上記の従来技術にあっては、次のような問題がある。
エコーキャンセラの場合、照合対象が音声信号レベルではなく情報量のはるかに大きいデジタルデータであるため、照合に時間がかかる。そのためにメモリは欠かせない。メモリへ保持しておかなければならない時間は回線回帰による遅延時間に準じるが、遅延時間が長くなる環境であると、メモリ容量も大きくしなければならない。メモリの容量によってはハウリング抑圧可能な時間に制約を受けることになる。また、音声データをメモリに保存している期間では、音声データのCPU(中央演算処理装置)への取り込みができない。エコーキャンセラは第1の音響ループ環境K1にも第2の音響ループ環境K2にも適用可能ではあるが、遅延時間が大きいと第1の音響ループ環境K1でも第2の音響ループ環境K2でもともに使えなくなってしまう。
一方、ボイススイッチ(例えば特許文献1参照)の場合、処理速度がエコーキャンセラに比べて高速ではあるが、音響結合の第2の音響ループ環境K2でしか使えない。第1の音響ループ環境K1に適用してもハウリングの防止は期待できない。
特許文献2に開示の技術は、上述したエコーキャンセラに相当するものであり、回線回帰を含めた音響環境には対応できない。
特許文献3に開示の技術は、第2の音響ループ環境に対応するもので、音声信号に曲名、歌手名などのコンテンツ情報を重畳し、収音側で復号したコンテンツ情報に基づいてサーバにアクセスしてコンテンツデータをダウンロードし、そのデータからエコーキャンセルのための擬似エコーを生成するものである。しかし、その仕組みは複雑で高価につき、簡易にハウリング抑圧を実現できるものではない。
特許文献4に開示の技術は、1つの独立系の音声入出力装置において、そのマイク、アンプ、スピーカそれぞれのゲイン特性情報を周波数分割多重方式で音声信号に重畳し、収音後にゲイン特性情報を復号し、それに基づいて系全体のゲイン特性を推定し、推定したゲイン特性の逆特性で音声信号を補正するものである。しかし、推定したゲイン特性の逆特性で音声信号を補正することには、簡易なハウリング抑圧とはいいがたいものがある。加えて、この公報の技術ではイントラネット等の回線回帰にはまったく配慮しておらず、第1の音響ループ環境と第2の音響ループ環境のいずれにも対応できない。
本発明は、このような事情に鑑みて創作したものであり、第1の音響ループ環境(他装置放音−空間−自装置収音−回線回帰)か第2の音響ループ環境(自装置放音−空間−自装置収音−回線回帰)かを問わず、また回線回帰による音声データの遅延時間の大小にかかわらず、いずれも確実・簡易にハウリングを抑圧できるようにすることを目的としている。
本発明は、次のような手段を講じることにより上記の課題を解決する。
本発明によるハウリング抑圧装置は、
各装置割り当ての周波数帯域において識別コードに基づいて変調された識別用高周波信号が可聴域音声信号に重畳されてなる重畳信号を入力して、その重畳信号から前記可聴域音声信号と前記識別用高周波信号とを分離する信号分離手段と、
前記信号分離手段によって分離された前記識別用高周波信号の信号レベルとその信号に含まれる前記識別コードとに基づいてハウリング可能性を判定し、ハウリング可能性がある場合に減衰制御信号を生成するハウリング判定手段と、
前記ハウリング判定手段から前記減衰制御信号を受け取った場合に、前記信号分離手段によって分離された前記可聴域音声信号を減衰させる可聴域減衰手段とを備えたものである。
本発明ではまず、当該のハウリング抑圧装置が搭載される音声入出力装置である自装置を、この自装置以外の音声入出力装置である他装置から識別するための識別コードを用いることとする。各装置割り当ての周波数帯域において高周波信号を前記の識別コードで変調して識別用高周波信号とする。その識別コードに基づいて変調された識別用高周波信号を可聴域音声信号に重畳させて重畳信号とする。
複数の音声入出力装置それぞれの識別コードは、高周波域で互いに周波数を異にする状態で高周波信号を変調して識別用高周波信号となる。前記の重畳信号は、音響ループ環境のなかで、そのような複数の周波数の識別用高周波信号が可聴域音声信号に重畳されたものとなる。
識別用高周波信号の周波数は、その識別用高周波信号がいずれの装置で生成されたかの履歴を表す。つまり、その周波数によって、いずれの装置由来の識別用高周波信号であるかの識別が可能である。識別用高周波信号に含まれる識別コードは、可聴域音声信号がいずれの装置において最初にデジタルデータに変換されたかの履歴を表す。つまり、その識別コードによって、可聴域音声信号が最初にデジタルデータに変換された装置の識別が可能である。
本発明によるハウリング抑圧用プログラムは、
コンピュータに、
各装置割り当ての周波数帯域において識別コードに基づいて変調された識別用高周波信号が可聴域音声信号に重畳されてなる重畳信号を入力して、その重畳信号から前記可聴域音声信号と前記識別用高周波信号とを分離する信号分離処理と、
前記信号分離処理によって分離された前記識別用高周波信号の信号レベルとその信号に含まれる前記識別コードとに基づいてハウリング可能性を判定し、ハウリング可能性がある場合に減衰制御信号を生成するハウリング判定処理と、
前記ハウリング判定処理による前記減衰制御信号を受け取った場合に、前記信号分離処理によって分離された前記可聴域音声信号を減衰させる可聴域減衰処理と
を実行させる
ものとして構成されている。
本発明によるハウリング抑圧用記録媒体は、
コンピュータに、
各装置割り当ての周波数帯域において識別コードに基づいて変調された識別用高周波信号が可聴域音声信号に重畳されてなる重畳信号を入力して、その重畳信号から前記可聴域音声信号と前記識別用高周波信号とを分離する信号分離処理のステップと、
前記信号分離処理のステップによって分離された前記識別用高周波信号の信号レベルとその信号に含まれる前記識別コードとに基づいてハウリング可能性を判定し、ハウリング可能性がある場合に減衰制御信号を生成するハウリング判定処理のステップと、
前記ハウリング判定処理のステップによる前記減衰制御信号を受け取った場合に、前記信号分離処理のステップによって分離された前記可聴域音声信号を減衰させる可聴域減衰処理のステップとを実行させるプログラムを記録したものとして構成され、コンピュータ読み取り可能に構成されている。
以下、ハウリング抑圧装置を代表として、本発明を説明する。
本発明のハウリング抑圧装置は、その主要構成要素として、信号分離手段、ハウリング判定手段、可聴域減衰手段を備えている。
前記の信号分離手段は、入力されてくる前記の重畳信号から可聴域音声信号と識別用高周波信号とを分離する。分離された可聴域音声信号は可聴域減衰手段に送出され、一方、分離された識別用高周波信号はハウリング判定手段に送出される。
前記のハウリング判定手段は、分離された識別用高周波信号(要するにその信号の周波数・信号レベル)とその信号に含まれる識別コードとに基づいてハウリング可能性を判定し、ハウリング可能性がある場合に減衰制御信号を生成する。生成された減衰制御信号は可聴域減衰手段に送られる。
前記の可聴域減衰手段は、前記の信号分離手段から可聴域音声信号を受け取る一方、前記のハウリング判定手段から減衰制御信号を受け取り、減衰制御信号が有効である場合に可聴域音声信号を減衰させる。減衰制御信号が有効でないときは可聴域音声信号は減衰させることなくスルーさせる。
