JP6159495B2 - 浮上式分離装置 - Google Patents

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Description

本発明は、浮上式分離装置に関する。
例えば、特許文献1に記載の浮上式分離装置では、懸濁物質に気泡を付着させる第1処理槽及び第2処理槽を備えている。第2処理槽は、第1処理槽と同様な構成の処理槽である。そして、第2処理槽は、フィルタを通して第1処理槽の下部から取水した水に気泡を供給して懸濁物質を分離する。
特開2003−88853号公報
ところで、浮上式分離装置は、水中に浮遊する懸濁物質を気泡に吸着させて当該懸濁物質を上昇させて分離する。しかし、水中に浮遊する全ての懸濁物質を気泡にて浮上させることは困難である。このため、浮上させることができなかった懸濁物質は、処理槽の下部に沈殿し、溜まっていく。
そして、特許文献1に記載の浮上式分離装置では、フィルタを通して第1処理槽の下部から取水した水が第2処理槽にて処理される。このため、第1処理槽にて浮上させることができなかった懸濁物質は、第1処理槽の下部に溜まり続ける。
したがって、特許文献1に記載の浮上式分離装置では、比較的に頻繁に第1処理槽の下部に沈殿した懸濁物質を除去する作業を行う必要がある。因みに、沈殿物を除去する作業は、(a)処理槽の下部に設けたドレン口を開放し、処理水と共に沈殿物を排出する作業方法、又は(b)処理槽の水を抜くことなく、専用のバキューム装置にて沈殿物を吸引する等の方法が一般的である。
本発明は、上記点に鑑み、浮上式分離装置において、沈殿物の除去作業を軽減することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、水中に浮遊する懸濁物質を気泡に吸着させて当該懸濁物質を分離処理する浮上式分離装置において、懸濁物質を含む原水と気泡とが混合した第1処理水が滞留する第1滞留槽(7)と、第1滞留槽(7)の上部に第1処理水を排出する第1排出部(11C)を有する浮上筒であって、少なくとも原水が下方側から上方側に流通する第1浮上筒(11)と、第1滞留槽(7)から取水された水と気泡とが混合した第2処理水が滞留する第2滞留槽(9)と、第1滞留槽(7)の下部に向けて開口した取水口(13B)、及び取水口(13B)から取水した水を第2滞留槽(9)の上部に排出する第2排出部(13C)を有する浮上筒であって、流速が第1浮上筒(11)内の流速以上である第2浮上筒(13)とを備えることを特徴とする。
これにより、本発明では、取水口(13B)から取水される水と共に、第1滞留槽(7)の下部に溜まっている懸濁物質等の沈殿物が第2浮上筒(13)内に吸引されていく。そして、第2浮上筒(13)内に吸引された沈殿物は、第2滞留槽(9)にて分離される。
したがって、本発明では、第1滞留槽(7)の下部に懸濁物質等が溜まっていくことが抑制されるので、沈殿物の除去作業を軽減することができる。
なお、本発明の「上部」とは、少なくとも上下方向中間部より上方を意図する。本発明の「下部」とは、少なくとも上下方向中間部より下方を意図する。そして、より具体的な位置は、浮上式分離装置に求められる具体的な製品仕様により決定されるものである。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係る浮上式分離装置の概念図である。 図1のA−A断面図である。
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
そして、本実施形態は、工場排水や家庭排水等の排水を処理する排水浄化装置に本発明に係る浮上式分離装置を適用したものである。
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載したものであり、本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「複数」や「2つ以上」等の断りをした場合を除き、少なくとも1つ設けられている。
(第1実施形態)
1.浮上式分離装置
1.1 概要
