JP6152648B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、安定した発光性能が得られる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」という。)に関する。
有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)とも言われる有機EL素子は、低電圧駆動が可能であり、応答速度が速く、薄型化、軽量化、全固体化が可能である等の特徴を有しており、フラットパネルディスプレイや照明への応用が頻繁に検討されているデバイスである。最も単純な構造の有機EL素子は、正孔輸送能と電子輸送能とを有する発光層が陽極と陰極に挟持された構造を有している。この構造を有する素子の陽極と陰極とに電荷を印加すると、陽極からは正孔が、陰極からは電子が、それぞれ発光層中に注入される。そして、注入された正孔と電子が有機発光層を移動し、クーロン力によって再結合すると、励起子が生成する。この励起子が光(蛍光、燐光)を発して輻射失活し、発生した光が取り出されて利用される。
発光層が陽極と陰極に挟持された単純構造の有機EL素子の発光性能は、一般に満足のいくものではない。この問題を解決するために、図1に模式的に示す、基板2の表面に陽極3/正孔注入層4/発光層5/陰極6がこの順番で積層された構造を有する有機EL素子1が提案されている。陽極3から発光層5に正孔を注入する場合には、陽極3の仕事関数と発光層5の最高占有軌道(HOMO)準位をできるだけマッチングさせたほうが、正孔注入のエネルギー障壁が小さくなるため、正孔注入効率を向上させることができる。しかしながら、正孔注入のエネルギー障壁は一般に大きく、効率的な正孔注入が困難である。このような場合に、発光層5のHOMO準位と陽極3の仕事関数との間のHOMO準位を有する正孔注入層4を導入すると、正孔注入のエネルギー障壁が低下し、正孔注入効率を向上させることができ、ひいては有機EL素子1の発光性能を向上させることができる。
正孔注入層4はさらに、陽極3と発光層5と間の界面状態の改質にも大きな影響を与える。陽極3の表面の凸凹が激しいと、発光層5にピンホールが生じやすくなり、或いは陽極3と発光層5との密着性が不均一になって発光ムラが生じやすくなり、さらには陽極3の凸部が発光層5に及ぼす応力により薄い発光層5がダメージを受け、漏れ電流が増加して素子1の発光効率が低下することがある。また、陽極3の表面の凹凸が電界集中の原因となって、素子1の破壊が引き起こされることがある。さらに、発光層5は疎水性であるが、多くの検討において陽極3として使用されるスズドープ酸化インジウム(ITO)は親水性であり、この表面エネルギーの差が発光層5と陽極3との間の密着性を低下させ、素子1が短寿命化することがある。これらの問題を解決するためにも、陽極3と発光層5との間に正孔注入層4が設けられる。したがって、正孔注入層4には、陽極3及び発光層5との密着性に優れる上に、発光層5に対向する表面4sが平坦であることが要請される。さらに、有機EL素子をフラットパネルディスプレイのために用いる場合には一万時間を超える長寿命が要求されるため、正孔注入層4もまた、耐湿性や耐熱性に優れ、有機EL素子1の安定な発光を約束する性質を有することが望ましい。
ところで、有機EL素子における正孔注入層をP型半導性の導電性ポリマーにより構成する方法がこれまでに提案されてきた。例えば、特許文献1(特表2000−514590号公報)には、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類等からなる導電性ポリマーを正孔注入層のために利用することが記載されており、この文献の実施例には、化学重合により得られたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸塩を含む分散液をITO基体上に塗布して乾燥することにより得た導電性ポリマー層を正孔注入層とした有機EL素子(以下、3,4−エチレンジオキシチオフェンを「EDOT」と表し、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を「PEDOT」と表し、ポリスチレンスルホン酸を「PSS」と表し、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)のポリスチレンスルホン酸塩を「PEDOT:PSS」と表す。)、及び、四フッ化ホウ酸テトラメチルアンモニウムとEDOTをアセトニトリルに溶解した液を重合液とした電解重合によりITO基体上に形成した導電性ポリマー層を正孔注入層とした有機EL素子が具体的に示されている。また、特許文献2(特開2000−90181号公報)には、正孔注入層を粒径が1μm以下の導電性ポリマーを含む分散液から得ることが記載されており、上記分散液の使用により、有機EL素子の陽極と陰極との間の短絡が防止され、素子の寿命を長期化させることができると説明されている。この文献の実施例には、孔径が0.45μm或いは0.22μmのフィルターでろ過したPEDOT:PSSの水性分散液をITO基体上に塗布して乾燥することにより得た導電性ポリマー層を正孔注入層とした有機EL素子が具体的に示されている。
特許文献3(特開2004−342603号公報)には、電極における単位面積当たりの総電荷量を1.0mC/cm〜1.2mC/cmとし、印加される電流密度を0.4mA/cm〜1.5mA/cmとし、且つ電流を流す時間を0.8sec〜3.0secとした電解重合により正孔注入層を形成する有機EL素子の作製方法が記載されている。電解重合の際に電極に印加される総電荷量、電流密度及び電流を流す時間を上述の範囲で制御することにより、薄膜を電極表面に均一に成膜することができると説明されており、実施例では、EDOTと過塩素酸テトラブチルアンモニウムをアセトニトリルに溶解させた液を重合液とし、総電荷量が1.2mC/cmとなるように電流密度と電流を流す時間を調整して電解重合を行うことにより、約4〜約5nmの平均面粗さ(Ra)を有するPEDOTの正孔注入層を形成している。
特表2000−514590号公報 特開2000−90181号公報 特開2004−342603号公報 WO2012/118161A1 WO2012/133858A1
特許文献1及び特許文献2に示されているPEDOT:PSS水性分散液は、親水性の陽極上に均一に塗布することができるため、平坦な表面を有する正孔注入層を与える。その上、乾燥後には有機溶媒に溶解しにくい正孔注入層が得られるため、この正孔注入層上に有機溶媒に発光材料を溶解させた溶液を用いて発光層を積層する場合に、PEDOT:PSS層が有機溶媒に溶解しないという利点がある。しかし、PEDOT:PSS層が高い吸水性を示すため、大気中の水分による素子の劣化が懸念される。また、PSSは拡散しやすい物質であるため、拡散して素子の特性に悪影響を与えるおそれがある。さらに、PSSのスルホン酸基がITOと反応してインジウムを遊離させるため、インジウムの拡散による素子の劣化も懸念される。
