JP6181022B2 - フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、フィルム、特に生体の内部に留置して用いるフィルムに関するものである。
生体分解性材料が原料とされた多孔質フィルムは、細胞を培養する足場材料である細胞培養基材や、創傷被覆材、癒着防止材、止血材等の様々な用途への応用が検討されている。特に創傷被覆材、癒着防止材、止血材の医療用途においては、多孔質フィルムは、表面の微細な凹凸構造を利用して毛管力により生体内の例えば患部へ接着することが可能である。このため、従来行われている接着剤を用いて患部へ接着する方法や、縫合といった施術に比べて、患者のからだに対して低負荷で、施術時の作業性が向上する等の点で、多孔質フィルムは医療用フィルムとして期待されている。例えば、特許文献1には、膜状の癒着防止材、すなわち癒着防止膜に使用することができる多孔質フィルムとして、厚み方向に非貫通な複数の孔が一方のフィルム面に形成されることによりハニカム構造とされ、生体分解性材料で形成したフィルムが記載されている。
また、酸化セルロースから形成されたスポンジやニット(編み物)である癒着防止材が知られている。さらに、例えば特許文献2,3は、ゼラチン等の癒着防止効果をもつ素材を、生体分解性ポリマーから形成された補強材で支持した多層構造の癒着防止膜を提案している。
国際公開第2004/089434号 特表2009−506861号公報 特開2004−209228号公報
しかしながら、上記のような酸化セルロースから形成されたスポンジやニットを生体の内部で利用した場合には、癒着が起きる場合が依然としてある。また、特許文献1に記載される厚み方向に非貫通な複数の孔が一方のフィルム面に形成され、生体分解性材料で形成したフィルムは、癒着防止膜として使用した際に、他方のフィルム面である平滑面への細胞の接着が促進され、このフィルムを介して癒着が強まる場合がある。特許文献2,3は、生体の内部の患部へフィルムを接着して使用した場合に、経時的に患部からずれてしまい、所期の位置に留まらない場合がある。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためのものであり、生体内の接着対象部位へ位置ずれが抑制されながら継続して接着し、癒着を抑制することができるフィルムを提供することを目的とする。
本発明のフィルムは、一方のフィルム面に開口した複数の空隙に水を吸って保持し第1細胞群に接着するための毛管力を有し、生体分解性ポリマーから形成されている接着層と、他方のフィルム面を成し、第1細胞群と異なる第2細胞群と、接着層との接着を阻害する接着阻害層とを備え、第1細胞群と第2細胞群とを一方のフィルム面側と他方のフィルム面側とに独立させるために空隙がフィルムの厚み方向で非貫通に形成されており、接着阻害層は、リン脂質、ポリエチレングリコール誘導体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリスコリンポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ステロールの少なくともいずれかひとつから形成されていることを特徴として構成されている。
接着阻害層は、接着層の一方のフィルム面とは反対側の面を覆って空隙をフィルムの厚み方向で非貫通にすることが好ましい。
本発明のフィルムは、一方のフィルム面に開口した複数の空隙に水を吸って保持し第1細胞群に接着するための毛管力を有し、生体分解性ポリマーから形成されている接着層と、他方のフィルム面を成し、第1細胞群と異なる第2細胞群と、接着層との接着を阻害する接着阻害層とを備え、第1細胞群と第2細胞群とを一方のフィルム面側と他方のフィルム面側とに独立させるために空隙がフィルムの厚み方向で非貫通に形成されており、他方のフィルム面における水の接触角は40°以下であることを特徴として構成されている。
生体分解性ポリマーは、PLA、PLAを含む共重合体、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレートおよびこれらを含む共重合体であることが好ましい。
前記一方のフィルム面における前記空隙の開口の径は100nm以上20μm以下の範囲内であり、前記空隙の深さは100nm以上20μm以下の範囲内であり、前記一方のフィルム面における開口率は20%以上80%以下の範囲内であることが好ましい。
接着層は、一方のフィルム面における空隙の開口によりハニカム構造とされていることが好ましい。
本発明のフィルムの製造方法は、一方のフィルム面に開口した複数の空隙に水を吸って保持し第1細胞群に接着するための毛管力を有する接着層と、他方のフィルム面を成し、第1細胞群と異なる第2細胞群と、接着層との接着を阻害する接着阻害層とを有し、第1細胞群と第2細胞群とを一方のフィルム面側と他方のフィルム面側とに独立させるために空隙が厚み方向で非貫通に形成されたフィルムの製造方法であり、生体分解性ポリマーが溶媒に溶解した溶液を支持体の上に流延することにより流延膜を形成する工程と、流延膜に結露させ、溶媒と結露で生じた水滴とを蒸発させることにより、支持体上に、接着層を形成するための接着フィルム材を形成する工程と、フィルム材を支持体から剥離する工程と、フィルム材の支持体から剥がされた剥離面に、接着阻害層を形成する工程と、を有し、接着阻害層を形成する工程は、リン脂質、ポリエチレングリコール誘導体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリスコリンポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ステロールの少なくともいずれかひとつを含む素材が溶媒に溶けたあるいは分散した塗布液を、接着フィルム材に塗布する塗布工程を有することを特徴とする。

