JP6163903B2 - 加飾成型用フィルムおよび加飾成型体の製造方法 - Google Patents

加飾成型用フィルムおよび加飾成型体の製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車部品や電化製品、携帯端末などで使用される被加飾体に対して、フィルム加飾を施す際に用いる加飾成型用フィルムに関し、接着層と接着層に積層される層との密着性が良好で、かつ、成型性が良好である加飾成型用フィルムおよびそれを用いた加飾成型体の製造方法に関するものである。
自動車部品や電化製品等の成型品の加飾方法としては、一般的に、接着層、着色層、保護層といった、異なる機能を有する複数の層を部品表面に順次スプレー塗装することにより、被加飾体に耐久性や意匠性を付与する手法が採用されている。しかしながら、スプレー塗装においては、焼き付け工程が必要となることから製造工程が多くなり、乾燥における熱量や時間が必要になるため、コスト高となる問題がある。そこで自動車部品や電化製品等の成型品の加飾方法として、近年、3次元形状の被加飾体に加飾可能な、真空成型法や圧空成型法などのフィルム加飾法の検討がなされている。
加飾成型体の最外層に配置される保護層としては、無色透明であり、機械的強度に優れ、耐侯性にも優れているポリカーボネート樹脂の需要が高まっている。一方、被加飾体としては、ABS樹脂、PP樹脂等が主流となっており、これらの樹脂をベースとした接着層の需要が高まっている。
フィルム加飾法において接着層は重要な役割を担い、接着層として被加飾体との密着性はもちろんのこと、保護層や着色層といった接着層と積層される層との密着性や接着層自体の耐久性も必要となる。特許文献1,2,3では積層される層との密着性を向上させる目的や層自身に耐久性を付与するために加飾成型用フィルムの着色層や接着層にイソシアネート基を有する構成とする技術が提案されている。また、特許文献4では成型時の成型性を保持するために接着層に添加するイソシアネート基として、ブロックイソシアネートを使用する構成が提案されている。
特開2003−266614号公報 特開2009−143047号公報 特開2008−30227号公報 特開2009−056788号公報
従来の加飾フィルムは、接着層に合わせて接着層に積層される層を選択する必要がある。従って、保護層をポリカーボネート樹脂、接着層をポリオレフィン樹脂といった、まったく異なる樹脂を使用するときは、保護層と接着層の間にプライマー層を設ける必要があり、加飾フィルムの製造工程が増えてしまう。
また、従来技術にあるような加飾成型用フィルムでは、接着層としてイソシアネート基と反応する樹脂を選択する必要があり、ポリオレフィン樹脂等のイソシアネート基と反応しない樹脂を使用する場合は、樹脂を特別に変性させる必要があった。さらに、接着層に使用する樹脂とイソシアネート基を完全に反応させる処方は低倍率における成型が想定されており、大型のものや凹凸のある複雑な形状の被加飾体に対しては成型性が悪く、適応が難しい。特に顔料が含まれている場合においては、成型性が悪いと高成型倍率部分で外観不良が発生するといった課題があった。
前記の課題を鑑み、本発明は以下の構成とすることで、接着層を含む少なくとも2層以上で構成される加飾成型用フィルムにおいて、接着層や接着層と積層される層の樹脂種類を限定する必要が無く、かつ接着層が顔料を含む場合においても高延伸倍率部分で外観不良の生じにくい加飾成型用フィルムを得ることができることを見出したものである。
つまり、
[1]接着層(A)および接着層(A)に積層される層(B)を含む少なくとも2層以上からなる加飾成型用フィルムであって、接着層(A)はオレフィン系樹脂およびNCO含有率が0.01〜1.6質量部であるイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含んでなり、かつ、層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有することを特徴とする加飾成型用フィルム。
[2]前記層(B)がポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の加飾成型用フィルム。
[3]前記接着層(A)に含まれるイソシアネート基がブロック変性体でブロック化されたブロックイソシアネートを含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の加飾成型用フィルム。
[4]前記接着層(A)が顔料および/または金属薄膜細片を含むことを特徴とする[3]に記載の加飾成型用フィルム。
[5]前記接着層(A)を塗工・乾燥により形成するに際し、ブロックイソシアネートのブロック体が脱離するよりも低い温度で乾燥することを特徴とする[3]または[4]に記載の加飾成型用フィルムの製造方法。
[6][3]または[4]に記載の加飾成型用フィルムをブロックイソシアネートのブロック体が脱離するよりも高い温度で、被成型体に加熱成型し、貼り付ける加飾成型体の製造方法。