また、特許文献1及び特許文献3に示されているような有機溶媒を含む重合液を用いた電解重合により得られる正孔注入層の表面は、一般に凹凸が激しく平滑性に乏しい。特許文献3には約4〜約5nmの平均面粗さ(Ra)を有する正孔注入層が記載されているものの、この文献の図10及び11を参照すると、正孔注入層が尖鋭な先端を有する100nmオーダーの長さの凸部を多く有していることがわかる。この尖鋭な先端を有する凸部により、正孔注入層と発光層との密着性が不均一になって発光性能のバラツキが増大し、或いは、薄い発光層がダメージを受け、漏れ電流が増加して素子の発光効率が低下することが懸念される。
したがって、発光層に対向する表面が平坦であり、その上、耐湿性や耐熱性に優れ、有機EL素子の安定な発光性能を約束する正孔注入層が望まれる。
出願人は、水を主体とした溶媒を含む重合液を用いた電解重合についてこれまで検討してきた。そして、特許文献4(WO2012/118161A1)及び特許文献5(WO2012/133858A1)において、水を主体とした溶媒を含む重合液を用いた電解重合により得られた、3位と4位に置換基を有するチオフェン(以下、3位と4位に置換基を有するチオフェンを、「置換チオフェン」と表わす。)から成る群から選択された少なくとも一種のモノマーから構成されたポリマーと、該ポリマーに対するドーパントとしての、非スルホン酸系有機化合物であって該化合物のアニオンの分子量が200以上である少なくとも一種の化合物から発生したアニオンと、を含む緻密な導電性ポリマー層が、PEDOT:PSSに比較して著しく優れた電気化学的活性を示し正孔輸送能に優れる上に、空気中の水分に安定であり、優れた耐熱性を示すことを報告した。ここで、「非スルホン酸系有機化合物」とは、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有していない有機化合物を意味する。
本発明の目的は、上述した知見を基礎として、安定な発光性能を示す有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
発明者らは、鋭意検討した結果、特許文献4等で報告した導電性ポリマー層の表面の粗さを所定の範囲に調整することにより、安定な発光性能を示す有機EL素子が得られ、上述の目的が達成されることを発見した。
したがって、本発明はまず、基板の表面に設けられた陽極と、陰極と、上記陽極と上記陰極との間に設けられた発光層と、上記陽極と上記発光層との間に設けられ、上記陽極と接している正孔注入層と、を含む有機EL素子であって、上記正孔注入層が、3位と4位に置換基を有するチオフェンから成る群から選択された少なくとも一種のモノマーから構成されたポリマーと、該ポリマーに対するドーパントとしての、非スルホン酸系有機化合物であって該化合物のアニオンの分子量が200以上である少なくとも一種の化合物から発生したアニオンと、を含む導電性ポリマー層から成り、該導電性ポリマー層が10nm以上の膜厚を有し、上記導電性ポリマー層の上記発光層に対向する表面の自乗平均面粗さ(RMS)が2〜10nmの範囲であり且つ上記導電性ポリマー層の膜厚の30%以下の値であることを特徴とする有機EL素子を提供する。
本発明の有機EL素子における正孔注入層は、水を主体とした溶媒を含む重合液を用いた電解重合により好適に得ることができる。したがって、本発明はまた、上記正孔注入層を、100〜80質量%の水と0〜20質量%の有機溶媒とから成る溶媒と、上記モノマーと、上記非スルホン酸系有機化合物と、を含む重合液に、陽極を表面に有する基板を導入し、電解重合を1.5mC/cm以上18mC/cm未満の通電電荷量の条件下で行うことによって形成する工程を含むことを特徴とする有機EL素子の製造方法に関する。上述した特定範囲の非スルホン酸系有機化合物は、重合液において支持電解質として作用するため、「非スルホン酸系有機支持電解質」とも表わされる。また、100〜80質量%の水と0〜20質量%の有機溶媒とから成る溶媒を、以下「水リッチ溶媒」と表わす。水リッチ溶媒において、水と有機溶媒との合計量は100質量%である。
電解重合を1.5mC/cm以上18mC/cm未満の通電電荷量の条件下で行うことにより、陽極の表面に導電性ポリマーの薄層を密着性良く形成することができ、また、導電性ポリマー層表面のRMSを2〜10nmの範囲であり且つ導電性ポリマー層の膜厚の30%以下の範囲に効率良く調整することができる。上記重合液を用いた電解重合により得られた導電性ポリマー層の表面には凸部が存在するものの、この凸部は伏皿状の形状を有しており尖鋭な先端を有していない(図2参照)。したがって、特許文献1又は特許文献3に記載されている有機溶媒を含む重合液から得られた正孔注入層に比較して、凸部による薄い発光層へのダメージを抑制することができる。
また、上記重合液を用いた電解重合により得られる上記導電性ポリマー層は、電気化学的活性に富み優れた正孔輸送能を有する上に、空気中の水分に安定であり、耐熱性に優れる。したがって、この導電性ポリマー層は、正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた層とすることができる。水リッチ溶媒における有機溶媒の含有量が増加すると、ポリマー粒子が緻密に充填された平坦な表面を有する導電性ポリマー層が電解重合により陽極上に形成されにくくなり、有機溶媒の含有量が溶媒全体の20質量%を超えると、得られた導電性ポリマー層の耐熱性が顕著に低下する(特許文献4、特許文献5参照)。したがって、溶媒は水のみから成るのが好ましい。
上記重合液を用いた電解重合では、導電性ポリマー層の膜厚が増加するに連れて、導電性ポリマー層表面のRMSも増加するが、RMSが2〜10nmの範囲であり且つ導電性ポリマー層の膜厚の30%以下の値であると、バラツキの少ない安定な発光性能を示す有機EL素子が得られる。また、導電性ポリマー層の膜厚が10nm未満になると、平坦な表面を有する導電性ポリマー層が再現性良く得られなくなる。本発明では、導電性ポリマー層が薄く膜厚の30%の値が10nm以下である場合にはRMSがこの層の膜厚の30%を超えることがなく、導電性ポリマー層が厚く膜厚の30%の値が10nmを超える場合にはRMSが10nmを超えることがない。RMSが上述の範囲より大きくなると、発光の安定性が低下し、全く発光しないか或いは著しく弱い発光しか示さない有機EL素子が出現する傾向が認められる。また、導電性ポリマー層の膜厚が薄い場合には、ピンホールが生じやすく、また発光ムラが発生しやすくなる。なお、本発明では、導電性ポリマー層の表面粗さの尺度として、自乗平均面粗さ(RMS)を採用している。RMSは、特許文献3において採用されている平均面粗さ(Ra)と比較して、導電性ポリマー層表面の凸部の影響を受けやすい尺度であり、導電性ポリマー層(正孔注入層)の凸部が発光層に及ぼす応力を評価するためにより適した尺度である。
上記導電性ポリマー層の膜厚は、10nm以上であるが、100nm以下であるのが好ましく、70nm以下であるのがより好ましい。導電性ポリマー層の膜厚が厚くなると有機EL素子の内部抵抗が増加して、素子に対する印加電圧が増加し或いは発光効率が低下するからであり、また、上述したように導電性ポリマー層の膜厚が増加するに連れてポリマー層表面のRMSも増加するため、導電性ポリマー層の膜厚が厚くなると平坦な表面が得られにくくなるからである。
