JP6153584B2 - 金属プレートの製造方法、及び該製造方法により製造された金属プレートのプレート式熱交換器への使用 - Google Patents
金属プレートの製造方法、及び該製造方法により製造された金属プレートのプレート式熱交換器への使用 Download PDFInfo
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Description
また、熱交換器は、耐久性向上の観点から、素材の金属板として耐食性に優れたステンレス鋼板が用いられる。そして、小中型の熱交換器については、耐圧性を考慮して、ろう付けで接合されることが多い。
また、金属プレートの凹凸形状は、プレス加工によって形成されることが多いが、凸部の頂部先端及び凹部の底部先端は張出し加工となるため、原板の板厚減少が著しく、加工割れも発生し易い。
一方、例えば、プレス加工による変形を大きく受けない部分では肉余りが生じやすく、座屈や皺の発生を招く恐れがある。また、金属プレートの割れや亀裂の発生に繋がる場合がある。
加えて、近年、熱交換能の向上だけでなく、熱交換器の軽量化、コンパクト化の要請も高まっており、プレートを構成する金属の板厚は薄肉化の傾向にあり、金属プレートの加工難易度もさらに上がっている。
(1)金属プレートの原板をn回プレス加工する金属プレートの製造方法であり(nは3以上の整数である)、
原板をプレス加工し、略四角形状の2つの傾斜面と、傾斜面に接する略三角形状の2つの側面とを有する袋形状部を、原板に形成する工程と、
袋形状部を有する原板をプレス加工し、第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部と、第1の方向と直交する第2の方向に凹部又は凸部とを有する金属プレートを成形する工程と、を備え、
下記の式(1)及び式(2)の関係を金属プレートが満たすように原板を成形する、金属プレートの製造方法。
0.75≦P/(Ln×Mn)≦1.3 式(1)
0.75≦Q/Zn≦1.3 式(2)
式(1)及び(2)において、
Pは、袋形状部における、2つの側面の底辺の中心点同士が袋形状部の稜線に沿って結ばれる線長、
Qは、傾斜面の底辺の中心点同士が稜線を横断して結ばれる線長、
Lnは、n回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の1個当たりの線長、
Mnは、n回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の総数、
Znは、n回プレス加工した後の第2の方向の凹部又は凸部の線長、を表す。
稜線と側線との間の肩半径Rと、袋形状部の厚みtとの関係式R/tが、5以上12.5以下となるように、袋形状部を形成する、(1)又は(2)の金属プレートの製造方法。
0.75≦(Ln−1×Mn−1 )/(Ln×Mn )≦1.3 式(3)
0.75≦Zn−1/Zn≦1.3 式(4)
本発明の金属プレートの製造方法は、金属プレートの原板をn回プレス加工する金属プレートの製造方法であり(nは3以上の整数である)、
原板をプレス加工し、略四角形状の2つの傾斜面と、傾斜面に接する略三角形状の2つの側面とを有する袋形状部を、原板に形成する工程と、
袋形状部を有する原板をプレス加工し、第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部と、第1の方向と直交する第2の方向に凹部又は凸部とを有する金属プレートを成形する工程と、を備え、
下記の式(1)及び式(2)の関係を金属プレートが満たすように原板を成形する、金属プレートの製造方法である。
0.75≦P/(Ln×Mn)≦1.3 式(1)
0.75≦Q/Zn≦1.3 式(2)
式(1)及び(2)において、
Pは、袋形状部における、2つの側面の底辺の中心点同士が袋形状部の稜線に沿って結ばれる線長、
Qは、傾斜面の底辺の中心点同士が稜線を横断して結ばれる線長、
Lnは、n回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の1個当たりの線長、
Mnは、n回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の総数、
Znは、n回プレス加工した後の第2の方向の凹部又は凸部の線長、を表す。
なお、本発明の金属プレートの製造方法においては、袋形状部を原板に形成する工程と、第1の方向、第2の方向に凹部及び/又は凸部を形成する工程を備えるが、製造される金属プレートに影響を与えない範囲で、他の製造工程を含んでもよい。