上記構成の本発明では、ハウリング可能性を判定するにおいて、ハウリング判定手段が識別用高周波信号(周波数・信号レベル)とその信号に含まれる識別コードとの合わせて3要素に基づいてハウリング可能性の判定を行う。その識別用高周波信号は、各装置割り当ての周波数帯域において高周波信号が識別コードで変調されたものである。そして、ハウリング可能性があると判定した場合には減衰制御信号を生成して可聴域減衰手段に送る。ハウリング可能性がある状況で減衰制御信号を受け取った可聴域減衰手段は可聴域音声信号を減衰させる。
自装置においては、自装置に割り当てられた周波数帯域で識別コード変調が行われるため、得られる識別用高周波信号は自装置に割り当ての専用の周波数帯域の識別用高周波信号となる。また、他装置においては、その他装置(他装置自体にとっては自装置)に割り当てられた周波数帯域で識別コード変調が行われるため、得られる識別用高周波信号は他装置割り当ての専用の周波数帯域の識別用高周波信号となる。
自装置では各装置割り当ての周波数帯域の識別用高周波信号(自装置専用周波数の識別用高周波信号)が可聴域音声信号に重畳された自装置由来の重畳信号が得られる。また、他装置では他装置割り当ての周波数帯域の識別用高周波信号(他装置専用周波数の識別用高周波信号)が可聴域音声信号に重畳された他装置由来の重畳信号が得られる。
自装置と他装置とが音響ループを形成する音響ループ環境にあるとして、そのような音響ループ環境では、自装置由来の重畳信号と他装置由来の重畳信号とが混合する。この複数の重畳信号が混合した信号を複合重畳信号と呼ぶことにする。
複合重畳信号では、複数の装置由来の識別用高周波信号が重畳されているが、その複数の識別用高周波信号がどの装置由来のものかは、それぞれ固有の周波数をチェックすれば分かることである。また、その識別用高周波信号に関係する可聴域音声信号が最初にデジタルデータに変換された装置がいずれの装置であるかは、含まれている識別コードをチェックすれば分かることである。これには従来技術の場合の特別なメモリは必要としない。回線回帰による遅延も問題にならない。
ハウリング可能性の判定に用いるのは、従来技術の場合のような情報量の大きい音声のデジタルデータではなく、識別用高周波信号(周波数・信号レベル)とその信号に含まれる識別コードとであって、それらの情報量は音声のデジタルデータに比べて十分に小さなものである。
ハウリング判定手段では、受け取った個々の識別用高周波信号につき、(1)いずれの周波数帯域であるか、そしてその検出した信号レベルが規定値以上か否かを判定することと、(2)その高周波信号に含まれる識別コードがいずれの装置由来のものであるかを判別することとを行う。そして、単数または複数の識別用高周波信号のうち1つでも信号レベルが規定値以上のものがあり、かつ、その規定値以上の信号レベルの識別用高周波信号に含まれる識別コードが所定の装置のものである場合に、減衰制御信号を生成し、可聴域減衰手段に送出する。それ以外の場合は、ハウリング判定手段は減衰制御信号の送出は行わない。それ以外の場合とは、識別用高周波信号の信号レベルが規定値以上であるが、その信号に含まれる識別コードが所定の装置のものではない場合と、識別用高周波信号のうちの1つも信号レベルが規定値以上のものでない場合である。
信号レベルが規定値以上となっている識別用高周波信号があれば、その信号の周波数帯域によっていずれの装置で生成されたかをチェックし、かつ、その信号に含まれる識別コードによって判定対象の可聴域音声信号が最初にデジタル変換された装置がいずれであるかをチェックすることでハウリング可能性を判定することとしているので、回線を回帰する第1の音響ループ環境であるか、空間および回線を回帰する第2の音響ループ環境であるかを問わず、また、複数の音声入出力装置の相対的位置関係の如何にかかわらず、また、回線回帰に伴う遅延の大小にはかかわりなく、様々な音響ループ環境下でハウリング抑圧を確実・簡易に実現することが可能となる。
本発明による音響ネットワークシステムは、一方の音声入出力装置の放音器からの音声が他方の音声入出力装置の収音器に捕捉される音響環境に複数台の音声入出力装置があり、少なくとも1台の音声入出力装置が他の音声入出力装置に対してネットワークを介して接続されているネットワークシステムにおいて、前記音声入出力装置がそのハウリング抑圧装置として上記のハウリング抑圧装置を搭載しているものである。
別の態様で、本発明による音響ネットワークシステムは、音声入出力装置の放音器からの音声が同一の音声入出力装置の収音器に捕捉される音響環境が複数あり、少なくとも1つの音響環境の音声入出力装置が他の音響環境の音声入出力装置に対してネットワークを介して接続されているネットワークシステムにおいて、前記音声入出力装置がそのハウリング抑圧装置として上記のハウリング抑圧装置を搭載しているものである。
また、別の態様で、本発明による音響ネットワークシステムは、一方の音声入出力装置の放音器からの音声が他方の音声入出力装置の収音器に捕捉される音響環境に複数台の音声入出力装置があり、少なくとも1台の音声入出力装置が他の音声入出力装置に対してネットワークを介して接続されている一方、音声入出力装置の放音器からの音声が同一の音声入出力装置の収音器に捕捉される音響環境が複数あり、少なくとも1つの音響環境の音声入出力装置が他の音響環境の音声入出力装置に対してネットワークを介して接続されているネットワークシステムにおいて、前記音声入出力装置がそのハウリング抑圧装置として上記のハウリング抑圧装置を搭載しているものである。
本発明による音声入出力装置は、空気振動を電気信号の音声信号に変換する収音器と、前記音声信号を空気振動に変換する放音器と、前記収音器による前記音声信号をデジタル変換してデジタル音声データを生成するとともに前記デジタル音声データをアナログ変換して音声信号を生成する信号処理部と、ネットワークに対して双方向に接続され前記デジタル音声データの送受信を行うネットワークインターフェースと、上記のハウリング抑圧装置とを備えたものである。
なお、ネットワーク(回線)については、有線、無線のいずれであってもよい。減衰については、ゼロレベルに落とす場合も含み得るものとする。
本発明によれば、信号レベルが規定値以上となっている識別用高周波信号があれば、その信号の周波数帯域によっていずれの装置で生成されたかをチェックし、かつ、その信号に含まれる識別コードによって判定対象の可聴域音声信号が最初にデジタル変換された装置がいずれであるかをチェックすることでハウリング可能性を判定することとし、ハウリング可能性のあるときはその可聴域音声信号に対する減衰処理を行うので、ハウリング抑圧に即応できるとともに、第1の音響ループ環境(他装置放音−空間−自装置収音−回線回帰)か第2の音響ループ環境(自装置放音−空間−自装置収音−回線回帰)かを問わず、また回線回帰による音声データの遅延時間の大小にかかわらず、ハウリングを確実・簡易に抑圧することができる。
また、減衰するのはハウリング原因の可聴域音声信号に限るもので、従来技術のように音声を無効にするのではないから、会話等音声を中断させることがなく、通常の会話を続けて行えるため、通話品質を高く保つことができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態にかかわるハウリング抑圧装置Xの構成を示すブロック図である。図1において、構成要素のE1は信号分離手段、E2はハウリング判定手段、E3は可聴域減衰手段である。
