JP6152782B2 - 熱延鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板に関し、さらに詳しくは、熱延鋼板に関する。
乗用車に代表される一般自動車や、トラックに代表される大型の産業輸送車に用いられる鋼板では、軽量化及び高強度化が要求されている。
590MPa以上の引張強度を有する高強度の鋼板をプレス成形するのは困難である。そこで、このような高強度の熱延鋼板を用いてフレームやゲートを製造する場合、ロールを用いた多段成形(ロールフォーミング)が実施される。ロールフォーミングでは、多段による曲げ成形を実施することにより、鋼材(フレーム、ゲート等)を成形する。したがって、高強度の熱延鋼板には、曲げ加工性が要求される。
また、高強度の熱延鋼板をせん断加工する場合、せん断荷重の軽減や金型(ポンチ及びダイス)の消耗軽減のために、クリアランスを広くする。たとえば、クリアランスを板厚の5〜30%とする。ところで、熱延鋼板では、板厚が6mm以上の厚板が用いられる場合がある。広いクリアランスで上述のような厚板をせん断すれば、端面に欠陥が生じやすい。特に、高強度の厚板ではせん断後の端面に、板面に沿った割れが生じる場合がある。このような割れは、鋼板の疲労耐久性を低下する。したがって、熱延鋼板には、せん断しても上記割れの発生しにくい特性(以下、せん断加工性という)が要求される場合がある。
特開2009−144225号公報(特許文献1)及び特開2009−179852号公報(特許文献2)は、曲げ性が改善された鋼板を提案する。
特許文献1には、次の事項が記載されている。鋼板のミクロ組織は、フェライトとマルテンサイトとが均一、微細に分散した組織である。具体的には、ミクロ組織は、50%以上のフェライトと、10%以上のマルテンサイトとを含む。
特許文献2には、次の事項が記載されている。鋼板のミクロ組織は、面積率で30%以上のフェライトと、30〜70%のマルテンサイト相とを含む。焼戻しマルテンサイトの全マルテンサイトに対する面積割合が20%以上であり、1μm以下の粒径のマルテンサイトの全マルテンサイトに対する面積割合が10%以下である。
しかしながら、特許文献1及び2の鋼板のミクロ組織は、硬質相であるマルテンサイトを10%以上含有する。そのため、曲げ性が低い場合がある。
特開2009−144225号公報 特開2009−179852号公報
本発明の目的は、高強度を有し、曲げ性に優れる熱延鋼板を提供することである。
本実施の形態による熱延鋼板は、化学組成とミクロ組織とを備える。化学組成は、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Sol.Al:0.02〜0.5%、Ti:0.02〜0.25%、N:0.010%以下、Nb:0〜0.1%、V:0〜0.4%、Mo:0〜0.3%、W:0〜0.3%、Cr:0〜0.3%、Ca、Mg及び希土類元素(REM)の総含有量:0〜0.01%とを含有し、残部はFe及び不純物からなる。ミクロ組織は、総面積率で89%以上のフェライト及びベイナイトと、面積率で0〜5%のパーライトと、面積率で0〜3%のマルテンサイトと、面積率で0〜3%の残留オーステナイトとからなる。熱延鋼板は、590MPa以上の引張強度を備える。熱延鋼板の板厚中心位置のビッカース硬さHvCと、板表面から100μm深さの位置のビッカース硬さHvSとが式(1)を満たす。
HvS/HvC≦0.80 (1)
本実施形態による熱延鋼板は、高強度を有し、かつ、曲げ性に優れる。
本実施の形態による熱延鋼板は、化学組成とミクロ組織とを備える。化学組成は、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Sol.Al:0.02〜0.5%、Ti:0.02〜0.25%、N:0.010%以下、Nb:0〜0.1%、V:0〜0.4%、Mo:0〜0.4%、W:0〜0.4%、Cr:0〜0.4%、Ca、Mg及び希土類元素(REM)の総含有量:0〜0.01%とを含有し、残部はFe及び不純物からなる。ミクロ組織は、総面積率で89%以上のフェライト及びベイナイトと、面積率で0〜5%のパーライトと、面積率で0〜3%のマルテンサイトと、面積率で0〜3%の残留オーステナイトとからなる。熱延鋼板は、590MPa以上の引張強度を備える。熱延鋼板の板厚中心位置のビッカース硬さHvCと、板表面から100μm深さの位置のビッカース硬さHvSとが式(1)を満たす。
HvS/HvC≦0.80 (1)
本実施形態による熱延鋼板では、Tiを含有して後述の製造方法が実施されることにより、ビッカース硬さ比(=HvS/HvC)が0.80以下になる。つまり、熱延鋼板の表層の硬さは板厚中央部よりも低くなる。そのため、590MPaの引張強度を有する高強度の熱延鋼板であっても、優れた曲げ性が得られる。
好ましくは、熱延鋼板の板厚がtmmである場合、板厚中心から±0.12tの範囲内である板厚中心部において、{112}<110>方位と10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーの総面積に対する、{112}<110>方位と10°以下の結晶方位を有しアスペクト比が0.35以下の結晶コロニーの総面積の比が40%以下である。
板厚中心部において、{112}<110>方位と10°以下の結晶方位を有し、アスペクト比が0.35以下の結晶コロニーを「バンド状コロニー」と定義する。板厚中心部の結晶コロニーの総面積に対する、バンド状コロニーの総面積の比(以下、バンド状コロニー面積率という)が高ければ、せん断加工性が低くなる。本実施形態の熱延鋼板では、バンド状コロニーの総面積率が40%以下である。そのため、590MPaの引張強度を有する高強度の熱延鋼板であっても、優れたせん断加工性が得られる。
上述の熱延鋼板の化学組成は、Nb:0.002〜0.1%、V:0.01〜0.4%、Mo:0.01〜0.4%、W:0.01〜0.4%、及び、Cr:0.01〜0.4%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上述の熱延鋼板の化学組成は、Ca、Mg、及び、REMからなる群から選択される1種又は2種以上を、総計で0.0002〜0.01%含有してもよい。
