以下、図面を参照しながら本発明に係る寝具及びクッションの好適な実施形態について詳細に説明する。以下では、本発明に係る寝具の一例である枕1について説明する。
(第1実施形態)
図1に示されるように、本実施形態に係る枕1は、両サイドが盛り上がった形状を成しており、盛り上がった部分1a,1bの間に位置する凹んだ部分に使用者の頭部及び頸部が乗せられる。また、上記凹んだ部分は、手前から順に、頸部を乗せる部分1cと、後頭部を乗せる部分1dと、頭頂部を乗せる部分1eとに分けられている。両サイドの盛り上がった部分1a,1bは、横寝した使用者の顔を乗せる部分である。なお、枕1は左右対称となっているが、左右対称でなくてもよい。
また、枕1は空気を利用して枕1の高さを調整可能となっている。すなわち、枕1では、その内部に封入させる空気の量を調整することにより、厚さ調整可能となっている。枕1は、使用者の頭部及び頸部を乗せることによる沈み込みの高さ及び速さと、頭部及び頸部を外したときの戻りの高さ及び速さが調整されている。
以下の説明では、枕1の厚み方向を厚さ方向、頸部を乗せる部分1c、後頭部を乗せる部分1d及び頭頂部を乗せる部分1eが並ぶ方向を縦方向、厚さ方向及び縦方向の両方に直交する方向を横方向として説明する。また、頭頂部を乗せる部分1eに対して頸部を乗せる部分1cが設けられる側を手前、頸部を乗せる部分1cに対して頭頂部を乗せる部分1eが設けられる側を奥とする。これらの方向は、単に説明の便宜上のものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
枕1は、枕1の表面を構成する布製の側地3と、枕1内外における空気流通を開閉する吸排気弁(開閉部)4とを備えている。図2に示されるように、側地3の内部には袋体2が収容されており、袋体2には、複数の弾性発泡体5が、袋体2の最大容量に対して圧縮された状態で詰め込まれている。また、弾性発泡体5は、枕1の内部に空気を最大量入れた状態においても圧縮された状態を維持している。弾性発泡体5は、袋体2の中詰材(中芯)として機能する。
ここで、「複数の弾性発泡体5」とは、袋体2の内部に満遍なく入り込み圧縮が可能となる程度の数の弾性発泡体5を示している。袋体2の内部に詰め込まれる弾性発泡体5の数は、例えば200個以上且つ30000個以下である。また、複数の弾性発泡体5は、その体積が圧縮比1.5〜5.8程度に圧縮された状態で最大容量となった袋体2に詰め込まれる。ここで、「圧縮比」とは、圧縮されていない状態と袋体2の内部で圧縮された状態とにおける、複数の弾性発泡体5全体としての体積の比を示している。なお、弾性発泡体5を袋体2に詰め込む作業は、手作業で行ってもよいし、ショットガン等の機械によって行ってもよく、弾性発泡体5を袋体2に詰め込む手段は特に限定されない。
袋体2に詰め込まれていない室温常圧下の状態において、弾性発泡体5は、直方体状となっており、好ましくは発泡ウレタンを立方体状(サイコロ状)とした形状となっている。弾性発泡体5はサイコロウレタンとも称される。弾性発泡体5を構成する発泡ウレタンは、表面張力が大きく、引っ張り込まれて変形しやすいという性質を有する。また、各弾性発泡体5の内部には空気が含まれているため、弾性発泡体5の圧縮及び膨張が可能となっている。
非圧縮時における弾性発泡体5の形状を立方体形状とした場合における弾性発泡体5の一辺の長さは、3mm以上且つ50mm以下であることが好ましい。また、本発明に係る寝具が枕1でなく例えばマットレスである場合には、弾性発泡体の一辺の長さは3mm以上且つ100mm以下であることが好ましい。弾性発泡体5の密度は20kg/m3以上且つ90kg/m3以下であり、弾性発泡体5の硬度は15N以上且つ120N以下である。これらの密度及び硬度は、JISK6401に準拠している。なお、袋体2の内部に詰め込まれる弾性発泡体5の重量は、例えば270gであるが、適宜変更可能である。
側地3は、その内面に内袋7を備えており、内袋7には複数のパイプ材(粒状体)6が収容される。ここで、「複数のパイプ材6」とは、内袋7の内部に満遍なく収容される程度の数のパイプ材6を示している。また、パイプ材6は、円筒状を呈しており、例えばポリエチレン製の中空パイプである。但し、パイプ材6の材料としては、ポリエチレンに限られず、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン又はポリウレタンを用いることも可能である。パイプ材6の直径は例えば2mm以上且つ20mm以下であり、パイプ材6の軸線方向の長さは例えば5mm以上且つ20mm以下である。