本発明によれば、生体内の接着対象部位へ位置ずれが抑制されながら継続して接着し、癒着を抑制することができる。
第1実施形態であるフィルムの平面図である。 図1のII−II線に沿う断面図である。 図1のIII−III線に沿う断面図である。 開口率の求め方を説明する説明図である。 フィルムの製造フローの説明図である。 結露工程の説明図である。 結露工程の説明図である。 第2実施形態であるフィルムの断面図である。 第3実施形態であるフィルムの平面図である。 図9のX−X線に沿う断面図である。 フィルムの製造フローの説明図である。
<第1実施形態>
図1〜図3において、フィルム10は、接着層11と接着阻害層12とを備える。フィルム10は、一方のフィルム面10aを構成する接着層11を、生体内の接着対象部位としての第1細胞群に接着させて用いる。第1細胞群は、例えば、創傷部位等の患部や、手術により縫合した縫合部及びその周辺部等である。第1細胞群に接着されている間のフィルム10は、他方のフィルム面10bを構成する接着阻害層12が、第1細胞群とは異なる第2細胞群側へ向く。
複数の細胞の集合体であり、互いに異なる第1細胞群と第2細胞群とは、例えば、生体内において、互いに離間しているものであってもよいし、向かい合った状態で密着していても互いに分離可能なもの、あるいは隙間の有無に関わらず互いに隣り合って位置しているものでもよい。したがって、第1細胞群と第2細胞群とは、互いに異なる組織のものであってもよいし、同じ組織のものであってもよい。
フィルム10の厚みT10は、100nm以上40μm以下の範囲内であることが好ましい。40μm以下の厚みT10とすることで、臓器など曲面の動きに対しての追従性が向上する。また、100nm以上の厚みT10とすることで取り扱いやすい。
接着層11は、第1細胞群に接着するためのものである。なお、本明細書において「生体内」とは、消化器系の器官の内部も含める。接着層11は、第1細胞群に接着するための毛管力をもつ。接着層11は、一方のフィルム面10aに開口している複数の空隙としての孔15に、第1細胞群の水を吸って保持して第1細胞群に接着する。水は、第1細胞群に存在する水であり、血液等の体液も含む。
複数の孔15は、一方のフィルム面10aに沿ってマトリクス状に配列されている。各孔15は、その大きさ、形状が一定であり、一方のフィルム面10aにおける孔15の開口の径(以下、単に孔の径と称する)Dの大きさ、形状も一定である。このようなフィルム10は、一方のフィルム面10aに垂直な方向から見たときに、任意の1つの孔15を中心にした六角形の各頂点に周囲の6個の孔15が配された状態に、各孔15が密に配列されている。これによりフィルム10は、蜂の巣状となるハニカム構造となっている。
ハニカム構造は、孔15の開口の形状や、孔15の一方のフィルム面10aに平行な断面の形状が6角形である必要はない。この例では、孔15の開口の形状は円形となっている。一方のフィルム面10aの単位面積当たりの孔15の密度や隣り合う孔15同士の距離等に応じて孔の開口や孔15の断面の形状は例えば丸みを帯びた略6角形や略8角形等になる場合もあり、ハニカム構造とはこのような態様も含む。孔15の配列は、上記のものに限定されない。任意の1つの孔15の周囲に3〜5個、あるいは7個以上の孔15が配されてもよく、孔15が正方配列されてもよい。
各孔15は、図2及び図3に示すように、一方のフィルム面10aに窪みとして形成され、接着層11において厚み方向Xで貫通していない。孔15が厚み方向Xにおいて非貫通である接着層11により、フィルム10は一方のフィルム面10a側の第1細胞群と、他方のフィルム面10b側の第2細胞群とを、フィルム10を介して隔て、独立させる。
接着層11において隣り合う孔15と孔15との間には図2及び図3に示すように隔壁16があり、各孔15は独立している。しかし、後述のように水滴が流延膜中に形成された際の大きさや密度等によっては、隔壁16がなく、フィルム面に沿う連通路がフィルム内部に形成されていてもよい。
接着層11は、生体分解性ポリマーから構成され、本実施形態ではポリ乳酸(PLA)を用いている。本明細書において生体分解性とは、生体の内部で分解する性質と、生体の内部で溶解する性質と、生体に吸収される性質とを含む。つまり、生体分解性ポリマーは、PLAに限定されず、生体の内部で分解するポリマーと生体の内部で溶解するポリマーと生体に吸収されるポリマーとの少なくともいずれかひとつであればよい。生体の内部で分解する、生体の内部で溶解する、生体に吸収されるとは、例えば、その素材をフィルム状や糸状に加工して体内に埋入した場合に、加水分解もしくは酵素などの作用により、分解物が生体内で代謝・排泄されることである。生体分解性ポリマーとしてPLA以外のものとしては、例えば、PLAを含む共重合体や、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレートおよびこれらを含む共重合体等であってもよい。これらの生体分解性ポリマーは、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
