JP6152628B2 - 生体用電極及びイオントフォレシス装置 - Google Patents

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Description

本発明は、生体用電極及びイオントフォレシス装置に関する。
イオントフォレシス(IONTOPHORESIS)は、電気エネルギーを利用して、主にイオン性薬剤の、人体の皮膚その他の生体膜への透過を促進させる方法であり、例えば、薬剤の経皮吸収の促進を目的に利用されている。具体的には、一対の電極が電気的に接続されたシートを、イオン性薬剤を介して皮膚に貼り合わせ、電極間に微細電流を流して、電荷を持つイオン性薬剤を皮膚中に浸透させる技術である。
近年、このような技術を用いたイオントフォレシス装置としては、需要の増大とともに、低コストのものが開発されつつあり、電源ユニット等を再利用しつつ、コストを抑制するものも登場してきている。
例えば、コストを抑制したイオントフォレシス装置としては、生体用電極に電流又は電圧を印加する電源ユニットとの接続を容易にすることが可能な生体用電極構造を用いているものが知られている。具体的には、この生体用電極は、基材に設けられた電極層上に、絶縁層を積層するとともに薬剤を貯蔵するためのくぼみが形成されたバッキングを備え、信号電極と切り離し可能な構造を有している(例えば、特許文献1)。
特開2000−316991号公報
上述の特許文献1等に記載されたイオントフォレシス装置にあっては、さらに製造コストを削減するためには、生体用電極を形成する電極材料の使用量を抑制する必要がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、生体用電極を薄膜化することによって生体用電極を形成する電極材料の使用量を抑制してコストの低減を実現しつつ、生体用電極の機能を十分に発揮させることが可能な生体用電極及びそれを用いたイオントフォレシス装置を提供することにある。
(1)上記課題を解決するための本発明に係る生体用電極は、 薬剤を介して生体面に接触され、電源ユニットから信号が供給される生体用電極であって、フレキシブル基材と、前記フレキシブル基材に設けられた金属電極と、前記金属電極が設けられた前記基材の同一面に設けられた金属塩化物電極と、前記フレキシブル基材に形成され、前記電源ユニットが接続される接続部分と前記金属電極とを電気的に接続するために設けられた配線部と、を備え、前記金属電極の厚さが1.6μm以下(0を含まず)であり、前記金属電極に、前記配線部との接合部分から連続的に形成された通電経路が形成されている。
この発明によれば、金属電極の厚さが1.6μm以下(0を含まず)の場合に、金属電極の内部及び周縁部の少なくともいずれか一方に、配線部との接合部分から連続的に形成され、かつ、生体面との接触から保護された通電経路が形成されるので、薬剤や生体面からの影響を受けることなく、薄膜化された金属電極において配線部と電気的に直接接合可能な金属電極の領域を増加させることができるとともに、効率的に金属電極を通電させことができる。
一般的に、イオントフォレシス装置に用いる金属電極においては、通電されると、主に薬剤や生体面と接触している表面で電極反応が生じ、当該電極反応を利用して薬剤を生体面に浸透させることができる。その一方で、当該電極反応が生じた電極領域は、高抵抗化し、その結果、高抵抗化した領域は電極反応が生じなくなる。したがって、金属電極を効率よく使用し、生体用電極の寿命を最大限にするためには、金属電極の全ての表面領域で電極反応を生じさせることが必要である。また、一般的に、金属電極は、配線部との接合部分又はその近傍等の電源ユニットに物理的に近接する抵抗値が低い領域から電極反応が生じるとともに、その表面から所定の深さまでの一定領域で電極反応が生じる。
このため、金属電極が薄膜化された場合には、高抵抗化された金属電極の電極部分においては、その表面下に、電極反応の影響を受けずに、高抵抗化しない通電経路の役割を果たす領域(層)を確保することができず、表面から底面(例えば基材)までの深さ方向のすべての領域が高抵抗化する。したがって、金属電極で電極反応が生じると、電極反応が生じた表面が属する電極部分を介して他の金属電極部分に通電を行うことができず、すなわち、当該電極部分で通電経路を形成することができず、例えば、配線部との接合部分から遠い電極部分等に通電することが難しくなる。その結果、高抵抗化していない電極部分があっても、金属電極としての電極反応が終了し、生体用電極の寿命が短くなってしまう。
本発明に係る生体用電極は、薄膜化した金属電極の各領域に通電するための通電経路を形成することができるので、金属電極の各領域に多角的にかつ効率的に通電を行うことができる。
したがって、本発明に係る生体用電極は、金属電極を薄膜化することによってその電極材料の使用量を抑制しても、当該金属電極の全ての領域で電極反応を生じさせることができるので、コストの低減を図りつつ、金属電極の面積に応じて想定される生体用電極の寿命を確保し、生体用電極としての機能を十分に発揮させることができる。
(2)また、本発明に係る生体用電極は、前記通電経路が、前記金属電極の外周に沿って前記配線部との接合部分から連続的に形成されている。
この発明によれば、通電経路が、金属電極の外周に沿って配線部との接合部分から連続的に形成されているので、通電に伴って電極反応によって薄膜化した金属電極の各領域に通電するための通電経路を形成することができる。その結果、金属電極の各領域に多角的に通電を行うことができるとともに、金属電極を効率よく反応させることができる。