ここで、仮にパイプ材6に代えて綿を内袋7に収容した場合には、側地3が変形しやすくなる。しかしながら、本実施形態では、布製の側地3の内袋7にパイプ材6を収容することによって、パイプ材6の流動性を良好にすると共に側地3の過度な変形を抑制している。
図3に示されるように、袋体2は、扁平で横長な直方体状を呈しており、非通気性シートで構成されている。袋体2の材料としては、PVC等のビニル素材が挙げられる。但し、袋体2の材料としては、PVCに限られず、例えば、ポリウレタン又はポリエステルを用いることも可能である。袋体2は、例えば、1枚の非通気性シートを高周波ウェルダーで熱接着させることによって形成される。なお、非通気性シートを接着剤で貼り合わせることによって袋体2を形成してもよい。また、袋体2は、透明であるが、中身が見えないようにシルバーメタリックのデザイン等が付与されていてもよい。
袋体2の内部空間2qは5分割されている。すなわち、袋体2は、枕1の左側の盛り上がった部分1aを形成する領域2aと、枕1の右側の盛り上がった部分1bを形成する領域2bと、枕1の頸部を乗せる部分1cを形成する領域2cと、後頭部を乗せる部分1dを形成する領域2dと、頭頂部を乗せる部分1eを形成する領域2eとを備える。
上記のように、袋体2は、その内部に弾性発泡体5が詰め込まれる複数の領域2a〜2eを備えており、各領域2a〜2eに弾性発泡体5が圧縮された状態で詰め込まれる。これにより、枕1の各部分1a〜1eの盛り上がり具合と、枕1の沈み速度(凹み速度)と、枕1の戻り速度とが定められる。ここで、沈み速度(凹み速度)とは、枕1に後頭部等を乗せることによって単位時間当たりに枕1が薄くなる量を示しており、戻り速度とは、枕1から後頭部等を外すことによって単位時間当たりに枕1が厚くなる量を示している。
また、袋体2の各領域2a〜2eに詰め込む弾性発泡体5の量を調整することによって、初期状態における枕1の各部分1a〜1eの形状を調整可能となっている。また、仕切られた領域2a〜2eのそれぞれに所定数の弾性発泡体5を詰め込むことによって、使用者に適合したよりよい寝心地の枕1を提供することができる。
本実施形態において、枕1の沈み速度は、0.62cm/s(cm/秒)以上且つ2.00cm/s以下となっており、より好ましくは0.80cm/s以上且つ1.10cm/s以下である。枕1の戻り速度は、0.29cm/s以上且つ0.73cm/s以下となっており、より好ましくは0.40cm/s以上且つ0.60cm/s以下である。
なお、袋体2の各領域2a〜2eに弾性発泡体5を詰め込んだ後には、袋体2に熱シールを施すことによって袋体2を封止する。しかし、袋体2を封止する方法は熱シールに限定されない。例えば、各領域2a〜2eにポケットを設けてもよく、ポケット内部の領域2a〜2eに弾性発泡体5を詰め込んだ後にポケットを閉じることによって袋体2を封止してもよい。このように各領域2a〜2eに弾性発泡体5を詰め込むための構造や手段は適宜変更することができる。
また、本実施形態では、使用者の頭部と頸部が載置される部分1c〜1eを低くすると共に、横方向両側の部分1a,1bを高くするように弾性発泡体5の量が調整されている。すなわち、領域2c〜2eと比較して、領域2a,2bに詰め込む弾性発泡体5の密度を高くすることにより、部分1a,1bを部分1c〜1eよりも高くしている。このように、横方向両側の部分1a,1bを部分1c〜1eよりも高くすることによって、横方向両側の部分1a,1bを使用者が横を向いたときの顔のクッションとなるようにしている。
袋体2は、その内部に、前述の各領域2a〜2eを仕切る4つのマチ部2f,2g,2h,2jを有する。各マチ部2f,2g,2h,2jは、例えば非通気性シートを袋体2の内部に熱接着させることによって形成される。
マチ部2fは、袋体2の左側の領域2aと、袋体2の横方向中央部分に位置する領域2c〜2eとを仕切っており、マチ部2gは、袋体2の右側の領域2bと、領域2c〜2eとを仕切っている。マチ部2f,2gは、共に、袋体2の縦方向の全域に亘って延びる板状となっている。
