極と陰極とを反応装置(アーク放電装置)にセットした。
陽極と陰極との離間距離は5mmとした。
反応容器内をロータリーポンプにより排気した後、ガス供給手段よりアーク放電場およびその近傍に上記第2の水蒸気添加ヘリウムガス(水分濃度600ppm)を40sccmで供給した。これによって、反応容器内に水を1.17×10−5g/minの速度にて導入した。
実施例1では、反応場中の炭素原料の量を100質量%としたときの酸化剤としての水の量は0.006質量%であった。
実施例1では、アーク放電を用いており、放電場の最高温度は2000〜4000℃の範囲内である。
装置内壁に堆積した堆積物をブラシを用いて回収した。
以上のようにして得られた単層カーボンナノチューブ分散液の走査型プローブ顕微鏡写真を図3に示す。数平均長が1.8μm以上の長繊維単層カーボンナノチューブが得られている様子が確認された。
繊維長(数平均長)を測定したところ、2.7μmであった。
ヒータを用いて放電部の装置外壁(反応容器の胴部の外壁)を250℃に調温した以外は実施例1と同様にして、単層カーボンナノチューブの合成、精製、および回収を実施した。
精製および回収後の単層カーボンナノチューブの繊維長(数平均長)を測定したところ、3.2μmであった。
陽極中の触媒原料の濃度(陽極中の触媒量)を15質量%とし、酸化剤を用いずに合成を行った以外は実施例1と同様にして、単層カーボンナノチューブの合成、精製、および回収を実施した。
比較例1では、反応場中の炭素原料と触媒原料との合計量を100質量%としたときの触媒原料の量は、陽極中の触媒原料の濃度(陽極中の触媒量)に相当し、15質量%であった。
比較例1では、供給ガスとして第2の水蒸気添加ヘリウムガスの代わりにヘリウムガスを用いた。水分濃度は5ppm未満であった。
比較例1では、反応場中の炭素原料の量を100質量%としたときの酸化剤としての水の量は0質量%であった。
精製および回収後の単層カーボンナノチューブの繊維長(数平均長)を測定したところ、1.7μmであった。
水の供給速度を1.17×10−4g/minとして合成を行った以外は実施例1と同様にして、単層カーボンナノチューブの合成、精製、および回収を実施した。
比較例2では、反応場中の炭素原料と触媒原料との合計量を100質量%としたときの触媒原料の量は、陽極中の触媒原料の濃度(陽極中の触媒量)に相当し、4.5質量%であった。
比較例2では、反応場中の炭素原料の量を100質量%としたときの酸化剤としての水の量は0.06質量%であった。
精製および回収後の単層カーボンナノチューブの繊維長(数平均長)を測定したところ、1.5μmであった。
実施例1、2および比較例1、2の各例において、主な製造条件と評価結果を表1に示す。
表1中、10−5は「E−05」、10−4は「E−04」と表記してある(後記表5についても、同様。)。
ただし、比較例2のように、酸化剤である水の量が過多では、単層カーボンナノチューブの長繊維化の効果が見られなかった。酸化剤の使用量が過多では、触媒ナノ粒子NPの表面が酸化剤で過度に酸化され、触媒活性が低下すると考えられる。
陽極中の触媒原料の量(陽極中の触媒量)と第2の水蒸気添加ヘリウムガス中の水分濃度との組合せを変更する以外は実施例1と同様にして、単層カーボンナノチューブの合成、精製、および回収を実施した。
陽極中の触媒原料の量(陽極中の触媒量)は、3質量%、4.5質量%、および10質量%の3条件とした。
第2の水蒸気添加ヘリウムガス中の水分濃度は、150ppm、600ppm、および1000ppmの3条件とした。
3条件×3条件の組合せ、すなわち計9条件で単層カーボンナノチューブの合成を実施した。
陽極中の触媒量が3質量%(表5中、「Cat.3%」と略記。)のときの、アーク放電時の陽極材料中の炭素原料の蒸発速度は0.182g/minであった。
陽極中の触媒量が4.5質量%(表5中、「Cat.4.5%」と略記。)のときの、アーク放電時の陽極材料中の炭素原料の蒸発速度は0.180g/minであった。
陽極中の触媒量が10質量%(表5中、「Cat.10%」と略記。)のときの、アーク放電時の陽極材料中の炭素原料の蒸発速度は0.170g/minであった
第2の水蒸気添加ヘリウムガス中の水分濃度[ppm]、反応場への水供給量[g/min]、および、各触媒量条件における反応場中の炭素原料に対する水の量[質量%]の関係は、表5に示すとおりであった。
各組合せ条件について、精製および回収後の単層カーボンナノチューブの繊維長(数平均長)を測定した。評価結果を表2及び図4Aに示す。
各組合せ条件について、精製および回収後の単層カーボンナノチューブの収率を表3及び図4Bに示す。
各組合せ条件について、精製および回収後の単層カーボンナノチューブの水分散液をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗工し、乾燥し、さらにメタノールを用いた洗浄により界面活性剤を除去することで、透明導電膜を得た。
得られた透明導電膜について、抵抗値をロレスタ(三菱化学社製)を用いて測定し、透過率をヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH-5000」)を用いて測定し、抵抗値150Ω/□での透過率を求めた。評価結果を表4及び図4Cに示す。
実施例3では、いずれの条件においても、酸化剤である水の存在下で、単層カーボンナノチューブの合成を実施した。
表3および図4Bに示すように、触媒原料の量以外の条件が同一の条件においては、触媒原料の量が少なくなる程、収率が低下する傾向があった。