接着層11を後述のように水滴の結露を利用したいわゆる結露法で形成する場合には、接着層11のための生体分解性ポリマーは、水滴の形成という観点で、疎水性ポリマーとすることが好ましく、疎水性ポリマーと生体分解性ポリマーである両親媒性化合物とを併用してもよい。上記の各生体分解性ポリマーは、いずれも疎水性ポリマーである。また、生体分解性ポリマーである両親媒性化合物としては、例えばリン脂質が好ましい。
接着層11は、水(血液等の体液も含む)との接触によりゲル化する成分(以下、ゲル化成分と称する)を含んでいてもよいが、含まない方が好ましい。ゲル化成分を非含有とすることにより、水の存在下での取り扱い性、特に生体内での貼り直し性が向上する。貼り直し性とは、フィルムを一旦貼り付けた後に、剥がして再使用することが可能、または貼り付けたままフィルムを滑らせてずらすことで貼付位置を変えることが可能な性質である。
接着層11は、一方のフィルム面10aにおいて多孔質構造とされている。ここでの多孔質構造は、本実施形態における各孔15のような空隙を囲んで連続構造を成しており、一方のフィルム面10aにおいて空隙が互いに独立している。このような多孔質構造は、一方のフィルム面10aにおける径Dが20μm以下である微細な空隙を多数備えることが好ましい。さらに、空隙の径は、ほぼ均一であることが好ましい。ほぼ均一とは、均一であることと、空隙の径のばらつきが小さく、変動係数が10%以内であることとの両方の意味を含む。これにより、接着層11には、毛管力に基づく第1細胞群への接着力が確実に発現する。径の変動係数は以下の方法で求められる。一方のフィルム面10aを、SEM(走査型電子顕微鏡,ScanningElectron Microscope)写真または光学顕微鏡写真において、1画面中の空隙の数が50個以上となるような倍率により観察する。観察される顕微鏡写真を元に、1画面中に存在する孔15について画像解析を行い、それぞれの径Dを測定し、径Dの平均値DAV、径Dの標準偏差σDを求め、径の変動係数(単位;%)は、(σD/DAV)×100で求められる。
複数の孔15の径Dは、概ね100nm以上20μm以下の範囲内で略一定である。また、孔15の深さL15は、概ね100nm以上20μm以下の範囲で略一定である。一方のフィルム面10aにおける開口率SRは20%以上80%以下の範囲内であることが好ましい。一方のフィルム面10aにおける開口率SRが20%以上であることにより、20%未満である場合にくらべて、毛管力がより高くなり第1細胞群に対してより確実に接着する。また、上記の開口率SRが80%以下であることにより、80%よりも大きい場合に比べてフィルム10の表面強度が大きいために、ハニカム構造等の多孔質構造がより崩れにくく、第1細胞群に対してより確実に接着したり、患部等における位置ずれがよりしにくくなる。開口率SRの求め方については、別の図面を用いて後述する。
接着層11の厚みT11は、100nm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。接着層11は前述のように生体分解性ポリマーで形成されており、20μm以下の厚みT11とすることで、分解して生じる分解物が少量に抑えられ、分解物が生体にとっての異物と認識されたことに起因する癒着が抑制される。また、100nm以上の厚みT11とすることで、接着層11が生体分解性ポリマーで形成していても生体内の例えば患部の治癒期間中において膜形態がより確実に維持される。なお、上記範囲内で、生体分解性ポリマーの種類、患部及びその治癒期間等に応じて厚みT11を設定すれば、分解物を少なく抑えた状態で膜形態としての機能が目的とする期間維持される。
接着阻害層12は、接着層11と第2細胞群との接着を阻害するためのものである。接着阻害層12は、接着層11の表面のうち、一方のフィルム面10aとは反対側の面11bに重なり、この面11aを覆って形成されている。この例では、接着阻害層12は、面11aの全域を覆って形成されているが、覆う領域は面11aの必ずしも全域でなく、例えば面11aの全体の概ね50%以上を覆っていれば、接着層11と第2細胞群との接着を阻害する一定の効果はある。
接着阻害層12は他方のフィルム面10bを構成しており、この例では他方のフィルム面10bは平坦である。ここでの平坦とは、開口の径が100nm以上である凹部が無いもしくは少ない状態を意味し、具体的には100nm以上の凹部による他方のフィルム面10bにおける開口率SRが5%以下であることを意味する。接着阻害層12により他方のフィルム面10bを平坦に形成することで、接着層11からの細胞などの侵入が抑制され、癒着防止膜として用いる場合には、フィルム10の内部を細胞が通りぬけることでの癒着が抑制される。
他方のフィルム面10bにおける水の接触角θbは、40°以下であることが好ましい。フィルム10は、接触角θbが40°以下であることにより、40°より大きい場合に比べて親水性が高いので、第2細胞群との接着がより確実に抑制される。