以下、本実施形態の熱延鋼板について詳しく説明する。各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
[化学組成]
本実施形態による熱延鋼板の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.01〜0.2%
炭素(C)は、鋼板の強度を高める。C含有量が低すぎれば、590MPa以上の引張強度が得られにくい。一方、C含有量が高すぎれば、粒界に粗大な炭化物が形成され、鋼板の加工性が低下する。したがって、C含有量は0.01〜0.2%である。C含有量の好ましい下限は0.01%よりも高く、さらに好ましくは0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。C含有量の好ましい上限は0.2%未満であり、さらに好ましくは0.18%であり、さらに好ましくは0.15%である。
Si:0.01〜2.5%
シリコン(Si)は、粗大な鉄炭化物の形成を抑制し、曲げ性を高める。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、上記効果は飽和する。Si含有量が高すぎればさらに、鋼板の溶接性が低下する。したがって、Si含有量は0.01〜2.5%である。Si含有量の好ましい下限は0.01%よりも高く、さらに好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.5%である。Si含有量の好ましい上限は2.5%未満であり、さらに好ましくは2.0%であり、さらに好ましくは1.5%である。
Mn:0.5〜3.0%
マンガン(Mn)は鋼板の強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、590MPa以上の引張強度が得られにくい。一方、Mn含有量が高すぎれば、仕上げ圧延終了後のフェライト変態が遅延し、高い成形性を有するフェライトが生成しにくくなる。したがって、Mn含有量は0.5〜3.0%である。Mn含有量の好ましい下限は0.5%よりも高く、さらに好ましくは0.8%であり、さらに好ましくは1.0%である。Mn含有量の好ましい上限は3.0%未満であり、さらに好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2.2%である。
P:0.02%以下
燐(P)は、不純物である。Pは結晶粒界に偏析し、鋼板を脆化する。そのため、Pは曲げ性を低下し、せん断加工性を低下する。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は0.02%以下である。好ましいP含有量は0.02%未満であり、さらに好ましくは0.01%以下であり、さらに好ましくは0.007%以下である。
S:0.005%以下
硫黄(S)は、不純物である。Sは、Mn及びTi等と結合して粗大な硫化物系介在物を形成する。硫化物系介在物は切断断面の割れを助長する。硫化物系介在物はさらに、鋼板の加工性を低下する。したがって、S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量は0.005%以下である。好ましいS含有量は0.005%未満であり、さらに好ましくは0.002%以下であり、さらに好ましくは0.001%以下である。
Sol.Al:0.02〜0.5%
アルミニウム(Al)は、フェライト変態を促進し、鋼板の成形性を高める。Alはさらに、粗大なセメンタイトの形成を抑制して端面割れの起点の形成を抑制する。Al含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、オーステナイト−フェライト変態温度が高くなりすぎ、生産性が低下する。したがって、Sol.Al含有量は0.02〜0.5%である。Sol.Al含有量の好ましい下限は0.02%よりも高く、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.11%である。Sol.Al含有量の好ましい上限は0.5%未満であり、さらに好ましくは0.3%であり、さらに好ましくは0.25%である。本明細書でいうAl含有量は、Sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
Ti:0.02〜0.25%
チタン(Ti)はCと結合して炭窒化物を形成し、微細析出硬化により鋼板の強度を高める。さらに、後述の製造方法を実施することにより、Tiは、熱延鋼板の板厚中央部の硬さを、表層よりも高くする。Ti含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、粗大な炭窒化物が生成して鋼板の成形性を低下する。Ti含有量が高すぎればさらに、上記効果が飽和して、原料コストが高くなる。したがって、Ti含有量は0.02〜0.25%である。Ti含有量の好ましい下限は0.02%よりも高く、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.08%である。Ti含有量の好ましい上限は0.25%未満であり、さらに好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.17%である。
N:0.010%以下
窒素(N)は不純物である。NはTi、Nb、V等と結合して粗大な窒化物を形成する。そのため、切断端面割れが助長され、せん断加工性が低下する。したがって、N含有量はなるべく低い方が好ましい。N含有量は0.010%以下である。好ましいN含有量は0.010%未満であり、さらに好ましくは0.005%以下であり、さらに好ましくは0.003%以下である。