浮上式分離装置1は、図1に示すように、すくなとも排水処理部3及び気泡発生装置20等を有している。排水処理部3は排水から懸濁物質を分離処理する。気泡発生装置20は分離処理に用いる気泡を発生させる。
排水処理部3にて気泡と共に浮上した懸濁物質(以下、スカムともいう。)は、スカム受槽5に蓄えられる。このスカム受槽5の下部には、排出口5Aが設けられている。そして、スカム受槽5内に溜まったスカムは、定期的又は連続的に排出口5Aから排出された後、乾燥処理等を含む排出処理がなされる。
1.2 排水処理部
排水処理部3は、少なくとも、第1滞留槽7、第2滞留槽9、第1浮上筒11及び第2浮上筒13等を有している。
<第1滞留槽>
第1滞留槽7は、懸濁物質を含む排水等(以下、第1原水という。)と気泡とが混合した第1処理水が滞留する処理槽である。第1原水中に浮遊する懸濁物質の多くは、第1滞留槽7にて気泡に吸着されて気泡と共に浮上した後、第1処理水の水面に溜まってスポンジ状のスカムとなる。
なお、第1処理水、つまり第1原水中の懸濁物質を浮上分離させるには、気泡が付着した懸濁物質が水面まで浮上する時間(以下、滞留時間という。)を要する。このため、第1滞留槽7では、第1処理水を積極的に流通させることなく、第1滞留槽7にて滞留させている。
つまり、第1処理水が第1滞留槽7で滞留することにより、気泡が付着した懸濁物質が気泡と共に第1滞留槽7の水面に浮上し、水面にスカムが発生する。因みに、例えば、第1滞留槽7での滞留時間は、第1滞留槽7の水平面積が大きくなるほど大きくなる。したがって、第1滞留槽7の水平面積は、必要とされる排水等の処理能力に基づいて経験的に決定される。
<第1浮上筒>
第1浮上筒11内は、少なくとも第1原水が下方側から上方側に流通する流路である。そして、第1浮上筒11は第1排出部11Cを有している。第1排出部11Cは、第1原水に気泡が混交された第1処理水を第1滞留槽7の上部に排出する。
なお、本実施形態では、第1排出部11C全体が第1処理水の水面下に位置している。つまり、第1処理水の水面は、第1排出部11Cの上端と同一又は当該上端より上方に位置している。
また、第1浮上筒11内は、図2に示すように、第1原水が上昇しながら流通する原水路11Aと気泡が供給される第1気泡供給部11Bとに分離されている。
すなわち、第1ケーシング11Dは第1浮上筒11の外殻を構成する。第1ケーシング11D内には、第1ケーシング11D内を原水路11Aと第1気泡供給部11Bとに仕切る仕切板11Eが設けられている。第1排出部11Cは、第1ケーシング11Dの上端側に設けられている。
なお、第1ケーシング11D及び仕切板11Eは、耐食性に優れた材料製である。耐食性に優れた材料とは、例えばステンレス等の金属材料、表面に耐食性を向上させる皮膜又は塗装膜が形成された金属、又は樹脂等をいう。因みに、本実施形態に係る第1ケーシング11D及び仕切板11Eは、ステンレス製である。
気泡と第1原水とが混合する混合部11Gは、第1浮上筒11内のうち原水路11Aの終端部に設けられている。具体的には、仕切板11Eは、第1ケーシング11Dの底部から第1排出部11C側に向けて延びている。そして、混合部11Gは、仕切板11Eの上端と第1排出部11Cとの間に設けられている。
また、本実施形態では、第1気泡供給部11Bを挟んで両側に原水路11Aが設けられている。つまり、本実施形態に係る第1浮上筒11では、一対の仕切板11E間に第1気泡供給部11Bが設けられ、かつ、各仕切板11Eと第1ケーシング11Dとの間に原水路11Aが設けられている。
各原水路11Aの下方側には、原水路11Aに第1原水を供給する原水供給部11Fが設けられている。第1気泡供給部11Bは、一対の仕切板11Eにより仕切られた空間(以下、気泡筒11Hという。)の下方側に設けられている。
原水供給部11Fより下方側には、原水路11Aと気泡筒11Hとを連通させる連通部11Jが設けられている。なお、本実施形態に係る連通部11Jは、仕切板11Eの下端側に設けられた貫通穴である。
そして、連通部11Jと第1気泡供給部11Bとの位置関係は、以下の要件を満たすことが望ましい。すなわち、連通部11Jは、原水路11Aのうち原水供給部11Fより下側にある第1原水を気泡筒11Hに誘導することにより、原水路11Aに第1原水が滞留することを抑制する。