接着阻害層12は、親水性の構造をもつ親水性部(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)と、疎水性の構造をもつ疎水性部(例えば、アルキル基など)とを有する両親媒性化合物を含むことが好ましい。接着阻害層12の素材として両親媒性化合物を用いる場合には、他方のフィルム面10bが上記の接触角θbを必ずしも満たさなくてもよい。両親媒性化合物としては、リン脂質、ポリエチレングリコール誘導体(PEG誘導体)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリスコリン(MPC)ポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ステロールの少なくともいずれかひとつが好ましい。また、用いる両親媒性化合物のHLB値(Hydrophile− Lipophile Balance、親水性親油性バランス)は1以上13以下の範囲内が好ましい。HLB値が13以下であることにより、13より大きい(両親媒性化合物の親水性が高すぎる)場合に比べて、両親媒性化合物が水に溶解しにくいので接着阻害層としての効果の持続時間が長い。HLB値は、さらに好ましくは1以上8以下の範囲内である。ここでのHLB値は、HLB値=20×(親水基の重量%)で算出される、グリフィン法で求める値である。なお、接着阻害層12は、これら以外の素材に、これらのうち少なくともいずれかひとつを混合した状態、すなわち、これらのうち少なくともいずれかひとつを含んだ状態であればよい。接着阻害層12を上記の素材から形成することにより、接着層11の一方のフィルム面10aとは反対側の表面が親水化されて接触角が低下するので、接着層11と第2細胞群との接着がより確実に抑制される。
接着阻害層12の厚みT12は、100nm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。100nm以上の厚みT12とすることにより、接着層11が分解して例えば治癒中に部分的にあるいは全部が消失しても、膜形態が維持されるので、治癒効果が一定期間持続する。また、20μm以下の厚みT12とすることにより、素材としての柔軟性がより確保され、臓器などの表面の動きに対する追従性がより確実になる。
開口率SRの求め方について、図4を参照して説明する。開口率SRは、これを求める面それぞれにおいて、算出することができる。ここでは、一方のフィルム面10aを、開口率SRを求める面の一例として説明する。一方のフィルム面10aをその垂直方向から見た場合に、孔15の開口の面積をS15とし、この一方のフィルム面10aの面積をS10aとする。孔15の開口の面積S15は、図4においてクロスハッチングで示す部分の面積である。一方のフィルム面10aの面積S10aは、図4において斜線で示すハッチング部分の面積である。一方のフィルム面10aにおける開口率SR(単位;%)は、{S15/(S10a+S15)}×100で求める。
上記構成の作用を説明する。フィルム10は、第1細胞群側に接着層11を向けて配され、接着層11が第1細胞群に当てられる。第1細胞群には水が含まれており、各孔15は毛管力により第1細胞群の水を吸って保持し、接着層11は第1細胞群に接着し、接着は一定期間継続するから位置ずれが抑制される。接着層11は孔15が密に形成されたハニカム構造であるので、これよりも孔が疎に形成された構造である場合に比べてより確実に接着し、位置ずれはより確実に抑制される。
各孔15は、フィルムの厚み方向Xで非貫通であるので、第1細胞群と、他方のフィルム面10b側の第2細胞群とは、フィルム10を介して独立しており、これにより、第1細胞群が創傷部位である場合には、治癒中において第1細胞群がフィルム10を通り抜けて第2細胞群側に進出することが防止されるので第1細胞群と第2細胞群との一体化による癒着が防止される。また、第1細胞群における治癒効果も上がり、第1細胞群が手術による縫合部を含む場合には例えば不完全な縫合が為されていた場合でも治癒効果が得られる。接着層11は、生体分解性ポリマーから形成されているから、生体内で分解したり吸収されるなどして、場合によっては排出される。
接着阻害層12は生体分解性ポリマーから形成された接着層11の面11aを覆っているから、接着層11が分解して分解物が生成しても、これを異物と認識することが抑制される。このため、第2細胞群のフィルム10に対する接着が抑えられ、フィルム10を介した第1細胞群と第2細胞群との癒着が抑制される。
フィルム10の製造方法について説明する。フィルム10は、例えば図5に示すフィルム製造フローで製造する。フィルム製造フローは、流延工程21、結露工程22、第1乾燥工程23、剥離工程24、塗布工程27、第2乾燥工程28を有する。流延工程21は、接着層11を形成するための生体分解性ポリマーが溶媒に溶解した溶液31を、支持体32の上に流下して支持体32上で広げる(流延する)ことにより流延膜33を形成する。本実施形態では、生体分解性ポリマーであるPLAを溶解する溶媒として、ジクロロメタンを用いている。しかし、PLAの溶媒はこれに限定されず、クロロホルム等であってもよい。前述の各生体分解性ポリマーの溶媒としては、ジクロロメタン,クロロホルム,トルエン等が挙げられる。また、両親媒性をもつリン脂質の溶媒としては、ジクロロメタン,クロロホルム等が挙げられる。支持体32としては、本実施形態では板状のガラスを用いているが、これに限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等を用いてもよい。