上記導電性ポリマー層には、ドーパントとして、非スルホン酸系有機化合物であってそのアニオンの分子量が200以上である化合物から発生したアニオンが含まれる。無機化合物から発生したアニオン、或いは、有機化合物であってもスルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有する化合物から発生したアニオン、或いは、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を有していない有機化合物であってもアニオンの分子量が200未満である化合物から発生したアニオンは、耐熱性に優れた導電性ポリマー層を与えない(特許文献4、特許文献5参照)。非スルホン酸系有機化合物であってそのアニオンの分子量が200以上である化合物のなかでも、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩は、特に平滑な表面を有する導電性ポリマー層を与えるため好ましい。
ただし、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩に含まれるボロジサリチル酸イオンが水中で水への溶解度が極めて小さいサリチル酸とホウ酸とに加水分解することがわかっている。そのため、水リッチ溶媒を含む重合液においてボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用すると、徐々に重合液中に沈殿が生じて使用に耐えなくなる。このことを回避するため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用する場合には、この支持電解質を液に添加した後沈殿生成前に電解重合を行うか、或いは、ボロジサリチル酸イオンの加水分解を抑制する作用を有するニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体から成る群から選択された安定化剤と併用する。
上記導電性ポリマー層を構成するためのモノマーには、置換チオフェン、すなわち、3位と4位に置換基を有するチオフェンから成る群から選択された化合物であれば、特に限定が無い。チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。特にモノマーがEDOTであると、環境安定性と光透過性(透明性)に優れる導電性ポリマー層が得られるため好ましい。
本発明の有機EL素子に含まれる正孔注入層は、置換チオフェンから選択された少なくとも一種のモノマーから構成されたポリマーと、該ポリマーに対するドーパントとしての特定範囲の非スルホン酸系有機化合物から発生したアニオンとを含む、電気化学的活性に富み正孔輸送能に優れ、耐水性及び耐熱性に優れる導電性ポリマー層から成り、極めて平坦な表面を有しているため、本発明の有機EL素子はバラツキの少ない安定した発光性能を示す。
有機EL素子の構成を模式的に示す図である。 原子間力顕微鏡により正孔注入層表面の平滑性を測定した結果を示す図である。 有機EL素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図である。
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に正孔注入層と発光層とを少なくとも有する。最も簡単な構造の有機EL素子は、図1に模式的に示されている、基板2の表面に陽極3/正孔注入層4/発光層5/陰極6がこの順番で積層された構造を有する有機EL素子1である。多機能を有する高分子材料で発光層が構成されている有機EL素子は、この単純な構造を有することが多い。しかしながら、本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に、正孔注入層と発光層に加えて、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の公知の有機EL素子に含まれている層を含んでいても良い。以下、各構成要素について説明する。
有機EL素子の支持体の役割を果たす基体のためには、光学ガラス、石英ガラス、無アルカリガラスなどの透明で絶縁性のガラス基板、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、ポリアクリレート、ポリイミドなどの透明で絶縁性のプラスチック基板の他、アルミナ等の不透明で絶縁性のセラミック基板、ステンレス等の金属基板の表面を酸化ケイ素等の絶縁膜で被覆した基板、不透明で絶縁性のプラスチック基板が使用される。有機EL素子においては、陽極側から光を取り出すことが多いため、基板として、上述した透明で絶縁性のガラス基板又は透明で絶縁性のプラスチック基板が好適に使用される。
基板の表面には、発光層に対する正孔注入の役割を果たす陽極が設けられる。陽極のためには、大きい仕事関数、好ましくは4.0eV以上の仕事関数を有する導電層が使用され、これらは、材料の性質に応じて、蒸着法、スパッタリング法、塗布法等の公知の方法により設けられる。陽極の例としては、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)の透明な酸化物の導電層、金、銀、白金、鉄、ニッケル、銅などの金属の導電層が挙げられる。
陽極を構成する導電層は、単層であっても良く、異なる仕事関数を有する複数の層であっても良い。有機EL素子においては、陽極側から光を取り出すことが多いため、陽極として、上述の透明な酸化物の導電層又は金、銀、白金等の金属の半透明の導電層が好適に使用される。陽極の膜厚には厳密な制限がなく、材料の種類や要求される透明度にもよるが、一般に5nm〜20μm、好ましくは10〜500nmの範囲の膜厚である。膜厚が5nm以下であると、陽極の強度及び導電性が不十分な場合がある。
本発明の有機EL素子では、陽極の直上に、特定の正孔注入層が設けられる。正孔注入層は、陽極から注入された正孔を発光層側にスムーズに移送し、正孔注入効率を向上させる役割を果たす。本発明の有機EL素子における正孔注入層は、置換チオフェン、すなわち、3位と4位に置換基を有するチオフェンから成る群から選択された少なくとも一種のモノマーから構成されたポリマーと、該ポリマーに対するドーパントとしての、非スルホン酸系有機化合物であって該化合物のアニオンの分子量が200以上である少なくとも一種の化合物から発生したアニオンと、を含む導電性ポリマー層から成る。
上記導電性ポリマー層は、10nm以上の膜厚を有し、表面のRMSが2〜10nmの範囲であり且つ導電性ポリマー層の膜厚の30%以下の値である。導電性ポリマー層の膜厚は、一般的には10〜100nm、好ましくは10〜70nmの範囲である。導電性ポリマー層の膜厚が増加すると有機EL素子の内部抵抗が増加して、素子に対する印加電圧が増加し或いは発光効率が低下するからであり、また、導電性ポリマー層の膜厚が増加するに連れてポリマー層表面のRMSも増加するため、導電性ポリマー層の膜厚が増加すると平坦な表面が得られにくくなるからである。なお、RMSは原子間力顕微鏡にて導電性ポリマー層表面を観察することにより求めることができ、導電性ポリマー層の膜厚は、原子間力顕微鏡等により測定することができる。また、所定の電流密度での定電流電解重合を時間を変えて2回以上行い、各回の電解重合により得られた導電性ポリマー層の膜厚を計測した後、得られた膜厚と電解重合における通電電荷量との関係を示す計算式を導出し、導出した計算式を用いて通電電荷量から導電性ポリマー層の膜厚を算出しても良い。