マチ部2fは、領域2aと領域2c〜2eとの空気流通を可能とする通気口(通気部)2kを備えており、この通気口2kは縦方向に5個並んでいる。また、マチ部2gは、領域2bと領域2c〜2eとの空気流通を可能とする通気口2mを備えており、この通気口2mも縦方向に5個並んでいる。通気口2k,2mは共に横方向に貫通している。通気口2k,2mの形状は、例えば円形状であるが、これに限られず例えば四角形状であってもよい。また、通気口2k,2mの個数も5個に限定されず適宜変更可能である。
マチ部2hは、左側の領域2aと右側の領域2bとの間で横方向に延びており、頸部が乗せられる領域2cと後頭部が乗せられる領域2dとを仕切っている。マチ部2jは、マチ部2hと同様横方向に延びており、後頭部が乗せられる領域2dと頭頂部が乗せられる領域2eとを仕切っている。
マチ部2hの横方向両側には開口(通気部)2nが設けられており、マチ部2jの横方向両側にも同様の開口2pが設けられている。開口2nは、頸部が乗せられる領域2cと後頭部が乗せられる領域2dとの空気流通を可能としており、開口2pは、後頭部が乗せられる領域2dと頭頂部が乗せられる領域2eとの空気流通を可能としている。また、開口2n,2pは弾性発泡体5が通らない程度の大きさとなっており、開口2n,2pには空気のみが通れるようになっている。
袋体2の左側の端部には吸排気弁4が設けられており、この吸排気弁4は左側の領域2aの手前側に設けられている。吸排気弁4の材料としては、例えばPVC又はポリウレタンを用いることができる。なお、吸排気弁4の材料は、袋体2の材料と同一であることが好ましい。この場合、枕1の製造過程において、吸排気弁4を袋体2に接着しやすくすることができる。
図4に示されるように、吸排気弁4は、袋体2の開口2sに取り付けられる取付部4aと、回転することによって取付部4aに対して上下に移動可能となっている円柱状の蓋部4bとを備えている。取付部4aは、袋体2の開口2sに固着される固着部4cと、固着部4cにおける袋体2の反対側に位置する台座部4dとを有する。
図4(a)及び図4(b)に示されるように、吸排気弁4は、回転式となっており、使用者によって回転操作されることにより袋体2の開口2sの開放及び閉塞が可能となっている。この吸排気弁4の開放及び閉塞により、枕1の内部の空気量が調整され、枕1の高さが調整される。
具体的には、蓋部4bが中心軸線Lを中心として一方向(例えば反時計回り)に回転操作されることにより、台座部4dに対して蓋部4bが上昇し、この蓋部4bの上昇に伴って袋体2の開口2sが開放される。また、蓋部4bが中心軸線Lを中心として他方向(例えば時計回り)に回転操作されることにより蓋部4bが下降し、蓋部4bが台座部4dに接触するときに袋体2の開口2sが閉塞される。
また、袋体2の開口2sに対する吸排気弁4の高さは抑えられている。具体的には、従来の吸排気弁の高さが40.0mm程度であるのに対し、吸排気弁4の高さは15.5mm程度となっている。このように吸排気弁4の高さを40.0mm未満として吸排気弁4の高さを抑えることにより、使用者の身体等が吸排気弁4に当接したり引っ掛かったりする事態を抑制することができる。なお、吸排気弁4を構成する各部品の材料や形状は、上記に限定されず、袋体2内への空気流通の開閉が可能であれば他の材料や形状であってもよい。
図5(a)及び図5(b)に示されるように、袋体2を覆う布製の側地3は、横長に延びる長方形状となっている。側地3としては、通気性の良好な素材が用いられる。具体的に、側地3の材料としては、例えば綿又はポリエステルを用いることができる。
側地3は、袋体2を収容する袋状の部分を有すると共に、前述の内袋7を表面3bの裏側に有する。側地3の裏面3aには、袋体2を内部に収容させるためのファスナー8aが設けられている。ファスナー8aは、縦方向における側地3の中央部分において、側地3の横方向の全域に亘って延びている。なお、ファスナー8aが設けられる位置は、縦方向における側地3の中央部分でなくてもよく、例えば縦方向における裏面3aの上端部分又は下端部分であってもよい。