本発明によれば、加飾成型用フィルムを構成する接着層(A)がポリオレフィン樹脂およびイソシアネート基を一定量含み、かつ接着層(A)と層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有するときに接着層(A)と層(B)の密着性が良好である加飾成型用フィルムが得られることを見出した。従来の技術と異なり、接着層(A)を構成する樹脂がイソシアネート基と反応する樹脂である必要はなく、接着層(A)が一定量以上のイソシアネート基を含み、かつ層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有する場合、(A)の樹脂に含まれるイソシアネート基と層(B)のヒドロキシ基が反応し、接着層(A)と層(B)の密着性が発現するものである。さらに、イソシアネート基として、ブロック変性体でブロック化されたブロックイソシアネートを使用することで密着性と成型性を両立することができる。この場合、接着層(A)を塗工・乾燥により形成するときの温度をブロックイソシアネートのブロック体が脱離するよりも低い温度で乾燥し、成型のときの温度をブロックイソシアネートのブロック変性体が脱離するよりも高い温度で成型することで、成型前はイソシアネート基が反応していないので、成型性が良好であり、成型の際にイソシアネート基が反応し接着層(A)と層(B)の密着性が良好な加飾成型体を得ることができる。
とくに、接着層(A)に顔料および/または金属薄膜細片を含む場合、高延伸倍率が必要な被加飾体へ加飾した際でも外観が良好な加飾成型体を得ることができる。
本発明の一実施態様(2層構成)に係る加飾成型用フィルムの概略断面図である。 本発明の他の実施態様(3層構成)に係る加飾成型用フィルムの概略断面図である。 本発明のさらに他の実施態様(4層構成)に係る加飾成型用フィルムの概略断面図である。
本発明は、接着層(A)および層(B)を含む少なくとも2層以上からなる加飾成型用フィルムであって、接着層(A)はオレフィン系樹脂およびNCO含有率が0.01〜1.6質量部であるイソシアネート基を含んでなり、かつ、層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有することを特徴とする加飾成型用フィルムである。
本発明の接着層(A)に含まれるオレフィン系樹脂の重量平均分子量Mwは、好ましくは20,000〜200,000であり、さらに好ましくは40,000〜150,000である。Mwが20,000以上であると、オレフィン樹脂からなる成型体への接着性が高くなり、かつ耐水性が高くなるため好ましい。また、Mwが200,000以下であると、極性溶剤との相溶性や溶剤への溶解性が良好で、かつ低温での成型性、オレフィン樹脂からなる成型体への接着性が向上するため好ましい。該重量平均分子量Mwは、JIS K 0124:2011に基づいて液体クロマトグラフ法にて測定することができる。
オレフィン系樹脂の融点Tmは、被加飾成型体に加熱成型する際の加熱温度以下であることが好ましい。好ましくは50〜120℃であり、さらに好ましくは70〜100℃である。Tmが50℃以上であると、高温下でも接着層(A)の成型後の密着保持性が高くなるため好ましい。また、Tmが120℃以下であると、低温での成型性が向上し、かつオレフィン樹脂からなる成型体への接着性が向上するため好ましい。該融点Tmは、JIS K 7121:2010に基づいて示差走査熱量測定法により測定した最大吸収ピーク温度をいう。
接着層(A)の厚みは、好ましくは0.5〜50μmであり、さらに好ましくは、5〜30μmである。該厚みが0.5μm以上であると、前記成型体への接着性を付与させることが可能となり好ましい。また、該厚みが50μm以下であると、厚くなり過ぎず、表面が平坦となるため好ましい。該厚みの測定は、JIS C 2151:2011に準じマイクロメータにて測定することができる。また、既に被加飾体に加飾された状態においては、微分干渉顕微鏡やレーザ顕微鏡、電子顕微鏡などで断面を観察することで、接着層の厚みを測定することができる。
本発明における接着層(A)に含まれるイソシアネートとしては、従来から使用されているものが使用でき、炭素数6〜17の脂環族ポリイソシアネート、炭素数4〜21の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数8〜25の芳香族ポリイソシアネート、炭素数10〜17の芳香脂肪族ポリイソシアネートおよびこれらのポリイソシアネートの変性物等が使用される。イソシアネートとしては、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらイソシアネートの中で耐候性の観点から好ましいのは脂環族イソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートである。
本発明におけるイソシアネート基のNCO含有率としては0.01質量部〜1.6質量部が好ましく、特に0.05〜0.5質量部が好ましい。0.01質量部未満であると接着層(A)と層(B)の密着性向上の効果が発現せず、1.6質量部を超えると加熱成型後であっても、未反応のイソシアネート基が接着層(A)中に残存し、接着層(A)の耐薬品性や耐久性が劣る場合がある。NCO含有率とは、塗膜中に存在するイソシアネート基量を質量分率で表したものであり、JIS K 7301:1995やJIS K 1556:2006などに基づいて求めることができる。
本発明における層(B)は、図1に示す実施の形態においては、基材フィルムが相当し、図2、図3で示す実施の形態においては、それぞれ保護層、着色層が相当する。これらの層に含まれる樹脂は接着層(A)に含まれるイソシアネート基と成型加熱時に反応するためにヒドロキシ基を持つことが好ましい。ヒドロキシ基を持つ樹脂であれば特に制約はなく、ポリエステル、アクリル、エポキシ、フェノール、ウレタン、メラミン、尿素、等の樹脂が挙げられる。