上記導電性ポリマー層は、モノマーとしての置換チオフェンと支持電解質としての上述した特定範囲の非スルホン酸系有機化合物とを含む電解重合用の重合液を得る調製工程、及び、得られた重合液に陽極を表面に備えた基体を導入し、電解重合を行うことにより、上記モノマーの重合により得られた導電性ポリマー層を陽極上に形成する重合工程、を含む方法により製造することができる。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)調製工程
この工程で調製する電解重合用の重合液は、水リッチ溶媒と、モノマーとしての置換チオフェンと、支持電解質としての特定範囲の非スルホン酸系有機化合物と、を必須成分として含む。
重合液の調製には、環境負荷が小さく、経済的にも優れる水を主溶媒として使用する。この重合液には、水に加えて、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸メチルなどの有機溶媒が含まれていてもよいが、溶媒全体の80質量%以上は水である。水は溶媒全体の90質量%以上であるのが好ましく、溶媒全体の95質量%以上であるのがより好ましく、溶媒が水のみから成るのが特に好ましい。水リッチ溶媒における有機溶媒の含有量が増加すると、ポリマー粒子が緻密に充填された導電性ポリマー層が電解重合により陽極上に形成されにくくなり、有機溶媒の含有量が溶媒全体の20質量%を超えると、得られた導電性ポリマー層の耐熱性が顕著に低下する。
モノマーとしては、置換チオフェン、すなわち、3位と4位に置換基を有するチオフェンから選択されたモノマーが用いられる。チオフェン環の3位と4位の置換基は、3位と4位の炭素と共に環を形成していても良い。使用可能なモノマーの例としては、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェンなどの3,4−ジアルキルチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェンなどの3,4−ジアルコキシチオフェン、3,4−メチレンジオキシチオフェン、EDOT、3,4−(1,2−プロピレンジオキシ)チオフェンなどの3,4−アルキレンジオキシチオフェン、3,4−メチレンオキシチアチオフェン、3,4−エチレンオキシチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンオキシチア)チオフェンなどの3,4−アルキレンオキシチアチオフェン、3,4−メチレンジチアチオフェン、3,4−エチレンジチアチオフェン、3,4−(1,2−プロピレンジチア)チオフェンなどの3,4−アルキレンジチアチオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、イソプロピルチエノ[3,4−b]チオフェン、t−ブチル−チエノ[3,4−b]チオフェンなどのアルキルチエノ[3,4−b]チオフェンが挙げられる。モノマーとして、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を混合して使用しても良い。特に、EDOTを使用すると、環境安定性と光透過性(透明性)に優れる導電性ポリマー層が得られるため好ましい。
重合液中の支持電解質としては、非スルホン酸系有機化合物であって該化合物のアニオンの分子量が200以上である化合物が用いられる。これらの支持電解質のアニオンが、以下に示す電解重合の過程でドーパントとして導電性ポリマー層中に含まれる。特に、ボロジサリチル酸、ボロジサリチル酸塩、式(I)又は式(II)
(式中、mが1〜8の整数、好ましくは1〜4の整数、特に好ましくは2を意味し、nが1〜8の整数、好ましくは1〜4の整数、特に好ましくは2を意味し、oが2又は3を意味する)で表わされるスルホニルイミド酸及びこれらの塩を好ましく使用することができる。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ブチルアンモニウム塩などのアルキルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、ジブチルアンモニウム塩などのジアルキルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩などのトリアルキルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩を例示することができる。これらの支持電解質は、特に耐熱性に優れた導電性ポリマー層を与える。中でも、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸の塩、例えばカリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩は、極めて高い耐熱性を有する導電性ポリマー層を与える。
また、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩は、安価で経済的に有利であり、特に平滑な表面を有する導電性ポリマー層を与えるため好ましい。しかしながら、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩に含まれるボロジサリチル酸イオンが水中で水への溶解度が極めて小さいサリチル酸とホウ酸とに加水分解することがわかっている。そのため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用すると、徐々に重合液中に沈殿が生じて使用に耐えなくなる。このことを回避するため、ボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩を支持電解質として使用する場合には、この支持電解質を液に添加した後沈殿生成前に電解重合を行うか、或いは、ボロジサリチル酸イオンの加水分解を抑制する作用を有するニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体から成る群から選択された安定化剤と併用する。上記安定化剤は、単独の化合物であっても良く、2種以上の化合物であっても良い。ニトロベンゼン誘導体としては、ニトロフェノール、ニトロベンジルアルコール、ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、ジニトロベンゼン、ニトロアニソール、ニトロアセトフェノンを例示することができ、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、及びこれらの混合物が好ましい。