結露工程22は、流延膜33の膜面に、流延膜33周辺の雰囲気に含まれる水分を結露させて水滴を形成する。この結露工程22の詳細は後述する。第1乾燥工程23は、溶媒と結露工程22で形成した水滴とを流延膜33から蒸発させる。この第1乾燥工程23で溶媒と水滴とを蒸発させることにより、支持体32上に、接着層11を形成するための接着フィルム材34が形成される。このように接着フィルム材34は結露工程22と第1乾燥工程23とを有する結露法で形成する。
剥離工程24は、接着フィルム材34を支持体32から剥がす。接着フィルム材34の支持体32から剥がされた剥離面が、前述の接着層11の面11aとなる。この剥離面に対して、接着阻害層12を形成するための素材が溶媒に溶けたあるいは分散媒に分散した塗布液35を塗布して塗膜を形成する。第2乾燥工程28は、塗膜を乾燥して接着阻害層12とする。以上により、フィルム10が製造される。この例では、接着阻害層12を塗布液35の塗布及び乾燥により形成しているが、接着阻害層12を形成する手法はこれに限られない。例えば、接着阻害層12となるフィルム材(以下、接着阻害フィルム材と称する)をつくり、この接着阻害フィルム材を、接着フィルム材34の面11aと重ねることで、両者を積層したフィルム10を製造してもよい。接着阻害層12を両親媒性化合物を含むものとする場合には、接着阻害フィルム材は、この両親媒性化合物を高濃度(例えば1%以上50%以下の範囲内)で含有することが好ましい。この両親媒性化合物の濃度(単位:%)は、接着阻害フィルムの質量をM1(単位:g),両親媒性化合物の質量(単位:g)をM2とするときに、(M2/M1)×100で求める値である。
結露工程22は、図6に示すように、流延膜33の周辺の雰囲気中に含まれた水分を、流延膜33の支持体32に接する面とは反対側の露出面33aに結露させる。本実施形態では、加湿した空気(以下、湿潤空気と称する)40を、露出面33a上に供給することで結露させているが、空気とは異なる気体でもよい。結露で生じた複数の水滴41は、結露を続けることにより、成長して大きくなり、露出面33aを図7に示すように例えば隙間無く覆う。なお、支持体32を冷却してもよく、これにより結露が促進するので、水滴の形成及び成長が促される。
上記の結露工程22は、疎水性ポリマーから接着層11を形成するために、溶液31のポリマー成分を疎水性ポリマーとした場合であるので、水滴41を形成する。しかし、親水性ポリマーから接着層11を形成する場合には、水分を含む気体に代えて疎水性物質を含む気体を流延膜33の露出面に供給することにより、疎水性物質の液滴を流延膜の露出面上に形成するとよい。なお、隔壁16がなく、フィルム面に沿う連通路をフィルム内部に形成する場合には、水滴41が適切に最密充填構造を成して形成されるように、水滴41の成長及び配列をさせる。このためには、流延膜33の流動が停止しないように、第1乾燥工程23の開始タイミングを遅めに設定するとよい。
<第2実施形態>
上記のフィルム10の孔15は接着層11において厚み方向Xに非貫通であるが、貫通していてもよい。例えば、第2実施形態であるフィルム50は、図8に示すように、接着層51と接着阻害層12とを備え、接着層51には空隙としての複数の孔53が厚み方向Xに貫通して形成されている。なお、第1実施形態のフィルムと同じ部材には同じ符号を付し説明を略す。各孔53は、接着層51において、厚み方向Xで貫通している。
接着層51の一方のフィルム面50aとは反対側の面51aには、貫通した孔53を塞いだ状態に接着阻害層12が形成されている。この接着阻害層12により、第1細胞群と第2細胞群とは一方のフィルム面50a側と他方のフィルム面50b側とに隔てられて独立する。なお、この例では、隣り合う孔53と孔53とは隔壁54により独立しているが、これに限定されない。すなわち、隔壁54がなく、一方のフィルム面50aに沿った連通路が内部に形成されていてもよい。
上記構成の作用を説明する。第1細胞群と第2細胞群とは一方のフィルム面50a側と他方のフィルム面50b側とに独立するから、第1細胞群がフィルム50を通り抜けて第2細胞群側に進出することが防止される。このため第1細胞群と第2細胞群との一体化による癒着が防止される。
この接着層51においても、各孔53は毛管力により第1細胞群の水を吸って保持し、接着層51は第1細胞群に接着し、接着は一定期間継続するからフィルム50は位置ずれが抑制される。接着層51は孔53が密に形成されたハニカム構造であるので、これよりも孔が疎に形成された構造である場合に比べてより確実に接着し、位置ずれはより確実に抑制される。また、第1細胞群が創傷部位である場合には、第1細胞群における治癒効果が得られる。
フィルム50は、フィルム10と同様の製造フローで製造することができる。厚み方向Xで貫通する孔53をもつ接着層51を形成するためには、前述の結露工程22において、溶液31に含まれる生体分解性ポリマー等の固形分量に基づいて算出される接着層51の厚みよりも大きく水滴41を成長させる。このための手法としては、溶液31における固形分量を第1実施形態における溶液31の固形分量よりも少なくすることと、結露工程22における水滴の成長を第1実施形態におけるよりも促進することとが挙げられる。
