本発明は、塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水の製造方法を提供し、この方法は、
(a)溶解塩化ナトリウムを含有する供給水をナノ濾過することで透過水と、供給水からの二価イオンの少なくとも85%を含む濃縮水とを生成するステップと、
(b)透過水を精製することで塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水を生成するステップとを含み、ステップ(b)は、透過水を電気透析することで透過水より高い濃度の全溶解塩分及び低い割合の二価イオンを有する濃縮物と、透過水から分離された水及び二価イオンを含む希釈物とを生成することを含む。
本発明による塩化ナトリウム鹹水の製造では、水酸化ナトリウムを製造するための慣用の塩化ナトリウム鹹水調製法より水資源を効率的に利用することができる。特に、本発明は、最初に供給水から全ての水を蒸発させてバルク粗製塩を得てから粗製塩を生鹹水に再構成することなく供給水を鹹水に変換する。そのため、供給水が生鹹水である実施形態であっても、本発明は生鹹水からの水の回収を容易にし得る。例えば、ナノ濾過後の透過水を電気透析に供すると、塩素アルカリ膜セルでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水になり得る濃縮物と、供給水より少ない全溶解塩分を有する希釈物とが生成される。希釈物はナノ濾過透過水の体積の95%を超える量を構成し得て、また慣用の脱塩技法を用いて処理することでその体積の約75%を飲料水として回収することができる。
塩化ナトリウム鹹水が塩素アルカリ膜セルで使用するためのものである場合、特に重要な二価イオン不純物はマグネシウム、カルシウム及び硫酸イオンである。塩素アルカリ膜セルにおいて、マグネシウムはアノードでの水素発生を引き起こす。工程中に典型的に生成される塩素は発生した水素と結合して爆発性混合物を作り出す可能性がある。このため、鹹水からのマグネシウムイオンの除去が、水酸化ナトリウムの安全な製造にとって重要である。高濃度の硫酸イオンには、機械的な面、膜の分離性能の面の両方で膜の早期故障を引き起こす恐れがある。カルシウムが膜上に蓄積されてスケールを形成し得る。定期的なスケールの除去は費用がかさみ、また生産量の低下につながる。
供給水からの二価イオンの少なくとも85%がナノ濾過濃縮水に分離されることから、濃縮水をさらに処理することで価値のある生成物を回収し得る。例えば、濃縮水からマグネシウムを回収し得る。
幾つかの実施形態においては、本発明の方法を、排出される液体廃棄物がない又はわずかとなるように実行し得る。液体廃棄物を出さない代わりに、ナノ濾過濃縮水及び電気透析希釈物からでた水を、慣用の脱塩技法を用いて飲料水に変換し得る。あるいは工程へと再循環させ得る。また、濃縮水又は希釈物の脱塩に続いて得られるミネラル高含有流をミネラル回収段階に送り得る又は再循環させ得る。例えば、ミネラル高含有流が高い二価イオン含有量を有するならば、マグネシウム又はカルシウム回収工程に供し得る。ミネラル高含有流が主に溶解塩化ナトリウムを含有するならば、このミネラル高含有流を供給水又はナノ濾過透過水に再循環させるのがおそらくは望ましい。特定の実施形態においては、電気透析希釈物を、飲料水及び逆浸透濃縮水が生成される逆浸透処理段階経由で再循環させ得て、濃縮水は、約200ppm以下の二価イオンを有する鹹水を生成するために供給水に再循環させられる。したがって、本発明の段階的なナノ濾過及び電気透析工程を経て、飲料水、塩化ナトリウム鹹水及び他のミネラル生成物の供給水からの回収を最大化することが可能であると考えられる。
本発明の方法により、塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水が生成される。すなわち、この塩化ナトリウム鹹水は、水酸化ナトリウム製造プラントにおける既存の精製系、例えば化学析出、イオン交換を経るプラントに送るのに適し得る。「塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した」塩化ナトリウム鹹水には、塩素アルカリ膜セルでの直接使用に十分な純度を有する鹹水も含まれる。そのような鹹水は典型的には、約250ppm以下の二価イオン含有量及び少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分を有するため、電解を目的として塩素アルカリ膜セルに直接、送ることができる。したがって、本発明の方法の幾つかの実施形態では、塩素アルカリ膜セルでの使用に十分な純度の鹹水を生成するために化学析出又はイオン交換を行う必要性を排除し得る。
幾つかの実施形態において、供給水は、本発明の方法の後の段階から供給される流れを含む。例えば、本発明の方法は、
(a)溶解塩化ナトリウムを含有する供給水をナノ濾過することで透過水と、供給水からの二価イオンの少なくとも85%を含む濃縮水とを生成するステップと、
(b)透過水を精製することで塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水を生成するステップとを含み、
ステップ(b)は、透過水を電気透析することで透過水より高い濃度の全溶解塩分及び低い割合の二価イオンを有する濃縮物と、透過水から分離された水及び二価イオンを含む希釈物とを生成し、
逆浸透により希釈物を処理することで逆浸透濃縮水を生成し、
この逆浸透濃縮水の少なくとも一部をステップ(a)に供給することを含む。逆浸透濃縮水を、逆浸透濃縮水が供給水の少なくとも一部を構成するように供給し得る。
これらの実施形態の幾つかにおいて、濃縮物は、塩素アルカリ膜セルでの直接使用に適した塩化ナトリウム鹹水になり得る。したがって、電気透析濃縮物は、少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水になり得る。例えば、鹹水は、300,000ppmを超える全溶解塩分を有し得る。
あるいは、本発明の方法を、全ての供給水が、供給された逆浸透濃縮水から構成されるように行い得る。これらの実施形態において、電気透析濃縮物は、少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppm、好ましくは300,000ppmを超える全溶解塩分及び50ppm未満の二価イオン、好ましくは1ppm未満の二価イオン、より好ましくは100ppb未満の二価イオン、より一層好ましくは20ppb未満の二価イオンの塩化ナトリウム鹹水になり得る。
これらの実施形態において、「供給する(supplying)」には、逆浸透濃縮水を、その逆浸透濃縮水が生じた反復工程で使用したものと同じナノ濾過ユニットに再循環させる又は戻すことを含む。「供給する」には、逆浸透濃縮水を、直列に配置された本発明の方法を実行するための別の系に輸送することも含む。したがって、本発明の方法を、全ての供給水が、供給された逆浸透濃縮水から構成されるように実行する場合、本発明の方法をバッチ式で行い得る。あるいは、本発明の方法を順次実行する2つ以上の系を利用することで、逆浸透濃縮水を供給水として使用した塩化ナトリウム鹹水の連続的な製造を可能にし得る。
逆浸透濃縮水が生成されることに加えて、希釈物を逆浸透に供することで逆浸透透過水が得られる。この逆浸透透過水は飲料水になり得る。
塩素アルカリ膜セルそれ自体での直接使用に適した塩化ナトリウム鹹水を生成するためには、更なる精製を必要とし得る。この更なる精製を、塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した鹹水を、水酸化ナトリウム製造プラントの既存の精製系に送ることで行い得る。あるいは、本発明の方法は、さらなる精製ステップを含み得る。これらの実施形態において、精製はさらに、電気透析濃縮物を化学析出処理に供して塩化ナトリウム鹹水を生成することを含み得る。幾つかの実施形態においては、濃縮物を、化学析出処理後にイオン交換処理に供することで塩化ナトリウム鹹水を生成する。他の幾つかの実施形態においては、電気透析濃縮物を、最初に化学析出処理することなく、イオン交換処理に供し得る。それらの実施形態の幾つかにおいては、20ppb以下の二価イオインを有する塩化ナトリウム鹹水を、最高200ppmの二価イオンを有する濃縮物をイオン交換処理に供することで生成する。したがって、電気透析濃縮物が200ppmを超える二価イオンを有する場合は、塩素アルカリ膜セルでの直接使用に適した塩化ナトリウム鹹水、好ましくは20ppb未満の二価イオンを有する鹹水を生成するために、電気透析濃縮物を化学析出処理とそれに続くイオン交換に供し得る。
当然のことながら、化学析出処理及び/又はイオン交換処理を行う場合、電気透析濃縮物中の不純物の濃度はそれでも供給水中の不純物の濃度よりはるかに低い。したがって、化学析出又はイオン交換で除去される不純物はより少なくなり、これはコストの点で有益となり得る。例えば、化学析出に必要な試薬がより少量となる。また、不純物のレベルが低いことから、再生が必要となるまでイオン交換樹脂を使用できる期間が長くなる。