支持電解質は、単独の化合物を使用しても良く、2種以上の化合物を使用しても良く、重合液に対する飽和溶解量以下の濃度で且つ電解重合のために充分な電流が得られる量で使用され、好ましくは10mM以上の濃度で、特に好ましくは30mM以上の濃度で使用される。
重合液の調製は、モノマーの含有量に応じて、以下のような方法により行う。モノマーが飽和溶解量以下の量である場合には、重合液製造用の容器に、水リッチ溶媒、モノマーとしての置換チオフェン、及び上述した特定範囲の支持電解質を導入し、手作業により或いは機械的な攪拌手段を使用して各成分を水リッチ溶媒に溶解させることにより、重合液を調製する。モノマーが飽和溶解量を超える量である場合には、すなわち、重合液製造用の容器に、水リッチ溶媒、モノマーとしての置換チオフェン、及び上述した特定範囲の支持電解質を導入して攪拌・均一化した後静置するとモノマーが相分離する場合には、液に超音波照射を施して相分離したモノマーを重合液中に油滴として分散させることにより重合液を調製することができる。水リッチ溶媒に飽和溶解量を超える量のモノマーを添加した液に超音波照射を施してモノマーを油滴として分散させ、次いで得られた液に支持電解質を添加することにより、本発明の重合液を得ることもできる。重合液における各成分が安定であれば、調製時の温度に制限は無い。なお、本明細書において、「超音波」とは10kHz以上の周波数を有する音波を意味する。
超音波照射のために、超音波洗浄機用、細胞粉砕機用等として従来から知られている超音波発振器を特に限定なく使用することができる。モノマー油滴が水リッチ溶媒に安定に分散している液を超音波照射により得るためには、相分離しているモノマーを数μm以下の直径を有する油滴にする必要があり、そのためには、少なくとも機械的作用が強い数百nm〜数μmのキャビテーションを発生させることができる15〜200kHzの周波数の超音波を相分離液に照射する必要がある。超音波の出力は、4W/cm以上であるのが好ましい。超音波照射時間には厳密な制限はないが、2〜10分の範囲であるのが好ましい。照射時間が長いほど、モノマー油滴の凝集が阻害され、解乳化までの時間が長期化する傾向にあるが、超音波照射時間が10分以上では、油滴の凝集阻害効果が飽和する傾向が認められる。異なる周波数及び/又は出力を有する超音波を用いて複数回の照射を行うことも可能である。飽和溶解量を超えるモノマーの含有量は、超音波照射により解乳化が抑制された分散液が得られる量であれば良く、モノマーの種類ばかりでなく、支持電解質の種類と量、超音波照射条件によっても変化する。
本発明の重合液には、水リッチ溶媒、置換チオフェンから選択されたモノマー、及び上記特定範囲の支持電解質に加えて、本発明に悪影響を与えない範囲内で他の添加物が含まれていても良い。好適な添加物として、水溶性のノニオン界面活性剤が挙げられる。モノマーがノニオン界面活性剤のミセル中に濃縮されるため、速やかに電解重合が進行し、高電導度を示すポリマーが得られる。その上、ノニオン界面活性剤自体はイオン化せず、上記特定範囲の支持電解質のアニオンによるポリマーへのドーピングを阻害することが無い。
ノニオン界面活性剤としては、公知の水溶性のノニオン界面活性剤を特に限定無く使用することができる。例としては、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン付加アルキルフェノールホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレン付加スチリルフェノールホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシアルキレン付加ベンジルフェノールホルムアルデヒド縮合物、アルキンジオール、ポリオキシアルキレン付加アルキンジオール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンひまし油、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、2種以上を混合して使用しても良い。また、例えば2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのような分散効果が高いアルキンジオールと他のノニオン界面活性剤、好ましくは、ポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル分岐型のようなポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとの組み合わせを重合液において使用すると、重合液におけるモノマーの含有量を大幅に増加させることができるため好ましい。
ノニオン界面活性剤を併用する場合には、重合液製造用の容器に、水リッチ溶媒、モノマー、上記特定範囲の支持電解質、及びノニオン界面活性剤を導入し、手作業により或いは機械的な攪拌手段を使用して或いは超音波を照射して各成分を水リッチ溶媒に溶解させることにより、重合液を調製する。また、重合液製造用の容器に、水リッチ溶媒、モノマー、及びノニオン界面活性剤を導入して、各成分を水リッチ溶媒に溶解させた液を調製した後、電解重合直前に、この液に上記特定範囲の支持電解質を添加して溶解させても良い。
いずれの重合液の製造方法においても、支持電解質としてのボロジサリチル酸及び/又はボロジサリチル酸塩と、安定化剤としてのニトロベンゼン及び/又はニトロベンゼン誘導体と、を併用する場合には、重合液製造用の容器に両者をほぼ同時に導入するか、或いは安定化剤を先に導入する。安定化剤はボロジサリチル酸イオンの加水分解を抑制するために使用されるからである。
(2)重合工程
上述の調製工程により得られた重合液に、上述した陽極を表面に有する基体と、対極とを導入し、電解重合を行うことにより、置換チオフェンの重合により得られた導電性ポリマー層を陽極上に形成し、有機EL素子のための正孔注入層を得る。
電解重合の対極としては、白金、ニッケルなどの板を用いることができる。
電解重合は、調製工程により得られた重合液を用いて、定電位法、定電流法、電位掃引法のいずれかの方法により行われるが、通電電荷量は1.5mC/cm以上18mC/cm未満の範囲に調整される。定電流電解重合が好ましく、この場合の電流密度は0.001〜1mA/cm、好ましくは0.01〜0.1mA/cmであり、電解重合時間は1.5〜18000秒、好ましくは30〜150秒である。上記重合液を用いた電解重合では、導電性ポリマー層の膜厚が増加するに連れて、導電性ポリマー層表面のRMSも増加するため、導電性ポリマー層の膜厚の調整を介してRMSを調整することができる。
上記電解重合により、上述した特定範囲の非スルホン酸系有機支持電解質のアニオンをドーパントとして含む導電性ポリマー層であって、10nm以上の膜厚を有し、表面のRMSが2〜10nmの範囲であり且つ導電性ポリマー層の膜厚の30%以下の値である導電性ポリマー層が、陽極上に正孔注入層として形成される。得られる導電性ポリマー層の密度は、1.15〜1.80g/cmの範囲である。導電性ポリマー層の密度が1.15g/cm未満であると、耐熱性が急激に低下し、密度が1.80g/cmを超える導電性ポリマー層の製造は困難である。耐熱性に優れた導電性ポリマー層の密度は、好ましくは1.20〜1.80g/cmの範囲、特に好ましくは1.60〜1.80g/cmの範囲である。また、柔軟性を有する有機EL素子を得る場合には、導電性ポリマー層の密度が高すぎると導電性ポリマー層が固くなって柔軟性に乏しくなるため、導電性ポリマー層の密度が1.75g/cm以下であるのが好ましく、1.70g/cm以下であるのが特に好ましい。