信号分離手段E1は重畳信号Mi(i=1,2…n)を取り扱う。その重畳信号Miは識別用高周波信号Hi(i=1,2…n)が可聴域音声信号Si(i=1,2,3)に重畳されたものである(Mi=Si+Hi)。
一般論として説明するときは、関係する音声入出力装置の台数をn台として、識別コードはIDj(j=1,2…n)すなわちID1,ID2…IDnとなる。また、例示で説明するときは、関係する音声入出力装置が3台あるとして、識別コードIDjはID1,ID2,ID3の3つとする。
第1の音声入出力装置A1(以下、単に第1装置A1と記載する)が生成する識別用高周波信号H1は第1の周波数f1における高周波信号である。
第2の音声入出力装置A2(以下、単に第2装置A2と記載する)が生成する識別用高周波信号H2は第2の周波数f2における高周波信号である。
第3の音声入出力装置A3(以下、単に第3装置A3と記載する)が生成する識別用高周波信号H3は第3の周波数f3における高周波信号である。
ある可聴域音声信号Siが第1装置A1において最初にデジタル変換を受けたとき、その可聴域音声信号Siに関係する周波数fiの高周波信号Hiを、第1装置A1の識別コードID1で変調した識別用高周波信号Hi(ID1)が生成される。
ここで、自装置である第1装置A1において、最初にデジタル変換を受けたのが音声源を第1装置A1とする可聴域音声信号S1であれば、そのときの識別用高周波信号はH1(ID1)となる。
また、自装置である第1装置A1において、最初にデジタル変換を受けたのが音声源を第2装置A2とする可聴域音声信号S2であれば、そのときの識別用高周波信号はH1(ID2)となる。
また、自装置である第1装置A1において、最初にデジタル変換を受けたのが音声源を第3装置A3とする可聴域音声信号S3であれば、そのときの識別用高周波信号はH1(ID3)となる。
同様のことが他装置でも当てはまる。
第2装置A2において、最初にデジタル変換を受けたのが音声源を第1装置A1とする可聴域音声信号S1であれば、そのときの識別用高周波信号はH2(ID1)となる。
また、第2装置A2において、最初にデジタル変換を受けたのが音声源を第2装置A2とする可聴域音声信号S2であれば、そのときの識別用高周波信号はH2(ID2)となる。
また、第2装置A2において、最初にデジタル変換を受けたのが音声源を第3装置A3とする可聴域音声信号S3であれば、そのときの識別用高周波信号はH2(ID3)となる。
識別用高周波信号の記号H1,H2はそれぞれ周波数f1,f2に対応する。識別用高周波信号の信号レベルが規定値以上となっている場合、その高周波信号の周波数をチェックすると、関係するハウリング可能性のある可聴域音声信号の音声源がどの装置であるかが分かる。もし、周波数がf1であれば、その可聴域音声信号は音声源を第1装置A1とするものである。また、周波数がf2であれば、その可聴域音声信号は音声源を第2装置A2とするものである。
一方、識別用高周波信号に含まれている識別コードをチェックすると、関係するハウリング可能性のある可聴域音声信号が最初にデジタル変換を受けたのがどの装置であるのかが分かる。もし、識別コードがID1であれば、最初にデジタル変換を受けた装置は第1装置A1である。また、識別コードがID2であれば、最初にデジタル変換を受けた装置は第2装置A2である。前者の場合は、自装置である第1装置A1においてハウリング可能性が高くなる。後者の場合は、自装置である第1装置A1においてはハウリング可能性は低い。
信号分離手段E1は、図1に示すように、重畳信号を入力とし、可聴域音声信号Si(iはi=1,2,3のいずれかで以下同様)と識別用高周波信号Hiとに分離し、前者の可聴域音声信号Siは可聴域減衰手段E3へ送出し、後者の識別用高周波信号Hiはハウリング判定手段E2に送る。
ハウリング判定手段E2は、信号分離手段E1によって分離された識別用高周波信号Hiを入力し、その識別用高周波信号Hiの信号レベルを検出するとともに、信号に含まれる識別コードIDj(jはj=1,2,3のいずれかで以下同様)を抽出する。言うまでもないことであるが、識別用高周波信号Hiの信号レベルを検出するときには、当然にその信号の周波数が認識されている。このことは、他の記載箇所においてもすべからく当てはまることに留意する必要がある。
そして、識別用高周波信号Hiの信号レベルと識別コードIDjとに基づいてハウリング可能性が自装置由来の可聴域音声信号によるのか否かを判定する。そして、ハウリング可能性が自装置由来の可聴域音声信号による場合に、可聴域減衰手段E3へ送るべき減衰制御信号Cを有効にする。
具体的には次のとおりである。ハウリング判定手段E2は、信号分離手段E1によって分離された識別用高周波信号Hiのうちに信号レベルが規定値Vth以上となるものがあるか否かを判定する。規定値Vth以上となるものが1つもないときは、減衰制御信号Cは無効のままとする。規定値Vth以上となるものが1つでもあるときは、その規定値Vth以上の識別用高周波信号Hiにおける識別コードが自装置用の識別コードID1を伴っているかの判定を行う。自装置用の識別コードID1を伴っているときは、減衰制御信号Cを有効にする。自装置用の識別コードID1を伴っていないときは、減衰制御信号Cは無効のままとする。
なお、本発明の基本の主旨は、可聴域音声信号Siが自装置由来であるか他装置由来であるかを問わず、ハウリングの原因となる可能性のあるときに、それを未然に回避することにある。すなわち、他装置由来の可聴域音声信号S2,S3についても、それが最初に第1装置A1でデジタル変換を受けたものでハウリングの原因となる可能性があれば、それを未然に回避することをも含める。
以上をまとめると、ハウリング判定手段E2は、識別用高周波信号Hiのうちに信号レベルが規定値Vth以上となるものがあり、かつ、それが自装置用の識別コードID1を伴っているときは減衰制御信号Cを有効にし、それ以外の場合には減衰制御信号Cは無効のままとする。
可聴域減衰手段E3は、信号分離手段E1によって分離された可聴域音声信号Siを入力する。そして、ハウリング判定手段E2から減衰制御信号Cを受け取った場合に、その減衰制御信号Cに基づいて可聴域音声信号Siを減衰させる。
自他の識別コードIDjは次のように設定される。
図2(a)に示すように、可聴域B1から切り離された高周波の非可聴域B2において、識別コードIDjで変調される識別用高周波信号Hiの周波数が第1の周波数f1、第2の周波数f2、第3の周波数f3と互いに帯域を異にして設定されている。図2(a)では、変数nの値(装置数)を3としている(n=3)。識別コードIDjはID1とID2とID3とであり、識別用高周波信号HiはH1とH2とH3とである。ここで、識別コードID1および識別用高周波信号H1(周波数f1)を自装置用のものとする。自装置とは当該のハウリング抑圧装置Xが搭載されている音声入出力装置Yのことである。
識別用高周波信号Hiは、本来の可聴域音声信号Siによる音の伝達に支障がないようにいわゆる非可聴域の周波数信号とするのが望ましい。非可聴域の実効帯域には個人差があり、また年齢によって変化する。社会通念ではおおむね16kHz〜20kHz以上が非可聴域とされている。しかし、必ずしもそれにとらわれる必要はなく、可聴域内での高位の周波数信号を用いても構わないものとする。もっとも、可聴域と非可聴域の境界値は一般的に曖昧であり、これは社会通念的なレベルで設定されるものでもよい。要するに、識別用高周波信号はその周波数帯域が可聴域音声信号の周波数帯域から切り離されておればよい。なお、識別用高周波信号については、発明の要旨に影響を与えない条件で、一般的に「モスキート音」と呼ばれている音声帯域の高周波信号を想定してもよい。