図1に示す実施の形態において、基材フィルムは、接着層(A)を塗工・乾燥により形成する際の基材となる役割を持つとともに、表面保護フィルムの役割も持つため、透明性や光沢性といった意匠特性、耐擦過性や耐衝撃性、耐薬品性、耐候性といった特性を兼ね備えた樹脂であることが好ましい。前記特性を付与するために必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、粘結剤、表面調整剤、顔料、紫外線吸収剤、光安定剤などを混合してもよい。
図2および図3に示す実施の形態において、基材フィルムは、保護層を塗工・乾燥により形成する際の基材となる役割を持つとともに、本発明のフィルムを被加飾体へ貼り付ける際の表面保護フィルムの役割も持つ。従って、基材フィルムの保護層側の面は、保護層との離型性を有していることが好ましい。離型性を有するとは、基材フィルムと保護層とが剥離可能であることを意味する。基材フィルムの保護層側の面と保護層との間に離型性を調節する手段としては、離型性を高める手段として、基材フィルムの片側(保護層側)の面に、ポリオレフィン等の離型性のある層を共押し出しやラミネートして複合フィルムとする手段や離型剤をコーティングして複合フィルムとする手段、離型性を低める手段として、単層フィルムもしくは複合フィルムの片側(保護層側)の面にコロナ処理を施しぬれ張力を調整する手段などが挙げられる。
前記基材フィルムの厚みは、成型後の加飾成型体の破断強度や形状保持性の点で、20〜200μmであることが好ましく、50〜150μmであればさらに好ましい。該厚みの測定は、加飾成型用フィルムの製造工程中であれば、各層を成形するごとにJIS C 2151:2006に準じマイクロメータにて測定して、算出することができる。また、基材フィルムに保護層および/または着色層を積層した状態においては、微分干渉顕微鏡やレーザ顕微鏡、電子顕微鏡などで断面を観察することで、基材フィルムの厚みを測定することができる。
前記基材フィルムは、公知の方法で樹脂を加工して得られるフィルムが挙げられ、未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムの何れであってもよい。本発明においては加飾成型用フィルムとしての成型性を阻害しないために、加熱成型時の温度における破断伸度が200%以上のフィルムが好ましい。
前記保護層としては、加飾成型体に適用されるとき、最表層に位置することとなるため、加飾成型用フィルムの成型性を損なわない樹脂であると共に、透明性や光沢性といった意匠特性、耐擦過性や耐衝撃性、耐薬品性、耐候性といった塗膜特性を兼ね備えた樹脂であることが好ましい。保護層に用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(UV硬化性樹脂含む)のいずれであってもよい。被加飾成型体に対して加飾成型するときの熱で硬化できる点から、熱硬化性樹脂が好ましく、耐候性、耐溶剤性の観点からポリウレタン樹脂が特に好ましい。
保護層にポリウレタン樹脂を用いる場合は、耐擦過性や耐衝撃性の観点から4員環〜10員環の脂環式炭化水素基を有するポリカーボネートポリオールを含有する活性水素成分および有機イソシアネート成分から形成されるポリウレタン樹脂であることが好ましい。
脂環式炭化水素基を有するポリカーボネートポリオールの数平均分子量Mnの範囲は、得られる保護層の型への追従性の観点から、好ましくは500〜5,000、さらに好ましくは600〜3,000、特に好ましくは750〜2,000である。なお、本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、例えば以下の条件で測定することができる。
装置:「HLC−8120GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn HXL−H」(1本)、「TSKgel GMHXL」(2本)[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.25質量部のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン。
ポリウレタン樹脂中における脂環式炭化水素基を有するポリカーボネートポリオールに由来する脂環式炭化水素基の含有量は、保護層の耐傷付性や意匠特性の観点から、活性水素成分と有機イソシアネート成分の合計質量に対して1〜30質量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜25質量部、特に好ましくは10〜20質量部である。
また、脂環式炭化水素基を有するポリカーボネートポリオール以外の活性水素成分として、カルボキシル基含有ポリオールおよびその塩等が含まれていることが好ましい。前記塩が含まれることにより、接着層に含まれるイソシアネート基とカルボキシル基が反応し、保護層と接着層の密着性がさらに良好となる。ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基およびその塩の含有量は0.3mmol/g以上、1.3mmol/g以下となる量であることが好ましい。0.3mmol/g未満であると、接着層との密着性が低下する場合がある。1.3mmol/gを超えると、保護層の耐水性が低下する場合がある。より好ましくは0.5mmol/g以上、1.0mmol/g以下である。本発明におけるポリウレタン樹脂中のカルボキシル基の含有量は、3〜10gのポリウレタン樹脂を130℃で45分間加熱乾燥して得られる残渣を水洗後再度130℃で45分間加熱乾燥し、ジメチルホルムアミドに溶解し、JIS K 0070:1992に記載の方法(電位差滴定法)で測定される酸価から算出できる。