側地3の表面3bの裏側には、前述の内袋7が設けられている。内袋7は、その内部に4つの領域を備えている。具体的には、内袋7は、枕1の左側の部分1aに対応する領域7aと、枕1の右側の領域に対応する領域7bと、枕1の頸部を乗せる部分1cに対応する領域7cと、枕1の頭部を乗せる部分1d,1eに対応する領域7dとを備えている。
このように、側地3の内袋7は、その内部にパイプ材6が収容される4つの領域7a〜7dを備えており、各領域7a〜7dにパイプ材6が収容されることによって、側地3の各領域7a〜7dにおける触感が良好となる。
また、内袋7は、その内部に各領域7a〜7dを仕切る3つのマチ部7e〜7gと、手前側にアーチ状に湾曲したマチ部7hとを有する。このようなアーチ状のマチ部7hを有することにより、マチ部7hに使用者の後頭部が乗せられたときに、その後頭部を枕1に収まりやすくすることができる。
また、各マチ部7e〜7hは、例えば布を縫い込むことによって形成されており、各マチ部7e〜7hを形成する縫い代が側地3の表面3bに形成されている。なお、各領域7a〜7dに収容されたパイプ材6は、マチ部7e〜7hを超えることができない。
マチ部7eは、左側の領域7aと、横方向中央部分に位置する領域7c,7dとを仕切っており、マチ部7fは、側地3の右側の領域7bと、領域7c,7dとを仕切っている。マチ部7e,7fは、共に、側地3の縦方向の全域に亘って延びている。マチ部7gは、手前側の領域7cと奥側の領域7dとを仕切っており、左側のマチ部7eと右側のマチ部7fとの間で横方向に全域に亘って延びている。マチ部7hは、側地3の略中央部分において手前側に湾曲した形状となっている。
また、側地3の内袋7の各領域7a〜7dには、パイプ材6を収容させるためのファスナー8b〜8eが設けられている。ファスナー8b〜8eは、側地3の表面3bの裏側において横方向に延びている。各ファスナー8b〜8eを開けてパイプ材6を各領域7a〜7dに入れることが可能となっており、各領域7a〜7dに収容するパイプ材6の量を調整することによって、枕1の各部分1a〜1eの触感を使用者の好みに応じて調整可能となっている。
次に、枕1の使用方法の一例について簡単に説明する。まず、枕1に何も乗せない状態で使用者が吸排気弁4の蓋部4bを一方向に回転操作することにより袋体2の開口2sを開放し、袋体2の内部空間2qに空気を流入させて枕1の高さをゆっくりと高くする。そして、蓋部4bを他方向に回転操作することによって袋体2の開口2sを閉塞させる。
上記のように袋体2の開口2sを閉塞した状態で使用者の頭部及び頸部を枕1に乗せて枕1に外力を与える。この状態で吸排気弁4の蓋部4bを再度一方向に回転操作することによって袋体2の開口2sを開放し、袋体2の内部空間2qから空気を流出させて枕1をゆっくりと沈める。そして、使用者にとって枕1の高さが丁度良い高さにまで沈んだときに、再度蓋部4bを他方向に回転操作することによって袋体2の開口2sを閉塞し、枕1の高さを所望の高さで維持させる。このようにして枕1は使用者にとって最適な高さとなる。
次に、本実施形態に係る枕1によって得られる効果について説明する。
枕1は、使用者が自分で吸排気弁4を操作することによって枕1の高さを所望の高さとすることができる。従って、使用者の特性に応じた枕の製造が不要となるため、枕の製造にかかる手間とコストを抑えることができる。また、複数の弾性発泡体5が、袋体2が最大容量となったときに、その体積が圧縮比1.5〜5.8に圧縮された状態になるように袋体2に詰め込まれている。よって、袋体2に外力を付与して枕1の高さを低くするときに複数の弾性発泡体5による反発力が発生する。このように袋体2に外力を付与したときに弾性発泡体5による反発力が発生するので、枕1をゆっくりと低くすることができる。また、袋体2の内部に空気を流入させて枕1を高くするときには、流入した空気が圧縮された弾性発泡体5の間を通ってゆっくりと袋体2の内部空間2qに入っていく。従って、袋体2の内部空間2qへの空気の流入をゆっくりと行うことができるので、枕1をゆっくりと高くすることができる。
このように、枕1をゆっくりと高くしたり低くしたりすることができるので、高さの微調整を容易に行うことができる。従って、枕1が使用者にとって最適な高さとなっているか否かがわかりやすく使用者が高さ調整機能を有効利用できるので、使用者それぞれに適合した寝心地の良い枕1を提供することができる。更に、ホテル等の宿泊施設で複数の使用者が一つの枕1を使うようなときであっても、各使用者にとって最適な枕1の高さとすることができる。