幾つかの実施形態において、塩化ナトリウム鹹水は飽和塩化ナトリウム鹹水である。すなわち、塩化ナトリウム鹹水は、作業温度で約300,000〜315,000ppmの全溶解塩分を有する鹹水になり得る。このような実施形態において、精製は、(任意で、化学析出処理及び/又はイオン交換処理を行った後に)濃縮物を蒸発させて飽和塩化ナトリウム鹹水を生成することを含み得る。
本発明は、本発明の方法を実行するためのシステムも提供する。すなわち、本発明は、塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水を製造するためのシステムを提供し、このシステムは、
溶解塩化ナトリウムを含有する供給水をナノ濾過して透過水と、供給水からの二価イオンの少なくとも85%を含む濃縮水とを生成するためのナノ濾過ユニットと、
透過水を受け取り、塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水を生成するための精製ユニットとを備え、精製ユニットは、透過水を受け取り、この透過水を電気透析して透過水より高い濃度の全溶解塩分及び低い割合の二価イオンを有する濃縮物と、透過水から分離された水及び二価イオンを含む希釈物とを生成する電気透析ユニットを備える。
幾つかの実施形態において、精製ユニットはさらに化学析出処理ユニット及び/又はイオン交換処理ユニットを備える。他の幾つかの実施形態において、化学析出処理ユニット及び/又はイオン交換処理ユニットは、塩化ナトリウム鹹水を使用する水酸化ナトリウム製造プラントの一部を構成する。
幾つかの実施形態において、精製ユニットは、電気透析ユニットから希釈物を受け取り、この希釈物を処理して逆浸透濃縮水を生成するための逆浸透ユニットを備え、逆浸透濃縮水の少なくとも一部がナノ濾過ユニットに供給され且つ供給水が逆浸透濃縮水を含むように逆浸透ユニットはナノ濾過ユニットに流体接続される。逆浸透ユニットが流体接続されたナノ濾過ユニットは、逆浸透濃縮水が生じる反復工程で使用したものと同じナノ濾過ユニットになり得る。あるいは、ナノ濾過ユニットは、直列に配置された別の系におけるものになり得る。
加えて、本発明は水酸化ナトリウムの製造方法を提供し、この方法は、
(a)溶解塩化ナトリウムを含有する供給水をナノ濾過することで透過水と、供給水からの二価イオンの少なくとも85%を含む濃縮水とを生成するステップと、
(b)透過水を精製することで少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水を生成するステップと、
(c)この塩化ナトリウム鹹水を塩素アルカリ膜セルにおいて電解することで水酸化ナトリウムを生成するステップとを含み、
ステップ(b)は、透過水を電気透析することで透過水より高い濃度の全溶解塩分及び低い割合の二価イオンを有する濃縮物と、透過水から分離された水及び二価イオンを含む希釈物とを生成することを含む。
幾つかの実施形態において、ステップ(b)はさらに、
逆浸透により希釈物を処理することで逆浸透濃縮水を生成すること及び
この逆浸透濃縮水の少なくとも一部をステップ(a)に供給することを含む。
これらの実施形態において生成される濃縮物は、少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水になり得る。
幾つかの実施形態において、ステップ(b)はさらに、化学析出及び/又はイオン交換により濃縮物を処理することで、少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水を生成することを含む。
さらに、本発明は、水酸化ナトリウムを製造するためのシステムを提供し、このシステムは、
溶解塩化ナトリウムを含有する供給水をナノ濾過して透過水と、供給水からの二価イオンの少なくとも85%を含む濃縮水とを生成するためのナノ濾過ユニットと、
透過水を受け取り、少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水を生成するための精製ユニットと、
塩化ナトリウム鹹水を受け取り、塩化ナトリウム鹹水を電解して水酸化ナトリウムを生成するための塩素アルカリ膜セルとを備え、
精製ユニットは、透過水を受け取り、透過水を電気透析して透過水より高い濃度の全溶解塩分及び低い割合の二価イオンを有する濃縮物と、透過水から分離された水及び二価イオンを含む希釈物とを生成するための電気透析ユニットを備える。
本発明のシステムは、最初に供給水を蒸発させて粗製塩を得ることなく供給水を水酸化ナトリウムに変換することができる統合システムである。したがって、本発明のシステムにより、慣用の水酸化ナトリウム製造工程より効率的に水資源を利用し得る。
幾つかの実施形態において、塩素アルカリ膜セルは精製ユニットに流体接続され、この精製ユニットはナノ濾過ユニット及び供給水源に流体接続され得る。供給水の水源(例えば、海)に流体接続されるように塩素アルカリ膜セルを設置することで、本発明のシステムは、塩化ナトリウム鹹水又は塩を遠隔地で製造して鹹水又は塩を車両により水酸化ナトリウムプラントの場所まで輸送することに関係したコスト及びリソースを回避する。
幾つかの実施形態において、精製ユニットは、希釈物を電気透析ユニットから受け取り、希釈物を処理して逆浸透濃縮水を生成するための逆浸透ユニットを備える。逆浸透濃縮水の少なくとも一部がナノ濾過ユニットに供給され且つ供給水が逆浸透濃縮水を含むように逆浸透ユニットはナノ濾過ユニットに流体接続される。これらの実施形態においては、透過水の電気透析により、少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水である濃縮物を生成し得る。あるいは又は加えて、精製ユニットは、電気透析濃縮物を受け取り、その濃縮物に化学析出を行って少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水を生成するための化学析出ユニットを備え得る。水酸化ナトリウムを製造するためのシステムは、電気透析濃縮物又は化学析出ユニットから出た精製物を受け取って処理することで少なくとも180,000ppm、例えば少なくとも190,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水を生成するためのイオン交換処理ユニットを備え得る。
また、本発明は、ソーダ灰の量産方法を提供し、この方法は、
(a)溶解塩化ナトリウムを含有する供給水をナノ濾過して透過水と、供給水からの二価イオンの少なくとも85%を含む濃縮水とを生成し、
透過水を精製して少なくとも180,000ppmの全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水を生成することで塩化ナトリウム鹹水を調製し、
(b)この塩化ナトリウム鹹水をソーダ灰製造プラントで使用することを含み、
透過水の精製は、透過水を電気透析することで透過水より高い濃度の全溶解塩分及び低い割合の二価イオンを有する濃縮物と、透過水から分離された水及び二価イオンを含む希釈物とを生成することを含む。
ソーダ灰の量産に採用し得る鹹水は、約250ppm以下の二価イオン含有量及び少なくとも180,000ppm、好ましくは少なくとも190,000ppm、より好ましくは少なくとも305,000ppmの全溶解塩分を有する。概して、この鹹水は、塩化ナトリウム水溶液を用いる公知の工業的ソーダ灰合成法(例えばソルベー法及びソルベー法をベースとした方法。ただしこれらに限定はされない)の全てにおいて、塩化ナトリウム前駆体として使用することができる。これらの方法においては、塩化ナトリウム鹹水を濃縮アンモニア溶液と混合し、この混合溶液を気体状の二酸化炭素と接触させることで塩化アンモニウムと炭酸水素ナトリウムとを生成する。この二酸化炭素は、950〜1100℃での石灰岩の焼成により得られる。次に、この炭酸水素ナトリウムを分離し、160〜230℃での焼成によりソーダ灰に変換する。二酸化炭素及びアンモニアをそれぞれ、炭酸水素ナトリウムの焼成中に、塩化アンモニウム溶液を石灰岩の焼成中に得られた酸化カルシウムと反応させることで再生することができる。
本明細書で言うところの「溶解塩化ナトリウムを含有する供給水」には、溶解塩化ナトリウムを少なくとも1.5重量%含有する水が含まれる。便宜上、溶解塩化ナトリウムを含有する供給水を単に「供給水」と称する場合もある。当業者ならば、本発明の目的にとって、供給水が、塩化ナトリウム鹹水を分離することが望ましいいずれの水溶液にもなり得ることがすぐにわかる。概して、塩化ナトリウムを含有する溶液中において二価イオンから一価イオンを分離することを目的とした全ての工程において本発明を効果的に用いることができる。この一価イオンは電気透析濃縮物中で濃縮することができ、二価イオンはナノ濾過で阻止される。