また、本発明の金属プレートの製造方法においては、金型を用いて金属プレートの原板をプレス加工することが好ましい。
パンチ21aにおいて、隣接する面同士が接する各辺部分は角状であってもよいが、プレスする原板を割れにくくする観点から、各辺部分は丸みを帯びた形状が好ましく、曲率半径を有する形状であることが好ましい。
また、略四角形状の傾斜面A3、傾斜面A4、及び面A5(底面)は、図4(a)に示すように直角形の形状を有していてもよい。
パンチ21bにおいても、隣接する面同士が接する各辺部分は角状であってもよいが、プレスする原板を割れにくくする観点から、各辺部分は丸みを帯びた形状が好ましく、曲率半径を有する形状であることが好ましい。
一方、図4(c)は、6面体のパンチ21cであり、互いに対向する略直角形状の面同士が略平行に配置されている。
本発明の金属プレートの製造方法においては、下記の式(1)及び式(2)の関係を満たしている。
0.75≦P/Ln×Mn≦1.3 式(1)
0.75≦Q/Zn≦1.3 式(2)
上記式(1)、式(2)においては、
Pは、袋形状部における、2つの側面の底辺の中心点同士が袋形状部の稜線に沿って結ばれる線長、
Qは、傾斜面の底辺の中心点同士が稜線を横断して結ばれる線長、
Lnは、n回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の1個当たりの線長、
Mnは、n回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の総数、
Znは、n回プレス加工した後の第2の方向の凹部又は凸部の線長、を表す。
0.79≦P/Ln×Mn≦1.25 式(5)
0.81≦Q/Zn≦1.23 式(6)
0.75≦(Ln−1×Mn−1 )/(Ln×Mn )≦1.3 式(3)
0.75≦Zn−1/Zn≦1.3 式(4)
上記式(3)、式(4)において、
Ln−1は、n−1回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の1個当たりの線長、
Mn−1は、n−1回プレス加工した後の第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の総数、
Zn−1は、n−1回プレス加工した後の第2の方向の凹部又は凸部の線長、を表す。
また、上記式(4)における「Zn−1/Zn」は、n回後の第1の方向に直交する第2の方向の凹部又は凸部の線長Znに対する、n−1回後の直交する第2の方向の凹部又は凸部の線長Zn−1の比であり、Y方向から断面視した場合の金属プレート10の長辺部の成形段階における線長の増減を示している。
本発明の製造方法においては、前工程で原板に袋形状部を形成し、その後、「(Ln−1×Mn−1 )/(Ln×Mn )」が0.75以上1.3以下であり、かつ、「Zn−1/Zn」が0.75以上1.3以下となるように、金型で成形することによって、金属プレートの凸部の頂部先端及び凹部の底部先端での板厚減少を少なく抑え、加工高さh/Wが高く、ネッキングや割れ、肉余りが生じにくい金属プレートをより製造しやすくなる。
La、Lb、Lcの個々の算出式は以下の式(7)〜(9)のとおり表される。
La=(R1+0.5t)α 式(7)
Lc=(R2+0.5t)α 式(8)
図13は、本発明に係るプレート式熱交換器1の一例を示す模式図である。プレート式熱交換器1は、複数の金属プレート10が積層された構造である。金属プレート10は、固定フレーム2と可動フレーム3との間に挟まれ、ガイドバー4及び上部キャリングバー(図示省略)で支持される。そして、全体を支柱(図示省略)に取り付け、締付けボルト(図示省略)で締め付けている。
また、ステンレス鋼には、耐食性及び加工性の低下原因となるフリーC、Nをトラップする目的で、Ti、Nbを添加して、耐食性及び耐食性を向上させた鋼種が使用されている。Tiは、ろう付け性の阻害要因になることから、Nbを添加したSUS430J1Lは、Ti添加やTi+Nb複合添加した他のフェライト系ステンレス鋼と比べて、ろう付け性に優れており、ろう付け接合する鋼種として好ましい。
原板は、以下の表1に示す成分組成、表2に示す機械的性質を有するフェライト系ステンレス鋼板(日新製鋼株式会社製)を使用した。表1の単位は質量%である。
プレス成形に使用したダイス、板押さえは、図14(a)、(b)に記載のダイス22a、板押さえ22bであった。ダイス22aと板押さえ22bは、幅180mm、奥行き180mm、高さ30mm、開口部の幅80mm、奥行き80mmというサイズで共通していた。ダイス22aの開口部において、コーナーRは10mm、ダイRは5mmであった。