本実施の形態による熱延鋼板の化学組成の残部は、Feおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の熱延鋼板に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施の形態による熱延鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Nbを含有してもよい。
Nb:0〜0.1%
ニオブ(Nb)は、任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、Nbは炭窒化物を形成して、オーステナイト粒を微細化する。これにより、フェライトの核生成サイトが増加し、鋼組織の粗粒化が抑制される。Nbはさらに、V又はTiとともに含有されることにより、微細な析出物を形成する。微細な析出物は鋼板の強度を高める。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、バンド組織の形成が助長され、切断端面割れが発生しやすくなる。したがって、Nb含有量は0〜0.1%である。Nb含有量の好ましい下限は0.002%であり、さらに好ましくは0.006%であり、さらに好ましくは0.008%である。Nb含有量の好ましい上限は1.0%未満であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.003%である。
本実施の形態による熱延鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、V、Mo、W及びCrからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。
V:0〜0.4%、
Mo:0〜0.4%、
W:0〜0.4%、
Cr:0〜0.4%
バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、及び、クロム(Cr)はいずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、これらの元素はいずれも、Cと結合して微細な炭化物を形成する。これらの微細な炭化物は、微細析出硬化により鋼板の強度を高める。しかしながら、これらの元素含有量が高すぎれば、その効果が飽和して、原料コストが高くなる。したがって、各元素の含有量は0〜0.4%である。各元素の含有量の好ましい下限はいずれも、0.01%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.08%である。各元素の好ましい上限はいずれも、0.4%未満であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%である。
本実施の形態による熱延鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg、REMからなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。
Ca、Mg及びREMの総含有量:0〜0.01%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及び希土類元素(REM)はいずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、これらの元素は、溶鋼中で酸化物を形成する。これにより、鋼が脱酸され、鋼の清浄度が高まる。さらに、酸化物は炭窒化物の形成核となるため、粗大な炭窒化物の姿勢を抑制して切断端面割れの発生を抑制する。しかしながら、これらの元素含有量が高すぎれば、粗大な酸化物が形成され、鋼の清浄度及び成形性が低下する。したがって、Ca、Mg及びREMからなる群から1種又は2種以上が含有された場合、これらの元素の総含有量は0〜0.01%である。これらの元素の総含有量の好ましい下限は0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。これらの元素の総含有量の好ましい上限は0.01%未満であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0030%である。
本明細書におけるREMは、Sc、Y、及び、ランタノイド(原子番号57番のLa〜71番のLu)の少なくとも1種以上を含有し、REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
[ミクロ組織]
本実施形態による熱延鋼板のミクロ組織において、フェライト及びベイナイトが占める総面積率は89%以上である。さらに、面積率で5%以下のパーライト、面積率で10%以下のマルテンサイト、面積率で3%以下の残留オーステナイトが含有されていてもよい。
フェライト、又は、フェライト及びベイナイト:総計で89%以上
上記熱延鋼板のミクロ組織中における、フェライト及びベイナイトの総面積率は89%以上である。この場合、熱延鋼板の曲げ性及びせん断成形性が高まる。フェライト及びベイナイトの総面積率の好ましい下限は90%であり、さらに好ましくは95%である。フェライト及びベイナイトの総面積率は100%であってもよいし、フェライト面積率が100%(つまり、フェライト単相)であってもよい。つまり、ベイナイトの面積率は0%であってもよい。
パーライト:0〜5%
パーライトは切断時に割れの起点となり、切断面割れを引き起こす。したがって、ミクロ組織におけるパーライトの面積率は低い方が好ましい。パーライトの面積率は0〜5%である。パーライトの面積率の好ましい上限は3%である。最も好ましいパーライトの面積率は0%である。
マルテンサイト:0〜3%
マルテンサイトは曲げ性を低下する。マルテンサイトはさらに、切断時に割れの起点となり、切断端面割れを引き起こす。したがって、ミクロ組織におけるマルテンサイトの面積率は低い方が好ましい。マルテンサイトの面積率は0〜3%である。マルテンサイトの面積率の好ましい上限は1%である。最も好ましいマルテンサイトの面積率は0%である。