また、枕1では、沈み速度(凹み速度)が0.62cm/s以上且つ2.00cm/s以下、且つ、戻り速度が0.29cm/s以上且つ0.73cm/s以下となるように弾性発泡体5の量が調整される。ここで、仮に沈み速度が0.62cm/s未満又は戻り速度が0.29cm/s未満である場合には、速度が遅すぎるので枕の高さが調整されているのか否かがわかりにくいという問題がある。また、沈み速度が2.00cm/sよりも速いか又は戻り速度が0.73cm/sよりも速い場合には、速度が速すぎるので微調整が困難となり高さ調整の操作が難しいという問題が生じる。
これに対し、枕1では、前述のように、凹み速度が0.62cm/s以上且つ2.00cm/s以下、且つ、戻り速度が0.29cm/s以上且つ0.73cm/s以下となっており、各速度が適切な値となっている。従って、微調整を容易に行うことができ、使用者が自分で簡単に寝心地を良くすることができる。
また、枕1では、マチ部2f,2g,2h,2jが袋体2の内部空間2qを仕切っており、マチ部2f,2g,2h,2jによって仕切られた領域2a〜2eのそれぞれに複数の弾性発泡体5が圧縮された状態で詰め込まれる。従って、袋体2に弾性発泡体5が膨張する力が働くため、袋体2は、マチ部2f,2g,2h,2jを始点として膨らんだ形状となる。よって、使用者の頭部及び頸部を乗せたときの弾力性を高めることができるので、使用者の寝心地を良くすることができる。
更に、マチ部2fは袋体2の内部空間2qの空気が領域2aと領域2c〜2eとの間で流通する通気口2kを有し、マチ部2gは内部空間2qの空気が領域2bと領域2c〜2eとの間で流通する通気口2mを有する。また、マチ部2hは内部空間2qの空気が領域2cと領域2dとの間で流通する開口2nを有し、マチ部2jは内部空間2qの空気が領域2dと領域2eとの間で流通する開口2pを有する。
このような通気口2k,2m及び開口2n,2pを有することにより、領域2a〜2e間で空気が流通することとなり、袋体2の内部空間2qにおける空気を領域2a〜2e間に行き渡らせることができる。従って、領域2a〜2eのそれぞれに対する枕1の高さ調整が可能となる。更に、マチ部2f,2g,2h,2jを介して領域2a〜2e間で空気が流通するので、各領域2a〜2eにおける空気量を最適な量とすることが可能となる。よって、使用者の頸部が乗る部分1cと後頭部が乗る部分1dと頭頂部が乗る部分1eとの高さを個別に調整することが可能となるので、一層良い寝心地の提供が可能となる。
また、弾性発泡体5は、直方体状となっている。このように弾性発泡体5の形状を直方体状とすることにより、弾性発泡体5の製造及び加工を容易に行うことができる。
また、弾性発泡体5は、一辺の長さが3mm以上且つ100mm以下の立方体状となっている。ここで、仮に、弾性発泡体の一辺の長さが3mm未満である場合には、弾性発泡体が細かすぎるので取扱いが面倒である。具体的には、弾性発泡体を細かくカットする作業等に手間やコストがかかり、静電気防止加工も必要であるため、面倒でコストがかかるという問題がある。
また、弾性発泡体の一辺の長さが100mmよりも長い場合には、弾性発泡体が大きすぎるので、触感が良くなく且つ袋体の内部に弾性発泡体を収容させる作業が面倒になるという問題がある。すなわち、寝心地の劣化が懸念される上に弾性発泡体の収容作業の作業性が低下する問題が生じうる。
これに対し、本実施形態に係る弾性発泡体は、一辺の長さが3mm以上且つ100mm以下の立方体状となっているので、弾性発泡体の製造及び加工を一層容易に行うことができる。また、袋体に収容される弾性発泡体の一辺の長さを3mm以上且つ100mm以下とすることにより、袋体の触感を良好にすることができると共に、弾性発泡体を袋体に収容する作業を効率よく行うことができる。
また、吸排気弁4は、袋体2から突出すると共に回転操作が可能となっており、吸排気弁4が一方向に回転されると空気流通が開放され、一方向とは反対の他方向に回転されると空気流通が閉塞される。このように吸排気弁4を袋体2から突出した形状にすると共に吸排気弁4を回転操作可能とすることにより、片手で吸排気弁4を掴んで回すだけで簡単に高さ調整を行うことができる。すなわち、枕1における空気調整の仕方が分かりやすく使いやすい枕とすることができる。