保護層の樹脂には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、粘結剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを混合してもよい。なお、光硬化樹脂を使用する場合は、より良い成型性を確保することができるため、成型後に硬化処理をすることが望ましい。
保護層の厚みは、好ましくは5〜50μmであり、さらに好ましくは、10〜40μmである。該厚みが5μm以上であると、前記塗膜特性を発現させることが可能となり好ましい。また、該厚みが50μm以下であると、表面の平坦性がより良好となり、その上に着色層を形成するのがより容易となるため好ましい。該厚みの測定は、加飾成型用フィルムの製造工程中であれば、各層を成形するごとにJIS C 2151:2006に準じマイクロメータにて測定して、算出することができる。また、基材フィルムを積層した状態においては、微分干渉顕微鏡やレーザ顕微鏡、電子顕微鏡などで断面を観察することで保護層の厚みを測定することができる。
前記着色層としては、目的とする色や風合を加飾する被加飾体に与えることができる層である。例えば、バインダー樹脂と顔料および染料を混合した着色樹脂層、金属薄膜層などからなる層である。色の調整が容易なことや加飾成型時の型への追従性が良い点から、バインダー樹脂と顔料を混合した着色樹脂層がより好ましい。着色樹脂層に用いられるバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂のいずれを用いてもよい。これらの樹脂には、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、粘結剤、表面調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤などを混合してもよい。また、上記樹脂は共重合体であってもよく、または異種の樹脂の混合体であってもよいが、耐熱性がよく、取り扱いが容易で、かつ安価な熱硬化性樹脂を好ましく用いることができる。
着色層の厚みは、好ましくは10〜80μmであり、さらに好ましくは、20〜60μmである。該厚みが10μm以上であると、所望の色合いを有する着色層が得られやすいため好ましい。また、該厚みが80μm以下であると、表面が平坦となり、着色層上に接着剤層を形成するのが容易となるので好ましい。該厚みの測定は、加飾成型用積層フィルムの製造工程中であれば、各層を成形するごとにJIS C 2151:2006に準じマイクロメータにて測定して、算出することができる。また、成型用フィルムに加飾層を積層した状態においては、微分干渉顕微鏡やレーザ顕微鏡、電子顕微鏡などで断面を観察することで、接着層の厚みを測定することができる。
本発明における前記イソシアネート基はブロック変性体でブロック化されたブロックイソシアネートを用いることが好ましい。ブロック体が脱離するよりも低い温度で接着層(A)を塗工・乾燥により形成し、かつ、ブロック体が脱離するよりも高い温度で加熱成型を行うことにより、接着層(A)の成型性を保持したまま層(B)との密着性が良好となる本発明の効果を得ることができる。ブロック体としては、活性メチレンブロック、オキシムブロック、カプロラクタムブロック等があるが、後述の通り、接着層の塗工・乾燥温度および加熱成型温度により選択されることが好ましい。また、ブロックイソシアネートを用いた場合のNCO含有率は、ブロックイソシアネートのブロック体が完全に脱離した時に反応可能となるイソシアネート量(有効NCO量)をもとに算出できる。
本発明において接着層(A)には顔料および/または金属薄膜細片を混合してもよい。これにより、被加飾体との密着性を付与すると共に、目的とする色や風合を被加飾体に与えることができる。加えて、加飾成型用フィルムの着色層と接着層の2層を、顔料および/または金属薄膜細片を含む1層に統合することができる。つまり、塗工コストや原料コストのコストダウンが可能となる。
この場合、接着層(A)に含まれるイソシアネート基はブロックイソシアネートが好ましい。通常のイソシアネート基を用いた場合、塗工・乾燥工程の中で、イソシアネート基が顔料および/または金属薄膜細片に存在するヒドロキシ基と反応してしまい、バインダー樹脂と顔料および/または金属薄膜細片が固着し、結果的に接着層(A)の成型性が悪くなり、高延伸倍率に成型したときに外観が悪くなってしまう。
顔料としては、例えばカーボンブラック、二酸化チタン、マイカ、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレットなど、無機顔料、有機顔料のいずれを用いてもよい。金属薄膜細片に使用される金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等から選ばれる。好ましくは、アルミニウムである。