(3)また、本発明に係る生体用電極は、前記通電経路が、前記配線部との接合部分から前記金属電極の内部に向かって連続的に形成されている。
この発明によれば、前記通電経路が、前記配線部との接合部分から前記金属電極の内部に向かって連続的に形成されているので、通電に伴って電極反応によって薄膜化した金属電極の各領域に通電するための通電経路を形成することができる。その結果、金属電極の各領域に多角的に通電を行うことができるとともに、金属電極を効率よく反応させることができる。
(4)また、本発明に係る生体用電極は、前記通電経路が、前記金属電極を形成する形状の重心を通り、かつ、前記配線部との接合部分から内部に向かって連続的に形成されている。
この発明によれば、前記通電経路が、前記配線部との接合部分から前記金属電極の内部に向かって連続的に形成されているので、通電に伴って電極反応によって薄膜化した金属電極の各領域に通電するための通電経路を形成することができる。その結果、金属電極のすべての領域に通電を行うことができるとともに、金属電極を効率よく反応させることができる。
(5)また、本発明に係る生体用電極は、前記通電経路が、前記金属電極上に絶縁層を被覆することによって当該金属電極を用いて形成されている。
この発明によれば、前記通電経路が、前記金属電極上に絶縁層を被覆することによって当該金属電極を用いて形成されているので、金属電極の一部を通電経路に利用することができる。その結果、通電経路を簡易に形成することができるので、製造コストを抑制することができるとともに、結果としてコストの低減を実現することができる。
(6)また、本発明に係る生体用電極は、前記通電経路が、前記金属電極上に形成された、又は、当該金属電極に電気的に接触して形成された耐腐食性の導電性材料によって形成されている。
この発明によれば、前記通電経路が、前記金属電極上に形成された、又は、当該金属電極に電気的に接触して形成された耐腐食性の導電性材料によって形成されているので、通電経路の面積を少なくすることができる。その結果、金属電極の周縁部や内部等金属電極の形状に制約されることなく簡易にかつ自由に形成することができるとともに、電極反応させる領域を無駄にすることなく、結果的にコストの低減を実現することができる。
(7)上記課題を解決するための本発明に係るイオントフォレシス装置は、上記の生体用電極を有する。
この発明によれば、金属電極の厚さが1.6μm以下(0を含まず)の場合に、金属電極の内部及び周縁部の少なくともいずれか一方に、配線部との接合部分から連続的に形成され、かつ、薬剤に対して耐腐食性の材料を用いて形成された通電経路を形成することができるので、薄膜化された金属電極において配線部と電気的に直接接合可能な金属電極の領域を増加させることができる。
したがって、本発明に係るイオントフォレシス装置は、金属電極を薄膜化することによってその電極材料の使用量を抑制しても、金属電極の面積に応じて想定される通電時間を確保することができるので、コストの低減を図りつつ、生体用電極としての機能を十分に発揮させることができる。
本発明に係る生体用電極及びイオントフォレシス装置は、金属電極を薄膜化することによってその電極材料の使用量を抑制しても、当該金属電極の全ての領域において電極反応を生じさせることができるので、コストの低減を図りつつ、金属電極の面積に応じて想定される生体用電極の寿命を確保し、生体用電極としての機能を十分に発揮させることができる。
本発明に係るイオントフォレシス装置の全体構成の説明図である。 本発明に係るイオントフォレシス装置を構成する生体用電極の一例を示す模式的な平面図(その1)である。 本発明に係るイオントフォレシス装置を構成する生体用電極の一例を示す模式的な平面図(その2)である。 本実施形態のイオントフォレシス装置の一例を示す模式的な構成図である。 本実施形態のイオントフォレシス装置の他の一例(その1)を示す模式的な構成図である。 本実施形態のイオントフォレシス装置の他の一例(その2)を示す模式的な構成図である。 各実施例及び比較例の実験に用いたシステムの概略構成図である。 実施例1の出力電流又は出力電圧と電流保持特性の経時変化を示すグラフである。 比較例1の出力電流又は出力電圧と電流保持特性の経時変化を示すグラフである。 比較例1における実験前と実験後の銀電極の状態を示す図である。 比較例2における出力電流又は出力電圧と電流保持特性の経時変化を示すグラフである。 実施例1及び比較例2における実験前と実験後の銀電極の状態を示す図である。 各実施例及び各比較例に基づく通電経路の効果と銀電極の膜厚との関係を示すグラフである。
本発明に係る生体用電極及びイオントフォレシス装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、その技術的思想を含む範囲内で以下の形態に限定されない。
[生体用電極]
まず、図1〜図3の各図を用いて本発明に係る生体用電極1について説明する。なお、図1は、本実施形態のイオントフォレシス装置31の全体構成の説明図であり、図2は、本実施形態のイオントフォレシス装置31を構成する生体用電極1の一例を示す模式的な平面図(その1)である。また、図3は、本実施形態のイオントフォレシス装置31を構成する生体用電極1の一例を示す模式的な平面図(その2)である。