信号分離手段E1の前段には信号入力手段があり、その信号入力手段のマイクロフォンなどの収音器からは可聴域音声信号Siに識別用高周波信号Hiを重畳した重畳信号Mi(=Si+Hi)が入力されてくる。信号分離手段E1は低域通過フィルタや高域通過フィルタあるいは帯域通過フィルタを備え、入力されてくる重畳信号Mi(=Si+Hi)から可聴域音声信号Siと識別用高周波信号Hiとを分離する。分離された可聴域音声信号Siは可聴域減衰手段E3に送られ、分離された識別用高周波信号Hiはハウリング判定手段E2に送られる。
ハウリング判定手段E2は入力されてくる識別用高周波信号Hiの1つずつを解析する。
(1)各周波数fiの識別用高周波信号Hiのレベル(振幅電圧)を検出し、規定値Vth以上となっているか否かを判定する。
(2)各識別用高周波信号Hiに含まれる識別コードIDjを復調し、それが自装置の識別コードID1に一致するか否かを判定する。
上記の(1),(2)の各処理の判定結果がともに肯定的となるとき、これはハウリング可能性があることを意味するが、このときハウリング判定手段E2は有効な(アクティブの)減衰制御信号Cを生成し、可聴域減衰手段E3に送出する。
上記の(1)の処理と(2)の処理との前後関係についてであるが、これは(1)の処理を先行させてもよいし、(2)の処理を先行させてもよいし、あるいは双方の処理を同時並行としてもよい。
(1)の処理を先行させる態様では、次のような順次処理とする。ハウリング判定手段E2は、入力されてくる各周波数fiの識別用高周波信号Hiにつき、規定値Vth以上のものがあるか否かを判定し、規定値Vth以上のものが1つもないときは有効な減衰制御信号Cの生成は行わない。一方、規定値Vth以上のものが1つでもあるときは、次に、ハウリング判定手段E2はその信号レベルが規定値Vth以上となっている識別用高周波信号Hiの識別コードIDjを選択し、その選択した識別コードIDjが自装置の識別コードID1であるか否かを判定する。この判定のための選択においては、信号レベルが規定値Vth以上となっている識別用高周波信号Hiの識別コードIDjに限定し、他のものは選択しない。判定の結果、自装置の識別コードID1でなければ、有効な減衰制御信号Cの生成は行わないが、自装置の識別コードID1であれば、有効な減衰制御信号Cを生成して可聴域減衰手段E3に送出する。
図3は、この態様でのハウリング判定手段E2の構成を示す。ハウリング判定手段E2はレベル判定手段E21と装置判別手段E22とで構成されている。動作順序については、レベル判定手段E21が優先となっている。
レベル判定手段E21は、信号分離手段E1によって分離された各周波数fiの識別用高周波信号Hiの各々につきその信号レベルが規定値Vth以上か否かを判定し、規定値Vth以上のときに高レベル検出信号C11を生成して装置判別手段E22に送出する。
装置判別手段E22は、レベル判定手段E21から高レベル検出信号C11を受け取ったときは、前記の規定値以上のレベルの識別用高周波信号Hiに含まれる識別コードIDjが所定の装置のものかを判別し、所定の装置のときに減衰制御信号Cを生成して可聴域減衰手段E3に送出する。
可聴域減衰手段E3においては、信号分離手段E1で分離された可聴域音声信号Siを受け取るとともに、ハウリング判定手段E2からの減衰制御信号Cを受け取る。減衰制御信号Cが無効となっているときは、可聴域音声信号Siに対する減衰処理は行わず、そのままスルーさせる。一方、減衰制御信号Cが有効となっているときは、受け取った可聴域音声信号Siに対する減衰処理を行う。
一方、(2)の処理(識別コードIDjが自装置の識別コードに一致するかの判定)を先行させる態様では、次のような順次処理とする。ハウリング判定手段E2は、入力されてくる各周波数fiの識別用高周波信号Hiにつき、識別コードIDjを復調し、それが自装置の識別コードID1であるか否かを判定し、自装置の識別コードID1でなければ有効な減衰制御信号Cの生成は行わない。一方、自装置の識別コードID1であれば、次に、ハウリング判定手段E2はその識別用高周波信号Hiに規定値Vth以上のものがあるか否かを判定し、規定値Vth以上でないときは有効な減衰制御信号Cの生成は行わず、規定値Vth以上となっているときは有効な減衰制御信号Cを生成して可聴域減衰手段E3に送出する。
図4は、この態様でのハウリング判定手段E2の構成を示す。ハウリング判定手段E2はレベル判定手段E21と装置判別手段E22とで構成されている。動作順序については、装置判別手段E22が優先となっている。
装置判別手段E22は、信号分離手段E1によって分離された各周波数fiの識別用高周波信号Hiの各々につきその信号に含まれる識別コードIDjが所定の装置のものかを判別し、所定の装置のときに装置検出信号C12を生成してレベル判定手段E21に送出する。
レベル判定手段E21は、装置判別手段E22から装置検出信号C12を受け取ったときは、信号分離手段E1によって分離された識別用高周波信号Hiのうちの装置判別手段E22による自装置検出の識別用高周波信号H1が規定値以上か否かを判定し、規定値以上のときに減衰制御信号Cを生成して可聴域減衰手段E3に送出する。
可聴域減衰手段E3の動作は、図4の態様の場合と同様である。
また、(1)の処理と(2)の処理を同時並行させる態様では、次のような処理とする。ハウリング判定手段E2は、入力されてくる各周波数fiの識別用高周波信号Hiにつき、規定値Vth以上のものがあるか否かを判定するとともに、識別用高周波信号Hiの識別コードIDjを復調し、それが自装置の識別コードID1であるか否かを判定する。そして、信号レベルが規定値Vth以上のものが1つでもあり、かつ、それが自装置の識別コードID1のものであるときは有効な減衰制御信号Cを生成して可聴域減衰手段E3に送出し、それ以外のときは減衰制御信号Cを生成しない。
図5は、この態様でのハウリング判定手段E2の構成を示す。ハウリング判定手段E2はレベル判定手段E21と装置判別手段E22とで構成されている。動作順序については、優先関係はなく、同時並行処理となっている。
レベル判定手段E21は、信号分離手段E1によって分離された各周波数fiの識別用高周波信号Hiの各々につきその信号レベルが規定値Vth以上か否かを判定し、規定値Vth以上のときに高レベル検出信号C11を生成して可聴域減衰手段E3に送出する。
装置判別手段E22は、信号分離手段E1によって分離された識別用高周波信号Hiの各々につきに含まれる識別コードIDjが所定の装置のものかを判別し、所定の装置のときに装置検出信号C12を生成して可聴域減衰手段E3に送出する。
上記の図3、図5の態様においては、レベル判定手段E21が受け取った各周波数fiの識別用高周波信号Hiが単一の場合は、その信号レベルが規定値以上であれば高レベル検出信号C11を生成する。受け取った各周波数fiの識別用高周波信号Hiが複数の場合は、そのうち1つでもレベルが規定値以上のものがあれば高レベル検出信号C11を生成する。それ以外のときは、レベル判定手段E21からの高レベル検出信号C11の送出はない。