このため、連通部11Jと第1気泡供給部11Bとは、第1気泡供給部11Bから気泡筒11Hに流入する水流に、連通部11J近傍にある水が巻き込まれる程度に近接していることが望ましい。なお、本実施形態では、第1気泡供給部11Bは原水供給部11Fより低い位置に設けられ、かつ、連通部11Jは第1気泡供給部11Bより低い位置に設けられている。
また、原水路11Aを流通する第1原水の流速は、第1原水中の懸濁物質が沈殿しない程度の流速(以下、非沈殿速という。)以上とする必要がある。そして、本実施形態では、ポンプを用いることなく、原水路11Aの流路断面積を適正な大きさとして、第1原水の流速を非沈殿速以上としている。
具体的には、第1滞留槽7より高い位置に第1原水が溜められた高架槽(図示せず。)が設けられている。高架槽から落下した第1原水は、落下により発生する水圧にて原水路11Aに流入する。
そして、原水路11Aに流入した第1原水は、原水路11Aにて非沈殿速以上の所定速度に減速又は増速される。因みに、高架槽では、排水等に薬品が混合されて、排水に溶け込んでいる物質が懸濁化されて第1原水が生成される。高架槽には、ポンプにて排水等が送られる。
<第2滞留槽>
第2滞留槽9は、図1に示すように、第1滞留槽7から取水された水と気泡とが混合した第2処理水が滞留する槽である。第2処理水中に浮遊する懸濁物質の多くは、第2滞留槽9にて気泡に吸着されて気泡と共に浮上した後、第2処理水の水面に溜まってスカムとなる。
なお、第2滞留槽9においても第1滞留槽7と同様に、第2処理水が第2滞留槽9で滞留することにより、気泡が付着した懸濁物質が気泡と共に第2滞留槽9の水面に浮上し、水面にスカムが発生する。
第2滞留槽9には、第2滞留槽9内の水を排出するための集水部9Aが設けられている。集水部9Aは、第2滞留槽9のうち上下方向中間部であって底部9Bより所定寸法だけ上方にずれた位置に開口して集水する。
つまり、集水部9Aは、気泡が付着した第2処理水、及び第2滞留槽9の底部9Bに沈殿した懸濁物質が吸引され難い位置に設けられている。集水部9Aにて集水された水は、排水槽15に蓄えられる。そして、排水槽15に蓄えられた処理後の水のうち、予め設定された所定水位より上位の水のみが、浮上式分離装置1から排出される。
<第2浮上筒>
第2浮上筒13は、第1滞留槽7の下部から取水した水を第2滞留槽9上部に排出するための流路である。すなわち、第2ケーシング13Aは、上下方向に延びて当該流路を構成するとともに、第1滞留槽7と第2滞留槽9とを区画する。
第2ケーシング13Aの下端側には、第1滞留槽7の下部に向けて開口した取水口13Bが設けられている。第2ケーシング13Aの上端側には、取水口13Bから第2ケーシング13A内に流入した水を第2滞留槽9に排出する第2排出部13Cが設けられている。
第2ケーシング13A内、つまり第2浮上筒13内には、取水口13Bから取水された水(以下、第2原水という。)に気泡を供給する第2気泡供給部13Dが設けられている。第2気泡供給部13Dは、第2浮上筒13内の下部に設けられている。
また、第2浮上筒13内は、第1浮上筒11内と異なり、気泡が浮上する気泡筒と第2原水が流通する流路とに分離されていない。つまり、第2原水は、第2浮上筒13内を気泡と混合しながら取水口13Bから第2排出部13Cに向けて流通する。
そして、第2浮上筒13内を流通する第2原水の流速は、第1浮上筒11内を流通する第1原水の流速より大きい流速となっている。具体的には、第2浮上筒13の流路断面積は、第1浮上筒11の流路断面積未満となっている。なお、第1浮上筒11の流路断面積とは、本実施形態では、一対の原水路11Aの流路断面積の総和である。
<気泡発生装置>
気泡発生装置20は、第1気泡供給部11B及び第2気泡供給部13Dに気泡を供給する。第1調整弁21Aは、第1気泡供給部11Bに供給する気泡量を調節するためのバルブである。第2調整弁21Bは、第2気泡供給部13Dに供給する気泡量を調節するためのバルブである。
本実施形態に係る気泡発生装置20は、水に空気を加圧溶解させることなく、気泡を発生させる装置である。すなわち、本実施形態に係る気泡発生装置20は、ポンプ20A及び細砕器20B等を有している。