また、使用者の頭部及び頸部を枕1に乗せた状態で高さ調整を行うことも可能となるので、枕1の高さ調整を一層容易に行うことができる。更に、吸排気弁4は、使用者の肩に近い頸部側に設けられる。従って、使用者は枕1に頭部を乗せ、腕を曲げた状態で吸排気弁4を触るだけで簡単に吸排気弁4を回転操作することができるので、吸排気弁4の片手による回転操作を一層容易に行うことができる。
また、枕1は、袋体2を覆う布製の側地3を備えている。袋体2が布製の側地3に覆われることにより、使用者の頭部及び頸部は布製の側地3に触れることになる。ここで、仮に布製の側地3が無い場合には、ビニル素材の袋体2だけとなるので、使用時に蒸れる可能性がある。これに対し、本実施形態では、袋体2を覆う側地3を備えているので、内部の袋体2の材料に拘わらず枕1の触感を良好にすることができる。また、側地3を布製とすることにより枕1の通気性を良くすることができるので、枕1の使用時における蒸れを抑制することも可能となる。
また、側地3は、内袋7を有し、内袋7の内部には、複数のパイプ材6が収容されている。従って、外側から側地3を触ったときの触感を一層良好にすることができるので、寝心地の一層の向上に寄与する。
(第2実施形態)
次に、図6を参照しながら第2実施形態に係る枕の側地13について説明する。第2実施形態に係る枕は、第1実施形態の側地3に代えて側地13を備えている点以外は、第1実施形態と同一である。以下では、第1実施形態と重複する説明を省略する。
側地13は、その表面13aにシート状ウレタン16を収容する内袋17を備えている。シート状ウレタン16は、内袋17の内部において、表面13aのほぼ全域に亘って延在している。内袋17の縦方向の端部には、内袋17にシート状ウレタン16を出し入れするためのファスナー18aが設けられており、このファスナー18aは側地13の横方向の全域に亘って延びている。
また、側地13の裏面13bには、袋体2を内部に収容させるためのファスナー18bが設けられている。ファスナー18bは、縦方向における裏面13bの中央部分において、側地13の横方向の全域に亘って延びている。なお、ファスナー18a,18bが設けられる位置は、上記に限定されず適宜変更可能である。
以上、第2実施形態に係る枕は、パイプ材6を収容する内袋7に代えて、シート状ウレタン16を収容する内袋17を備えている。このような第2実施形態に係る枕では、第1実施形態と同様の効果が得られる。更に、第2実施形態に係る枕では、簡単にシート状ウレタン16を内袋17に入れることができ、沈み速度及び戻り速度の調整を容易に行えるといった効果も得られる。
(第3実施形態)
次に、図7(a)及び図7(b)を参照しながら第3実施形態に係るクッション31について説明する。クッション31の内部構成は枕1の内部構成と同様となっている。よって、第1実施形態の枕1と共通する部分については記載を適宜省略して説明を行う。図7(a)に示されるように、クッション31は、例えば、その平面形状が正方形状であって中央が膨らんでいる。図7(a)及び図7(b)に示されるように、クッション31は、袋体2と同様の材料で構成される袋体32と、側地3と同様の材料で構成される側地33と、吸排気弁4と、弾性発泡体5と、パイプ材6とを備えている。側地33の内側には、内袋7と同様の内袋37が設けられている。
袋体32では、吸排気弁4による空気流通を開放した状態で外力が付与されることによって袋体32の内部空間から空気が流出する。この空気の流出で袋体32が薄くなることによってクッション31は厚さ調整可能となっている。袋体32の内部における弾性発泡体5は、第1実施形態と同様、袋体32が最大容量であるときに、その体積が圧縮比1.5〜5.8に圧縮された状態となるように袋体32に詰め込まれている。また、クッション31の凹み速度は0.62cm/s以上且つ2.00cm/s以下となっており、クッション31の戻り速度は0.29cm/s以上且つ0.73cm/s以下となっている。