上記評価結果から、以下の点が示唆された。
単層カーボンナノチューブを効果的に長繊維化できることから、
反応場中の炭素原料と触媒原料との合計量を100質量%としたとき、
触媒原料の量は好ましくは9質量%以下である。
単層カーボンナノチューブを効果的に長繊維化でき、良好な収率が得られることから、
反応場中の炭素原料と触媒原料との合計量を100質量%としたとき、
触媒原料の量はより好ましくは3〜9質量%であり、特に好ましくは3〜5質量%である。
反応場中の炭素原料の量に対して酸化剤の使用量が過少あるいは過多では、単層カーボンナノチューブを効果的に長繊維化できないことが分かった。
上記評価結果から、以下の点が示唆された。
単層カーボンナノチューブを効果的に長繊維化できることから、
反応場に、酸化剤としての水を、0.001〜0.05質量%存在させることが好ましく、0.005〜0.02質量%存在させることがより好ましく、0.005〜0.01質量%存在させることが特に好ましい。
単層カーボンナノチューブの数平均長が長くなる程、単層カーボンナノチューブ同士の接点抵抗が低減され、導電率が向上する傾向がある。したがって、抵抗値が同じ条件(=導電率が同じ条件)であれば、透明導電膜に使用する単層カーボンナノチューブの量が少なくなり、透過率が向上する。
10 反応容器
10A 底部
10B 胴部
10C 頭部
11、12 電極保持部
13 ロータリーポンプ
14 ガス供給手段
21、22 アーク放電電極
23、24 金属ロッド
50 加熱手段
P1 圧力計
V1、V2 バルブ
Claims (6)
- 数平均長が1.8μm以上の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法であって、
固相または気相の炭素原料と固相または気相の触媒原料とを1500℃以上の温度に加熱し、酸化剤の存在下で反応を実施する反応工程を有し、
前記反応工程においては、前記酸化剤として水を用い、反応場中の前記炭素原料の量を100質量%としたとき、前記反応場に、前記酸化剤としての水を0.001〜0.05質量%存在させて、アーク放電法により前記反応を実施し、
前記反応工程の後にさらに中空糸膜を用いて単層カーボンナノチューブ分散液をクロスフロー濾過する濾過工程を有する、
長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法。 - 前記反応工程と前記濾過工程との間にさらに、精製工程を有する、
請求項1に記載の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法。 - 反応場中の前記炭素原料と前記触媒原料との合計量を100質量%としたとき、
前記触媒原料の量を9質量%以下とする、
請求項1または2に記載の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法。 - 反応場に前記酸化剤を気相で供給する、
請求項1〜3のいずれかに記載の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法。 - 固相の前記炭素原料に前記酸化剤が添加された酸化剤入り炭素原料を用いて、前記反応工程を実施する、
請求項1〜3のいずれかに記載の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法。 - アーク放電装置を用いて前記反応工程を実施し、
放電部の装置外壁を100〜800℃の温度に調温する、
請求項1〜5のいずれかに記載の長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015083253A JP6185956B2 (ja) | 2015-04-15 | 2015-04-15 | 長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015083253A JP6185956B2 (ja) | 2015-04-15 | 2015-04-15 | 長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016204167A JP2016204167A (ja) | 2016-12-08 |
JP6185956B2 true JP6185956B2 (ja) | 2017-08-23 |
Family
ID=57486778
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015083253A Expired - Fee Related JP6185956B2 (ja) | 2015-04-15 | 2015-04-15 | 長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6185956B2 (ja) |
Family Cites Families (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3602092B2 (ja) * | 2000-11-21 | 2004-12-15 | 双葉電子工業株式会社 | ナノカーボンの製造方法、ナノカーボンの製造装置、ナノカーボンのパターン化方法 |
KR20050052885A (ko) * | 2003-12-01 | 2005-06-07 | (주)케이에이치 케미컬 | 물을 사용하는 고순도 탄소나노튜브의 제조 방법 |