残留オーステナイト:3%以下
残留オーステナイトは、切断時に割れの起点となり、切断端面割れを引き起こす。さらに、残留オーステナイトは、打ち抜き加工時にマルテンサイトに変態し、穴広げ性を低下する。したがって、ミクロ組織における残留オーステナイトの面積率は低い方が好ましい。残留オーステナイトの面積率は0〜3%である。残留オーステナイトの面積率の好ましい上限は1%である。最も好ましい残留オーステナイトの面積率は0%である。
[ミクロ組織中の各相の面積率の測定方法]
各相(フェライト、ベイナイト、パーライト、マルテンサイト、残留オーステナイト)の面積率は、次の方法で求める。
熱延鋼板の表面からt/2深さ(tは板厚)の位置(観察位置)を含むサンプルを採取する。観察位置を含む面(観察面)をナイタルでエッチングする。エッチングされた観察面のうち、任意の10視野(各視野面積は200μm×200μm)に対して組織観察を実施する。組織観察には500倍の光学顕微鏡を用い、さらに、必要に応じて、相の同定には、1000〜2000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる。
組織観察により、各視野におけるフェライト及びベイナイトの面積率(%)、パーライトの面積率(%)、マルテンサイトの面積率(%)、及び、残留オーステナイトの面積率(%)を求める。そして、各視野で得られた各相の面積率の平均を、本実施形態における熱延鋼板のミクロ組織中におけるフェライト及びベイナイトの面積率(%)、パーライトの面積率(%)、マルテンサイトの面積率(%)及び残留オーステナイトの面積率(%)と定義する。
[ビッカース硬さ比]
本実施形態の熱延鋼板はさらに、次の式(1)を満たす。
HvS/HvC≦0.80 (1)
ここで、HvCは、熱延鋼板の板厚中心位置(t/2位置)のビッカース硬さである。HvSは、熱延鋼板の表面から100μm深さの位置(以下、表層位置という)のビッカース硬さである。
つまり、本実施の形態の熱延鋼板では、表層位置のビッカース硬さが、板厚中心位置のビッカース硬さよりも低い。この場合、曲げ加工に対して、鋼板表面に割れが発生しにくい。そのため、熱延鋼板は優れた曲げ性を有する。
[ビッカース硬さ比の測定方法]
板厚中心位置及び表層位置でのビッカース硬さは、次の方法で測定される。板厚中心位置の任意の10カ所、及び、表層位置の任意の10カ所で、JIS Z2244(2009)に準拠したビッカース硬さ試験を実施する。試験力は1.0kgf=9.8Nとする。
板厚中心位置の10カ所のビッカース硬さの平均を、板厚中心位置のビッカース硬さHvCと定義する。表層位置の10カ所のビッカース硬さの平均を、表層位置のビッカース硬さHvSと定義する。好ましくは、HvS/HvCは0.80未満である。
後述の製造方法を実施すれば、表層位置でのビッカース硬さを、板厚中心位置のビッカース硬さよりも小さくすることができる。
[バンド状コロニーの面積率BCR]
熱延鋼板の板厚中心から板厚方向に±0.12tの範囲内(以下、板厚中心部という)において、{112}<110>方位に対して10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーの総面積をAC0と定義する。さらに、上記範囲内において、{112}<110>に対して10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーのうち、アスペクト比が0.35以下の結晶コロニー(以下、バンド状コロニーという)の総面積をAC1と定義する。このとき、式(2)で定義されるバンド状コロニー面積率BCR(%)は、好ましくは、40%以下である。
BCR=AC1/AC0×100 (2)
結晶コロニーは、方位コロニーとも呼ばれる。本明細書において、結晶コロニーは、隣り合う結晶粒が、互いに{112}<110>方位に対して10°以下の結晶方位を有する複数の結晶粒の集団を意味する。
アスペクト比は、次の式(3)で定義される。
アスペクト比=結晶コロニーの短軸/結晶コロニーの長軸 (3)
ここで、結晶コロニーの短軸と長軸とは、次のとおり定義される。後述のEBSDによって特定された各結晶コロニーの境界線を、最小二乗法により楕円形に近似(フィッティング)する。得られた楕円形の短軸及び長軸を、結晶コロニーの短軸及び長軸と定義する。
本実施形態において、上述のとおり、好ましくは、式(2)で定義されるバンド状コロニー面積率BCRは40%以下である。この場合、せん断加工性が高くなり、切断端面割れが抑制される。
{112}<110>結晶方位は、未再結晶状態のオーステナイトからのフェライト変態方位である。そのため、{112}<110>方位に対して10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーは、圧延方向に沿ってバンド状に延伸した結晶コロニー(バンド状コロニー)を形成しやすい。換言すれば、上記式(3)で定義されるアスペクト比が0.35以下の細長いバンド状コロニーを形成しやすい。
バンド状コロニーは、圧延方向と平行に切断を行った場合に切断端面割れを引き起こしやすい。したがって、バンド状コロニーの面積率BCR(%)は低い方が好ましい。
上述のとおり、式(2)で定義されるバンド状コロニー面積率BCRが40%以下であれば、切断端面割れの発生が抑制され、せん断加工性が高まる。さらに好ましいバンド状コロニー面積率BCRは30%以下である。
[バンド状コロニーの面積率BCRの測定方法]
バンド状コロニーの面積率BCRは次の方法で測定される。熱延鋼板を、圧延方向に沿って板厚方向に切断する。切断面は、圧延方向に沿って延びる。切断面を機械研磨して鏡面とする。その後、鏡面に対して、コロイダルシリカを用いた機械化学研磨を実施して、鏡面の研磨傷を除去して観察面とする。観察面のうち、熱延鋼板の板厚中心から板厚方向に±1/2tの範囲(板厚中心部)内の観察面部分を含むサンプルを採取する。サンプルの観察面に対してEBSD解析による結晶粒の方位解析を実施する。