本実施形態の生体用電極1は、図1に示すように、イオントフォレシス装置の電極として好ましく用いられるとともに、薬剤4を介して生体面(図示せず)に接触され、電源ユニット39から電流また電圧が供給される生体用の電極である。具体的には、生体用電極1は、図1〜図3の各図に示すように、フレキシブル基材2と、当該フレキシブル基材2上に設けられた金属電極11と、金属電極11が設けられたフレキシブル基材2の同一面に隣接して設けられた金属塩化物電極21と、フレキシブル基材2上に形成され、電源ユニット39が接続される接続端子部12及び22と金属電極11とを電気的に接続するために設けられた配線部17と、を備えている。
また、生体用電極1においては、金属電極11の厚さが1.6μm以下(0を含まず)であり、金属電極11の内部及び周縁部の少なくともいずれか一方に、配線部17との接合部分から連続的に形成され、かつ、生体面との接触から保護された通電経路50が形成されている。特に、通電経路50は、金属電極11の生体面との接触表面上(金属電極11側)に形成されていてよいし、当該接触表面下(生体面とフレキシブル基材2との間)に生体と非接触となるように形成されていてもよい。
このように、本実施形態の生体用電極1は、金属電極11の厚さを1.6μm以下と薄膜化したので、金属電極材料の使用量を必要最小限に抑えることができるので、コスト低減を図ることができるとともに、使い捨て型の生体用電極として用いることができるようになっている。
また、生体用電極1は、薄膜化された金属電極11において、薬剤4や生体面(図示せず)の影響を受けることなく、配線部17と電気的に直接に接合可能な金属電極11の領域を増加させることができるので、効率的な通電を行うことができるようになっている。
一般的に、イオントフォレシス装置に用いる金属電極においては、通電されると、その表面部分から電極反応が生じ、当該電極反応を利用して薬剤4を生体面に浸透させることができる。その一方で、当該電極反応が生じた電極領域は、高抵抗化し、その結果、高抵抗化した領域は電極反応が生じなくなる。したがって、金属電極を効率よく使用し、生体用電極の寿命を最大限にするためには、金属電極の全ての表面領域で電極反応を生じさせることが必要である。また、一般的に、金属電極は、配線部との接合部分又はその近傍等の電源ユニットに物理的に近接する抵抗値が低い領域から電極反応が生じるとともに、その表面から所定の深さまでの一定領域で電極反応が生じる。
このため、金属電極が薄膜化された場合には、高抵抗化された金属電極の電極部分においては、生体面との接触表面下に、電極反応の影響を受けずに、高抵抗化しない通電経路の役割を果たす領域(層)を確保することができず、表面から底面(例えばフレキシブル基材)までの深さ方向のすべての領域が高抵抗化する。したがって、金属電極で電極反応が生じると、電極反応が生じた表面が属する電極部分を介して他の金属電極部分に通電を行うことができず、すなわち、当該電極部分で通電経路を形成することができず、例えば、配線部との接合部分から遠い電極部分等に通電することが難しくなる。その結果、高抵抗化していない電極部分があっても、金属電極としての電極反応が終了し、生体用電極の寿命が短くなってしまう。
そこで、本実施形態の生体用電極1は、薄膜化した金属電極11の各領域に通電するための通電経路を形成し、通電するための経路を多角的に確保することができるので、金属電極11のすべての領域に効率的に通電を行うことができるようになっている。そして、生体用電極1は、金属電極11を薄膜化することによってその電極材料の使用量を抑制しても、当該金属電極11の全ての領域において電極反応を生じさせることができるので、コストの低減を図りつつ、金属電極11の面積に応じて想定される生体用電極の寿命を確保し、生体用電極としての機能を十分に発揮させることができるようになっている。
本願明細書において、「上に」とは、そのものの上に直に又は他の層を介して設けられていることを意味し、「直上に」とは、そのものの上に直接設けられている場合を意味する。また、「覆う」とは、そのものの上に設けられるとともに、そのものの周りにも設けられていることを意味する。さらに、「隣接」とは、物理的に隣り合っていればよく、対象物同士が直接的に接しているだけでなく、対象物間に間隙又は他の物を介して接していることも含まれる。
また、本願明細書において、「生体面」とは、肌面の他に、人体の各部位又は内臓を含め生体組織によって形成される面を意味する。
さらに、本願明細書において、「金属電極の内部」とは、金属電極が生体面と接触する接触面内(表面領域内)の他に、接触面下に形成される金属電極の外部と接していない部分を意味する。
なお、本発明の生体用電極の各構成要素の詳細については後述する。また、生体用電極1を備えたイオントフォレシス装置31は後述する「イオントフォレシス装置」の説明欄で詳しく説明する。
(フレキシブル基材)
フレキシブル基材2は、フレキシブルである絶縁性の基材であれば特に限定されず、プラスチックフィルムや紙等を用いることができる。フレキシブル基材2を用いることにより、人や動物の体の表面形態に追従した態様で生体用電極1を貼り付けることができる。プラスチックフィルムの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂フィルムを好ましく挙げることができる。ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン系の合成紙等が好ましく挙げることができる。なお、ポリプロピレン系合成紙は、ポリプロピレンを主原料とするフィルム合成紙であり、例えばユポ(登録商標)を挙げることができる。
