JP6156617B2 - 浮遊物質解析方法、並びに、これを用いた浮遊物質解析装置及び超音波減衰スペクトル解析装置 - Google Patents
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Description
浮遊砂の密度は一般的な河川では2.5〜2.7g/cm3の範囲にある。また、洪水期間中のダムの排砂操作によって下流河川において最大約5wt.%の浮遊砂濃度が観測された事例がある。(例えば非特許文献1)
例えば、非特許文献1記載の装置では、装置の設置及びメンテナンスを容易にするためにさらなる小型化、測定精度の向上などの課題があると報告されている。また、この装置は浮遊砂濃度の測定装置であり、粒度分布については採水して別途計測しなければならない。
(a)次式(1a)、(1b)により計測データから音速と波長を算出する工程と、
より具体的には、本発明の浮遊物質解析方法、浮遊物質解析装置、及び超音波減衰スペクトル解析装置においては、特許文献1記載のφ20mmのプラノコンケーブ型超音波振動子をトランスデューサーに採用している。このトランスデューサーにパルス電圧を印加して広帯域の超音波を発生させ、浮遊砂中を伝播させて、トランスデューサーの対向面に反射板を設けてその反射波を同一のトランスデューサーで受信し、この反射波を周波数スペクトルに変換する。この周波数スペクトルと水固有の周波数スペクトルから減衰スペクトルを求め、単分散微粒子の単位体積濃度当たりの減衰係数と適切な粒度分布モデルを用いて浮遊砂の濃度と粒度分布を逆計算することができる。
(1)時間とともに変化する浮遊砂の濃度と粒度分布を1分間隔で連続測定できる。
(2)浮遊砂濃度の計測可能範囲の上限は5.0wt.%程度である。
(3)0.2ミクロンから200ミクロンの粒子径の粒度分布が計測できる。
(4)水温5〜25℃の河川又は貯水池において計測が可能である。
(5)対数正規分布だけでなくその他の適切な粒度分布モデルを用いて浮遊砂の粒度分布をより正確に測定できる。
(6)リアルタイムでオンライン測定が可能である。
超音波減衰スペクトル解析装置は、図10に例示される構成を備える。この解析装置においては、プラノコンケーブ型超音波振動子であるトランスデューサー10を用いており、河川又は貯水池等の水(清水〜濁水)中に本体カプセル17と、超音波検出器21と、水温計12と、を設置し、陸上部に測定制御機18と、浮遊物質解析装置としての浮遊砂自動観測ユニット19(例えば汎用パソコン)を設置している。水中の本体カプセル17と陸上にある測定制御機18は防水コネクタ付ケーブル20で接続されている。
また、図10の超音波減衰スペクトル解析装置については、後で詳しく説明する。
また、基準スペクトルを算出するために水温θを、音速と波長を計測するためにトランスデューサーが超音波を発信した時から反射波を同じトランスデューサーで受信するまでの時間(エコータイム)tを計測する。
図3に浮遊砂濃度及び粒度分布の計測プログラムの演算(解析)フローを示す。
ここで、測定データ(計測データ)は、水温(ステップS11)、及び周波数スペクトル(ステップS12)である。計測プログラムの演算フローは第1ステップS100と第2ステップS200に大別される。第1ステップS100は、測定データ(S11〜S12)から減衰スペクトルの計測値を計算(ステップS102)するまでのステップであり、第2ステップS200は、第1ステップS100で計測された減衰スペクトルに一致するスペクトルを持つ浮遊砂の濃度と粒度分布を算出(ステップS205)するまでのステップである。
以下、図3を参照しつつ、より具体的に説明する。
つづいて、減衰係数の計測値と推定値が一致するか否かを判断し(ステップS202)、一致した場合には濃度及び粒度分布を出力する(ステップS205)。すなわち、減衰係数の計測値(式(2))と推定値(式(3a))の偏差の分散s(次式(4))が最小となる濃度(体積パーセント濃度)及び粒度分布パラメータを求めることによって、浮遊砂濃度と粒度分布を算出する(ステップS205)。
水中の微細な気泡は超音波を散乱させるので、基準スペクトル計測試験は十分脱気した蒸留水を使用する。図5、図6に水温が10℃、15℃、20℃及び25℃の脱気蒸留水で計測した場合の基準スペクトルの一例を示す。図6に示すように基準スペクトルの振幅は水温から求めることができるため、各周波数帯の基準スペクトルの振幅は上式(2)により水温の関数として算出する。
非特許文献2によれば、一般に超音波と懸濁液中の微粒子との相互作用は非常に複雑であるため、実際に解析する際は粒子の半径rと超音波の波長λの関係に基づいて懸濁液中の超音波の伝播を次の三種類に分けることができる。
(a)r<<λの場合:Long Wavelength Regime(LWR)
(b)r≒λの場合 :Intermediate Wavelength Regime(IWR)
(c)λ<<rの場合:Short Wavelength Regime(SWR)
一方、粒径が10μm以上の懸濁液の超音波測定はIWRに属する傾向があり、IWRでは散乱損失(scattering losses)による減衰が支配的になる。したがって、市販の単分散微粒子を用いた超音波減衰特性試験の測定結果はLWRの領域とIWRの領域に区分して解析するとよい。
この解析装置は、計測容器40と、カプセル収納容器50と、測定制御機18と、浮遊砂自動観測装置19(浮遊物質解析装置)と、を備える。