以上のように、第3実施形態に係るクッション31は、第1実施形態に係る枕1と同様の構成を備えている。従って、第1実施形態に係る枕1と同様の効果、すなわち、製造にかかる手間やコストを抑えつつ厚さの調整を容易に行うことができ、使用者それぞれに適合した寝心地の良いクッションを提供できるという効果が得られる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本発明は、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、前述した実施形態では、枕1における弾性発泡体5の一辺の長さが3mm以上且つ50mm以下である例について説明したが、弾性発泡体の一辺の長さを前述の範囲以外の値とすることも可能である。また、弾性発泡体5の形状は、立方体でなくてもよく適宜変更可能である。例えば、立方体の弾性発泡体5に代えて、破砕状又は球状の弾性発泡体を用いてもよい。ここで、破砕状の弾性発泡体とは、例えば不要となった弾性発泡体の塊を粉砕機等によって破砕した端材を示している。
また、前述した実施形態では、弾性発泡体5が発泡ウレタンで構成されている例について説明した。しかしながら、弾性発泡体5の材料としては、ウレタン以外のものを用いることも可能である。例えば、ウレタン製の弾性発泡体5に代えて、ポリエステル、シリコン、又はニトリルゴム(NBR)などのゴム製の弾性発泡体を用いてもよい。
また、前述した実施形態では、枕1が回転操作可能な吸排気弁4を備える例について説明した。しかしながら、袋体2の内外の空気流通を開閉する開閉部としては、吸排気弁4以外のものを用いることも可能である。例えば、吸排気弁4に代えて、スライド式の開閉部を備えていてもよい。この場合、例えば開閉部を一方向にスライド移動させることによって袋体2の開口2sを開放し、開閉部を他方向にスライド移動させることによって袋体2の開口2sを閉塞させる例が挙げられる。
また、前述した実施形態では、枕1が1個の吸排気弁4を備えていたが、2個以上の吸排気弁4を備えていてもよい。更に、袋体2の内部空間2qを、頸部側(手前側)の領域と後頭部側(奥側)の領域とに分けて、それぞれの領域に吸排気弁4を設けてもよい。この場合、頸部側の領域における枕の高さ調整と、後頭部側の領域における枕の高さ調整とを個別に行うことが可能となる。
また、前述した実施形態では、側地3の内袋7にパイプ材6が収容される例について説明した。しかしながら、内袋7に収容する粒状体としては、パイプ材6以外のものを用いることも可能である。例えば、パイプ材6に代えて、ビーズ、天然素材のそばがら又は粒わたを内袋7に収容してもよい。
また、前述した実施形態では、マチ部2f,2gがそれぞれ5個の通気口2k,2mを備え、マチ部2j,2hがそれぞれの両側に開口2n,2pを備えていた。しかしながら、マチ部が有する通気部の形状、大きさ及び個数は、上記通気口2k,2m又は開口2n,2pに限定されず適宜変更可能である。更に、マチ部の数、形状及び配置態様についても適宜変更可能であり、マチ部を省略してもよい。
また、前述した実施形態では、本発明に係る寝具が枕1である例について説明した。しかしながら、本発明は、枕1又はクッション31に限定されず、種々の寝具又はクッションに適用させることができる。例えば、本発明に係る寝具は、背もたれ、介護用の椅子、敷物又は敷き寝具等であってもよい。
(実施例)
前述した実施形態では、袋体の内部の弾性発泡体に工夫を凝らすことによって、使用者の後頭部及び頸部を寝具又はクッションに乗せたときの凹み速度、及び使用者の後頭部及び頸部を寝具又はクッションから外したときの戻り速度が調整される。すなわち、弾性発泡体の圧縮比を調整することにより、凹み速度と戻り速度とがコントロールされる。以下では、図8〜図10を参照しながら、第1実施形態の枕1の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
図8に示されるように、この実施例の実験では、中央に孔部21aを有する円板21と、円板21の孔部21aに通される棒状部22a、及び棒状部22aの下端に位置して枕1を上から押圧する押圧板22bを有する押圧部材22と、を備えた測定装置20を用いた。円板21は、使用者の頭部を想定した重りであって、頭部と枕1との接触面積、及び頭部の重量に対応した大きさ及び重さとなっている。円板21の直径は17.5cm、円板21の重量は5.0kgである。この実験では、円板21を枕1の一番膨らんだ部分1aに乗せ、枕1の静止高さと沈み高さとを測定した。