なお、図3、図4、図5のいずれの構成にあっても、他装置由来の可聴域音声信号S2,S3についても、それがハウリングの原因となる可能性があるときは、減衰制御信号Cを有効にする。それは、識別用高周波信号H2,H3が自装置である第1装置A1の識別コードID1を含んでいるときである。これは、関係する可聴域音声信号S2,S3が最初にデジタル変換を受けた装置が第1装置A1であるということである。
そして、可聴域減衰手段E3は、レベル判定手段E21からの高レベル検出信号C11と装置判別手段E22からの装置検出信号C12とを減衰制御信号Cとして受け取った場合に、信号分離手段E1によって分離された可聴域音声信号Siを減衰させる。
すなわち、可聴域減衰手段E3は、高レベル検出信号C11と装置検出信号C12がともに有効であるときは可聴域音声信号Siを減衰させ、高レベル検出信号C11と装置検出信号C12のうち少なくともいずれか一方が無効のときは減衰処理は行わず、可聴域音声信号Siをそのままスルーさせる。
あるいは、可聴域減衰手段E3は高レベル検出信号C11と装置判別手段E22の入力側の外部に論理積手段を設け、この論理積手段に高レベル検出信号C11と装置検出信号C12とを送り込み、論理積の結果を減衰制御信号Cとして可聴域減衰手段E3に与えるようにしてもよい。なお、その論理積手段は可聴域減衰手段E3の内部にあってもよい。
以上のいずれにしても、ハウリング判定手段E2が各周波数fiの識別用高周波信号Hiの周波数・信号レベルとその信号に含まれる識別コードIDjとの3要素に基づいて、ハウリング可能性があるかか否かを判定を行うので、自装置・他装置の関係において、第1の音響ループ環境(他装置放音−空間−自装置収音−回線回帰)であるか第2の音響ループ環境(自装置放音−空間−自装置収音−回線回帰)であるかを問わず、自装置由来の(自装置で最初にデジタル変換を受けた可聴域音声信号についての)ハウリングを確実に抑圧することができる。
図6は本発明の実施の形態にかかわるハウリング抑圧装置Xの動作の概要を示すフローチャートである。
まず、ステップS1において、各周波数の識別用高周波信号の信号レベルが規定値以上かを判定する。この判定の結果が否定的となるときはハウリング可能性はなしとしてステップS5に進み、減衰制御信号Cは無効のままとする。信号レベルが規定値以上であれば、次にステップS2に進む。
ステップS2において、規定値以上となった識別用高周波信号に含まれる識別コードをチェックし自装置の識別コードで変調した周波数(第1の周波数f1)に該当するかを判定する。その判定結果が肯定的となるときはハウリング可能性ありとして、ステップS4に進み、減衰制御信号Cを有効にする。
ステップS2での判定結果が否定的となる場合は、次にステップS3に進み、規定値以上の識別用高周波信号が自装置由来の識別コードを伴っているかを判定する。すなわち、他装置から放音された可聴域音声信号が自装置である第1装置A1において最初にデジタル変換を受けた場合に、その自装置の識別コードID1が識別用高周波信号に含まれることになるが、この場合にもハウリング可能性ありとしてステップS4に進み、減衰制御信号Cを有効にする。
一方、規定値以上の識別用高周波信号が自装置由来の識別コードID1を伴っていないのであれば、ハウリング可能性なしとしてステップS5に進み、減衰制御信号Cを無効のままとする。
以下、本発明にかかわるハウリング抑圧装置Xの実施例を、図面を参照して詳細に説明する。ここでは、拡張されたハウリング抑圧装置Xの実施例を、図7を参照しながら説明する。図7は本発明の実施例にかかわるハウリング抑圧装置Xの構成を示すブロック図である。図7において、構成要素のE1は前述の信号分離手段、E2はハウリング判別手段、E3は可聴域減衰手段、E4は信号入力手段、E5は生成元の識別コード記憶手段、E6は生成元の識別コード付加手段である。E7は復号手段(デコーダ)、E8は可聴域音声信号生成手段、E9は生成元の識別コード判別手段、E10は生成元の周波数コード記憶手段、E11は識別用の高周波信号変調手段、E12は信号重畳手段、E13は信号出力手段、E14は統括制御手段、E15はネットワークインターフェース、E16はネットワークである。
信号入力手段E4は、デジタルの複合重畳信号Sacを入力し、信号分離手段E1に送る。信号入力手段E4の前段には、マイクロフォンなどの収音器やA/D変換器を備えている。
識別コード記憶手段E5は、自装置の識別コードID1を記憶する手段である。
識別コード付加手段E6は、可聴域減衰手段E3から非減衰または減衰の可聴域音声信号Siのデジタルデータを入力する一方、識別コード記憶手段E5から自装置すなわち生成元の識別コードID1を読み出し、その識別コードID1を可聴域音声信号Siのデジタルデータに付加するものとして構成されている。
識別コードID1を付加された可聴域音声信号SiのデジタルデータはネットワークインタフェースE15を介してネットワークE16へ送信される。
復号手段E7はネットワークE16からネットワークインタフェースE14を介して送られてきた音声データを復号し、一方で可聴域音声信号Siに対応するデジタルデータを可聴域音声信号生成手段E8に送出し、他方で含まれている生成元の識別コードIDjを識別コード判別手段E9に送出する。
可聴域音声信号生成手段E8は、受け取ったデジタルデータに基づいて可聴域音声信号Siを復号生成し、信号重畳手段E12へ送出する。
識別コード判別手段E9は、復号手段E7から受け取った識別コードIDjを高周波信号変調手段E11に渡す。
周波数コード記憶手段E10は、自装置すなわち生成元の識別用高周波信号H1の周波数f1を設定するための周波数コードを記憶する手段である。
高周波信号変調手段E11は、周波数コード記憶手段E10から自装置の周波数コード(f1)を読み出して図2(a)に示す非可聴域B2の第1の周波数f1の高周波信号を生成する。このとき、識別コード判別手段E9から送られてくる識別コードIDjで第1の周波数f1の高周波信号を変調する(識別コード変調)。これで得られるのが識別用高周波信号H1(IDj)である。得られた識別用高周波信号H1(IDj)は信号重畳手段E12に送出される。
高周波信号変調手段E11が生成する識別用高周波信号の振幅は既定の最大値に設定する。これはすべての識別用高周波信号に共通である。識別用高周波信号の重畳の時間的サイクルとしては、図2(b)に示すように、可聴域音声信号のサンプリング周期の2分の1の周期(2倍の周波数)でON/OFFを繰り返す条件とする。これにより、可聴域音声信号に対する識別用高周波信号の同期がとりやすいものとなる。識別コードのビット数として図2(b)では4ビットを例示しているが、これは装置の使用台数に応じて変えるものである。
高周波信号変調手段E11によって生成された識別用高周波信号H1(IDj)は信号重畳手段E12へと送出される。信号重畳手段E12は、可聴域音声信号生成手段E8からの可聴域音声信号Siと高周波信号変調手段E11からの識別用高周波信号H1(IDj)とを受け取り、可聴域音声信号Siに識別用高周波信号H1(IDj)を重畳して重畳信号Mi(=Si+H1)を生成する。この重畳信号Miには他装置の識別コードIDj(j=2,3)が含まれている。
以上のようにして生成された重畳信号Miは信号出力手段E13に送出される。信号出力手段E13の後段には、スピーカなどの放音器やD/A変換器を備えている。