観察倍率は200倍とする。観察領域は700μm×700μmとし、1μm間隔で解析を実施する。解析により、観察領域内の複数の結晶粒の結晶方位を特定する。
解析結果に基づいて、観察領域のうち、{112}<110>方位に対して10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーを特定する。特定された複数の結晶コロニーの総面積AC0(μm2)を求める。
さらに、特定された複数の結晶コロニーの長軸及び短軸を測定し、アスペクト比を求める。そして、アスペクト比が0.35以下の結晶コロニーを、バンド状コロニーと特定する。特定された複数のバンド状コロニーの総面積AC1(μm2)を求める。そして、総面積AC0及びAC1を利用して、式(2)に基づいてバンド状コロニー面積率BCR(%)を求める。
[粗大コロニー面積率CCR]
上記バンド状コロニーの面積率BCRが40%以下である場合、さらに好ましくは、熱延鋼板の板厚中心部(熱延鋼板の板厚中心から板厚方向に±1/2tの範囲)内において、{112}<110>方位に対して10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーのうち、円相当直径が10μm以上の結晶コロニー(以下、粗大コロニーという)の面積率(以下、粗大コロニー面積率CCRという)は30%以下である。
具体的には、{112}<110>方位に対して10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーの総面積がAC0(μm2)であり、粗大結晶コロニーの総面積がAC2(μm2)である場合、粗大コロニー面積率CCR(%)は式(4)で定義される。
粗大コロニー面積率CCR=AC2/AC0×100 (4)
円相当直径は、特定された結晶コロニーの面積を、同じ面積を有する円に換算した場合の円の直径(μm)を意味する。
粗大コロニー面積率CCRが高ければ、粗大介在物、晶出物、析出物と母相との界面とから生じたクラックが伝播しやすい。これは、コロニー内の粒界は小角粒界(隣接する結晶粒との結晶方位角が15°未満の境界)と考えられ、コロニー内の粒界が亀裂伝播の障壁としては十分に働かないためと考えられる。
バンド状コロニー面積率BCRが40%以下であり、さらに、粗大コロニー面積率CCRが30%以下であれば、熱延鋼板のせん断加工性がさらに高まる。さらに好ましい粗大コロニーの面積率CCRは25%以下である。
[粗大コロニー面積率CCRの測定方法]
粗大コロニーの面積率は次の方法で測定される。バンド状コロニー面積率BCRの測定方法と同じ測定条件及び測定方法で、観察領域において、複数の結晶コロニーと特定する。特定された複数の結晶コロニーの総面積AC0(μm2)を求める。
さらに、特定された各結晶コロニーの円相当直径を求め、粗大コロニーを特定する。特定された粗大コロニーの総面積AC2(μm2)を求める。そして、総面積AC0及びAC2を利用して、式(4)に基づいて粗大コロニーの面積率(%)を求める。
[熱延鋼板の特性]
上述の化学組成及びミクロ組織を有する熱延鋼板の引張強度は590MPa以上である。好ましくは、降伏比は0.75以上である。本実施形態の熱延鋼板は、高強度を有するにもかかわらず、優れた曲げ性を有する。
[製造方法]
上述の熱延鋼板の製造方法の一例を説明する。熱延鋼板の製造方法は、スラブを準備する工程(スラブ準備工程)と、スラブを加熱する工程(加熱工程)と、加熱されたスラブに対して圧延を実施して熱延鋼板にする工程(圧延工程)と、熱延鋼板を冷却する工程(冷却工程)と、冷却後の熱延鋼板を巻き取る工程(巻取工程)とを備える。以下、各工程の製造条件について詳述する。
[スラブ準備工程]
上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼を用いてスラブを製造する。連続鋳造法によりスラブを製造してもよい。溶鋼を用いてインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。
[加熱工程]
スラブを加熱する。たとえば、スラブを加熱炉又は均熱炉に装入して、加熱する。スラブの好ましい加熱温度は1100〜1300℃である。加熱温度が低すぎれば、スラブ中のTi炭窒化物が固溶せずに残存する。この場合、鋼板の強度が低くなる。一方、加熱温度が高すぎれば、歩留まりが低下する。したがって、加熱温度は1100〜1300℃が好ましい。上記加熱温度での好ましい加熱時間(均熱時間)は1時間以上である。
[圧延工程]
加熱されたスラブを、粗圧延機及び仕上げ圧延機を用いて熱間圧延して、熱延鋼板を製造する。粗圧延機は一列に並んだ複数のロール対を備える。仕上げ圧延機も、一列に並んだ複数のロール対を備える。
[総圧下率MFR]
好ましくは、圧延工程において、圧延中の鋼板(スラブ)の表面温度が1100℃〜1000℃の間での総圧下率MFRを35%以上にする。総圧下率MFR(%)は、式(5)のとおりに定義される。
MFR=(1100℃における鋼板の板厚(mm)−1000℃における鋼板の板厚(mm))/1100℃における鋼板の板厚(mm)×100 (5)
総圧下率MFRが低すぎれば、粗大コロニー及びバンド状コロニーが発生しやすくなる。粗大コロニー及びバンド状コロニーが多数発生すれば、切断端面割れが発生しやすくなる。したがって、総圧下率MFRは35%以上である。好ましい総圧下率MFRは40%以上である。
なお、総圧下率MFRが30%を超えれば、粗大コロニー面積率CCRは30%を超えるものの、バンド状コロニー面積率BCRは40%以下になる。そのため、良好なせん断加工性が得られる。しかしながら、総圧下率MFRが35%以上であれば、優れたせん断加工性が得られる。
[総圧下率TFR]
さらに、圧延中の鋼板の表面温度が1000℃となってから、最終スタンドの直前のスタンドでの圧延までにおける総圧下率TFRは10〜80%である。