プラスチックフィルム以外のフレキシブル基材2としては、アート紙、不織布及びシリコンゴム等を挙げることができる。なお、不織布等のような隙間の空いている薄い紙は、目詰め材等で隙間を埋めて用いることが好ましい。
フレキシブル基材2の厚さは、その材質によっても異なり、一概には言えないが、プラスチックフィルムの場合は、通常、3μm以上200μm以下のものを好ましく用いることができる。また、ユポ(登録商標)、アート紙、不織布等では、10μm以上2000μm以下のものを好ましく用いることができる。本発明で用いるフレキシブル基材2の厚さは薄いが、後述する金属電極等を形成した後であっても変形が生じにくいという利点がある。その理由は、例えば、金属電極11を金属ナノ粒子で形成する場合に、成膜時に加熱条件が厳しくなく、従来のように金属材料と樹脂バインダーとを含む導電性材料で金属電極を形成する場合の加熱等によってフレキシブル基材が変形しないという利点を有している。なお、フレキシブル基材2の形状は、所定の大きさの枚葉形状であってもよいし、ロール状に巻かれた長尺のシート形状であってもよい。
(金属電極)
金属電極11は、金属塩化物電極21よりも薄い厚さを有し、フレキシブル基材2上に設けられる。具体的には、金属電極11は、厚さ1.6μm以下の範囲内でフレキシブル基材2上に設けられる。金属電極11の構成材料としては、銀、金、銅、パラジウム、ロジウム、又はそれらの合金を挙げることができる。特に好ましくは、銀からなる銀電極である。銀電極は、例えば塩化物イオンを含む薬剤4に接触した場合であっても安定した電極特性を有するとともに、金属塩化物電極21として銀−塩化銀電極を用いた場合に、その銀−塩化銀電極に対応する電極として好ましい。銀電極と銀−塩化銀電極とで構成された生体用電極1は、イオントフォレシス装置を安定した状態で実現できる。
金属電極11が金属ナノ粒子で構成されていることが好ましい。具体的には、銀電極の場合は、平均粒径は、1nm以上100nm以下の銀ナノ粒子を銀電極の構成材料として用いることが好ましい。なお、当該平均粒径は、5nm以上50nm以下がより好ましく、さらに15nm以上20nm以下が好ましい。
銀ナノ粒子は粒子径が小さいので、そのナノサイズ効果によって粒子の焼結開始温度が下がって低温での焼結が可能となる。その結果、プラスチックフィルムのような低融点基材に熱ダメージを与えることなく、低融点基材上に形成することができる。なお、「平均粒径」は、電子顕微鏡観察結果により評価することができる。
銀電極は、以下の工程によって形成される。まず、銀ナノ粒子と揮発性溶媒とからなる銀ナノ粒子含有スラリーが塗布剤として調製され、その塗布剤が、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット法、又は、ディスペンサーを用いた方法等で、フレキシブル基材2上に塗布される。そして、その後、揮発性溶媒が揮発する乾燥条件を加えることにより、上記した厚さ範囲で銀電極が形成される。
揮発性溶媒としては、極性溶媒、炭化水素系溶媒、水系溶媒、ケトン系溶媒等を挙げることができる。銀ナノ粒子含有スラリーは、通常、樹脂成分は含まない。フレキソ印刷やグラビア印刷は、例えば100m/分〜200m/分等のような高速印刷が可能であり、製造の効率化を図ることができる。特にインクジェット法や、ディスペンサーを用いた方法は、所定の形状を任意に塗布形成できるという利点があり、本発明では金属電極11と金属塩化物電極21とをインクジェット法で塗布形成する方法が好ましい。
乾燥条件は、塗布剤に配合する揮発性溶媒の種類によって任意に調整可能である。ただし、通常、120℃で数秒間程度の乾燥により、揮発性溶媒を除去して、銀ナノ粒子が焼結されてなる銀電極を形成することができる。
こうした乾燥条件に基づく銀電極の形成は、フレキシブル基材2に対する熱負荷を低減しているので、薄いフレキシブル基材2に「しわ」や「歪み」を生じさせることがない。また、本実施形態の銀電極は、従来のような樹脂バインダーを含む材料によって形成されるものではなく、樹脂バインダーを含まないので、従来の銀電極の抵抗値よりも低くなるという利点を有している。
金属電極11の平面視形状は、例えば、図2に示すように、四角形等の角形、又は、円形や楕円形であってもよいし、それらが組み合わされた形状であってもよい。また、図2に示すような一様なベタ状であってもよいし、図3に示すような種々の形態であってもよい。
また、薬剤4の保持性は、金属電極11の形成方法によっても実現可能である。例えば、金属電極11の形成方法として、フレキソ印刷を適用した場合には、印刷版で塗布剤を印刷した後にフレキシブル基材面から当該印刷版を剥がすことによって、印刷された金属電極11の表面に平坦ではない凹凸を形成させることができるので、その状態で金属電極11を乾燥させた場合には、当該金属電極11は、その凹凸で薬剤ジェルを効果的に保持させることができる。また、インクジェット法や、ディスペンサーを用いた方法で銀電極を形成する場合にも、乾燥後に得られた金属電極11の表面に凹凸を形成することができるので、金属電極11は、その凹凸で薬剤4を効果的に保持させることができる。