統括制御手段E14は上記した各手段(E1〜E13)を統括的に制御する。ネットワークインターフェースE15はイントラネット、LAN(ローカルエリアネットワーク)、インターネット、電話網等のネットワークE16に接続される。利用目的はテレビ会議、通信会議、電話会議、インターホン通話、ホームセキュリティの監視カメラシステム(警告モード付き)などである。
統括制御手段E14はCPU(中央演算処理装置)やMPU(超小型演算処理装置)やDSP(デジタルシグナルプロセッサ)で構成される。以下、これらをCPU(プログラムを内蔵したROMを含む)で代表させる。統括制御手段E14はもちろんCPUで構成される。ハウリング判定手段E2、識別コード判別手段E9はCPUで構成される。信号分離手段E1、可聴域減衰手段E3、識別コード付加手段E6、復号手段E7、可聴域音声信号生成手段E8、信号重畳手段E12はハードウェアで構成されるが、その一部の機能はCPUに担当させてもよい。信号入力手段E4、識別コード記憶手段E5、周波数コード記憶手段E10、高周波信号変調手段E11、信号出力手段E13はハードウェアで構成される。
図8は音響ネットワークシステムにおいて、本発明の実施例の音声入出力装置Yのハードウェアを中心にした概略構成図である。図8において、1はマイクなどの収音器、2は信号分離機能を有するFFT(高速フーリエ変換)部、3,4はA/D変換部、5はFIFO(先入れ先出し式のメモリ)、6はCPU(中央演算処理装置)、7はROM(リードオンリーメモリ)、8はRAM(ランダムアクセスメモリ)、9はフラッシュメモリなどの不揮発性メモリ、10は音声出力部、11はスピーカなどの放音器、12はバス、13はネットワークインターフェース、14はネットワーク(回線・通信網)である。
FFT2は信号分離手段E1に対応し、収音器1から入力されてくる複合重畳信号Sacを可聴域音声信号Siと各周波数fiの識別用高周波信号Hiとに分離する。分離された可聴域音声信号SiはA/D変換器3によってデジタルデータに変換される。図2(b)で説明したように識別用高周波信号の重畳を可聴域音声信号の周波数の2倍の周波数でON/OFFして、可聴域音声信号に対する識別用高周波信号の同期をとっているが、この同期は2つのA/D変換器での動作を同一タイミングとする上で有効に作用する。
一方、分離された各周波数fiの識別用高周波信号HiはA/D変換器4によってデジタルデータに変換される。A/D変換器3の出力側はFIFO5に接続され、FIFO5の出力側はCPU6の入力ポートにつながっている。また、A/D変換器4の出力側はCPU6の入力ポートにつながっている。
CPU6は、RAM8をワークメモリとして利用しながらROM7に格納されているプログラムに従って各部の制御を司る。不揮発性メモリ9には自装置および他装置の識別コードIDj(j=1,2,3…)が登録される。自装置の識別コードID1はROM7に格納しておいてもよい。音声出力部10はCPU6の出力ポートに接続されている。音声出力部10にはD/A変換器やミキサやアンプが内蔵されている。音声出力部10の出力側にスピーカなどの放音器SP11が接続されている。CPU6はバス12を介してネットワークインターフェース13に接続され、ネットワークインターフェース13はネットワーク14に接続されている。ネットワークインターフェース13は図7のネットワークインターフェースE15である。
A/D変換器4から各周波数fiの識別用高周波信号Hiを入力したCPU6は、その各周波数fiの識別用高周波信号Hiの信号レベルをチェックし、その結果が規定値Vth以上となっており、かつ識別コードIDjが自装置の識別コード(ここではID1)と一致すれば、CPU6はFIFO5に対して読み込み指令SFを与える。CPU6から読み込み指令SFを受けたFIFO5はそれまで保持していた可聴域音声信号Si(デジタルデータ)を先入れ先出し方式で出力する。
A/D変換器3とCPU6の間にFIFO5を介在させるのは、上記のハウリング可能性の判定に時間がかかるからである。その判定所要時間の時間待ちをする必要があることからFIFO5を設けている。FIFO5での時間待ちは数マイクロ秒ないし数百マイクロ秒のオーダーのきわめてわずかな時間である。これは、従来技術で説明したエコーキャンセラのメモリについての回線回帰の遅延時間(数十ミリ秒〜2秒)に比べて、ごくわずかなものに過ぎず、容量的にも比較するようなものではない。こういった意味でFIFO5は省略することも可能である。もっとも、FIFO5を入れておけば、より高精度な同期処理となり、ハウリング抑圧をより確実に実現できる。
上記の構成の音声入出力装置の動作の基本は次のようになる。
第1装置A1を自装置とし、第2装置A2と第3装置A3とを他装置とする。
第1装置A1において、その識別コード記憶手段E5に自装置の識別コードとしてID1が記憶されている。
なお、発展形として、識別コード記憶手段E5に他装置の識別コードとしてID2,ID3が記憶される仕様の装置も考えられる。それは、自装置である第1装置A1が、他装置である第2装置A2および第3装置A3をハウリング検出の監視対象としてあらかじめ登録しているということである。
この発展形では、第2装置A2において、その識別コード記憶手段E5に自装置の識別コードとしてID2が記憶され、他装置の識別コードとしてID1,ID3が記憶される。これは、第2装置A2が第1装置A1および第3装置A3をハウリング検出の監視対象としてあらかじめ登録しているということである。同様に、第3装置A3において、その識別コード記憶手段E5に自装置の識別コードとしてID3が記憶され、他装置の識別コードとしてID1,ID2が記憶される。これは、第3装置A3が第1装置A1および第2装置A2をハウリング検出の監視対象としてあらかじめ登録しているということである。
これらのあらかじめの登録を忘れることもあるということに留意すべきである。監視対象とする意思がないか、あるいはあっても失念している場合には、相手側の装置には第1装置A1の識別コードID1が登録されないことも起こり得る。
以下、第1装置A1の動作を中心に説明する。
図9は音響ネットワークシステムにおいて、他装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第1の音響ループ環境K1の様子を示す。図10は音響ネットワークシステムにおいて、自装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第2の音響ループ環境K2の様子を示す音響ネットワークシステムを示す。
まず、図9を用いて第1の音響ループ環境K1における動作を説明する。第1の音響ループ環境K1には第1装置A1と第2装置A2が同一空間に置かれている。第1装置A1と第2装置A2とはネットワーク14を介して接続されている。もちろん、状況によっては第3装置A3も含まれることがあるが、ここでは割愛する。動作原理は同一論理に従うからである。
図9では他装置である第2装置A2が音声源となっていて、第2装置A2の放音器SP2から空間に向かって放音されている。空間を伝播した音響は自装置である第1装置A1の収音器MK1が収音する。自装置である第1装置A1は音声源ではない(放音器SP1からの放音はない(放音の記号を無視する))。
いま、図7に戻って、構成要素E4,E1,E2,E3,E5,E6で構成される上半部分を音声入力部Pとし、構成要素E7,E8,E9,E10,E11,E12,E13で構成される下半部分を音声出力部Qとする。