総圧下率TFRが高すぎれば、バンド状コロニーが多数形成され、バンド状コロニー面積率BCRが40%を超える。一方、総圧下率TFRが低すぎれば、熱延鋼板に形状不良が発生する場合がある。したがって、総圧下率TFRは10〜80%である。総圧下率TFRの好ましい上限は75%であり、さらに好ましくは70%である。
[最終圧下率FR、最終圧延での摩擦係数μ]
さらに、仕上げ圧延機の最終スタンドでの圧下率(最終圧下率)FRは、20〜50%である。さらに、最終圧延での圧延ロール(つまり、最終スタンドのロール対)と圧延中の鋼板との摩擦係数μは0.20以上である。
最終圧下率FRが20%以上であり、摩擦係数μが0.20以上である場合、最終圧延時の熱延鋼板表層に大きなひずみが加わる。この場合、CCT曲線において、フェライトノーズが短時間側(高温側)にシフトする。そのため、熱延鋼板の表層位置では、板厚中央位置よりも早い段階でTiCが析出し、成長する。したがって、板厚中央位置に微細なTiCが析出したとき、表層位置のTiCは既に成長し、板厚中央位置のTiCよりも大きくなっている。
表層位置のTiCは板厚中央位置のTiCよりも大きいため、熱延鋼板の表層の硬さは、板厚中央部よりも低い。具体的には、表層位置のビッカース硬さHvSは、板厚中央位置のビッカース硬さHvCに対して式(1)を満たす。そのため、熱延鋼板の曲げ性が高まる。
最終圧下率FRが20%未満である場合、又は、摩擦係数μが0.20未満である場合、上記効果が得られない。一方、最終圧下率FRが高すぎれば、バンド状コロニーが多数生成して、バンド状コロニー面積率が40%を超える。そのため、せん断加工性が低下する。
最終圧下率FRの好ましい下限は20%よりも高く、さらに好ましくは25%である。最終圧下率の好ましい上限は50%未満であり、さらに好ましくは40%である。好ましい摩擦係数μは0.25以上である。
摩擦係数μはたとえば、最終スタンドのロール対の表面に塗布する潤滑油の単位時間当たりの塗布量を制御することにより、調整可能である。また、ロール径が小さいほど、摩擦係数は高くなる。したがって、最終スタンドに使用するロール対のロール径により、摩擦係数を調整してもよい。さらに、ロールの材質により摩擦係数を調整してもよい。
[仕上げ圧延温度FT]
熱間圧延において、仕上げ圧延機の最終スタンドの出側での鋼板の表面温度を仕上げ圧延温度(℃)と定義する。本実施形態において、仕上げ圧延温度FTは930〜1100℃である。仕上げ圧延温度FTが低すぎれば、バンド状コロニーが多数生成して、バンド状コロニー面積率が40%を超える。そのため、せん断加工性が低下する。一方、仕上げ圧延温度FTが高すぎれば、生産性が低下する。そのため、仕上げ圧延温度FTは930〜1100℃である。仕上げ圧延温度の好ましい下限は970℃である。
[冷却工程]
熱間圧延後の熱延鋼板を3〜10秒間空冷する。空冷後、15〜200℃/秒の冷却速度CRで熱延鋼板を冷却(強制冷却)する。好ましくは、強制冷却時の冷却停止温度STを400〜750℃にする。強制冷却を停止してから巻取りを実施するまでの滞留時間を2〜15秒設けてもよい。滞留時間はなくてもよい。好ましくは、巻取り時の巻取り温度を400〜600℃にする。以下、それぞれの条件について詳述する。
[熱間圧延後の空冷時間]
熱間圧延後の空冷時間は3〜10秒とする。空冷時間を3秒以上とすることで、静的再結晶が起こりバンド状コロニーの発生が抑制される。一方、空冷時間が長すぎれば、粗大なTi炭窒化物が形成され、鋼板の強度が低下する。したがって、熱間圧延後の空冷時間を3〜10秒にする。
[強制冷却]
空冷時間経過後、熱延鋼板を、15〜200℃/秒の冷却速度CRで冷却する。冷却速度CRが遅すぎれば、フェライトが高温で粗大に析出する。さらに、Ti炭窒化物が粗大化し、熱延鋼板の強度が低下する。一方、冷却速度が過大に速くしようとすれば、過大な冷却設備が必要となり製造コストが高くなる。さらに過大な冷却設備により生産性が阻害される場合がある。したがって、冷却速度は15〜200℃/秒である。冷却速度の好ましい下限は20℃/秒である。冷却速度の好ましい上限は100℃/秒である。上記冷却速度の強制冷却はたとえば、水冷である。
[冷却停止温度ST]
強制冷却の冷却停止温度ST(強制冷却を停止したときの熱延鋼板の表面温度)は、好ましくは、400〜750℃である。冷却停止温度が低すぎれば、硬質相(マルテンサイト等)が形成されやすくなる。一方、冷却停止温度が高すぎれば、Ti炭窒化物が粗大化して熱延鋼板の強度が低下しやすくなる。したがって、好ましい冷却停止温度は400〜750℃である。
[滞留時間]
強制冷却を停止した後、巻取りを開始するまでの滞留時間は、好ましくは、2〜15秒である。滞留時間が2秒以上であれば、フェライトが安定して析出する。そのため、熱延鋼板の強度、伸び及び穴拡げ性のバランスが改善される。一方、滞留時間が長すぎれば、Ti炭窒化物が粗大化する。そのため、熱延鋼板の強度が低下する。したがって、好ましい滞留時間は2〜15秒である。滞留時間のさらに好ましい下限は5秒であり、さらに好ましい上限は10秒である。滞留時間は設けなくてもよい。
[巻取り工程]
強制冷却後、熱延鋼板を巻取る(コイル巻取り)。コイル巻取り開始時の熱延鋼板の表面温度(巻取り温度CT)は、好ましくは400℃〜600℃である。巻取り温度CTが400℃未満の場合、鋼板の強度は、マルテンサイトに代表される低温変態相の生成により得られる。しかしながら、低温変態相の生成により強度が上昇する場合、鋼板の表層の強度と中心部の強度との差は小さい。巻取り温度CTが400℃未満の場合はさらに、残留オーステナイト相が得られやすい。残留オーステナイト相は、準安定相であるため、加工によりマルテンサイト相に変化しやすい。以上より、巻取り温度CTが400℃未満である場合、曲げ性が低下する。
巻取り温度CTが400〜600℃の場合、鋼板の強度は、析出強化(TiCの析出)により得られる。この場合、表層部は、せん断により高温でフェライトが生成するため、TiCが粗大化する。一方、中心部は、表層部よりも低温でフェライトが生成するため、TiCが粗大化せず、微細に析出する。そのため、表層部の強度を中心部よりも低くすることができ、鋼板の曲げ性が高まる。