ポンプ20Aは、水と空気とを同時に吸引して吐出する。なお、本実施形態では、ポンプ20Aは、排水槽15に蓄えられた処理後の水のうち下部側の水を吸引する。
細砕器20Bは、ポンプ20Aから吐出された気泡を砕いて微粒化することにより、微細な気泡を生成する。なお、本実施形態に係る細砕器20Bは、ベンチェリー効果を利用して気液二相状態の水を加速するとともに、その際に発生する乱流により空気と水と混合しながら気泡を砕いて微粒化する。
因みに、「空気を水に加圧溶解して気泡を生成する方式(以下、加圧方式という。)の気泡発生装置」とは、加圧した空気を強制的に水に溶解させた後、圧力を急激に低下させることにより、水に溶解していた空気を沸騰させるようにして気泡を生成させる装置である。
<スカム回収装置>
スカム回収装置30は、第1処理水及び第2処理水の水面に溜まったスカムをスカム受槽5に移送する。そして、本実施形態に係るスカム回収装置30は、スカムワイパー30A、チューン又は無端ベルト等の駆動体30B、及び駆動体30Bを回転させる電動モータ等の駆動源30C等を有している。
駆動体30Bは、第1浮上筒11側とスカム受槽5側との間に架け渡されている。スカムワイパー30Aは、駆動体30Bに組み付けられている。このため、駆動体30Bが回転駆動されると、スカムワイパー30Aは、第1処理水及び第2処理水の水面上を、第1浮上筒11側からスカム受槽5側に移動する。
したがって、第1処理水及び第2処理水の水面に溜まったスカムは、スカム受槽5側にかき寄せられるようにスカム受槽5側に移送されていく。なお、スカムワイパー30Aは、ゴム等の耐水性に優れた可撓性を有する材質製である。そして、スカムワイパー30Aの先端は、第1処理水及び第2処理水の水面下まで到達している。
2.本実施形態に係る浮上式分離装置の特徴
本実施形態では、第2浮上筒13内を流通する第2原水の流速が、第1浮上筒11内を流通する第1原水の流速より大きいことを特徴としている。
これにより、本実施形態では、取水口13Bから取水される第2原水と共に、第1滞留槽7の下部に溜まっている懸濁物質等の沈殿物が第2浮上筒13内に吸引されていく。そして、第2浮上筒13内に吸引された沈殿物は、第2滞留槽9にて分離される。
したがって、本実施形態では、第1滞留槽7の下部に懸濁物質等が溜まっていくことが抑制されるので、沈殿物の除去作業を軽減することができる。
ところで、本願発明においては、第2浮上筒13内の流速を第1浮上筒11内の流速以上とするためのポンプを用いてもよい。
しかし、本実施形態のごとく、第2浮上筒13の流路断面積を第1浮上筒11の流路断面積以下とすれば、ポンプを用いることなく、第2浮上筒13内の流速を第1浮上筒11内の流速以上とすることができる。
したがって、本実施形態では、簡素な構成で第1滞留槽7の下部に懸濁物質等が溜まっていくことが抑制されるので、沈殿物の除去作業を軽減することができる。
また、本実施形態では、第1浮上筒11は、原水が上昇しながら流通する原水路11Aと気泡が供給される第1気泡供給部11Bとに分離されており、さらに、気泡と第1原水とが混合する混合部11Gは、原水路11Aの終端部に設けられていることを特徴とする。
これにより、本実施形態では、原水と気泡とを予め混合させた処理水を第1浮上筒11に流通させるよりも効果的に懸濁物質を分離することができる。
すなわち、第1原水中を浮遊する懸濁物質の大きさが過度に小さいと、懸濁物質に気泡が吸着し難くなり、懸濁物質の分離能力が低下するおそれがある。
これに対して、本実施形態のごとく、第1原水を気泡から隔離した状態で、原水を第1浮上筒11内に流通させると、原水路11Aを流通している間に懸濁物質同士が吸着して、原水中を浮遊する懸濁物質が次第に大きくなっていく。
そして、懸濁物質がある程度大きくなったとき、つまり第1原水が原水路11Aの終端部に到達したときに、懸濁物質と気泡と出会うので、懸濁物質に気泡が確実に吸着する。
しかし、第1原水と気泡とを予め混合させた処理水を第1浮上筒11に流通させると、懸濁物質が、大きくなることなく、むしろ、拡散してより一層小さくなる可能性がある。したがって、本実施形態によれば、効果的に懸濁物質を浮上分離することができる。