<第3実施形態>
接着層はハニカム構造に限られず、上記のような一方のフィルム面における個々の開口の径が100nm以上20μm以下の範囲内、孔の深さが100nm以上20μm以下の範囲内を満たす多孔質構造であればよい。第3実施形態のフィルム60は、図9及び図10に示すように、接着層61と接着阻害層12とを備える。接着層61は、本実施形態ではPLA(シグマ アルドリッチ ジャパン社製、製品番号719854)としているが、これに限定されず、接着層61を形成する素材としては、接着層11を形成する前述の素材を用いることができる。接着層61には、接着層11と同様に、接着層61には、大きさと形状とが不均一な空隙としての孔63a〜63kが不規則に位置して形成されている。
これらの孔63a〜63kのうち、孔63a〜63iは、一方のフィルム面60aに開口をもって形成されている。一方のフィルム面50aにおける孔63a〜63iの開口の径は、開口と同じ面積の円を描いたときにその円の直径を開口の径とみなす。これらの孔63a〜63iは、第1細胞群との接触を開始したときから、第1細胞群との接着に寄与する。
接着層61において、孔63a,63cは厚み方向Xで非貫通となっており、孔63bは貫通している。接着層61の一方のフィルム面60aとは反対側の面61aには、貫通した孔63bを塞ぐように接着阻害層12が形成されている。このようにフィルム60は、厚み方向Xで非貫通の各孔63a〜63iを一方のフィルム面60aに開口した態様で備える。これにより、第1細胞群と第2細胞群とは一方のフィルム面50a側と他方のフィルム面50b側とに独立する。
孔63j〜63kは、接着層61の内部に形成され、一方のフィルム面60aには開口していない。孔63a〜63iが第1細胞群と接触を開始したときから第1細胞群の接着に寄与するのに対し、孔63j〜63kは接着層61を構成する生体分解性ポリマーの分解が進んでから第1細胞群との接着に寄与する。生体分解性ポリマーの分解が進み、第1細胞群と接するようになった孔63j〜63kの開口の径が100nm以上20μm以下の範囲内、深さが100nm以上20μm以下の範囲内になると、第1細胞群との接触に、より確実に寄与する。
孔は海島構造の海部として一方のフィルム面60aにおいて連続的に形成されていてもよく、第1細胞群との接着に一定の効果はある。しかし、この例のように、一方のフィルム面60aにおいて、孔63a〜63iが海島構造の島部として独立して形成されていることが第1細胞群との接着の観点ではより好ましい。
上記構成の作用を説明する。第1細胞群と第2細胞群とは一方のフィルム面60a側と他方のフィルム面60b側とに独立するから、第1細胞群がフィルム60を通り抜けて第2細胞群側に進出することが防止される。このため第1細胞群と第2細胞群との一体化による癒着が防止される。
この接着層61においても、各孔63a〜63kは毛管力により第1細胞群の水を吸って保持し、接着層61は第1細胞群に接着して、この接着は一定期間継続するからフィルム60は位置ずれが抑制される。また、第1細胞群が創傷部位である場合には、第1細胞群における治癒効果が得られる。
フィルム60の製造方法について図11を参照しながら説明する。フィルム60は、図4に示す製造フローの溶液31を溶液71に代え、結露工程22と第1乾燥工程23とを第3乾燥工程72と溶解工程73と第4乾燥工程74とに代えることによって製造する。
溶液71は、親水性ポリマーと、接着層61を形成するための生体分解性ポリマーである疎水性ポリマーとが溶媒に溶解したものである。本実施形態においては、疎水性ポリマーは前述の通りPLAとしており、親水性ポリマーはポリエチレングリコール(和光純薬工業(株)製、PEG 6000)としており、溶媒はクロロホルムとしている。疎水性ポリマーと親水性ポリマーとは、任意の質量比率で組み合わせることが可能であり、空隙を増やす場合には、疎水性ポリマーの質量より親水性ポリマーの質量が大きいことが好ましい。本実施形態においては、疎水性ポリマー(PLA)の質量:親水性ポリマー(PEG)の質量を、40:60としている。溶液71におけるポリマーの濃度は、30質量%以下であることが好ましい。この濃度(単位:質量%)は、溶媒の質量(単位:g)をM3、疎水性ポリマーの質量(単位:g)をM4、親水性ポリマーの質量をM5(単位:g)とするときに、{(M4+M5)/(M3+M4+M5)}×100で求める値である。本実施形態においては、5質量%としている。
流延工程21は、溶液71を、支持体32の上に流下して支持体32上で広げることにより流延膜33を形成する。本実施形態では、支持体32としては板状のガラスを用いており、冷却せずに室温にして用いている。第3乾燥工程72は、流延膜33に乾燥した空気を供給することにより流延膜33から溶媒を蒸発させて流延膜33を乾燥する。溶解工程73は、溶媒が蒸発した流延膜を水中に浸漬して、流延膜33から親水性ポリマーを選択的に溶出させることにより、除去する。本実施形態では、浸漬した水は、80℃の熱水とし、浸漬する時間は30分としている。第4乾燥工程74は、親水性ポリマーを除去した流延膜33を、乾燥した空気の供給により乾燥する。この乾燥により、支持体32上に、接着層61を形成するための接着フィルム材77が形成される。このように接着フィルム材77は、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを含む溶液71から、流延工程21と第3乾燥工程72と溶解工程73と第4乾燥工程74を有する水抽出法で形成する。次いで、剥離工程24、塗布工程27、第2乾燥工程28を行うことにより、フィルム60が得られる。