一方、巻取り温度CTが600℃を超える場合、中心部のTiCが粗大化する。そのため、表層の強度と中心部の強度との差が小さくなり、鋼板の曲げ性が低くなる。
巻取り温度CTのさらに好ましい上限は500℃である。この場合、鋼板の靭性が高まり、切断端面割れの発生が抑制される。つまり、鋼板の切断性が高まる。
表1に示す化学組成を有する溶鋼を製造した。
Figure 0006152782
表1を参照して、鋼D〜H、M及びNの化学組成は本実施形態の熱延鋼板の化学組成の範囲内であった。一方、鋼A〜C、及びI〜Lの化学組成は、本実施形態の熱延鋼板の化学組成の範囲外であった。
上記溶鋼を用いて、造塊法により200mm×200mm×200mmのインゴットを製造した。3スタンドの熱間圧延ミルを用いて、インゴットを、表2及び表3に示す圧延条件(加熱温度、加熱時間、総圧下率MFR、総圧下率TFR、最終圧下率FR、摩擦係数μ、及び、仕上げ圧延温度FT)で熱間圧延を実施して熱延鋼板を製造した。熱間圧延後、表3の冷却条件及び巻取り条件(空冷時間、強制冷却の冷却速度CR、冷却停止温度ST、滞留時間、及び、巻取り温度)で熱延鋼板を冷却して、巻取りを行った。製造された熱延鋼板の板厚tは、2.6〜4.2mmであった。
Figure 0006152782
Figure 0006152782
試験番号4〜6、9、13、14、16及び17では、圧延後の熱延鋼板を、冷却速度CRで巻取り温度CT(℃)まで冷却して、その後、巻取りを実施した。つまり、強制冷却を途中で停止せず、滞留時間も設けなかった。
[ミクロ組織観察試験]
上述の「ミクロ組織中の各相の面積率の測定方法」に記載の測定方法に基づいて、各試験番号のフェライト面積率、ベイナイト面積率、パーライト面積率、マルテンサイト面積率、及び、残留オーステナイト面積率を求めた。求めた各相の面積率を表4に示す。表4中の「α」はフェライト面積率(%)である。「B」はベイナイト面積率(%)である。「P」はパーライト面積率(%)である。「M」はマルテンサイト面積率(%)である。「残留γ」は残留オーステナイト面積率(%)である。
Figure 0006152782
[バンド状コロニーの面積率BCR]
上述の「バンド状コロニーの面積率BCRの測定方法」に記載の方法に基づいて、各試験番号のバンド状コロニーの面積率BCRを求めた。求めた結果を表4に示す。
[粗大コロニーの面積率CCR]
上述の「粗大コロニーの面積率CCRの測定方法」に記載の方法に基づいて、各試験番号の粗大コロニーの面積率を求めた。
[ビッカース硬さ比の測定方法RHv]
上述の「ビッカース硬さ比の測定方法」に記載の方法に基づいて、各試験番号のビッカース硬さ比RHv(=HvS/HvC)を求めた。求めた結果を表4に示す。
[粗大化合物の密度TN]
上述の「粗大化合物の密度TNの測定方法」に記載の方法に基づいて、各試験番号の粗大化合物の密度TN(個/mm2)を求めた。
[引張強度TS及び降伏比YR]
各試験番号の熱延鋼板からJIS 5号引張試験片を作製した。インストロン型引張試験機を利用して、JIS Z2241に準拠した静的引張試験を実施し、降伏強度YS(MPa)及び引張強度TS(MPa)、降伏比YRを求めた。得られた引張強度及び降伏比を表5に示す。
Figure 0006152782
[曲げ性評価試験]
各試験番号の熱延鋼板から、35mm×80mm×板厚tの試験片を3つ採取した。各試験片の長手方向(80mm)は、圧延方向と平行とした。
各試験片に対して、Vブロック法による曲げ加工を実施した。押金具の頂角は75°とし、コーナRは0.5mmとした。初めに予備曲げ加工を実施して試験片に曲げ部を形成し、さらに密着曲げ加工を行った。予備曲げ加工又は密着曲げ加工後の3つの試験片の曲がり部の外側表面の割れの有無を調査した。3つの試験片のうち、2の試験片で割れが確認された場合、曲げ性が低いと判断した(表5中に「NA」と表記)。一方、3つの試験片のうち、1つの試験片で割れが確認された場合(表5に「G」と表記)、及び、3つの試験片のいずれにも割れが確認されなかった場合(表5に「E」と表記)、曲げ性が高いと判断した。
[せん断加工性評価試験]
各試験番号の熱延鋼板から、60mmの幅と、圧延方向と平行な25mmの長さとを備えた試験片を3つ採取した。
各試験片に対して、せん断加工を実施した。せん断時の切断クリアランスを、板厚t×15%とした。せん断加工は、試験片の圧延方向と平行に実施して、試験片のうち、25mm長さ×10mm幅の部分を切断した。
切断後の試験片の残部(25mm長さ×50mm幅の部分)の切断端面を目視観察して、割れの有無を確認した。3つの試験片のうち、割れが確認された試験片が2つ以上である場合、せん断加工性が低いと判断した(表5中に「NA」と表記)。一方、3つの試験片のうち、割れが確認された試験片が1つ以下である場合、せん断加工性が高いと判断した(表5中に「E」と表記)。
[試験結果]
表1〜表5を参照して、試験番号4、7、8、10、11、13、14、16、24、25及び28の熱延鋼板の化学組成は適切であった。さらに、加熱温度及び加熱時間は適切であった。さらに、最終圧下率FRの下限は20%以上であり、摩擦係数μは0.25以上であった。さらに、空冷時間は10秒以下であり、空冷速度CRは15℃/s以上であった。さらに、巻取り温度CTは400〜600℃の範囲内であり、適切であった。そのため、これらの試験番号のミクロ組織では、フェライト及びベイナイトの総面積率が89%以上であり、パーライト面積率が5%以下であり、マルテンサイト面積率が3%以下であり、残留オーステナイト面積率が3%以下であった。さらに、ビッカース硬さ比RHvはいずれも0.80以下であった。そのため、これらの試験番号では、引張強度TSが590MPa以上であり、降伏比YRが0.75以上であった。さらに、曲げ性評価試験では、これらの試験番号の熱延鋼板は、優れた曲げ性を示した。