なお、フレキシブル基材2上に、蒸着やコーティングによって形成される接着層を設けて、金属電極11とフレキシブル基材2との密着性を向上させてもよい。この接着層に用いる材料としては、特に制限はなく、例えば、アクリル酸系アミド誘導体、ポリα−オレフィン系重合体、ランダムコポリエステル等のポリエステル系材料、シランカップリング剤等のシリコン系材料、及び、ポリマーブレンド体を用いることができる。また、このような材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
金属電極11は、図1〜図3に示すように、配線6及び配線部17を介して電源ユニット39が接続される接続端子部12に接続されている。すなわち、金属電極11は、配線6及び配線部17を介して電源ユニット39と電気的に接続されている。
なお、接続端子部12は、図2に示すように、電源ユニット39と接続容易に、その中央に形成された穴を有している。そして、接続端子部12は、図5及び図6のイオントフォレシス装置31に示すように、当該穴と電極接続治具36を用いて、フレキシブル基材2の裏面に設けられた電極端子接続部34と、電極端子33を介して容易に接続することができるように構成されている。
また、金属電極11には、金属電極11の内部及び周縁部の少なくともいずれか一方に、配線部17との接合部分から連続的に形成され、かつ、生体面との接触から保護された通電経路50が形成されている。
具体的には、通電経路50は、図2及び図3に示すように、金属電極11の表面に絶縁層51を被覆することによって当該金属電極11を用いて形成されている。すなわち、通電経路50は、金属電極11の一部を利用して形成されている。そして、通電経路50となる金属電極部分は、薬剤4や生体面から保護され、通電されても電極反応が生じないようになっている。例えば、絶縁層51としては、熱硬化型絶縁層、UV硬化型絶縁層、PETシール、紙シール、レジスト等の絶縁性を有する材料から形成されているとともに、配線部17に形成された絶縁層16と一体的に形成されている。また、通電経路50の幅としては、0.5mm〜5.0mmが好ましく、一例としては、1.0mmが好ましい。さらに、通電経路50の合計面積としては、金属電極11の面積の10%以下が好ましい。
このように、通電経路50は、金属電極11の一部を利用して形成することができるので、当該通電経路50を簡易に形成することができるようになっている。
また、通電経路50は、金属電極11上に形成された、又は、当該金属電極11に電気的に接触して形成された導電性を有するカーボン(例えばグラファイト)等の耐腐食性を有する導電性材料によって形成されていてもよい。この場合には、上記の絶縁層51と同様に、金属電極11上の通電経路50を形成する位置に導電性材料を積層してもよいし、当該位置に導電性材料によって形成されたパターンを貼り合わせてもよい。また、金属電極11の周縁に接するように導電性材料を積層してもよいし、当該位置に導電性材料によって形成されたパターンを貼り合わせてもよい。
このように、導電性を有する耐腐食性の導電性材料によって形成された場合には、絶縁層51を形成する場合に比べてフレキシブルに通電経路50を形成することができるので、金属電極11の周縁部や内部等金属電極11の形状に制約されることなく簡易にかつ自由に形成することができる。
さらに、通電経路50は、図2及び図3に示すように、金属電極11の内部及び周縁部の少なくともいずれか一方に、配線部17との接合部分から連続的に形成されている。通電経路50の経路パターンは、特に限定されず、金属電極11の各領域において、通電経路50からの距離に著しく差が生じないように形成されていればよい。
ただし、通電経路50が、図2及び図3に示すように、金属電極11の外周に沿って配線部17との接合部分から連続的に形成されていること、金属電極11を形成する形状の重心を通るように形成されていること、又は、当該接合部分から放射状に複数の通電経路50が形成されていることが好ましい。また、通電経路50は、このような形状のうち、1種単独の形状によって形成されてもよいし、2種以上の形状を組み合わせて形成されていてもよい。
このように、本実施形態においては、金属電極11を薄膜化することができるので、使い捨て型の生体用電極1を構成する金属電極材料の使用量を必要最小限に抑えることができる。したがって、生体用電極1におけるコストの低減を図ることができるとともに、特に、材料単価が高い銀、金、パラジウム等の金属を金属電極に用いた場合には、その効果が大きい。
また、金属電極11の各領域に通電するための通電経路50を設けた構成を有し、金属電極11の各領域に多角的にかつ効率的に通電を行うことができるとともに、当該金属電極11の全ての領域において電極反応を生じさせることができるので、コストの低減を図りつつ、金属電極11の面積に応じて想定される生体用電極1の寿命を確保し、生体用電極としての機能を十分に発揮させることができる。
(金属塩化物電極)
金属塩化物電極21は、金属電極11よりも厚い形状を有し、金属電極11と同様に、フレキシブル基材2上に設けられる。具体的には、金属塩化物電極21は、厚さ5μm以上20μm以下の範囲内で、金属電極11が設けられたフレキシブル基材2の同一面Sに隣接して設けられる。
金属塩化物電極21の構成材料としては、銀−塩化銀電極を好ましく挙げることができる。銀−塩化銀電極は、例えば塩化物イオンを含む薬剤4に接触した場合であっても安定した電極電位特性を示すことができる。また、銀−塩化銀電極は、金属電極11として銀電極を用いた場合に、その銀電極に対応する電極として好ましい。そして、銀電極と銀−塩化銀電極とで構成された生体用電極1は、イオントフォレシス装置31を安定した状態で実現できる。