図9と図7とを合わせた状態で動作説明を続ける。図9に示す第1装置A1は図7での音声入力部Pに対応し、図9に示す第2装置A2は図7での音声出力部Qに対応する。
第1装置A1すなわち音声入力部Pでは、その収音器MK1から第2装置A2由来の重畳信号M2(=S2+H2)の音声を入力する。第1装置A1の内部では、信号入力手段E4、信号分離手段E1、可聴域減衰手段E3を経て識別コード付加手段E6にきた第2装置A2由来の可聴域音声信号S2は自装置である第1装置A1の識別コードID1が付加される。その上でネットワークインタフェースE15、ネットワークE16、ネットワークインタフェースE15を経て第2装置A2すなわち音声出力部Qへ至る。
第2装置A2である音声出力部Qでは、復号手段E7、識別コード判別手段E9を経て含まれている識別コードID1が高周波信号変調手段E11に渡される。また、復号手段E7、可聴域音声信号生成手段E8を経て第2装置A2由来の可聴域音声信号S2が信号重畳手段E12に渡される。高周波信号変調手段E11は、周波数コード記憶手段E10から音声出力部Qすなわち第2装置A2の周波数コード(f2)を読み出し、識別コード判別手段E9からの第1装置A1に対応する識別コードID1でその周波数f2の識別用高周波信号H2を変調する。その識別用高周波信号はH2(ID1)という形で表すことができる。信号重畳手段E12は、この識別用高周波信号H2(ID1)を可聴域音声信号S2に重畳し(S2+H2(ID1))、次いで信号出力手段E13から放音器SP2を経て、空間に放音される。それが再度、第1装置A1の収音器MK1に取り込まれる。
次は、第1装置A1すなわち音声入力部Pでの動作説明となる。重畳信号(S2+H2(ID1))が信号入力手段E4を経て信号分離手段E1で可聴域音声信号S2と識別用高周波信号H2に分離される。
ハウリング判定手段E2において、この識別用高周波信号H2の信号レベルが規定値Vth以上であれば、さらに識別コードが判別され、ここではID1であるから、規定値Vth以上の信号レベルをもつ可聴域音声信号S2が履歴として最初にデジタル変換を受けたのが第1装置A1においてであると分かる。これは、ハウリング可能性を意味するため、ハウリング判定手段E2は減衰制御信号Cを可聴域減衰手段E3に送出する。これによって、可聴域音声信号S2は減衰を受け、結果として、ハウリングが抑圧される。すなわち、他装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第1の音響ループ環境K1において、ハウリング抑圧が実現される。
次に、図10を用いて第2の音響ループ環境K2における動作を説明する。第2の音響ループ環境K2には第1装置A1と第3装置A3が含まれるが、これらは空間的に別の空間に置かれている。第1装置A1と第3装置A3とはネットワーク14を介して接続されている。もちろん、状況によっては第4装置A4もまた別の空間に置かれることがあるが、ここでは割愛する。動作原理は同一論理に従うからである。図10では第1装置A1が音声源となっている。
自装置である第1装置A1が音声源となっていて、第1装置A1の放音器SP1から空間に向かって放音され、その音響はすぐに元の自装置である第1装置A1の収音器MK1に収音される。
図10と図7とを合わせた状態で動作を説明する。図10に示す第1装置A1は図7での音声入力部Pおよび音声出力部Qに対応する。
第1装置A1すなわち音声入力部Pでは、その収音器MK1から自装置すなわち第1装置A1由来の重畳信号M1(=S1+H1)の音声を入力する。第1装置A1の内部では、信号入力手段E4、信号分離手段E1、可聴域減衰手段E3を経て識別コード付加手段E6にきた第1装置A1由来の可聴域音声信号S1は自装置である第1装置A1の識別コードID1が付加される。その上でネットワークインタフェースE15、ネットワークE16、ネットワークインタフェースE15を経て第3装置A3に至る。さらに第3装置A3からネットワークを介して第1装置A1に帰還し、放音器SP1を経て、空間に放音される。それが再度、第1装置A1の収音器MK1に取り込まれる。このときの重畳信号の信号形態は元の通りで(S1+H1(ID3))である。
次は、第1装置A1すなわち音声入力部Pでの動作説明となる。重畳信号(S1+H1(ID3))が信号入力手段E4を経て信号分離手段E1で可聴域音声信号S1と識別用高周波信号H1に分離される。
ハウリング判定手段E2において、自装置の識別用高周波信号H1の信号レベルが規定値Vth以上であるため、自装置の放音器SP1を経て自装置の収音器MK1に入力された音声であることが分かる。これは、ハウリング可能性を意味するため、ハウリング判定手段E2は減衰制御信号Cを可聴域減衰手段E3に送出する。これによって、可聴域音声信号S1は減衰を受け、結果として、ハウリングが抑圧される。すなわち、自装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第2の音響ループ環境K2において、ハウリング抑圧が実現される。
図11は図9の状態と図10の状態を合成したものに相当する。第1装置A1は一方では第2装置A2との関係で他装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第1の音響ループ環境K1に属しており、他方では第3装置A3との関係で自装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第2の音響ループ環境K2に属している。これらいずれの音響環境にあっても、自装置である第1装置A1はハウリング可能性の有無を素早く判定し、その可能性があるときは対応する可聴域音声信号を減衰することになる。なお、第2装置A2の放音器SP2からの音声が第1装置A1の収音器MK1に捕捉され、その音声信号が第1のループL1と第2のループL2とに同時的に循環する場合もあり、これにも有効に対応できる。
次に本発明の実施例のハウリング抑圧装置Xの動作を図12、図13のフローチャートに従って説明する。
図12は識別用高周波信号の重畳に関するフローチャートである。
まず、ステップS11において、統括制御手段E14は音声出力部Qにおいて復号手段E7、識別コード判別手段E9によって識別コードIDjを判別する。
次いで、ステップS12において、統括制御手段E14の制御のもとに高周波信号変調手段E11は前記の読み出した識別コードIDjで識別用高周波信号Hiを変調する。ここでは第1装置A1を主体に考えているので、得られた結果は、Hi(IDj)となり、信号重畳手段E12に送られる。
次いで、ステップS13において、信号重畳手段E12は前記で得られた識別用高周波信号Hi(IDj)を可聴域音声信号Siに重畳し、重畳信号Mi(=Si+Hi)を生成する。
次いで、ステップS14において、信号出力手段E13から重畳信号Miを出力する。
図13はハウリング可能性の判定に関するフローチャートである。
ステップS21において、統括制御手段E14は信号入力手段E4を制御して複合重畳信号Sacを入力する。
次いで、ステップS22において、統括制御手段E14による制御のもとで信号分離手段E1は入力した複合重畳信号Sacを可聴域音声信号Siと識別用高周波信号Hi(IDj)とに分離する。分離した可聴域音声信号は可聴域減衰手段E3へ送出し、識別用高周波信号はハウリング判定手段E2に送る。