計測容器40(撹拌容器)は、例えば内径300mm×高さ500mmの円筒状の透明アクリル製容器であって、底部は断面が円弧状になるように特殊な加工を施されている。計測容器40内には、所定高さ位置43まで、微粒子を含む水が収容されており、水中に超音波検出器21、水温計12、インペラ41が配置されている。超音波検出器21はトランスデューサー10と反射体11で構成される。
この解析装置は、河川又は貯水池等の測定対象の水22の中に本体カプセル17と、超音波検出器21と、水温計12と、を設置し、陸上に測定制御機18と、浮遊砂自動観測装置19(浮遊物質解析装置)と、を設置した構成である。
トランスデユーサー10は、市販の円形チタン酸鉛振動子の一面を、例えば曲率半径30mmで凹面状に加工し、その加工面と裏面に電極をつけたプラノコンケーブ型振動子である。トランスデューサー10の加工面と側面には、例えば厚さ数10μmのフッ素樹脂コーティング加工を施している。
反射体11は、例えば厚さ5mmのステンレス鋼(SUS304)であって、プラノコンケーブ型振動子であるトランスデューサー10の焦点距離(L=44.33mm)に設置する。また、本体カプセル17内の温度を一定とするため、本体カプセル17は常時水22の中に設置する。
水22の中の本体カプセル17には、陸上部の測定制御機18との間で各種信号やデータの送受信を行うデータ送受信機16と、計測したデータの高速フーリエ変換を行うCPU14と、トランスデューサー10にパルス電圧を印加するパルス発信機15と、トランスデューサー10が受信した信号をデジタルデータに変換するアナログ・デジタル変換器13と、カプセル内の温度計23と、を収納する。
図10に示す超音波減衰スペクトル解析装置の性能確認試験は図7に示す装置を用いて行った。ここでは、浮遊砂の密度、粒度分布(洪水時)と同程度の密度と粒度分布をもつシリカパウダーを用いて性能確認試験を実施した。図11に性能確認試験に用いたシリカパウダー(竹折鉱業所:SP#300)の粒度分布を示す。図11において、粒度分布曲線11Aはシリカパウダーの通過質量百分率を示し、分布曲線11Bは分布曲線11Aの差分値(相対粒子量)を示している。シリカパウダーのメディアン径は10μm程度、非対象の粒度分布を持つ。
ここでは、循環ポンプで運転しながら1時間間隔でシリカパウダーのスラリーを貯留槽に投入して濃度を変化させて、約2分間隔で懸濁液の濃度と粒度分布を測定した。また、30分間隔で2リットルの懸濁液を採水して濃度と粒度分布を計測した。採水した懸濁液濃度の測定方法はJIS−K0102、粒度分析はレーザー回折式粒度分布測定装置を用いた。
(1)従来、個別に測定していた浮遊砂濃度と粒度分布の計測が同一サンプルで同時に測定できる。これによって浮遊砂の量(濃度)と質(粒度)を同時に計測することが可能となる。
(2)貯水池あるいは河川の水中に検出器(解析装置)を入れて直接計測することができるので、採水、希釈等の作業を行うことなく測定ができる。
(3)浮遊砂濃度と粒度分布のリアルタイム、オンライン計測が可能となる。
(4)貯水池の流入部とダム地点に上記実施形態の装置を設置し、貯水池に流入する浮遊砂量、ダムから下流に流出する浮遊砂量及び貯水池で捕捉される浮遊砂量を定量的に測定することが可能となり、より効率的なダムの排砂操作を行うことができる。
(5)河川の上流から河口までの必要地点に上記実施形態の装置を設置し、各地点の浮遊砂濃度、粒度分布を計測することによって洪水期間中の浮遊砂濃度と粒度分布の連続計測が可能となる。これまで測定データが乏しいなかで実施してきた河床変動解析等の浮遊砂の数値シミュレーションの精度を大きく向上させる可能性を有する。
(6)貯水池において水面から湖底までの解析装置を昇降させて計測を行うことによって、これまで実施してきた水温、濁度に加えて濃度及び粒度分布の計測が可能となり、密度流解析、濁水挙動解析の再現性と予測精度を大きく向上させる可能性がある。
11 反射体
12 水温計
13 アナログ・デジタル変換器
14 CPU
15 パルス発信機
16 データ送受信機
17 本体カプセル
18 測定制御機
19 浮遊砂自動観測装置(浮遊物質解析装置)
20 防水コネクタ付ケーブル
21 超音波検出器
22 水(懸濁液)
23 温度計
40 計測容器
41 インペラ
42 駆動部
44 シャフト
50 カプセル収納容器
60 水路
Claims (5)
- (a)次式(1a)、(1b)により計測データから音速度と波長を算出する工程と、
- 超音波減衰特性試験の計測データから、次式(6)により、単位体積濃度当たりの減衰係数を算出することを特徴とする請求項1に記載の浮遊物質解析方法。
- 次式(7a)、(7b)、(7c)により単位体積濃度当たりの減衰係数の散乱損失成分を算出し、
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浮遊物質解析方法を用い、液体中の浮遊物質の濃度及び粒度分布関数を算出することを特徴とする浮遊物質解析装置。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浮遊物質解析方法を用い、液体中の浮遊物質の超音波減衰特性を解析することを特徴とする超音波減衰スペクトル解析装置。
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