また、本実施形態では、取水口13Bから取水した水に気泡を供給する第2気泡供給部13Dは、第2浮上筒13に設けられていることを特徴とする。
これにより、本実施形態では、気泡と懸濁物質とは、第2浮上筒13で混合することとなる。取水口13Bから取水された第2原水に浮遊する懸濁物質の多くは、第1滞留槽7の下部に既に沈殿していた懸濁物質である。このため、取水された水に浮遊する懸濁物質の多くは、既に大きくなっている。
したがって、第2浮上筒13は、第1浮上筒11と同様な構成、及び取水された水と気泡とを混合させた状態で流通させる構成のいずれであってもよい。つまり、本願発明では、第2浮上筒13内のいずれかの部位で、気泡と取水された水とが混合されれば十分である。
そこで、本実施形態では、(a)第2浮上筒13の簡素化、及び(b)気泡と第2原水との混合時間を長くするといった観点から、取水された水と気泡とを混合させた状態で第2浮上筒13を流通させる構成を採用している。
また、本実施形態では、水に空気を加圧溶解させることなく(以下、非加圧方式という。)、気泡を発生させる気泡発生装置20を備えることを特徴としている。
すなわち、加圧方式の気泡発生装置では、非加圧方式の気泡発生装置20に比べて、気泡と共に供給される水の圧力が大きく変動する可能性が高い。このため、本実施形態のごとく、第1浮上筒11及び第2浮上筒13内の流速を流路断面積に調整する方式では、当該流速を適切な範囲に維持することが難しい。
特に、本実施形態においては、高架槽から落下する第1原水の落下水圧に基づいて、第1浮上筒11及び第2浮上筒13の流路断面積を決定している。このため、気泡と共に供給される水の圧力変動が大きくなると、第1浮上筒11及び第2浮上筒13内の流速は、当該圧力変動の影響を強く受けてしまう。
これに対して、本実施形態では、非加圧方式の気泡発生装置20を採用しているので、圧力変動の影響が小さくなる。したがって、第1浮上筒11及び第2浮上筒13内の流速を適切な範囲に維持でき得る。
また、加圧方式の気泡発生装置では、水に空気を加圧溶解させた後、圧力を急激に低下させて水に溶解していた空気を沸騰させるようにして気泡を生成させる。このため、発生する気泡の量は、水温変動の影響を強く受ける。つまり、加圧方式の気泡発生装置では、気泡を安定的に生成することが難しいので、懸濁物質を安定的に浮上分離することが難しい。
これに対して、本実施形態では、非加圧方式の気泡発生装置20を採用しているので、水温変動の影響が小さくなる。したがって、水温変動によらず、懸濁物質を安定的に浮上分離することができる。
また、本実施形態では、高架槽から落下する第1原水の落下水圧を利用して第1原水を原水路11Aに供給することを特徴としている。これにより、生成した懸濁物質が破壊され、懸濁物質が小さくなることを抑制できる。
すなわち、仮に、高架槽で生成された第1原水をポンプにて原水路11Aに移送すると、高架槽で生成した懸濁物質がポンプにて撹拌・粉砕されて破壊されるおそれが非常に高くなる。これに対して、本実施形態では、懸濁物質を破壊する力が懸濁物質に作用し難い。したがって、本実施形態では、懸濁物質が小さくなることを抑制できる。
また、本実施形態では、図2に示すように、気泡筒11Hを挟んで両側に原水路11Aが設けられ、かつ、気泡筒11Hの上部に混合部11Gが設けられていることを特徴としている。
これにより、一方側の原水路11Aを流通してきた第1原水と他方側の原水路11Aを流通してきた第1原水とが混合部11Gで衝突する。このため、本実施形態では、混合部11Gを積極的に乱流状態とすることができる。
そして、乱流状態の第1原水と気泡筒11H内を上昇してきた気泡とが混合部11Gで混合する。したがって、第1原水と気泡との混合を促進することができるので、懸濁物質の浮上分離効果を高めることができる。
また、本実施形態では、原水供給部11Fより下方側には、原水路11Aと気泡筒11Hとを連通させる連通部11Jが設けられていることを特徴としている。
これにより、本実施形態では、原水路11Aのうち原水供給部11Fより下側にある第1原水を気泡筒11Hに誘導することができ得るので、原水路11Aに第1原水が滞留することを抑制できる。