プレス成形に用いるパンチは、図15(a)〜(c)に記載のパンチ21a、パンチ21b、パンチ21cであった。パンチ21a、パンチ21b、パンチ21cは、底面の幅78mm、奥行き78mm、高さ25mmというサイズで共通していた。パンチ21bはテーパー状であり、パンチ21bを用いて原板をプレス成形した際に形成される袋形状部は、R/tが5、挟角θが30°となる。
プレス成形に用いる波状金型は、図16(a)に記載の上金型16a及び下金型16b、図16(b)に記載の上金型17a及び下金型17bであった。これらの金型は、幅78mm、奥行き78mmというサイズで共通していた。また、金型における凹凸の幅は、上金型16a及び下金型16bでは21mmであったのに対し、上金型17a及び下金型17bでは7mmと3分の1の幅であった。
上記原板について、下記の条件でパンチを用いてプレス成形(第1工程)を行い、図17の(a)に示すように袋形状部を形成した。袋形状部の高さは25mmとなるようにプレス成形した。予備プレス成形体や本プレス成形体の凹凸高さや線長は、接触式輪郭形状測定器(ミツトヨ社製、型番:CONTRACER CV−2000)で成形体の外形状を検出し、検出したデータを同装置の解析ソフトを用いることによって、測定した。
供試材の圧延方向:D方向(長辺長手方向と原板の圧延方向とが45°)
装置:80tonサーボプレス
加工速度:10(spm)
潤滑条件:プレス油G−755BM(40℃での粘度:564mm2/s、日本工作油社製)
プレスモーション:リンクモーション
ブランク寸法:□120mm
板押え力:6.3ton
第1工程で袋形状部が形成された原板を、下記の条件でプレス成形し(第2工程)、図17の(b)に示すように、凸部4個及び凹部3個の総計7個を短辺部として有するプレス成形体10aを得た。また、第3工程目で得られるプレス成形体の凹凸高さ2.5mmを目標値として、プレス成形体10aの凹凸高さは7mmとなるようにプレス成形した。
供試材の圧延方向:D方向(長辺長手方向と原板の圧延方向とが45°)
装置:80tonサーボプレス
加工速度:10(spm)
潤滑条件:プレス油G−755BM(40℃での粘度:564mm2/s、日本工作油社製)
プレスモーション:リンクモーション
凹凸の波幅W:21mm
凹凸の高さh:7mm(目標値)
h/W:0.33
ブランク寸法:□120mm
板押え力:6.3ton
使用する金型:波状金型
上記第2工程目で得られたプレス成形10aを、下記の条件にてプレス成形を行い、図17の(c)に示すプレス成形体10b(凸部11個及び凹部10個の総計21個)を得た。
供試材の圧延方向:D方向(長辺長手方向と原板の圧延方向とが45°)
装置:80tonサーボプレス
加工速度:10(spm)
潤滑条件:プレス油G−755BM(40℃での粘度:564mm2/s、日本工作油社製)
プレスモーション:リンクモーション
凹凸の波幅W:7mm
凹凸の高さh:2.5mm(目標値)
h/W:0.36
ブランク寸法:□120mm
板押え力:6.3ton
使用する金型:波状金型
また、図示していないが、本実施例のように袋形状部を形成することによって製造された金属プレートには、予備工程で形成された稜線が金属プレートに刻まれている。
成形されたプレス成形体の成形状態について、以下の基準で評価を行った。評価指標が「△」、「○」、「□」であれば金属プレートとして使用できること、「×」、「黒塗り△」、「黒塗□」であれば金属プレートとして使用できないことを示す(図20参照)。
×:割れがある
黒塗り△:ネッキング(外観の変形)がある
△:板厚減少率が25%以上30%未満である
○:良好(板厚減少率は25%未満である)
□:肉余りがあるが、少ない
黒塗り□:肉余りが多い
−:該当する成形体がない
第1工程において、パンチとしてパンチ21a、パンチ21b、又はパンチ21cを用いてプレス成形を行い、金属プレートの製造を試みた。結果を表3に示す。
また、パンチ21aを用いた場合にも、板厚減少率が抑制され、肉余りも少ない金属プレートを形成することができた。
第1工程〜第3工程において、形状パラメータを変化させた種々の金型用いてプレスを繰り返し行い、所定の形状及び寸法を有する複数のプレス成形体を作成し、当該成形体における短辺部の線長の比、長辺部の線長の比を測定した。
図15のパンチ21bの形状を変えながら、原板に形成される袋形状部のR/t、挟角θと、板厚減少率、肉余りとの関係について、評価を行った。以下の表7に第1工程、表8に第2工程、表9に第3工程の評価結果を示す。