[実施例1]〜[実施例4]
実施例1〜3は、図5に示す製造フローで、フィルム10を製造した。すなわち、接着層11はハニカム構造であり、このため、表1の「接着層」の「構造」欄には「ハニカム」と記載する。接着層11のハニカム構造の平均孔径(径Dの平均値)は3μmで、径Dの変動係数は3.5%であった。実施例4は、図11に示す製造フローで、フィルム60を製造した。すなわち、前述の水抽出法及びその素材、条件で接着フィルム材77をつくり、この接着フィルム材77に塗布液35を塗布して乾燥することにより、孔の形及び大きさが不均一なフィルム60を製造した。得られたフィルム60は、開口の径が約500nm以上3μmの範囲であり不均一であった。このため、表1の「接着層」の「構造」欄には「不均一多孔質」と記載する。接着層11,61を形成する生体分解性ポリマー、接着阻害層12の素材、他方のフィルム面10b,60bの接触角θbは、表1の「接着層」の「素材」欄、「接着阻害層」の「素材」欄、「接着阻害層」の「接触角θb」欄に、それぞれ示す。なお、実施例2においてポリ乳酸PEG共重合体は、PEG誘導体の一例である。
得られた各フィルム10,60につき、下記の方法で、癒着防止の効果と、患部での位置ずれと、患部への貼り直し性とにつき、評価した。癒着防止の効果は、ウサギを用いたin vivo試験を行い評価した。具体的には、ウサギを開腹し、腸管漿膜の層間剥離と腹膜剥離との各欠損を与え、2.5cm角にカットした各フィルム10,60を腸管欠損部へ貼り付けた後に、閉腹した。この貼り付けから14日後に開腹して患部の癒着の様子を目視にて確認した。そして、下記の基準に基づき、評価した。評価結果は表1の「癒着防止効果」欄に示す。A,Bは合格レベル、Cは不合格レベルである。
A:癒着が全く見られない
B:弱く繊維性の癒着がみられるが、許容することができる程度
C:腸管と腹膜とが強く癒着している
患部の位置ずれは、腸管へ貼り付けた各フィルム10,60が、貼り付け後14日目の開腹時において、患部に各フィルム10,60が残っているか否かを目視にて確認した。フィルムを貼り付けた患部には、貼り付けの後、閉腹前に、目印のために縫合糸でマーキングを行った。そして、下記の基準に基づき、評価した。評価結果は表1の「患部位置ずれ」欄に示す。A,Bは合格レベル、Cは不合格レベルである。
A:マーキング部にフィルムが残存している
B:マーキング部からフィルムが若干ずれてはいるが残存している
C:マーキング部にフィルムの残存が見られない
患部への貼り直し性は、腸管へ一旦貼り付けた各フィルム10,60を、貼り付け後10秒放置した後に剥離し、剥離したフィルム10,60を以下の基準で評価した。そして、下記の基準に基づき、評価した。評価結果は表1の「貼り直し性」欄に示す。A,Bは合格レベル、Cは不合格レベルである。
A:剥離後もフィルムは形状を維持しており、貼り直して再使用することが可能な状態である
B:剥離の際にフィルムの一部が破れるが、貼り直して再使用することが可能な状態である
C:剥離の際にフィルムが剥がれないもしくはフィルムが破れて破損し、再使用が不可能な状態である
Figure 0006181022
[比較例1]
PLAを溶解した溶液31を支持体32上で流延して流延膜33を形成し、この流延膜33を乾燥して、支持体32から剥がすことにより、両面が平坦なフィルムをつくった。このため、表1の「接着層」の「構造」欄には「フラット膜」と記載する。このフィルムは接着阻害層12をもたないので、表1の「接着阻害層」の「有無」欄には「無し」と記載する。
得られたフィルムについて、実施例1〜4と同様の方法及び基準で、癒着防止の効果と位置ずれと、患部への張り直し性とについて評価した。評価結果は表1に示す。
[比較例2]
図5に示す製造フローの流延工程21と結露工程22と第1乾燥工程23と剥離工程24とにより、接着阻害層12が無いフィルムを製造した。このフィルムは、実施例1における接着フィルム材34と同じであり、一方のフィルム面に開口した孔の開口が3μmであった。このフィルムは接着阻害層12をもたないので、表1の「接着阻害層」の「有無」欄には「無し」と記載する。
得られたフィルムについて、実施例1〜4と同様の方法及び基準で、癒着防止の効果と位置ずれと、患部への張り直し性とについて評価した。評価結果は表1に示す。
[比較例3]
PLAを溶解した溶液31を支持体32上で流延して流延膜33を形成し、この流延膜33を乾燥して、支持体32から剥がすことにより、両面が平坦なフィルムをつくった。一方のフィルム面に、ゲル化成分としてゼラチンをコーティングした。そこで、表1の「接着層」の「素材」欄には「PLAとゼラチン」と記載する。また、他方のフィルム面に、実施例1と同様の方法及び素材で接着阻害層12を形成した。