供給水は、海水、湖沼水、被圧地下水又は地下水及び岩塩堆積物のソリューションマイニングで生じる鹹水を含めた、製塩に典型的に使用されるいずれの水源も含み得る。本発明の幾つかの実施形態は、海水の使用に特に適している。6種のイオンが、海水中の全溶解性固形分の99重量%を超える量を構成している。ナトリウム及び塩化物が海水中の全溶解性固形分の85%を若干超える量を構成しており、海水中には約2.7重量%の塩化ナトリウムが溶解している。ナトリウムは、海水中の全溶解性固形分の約30重量%を占め、塩化物は55重量%を若干超える量を占める。残りの4種のイオンには、カルシウム、マグネシウム、カリウム及び硫酸塩が含まれる。
供給水を、どんな形の前処理も施されていない原水又は前処理済みの水として工程に供給し得る。原水の水源によっては水が濁っているため、水中の浮遊粒子がナノ濾過用の膜の閉塞やファウリングを起こさないように前処理が必要となる場合もある。したがって、前処理は、原水を、ナノ濾過より「粗い」形態の濾過で濾過することを含み得る。典型的な前処理工程は層濾過(砂、無煙炭等)及びカートリッジ濾過である。濁り度が高い水の場合は、濾過の前に凝集及び沈降又はフロキュレーション及び沈降を行い得る。幾つかの実施形態においては、異なるタイプの濾過を組み合わせて水中の浮遊物質を許容可能なレベルにまで低下させることを必要とし得る。例えば、原水を、濾過とそれに続く精密濾過及び次の限外濾過に供し得る。
供給水が浮遊粉塵によりファウリングを引き起こす可能性をはかるのに一般に用いられる予測因子は、供給水のSDI(silt density index)である。SDIは、ASTM規格D−4189−07に準じた、一定体積の水を標準的な0.45ミクロンの孔径の精密濾過膜を通して濾過するのに必要な時間の経験的な測定値である。マイクロフィルタを目詰まりさせてしまう供給水中の浮遊物質のせいで試料濾過時間は長くなり、SDIは高くなる。本発明の目的に関し、本発明の方法の供給水は典型的には2.5未満、好ましくは1.5未満、より一層好ましくは1未満のSDIを有し、適切なSDIを達成するために、原水を必要に応じて前処理し得る。
本明細書で言うところの「溶解塩化ナトリウムを含有する供給水」には、本発明の方法の後の段階から供給される流れも含まれる。幾つかの実施形態においては、この供給された流れを無処理の又は前処理済みの供給水流と合流させる。他の実施形態においては、本発明の方法を、全ての供給水がこの供給された流れから構成されるように実行する。供給された流れを、この流れが最初に生じた系に再循環させ得る又は戻し得る。あるいは、直列に配置された別の系に輸送し得る。
幾つかの実施形態において、「溶解塩化ナトリウムを含有する供給水」は希釈海水である。希釈海水は、海水を、微量の全溶解塩分しか有さない水と混合することで得ることができる。微量の全溶解塩分を有する水は、例えば、飲料水又は復水になり得る。幾つかの好ましい実施形態において、飲料水又は復水は、本発明のシステムの1つ以上の流れから得ることができる。これらの好ましい実施形態において、飲料水は、公知の脱塩法(例えば、汽水逆浸透)により逆浸透透過水から得られる。復水は、例えば塩化ナトリウム鹹水の蒸発から得ることができる。
上述したように、「溶解塩化ナトリウムを含有する供給水」は、いずれの利用可能な天然の鹹水源(南米のアタカマ塩原、北米はユタ州のグレートソルトレイク、オーストラリアのカリンガクリーク)から採水した天然鹹水にもなり得る。
概して、供給水の水源に応じて、分離される塩化ナトリウム鹹水は多様な工業的に重要な一価イオン、例えばナトリウム、リチウム又はカリウムイオンを含有し得る。これらの種は、当業者に公知の方法を用いて塩化ナトリウム鹹水から抽出することができる。その場合、ナノ濾過阻止物はカルシウム又はマグネシウムイオン等の二価イオンの大半を含有しており、これらをしかるべく抽出することができる。
本発明の幾つかの実施形態において、供給水は、岩塩堆積物のソリューションマイニングで得られる溶液にもなり得る。特に、供給水は金属種、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウム種の鉱石からのリーチング由来になり得る。このリーチング工程が酸リーチング工程であるならば、供給水を中和してからシステムを作動させ得る。その後に回収される塩化ナトリウム鹹水は目的とする一価イオンを豊富に含有するが、二価金属イオンはナノ濾過阻止物中に濃縮される。次に、金属種をしかるべく分離することができる。
本発明の方法においては、供給水をナノ濾過することで透過水と濃縮水とを生成する。「ナノ濾過した/された」、「ナノ濾過」又はその他の派生語は、供給水を1枚以上のナノ濾過膜を使用して濾過することを意味する。透過水は膜を通過する液体であり、濃縮水は膜によって保持される液体である。
「ナノ濾過ユニット」とは、1枚以上のナノ濾過膜を取り付けたユニットを意味する。このユニットは別個の複数のナノ濾過装置を備え得て、各ナノ濾過装置は1枚以上の膜を有し、これらの膜は直列、平行又はこれらの組み合わせで配置される。幾つかの実施形態において、ナノ濾過ユニットは、供給水をナノ濾過に適した圧力で給水するためのポンプを含み得る。しかしながら、これを目的としたポンプをナノ濾過ユニットとは別に設置してもよい。適切なポンプには、供給水をナノ濾過ユニットに最高3.0MPaの圧力で給水可能な高圧ポンプが含まれる。ただし、幾つかの実施形態において、ナノ濾過で用いられる圧力は約1.0〜約2.5Mpaになり得る。
ナノ濾過膜は、逆浸透膜と限外濾過膜との間の分離範囲に位置する。したがって、これらの膜は、約1〜約10nm、分子量200g/モル以上の範囲にある粒径の分離に適している。ほぼ大多数の市販のナノ濾過膜が薄膜複合材タイプであり且つ螺旋構成で非セルロースポリマーから形成されるが、ナノ濾過膜は、螺旋状、中空細繊維状、管状又は板状構成になり得る。このポリマーは通常、負に帯電した基が組み込まれた疎水性タイプである。本発明で特に有用であると判明しているナノ濾過膜には、GE Water&Process Technologiesが供給するSeasoftシリーズ膜、例えばSeasoft 8040 HF膜又はSeasoft 8040 HRが含まれる。適切な膜はDow Chemical(米国)(例えば、DOW FILMTEC NF270−400膜)及びHydranautics(例えば、ESNAl−LF−4040又はESNA1−LF膜)からも市販されている。
逆浸透膜及び限外濾過膜とは異なり、ナノ濾過膜では2つのメカニズムでもって分離を行っている。サイズによる中性粒子の阻止及び荷電膜との静電相互作用によるイオン種の阻止である。加えて、ナノ濾過膜の働きは、部分的に浸透の原理に基づいてもいる。そのため、ナノ濾過膜は、一価イオン(例えば、溶解塩化ナトリウム)より二価イオン(例えば、硫酸、カルシウム及びマグネシウムイオン)をより多く阻止する。本発明において、ナノ濾過濃縮水は、供給水からの二価イオンの少なくとも85%を含む。幾つかの実施形態において、濃縮水は供給水からの二価イオンの少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%を含む。特定の膜は、99%を超える硫酸イオンを濃縮水中に保持し得る。
溶解塩化ナトリウムを含めた幾つかの一価イオンは、ナノ濾過濃縮水中に保持され得る。概して、ナノ濾過では、40%未満、好ましくは35%未満、より好ましくは20%未満の溶解ナトリウムイオンが供給水から濃縮水に分離される。
幾つかの実施形態において、濃縮水中のイオンの組成は、供給水中のカルシウムの90%以上、供給水からのマグネシウムの95%以上、供給水からの硫酸塩の95%以上、供給水からの炭酸水素の87%以上及び供給水からのナトリウムの35%未満である。
幾つかの実施形態において、濃縮水は総供給水体積の約40%以下、好ましくは約30%以下を構成する。すなわち、透過水は供給水体積の約60%以上、好ましくは供給水体積の約70%以上を構成する。
幾つかの実施形態においては、回収する透過水の量を増加させるために、第1ナノ濾過膜(又は装置)からの濃縮水を第2ナノ濾過膜(又は装置)におけるナノ濾過に供する。第1及び第2ナノ透過水からの透過水を合流させ、精製すると塩化ナトリウム鹹水が得られる。したがって、複数のナノ濾過膜又は装置を直列に配置することができ、各膜又は装置からの透過水を残りの膜又は装置のものに合流させることで供給水のナノ濾過で回収する透過水の量を最大化する。
幾つかの実施形態においては、回収する透過水の純度を改善するために、第1ナノ濾過膜(又は装置)からの透過水を第2ナノ濾過膜(又は装置)におけるナノ濾過に供する。二価イオンの大部分が第1ナノ濾過膜の濃縮水中に流れ込むことから、これらの第1及び第2ナノ濾過段階を異なる圧力で行い得る。したがって、第2ナノ濾過膜にはより高い動作圧力を採用することが有利となり得る。幾つかの実施形態においては、透過水を連続的に処理するために3枚以上の膜を直列に配置する。これらの実施形態の幾つかにおいては、各膜の動作圧力を、直列に配置された膜に沿って連続的に上昇させる。
ナノ濾過濃縮水は、約72,000ppm以下、好ましくは約36,000ppmの全溶解塩分(TDS)含有量を有し得る。幾つかの実施形態においては、濃縮水を供給水の水源に戻して放出することができる。例えば、供給水が(任意で前処理された)海水であるならば、濃縮水を海に戻して放出することができる。
あるいは、濃縮水において濃縮された不純物から商業的に価値のある生成物を回収するために、濃縮水をさらなる処理に供し得る。例えば、濃縮水を処理してマグネシウム又はカルシウムを回収することができる。この回収を、粗製塩を用いて得られる生鹹水からイオンを除去するのに用いるものと同様の化学析出処理を用いて行い得る。
上述したように、ナノ濾過透過水を精製すると、塩素アルカリ膜セルを有する水酸化ナトリウム製造プラントでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水が生成される。本発明において、精製は、透過水を電気透析することで透過水より高い濃度の全溶解塩分及び低い割合の二価イオンを有する濃縮物と、透過水から分離された水及び二価イオンを含む希釈物とを生成することを含む。幾つかの実施形態において、電気透析は、二価イオンを透過水から分離するより、透過水から水を分離するのにより効果的になり得る。したがって、得られる濃縮物は透過水より高い濃度の二価イオン(ppm)を有し得るが、この二価イオン濃度は依然として、透過水の全溶解塩分に対する透過水における二価イオン濃度より低い割合の濃縮物全溶解塩分となる。
本明細書で使用の用語「電気透析」及びその派生語は、電解質溶液の組成及び/又は濃度を、これらの溶液と接触している膜を通した電気移動の結果として変化させる工程を意味する。電気透析装置は一般に狭いコンパートメントの積層体であり、そこを通って供給溶液がポンプ輸送される。積層体の一端にあるアノード及びもう一端にあるカソードにより、積層体に電圧を印加する。コンパートメントはイオン交換膜で隔てられており、これらのイオン交換膜は一般に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とが交互に配置されたものであり、これらの膜はそれぞれ陽イオン及び陰イオンに対して選択的に透過性である。本発明に適した電気透析装置は、1枚の陰イオン交換膜と1枚の陽イオン交換膜とを備える少なくとも1対の膜を有し得る。幾つかの実施形態において、装置はそのような膜の対を複数、好ましくは100対以上、より好ましくは300対以上有し得る。
適切な電気透析装置には、逆電気透析を行える仕様のものが含まれる。逆電気透析においては、膜に印加する電荷を周期的に逆転させる。極性を逆転させることで電極での化学反応が逆転し、これが膜のスケーリング又はファウリングの制御を支援することから、装置は、慣用の「一方向」電気透析を用いるシステムより長期間にわたってメンテナンスなしで連続的に動作できるようになる。幾つかの逆電気透析装置において、極性は1時間で2〜4回切り替わる。
電気透析によりナノ濾過透過水は濃縮物と希釈物とに分離される。本明細書で使用の用語「濃縮物」とは、ナノ濾過透過水より高い溶解塩分濃度を有する、電気透析装置又はユニットから出てくる流れを意味する。「希釈物」は、ナノ濾過透過水と比較して溶解塩分濃度において欠乏が見られる、電気透析装置又はユニットから出てくる流れである。逆電気透析を用いる装置を使用する場合、出てくる濃縮物及び希釈物は極性が逆転する度に切り替わる。そのような装置は典型的には本発明のシステムの別の部位に、流出物の切り替えを補い且つ正しい流れを工程の残りに連続的に供給するための適当なバルブ系でもって連結される。
「電気透析ユニット」とは、1つ以上の電気透析装置を備えたユニットを意味する。本発明において有用な電気透析装置にはAstom Corporation製のもの、例えばAcilyzer 25−300モデル又はTokuyama Corporation製のもの、例えばTSW−200モデルが含まれる。TSW−200モデルは3200対の膜を有し、各対は2m2の有効面積を有し、隣接する膜とは0.75mm離れている。Acilyzer 25−300モデルは300対の膜及び、セル対の片側あたり75m2の総有効膜表面積を有し、本発明での使用に特に適している。逆電気透析を行うことができる適切な装置には、Astom CorporationのAcylizer EDRが含まれる。
好ましい実施形態において、電気透析装置は、一価陰イオン選択膜である少なくとも1枚の膜と、一価陽イオン選択膜である少なくとも1枚の別の膜とを備える。一価陰イオン選択膜は、一価陰イオン、例えば塩素陰イオンを選択的に通す陰イオン交換膜であり、二価陰イオン、例えば硫酸イオンを選択的に阻止する。本発明で有用な一価陰イオン選択膜の例には、Astom Corporationが商品名NEOSEPTAで販売しているグレードACSの選択膜が含まれる。一価陽イオン選択膜は、一価陽イオン、例えばナトリウムイオンを選択的に通す陽イオン交換膜であり、二価陽イオン、例えばカルシウム及びマグネシウムイオンを選択的に阻止する。本発明で有用な一価陽イオン選択膜の例には、Astom Corporationが商品名NEOSEPTAで販売しているグレードCIMSの選択膜が含まれる。
幾つかの実施形態において、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜のそれぞれは一価イオン選択膜である。例えば、電気透析装置は、交互になったNEOSEPTA ACS膜とNEOSEPTA CIMS膜とから構成される積層体を備え得る。
ナノ濾過透過水は、電気透析を経て濃縮物と希釈物とに分離される。濃縮物の体積は、ナノ濾過透過水の総体積の約2〜約4%、好ましくは約2.5〜約3%に等しくなり得る。一価イオン選択膜を使用する場合、電気透析濃縮物は高レベル、例えば200,000ppmを超える塩化ナトリウムを含有し得る。濃縮物が塩化ナトリウムを210,000ppmを超える濃度、より好ましくは220,000ppmを超える濃度、より一層好ましくは240,000ppmを超える濃度で含有することが好ましい。幾つかの実施形態においては、例えば供給水が逆浸透濃縮水を含む場合、電気透析濃縮物は300,000ppm以上の塩化ナトリウム濃度を有し得る。
幾つかの実施形態においては、回収する濃縮物の量を増加させるために、第1電気透析装置からの希釈物を第2電気透析装置における電気透析に供する。第1濃縮物及び第2濃縮物を合流させ、これらの濃縮物を精製することで塩化ナトリウム鹹水を生成し得る。したがって、複数の電気透析装置を直列に配置することができ、各装置からの濃縮物を残りの装置の濃縮物と合流させることで回収する濃縮物の量を最大化する。
幾つかの実施形態においては、回収する濃縮物の純度を改善するために、第1電気透析装置からの濃縮物を第2電気透析装置での電気透析に供する。幾つかの実施形態においては、濃縮物を連続的に処理するために3つ以上の装置を直列に配置する。
電気透析濃縮物は典型的には700ppm未満の二価イオンを有する。幾つかの実施形態において、電気透析濃縮物は350ppm未満、好ましくは100ppm未満の二価イオンを有する。例えば、ナノ濾過透過水は8ppmのカルシウム含有量及び13.5ppmのマグネシウム含有量を有し得るため、電気透析濃縮物は約32ppmのカルシウム及び約21ppmのマグネシウムを有することとなり、二価イオンの総量は100ppm未満である。
幾つかの実施形態においては、不純物の総レベルをさらに低下させるために、電気透析濃縮物をナノ濾過に供し得る。これは、電気透析濃縮物を最初のナノ濾過段階に戻して再循環させることで達成し得る。幾つかの実施形態において、本発明の方法はバッチ式で行われる。これらの実施形態においては、1バッチ分の供給水を処理し、得られる全ての電気透析濃縮物を、新たな供給水バッチと合流させることなくナノ濾過段階に戻して再循環させ得る。
あるいは、電気透析濃縮物の少なくとも一部を、ナノ濾過ユニットに流れ込む供給水に合流させ得る。これは、本方法を連続的に行う場合に起こり得る。
他の幾つかの実施形態においては、別個の第2ナノ濾過ユニットが、第1ナノ濾過ユニット及び電気透析ユニットの下流に設置される。これらの実施形態において、第2ナノ濾過ユニットの透過水は、塩素アルカリ膜セルでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水になり得る。あるいは、第2ナノ濾過ユニットの透過水を第2電気透析ユニットに供給し得て、電気透析濃縮物は塩素アルカリ膜セルでの使用に適した塩化ナトリウム鹹水になり得る。幾つかの実施形態においては、適切な純度の塩化ナトリウム鹹水を得るために、3つ以上のナノ濾過及び電気透析段階を直列に設定し得る。
電気透析希釈物を逆浸透により処理することで逆浸透濃縮水を生成し得る。次に、この逆浸透濃縮水を、供給水が逆浸透濃縮水を含むようにナノ濾過ユニットに供給し得る。逆浸透濃縮水を含む供給水を使用して得られる電気透析濃縮物は、無処理の供給水を用いて得られる濃縮物より低いレベルの二価イオン及び高いレベルの全溶解塩分を有し得る。これは、85%の二価イオンが除去される最初のナノ濾過段階の結果である。したがって、逆浸透段階に送られる電気透析希釈物は、全塩分に対して、最初の供給水より低い二価イオンの割合を有する。このため、逆浸透処理により得られる濃縮水は、最初の供給水より高いレベルの全塩分(大部分を占める溶解塩化ナトリウムと相対的に低い割合の二価イオン)を有し得る。この濃縮水をナノ濾過及び電気透析に供することで、二価イオンの割合がさらに低下し、得られる電気透析濃縮物は300,000ppmを超える全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有し得る。供給水が主に又は全て逆浸透濃縮水から構成される実施形態において、電気透析濃縮物における二価イオンの濃度は20ppbもの低さになり得る。
「逆浸透により希釈物を処理」又はその他の派生的な表現は、希釈物を1枚以上の逆浸透膜を使用して処理することを意味する。逆浸透透過水は膜を通過する液体であり、濃縮水は膜によって保持される液体である。「浸透」は濃度の低い溶液からより濃度の高い溶液へと液体が膜を通って移動することであると定義され、「逆浸透」では同じ原理を用いるが濃縮溶液に圧力を印加することで透過水流を逆方向に強制的に流すことから、逆浸透と称される。本発明の方法において、逆浸透処理中に希釈物に印加される圧力は6〜7MPaのオーダーである。
ナノ濾過膜と比較して、逆浸透膜は、イオン及び有機化合物に対する不透過度が高い。逆浸透膜は塩化ナトリウムを含めた事実上全てのイオンに対して相対的に不透過性である。したがって、逆浸透膜は、塩水又は汽水の脱塩による飲料水の製造に広く用いられている。本発明で使用する逆浸透膜は、螺旋状のポリアミド膜になり得る。本発明に適した膜には、Dow Chemicals(米国)(例えば、DOW FILMTEC逆浸透膜)及びHydranauticsから市販のものが含まれる。本発明で特に有用であると判明している逆浸透膜には、海水処理用に特別に設計された例えばSW30HR−380膜又は汽水処理用に特別に設計された例えばBW30−4040膜であるFILMTEC逆浸透膜が含まれる。
「逆浸透ユニット」とは、1枚以上の逆浸透膜を取り付けたユニットを意味する。このユニットは別個の複数の逆浸透装置を備え得て、各逆浸透装置は1枚以上の膜を有し、これらの膜は直列、平行又はこれらの組み合わせで配置される。本発明において有用な逆浸透装置には、海水逆浸透ユニット、例えばFILMTEC SW30HR−380膜を取り付けたユニット及び汽水逆浸透ユニット、例えばFILMTEC BW30−4040膜を取り付けたユニットが含まれる。
特定の塩素アルカリ膜セルは、約250ppm以下の二価不純物レベルで動作することができる。しかしながら、不純物レベルが上昇するにしたがって、セルの膜寿命は短くなる。このため、塩素アルカリ膜の交換コストと、高純度の鹹水を得るコストとのバランスをとらなくてはならない。一部の塩素アルカリ膜セルでは、鹹水中の不純物が200ppm未満でなくてはならない。これらの実施形態においては、電気透析濃縮物を、濃縮物を化学析出処理に供してさらに精製することで塩化ナトリウム鹹水を生成し得る。二価イオン、例えばカルシウム、マグネシウム及び硫酸塩を除去するための化学析出工程は、塩素アルカリ膜セル用に鹹水を精製するのに既に用いられている慣用の方法に従ったものとなる。例えば、硫酸塩を塩化カルシウム添加することで析出させ得て、電気透析濃縮物中のカルシウム及び残留塩化カルシウムを、工程の第2ステップにおいて、炭酸ナトリウムの添加に続く析出により除去し得て、マグネシウムを水酸化ナトリウムの添加により析出させ得る。析出試薬は、通常のやり方にしたがって過剰使用される。しかしながら、電気透析濃縮物中の二価イオンは典型的には700ppm未満であるため、当然のことながら、各試薬の総量は、粗製塩から得られる生鹹水の精製に必要な量よりはるかに少なくなる。
一旦不純物を析出させたら、処理済みの濃縮物を濾過する。例えば、析出させた不純物を遠心分離機により除去し得る。遠心分離機を連続的に動作させて析出物を除去し得る。幾つかの実施形態においては、フロキュレーション剤を添加することで、処理済みの濃縮物からの析出物の濾別を促進し得る。遠心分離機を使用した連続的な析出物の除去は、バッチ式で行われる慣用の天日塩製造工程で利用されるプレート・フレームフィルタープレスより有利である。
処理済み及び濾過後の電気透析濃縮物(すなわち、得られる塩化ナトリウム鹹水)は、1ppm未満、好ましくは50ppb未満の二価イオンを有し得る。
一部の塩素アルカリ膜セルでは、塩化ナトリウム鹹水が20ppb以下の二価イオンを有することが望ましい。そのように低い不純物レベルを達成するためには、化学析出に加えてイオン交換処理を行う必要があると考えられる。このイオン交換処理は、慣用の鹹水精製法にしたがって行い得る。このため、濾別された電気透析濃縮物を、キレート樹脂を有するイオン交換樹脂系を用いてさらに精製し得て、それによって20ppb以下の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水が生成される。適切な樹脂には、鹹水から二価陽イオン(例えば、カルシウム、マグネシウム)を除去するためのマクロ多孔質アミノアルキルホスホン酸又はイミノ二酢酸キレート樹脂が含まれる。そのような樹脂の例は米国特許第5,804,606号明細書に記載されており、その全内容は参照により本明細書に援用される。
一部の塩素アルカリ膜セルに関しては、塩化ナトリウム鹹水が飽和している、すなわち作業温度で全溶解塩分が約300,000〜約315,000ppmであり、含有している溶解塩分の大部分が溶解塩化ナトリウムから構成されることが望ましい。したがって、幾つかの実施形態において、本発明の方法は、(任意で、化学析出処理及び/又はイオン交換処理の実行後に)濃縮物を蒸発させて飽和塩化ナトリウム鹹水を得ることを含み得る。蒸発は、大気圧又は真空下で行い得る。蒸発は、熱式若しくは機械式蒸気再圧縮エバポレータ又はフラッシュエバポレータを含めた単一効用又は多重効用蒸発缶を用いて実行し得る。例えば、機械式蒸気再圧縮システム、例えばVeolia Water Solutions&Technologiesが供給するものを使用することで飽和塩化ナトリウム鹹水を生成し得る。
幾つかの実施形態においては、電気透析濃縮物の濃度を全溶解塩分240,000ppmに制限することがおそらくは望ましい。そうでないと塩分が膜上で結晶化し始める場合がある。これらの実施形態においては、続いて濃縮物を蒸発させることが有利になり得る。より濃度が高い鹹水、例えば飽和鹹水は塩素アルカリ膜セルでの使用が望ましいからである。
本発明で得られる塩化ナトリウム鹹水を蒸発、結晶化及び乾燥させることで、純度99.99%の塩化ナトリウム結晶を生成し得る。例えば、鹹水を真空下で蒸発させ、純度99.99%の塩化ナトリウムに結晶化させ得る。次に、この塩化ナトリウム結晶を遠心分離により乾燥させ得る。遠心分離したこれらの結晶をさらに、流動層乾燥器において乾燥させてから最終製品として包装し得る。
塩化ナトリウム鹹水の純度の結果として、結晶化工程ではにがりが大量に生成しないはずである。さらに、結晶化した塩を洗浄する必要はおそらくない。したがって、本発明の塩化ナトリウム鹹水の結晶化により、天日干しでの製塩に関係した塩の損失を最小限に抑え得る。また当然のことながら、土地利用の観点から、本発明のシステムは、天日干しでの製塩に必要な塩田よりはるかに狭い設置面積を有する。
本発明の幾つかの実施形態においては、蒸発工程で得られる濃縮物を回収し、また例えば処理することで、イオン交換樹脂の再生(イオン交換処理を用いる場合)に使用するための又は供給水で使用するための飲料水を得ることができる。
本発明で得られる塩化ナトリウム鹹水は、塩素アルカリ膜セルでの使用に適している。したがって、塩化ナトリウム鹹水を膜セルに直接送り、電解することで水酸化ナトリウムを生成し得る。このため、本発明は、供給水から水酸化ナトリウムを製造するための統合システムを提供し得る。
幾つかの実施形態においては、本発明の方法を実行するために、供給水の水源近くに建設された既存の水酸化ナトリウムプラント、例えば海水近くに建設された沿岸部のプラントを改造してナノ濾過ユニット及び電気透析ユニットを導入し得る。これらの実施形態では、塩素アルカリ膜セルと共に、適切な純度の塩化ナトリウム鹹水をセルに供給するために既存の精製設備を使用し得る。例えば、既存の化学析出及びイオン交換設備を改造して電気透析濃縮物を処理し得る。
幾つかの実施形態においては、ナノ濾過ユニット及び電気透析ユニットを、塩素アルカリ膜セルを有するプラントから離して設置し得る。しかしながら、これらの実施形態においては、それでもナノ濾過ユニット及び電気透析ユニットを、鹹水を水酸化ナトリウムプラントにポンプ輸送し得るように塩素アルカリ膜セルに流体接続し得る。追加の精製設備、例えば化学析出及びイオン交換設備を、ナノ濾過ユニット及び電気透析ユニットと共に設置し得る。あるいは、これらは水酸化ナトリウムプラントの一部を構成し得る。
逆浸透ユニットを備えるシステムの実施形態において、逆浸透ユニットは典型的にはナノ濾過ユニット及び電気透析ユニットと共に設置される。
水酸化ナトリウムの生成後、成分欠乏鹹水を再循環させ得る。この成分欠乏鹹水は塩化ナトリウム濃度約280,000ppmを有し得て、脱塩素後に精製ユニットに戻して再循環させることができる。例えば、成分欠乏鹹水を電気透析濃縮物と合流させてから濃縮物を蒸発させて飽和塩化ナトリウム鹹水を生成し得て、次にこの飽和塩化ナトリウム鹹水を塩素アルカリ膜セルに送り得る。成分欠乏鹹水を電気透析濃縮物に、化学析出及び/又はイオン交換に供した後に合流させてもよい。
上述したように、ナノ濾過透過水を電気透析により濃縮物と希釈物とに分離する。濃縮物の体積は、ナノ濾過透過水の総体積の約2〜約4%に等しくなり得る。残りの96〜98%の希釈物は約18,000ppmのTDSレベルを有し得る。電気透析希釈物を公知の脱塩方法、例えば逆浸透で処理することで、例えば500ppm未満のTDSを有する飲料水を生成し得る。600mg/リットル未満のTDSレベルを有する水は概して、World Health Organisation Guidelines for Drinking−Water Quality,third edition,2008に準拠した良好な水の美味しさを有するとみなされる。
幾つかの実施形態においては、電気透析希釈物を逆浸透により処理することで、その体積の約75%を500ppm未満のTDSを有する飲料水として回収する。
本発明の方法を、電気透析希釈物を逆浸透ユニットに送り、逆浸透ユニットの濃縮水を供給水に再循環させて行うこともできる。この構成においては、システムをバッチ式又は定常状態で稼働する連続系として動作させることができる。そのようなシステムにおいては、再循環させた逆浸透濃縮水中の全溶解塩分の濃度が、塩化ナトリウム鹹水の組成に影響する場合がある。特に、逆浸透濃縮水中の全溶解塩分の濃度の上昇は、塩化ナトリウム鹹水におけるナトリウム濃度の上昇、ひいてはその二価イオン含有量の低下を引き起し得る。
再循環させた逆浸透濃縮水中の全溶解塩分の濃度は、濃縮水流の浸透圧も決定する。一旦逆浸透濃縮水を供給水に再循環させたら、その合計圧力は、ナノ濾過ユニット給水ポンプの動作限度内にとどまるべきである。また、ナノ濾過膜における塩分の結晶化を防止するために、合流した流れにおける全溶解塩分の濃度はいずれの溶解塩分の飽和限度も超過すべきではない。これらの問題は、再循環させる逆浸透濃縮水中の全溶解塩分の適当なレベルを選択し、それを維持することで回避することができる。
再循環系において供給水として海水を使用する場合、再循環させる逆浸透濃縮水中の全溶解塩分は濃度約6%(60,000ppm)以下、好ましくは約6%に維持される。これらの実施形態において、ナノ濾過ユニットに流れ込む、供給水と逆浸透濃縮水とが合流した流れは、約4%(40,000ppm)以下、好ましくは約4%の全溶解塩分濃度を有する。さらに好ましい実施形態において、逆浸透濃縮水及びナノ濾過供給水中の全溶解塩分の濃度はそれぞれ約6%及び約4%である。
希釈海水を再循環系において供給水として使用する場合、ナノ濾過ユニット供給流の全溶解塩分レベルを、全溶解塩分が9.5%(95,000ppm)以下、好ましくは約9%(90,000ppm)〜9.5%、より好ましくは約9.5%の逆浸透濃縮水を再循環させることで、約4%(40,000ppm)以下、好ましくは約4%である値に維持する。希釈海水の使用を想定していない実施形態と比較して、これらの実施形態は、ナノ濾過供給水中の二価イオン(すなわち、カルシウム、マグネシウム、硫酸塩及び同様のイオン)の濃度をさらに低下させるのが望ましい場合に特に有利である。
当業者ならば、本発明による塩化ナトリウム鹹水の製造を、自動遠隔制御方式でも達成できることがわかるであろう。この自動遠隔制御方式での製造は、本発明の方法を行う様式に応じた当該分野で公知の別個のバッチ式又は連続制御システムを採用して行うことができる。制御システムは、本発明のシステムの関連セクションに搭載したセンサ及びアクチュエータのハードウェアネットワークを備え得る。センサ及びアクチュエータハードウェアネットワークは主制御ユニット、すなわちプログラム可能論理制御(PLC)ユニットに接続される。制御ユニットは、コンピュータプロセッサにインストールした適切なプロセス制御ソフトウェア、すなわち統計的又は多変数制御ソフトウェアを通して設定することができる。システムを、オペレータが事前に設定するプロセスパラメータ値にしたがって動作するように設計し得る。ソフトウェアは自動的に、事前に設定されたプロセスパラメータ値と、センサのネットワークによって記録された対応する値とを比較する。記録値が事前設定値と異なるならば、ソフトウェアは入力値を制御ユニットに送信し、システムの関連セクションに搭載した適切なアクチュエータを作動させることで、事前設定値に関連プロセスパラメータを自動的に合わせる。ソフトウェアはアクチュエータを、センサの入力データに基づいて作動させ、また公知のフィードバック制御アルゴリズム、すなわち比例、積分、微分又は比例、積分及び微分のいずれの組み合わせによりシステムを調節して事前設定値に合わせる。
センサは、接触又は非接触温度センサ(すなわち、温度計、抵抗式温度検出器、熱電対、赤外線検出器、高温計等)、圧力センサ(すなわち、弾性センサ、電気センサ、差圧セル、真空センサ等)、フローセンサ及び流量センサ(すなわち、差圧計測器、直接力計測器、周波数計、超音波計測器、磁気計測器、熱量計、ギアメータ、サーマルメータ等)、組成センサ(すなわち、測光センサ、電気測定センサ等)、pHセンサ及び当該分野で公知の同様のセンサになり得る。
アクチュエータは、例えば、システム内の流れの流束を変化させることができるバルブ(すなわち、空気弁、油圧調節弁、電気バルブ等)、ポンプ用の可変速駆動装置(すなわち、機械式、油圧式、電気式の可変速駆動装置等)及び当該分野で公知の同様のアクチュエータになり得る。
例えば、逆浸透濃縮水中の全溶解塩分の濃度を、そのような自動フィードバック制御により一定の事前設定値に維持することができる。事前設定濃度は、プロセス制御ソフトウェアの入力値になり得る。次に、濃縮水流中の塩分濃度(電気測定センサ等の組成センサにより測定)が最初の事前設定値に合うように、ソフトウェアは逆浸透供給流中に設置された流束制御バルブを作動させることができる。
さらに、ナノ濾過ユニット供給水の動作圧力が逆浸透濃縮水の濃度及び浸透圧に左右されることを考慮して、可変速駆動装置を用いて供給ポンプの周波数及び電力消費を制御することができる。制御ソフトウェアは、可変速駆動装置を、ナノ濾過ユニット供給水中に設置された圧力センサが受け取った圧力データに基づいて自動的に操作する。同様に、電力消費を抑えるために、ナノ濾過濃縮水に圧力変換機又は同様の装置を経由させることもできる。
以下、本発明の図示の実施形態について説明するが、これらの実施形態は例として挙げたものにすぎない。
図1は、本発明の一実施形態の工程フロー図である。この実施形態の供給水流90は海水である。そのため、供給水水源330は海である。
この実施形態において、飽和塩化ナトリウム鹹水610、純度99.99%の純粋な塩化ナトリウム結晶620及び飲料水320の製造工程について説明する。
この実施形態においては、供給水流90をナノ濾過ユニット100に送って透過水130と濃縮水120とを生成する。ナノ濾過ユニット100は、GE Water&Process Technologiesが供給するSeasoftシリーズ膜等の膜を有する1つ以上のナノ濾過装置(図1には図示せず)を含み得る。この実施形態においては、供給水流90をナノ濾過ユニット100に、1.2MPa未満、好ましくは1.0MPaの圧力で送る。これらの圧力では、供給水流90中の二価イオンの少なくとも85%が濃縮水120中に分離される。次に、この濃縮水を供給水水源330(海)に放出する。
例えば23,000ppmのTDSを有する透過水130を、精製ユニット150に送る。精製ユニットは電気透析ユニット200を含み、この電気透析ユニット200は1つ以上の電気透析装置(図1には図示せず)、例えばAstom Corporationが供給するAcilyzer 25−300電気透析装置を含み得る。透過水130を連続的に速度約1675m3/時間及び35℃での圧力0.2MPaで電気透析ユニット200に送る。電気透析ユニット200がAcilyzer 25−300電気透析装置を含む実施形態においては、電気透析装置を380V、60Hz、60Ampで3相の電力供給で作動させる。
電気透析ユニット200からの濃縮物220は速度39m3/時間で放出され、また約230,000ppmのTDSを有する。濃縮物220の二価イオン含有量は約700ppm未満である。濃縮物220の塩化ナトリウム含有量は210,000ppmを超える。
電気透析ユニット200からの希釈物210は約18,000ppmのTDSレベルを有し、また飲料水320を回収するために逆浸透ユニット300に送られる。逆浸透ユニット300の濃縮水310は約60,000ppmのTDSを有し得る。すなわち、濃縮水310は海水の2倍に近いTDS含有量を有し得るため、図1に示すように、供給水流90に再循環させることができる。あるいは、図1の破線で示されるように、供給水水源330に放出し得る。
濃縮水310を供給水流90に再循環させる場合、逆浸透ユニット300は精製ユニット150の一部を構成する。上述したように、濃縮水310は約60,000ppmのTDSになり得る。これらの溶解塩分中、約700ppmは二価イオンである。したがって、この濃縮水310を供給流90に再循環させ、ナノ濾過ユニット100及び電気透析ユニット200を使用して処理する場合、得られる濃縮物220は約305,000ppmのTDS及び250ppm未満の二価イオンを有する。
濃縮水310を再循環させる実施形態において、逆浸透ユニット300は約8,600ppmのTDSを有する透過水340を生成し得て、この透過水340は供給水水源330に放出することができる又は飲料水を回収するために別の汽水逆浸透ユニット(図示せず)に送ることができる。あるいは、図1の破線で示されるように、濃縮水310を再循環させない実施形態においては、希釈物210の体積の75%を超える量を、TDSが500ppm未満の飲料水320として回収し得る。
図1に図示の実施形態においては、電気透析ユニット200からの濃縮物220を単一効用機械式蒸気再圧縮ユニット(MVR)600に送る。濃縮物220からの蒸気610は凝縮器611において凝縮され、得られる凝縮物630は貯槽640に貯蔵される。蒸気凝縮物630は10ppm未満のTDSを有し得る。幾つかの実施形態においては、蒸気凝縮物630を飲料水320に合流させることができる(図1には図示せず)。
第1の工程流路に沿って、電気透析ユニット200からの濃縮物220を、濃度315,000ppmを有する飽和鹹水610となるまでMVR600を使用して蒸発させる。飽和鹹水610を別に貯蔵し、のちに遠隔地にある水酸化ナトリウムプラントに出荷することができる。あるいは、図1に示すように、水酸化ナトリウム720を生成するために、少なくとも1枚の膜セルを備える塩素アルカリユニット700に直接送ることができる。約280,000ppmの塩化ナトリウム濃度を有し得る成分欠乏鹹水710を、脱塩素後に、蒸発させるためにMVR600に戻すことができる。成分欠乏鹹水710を濃縮物220と共に蒸発させることで飽和鹹水610を生成し得る。
第2の工程流路に沿って(破線で図示)、電気透析ユニット200からの濃縮物220を、塩化ナトリウム結晶620が得られるまでMVR600を使用して蒸発させる。これらの結晶620を、遠心分離機及び乾燥流動層を含み得る乾燥ユニット650で処理すると、乾燥バルク塩化ナトリウム660が得られる。
概して、本発明を実行するにあたっては、第1及び第2流路の一方だけを採用する。しかしながら、幾つかの実施形態においては、複数のMVR600を使用することで第1及び第2流路を同時に実行し得る。
図2は、2つのナノ濾過装置101、102を備えるナノ濾過ユニット100の実施形態を示す。第1ナノ濾過装置101からの濃縮水112は第2ナノ濾過装置102へと、第1ナノ濾過装置101に用いた圧力より若干高い圧力で送られる。両方のナノ濾過装置101、102からの総回収体積は、投入体積の約70%となる。ナノ濾過装置101、102からの透過水111、113は合流して透過水130となり、約23,000ppmのTDSを有する。第2ナノ濾過装置102から放出されるナノ濾過ユニット100の濃縮水120は約72,000ppmのTDSを有する。
濃縮水112中の溶解塩分は、カルシウム、マグネシウム、硫酸イオン等の二価イオンの大部分(すなわち少なくとも85%)に対応し、また供給水流90からのナトリウム、カリウム、塩化物イオン等の一価イオンを少量しか含まない。第2ナノ濾過装置102において、相対的に少量の一価イオンは濃縮水120に分離され、濃縮水120における二価イオン対一価イオン比が上昇する。第2ナノ濾過装置102からの透過水113中のイオンは実質的に一価イオンとなる。
二価イオンが豊富な濃縮水120をさらに処理することで、カルシウム及びマグネシウムを回収することができる。あるいは、供給水水源330に放出し得る。
図3は、2つの電気透析装置201、202を備える電気透析ユニット200の実施形態を示す。第1電気透析装置201からの希釈物211は約18,000ppmのTDSを有し、また第2電気透析装置202に送られ、第2電気透析装置202は濃縮物222と希釈物210とを生成する。濃縮物222は第1装置201の濃縮物212と混合されて濃縮物220となる。濃縮物220を、精製ユニット150の別の部位、例えば図1に示すようにMVR600においてさらに処理し得る。この実施形態の希釈物210は低レベルのTDSを有し、また供給水水源330に戻して放出することができる。
精製ユニットの代替の実施形態を図4に示す。この実施形態においては、電気透析ユニット200からの濃縮物220を化学析出ユニット400において処理する。
濃縮物220に、ユニット400において試薬410を添加する。試薬410には、塩化カルシウム溶液410a、水酸化ナトリウム溶液410b及び炭酸ナトリウム溶液410cが含まれる。塩化カルシウム溶液410aを十分な量で添加することで、硫酸イオンを濃縮物220から硫酸カルシウム420aとして除去する。同様に、水酸化ナトリウム溶液410bを十分な量で添加することで、濃縮物220中のマグネシウムを水酸化マグネシウム420bとして析出させる。十分な炭酸ナトリウムを添加することで、濃縮物220からカルシウムを、塩化カルシウム溶液410aからの残留カルシウムと共に析出させる。このカルシウムは、炭酸カルシウム420cとして析出する。析出した硫酸カルシウム420a、水酸化マグネシウム420b及び炭酸カルシウム420cを含むスラリー420を濾過ユニット450で濾過すると、濾過された鹹水流440と、析出した硫酸カルシウム420a、水酸化マグネシウム420b及び炭酸カルシウム420cを含む固形残留物430とが得られる。
本発明のこの実施形態においては、化学析出を、水酸化ナトリウムを合成するための調製において粗製塩から構成される生鹹水の精製に利用する化学析出方法にしたがって行う。しかしながら、濃縮物220における不純物レベルは約700ppmにすぎないため、慣用の工程と比較して少量の試薬410しか必要としない。加えて、得られる固形残留物430の量も、生鹹水を精製する慣用の工程より少ない。濾過した鹹水流440をさらにイオン交換ユニット500において処理することで鹹水中の総不純物量を減少させ、また二価イオンを含めた不純物が20ppb未満の精製鹹水510を生成する。イオン交換ユニット500は、キレートイオン交換樹脂を利用するイオン交換樹脂床を含む。各種陽イオンに対する樹脂の相対的親和性は、以下の順序で低下し得る:Mg>Ca>Sr>Ba>Na>K。
濾過した鹹水流440は、塩化ナトリウム濃度約300,000ppm及びpH約11を有し得る。この鹹水流440をイオン交換ユニットに温度約60℃で送る。イオン交換ユニット500での流量は、イオン交換樹脂床の体積をベースとし得て、約20ベッドボリューム/時間の流量が本発明にとって有用であると考えられる。特に適切な樹脂、例えば米国特許第5,804,606号に記載の樹脂を、再生を必要するまで、これらの条件下で約72時間にわたって使用することができる。
幾つかの実施形態においては、精製した鹹水510を、水酸化ナトリウム720を製造するための少なくとも1枚の膜セルを備える塩素アルカリユニット700に直接送り得る。幾つかの他の実施形態において、精製した鹹水はMVR600に送られ、水酸化ナトリウム720又は乾燥させたバルク塩化ナトリウム660を得るために、図1に図示の第1又は第2工程流路に沿って進む。
本発明について、以下の非限定的な実施例によりさらに説明する。
以下で説明及び図5、6で図示の実施例は、本発明による方法の実施形態である。これらの実施形態の性能及び工程で発生する様々な流れの組成は、以下でより詳細に説明する動作パラメータに基づいて計算されている。
実施例1
図5は、実施例1の工程フロー図である。
この実施例のための供給水は最初は、表1に示す組成及び1.5未満のSDIを有する海水である。この実施例における供給水水源330は海である。
この工程の開始にあたって、海水を供給水流90として速度8.49m3/時間でナノ濾過ユニット100に送る。ナノ濾過ユニット100は2つのナノ濾過装置101、102を備える。各ナノ濾過装置101、102は、GE Water&Process Technologiesが供給するSeasoft8040 HR薄膜(スパイラル膜)を含む。膜を流束20l/m2で作動させ、各膜は有効表面積36m2を有する。第1ナノ濾過装置101は3つの膜アレイを有し、第2ナノ濾過装置102は4つの膜アレイを有する。供給水流を、ポンプ141(図示せず)を介して圧力1.79MPaで第1ナノ濾過装置に送る。第1ナノ濾過装置101からの濃縮水112を第2ナノ濾過装置102に、ポンプ142(図示せず)を介して2.5MPaの若干高い圧力、速度3.72m3/時間で送る。ナノ濾過装置101、102からの透過水111、113は合流して透過水130となる。透過水111は速度4.77m3/時間で放出されると計算され、透過水113は速度2.03m3/時間で放出されると計算される。したがって、両方のナノ濾過装置101、102からの合計回収速度は6.8m3/時間であると計算され、供給水流90投入量の約80%に等しい。ナノ濾過ユニット100からの透過水130の計算上の組成を表2に示す。
ナノ濾過ユニット100の濃縮水120は、第2ナノ濾過装置102から速度1.69m3/時間で放出されると計算され、またその計算上の組成を以下の表3に示す。
この透過水130を流量6.8m3/時間で、Astom Corporationが供給するAcilyzer 25−300電気透析装置を有する電気透析ユニット200に送る。得られる電気透析濃縮物220及び希釈物210の計算上の組成を以下の表4、5にそれぞれ示す。濃縮物220は速度0.16m3/時間で生成され、希釈物210は速度6.64m3/時間で生成される。
表4に示す電気透析濃縮物220の組成から、本発明を、230,000ppmを超える全溶解塩分及び700ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水の製造に使用し得ることは明らかである。塩素アルカリセルに送る前に、そのような鹹水は追加の精製(脱イオン)ステップを経なくてはならない。
電気透析ユニット200からの希釈物210を次に、Filmtech XLE4040膜(Dow Chemicals(米国)のポリアミド薄膜)を取り付けた逆浸透ユニット300に送る。このユニットは、3段階の第1パスと1段階の第2パスから成る2パス逆浸透システムである。第1パスの3段階の各段階で印加される圧力はそれぞれ21.66、32.78及び39.19バールである。第1パスにおける平均流束は、有効膜面積533.43m2を通して8.98l/m2/時間である。第2段階の1パスにおける印加圧力は9.66バールである。第2パスの平均流束は、有効膜面積290.96m2を通して14.33l/m2/時間である。逆浸透ユニット300は、飲料水320を速度4.65m3/時間、逆浸透濃縮水310を速度1.99m3/時間で生成すると計算される。飲料水320及び濃縮水310について計算された組成を以下の表6、7にそれぞれ示す。
表6の組成から見てとれるように、本発明の方法を、600mg/l未満のTDSを有する飲料水320の製造に使用し得る。したがって、飲料水320の水の美味しさは、World Health Organisation Guidelines for Drinking−Water Quality,third edition,2008に準拠して良好であるとみなすことができる。
図5に示すように、濃縮水310を供給海水流に再循環させて合流供給流90とすることができる。この合流供給流90は、以下の表8に示す組成を有する。海水及び濃縮水310の供給水流90におけるそれぞれの割合は、6.5m3/時間及び1.99m3/時間である。
合流供給流を、供給水流90として、速度8.49m3/時間でナノ濾過ユニット100に送る。ナノ濾過ユニット100からの透過水130及び濃縮水120の計算上の組成を以下の表9、10にそれぞれ示す。海水を供給水流90として使用する工程を経る最初のサイクルと同様に、透過水130は速度6.8m3/時間で生成され、濃縮水120は速度1.69m3/時間で生成されると計算される。
この透過水130を、速度6.8m3/時間で電気透析ユニット200に送る。得られる電気透析濃縮物220及び希釈物210の計算上の組成を以下の表11、12にそれぞれ示す。濃縮物220は速度0.16m3/時間、希釈物210は速度6.64m3/時間で生成されると計算される。
表11に示す電気透析濃縮物220の組成から、本発明を、305,000ppmを超える全溶解塩分及び250ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水の製造に使用し得ることは明らかである。したがって、本発明のこの実施形態を、追加の脱イオンステップを必要とすることなく、塩素アルカリ膜セルに直接送るのに適した塩化ナトリウム鹹水の製造に使用し得る。
あるいは、この実施形態の電気透析濃縮物220を、ソーダ灰(炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム)の製造工程、例えばソルベー法における塩化ナトリウム鹹水前駆体として使用し得る。
電気透析ユニット200からの希釈物210は逆浸透ユニット300に送られ、この逆浸透ユニット300は上述したユニット300と同じ2パス浸透システムであり、同じパラメータで動作させる。この逆浸透ユニット300は逆浸透透過水340(図5の破線を参照のこと)を速度4.648m3/時間、逆浸透濃縮水310を速度1.99m3/時間で生成する。透過水340及び濃縮水310について計算した組成を、以下の表13、14にそれぞれ示す。
図5には図示していない幾つかの実施形態においては、透過水340を供給水水源330に放出し得る。あるいは、飲料水を回収するために別の汽水逆浸透ユニット(図示せず)に送り得る。透過水310を海水投入流に再循環させて供給水流90を得る。
実施例2
図6は、実施例2の工程フロー図である。
図5に図示の工程において、この実施例の供給水は、表15に示す組成及び1.5未満のSDIを有する海水である。この実施例における供給水水源330は海である。
海水を、供給水流90として速度8.49m3/時間で、実施例1において上述のナノ濾過ユニット100にしたがったナノ濾過ユニット100に送る。ナノ濾過ユニット100からの透過水130の計算上の組成を以下の表16に示す。
ナノ濾過ユニット100の濃縮水120は、第2ナノ濾過装置102から速度1.69m3/時間で放出されると計算され、その計算上の組成を以下の表17に示す。
この透過水130を、流量6.8m3/時間で電気透析ユニット200に送る。電気透析ユニット200は、3つの電気透析装置201、202、203を有する。各電気透析装置201、202、203は、Astom Corporationが供給するAcilyzer 25−300電気透析装置を備える。第1電気透析装置201から放出される電気透析濃縮物212及び希釈物211の計算上の組成を、以下の表18、19にそれぞれ示す。濃縮物212は速度0.16m3/時間、希釈物211は速度6.64m3/時間で生成される。
第1電気透析装置201からの希釈物211を、第2電気透析装置202に送る。第2電気透析装置202から放出される電気透析濃縮物222及び希釈物221の計算上の組成を以下の表20、21にそれぞれ示す。濃縮物222は速度0.16m3/時間、希釈物221は速度6.48m3/時間で生成されると計算される。
第2電気透析装置202からの希釈物221を、第3電気透析装置203に送る。第3電気透析装置203から放出される電気透析濃縮物232の計算上の組成を以下の表22、23にそれぞれ示す。濃縮物232は速度0.152m3/時間、希釈物210は速度6.33m3/時間で生成されると計算される。希釈物210を電気透析ユニット200から逆浸透ユニット300(図示せず)へと、さらなる処理のために図5に図示の工程にしたがって供給し得る。
各装置201、202、203からの濃縮物212、222、232は合流して濃縮物220となる。電気透析ユニット220から放出される電気透析濃縮物220の計算上の組成を以下の表24に示す。濃縮物220は速度0.472m3/時間で生成されると計算される。
表24に示す電気透析濃縮物220の組成から、一連の電気透析装置を使用して、本発明の方法を用いた180,000ppmを超える全溶解塩分及び700ppm未満の二価イオンを有する塩化ナトリウム鹹水の製造を最大化し得ることは明らかである。図6の概略図における破線は、希釈物210を実施例1において記載したものと同じ種類の逆浸透ユニット300に送り、次に逆浸透濃縮水310をナノ濾過ユニット100に再循環させることで鹹水をさらに精製する可能性を表している。図5には図示していない幾つかの実施形態においては、透過水320を海に放出し得る。あるいは、飲料水を回収するために別の汽水逆浸透ユニット(図示せず)に送り得る。
図6の概略図における破線は、希釈物210を実施例1において記載したものと同じ種類の逆浸透ユニット300に送り、次に逆浸透濃縮水310をナノ濾過ユニット100に再循環させることで鹹水をさらに精製する可能性を表している。図5には図示していない幾つかの実施形態においては、透過水320を海に放出し得る。あるいは、飲料水を回収するために別の汽水逆浸透ユニット(図示せず)に送り得る。
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数多くの改変が、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には明白である。