2 固定フレーム
3 可動フレーム
4 ガイドバー
5 上部キャリングバー
6 支柱
7 締付けボルト
8a,8b 高温側流体用配管接続口
9a,9b 低温側流体用配管接続口
10 金属プレート、原板
11 短辺部の凹部
12 短辺部の凸部
13 中心線
14 長辺部の凸部
16a、16b 金型Aの上部、下部
17a、17b 金型Bの上部、下部
21a、21b、21c パンチ
22a、22b ダイス
25 パンチホルダー
30 袋形状部
31 稜線
32 側線
33 稜線の端部からの垂直線
Claims (10)
- 金属プレートの原板をn回プレス加工する金属プレートの製造方法であり(nは3以上の整数である)、
前記原板をプレス加工し、略四角形状の2つの傾斜面と、前記傾斜面に接する略三角形状の2つの側面とを有する袋形状部を、前記原板に形成する工程と、
前記袋形状部を有する前記原板をプレス加工し、第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部と、前記第1の方向と直交する第2の方向に凹部又は凸部とを有する金属プレートを成形する工程と、を備え、
下記の式(1)及び式(2)の関係を前記金属プレートが満たすように前記原板を成形する、金属プレートの製造方法。
0.75≦P/(Ln×Mn)≦1.3 式(1)
0.75≦Q/Zn≦1.3 式(2)
式(1)及び(2)において、
Pは、前記袋形状部における、前記2つの側面の底辺の中心点同士が前記袋形状部の稜線に沿って結ばれる線長、
Qは、前記傾斜面の底辺の中心点同士が前記稜線を横断して結ばれる線長、
Lnは、n回プレス加工した後の前記第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の1個当たりの線長、
Mnは、n回プレス加工した後の前記第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部の総数、
Znは、n回プレス加工した後の前記第2の方向の凹部又は凸部の線長、を表す。 - 前記袋形状部がテーパー状である、請求項1に記載の金属プレートの製造方法。
- 前記袋形状部を前記稜線に沿って断面視したとき、
前記稜線の端部からの垂直線と、前記稜線から延びる前記側面における側線との間の角度が、40°以下であり、かつ、
前記稜線と前記側線との間の肩半径Rと、前記袋形状部の厚みtとの関係式R/tが、5以上12.5以下となるように、前記袋形状部を形成する、請求項1又は2に記載の金属プレートの製造方法。 - 下記の式(3)及び式(4)の関係を前記金属プレートが満たすように前記原板を成形する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属プレートの製造方法。
0.75≦(Ln−1×Mn−1 )/(Ln×Mn )≦1.3 式(3)
0.75≦Zn−1/Zn≦1.3 式(4) - 前記第1の方向に延びる複数の凹部及び凸部からなる凹凸の高さをhとし、前記凸部とそれに隣接する凸部との間の波幅又は前記凹部とそれに隣接する凹部との間の波幅をWとするとき、h/Wが0.1以上0.4以下となる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属プレートの製造方法。
- 前記プレス加工は、加工開始位置からスライドが複数回上下動しながら降下するバンピングモーションによって行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属プレートの製造方法。
- 前記加工開始位置から前記スライドが上方向に動く回数C1、及び前記スライドが下方向に動く回数C2が、いずれも4以上の偶数である、請求項6に記載の金属プレートの製造方法。
- 前記原板は、鋼、チタン、アルミニウム又はこれらの合金から選択される金属からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属プレートの製造方法。
- 前記原板は、フェライト系ステンレス鋼板である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属プレートの製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法により製造された金属プレートを積層してなる積層プレート部品の、プレート式熱交換器への使用。
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