なお、仮に、原水供給部11Fから供給される第1原水が、原水路11Aの底面から上方に吹き出すような構成であれば、連通部11Jを廃止することが可能である。
しかし、本実施形態では、高架槽から第1原水を落下させて原水路11Aに第1原水を供給している。このため、仮に、上記構成とすると、配管の曲がりが大きくなり、圧力損失が大きくなる可能性が高い。
そして、圧力損失が大きくなると、第1浮上筒11及び第2浮上筒13において、必要な流速を確保することが難しくなる。これに対して、本実施形態では、原水供給部11Fが原水路11Aの側面に設けられているので、配管の曲がりを小さくできる。
したがって、配管での圧力損失が増大することを抑制できる。延いては、第1浮上筒11及び第2浮上筒13において、必要な流速を確保することが可能となる。
(第2実施形態)
上述の実施形態では、第1浮上筒11内を流通する第1原水の流速との関係で、第2浮上筒13内を流通する第2原水の流速を規定した。
しかし、本実施形態は、「第1滞留槽7の下部に溜まっている沈殿物が第2浮上筒13内に吸引する必要な流速(以下、必要流速という。)」という観点から、第2浮上筒13内を流通する第2原水の流速を規定したものである。
つまり、本実施形態では、第2浮上筒13内を流通する第2原水の流速を、必要流速以上としたものである。そして、必要流速は、約3mm/秒以上である。このため、上記条件を満たせば、第2浮上筒13内を流通する第2原水の流速は、(a)第1浮上筒11内を流通する第1原水の流速以上である場合、及び(b)第1浮上筒11内を流通する第1原水の流速より小さい場合のいずれでもよい。
なお、本実施形態は、「第1浮上筒11内を流通する第1原水の流速V1と第2浮上筒13内を流通する第2原水の流速V2との関係、つまりV1はV2以上であるという関係」以外の構成は、第1実施形態と同様である。
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第2浮上筒13の流路断面積は、第1浮上筒11の流路断面積未満であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第2浮上筒13の流路断面積を第1浮上筒11の流路断面積以下として、第2浮上筒13内の流速を第1浮上筒11内の流速より大きくするためのポンプを用いてもよい。
また、上述の本実施形態では、第1気泡供給部11Bは原水供給部11Fより低い位置に設けられ、かつ、連通部11Jは第1気泡供給部11Bより低い位置に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、上述の本実施形態では、高架槽から第1原水を落下させて第1浮上筒11に第1原水を供給していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ポンプにて第1原水を供給してもよい。
また、上述の本実施形態に係る第1浮上筒11は、原水路11Aと第1気泡供給部11B(気泡筒11H)とに分離され、かつ、混合部11Gは、原水路11Aの終端部に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、例えば、(a)第1浮上筒11を第2浮上筒13と同様な構成とする、又は(b)第1浮上筒11を1つの流路とし、かつ、当該1つの流路の上部に原水供給部11Fを設けてもよい。
また、上述の本実施形態に係る第2浮上筒13は、第1浮上筒11と異なる構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2浮上筒13を第1浮上筒11と同様な構成としてもよい。
また、上述の本実施形態では、非加圧式の気泡発生装置20を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、加圧式の気泡発生装置、又は非加圧式の気泡発生装置であって上述の実施形態に例示された気泡発生装置と異なる気泡発生装置であってもよい。
また、上述の本実施形態に係るポンプ20Aは、排水槽15に蓄えられた処理後の水のうち下部側の水を吸引したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、真水を吸引してもよい。