次いで、ステップS23において、統括制御手段E14による制御のもとでハウリング判定手段E2は、各周波数fiの識別用高周波信号Hiの信号レベルを検出し、その検出した信号レベルが初期値である最大値の50パーセント以上か否かを判定する。識別用高周波信号Hiのいずれについても50パーセント未満であればハウリング可能性は全くないものとしてステップS28に移行し、ステップS28で音声データをCPU6に取り込む。つまりFIFO5に対してCPU6から読み込み指令SFを与え、FIFO5に保持していた可聴域音声信号Si(デジタルデータ)を先入れ先出し方式で出力する。
一方、ステップS23で検出した各周波数fiの識別用高周波信号Hiの信号レベルが初期値の50パーセント以上となっていれば、ステップS24に進む。ステップS24において、ハウリング判定手段E2は信号レベルが50パーセント以上の識別用高周波信号Hiについての各周波数fiをチェックし、それが自装置用であるかの判定を行う。この判定結果が自装置用を示すときはハウリングを抑圧すべくステップS26に移行し、そうでないときはステップS25に進む。
ステップS25に進むのは、信号レベルが50パーセント以上となっているのが他装置の識別用高周波信号となっている場合である。このときステップS25においては、そのハウリング可能性のある可聴域音声信号が最初にデジタル変換を受けた装置が第1装置A1であるかを、含まれている識別コードIDjによって判定する。
ステップS23、ステップS24、ステップS25の処理は次のことを意味している。音響ループ環境のなかで最終的に可聴域音声信号に重畳されることとなるのは、第1の周波数f1の識別用高周波信号H1、第2の周波数f2の識別用高周波信号H2、第3の周波数f3の識別用高周波信号H3のすべてである。ステップS23の信号レベル判定ではそのすべてに関して規定値Vth以上となる可能性がある。そこで、ステップS24ではその規定値Vth以上となった識別用高周波信号Hiが自装置由来のもの(H1)かどうかをチェックしている。つまり、第1の周波数f1に該当するかをチェックしている。第1の周波数f1に該当すると分かれば、それに重畳されている識別コードIDjをチェックすればID1である(つまり第1装置A1である自装置起源のハウリング可能性である)と分かり、このときはハウリング抑圧を実行する。一方、その規定値Vth以上となった識別用高周波信号Hiが自装置由来のもの(H1)でないときには、その大きな音量の可聴域音声信号が最初にデジタル変換を受けた装置がどれなのかを見る。これがステップS25の処理である。
第2の周波数f2での判定で識別用高周波信号H2に識別コードID1が含まれている場合には、その識別用高周波信号H2が規定値Vth以上となった大元の原因は第1装置A1にあったと分かり、このときはハウリング抑圧を実行する。同様に、第3の周波数f3での判定で識別用高周波信号H3に識別コードID1が含まれている場合には、その識別用高周波信号H3が規定値Vth以上となった大元の原因は第1装置A1にあったと分かり、このときもハウリング抑圧を実行する。
ステップS25の判定が否定的となるときはステップS28に進み、肯定的となるときはハウリングを抑圧すべくステップS26に進む。
ステップS26に進むということはハウリングの可能性があってそれを抑圧しようとするためである。逆にステップS26をジャンプしてステップS28に進むということはハウリング抑圧の処理を要しないということである。
ステップS26においては、可聴域減衰手段E3は可聴域音声信号の減衰に用いる調整値を算出する。この調整値は第1装置A1におけるアンプ増幅率の調整値である。
次いで、ステップS27において、ステップS26での調整値をもって可聴域音声信号に対して減衰処理を施す。そして、ステップS28に進んで減衰後の可聴域音声信号の音声データをCPU6に取り込む。
なお、図13では信号レベルについての判定基準として50パーセントを記載しているが、もちろんこれは一例に過ぎず、本発明の主旨に従う限りにおいて、任意のパーセンテージを設定し得る。判定基準を50パーセントなど比較的低く設定しておくと、ハウリングのみならず、エコーも抑圧することが可能となる。
なお、図11に示すトータル的なシステムにあって、第1の音響ループ環境K1のもとでは収音器MK2がない第2装置A2を対象としても、また放音器SP1がない第1装置A1を対象としても、本発明のハウリング抑圧装置は適用可能である。
なお、音声入出力装置Yとしては撮像系を備えたものを対象としてもよい。言い換えると、撮像装置、カメラシステム、撮像監視システム、カメラ付きのホームセキュリティシステム等において、その音声系に適用してもよい。
なお、音声入出力装置Yの台数に関しては、第1の音響ループ環境K1でも第2の音響ループ環境K2でも任意である。
以上のように本発明の実施例によれば、ハウリング判定手段E2が識別用高周波信号Hiの周波数fiと信号レベルとその信号に含まれる識別コードIDjとの3要素に基づいて、ハウリング可能性の判定を行うので、自装置・他装置の関係において、他装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第1の音響ループ環境K1であるか自装置放音−空間−自装置収音−回線回帰の第2の音響ループ環境K2であるかを問わず、また回線回帰の遅延のいかんにかかわりなく、ハウリングを確実に抑圧することができる。
なお、本発明においては、上記音響ネットワークシステムを制御するコンピュータに、各装置割り当ての周波数帯域において識別コードに基づいて変調された識別用高周波信号が可聴域音声信号に重畳されてなる重畳信号を入力して、その重畳信号から前記可聴域音声信号と前記識別用高周波信号とを分離する信号分離処理と、
前記信号分離処理によって分離された前記識別用高周波信号とその信号に含まれる前記識別コードとに基づいてハウリング可能性を判定し、ハウリング可能性がある場合に減衰制御信号を生成するハウリング判定処理と、
前記ハウリング判定処理による前記減衰制御信号を受け取った場合に、前記信号分離処理によって分離された前記可聴域音声信号を減衰させる可聴域減衰処理とを実行させるハウリング抑圧用プログラムを含む。
このハウリング抑圧用プログラムにおいて、前記ハウリング判定処理は、好ましくは、前記識別用高周波信号の信号レベルが規定値以上のときでかつ前記識別用高周波信号における前記識別コードが所定の装置のものであるときにハウリング要件を満たすと判定し、前記減衰制御信号を生成するように構成されている。
前記ハウリング判定処理は、好ましくは、所定の装置に割り当ての専用の周波数帯域の識別用高周波信号の信号レベルが規定値以上のときでかつ前記所定の装置に割り当ての専用の周波数帯域の前記識別用高周波信号における前記識別コードが所定の装置のものであるときにハウリング要件を満たすと判定するように構成されている。
前記ハウリング判定処理は、好ましくは、各所定の装置割り当ての専用の周波数帯域の識別用高周波信号の信号レベルが規定値以上のときでかつ前記各所定の装置割り当ての専用の周波数帯域の前記識別用高周波信号における前記識別コードが所定の装置のものであるときにハウリング要件を満たすと判定するように構成されている。
また、前記ハウリング抑圧用プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録するとよい。この記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。