さらに、試験番号7、8、10及び11では、製造条件において、総圧下率MFR及びTFRと、仕上げ圧延温度FTとが適切であり、空冷時間は3.0〜10秒の範囲内であった。そのため、これらの試験番号のバンド状コロニー面積率BCRは40%以下であり、かつ、粗大コロニーの面積率CCRは30%以下であった。
そのため、試験番号7、8、10及び11の熱延鋼板はさらに、せん断加工性に優れた。なお、試験番号16の総圧下率MFRは30%を超えた。そのため、試験番号7、8、10及び11よりも劣るものの、良好なせん断加工性が得られた。
一方、試験番号1では、C含有量が高すぎた。そのため、マルテンサイト面積率が3%よりも高く、ビッカース硬さ比が0.80を超えた。そのため、曲げ性が低かった。
試験番号2では、P含有量及びS含有量が高すぎた。そのため、曲げ性及びせん断加工性が低かった。Pが偏析したためせん断加工性が低下し、S介在物の生成により曲げ性が低下したと考えられる。
試験番号3では、Ti含有量が高すぎた。曲げ性が低かった。粗大なTi炭窒化物が生成したためと考えられる。
試験番号5では、化学組成は適切であったものの、摩擦係数μが低すぎた。そのため、ビッカース硬さ比RHvが0.80を超えた。そのため、曲げ性が低かった。試験番号5ではさらに、総圧下率MFRが低すぎた。そのため、バンド状コロニー面積率BCRが40%を超え、せん断加工性が低かった。
試験番号6では、化学組成は適切であったものの、最終圧下率FRが低すぎた。そのため、ビッカース硬さ比RHvが0.80を超え、曲げ性が低かった。
試験番号9では、化学組成は適切であったものの、最終圧下率FR及び摩擦係数μが低すぎた。そのため、ビッカース硬さ比RHvが0.80を超え、曲げ性が低かった。
試験番号12では、化学組成は適切であったものの、加熱温度が低すぎた。そのため、引張強度が590MPa未満であった。
試験番号15では、化学組成は適切であったものの、空冷時間が長すぎた。そのため、引張強度が590MPa未満となった。
試験番号17では、化学組成は適切であったものの、摩擦係数が低すぎた。そのため、ビッカース硬さ比RHvが0.80を超え、曲げ性が低かった。
試験番号18では、化学組成が適切であったものの、巻取り温度が低すぎた。そのため、残留オーステナイト面積率が3%を超えた。その結果、降伏比が0.75未満であり、曲げ性が低かった。
試験番号19では、Si含有量が低すぎた。そのため、パーライト面積率が5%を超え、曲げ性が低かった。
試験番号20では、Mn含有量が低すぎ、P含有量が高すぎた。そのため、降伏強度が低すぎ、曲げ性が低かった。
試験番号21では、C含有量が低すぎた。そのため、試験番号21では、引張強度TSが590MPa未満であった。
試験番号22では、S含有量及びN含有量が高すぎた。そのため、曲げ性が低かった。
試験番号23では、仕上げ圧延温度FTが低すぎた。そのため、バンド状コロニー面積率BCRが40%を超え、せん断加工性が低かった。
試験番号25では、冷却速度CRが遅すぎた。そのため、降伏強度が低かった。
試験番号26では、巻取り温度CTが高すぎた。そのため、ビッカース硬さ比RHvが0.80を超え、曲げ性が低かった。
試験番号27では、巻取り温度CTが低すぎた。そのため、マルテンサイト面積率が3%よりも高く、ビッカース硬さ比が0.80を超えた。そのため、曲げ性が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (4)

  1. 熱延鋼板であって、
    質量%で、
    C:0.01〜0.2%、
    Si:0.01〜2.5%、
    Mn:0.5〜3.0%、
    P:0.02%以下、
    S:0.005%以下、
    Sol.Al:0.02〜0.5%、
    Ti:0.02〜0.25%、
    N:0.010%以下、
    Nb:0〜0.1%、
    V:0〜0.4%、
    Mo:0〜0.4%、
    W:0〜0.4%、
    Cr:0〜0.4%、及び、
    Ca、Mg及び希土類元素(REM)の総含有量:0〜0.01%とを含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成と、
    面積率で89%以上のフェライト及びベイナイトと、面積率で0〜5%のパーライトと、面積率で0〜3%のマルテンサイトと、面積率で0〜3%の残留オーステナイトとからなるミクロ組織と、
    590MPa以上の引張強度とを備え、
    前記熱延鋼板の板厚中心位置のビッカース硬さHvCと、前記熱延鋼板の表面から100μm深さの位置のビッカース硬さHvSとが式(1)を満たす、熱延鋼板。
    HvS/HvC≦0.80 (1)
  2. 請求項1に記載の熱延鋼板であって、
    前記熱延鋼板の板厚がtmmである場合、板厚中心から±0.12tの範囲内である板厚中心部において、{112}<110>方位と10°以下の結晶方位を有する結晶コロニーの総面積に対する、{112}<110>方位と10°以下の結晶方位を有しアスペクト比が0.35以下の結晶コロニーの総面積の比が40%以下である、熱延鋼板。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の熱延鋼板であって、
    前記化学組成は、
    Nb:0.002〜0.1%、
    V:0.01〜0.4%、
    Mo:0.01〜0.4%、
    W:0.01〜0.4%、及び、
    Cr:0.01〜0.4%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、熱延鋼板。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱延鋼板であって、
    前記化学組成は、Ca、Mg、及び、REMからなる群から選択される1種又は2種以上を、総計で0.0002〜0.01%含有する、熱延鋼板。
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