また、上述の本実施形態では、第2滞留槽9での処理が完了したときに排水を排出したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第3の滞留槽等を設け、更に浮上分離処理を行う構成としてもよい。
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。つまり、第1実施形態と第2実施形態とを適宜組み合わせてもよい。
1… 浮上式分離装置 3… 排水処理部 5… スカム受槽 5A… 排出口
7… 第1滞留槽 9… 第2滞留槽 9A… 集水部 11… 第1浮上筒
11C… 第1排出部 11A… 原水路 11B… 第1気泡供給部
11D… 第1ケーシング 11E… 仕切板 11G… 混合部
11F… 原水供給部 11H… 気泡筒 11J… 連通部 13… 第2浮上筒
13A… 第2ケーシング 13B… 取水口 13C… 第2排出部
13D… 第2気泡供給部 15… 排水槽 20… 気泡発生装置
20A… ポンプ 20B… 細砕器 21A… 第1調整弁
21B… 第2調整弁 30… スカム回収装置
30A… スカムワイパー 30B… 駆動体

Claims (8)

  1. 水中に浮遊する懸濁物質を気泡に吸着させて当該懸濁物質を分離する浮上式分離装置において、
    懸濁物質を含む原水と気泡とが混合した第1処理水が滞留する第1滞留槽と、
    前記第1滞留槽の上部に前記第1処理水を排出する第1排出部を有する浮上筒であって、少なくとも前記原水が下方側から上方側に流通する原水路、及び仕切板により当該原水路と仕切られた気泡筒を有する第1浮上筒と、
    前記第1滞留槽から取水された水と気泡とが混合した第2処理水が滞留する第2滞留槽と、
    前記第1滞留槽の下部に向けて開口した取水口、及び前記取水口から取水した水を前記第2滞留槽の上部に排出する第2排出部を有する浮上筒であって、流速が前記第1浮上筒内の流速より大きい第2浮上筒と、
    前記気泡筒の下方側に設けられ、気泡と水とを同時に供給する第1気泡供給部と、
    前記原水路の下方側に設けられ、前記原水路に原水を供給する原水供給部と、
    前記仕切板の上端と前記第1排出部との間に設けられ、前記第1気泡供給部により供給された気泡及び水と前記原水とが混合する混合部と
    を備えることを特徴とする浮上式分離装置。
  2. 前記第2浮上筒の流路断面積は、前記第1浮上筒の流路断面積以下であることを特徴とする請求項1に記載の浮上式分離装置。
  3. 前記取水口から取水した水に気泡を供給する第2気泡供給部は、前記第2浮上筒に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮上式分離装置。
  4. 水に空気を加圧溶解させることなく、気泡を発生させる気泡発生装置を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の浮上式分離装置。
  5. 前記第1滞留槽より高い位置に設けられた高架槽から落下する原水の落下水圧を利用して原水を前記第1浮上筒に供給することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の浮上式分離装置。
  6. 記気泡筒を挟んで両側に前記原水路が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の浮上式分離装置。
  7. 記第1気泡供給部側と前記原水路とを連通させる連通部が、前記原水供給部より下方側に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の浮上式分離装置。
  8. 前記第2浮上筒内の流速は、3mm/秒以上であことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の浮上式分離装置。
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