生体用電極1を銀−塩化銀電極と銀電極とで構成し、薬剤4を設けてイオントフォレシス装置31とし、0.1mA/cm以上10mA/cm以下の範囲、好ましくは0.2mA/cm以上2mA/cm以下の範囲の電流を印加した場合には、銀−塩化銀電極の厚さは5μm以上20μm以下の範囲であるので、銀電極の場合に比べて十分に許容できる量の電極材料を有しており、問題はない。
金属塩化物電極21は、金属粒子と樹脂バインダーとで構成されていることが好ましい。具体的には、銀−塩化銀電極の場合には、平均粒径が0.1μm以上30μm以下の塩化銀粒子と、樹脂バインダーとを銀−塩化銀電極の構成材料として用いることが好ましい。このとき、樹脂バインダーとしては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリウレタン、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。また、溶媒としては、人体に無害な溶媒であれば特に限定はなく、例えば、エタノール等の低級アルコールが好ましい。
銀−塩化銀電極は、以下の工程によって形成される。まず、塩化銀粒子と樹脂バインダーと溶媒とからなるスラリーが塗布剤として調製され、その塗布剤が、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、インクジェット法、又は、ディスペンサーを用いた方法で、フレキシブル基材2上に塗布される。そして、その後、加熱して溶媒を揮発させるとともに、樹脂バインダーで塩化銀を結着させることにより、上記した厚さ範囲で銀−塩化銀電極が形成される。フレキソ印刷やグラビア印刷は、例えば、100m/分〜200m/分等のような高速のパターン印刷が可能であり、製造の効率化を図ることができる。また、インクジェット法や、ディスペンサーを用いた場合には、所定の形状を任意に塗布形成できるという利点がある。なお、本実施形態において、金属電極11と金属塩化物電極21とをインクジェット法で塗布形成することが好ましい。
加熱条件は、塗布剤に配合する樹脂バインダーや溶媒の種類によって任意に調整できる。例えば、フェノール樹脂バインダーを樹脂バインダーとして用いるとともに、エタノールを溶媒として用いた場合は、125℃で25分間の加熱により、銀−塩化銀電極を形成することができる。このような条件での銀−塩化銀電極の形成は、過度の熱が加わらないので、薄いフレキシブル基材2に「しわ」や「歪み」を生じさせない。
金属塩化物電極21の平面視形状も、金属電極11の場合と同様、例えば、図2及び図3に示すように、四角形等の角形、又は、円形や楕円形であってもよいし、それらが組み合わされた形状であってもよい。また、図2に示すような一様なベタ状であってもよいし、金属電極11のところで説明したような種々の形態としてもよい。
金属塩化物電極21とフレキシブル基材2との間には、金属層を設けることが好ましい。このような金属層を設けることにより、電気信号を金属塩化物電極21に効率良く伝えることができる。なお、この金属層の金属成分は、金属塩化物電極21を構成する金属成分と同じであることが好ましく、例えば、金属塩化物電極21が銀−塩化銀電極である場合には、金属層を銀層とすることが好ましい。
また、金属電極11と同様に、フレキシブル基材2上に、蒸着やコーティングによって形成される接着層を設けて、金属電極11とフレキシブル基材2との密着性を向上させてもよい。この接着層に用いる材料としては、特に制限はなく、例えば、アクリル酸系アミド誘導体、ポリα−オレフィン系重合体、ランダムコポリエステル等のポリエステル系材料、シランカップリング剤等のシリコン系材料、及び、ポリマーブレンド体を用いることができる。また、このような材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
さらに、金属塩化物電極21は、図1〜図3に示すように、配線6及び配線部27を介して電源ユニット39が接続される接続端子部22に接続されている。すなわち、金属塩化物電極21は、配線6及び配線部27を介して電源ユニット39と電気的に接続されている。
なお、接続端子部22は、上述と同様に、接続容易にその中央に形成された穴を有している。
[イオントフォレシス装置]
本発明に係るイオントフォレシス装置31は、図1及び図4〜図6に示すように、上記した本発明に係る生体用電極1を有し、その生体用電極1を構成する金属電極11及び金属塩化物電極21を覆うように薬剤4が設けられている。イオントフォレシス装置31には、金属電極11及び金属塩化物電極21に接続する電極端子33と、電極端子33が電極端子接続部34を介して接続される電源ユニット39とが設けられている。また、電源ユニット39は、信号生成部37と電源部38とを有している。
具体的には、イオントフォレシス装置31は、生体用電極1と、その生体用電極1を取り付ける電源ユニット39とを有している。そして、その生体用電極1が有する電極端子33が、電源ユニット39が有する電極端子接続部34にフック態様で嵌め合わされることにより、生体用電極1の取り付け又は取り外しが可能になっている。
イオントフォレシス装置31は、好ましくは、図5に示すように電極端子33上に絶縁層40を備えた構成、又は、図6に示すように電極端子33以外の箇所に薬剤4を設けられた構成を有している。このような構成にすることにより、電源ユニット39に電極端子接続部34を介して接続するための電極端子33に直接薬剤4が接触しないので、接触抵抗の増加等の生体用電極1の機能低下を防止することができる。