電解重合後の導電性ポリマー層を水、エタノール等で洗浄し、乾燥することにより、陽極上に密着性良く形成された耐熱性に優れた導電性ポリマー層(正孔注入層)を得ることができる。この導電性ポリマー層は、空気中の水分に安定であり、また中性付近のpHを示すため、有機EL素子の製造或いは使用の過程で他の構成要素が腐食されるおそれも無い。
本発明の有機EL素子では、上述した正孔注入層の上に、必要に応じて正孔輸送層が設けられても良い。正孔輸送層は、陽極から注入された正孔の発光層への輸送効率を向上させる役割を果たし、高い正孔移動度を有すると共に、陰極側から注入される電子を流しにくい有機材料により構成される。本発明では、公知の正孔輸送性材料を正孔輸送層のために特に限定なく使用することができる。例としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリ(パラフェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体が挙げられる。正孔輸送性材料のうち、LUMOのエネルギーレベルが高く(電子親和力が小さく)、励起三重項準位が高い材料を、発光層に接する電子ブロック層とすることができる。電子ブロック層は、陽極側から移動してくる正孔を発光層に輸送するとともに、発光層から移動してくる電子が陽極側に到達するのを阻止して正孔と電子の再結合確率を上昇させ、生成した励起子を発光層に閉じ込める役割を果たす。電子ブロック層を構成する材料の例としては、ジオクチルフルオレン−トリフェニルアミンコポリマーが挙げられる。
正孔輸送層及び電子ブロック層は、材料の性質に応じて、蒸着法、塗布法等の公知の方法により設けることができ、単一の輸送材料を含んでいても良く、2種以上の輸送材料を含んでいても良い。スピンコート法、キャスティング法、スクリーン印刷法等などの塗布法では、高分子材料を有機溶媒に溶解させた溶液、或いは、低分子材料をバインダーとともに有機溶媒に溶解させた溶液が用いられる。溶媒及びバインダーとしては、有機EL素子の特性に悪影響を及ぼさないものを限定なく使用することができる。有機溶媒の例としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩化炭素、テトラヒドロフランなどのエーテル、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステルが挙げられ、バインダーの例としては、ポリビニルカルバゾール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリスチレンが挙げられる。
正孔輸送層及び電子ブロック層の膜厚は、一般には5〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲である。膜厚が5nm以下であると、ピンホールの発生が懸念され、膜厚が1000nm以上であると、素子の内部抵抗が大きくなって発光効率が低下する場合がある。
本発明の有機EL素子では、上述した正孔注入層の上に、又は存在する場合には正孔輸送層或いは電子ブロック層の上に、発光層が設けられる。
発光層のためには、公知の低分子系発光材料及び高分子系発光材料を特に限定なく使用することができる。0.1〜数mol%の発光材料がホスト材料に分散された発光層でも良い。
低分子系発光材料としては、4,4´−ビス(2,2´−ジフェニルビニル)−ビフェニルなどの芳香族ジメチリデン化合物、5−メチル−2−[2−[4−(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾオキサゾールなどのオキサジアゾール化合物、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−t−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼンなどのスチリルベンゼン化合物の他、チオピラジンジオキシド誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、フルオレノン誘導体、キナクドリン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体などが例示される。また、アゾメチン亜鉛錯体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、(1,10−フェナントロリン)トリス[4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ブタンジオナト]ユーロピウム、白金オクタエチルポルフィリンなどの金属錯体が例示される。
高分子系発光材料の例としては、ポリ(1,4−フェニレン)、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニレン]ジブロマイド、ポリ(1,4−フェニレンビニレン)、ポリ[2−(2´−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)]、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン),ポリスピロ、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(ジフェニルアセチレン)、ポリ(N−エチル−2−ビニルカルバゾールが挙げられる。
ホスト材料の例としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、4,4´−N,N´−ジカルバゾルビフェニル、4,4´−ビス(2,2´−ビフェニルビニル)ビフェニルが挙げられる。
発光層は、材料の性質に応じて、蒸着法、塗布法等の公知の方法により形成され、単一の発光材料を含んでいても良く、2種以上の発光材料を含んでいても良い。また、2層以上の発光層が設けられても良い。スピンコート法、キャスティング法、スクリーン印刷法等などの塗布法では、高分子材料を有機溶媒に溶解させた溶液、或いは、低分子材料をバインダーとともに有機溶媒に溶解させた溶液が用いられ、正孔輸送層の説明において例示した有機溶媒及びバインダーを使用することができる。発光層の厚みは、材料にもよるが、一般には5〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲である。膜厚が5nm以下であると、ピンホールの発生が懸念され、膜厚が1000nm以上であると、素子の内部抵抗が大きくなって発光効率が低下する場合がある。