得られたフィルムについて、実施例1〜4と同様の方法及び基準で、癒着防止の効果と位置ずれと、患部への張り直し性とについて評価した。評価結果は表1に示す。
10,50,60 フィルム
11,51,61 接着層
12 接着阻害層
15,53,63 孔

Claims (10)

  1. 一方のフィルム面に開口した複数の空隙に水を吸って保持し第1細胞群に接着するための毛管力を有し、生体分解性ポリマーから形成されている接着層と、
    他方のフィルム面を成し、前記第1細胞群と異なる第2細胞群と、前記接着層との接着を阻害する接着阻害層とを備え、
    前記第1細胞群と前記第2細胞群とを前記一方のフィルム面側と前記他方のフィルム面側とに独立させるために前記空隙がフィルムの厚み方向で非貫通に形成されており、
    前記接着阻害層は、リン脂質、ポリエチレングリコール誘導体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリスコリンポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ステロールの少なくともいずれかひとつから形成されていることを特徴とするフィルム。
  2. 前記他方のフィルム面における水の接触角は40°以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
  3. 一方のフィルム面に開口した複数の空隙に水を吸って保持し第1細胞群に接着するための毛管力を有し、生体分解性ポリマーから形成されている接着層と、
    他方のフィルム面を成し、前記第1細胞群と異なる第2細胞群と、前記接着層との接着を阻害する接着阻害層とを備え、
    前記第1細胞群と前記第2細胞群とを前記一方のフィルム面側と前記他方のフィルム面側とに独立させるために前記空隙がフィルムの厚み方向で非貫通に形成されており、
    前記他方のフィルム面における水の接触角は40°以下であることを特徴とするフィルム。
  4. 前記生体分解性ポリマーは、PLA、PLAを含む共重合体、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレートおよびこれらを含む共重合体であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフィルム。
  5. 前記接着阻害層は、前記接着層の前記一方のフィルム面とは反対側の面を覆って前記空隙をフィルムの厚み方向で非貫通にすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフィルム。
  6. 前記一方のフィルム面における前記空隙の開口の径は100nm以上20μm以下の範囲内であり、前記空隙の深さは100nm以上20μm以下の範囲内であり、前記一方のフィルム面における開口率は20%以上80%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のフィルム。
  7. 前記接着層は、前記一方のフィルム面における前記空隙の開口によりハニカム構造とされていることを特徴とする請求項6に記載のフィルム。
  8. 一方のフィルム面に開口した複数の空隙に水を吸って保持し第1細胞群に接着するための毛管力を有する接着層と、他方のフィルム面を成し、前記第1細胞群と異なる第2細胞群と、前記接着層との接着を阻害する接着阻害層とを有し、前記第1細胞群と前記第2細胞群とを前記一方のフィルム面側と前記他方のフィルム面側とに独立させるために前記空隙が厚み方向で非貫通に形成されたフィルムの製造方法であり、
    生体分解性ポリマーが溶媒に溶解した溶液を支持体の上に流延することにより流延膜を形成する工程と、
    前記流延膜に結露させ、前記溶媒と結露で生じた水滴とを蒸発させることにより、前記支持体上に、前記接着層を形成するための接着フィルム材を形成する工程と、
    前記接着フィルム材を前記支持体から剥離する工程と、
    前記接着フィルム材の前記支持体から剥がされた剥離面に、前記接着阻害層を形成する工程とを有し、
    前記接着阻害層を形成する工程は、
    リン脂質、ポリエチレングリコール誘導体、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリスコリンポリマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ステロールの少なくともいずれかひとつを含む素材が溶媒に溶けたあるいは分散した塗布液を、前記接着フィルム材に塗布する塗布工程を有することを特徴とするフィルムの製造方法。
  9. 前記生体分解性ポリマーは、PLA、PLAを含む共重合体、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリヒドロキシブチレートおよびこれらを含む共重合体であることを特徴とする請求項に記載のフィルムの製造方法。
  10. 前記一方のフィルム面における開口率は20%以上80%以下の範囲内であることを特徴とする請求項8または9に記載のフィルムの製造方法。
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