薬剤4は、1種類又は2種類以上用いられる。特に、薬剤4としては、2種類以上用いることが好ましい。薬剤の使用形態としては、金属電極11及び金属塩化物電極21のいずれも覆うように1種類の薬剤4が設けられていてもよいし(図1及び図5参照)、金属電極11及び金属塩化物電極21のそれぞれを別に覆うように1種類の薬剤4aが設けられていてもよい(図5参照)。また、金属電極11及び金属塩化物電極21のそれぞれを別に覆うようにそれぞれ異なる薬剤4a及び4bが設けられていてもよい(図4参照)。なお、金属電極11や金属塩化物電極21に設けられる薬剤4は、1種類の薬剤からなる単一薬剤であってもよいし、2種以上の薬剤を含む複合薬剤であってもよい。本実施形態においては、このように、薬剤4を用いることによって、効率よく、薬剤を体内へ浸透させることが可能となる。
薬剤4に含まれる薬剤としては、所望の効果を生じさせるために生体器官に供給される治療上の任意の能動物質を用いることができる。具体的には、主要な治療分野における治療薬を含むものであって、特に限定するものでなく、例えば、抗生物質及び抗ウィルス薬のような抗感染薬;鎮痛剤及び鎮痛剤複合物;麻酔剤、食欲抑制剤;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗糖尿薬;下痢止め薬;抗ヒスタミン薬;抗炎症薬;抗偏頭痛製剤;アンチモーション病(antimotion sickness)製剤;抗嘔吐剤;抗腫瘍剤;抗パーキンソン剤;心臓刺激剤;止痒剤;抗精神病薬;解熱剤;胃腸用及び尿道用を含む抗痙攣薬;抗コリン作用薬;交感神経様作用薬;キサンチン誘導体;カルシウム遮断薬を含む循環器製剤;β(ベータ)遮断薬;β(ベータ)作動薬;抗不整脈薬;高血圧症薬;ACE抑制薬;利尿剤;一般血管、冠状動脈、末梢血管及び脳血管を含む血管拡張薬;中央神経興奮剤;咳及び風邪製剤;鬱血除去薬;診断薬;ホルモン;催眠剤;免疫抑制剤;筋弛緩剤;副交感神経病薬;副交感神経作用薬;プロスタグラジン;蛋白質;ペプチド;精神刺激薬;鎮静剤及び精神安定剤(トランキライザー)を含むものを用いることができる。
以上のように、本実施形態の生体用電極1は、薄膜化した金属電極11の各領域に通電するための通電経路50を形成することができるので、金属電極11の各領域に多角的にかつ効率的に通電を行うことができる。
したがって、本実施形態の生体用電極1は、金属電極11を薄膜化することによってその電極材料の使用量を抑制しても、当該金属電極11の全ての領域において電極反応を生じさせることができるので、コストの低減を図りつつ、金属電極11の面積に応じて想定される生体用電極1の寿命を確保し、生体用電極としての機能を十分に発揮させることができる。
次に、図7〜図14の各図を用いて具体的な実施例を示して本発明に係る生体用電極1についてさらに詳しく説明する。なお、図7は、各実施例及び比較例の実験に用いたシステムの概略構成図であり、図8は、実施例1の出力電流又は出力電圧と電流保持特性の経時変化を示すグラフである。また、図9は、比較例1の出力電流または出力電圧と電流保持特性の経時変化を示すグラフであり、図10は、比較例1における実験前と実験後の銀電極の状態を示す図であり、図11は、比較例2における出力電流又は出力電圧と電流保持特性の経時変化を示すグラフであり、図12は、実施例1及び比較例2における実験前と実験後の銀電極の状態を示す図である。さらに、図13は、各実施例及び各比較例に基づく通電経路50(図7参照)の効果と銀電極の膜厚との関係を示すグラフである。
(実施例1)
実施例1は、5cmの円形形状を有し、厚さが1.5μmの銀電極(金属電極11)と、同一の円形形状を有し、厚さが20μmの銀−塩化電極(金属塩化物電極21)と、を有する生体用電極1であって、銀電極の周縁部に幅約1.0mmの絶縁層を有する生体用電極1を作製した。
(実施例2)
実施例2は、実施例1において、銀電極の厚さを1.0μmとした生体用電極1であり、それ以外の構成及び形状は、実施例1と同一である。
(比較例1)
比較例1は、実施例1において、銀電極の厚さを3.0μmとした生体用電極1であって、通電経路が形成されていない生体用電極1であり、それ以外の構成及び形状は、実施例1と同一のである。
(比較例2)
比較例2は、実施例1において、銀電極に通電経路が形成されていない生体用電極1であり、それ以外の構成及び形状は、実施例1と同一である。
(比較例3)
比較例3は、実施例2において銀電極に通電経路が形成されていない生体用電極1であり、それ以外の構成及び形状は、実施例1と同一である。
(評価)
実施例1及び2と比較例1〜3の各生体用電極1の銀電極の厚さに対する電流保持特性を測定した。この電流保持特性は、図7に示すように、0.9%の生理食塩水中に銀電極及び銀−塩化銀電極を浸し、電源端子部から1mAの電流を通電し、その出力電流及び出力電圧を測定した。その結果を、表1及び図8〜図13に示す。
実施例1では、表1、図8(A)及び(B)に示すように、出力電流が0.2mA/cmを50分間保持していることがわかった。また、50分過ぎには、銀電極のほとんどの領域で、生理食塩水の化合物と化合して電極反応が生じることによって塩化銀化して高抵抗化し、それに伴って出力電圧が上昇しているものと考えられる。また、実施例2においては、実施例1と同様に、出力電流0.2mA/cmを22分間保持し、その後に出力電流が上昇し、出力電圧が5Vを超えた。