枕1の静止高さとは、例えば図8(a)に示されるように、測定装置20を乗せる前(何も枕1に乗せておらず枕1に外力を付与していない状態)における枕1の高さH1(単位:cm)を示している。一方、枕1の沈み高さとは、例えば図8(b)に示されるように、測定装置20を載せてから枕1の沈み量が安定するまでの沈み時間(単位:s)をストップウォッチで計測し、沈み時間となったときの枕1の高さH2(単位:cm)を示している。
この実験では、(静止高さ−沈み高さ)/沈み時間の式を用いて沈み速度(単位:cm/s)を算出した。更に、測定装置20を枕1から離して枕1の戻り時間(単位:s)を算出した。この戻り時間は、測定装置20を離してから枕1の高さが静止高さに戻るまでの時間を示している。また、(静止高さ−沈み高さ)/戻り時間の式を用いて戻り速度(単位:cm/s)を算出した。
この実験において、枕1には、ウレタン製の立方体状の弾性発泡体5を用いた。圧縮前の弾性発泡体5の体積は、39cm×39cm×39cm(59319cc)の箱状の計量ボックス(アクリルボックス)を用いて測定した。すなわち計量ボックスに一杯に弾性発泡体5を敷き詰めて非圧縮時の弾性発泡体5の体積を測定し、その後弾性発泡体5を圧縮させて袋体2に詰め込んだ。パイプ材6としては、ポリエチレン製の円筒状のものを用いた。また、弾性発泡体5の一辺の長さを40mm、袋体2内の弾性発泡体5の重量を270g、袋体2内の弾性発泡体5の個数を210個、弾性発泡体5の硬度を20N、弾性発泡体5の密度を20kg/m3とした。これらの密度及び硬度は、JISK6401に準拠している。
最大容量の状態において、袋体2の横の長さは58cm、縦の長さは43cm、高さは5cmとし、袋体2の体積を12470ccとした。袋体2に詰められる弾性発泡体5の圧縮比は、圧縮されていない状態(計量ボックスに敷き詰められた状態)と袋体2の内部で圧縮された状態とにおける弾性発泡体5の体積の比であり、図9及び図10に示されるように、圧縮比を変更しながら静止高さ、沈み高さ、沈み時間、戻り時間、沈み速度及び戻り速度を算出した。
図9及び図10に示されるように、沈み速度については、圧縮比が1.0〜1.2のときに22.04cm/sと非常に速くなり、圧縮比が1.3、1.4のときに、それぞれ2.84cm/s、2.06cm/sとなり多少速いことが分かった。そして、圧縮比が1.5〜5.8のときには、沈み速度が0.62cm/s以上且つ2.00cm/s以下となり好ましい値になった。また、圧縮比が6.1〜6.8のときに沈み速度は0.56cm/s〜0.60cm/sと多少遅くなり、圧縮比が7.1以上のときには沈み高さが高く適正な枕の状態となっていないことが分かったので図10への値の記載を省略している。
一方、戻り速度については、圧縮比が1.0〜1.2のときに2.20cm/sと非常に速くなり、圧縮比が1.3、1.4のときに、それぞれ1.08cm/s、1.00cm/sとなり多少速かった。そして、圧縮比が1.5〜6.8のときに、戻り速度は、0.29cm/s〜0.73cm/sとなり好ましい値となった。なお、前述のように圧縮比が7.1以上のときには沈み高さが高く適正な枕の状態となっていないので図10への値の記載を省略している。
以上より、弾性発泡体5の圧縮比を1.5〜5.8程度に圧縮して袋体2に詰め込んだ場合に、枕1の沈み速度が0.62cm/s以上且つ2.00cm/s以下となり、枕1の戻り速度が0.29cm/s以上且つ0.73cm/s以下となり、沈み速度及び戻り速度が好ましい値になることが分かった。
弾性発泡体5の圧縮比が1.3以下である場合には、袋体2の最大容量に対する弾性発泡体5間の空気の割合(以下、空隙率という)が大きいので、沈み速度及び戻り速度が速くなったと考えられる。また、弾性発泡体5の圧縮比を高めて圧縮比を1.5〜5.8とした場合には、空隙率が小さくなり袋体2内における弾性発泡体5の反発力が強くなるので、沈み速度及び戻り速度が遅くなると考えられる。
また、沈み高さは、圧縮比が1.0〜6.8の場合には、圧縮比の増加に伴って高くなることが分かった。一方、静止高さは、圧縮比が1.0〜4.8の場合には圧縮比の増加に伴って高くなるが、圧縮比が5.1〜7.1の場合には12.5〜13.3程度で安定することが分かった。