本発明の有機EL素子では、発光層の上に、必要に応じて電子輸送層が設けられても良い。電子輸送層は、陰極から注入された電子の発光層への輸送効率を向上させる役割を果たし、高い電子移動度を有すると共に、陽極側から注入される電子を流しにくい有機材料が使用される。本発明では、公知の電子輸送性材料を電子輸送層のために特に限定なく使用することができる。例としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体の他、トリス(8−キノリナト)アルミニウムのような有機金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が挙げられる。電子輸送性材料のうち、HOMOのエネルギーレベルが低く(イオン化ポテンシャルが大きく)、励起三重項準位が高い材料を、発光層に接する正孔ブロック層とすることができる。正孔ブロック層は、陰極側から移動してくる電子を発光層に輸送するとともに、発光層から移動してくる正孔が陰極側に到達するのを阻止して正孔と電子の再結合確率を上昇させ、生成した励起子を発光層に閉じ込める役割を果たす。正孔ブロック層を構成する材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核錯体、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンが例示される。
電子輸送層及び正孔ブロック層は、材料の性質に応じて、蒸着法、塗布法等の公知の方法により設けることができ、単一の輸送材料を含んでいても良く、2種以上の輸送材料を含んでいても良い。スピンコート法、キャスティング法、スクリーン印刷法等などの塗布法では、高分子材料を有機溶媒に溶解させた溶液、或いは、低分子材料をバインダーとともに有機溶媒に溶解させた溶液が用いられ、正孔輸送層の説明において例示した有機溶媒及びバインダーを使用することができる。電子輸送層及び正孔ブロック層の厚みは、材料にもよるが、一般には5〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲である。膜厚が5nm以下であると、ピンホールの発生が懸念され、膜厚が1000nm以上であると、素子の内部抵抗が大きくなって発光効率が低下する場合がある。
発光層の上に、又は存在する場合には電子輸送層或いは正孔ブロック層の上に、発光層に電子を注入する陰極が設けられる。陰極としては、電子を発光層に効率良く注入するために、小さい仕事関数、好ましくは3.8eV以下の仕事関数を有する導電層が使用される。例えば、リチウム、セシウム、アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−カルシウム合金、カルシウム、マグネシウム、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、バリウム、インジウムなどの金属層又は合金層を陰極とすることができる。金属層又は合金層は、単層であっても良く、異なる仕事関数を有する複数の層であっても良い。これらの陰極は、材料の性質に応じて、蒸着法、スパッタリング法、塗布法等の公知の方法により形成することができる。陰極の膜厚には、厳密な制限がないが、一般に5〜20μm、好ましくは10〜500nmの範囲である。膜厚が5nm以下であると、陰極の強度及び導電性が不十分な場合がある。
発光層又は存在する場合には電子輸送層或いは正孔ブロック層と、陰極との間に、必要に応じて電子注入層が設けられても良い。電子注入層は、電子注入効率を向上させる役割を果たす。電子注入層用の材料としては、周期律表の1族及び2族に属する金属及びその酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩などが挙げられる。特に、蒸着法により形成された0.5〜1.0nmの厚みを有するLiF、CsF等の周期律表の1族及び2族の金属のフッ化物が好適に用いられる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
(A)正孔注入層の製造及び評価
正孔注入層A
ガラス容器に蒸留水50mLを導入し、この液にEDOTを0.1g(濃度0.014M)添加し、25℃で60分間攪拌し、EDOTの全量が水に溶解した液を得た。この液に、p−ニトロフェノール0.7g(濃度0.1M)、及び、ボロジサリチル酸アンモニウム1.08g(濃度0.08M)を、この順番で添加し、均一に攪拌し、EDOT、p−ニトロフェノール、及びボロジサリチル酸アンモニウムが水に溶解した重合液を得た。
得られた重合液に、作用極としての1cmの面積を有し且つ150nmの膜厚を有するITO層を備えたITO電極、対極としての4cmの面積を有するPtメッシュ、参照極としての銀−塩化銀電極を導入し、電流密度0.025mA/cmの条件下で240秒間(通電電荷量6mC/cm)、定電流電解重合を行った。電解重合後の作用極を蒸留水、メタノールで洗浄し、160℃で30分乾燥して、PEDOTとドーパントとしてのボロジサリチル酸イオンとを含む正孔注入層Aを形成した。
正孔注入層B
電流密度0.025mA/cmの条件での240秒間の定電流電解重合の代わりに、電流密度0.025mA/cmの条件で480秒間(通電電荷量12mC/cm)、定電流電解重合を行った点を除いて、正孔注入層Aの製造手順と同様の手順を繰り返し、陽極としてのITO層上に、PEDOTとドーパントとしてのボロジサリチル酸イオンとを含む正孔注入層Bを形成した。
正孔注入層C
電流密度0.025mA/cmの条件での240秒間の定電流電解重合の代わりに、電流密度0.1mA/cmの条件で180秒間(通電電荷量18mC/cm)、定電流電解重合を行った点を除いて、正孔注入層Aの製造手順と同様の手順を繰り返し、陽極としてのITO層上に、PEDOTとドーパントとしてのボロジサリチル酸イオンとを含む正孔注入層Cを形成した。
正孔注入層D
1cmの面積を有するITO電極上に、市販のPEDOT:PSS水性分散液(商品名バイトロンP:スタルク社製)の200μLをキャストし、4000rpmの回転数で30秒間スピンコートを行った。次いで、160℃で30分間乾燥し、陽極としてのITO層上に、PEDOT:PSSから成る正孔注入層Dを形成した。
図2に、正孔注入層A〜Dについての原子間力顕微鏡による測定結果を示す。また、表1に、正孔注入層A〜Dについての、ケルビン法にて測定した仕事関数、膜厚及びRMSの値を示す。RMSの値は、原子間力顕微鏡にて導電性ポリマー層表面の中央部(面積:10×10μm)を観察することにより算出した。また、導電性ポリマー層の膜厚は、以下の方法により算出した。まず、ITO上に0.1mA/cmの条件で定電流電解重合を1分間行うことにより導電性ポリマー層を形成し、原子間力顕微鏡によりポリマー層の膜厚を測定する実験と、ITO上に0.1mA/cmの条件で定電流電解重合を28.6分間行うことにより導電性ポリマー層を形成し、段差計によりポリマー層の厚みを測定する実験とを行った。次いで、この2つの実験から通電電荷量と導電性ポリマー層の膜厚との関係式を導出した。そして、導出した関係式を用いて電解重合の通電電荷量から導電性ポリマー層の膜厚を算出した。なお、陽極としてのITO層の仕事関数は、4.8eVであった。