JP2005281110A (ja) * | 2004-03-30 | 2005-10-13 | Jigyo Sozo Kenkyusho:Kk | 機能性ナノカーボンの製造方法、及び製造装置 |
JP5427538B2 (ja) * | 2009-10-05 | 2014-02-26 | 本荘ケミカル株式会社 | アーク放電法による単層カーボンナノチューブ製造用触媒とその利用 |
-
2015
- 2015-04-15 JP JP2015083253A patent/JP6185956B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2016204167A (ja) | 2016-12-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Rashidi et al. | Single-wall carbon nanotubes synthesized using organic additives to Co–Mo catalysts supported on nanoporous MgO | |
Mubarak et al. | An overview on methods for the production of carbon nanotubes | |
KR101710603B1 (ko) | 카본 나노튜브 | |
Awasthi et al. | Synthesis of carbon nanotubes | |
EP2873457B1 (en) | Catalyst for preparing chiral selective and conductive selective single-walled carbon nanotube, preparation method and application thereof | |
JP2001348215A (ja) | カーボンナノチューブおよび/またはフラーレンの製造方法、並びにその製造装置 | |
JP2011148689A (ja) | カーボンナノチューブから成る集合体および糸条体の製造方法 | |
JP2006306636A (ja) | ナノカーボン材料の精製方法及びナノカーボン材料 | |
JP4443423B2 (ja) | 単層カーボンナノチューブの製造方法および製造装置 | |
JP6492598B2 (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP4706852B2 (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP2007254271A (ja) | 炭素材料の製造方法、炭素材料および電子素子の製造方法 | |
Das et al. | Carbon nanotubes synthesis | |
KR20140009180A (ko) | 카본 나노 튜브의 제조 방법 | |
JP5534456B2 (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP2008169092A (ja) | カーボンナノチューブの製造方法 | |
Bhattacharjee et al. | Chemical vapour deposition (CVD) technique and the synthesis of carbon nanomaterials (CNMs) | |
JP6185956B2 (ja) | 長繊維単層カーボンナノチューブの製造方法 | |
JP6847412B2 (ja) | カーボンナノチューブ集合体製造用触媒基材とカーボンナノチューブ集合体の製造方法 | |
JP2008195550A (ja) | タングステン酸化物ファイバーおよびその製造方法 | |
JP5036564B2 (ja) | プレートレット型スリット気相法炭素繊維の製造方法 | |
JP6623512B2 (ja) | 炭素ナノ構造体集合物およびその製造方法 | |
JP2015151316A (ja) | カーボンナノチューブの製造装置と製造方法 | |
RU2389550C1 (ru) | Способ получения нанесенного катализатора и способ получения углеродных нанотруб | |
US20190359488A1 (en) | Apparatus and methods of forming solid carbon |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20170207 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20170308 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20170725 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20170728 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6185956 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |