以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1(本発明の「液滴噴射装置」)は、キャリッジ2、インクジェットヘッド3(本発明の「液滴噴射ヘッド」)、搬送ローラ4、パージユニット5、フラッシングフォーム6、3枚の金属板7a〜7c(本発明の「金属部材」)を備えている。
キャリッジ2は、走査方向に延びた2本のガイドレール11に支持され、ガイドレール11に沿って走査方向に往復移動する。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載され、その下面であるノズル面3aに形成された複数のノズル10から鉛直方向下向き(本発明の「噴射方向」)にインク滴を噴射する。複数のノズル10は、走査方向と直交する搬送方向(本発明の「配列方向」)に配列されることによってノズル列9を形成しており、インクジェットヘッド3には、走査方向に並んだ2つのノズル列9が形成されている。搬送ローラ4は、搬送方向におけるキャリッジ2の上流側及び下流側に配置され、記録用紙Pを搬送方向に搬送する。
そして、プリンタ1では、搬送ローラ4によって記録用紙Pを搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ2とともに走査方向に移動するインクジェットヘッド3のノズル10からインク滴を噴射することによって、記録用紙Pに印刷を行う。
パージユニット5は、吸引キャップ21、吸引ポンプ22及び廃液タンク23を備えている。吸引キャップ21は、搬送ローラ4によって搬送される記録用紙Pが通過する領域よりも右側に配置され、キャリッジ2がほぼ最大限右側に移動したときに、複数のノズル10と対向する位置に設けられている。また、吸引キャップ21は、キャリッジ2が吸引キャップ21に近づいてきたときに、図示しない昇降機構によって、キャリッジ2の移動に連動して上昇するようになっており、複数のノズル10が吸引キャップ21と対向する位置までキャリッジ2が移動したときに、吸引キャップ21が、インクジェットヘッド3のノズル面3aに密着して複数のノズル10を覆う。
吸引ポンプ22は、チューブポンプ等であって、吸引キャップ21と接続されている。廃液タンク23は、吸引ポンプ22と接続されている。そして、プリンタ1では、吸引キャップ21が複数のノズル10を覆っている状態で吸引ポンプ22を駆動させことにより、複数のノズル10からインクジェットヘッド3内の増粘したインク、気泡異物等を排出させる、いわゆる吸引パージを行わせることができるようになっている。また、吸引パージによって排出されたインクは、廃液タンク23に貯留される。
フラッシングフォーム6は、スポンジ等インクを吸収可能な材料からなり、搬送ローラ4によって搬送される記録用紙Pが通過する領域よりも左側に配置されている。プリンタ1では、複数のノズル10とフラッシングフォーム6とが対向する位置までキャリッジ2を移動させた状態で、インクジェットヘッド3を駆動してノズル10からインクを噴射させる、いわゆるフラッシングを行うことができるようになっている。
3枚の金属板7a〜7cは、金属材料からなる板状体であり、搬送方向に沿って配列されている。金属板7a〜7cの左側の側面は、後述するように対向するインク滴の数の変化を検知するための検知面31となっている。検知面31は、平行四辺形の形状を有し、上下の縁32a、32bが搬送方向と平行であり、搬送方向の両側の縁32c、32d(本発明の「斜辺」)が、搬送方向及び鉛直方向に対して傾いているとともに互いに平行となっている。なお、図2では、縁32c、32dが、下側の部分ほど搬送方向上流側に位置するように、搬送方向及び鉛直方向に対して傾いているが、縁32c、32dは、下側の部分ほど搬送方向下流側に位置するように、搬送方向及び鉛直方向に対して傾いていてもよい。
また、走査方向から見て、複数のノズル10から噴射されたインク滴が通過する複数の通過空間Rは、金属板7a〜7cのうちいずれかの金属板の検知面31と重なっている。また、金属板7aの検知面31の搬送方向下流側の縁32dは、走査方向から見て、複数の通過空間Rのうち、図2搬送方向上流側から1〜4番目の通過空間Rにまたがる空間と重なっている。
また、金属板7bの検知面31の搬送方向上流側の縁32cは、走査方向から見て、金属板7bの検知面31と重なる通過空間Rのうち、図2における搬送方向上流側から2〜5番目の通過空間Rにまたがる空間と重なっている。また、金属板7bの検知面31の搬送方向下流側の縁32dは、走査方向から見て、金属板7bの検知面31と重なる通過空間Rのうち、図2における搬送方向上流側から5〜8番目の通過空間Rにまたがる空間と重なっている。
また、金属板7cの検知面31の搬送方向上流側の縁32cは、走査方向から見て、金属板7bの検知面31と重なる通過空間Rのうち、図2における搬送方向上流側から6〜9番目の通過空間Rにまたがる空間と重なっている。また、金属板7cの検知面31の搬送方向下流側の縁32dは、走査方向から見て、金属板7cの検知面31と重なる通過空間Rのうち、図2における搬送方向上流側から9、10番目の通過空間Rにまたがる空間と重なっている。
そして、金属板7a〜7cがこのように配置されていることにより、金属板7a〜7cにおいて、それぞれ、検知面31の複数の通過空間Rと重なる複数の部分33間で、上端(噴射方向における上流側の端)の位置及び下端(噴射方向における下流側の端)の位置のうち、少なくとも片方の端の鉛直方向における位置が異なっている。また、金属板7a〜7cには、それぞれ、上記複数の部分33の中に、鉛直方向の長さLが互いに異なるものが存在している。なお、図2では、各部分33にハッチングを付し、1つの部分33についてのみ、長さLを図示している。
また、本実施の形態では、金属板7aの検知面31と金属板7b検知面31、及び、金属板7bの検知面31と金属板7cの検知面31が、それぞれ、鉛直方向から見て重なっている。これにより、図2における搬送方向上流側から2〜4番目のノズル10に対応する通過空間Rが、走査方向から見て、金属板7aの検知面31及び金属板7bの検知面31と重なる。また、搬送方向上流側から6〜8番目のノズル10に対応する通過空間Rが、走査方向から見て、金属板7bの検知面31及び、金属板7cの検知面31と重なる。
このように、本実施の形態では、複数の部分33の上端及び下端のうち少なくとも片方の端を、搬送方向及び鉛直方向に対して傾いた直線状の縁をなすものとなっている。そして、検知面31が平行四辺形の形状を有する簡単な形状の金属板7a〜7cにより、複数の部分33の上端及び下端のうち少なくとも片方の端を、搬送方向及び鉛直方向に対して傾いた直線状の縁をなすものとすることができる。
また、各金属板7a〜7cには、それぞれ、電流検出装置41(本発明の「信号検出手段」)が接続されており、電流検出装置41は、抵抗42を介して接地されている。これにより、各金属板7における電流値を、電流検出装置41によって検出することができるようになっている。
次に、プリンタ1のハードウェア構成について説明する。プリンタ1は、上述したような構成の他、制御装置50を備えている。制御装置50は、CPU(Central Processing Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって構成されており、これらが協働して、キャリッジ2、インクジェットヘッド3、搬送ローラ4、吸引ポンプ22等の制御を行う。また、制御装置50は、電流検出装置41によって検出された電流値に応じて、後述するように、複数のノズル10についてインク滴が噴射されたか否かを検出することで、インク滴が噴射されない不噴射ノズルを特定する。すなわち、本実施の形態では、制御装置50が、本発明に係る不噴射ノズル特定手段を備えたものとなっている。
なお、制御装置50は、CPUを1つだけ備え、この1つのCPUが必要な処理を一括して行ってもよいし、CPUを複数備え、これら複数のCPUが必要な処理を分担して行ってもよい。また、制御装置50は、ASICを1つだけ備え、この1つのASICが必要な処理を一括して行ってもよいし、ASICを複数備え、これら複数のASICが必要な処理を分担して行ってもよい。
次に、インクジェットヘッド3において複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出する方法について説明する。インクジェットヘッド3では、ノズル10内のインクの増粘により、一部のノズル10からインク滴が噴射されないことがある。本実施の形態では、次に説明するようにして、複数のノズル10からインク滴が噴射されているか否かを検出することで、インク滴が噴射されなかった不噴射ノズルを特定する。
複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出するためには、まず、図3に示すように、右側のノズル列9を構成するノズル10に対応する通過空間Rが、搬送方向における、金属板7a〜7cの検知面31のすぐ下流側にくるような位置までキャリッジ2を移動させる。そして、右側のノズル列9を構成する全てのノズル10からインク滴を噴射させるようにインクジェットヘッド3を駆動し、電流検出装置41によって、一定の時間間隔で金属板7a〜7cにおける電流値を検出する。
ここで、ノズル10から噴射されるインク滴は、電荷を持っているため、インク滴が検知面31に近づく、又は、インク滴が検知面31から遠ざかることによって、検知面31と対向するインク滴の数が変動すると、静電誘導により金属板7a〜7cに電流が流れる。また、検知面31と対向するインク滴Dの数が増加するときと減少するときとでは、金属板7a〜7cに流れる電流の向きが逆になる。
金属板7a〜7cに流れる電流の変化について一例をあげて説明する。例えば、図5(a)、(b)に示すように、時刻T1〜T5において、それぞれ、電流検出装置41によって金属板7a〜7cにおける電流値を検出するとする。図5(a)、(b)では、時刻T1〜T5におけるインク滴Dの位置を示している。ノズル10からインク滴Dが噴射される前の状態では、金属板7a〜7cの検知面31と対向するインク滴Dの数はいずれも0個となっている。
全てのノズル10からインク滴が噴射された場合には、図5(a)に示すように、時刻T1において、4個のインク滴Dが金属板7aの検知面31と対向し、4個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向し、2個のインク滴Dが金属板7cの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が4個増加し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数が4個増加し、金属板7cの検知面31と対向するインク滴Dの数が2個増加する。これにより、検知面31と対向するインク滴Dの数が1つ増加したときに金属板7a〜7cに流れる電流をIとして、金属板7a、7bに約4Iの電流が流れ、金属板7cに約2Iの電流が流れる。
時刻T2には、3個のインク滴Dが金属板7aの検知面31と対向し、4個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向し、3個のインク滴Dが金属板7cの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴の数は変化せず、金属板7cの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個増加する。これにより、金属板7aには約−Iの電流が流れ、金属板7bには電流が流れず、金属板7cには約Iの電流が流れる。ここで、マイナスの符号は、電流の向きが、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が増加したときの電流の向きと逆であることを示すものである。
時刻T3には、2個のインク滴Dが金属板7aの検知面31と対向し、4個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向し、4個のインク滴Dが金属板7cの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数は変化せず、金属板7cの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個増加する。これにより、金属板7aには約−Iの電流が流れ、金属板7bには電流が流れず、金属板7cには約Iの電流が流れる。
時刻T4には、1個のインク滴Dが金属板7aの検知面31と対向し、4個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向し、4個のインク滴Dが金属板7cの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少し、金属板7b、7cの検知面31と対向するインク滴Dの数は変化しない。これにより、金属板7aには約−Iの電流が流れ、金属板7b、7cには電流が流れない。
時刻T5には、金属板7a〜7cの検知面31と対向するインク滴の数がいずれも0個となる。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数が4個減少し、金属板7cの検知面31と対向するインク滴Dの数が4個減少する。これにより、金属板7aには約−Iの電流が流れ、金属板7b、7cには約−4I電流が流れる。
以上のことから、全てのノズル10からインク滴が噴射された場合の、金属板7a〜7cにおける電流の変化は、それぞれ、図6(a1)〜(c1)のようになる。本実施の形態では、制御装置50のRAMなどに、全てのノズル10からインク滴が噴射された場合の、時刻T1〜T5における金属板7a〜7cにおける電流値が予め記憶されている。
次に、図5(b)に示すように、図における搬送方向上流側から4番目のノズル15からインク滴が噴射されなかった場合を例に挙げて説明する。この場合には、時刻T1において、3個のインク滴Dが金属板7aの検知面31と対向し、4個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が3個増加し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数が4個増加する。これにより、金属板7aに約4Iの電流が流れ、金属板7bに約4Iの電流が流れる。なお、この場合には、時刻T1〜T5において、金属板7cの検知面31と対向するインク滴Dの数は、全てのノズル10からインク滴Dが噴射された場合と変わらないため、説明を省略する。
時刻T2には、3個のインク滴Dが金属板7aの検知面31と対向し、3個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴の数は変化せず、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少する。これにより、金属板7aには電流が流れず、金属板7bには約−Iの電流が流れる。
時刻T3には、2個のインク滴D金属板7aの検知面31と対向し、3個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数は変化しない。これにより、金属板7aには約−Iの電流が流れ、金属板7bには電流が流れない。
時刻T4には、1個のインク滴Dが金属板7aの検知面31と対向し、3個のインク滴Dが金属板7bの検知面31と対向する。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数は変化しない。これにより、金属板7aには約−Iの電流が流れ、金属板7bには電流が流れない。
時刻T5には、金属板7a、7bの検知面31と対向するインク滴の数がいずれも0個となる。すなわち、金属板7aの検知面31と対向するインク滴Dの数が1個減少し、金属板7bの検知面31と対向するインク滴Dの数が3個減少する。これにより、金属板7aには約−Iの電流が流れ、金属板7bには約−3I電流が流れる。
以上のことから、図5(b)の左から4番目のノズルノズル10からインク滴Dが噴射されなかった場合の、金属板7a〜7cにおける電流の変化は、それぞれ、図6(a2)〜(c2)のようになる。
そして、図6(a1)〜(c1)と、図6(a2)〜(c2)とを比較すれば、図5(b)のような場合には、全てのノズル10からインク滴Dが噴射された場合(図5(a)の場合)と比較して、金属板7aにおける電流値が、時刻T1において約Iだけ小さくなり、時刻T2において約Iだけ大きくなる。また、金属板7bにおける電流値が、時刻T2において約Iだけ小さくなり、時刻T5において約Iだけ大きくなる。
他のノズル10からインク滴Dが噴射されなかった場合にも、金属板7a〜7cの時刻T1〜T5における電流値のうちのいずれかが、全てのノズル10からインク滴が噴射された場合と異なる。このとき、本実施の形態では、上述したように、金属板7a〜7cの検知面31の複数の部分33間で、上端及び下端のうち少なくとも片方の端の位置が異なっているため、金属板7a〜7cにおいて、それぞれ、複数の部分33間で、ノズル10から噴射されたインク滴が部分33の上端を横切るタイミング(すなわち、インク滴Dが金属板7a〜7cと対向しない状態から対向した状態に切り換わるタイミング)、及び、ノズル10から噴射されたインク滴が部分33の下端を横切るタイミング(すなわち、インク滴Dが金属板7a〜7cと対向した状態から対向しない状態に切り換わるタイミング)のうち、少なくとも片方のタイミングが異なる。したがって、どのノズル10が不噴射ノズルであるかによって、どの金属板のどの時刻における電流値が、全てのノズル10からインク滴が噴射された場合の電流値と異なるかが変わってくる。
上述の例では、金属板7aにおける電流値が、時刻T1において約Iだけ小さくなり、時刻T2において約Iだけ大きいことが、図5(b)の左から4番目のノズル10からインク滴Dが噴射されなかったことを示している。また、金属板7bにおける電流値が、時刻T2において約Iだけ小さく、時刻T5において約Iだけ大きいことも、図5(b)の左から4番目のノズル10からインク滴Dが噴射されなかったことを示している。
そこで、本実施の形態では、制御装置50は、電流検出装置41で検出された時刻T1〜T5における電流値と、制御装置50のRAMなどに予め記憶された、全てのノズル10からインク滴が噴射された場合の、時刻T1〜T5における電流値との差を取る。そして、全てのノズルについて、この差が、所定の微小量よりも小さい場合に、全てのノズル10からインク滴が噴射されたと判定する。一方、実際に測定された電流の測定値と、予め記憶された電流の測定値との差のいずれかが、上記微小量以上である場合には、どの金属板のどの時刻において、上記差が上記微小量以上となるかに基づいて、不噴射ノズルを特定する。このように、本実施の形態では、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。また、本実施の形態では、上述したように、金属板7a〜7cが、それぞれ、複数のノズル10に対応したものとなっているため、複数のノズル10に対して個別に金属板を設けるなどした場合と比較して、装置の構成を簡単にすることができる。
また、本実施の形態では、搬送方向に並んだ3枚の金属板7a〜7cの検知面31が、それぞれ、複数のノズル10のうち、一部のノズル10に対応する通過空間Rと重なっている。そのため、後述の変形例8(図11(a)参照)のように、金属板を1枚だけ設け、この1枚の金属板の検知面31を全てノズル10に対応する通過空間Rと重なるようにした場合よりも、金属板7a〜7cの検知面31の縁32c、32dを搬送方向に対して大きく傾けて、鉛直方向における複数の部分33の上端の位置あるいは下端の位置を大きく異ならせることができる。これにより、検知面31と対向するインク滴Dの数が変化する時間間隔が長くなるため、電流検出装置41において電流値を検出する周期を長くすることができる。
また、この場合には、各金属板7a〜7cにおいて、それぞれ、複数の部分33間で、鉛直方向における上端及び下端のうち少なくとも片方の端の位置が異なっている必要はあるが、3枚の金属板7a〜7cのうち、ある金属板の検知面31の部分33と、別の金属板の検知面31の部分33とで、鉛直方向における上端の位置及び下端の位置のいずれもが一致していてもよい。したがって、金属板7a〜7cの設計の自由度が高くなる。
また、本実施の形態では、上述したように、一部のノズル10に対応する通過空間Rが、走査方向から見て、2枚の金属板の検知面31と重なっている。したがって、2枚の金属板の検知面31と重なる通過空間Rに対応するノズル10からインク滴が噴射されなかった場合には、これら2枚の金属板における電流値が、それぞれ、全てのノズル10からインク滴が噴射された場合と異なる。例えば、図5(b)の例では、上述したように、2枚の金属板7a、7bにおける電流値が、それぞれ、全てノズル10からインク滴Dが噴射された場合と異なる。
そこで、本実施の形態では、2つの金属板の検知面31と重なる通過空間Rに対応するノズル10については、2つの金属板における電流値の変化のいずれもが、同じノズル10からインク滴Dが噴射されなかったことを示すものである場合に、そのノズル10が不噴射ノズルであると特定する。これにより、不噴射ノズルの特定の精度を高くすることができる。
また、上述したのと同様にして、左側のノズル列9を構成するノズル10についても、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出する。
そして、2つのノズル列9を構成するノズル10のいずれかが不噴射ノズルとして特定されたときには、まず、不噴射ノズルについてフラッシングを行い、再度、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出する。フラッシング後においても同じノズルが不噴射ノズルとして特定された場合には、さらに吸引パージを行う。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
上述の実施の形態では、走査方向から見て、一部の通過空間Rが、2つの金属板の検知面31と重なっていたが、これには限られない。一変形例(変形例1)では、図7(a)に示すように、金属板7a〜7cが、検知面31同士が鉛直方向から見て重ならない程度、搬送方向に互いに離れて配置されている。そして、各通過空間Rは、走査方向から見て、3枚の金属板7a〜7cのうち1枚の金属板の検知面31のみと重なっている。この場合でも、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。
また、別の一変形例(変形例2)では、図7(b)に示すように、金属板7aの検知面31の搬送方向両側の縁32c、32dが、鉛直方向に対して、上述の実施の形態よりも大きく傾いている。そして、搬送方向上流側から4番目の通過空間Rが、走査方向から見て、3つの金属板7a〜7cの検知面31と重なっている。この場合には、搬送方向上流側から4番目のノズル10については、金属板7a〜7cにおける電流値の変化のいずれもが、このノズル10が不噴射ノズルであることを示している場合にのみ、このノズル10が不噴射ノズルであると特定するようにすれば、不噴射ノズルをさらに精度よく特定することができる。
また、上述の実施の形態では、金属板7a〜7cの検知面31の形状が平行四辺形であったが、これには限られない。別の一変形例(変形例3)では、図8(a)に示すように、金属板61a〜61cの検知面62は、台形の形状を有し、上側の縁63aが搬送方向及び鉛直方向に対して傾いており、下側の縁63bが搬送方向と平行となっており、搬送方向両側の縁63c、63dが鉛直方向と平行となっている。
この場合には、金属板61a〜61cにおいて、検知面62の、走査方向から見て、複数の通過空間Rと重なる複数の部分64間で、鉛直方向の長さが異なっており、上端の位置が互いに異なっている。そのため、この場合でも、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。
また、変形例3では、検知面62の、上側の縁63aが搬送方向及び鉛直方向に対して傾いており、下側の縁63bが搬送方向と平行であったが、これには限られない。図8(b)に示すように、変形例3において、金属板61a〜61cの、上側の縁63aが搬送方向と平行であり、下側の縁63bが搬送方向及び鉛直方向に対して傾いていてもよい(変形例4)。この場合には、複数の部分64間で、下端の位置が異なる。そのため、この場合でも、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。
また、上述の実施の形態では、金属板7a〜7cの検知面31の複数の部分33の上端及び下端のうちの片方が、搬送方向及び鉛直方向に対して傾斜した直線状の縁32c、32dによって形成されていたが、これには限られない。
別の一変形例(変形例5)では、図9(a)に示すように、金属板66a〜66cの検知面67の搬送方向における両側の縁68a、68bが、曲線となっている。この場合でも、金属板66a〜66cの検知面67において、それぞれ、複数の部分69間で、鉛直方向における上端及び下端のうち少なくとも片方の位置が異なる。そのため、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。
また、別の一変形例(変形例6)では、図9(b)に示すように、金属板71a〜71cの検知面72の搬送方向における両側の縁73a、73bが、鉛直方向及び搬送方向に交互に折れ曲がった階段状になっている。この場合には、鉛直方向及び搬送方向に交互に折れ曲がった縁73a、73bのうち搬送方向に延びた部分73a1、73b1が、それぞれ、金属板71a〜71cの検知面72の、走査方向から見て通過空間Rと重なる部分74の上端及び下端となる。この場合でも、金属板71a〜71cの検知面72において、それぞれ、走査方向から見て複数の通過空間Rと重なる複数の部分74間で、鉛直方向における上端及び下端のうち少なくとも片方の位置が異なる。そのため、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。
また、上述の実施の形態では、金属板7a〜7bの検知面31において、複数の部分33の中に鉛直方向の長さが異なるものが存在していたが、これには限られない。別の一変形例(変形例7)では、図10に示すように、金属板76a〜76cの検知面77は、上側の縁78a及び下側の縁78bが、搬送方向及び鉛直方向に対して互いに平行に傾いており、搬送方向における両側の縁78c、78dが、鉛直方向と平行になっている。この場合には、金属板76a〜76cの検知面77において、それぞれ、走査方向から見て複数の通過空間Rと重なる複数の部分79間で、鉛直方向の長さが全て同じとなっているが、複数の部分79間で、上端及び下端の位置が異なっている。そのため、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。
また、上述の実施の形態では、同じ形状の3枚の金属板7a〜7cが搬送方向に並んでいたが、これには限られない。例えば、3枚の金属板7a〜7cの形状が互いに異なっていてもよい。また、例えば、2枚あるいは4枚以上の金属板が搬送方向に並んでいてもよい。さらには、複数の金属板を搬送方向に並べて配置することにも限られない。
別の一変形例(変形例8)では、図11(a)に示すように、金属板81が1枚だけ設けられている。金属板81の検知面82は、平行四辺形の形状を有し、上側の縁83a及び下側の縁83bが、搬送方向及び鉛直方向に対して互いに平行に傾いており、搬送方向両側の縁83c、83dが、鉛直方向と平行になっている。そして、金属板81は、検知面82の縁83a、83bが、全ての通過空間Rにまたがるように配置されることで、検知面92が走査方向から見て全ての通過空間Rと重なっている。
また、別の一変形例(変形例9)では、図11(b)に示すように、金属板86が1枚だけ設けられている。金属板86の検知面87は、台形の形状を有し、上側の縁88aが搬送方向及び鉛直方向に対して傾いており、下側の縁88bが搬送方向と平行になっており、搬送方向両側の縁88c、88dが、鉛直方向と平行になっている。そして、金属板86は、縁88a、88bが、全ての通過空間Rにまたがるように配置されることで、検知面87が走査方向から見て全ての通過空間Rと重なっている。なお、変形例7では、上側の縁88aが搬送方向と平行になっており、下側の縁88bが搬送方向及び鉛直方向に対して傾いていてもよい。
変形例8の場合には、検知面82の、走査方向から見て複数の通過空間Rと重なる部分84間で、鉛直方向における上端及び下端の位置が異なる。また、変形例9の場合には、検知面87の、走査方向から見て複数の通過空間Rと重なる部分89間で、鉛直方向における上端の位置が異なり、下端の位置が同じとなる。したがって、変形例8、9においても、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを一度に検出することができる。
ただし、変形例8の場合には、縁83a、83bの搬送方向に対する傾きを、上述の実施の形態や変形例1の縁32c、32d、変形例8の縁78a、78b等よりも小さくする必要がある。その結果、変形例8では、部分84間で、鉛直方向における上端及び下端の位置の差が小さくなる。一方、変形例9の場合には、縁88aの搬送方向に対する傾きを、変形例3の縁63a変形例3の縁68bよりも小さくする必要がある。その結果、変形例8では、部分89間で、鉛直方向における上端及の位置の差が小さくなる。そのため、変形例8、9において、上述の実施の形態と同様にして、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出する場合には、電流検出装置41により、上述の実施の形態、変形例1、3、4、6等よりも短い時間間隔で、電流値を検出する必要がある。
また、金属板の検知面の形状は、上述の実施の形態や変形例で挙げたものには限られない。金属板の検知面は、走査方向から見て複数の通過空間Rと重なる複数の部分間で、上端及び下端のうち少なくとも片方の端の位置が異なるような別の形状を有するものであってもよい。
また、以上の例では、金属板を用いて複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出したが、これには限られない。例えば、金属板の代わりに、上述したのと同様の検知面を有するブロック状の金属部材などを用いてもよい。
また、上述の実施の形態では、電流検出装置41によって、金属板7a〜7cにおける電流値を検出し、検出した電流値に基づいて、全てのノズル10からインク滴が噴射されたか否かの判定、及び、不噴射ノズルの特定を行ったが、これには限られない。電荷をもったインク滴が金属板7a〜7cの検知面31に近づくとき及び金属板7a〜7cの検知面31から遠ざかるときには、静電誘導により金属板7a〜7cの電圧が変化する。また、インク滴が金属板7a〜7cの検知面31に近づくときと、金属板7a〜7cの検知面31から遠ざかるときとで、金属板7a〜7cの電圧の変動が逆になる。したがって、金属板7a〜7cの電圧を検出し、検出した電圧値に基づいて、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出してもよい。
また、別の一変形例(変形例10)では、図12に示すように、金属板7a〜7cに加えて、金属板7a〜7cと対向する金属板91a〜91cが設けられている。金属板91a〜91cは、金属板7a〜7cとほぼ同様の板状体であり、走査方向右の面が、検知面92となっている。また、金属板7aと金属板91a、金属板7bと金属板91b、及び、金属板7cと金属板91cには、それぞれ、これらの金属板の間の静電容量を検出するための静電容量検出装置93(本発明の「信号検出手段」)が接続されている。なお、金属板7a〜7cと金属板91a〜91cとは異なる形状を有していてもよい。
静電容量検出装置93は、交流電源94により、金属板7a〜7cと金属板91a〜91cとの間にそれぞれ交流電圧を印加したときに電流検出装置95によって検出される電流値の変化によって、金属板7aの検知面31と金属板91aの検知面92との間、金属板7bの検知面31と金属板91bの検知面92との間、金属板7cの検知面31と金属板91cの検知面92との間の静電容量をそれぞれ検出する。なお、この場合には、金属板7a〜7c及び金属板91a〜91cのうち、一方の金属板が、本発明に係る第1金属部材に相当し、他方の金属部材が、本発明に係る第2金属部材に相当する。
変形例10では、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出するときに、1つのノズル列9を構成する複数のノズル10に対応する複数の通過空間Rが、走査方向において、金属板7aの検知面31と金属板91a〜91cの検知面92との間にくるようにキャリッジ2を移動させる。そして、この状態で、全てのノズル10からインク滴を噴射させるようにインクジェットヘッド3を駆動し、一定の時間間隔で、金属板7aと金属板91a、金属板7bと金属板91b、及び、金属板7cと金属板91cとにおいて、それぞれ、検知面31と検知面92との間の静電容量を検出する。
金属板7aと金属板91a、金属板7bと金属板91b、及び、金属板7cと金属板91cとにおける、検知面31と検知面92との間の静電容量は、対向するインク滴の数によって変わる。そのため、不噴射ノズルが存在する場合には、全てのノズル10からインク滴が噴射された場合と比較すると、静電容量の変化の仕方が異なる。したがって、上述したようにして、金属板7aと金属板91a、金属板7bと金属板91b、及び、金属板7cと金属板91cとにおいて、それぞれ、検知面31と検知面92との間の静電容量を検出することにより、複数のノズル10からインク滴が噴射されているか否かを一度に検出することができる。
また、複数のノズル10からインク滴が噴射されたか否かを検出するための電気的信号は、金属板の検知面と対向するインク滴の数の変化に対応した別の電気的信号であってもよい。
また、上述の実施の形態では、制御装置50により、電流検出装置41による電流値の測定結果に基づいて、全てノズル10からインク滴が噴射されているか否かの判定、及び、不噴射ノズルの特定を行ったが、これには限られない。電流検出装置41による電流値の測定結果に基づいて、ユーザが不噴射ノズルを特定してもよい。この場合には、例えば、プリンタ1の図示しない操作部を操作することによって、どのノズル10が不噴射ノズルであるかを示す信号をプリンタ1に入力することで、プリンタ1にフラッシングや吸引パージを行わせる。
また、上述の実施の形態では、ノズル10からのインク滴の噴射方向が鉛直方向と平行であったが、これには限られない。ノズル10からのインク滴の噴射方向は、鉛直方向に対して傾いていてもよい。なお、この場合には、例えば、上述の実施の形態において、縁32c、32dを、搬送方向及びインク滴の噴射方向に対して傾いたものとすればよい。
また、以上では、キャリッジとともに走査方向に往復移動するいわゆるシリアル式のインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。例えば、記録用紙の幅方向の全長にわたって延びたいわゆるラインヘッドを備えたインクジェットプリンタに本発明を適用することも可能である。この場合には、ラインヘッドは移動しないため、金属板を移動させるための機構を設けるなどする必要がある。さらには、インク以外の液滴を噴射するインクジェットプリンタ以外の液滴噴射装置に本発明を適用することも可能である。