なお、一般的には、5Vを超えた電圧が人体に印加されると、強い刺激を感じるので、出力電圧が5V以下までの時間が生体用電極として使用可能となる時間(寿命)である。
一方、比較例1では、図9(A)及び(B)に示すように、銀電極の厚さがあるために、銀電極に通電経路50を形成しない場合であっても、0.2mA/cmの出力電流を長時間(150分以上)保持していることを確認することができた。特に、出力電圧としては、140分前後で1Vを超えているが、その後は2V以下で安定しているので、特に、人体への刺激はない。また、図10(A)及び(B)に示すように、実験前の銀電極は、実験後には全体が灰色となり、塩化銀化していることがわかった。
他方、比較例2では、図11(A)及び(B)に示すように、0.2mA/cmの出力電流の保持時間は37分であり、実施例1において銀電極が同一の厚さ(1.5μm)の場合よりも保持時間が短時間であることがわかった。特に、銀電極の厚さが2倍である比較例1から勘案すると、保持時間は75分以上と予想される。しかしながら、実際には、1/4程度であった。これにより、実験中に銀電極の各領域への通電が適切に行われなかったことがわかった。また、出力電流及び出力電圧とも、最終的には急激に変化しており、銀電極の内部が断線状態となって電極反応が終了したことが確認できた。
また、図12に示すように、厚さが1.5μmの銀電極の生体用電極において、図12(B)によって示される絶縁層によって通電経路が設けられた銀電極は、図9(A)によって示される実験前の銀電極がほとんど灰色となり、全ての領域で塩化銀化していることがわかった。しかしながら、図12(C)で示される通電経路がない銀電極は、当該銀電極の一部に銀が残り、電極反応が途中で終了していることがわかった。
なお、同様にして、比較例3においては、出力電流0.2mA/cmの保持時間は7分であり、保持時間が著しく短時間であることがわかった。
以上の結果から、表1に示すように、銀電極を一定の厚さ以下に薄膜化する場合には、通電経路を設けてあることが有効であることがわかった。具体的には、銀電極の厚さが1.5μmであって、通電経路が形成されていない銀電極を用いた場合(比較例2)には、銀電極の厚さが2倍の3.0μmのときと比べて出力電流の保持時間は1/4程度である。その一方、銀電極の厚さが1.5μmであって、通電経路が形成された銀電極を用いた場合(実施例1)には、比較例2に比べて35%も保持時間が増加してその特性が向上している。
特に、銀電極の厚さが1.5μmの場合には、出力電流の保持時間は1.35倍となり、銀電極の厚さが1.0μmの場合には、当該出力電流の保持時間は3.14倍となった。このことから、銀電極の厚さが薄くなるほど、その効果が顕著であることがわかった。
また、図13に示すように、上記の実験結果から、銀電極に設ける通電経路が必要な銀電極の厚さは、1.6μm以下であることが判った。なお、図13のグラフにおいては、横軸は、銀電極の膜厚を示し、縦軸は、通電経路が形成された際の効果、すなわち、通電経路を有している場合の生体用電極の出力電流の保持時間を、通電経路がない同一の銀電極の厚さを有する生体用電極の出力電流の保持時間で除算した値(倍)を示す。
なお、当該図13のグラフにおいては、1.0倍を示す膜厚(すなわち、1.6μm)よりも厚い膜厚の銀電極を有する生体用電極は、通電経路が無くても銀電極の全ての領域については電極反応をさせることができることが判った。
1 生体用電極
2 フレキシブル基材
4,4a,4b 薬剤
6 配線
11 金属電極
12 電源端子部
16 絶縁層
17 配線部
21 金属塩化物電極
22 電源端子部
27 配線部
31 イオントフォレシス装置
32 電極接続治具
33 電極端子
34 電極端子接続部
35 配線
36 電極接続治具
37 信号生成部
38 電源部
39 電源ユニット
40 絶縁層
50 通電経路
51 絶縁層

Claims (5)

  1. 薬剤を介して生体面に接触され、電源ユニットから信号が供給される生体用電極であって、
    フレキシブル基材と、
    前記フレキシブル基材に設けられた金属電極と、
    前記金属電極が設けられた前記基材の同一面に設けられた金属塩化物電極と、
    前記フレキシブル基材に形成され、前記電源ユニットが接続される接続部分と前記金属電極とを電気的に接続するために設けられた配線部と、
    を備え、
    前記金属電極の厚さが1.6μm以下(0を含まず)であり、
    前記金属電極に、前記配線部との接合部分から連続的に形成された通電経路が形成されており、
    前記通電経路が、前記金属電極上に形成された、又は、当該金属電極に電気的に接触して形成された耐腐食性の導電性材料によって形成されていることを特徴とする生体用電極。
  2. 前記通電経路が、前記金属電極の外周に沿って前記配線部との接合部分から連続的に形成されている、請求項1に記載の生体用電極。
  3. 前記通電経路が、前記配線部との接合部分から前記金属電極の内部に向かって連続的に形成されている、請求項1に記載の生体用電極。
  4. 前記通電経路が、前記金属電極を形成する形状の重心を通り、かつ、前記配線部との接合部分から内部に向かって連続的に形成されている、請求項3に記載の生体用電極。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体用電極を有するイオントフォレシス装置。
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