PEDOTとドーパントとしてのボロジサリチル酸イオンとを含む正孔注入層A〜Cでは、膜厚が増加するにつれてRMSが増加し、正孔注入層Cは10nmを超えるRMS値を示した。図2を参照すると、膜厚が増加するにつれて正孔注入層の表面に伏皿状の形状の凸部が多く形成されたことがわかる。これに対し、PEDOT:PSSから成る正孔注入層DのRMS値は小さく全体的に平坦な表面が形成されていたが、PEDOT:PSSの塊と思われる凸部が部分的に存在していた。
また、正孔注入層A〜Cは、正孔注入層Dよりわずかに小さい仕事関数を有しており、PEDOT層の厚みによる影響は認められなかった。これらの正孔注入層をより低いHOMOレベル(より大きなイオン化ポテンシャル)を有する発光層と組み合わせることにより、有機EL素子を作成した。
(B)有機EL素子の製造及び評価
実施例1
0.04gのポリ[2−メトキシ−5−(3−エチルへキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)を10mLのクロロホルムに溶解した。得られた溶液200μLを正孔注入層A上にキャストし、2000rpmの回転数で20秒間スピンコートを行った。60℃で1h真空乾燥したところ、約80nmの厚さのMEH−PPV層が得られた。この上にGa−In共晶混合物を200μmの厚さで塗布し、さらに100nmの厚さのAlスパッタガラスを貼り付け、有機EL素子を10個作成した。得られた素子に6Vの電圧を印加し、発光が認められた有機EL素子の個数を調べた。
実施例2
正孔注入層Aの代わりに正孔注入層Bを用いて、実施例1の手順を繰り返した。
比較例1
正孔注入層Aの代わりに正孔注入層Cを用いて、実施例1の手順を繰り返した。
以下の表2に、実施例1、実施例2及び比較例1の有機EL素子の発光個数を示す。また、図3には、分光光度計を用いて測定した実施例1の有機EL素子についてのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。
図3に示した実施例1の有機EL素子のエレクトロルミネッセンススペクトルは、これまでの文献に示されているMEH−PPV層のエレクトロルミネッセンススペクトルと一致していた。正孔注入層に特有の吸収による発光スペクトルの変化は認められず、透明な正孔注入層が形成されていることがわかった。
実施例1の有機EL素子は全数が発光し、実施例2の有機EL素子も10個中8個において良好な発光が認められた。これに対し、RMS値が10nmを超える正孔注入層Cを有する比較例1の有機EL素子では、10個中わずかに1個に発光が認められたに過ぎなかった。この結果は、正孔注入層の表面の凹凸により正孔注入層と発光層との密着性が不均一になったこと、正孔注入層の表面の凹凸により発光層にダメージが与えられたこと、を反映したものであると考えられる。
本発明の有機EL素子は、安定な発光性能を示すため、フラットパネルディスプレイや照明に好適に応用することができる。
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 正孔注入層
4s 表面
4t 膜厚
5 発光層
6 陰極

Claims (7)

  1. 基板の表面に設けられた陽極と、陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に設けられた発光層と、
    前記陽極と前記発光層との間に設けられ、前記陽極と接している正孔注入層と、
    を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記正孔注入層が、
    3位と4位に置換基を有するチオフェンから成る群から選択された少なくとも一種のモノマーから構成されたポリマーと、
    該ポリマーに対するドーパントとしての、非スルホン酸系有機化合物であって該化合物のアニオンの分子量が200以上である少なくとも一種の化合物から発生したアニオンと、
    を含む導電性ポリマー層から成り、
    該導電性ポリマー層が10nm以上の膜厚を有し、
    前記導電性ポリマー層の前記発光層に対向する表面の自乗平均面粗さが2〜10nmの範囲であり且つ前記導電性ポリマー層の膜厚の30%以下の値であり、
    前記非スルホン酸系有機化合物がボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物である
    ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記導電性ポリマー層の膜厚が100nm以下である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記モノマーが3,4−エチレンジオキシチオフェンである、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 基板の表面に設けられた陽極と、陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に設けられた発光層と、
    前記陽極と前記発光層との間に設けられ、前記陽極と接している正孔注入層と、
    を含み、
    前記正孔注入層が、
    3位と4位に置換基を有するチオフェンから成る群から選択された少なくとも一種のモノマーから構成されたポリマーと、
    該ポリマーに対するドーパントとしての、非スルホン酸系有機化合物であって該化合物のアニオンの分子量が200以上である少なくとも一種の化合物から発生したアニオンと、
    を含む導電性ポリマー層から成り、
    該導電性ポリマー層が10nm以上の膜厚を有し、
    前記導電性ポリマー層の前記発光層に対向する表面の自乗平均面粗さが2〜10nmの範囲であり且つ前記導電性ポリマー層の膜厚の30%以下の値である
    有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    前記正孔注入層を、100〜80質量%の水と0〜20質量%の有機溶媒とから成る溶媒と、前記モノマーと、前記非スルホン酸系有機化合物と、を含む重合液に、前記陽極を表面に有する前記基板を導入し、電解重合を1.5mC/cm以上18mC/cm未満の通電電荷量の条件下で行うことによって形成する工程
    を含むことを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  5. 前記重合液における溶媒が水である、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  6. 前記重合液に含まれる非スルホン酸系有機化合物が、ボロジサリチル酸及びボロジサリチル酸塩から成る群から選択された少なくとも一種の化合物である、請求項4又は5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  7. 前記重合液がニトロベンゼン及びニトロベンゼン誘導体から成る群から選択された少なくとも一種の安定化剤をさらに含む、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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