金属薄膜細片の平均長径としては1〜20μmが好ましい。より好ましくは5〜15μmが好ましい。金属薄膜細片の平均長径が20μm以下であると高成型倍率部分においても金属薄膜細片が均一に配向し成型外観が良好となり、1μm以上であると被加飾体に成型したときの下地隠蔽性が良好となる。
金属薄膜細片は、塗料の分散性や顔料の耐候性を付与するために表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の有機脂肪酸が挙げられる。上記、顔料および/または金属薄膜細片は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
また、バインダー樹脂に対する顔料および/または金属薄膜細片の固形分含有濃度は、接着層(A)の接着性や成型性、表面外観を阻害しない範囲で調整すればよく、5〜30質量部が好ましい。バインダー樹脂に対する顔料および/または金属薄膜細片の固形分含有濃度が5質量部以上であると高延伸倍率部分においても下地隠蔽性を保持することができる。30質量部以下であれば、バインダー樹脂の成型性を阻害せず、成型性が良好となるため好ましい。より好ましいバインダー樹脂に対する顔料および/または金属薄膜細片の固形分含有濃度は10〜20質量部である。
本発明に係る加飾成型用フィルムの製造方法としては、接着層(A)に含まれるイソシアネート基がブロック化されていないものであれば、既存の方法で問題ない。イソシアネート基がブロックイソシアネートである場合は、接着層(A)の塗工・乾燥時にはブロック体が脱離しない温度で行うことが好ましい。例えば、活性メチレンブロック、オキシムブロック、カプロラクタムブロックを用いた場合は、それぞれ90℃以下、120℃以下、150℃以下で塗工・乾燥することが好ましい。
本発明にかかる加飾成型体の製造方法としては、加飾成型用フィルムを、被加飾体に貼り付ける際に真空成型法や圧空成型法など3次元形状の被加飾体に加飾成型用フィルムを貼り付け可能な、既知の熱成型方法を適用することが好ましい。接着層(A)に含まれるイソシアネート基がブロック化されていないものであれば、加熱成型の温度として、それぞれの膜が十分に成型できる温度まで加熱し、成型することが好ましい。イソシアネート基がブロックイソシアネートである場合は、加熱成型するときにはブロック体が脱離する温度で行うことが好ましい。例えば、活性メチレンブロック、オキシムブロック、カプロラクタムブロックを用いた場合は、それぞれ110℃以上、140℃以上、180℃以上で加熱成型することが好ましい。
また、本発明の実施の形態(図2,図3)においては、加飾成型用フィルムを、被加飾体に貼り付けた後、基材フィルムを剥離することにより作製する加飾成型体の製造方法が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(加飾成型体の作製方法)
TOM成形機(布施真空株式会社製、NGF0406−T)を用いて、加飾成型用フィルムの接着層側と被加飾成型体の一番面積の大きい面とが相対するようにフィルムをセットし、以下の条件で成型を行い、加飾成型体を作製した。
成型温度:110℃
ヒーター出力:急加熱時 200%、通常加熱時 80%
急加熱時間:10秒
圧空圧力:300kPa
圧空時間:15秒
微量開放:2秒
加飾フィルムの延伸倍率については、TOM成型機の箱型の窪みの深さを調整することにより実施した。具体的には、窪みの深さを85mmとした。被加飾成型体としては、ポリオレフィン樹脂(TSOP GP6BS、プライムポリマー社製)からなる、長さ250mm×幅100mm×厚さ3mmの平板状の樹脂成型体を用いた。
(評価方法)
1.接着層(A)および層(B)の密着性
JIS K 5400:1990の碁盤目セロハンテープ剥離試験により評価した。すなわち、加飾成型体の加飾塗膜側にカッターナイフで1mm間隔の碁盤目状の切込みを入れ、セロハンテープを貼り付けた後剥離した。剥離後の跡を確認し、次の基準で評価した。AおよびBのものを密着性が問題ないとし、Cのものを密着性が不良であるとした。
A:層(B)にはがれが無い
B:層(B)のはがれの数が1カ所以上4カ所以下
C:層(B)のはがれの数が5カ所以上。
2.成型外観
加飾成型体の加飾塗膜側を、マイクロウェーブスキャンT(BYK−Gardner社製)を用いて、各うねり波長W1〜W4におけるうねりの強度を測定し、次の基準で評価した。AおよびBのものを成型外観が良好であるとした。
A:すべてのうねりの強度が30未満である。
B:30以上35未満のうねりの強度となるものがあり、35以上のうねりの強度となるものがない。
C:35以上のうねりの強度となるものがある。
ここで、各うねり波長W1〜W4におけるうねりの強度は、レーザービームを試料表面に照射しながら走査し、その反射ビームの強度(拡散、集光)をセンサーで検出、解析し数値化したものであり、数値が小さい程各うねり波長W1〜W4に対応するうねりが少なく、試料表面が平滑であることを表す。各うねり波長の値を以下に示す。
(各うねり波長)
うねり波長W1(波長 2.4mm以上 )
うねり波長W2(波長 0.8mm以上 2.4mm未満)
うねり波長W3(波長 0.32mm以上0.8mm未満)
うねり波長W4(波長 0.32mm未満 )。
3.耐薬品性
加飾成型体の加飾塗膜側に0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、液滴の蒸発を防ぐために滴下点を直径5cmのシャーレで覆い、55℃で4時間静置した後、液滴を布で吸収して除去し、加飾塗膜の外観を次の基準で目視評価した。AまたはBのものを加飾成型体の耐薬品性が良好であるとした。
A:変化なし
B:僅かに跡が残る
C:著しく跡が残る、または、被加飾成型体が露出する。
(実施例1)
基材フィルムとして、厚さ100μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(FL10、東レ社製)を用いた。基材フィルムに、ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部に対してイソシアネート塗料(TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部を添加・混合したものを、乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、接着層を形成した。得られた加飾成型用フィルムを用いて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
Figure 0006163903
(実施例2)
撹拌機および加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物(モル比50:50)とエチレンカーボネートとの反応より得られたMn900のポリカーボネートジオール185.9質量部および1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物(モル比70:30)とエチレンカーボネートとの反応により得られたMn1,000のポリカーボネートジオール67.4質量部、カルボキシル基含有ポリオールおよびその塩として2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)52.4質量部、鎖伸張剤としてエチレングリコール2.53質量部、有機ポリイソシアネート成分としての4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)180.9部および反応溶剤としてのメチルエチルケトン490.1質量部を仕込んで90℃で24時間攪拌してウレタン化反応を行い、分子内にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂溶液U1を得た。得られた、ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基の含有量は、0.8mmol/gであった。次いで、成型用フィルム1として、厚さ100μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、FL10)と厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、SC)とをウレタン系接着剤を用いてドライラミネートしたものを用いた。基材フィルムのポリプロピレンフィルム側に、ポリウレタン樹脂溶液U1を用いて乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、保護層を形成した。次いで、保護層上に、ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部に対してイソシアネート塗料(TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部を添加・混合したものを、乾燥後の厚さが20μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、接着層を形成した。得られた加飾成型用フィルムを用いて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
成型用フィルム1として、厚さ100μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、FL10)と厚さ40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ社製、SC)とをウレタン系接着剤を用いてドライラミネートしたものを用いた。基材フィルムのポリプロピレンフィルム側に、ポリウレタン樹脂溶液U1を乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、保護層を形成した。次いで、保護層上に着色層を形成するためバインダー塗料(R2325、日本ビー・ケミカル社製)100質量部にアルミペースト(0300M、東洋アルミ社製)をバインダー塗料の固形分に対する顔料濃度が15質量部となるように添加・混合したものを、乾燥後の厚さが40μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、着色層を形成した。次いで、着色層上に、ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部に対してイソシアネート塗料(TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部を添加・混合したものを、乾燥後の厚さが20μmとなるようアプリケーター法により塗布した後、80℃で10分間乾燥し、接着層を形成した。得られた加飾成型用フィルムを110℃に加熱した状態で被加飾体に貼り付けて加飾成型をした。加飾成型体を真空成型機から取りだし、基材フィルムを剥離して加飾成型体を作製した。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部に対して、イソシアネート塗料(TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)6質量部を添加・混合したものを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例5)
ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部に対して、イソシアネート塗料として、活性メチレンにてブロック化されたブロックイソシアネート塗料(MF−K60X、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部を添加・混合したものを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例6)
ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部に対して、イソシアネート塗料として、活性メチレンにてブロック化されたブロックイソシアネート塗料(MF−K60X、旭化成ケミカルズ社製)0.5質量部、さらにアルミペースト(0300M、東洋アルミ社製)をポリオレフィン塗料の固形分に対する顔料濃度が15質量部となるように添加・混合したものを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
(実施例7)
撹拌機および加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物(モル比50:50)とエチレンカーボネートとの反応より得られたMn900のポリカーボネートジオール198.2質量部、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物(モル比70:30)とエチレンカーボネートとの反応により得られたMn1,000のポリカーボネートジオール71.9質量部、カルボキシル基含有ポリオールおよびその塩としてDMPA23.4質量部、鎖伸張剤としてエチレングリコール14.9質量部、有機ポリイソシアネート成分としての水添MDI181.0部および反応溶剤としてのメチルエチルケトン490.1質量部を仕込んで90℃で24時間攪拌してウレタン化反応を行い、分子内にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂溶液U2を得た。得られたポリウレタン樹脂中のカルボキシル基の含有量は、0.36mmol/gであった。
保護層としてポリウレタン樹脂溶液U2としたこと以外は実施例2と同様の方法にて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
接着層として、ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部のみを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリオレフィン塗料(DX−526、東洋紡社製)100質量部に対して、イソシアネート塗料としてイソシアネート塗料(TPA−100、旭化成ケミカルズ社製)10質量部を添加・混合したものを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて加飾成型体を得た。得られた加飾成型体の評価結果を表1に示す。
本発明の加飾成型用フィルムは、自動車部品や電化製品などを加飾する際に好ましく用いることができ、表面保護性や意匠性機能性が求められる用途に好ましく適用することができる。
1.接着層
2.基材フィルム
3.保護層
4.着色層

Claims (6)

  1. 接着層(A)および接着層(A)に積層される層(B)を含む少なくとも2層以上からなる加飾成型用フィルムであって、接着層(A)はオレフィン系樹脂およびNCO含有率が0.01〜1.6質量部であるイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を含んでなり、かつ、層(B)に含まれる樹脂がヒドロキシ基を有することを特徴とする加飾成型用フィルム。
  2. 前記層(B)がポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の加飾成型用フィルム。
  3. 前記接着層(A)に含まれるイソシアネート基がブロック変性体でブロック化されたブロックイソシアネートを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の加飾成型用フィルム。
  4. 前記接着層(A)が顔料および/または金属薄膜細片を含むことを特徴とする請求項3に記載の加飾成型用フィルム。
  5. 前記接着層(A)を塗工・乾燥により形成するに際し、ブロックイソシアネートのブロック体が脱離するよりも低い温度で乾燥することを特徴とする請求項3または4に記載の加飾成型用フィルムの製造方法。
  6. 請求項3または4に記載の加飾成型用フィルムをブロックイソシアネートのブロック体が脱離するよりも高い温度で、被成型体に加熱成型し、貼り付ける加飾成型体の製造方法。
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