JP6152306B2 - 炭素同素体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明にかかる炭素同素体を含む素形材は、炭素同素体粒子と、合成樹脂とを含む。本発明にかかる炭素同素体を含む素形材において、炭素同素体粒子の重量パーセントと合成樹脂の重量パーセントとの和は100重量パーセント以下である。
本発明にかかる炭素同素体の製造方法は、加熱工程と、接触工程と、気化工程とを備える。加熱工程は、黒鉛を加熱する工程である。この黒鉛は、インターカレーションが起きた黒鉛である膨張黒鉛を含む。加熱工程においてその黒鉛が加熱されると、その黒鉛は膨張する。この膨張により、黒鉛の層間において剥離が起きる。接触工程は、黒鉛へ超臨界状態のインターカラント又は亜臨界状態のインターカラントを接触させる工程である。この接触により、超臨界状態のインターカラント又は亜臨界状態のインターカラントが黒鉛の層間に進入する。気化工程は、黒鉛がインターカラントと接触した後にそのインターカラントを気化させる工程である。黒鉛の層間に進入した超臨界状態のインターカラントが気化すると、黒鉛の層間において剥離が起きる。これらの工程を経ることにより、黒鉛は、複数のグラフェンを有する炭素同素体の粉末となる。なお、本発明において、加熱工程と接触工程との繰り返し回数は特に限定されない。これらは何度繰返されてもよい。
上述した素形材と炭素同素体と炭素同素体の製造方法とは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述した素形材と炭素同素体と炭素同素体の製造方法とは、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
以下、本発明の実施例及び比較例が説明される。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
加熱工程において、作業者は、膨張黒鉛にマイクロ波を照射した。マイクロ波の照射には、株式会社ミュージーコーポレーションのSERIO(登録商標)電子レンジMWO−17J−6(W)が用いられた。マイクロ波の周波数は2450メガヘルツであった。マイクロ波のエネルギは700ワットであった。照射時間は1分間であった。マイクロ波が照射されると膨張黒鉛は赤熱しガスを排出し膨張し火花を散らした。本実施例では、加熱工程の後に接触工程が実施された。接触工程において、作業者は、図1に示された化学反応装置を用い、上述した手順に従って炭素同素体の粉末を製造した。インターカラントは二酸化炭素であった。このため、貯留ボンベ10には液化炭酸ガスが蓄えられた。加圧ポンプ14が液化炭酸ガスに加えた圧力は30メガパスカルであった。加熱部16において液化炭酸ガスの温度は摂氏80度(353.15ケルビン)であった。これにより、液化炭酸ガスは超臨界状態の二酸化炭素となった。反応時間は1時間であった。反応時間経過後、作業者は、反応容器18内の混合物(黒鉛と超臨界状態の二酸化炭素との混合物)を貯留槽22へ流出させた。その際、作業者は、貯留槽22を密閉しなかった。貯留槽22へ流出した二酸化炭素は直ちに気化して貯留槽22から流出した。貯留槽22には炭素同素体が残った。これにより、反応容器18内の混合物を貯留槽22へ流出させることが気化工程の作業となった。作業者は、貯留槽22内の炭素同素体の密度と比表面積とを測定した。比表面積はBET法により測定された。密度は0.0063グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は9.2平方メートル毎グラムであった。一方、作業者は、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂と硬化剤とを混合した。ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂は、三菱化学株式会社製のJER(登録商標)807であった。硬化剤は、ハンツマンペトロケミカルコーポレーションのJEFFAMINE(登録商標)EDR148であった。混合には、株式会社シンキーのあわとり練太郎(登録商標)ARE250が用いられた。これらの混合後、作業者は、その混合物中へ、上述の炭素同素体を添加した。ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂は、炭素同素体2グラムにつき、6.45グラム使用された。硬化剤は、炭素同素体2グラムにつき、1.55グラム使用された。これにより、混合物に占める炭素同素体の重量%は20重量%となった。炭素同素体の添加後、作業者は、炭素同素体が添加されたその混合物をさらに混合した。混合後、作業者は、その混合物を容器に流し込んだ。その容器の中で、混合物に含まれるビスフェノールF型液状エポキシ樹脂が硬化することにより、混合物は平板状の素形材となった。作業者は、その素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。電気抵抗率の測定には株式会社三菱化学アナリテックのMCP−T600が用いられた。熱伝導率はレーザーフラッシュ法が用いられた。熱伝導率の測定には株式会社アルバック理工の全自動レーザーフラッシュ法熱定数測定装置TC−7000が用いられた。電気抵抗率は0.101Ω・センチメートルであった。熱伝導度は7.56ワット毎メートルケルビンであった。また、作業者は、本実施例で得られた炭素同素体を顕微鏡で観察した。観察には株式会社日立製作所のHD−2700が用いられた。図2には、本実施例で得られた炭素同素体の顕微鏡画像が示される。図2には、本実施例で得られた炭素同素体が有するグラフェンの層が表れている。
本実施例にかかる炭素同素体の製造方法は、加熱工程と接触工程とに加え、再加熱工程を備えている。本実施例の場合、再加熱工程において、作業者は、炭素同素体にマイクロ波を照射した。マイクロ波の照射には、加熱工程と同一の電子レンジが用いられた。マイクロ波の周波数は2450メガヘルツであった。マイクロ波のエネルギは700ワットであった。照射時間は1分間であった。再加熱工程が実施された点を除き、本実施例にかかる炭素同素体の製造方法は実施例1と同一である。本実施例にかかる素形材の製造方法は実施例1と同一である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本実施例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.0055グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は13.2平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は0.0642Ω・センチメートルであった。熱伝導度は7.47ワット毎メートルケルビンであった。
本実施例にかかる炭素同素体の製造方法は、加熱工程に先立ち接触工程が実施された(すなわち、加熱工程と接触工程との実施順序が逆だった)点を除けば、実施例1と同様である。本実施例にかかる素形材の製造方法は、実施例1と同様である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本実施例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.014グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は1.2平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は0.0753Ω・センチメートルであった。熱伝導度は6.64ワット毎メートルケルビンであった。
本実施例にかかる素形材の製造方法は、次に述べられる点を除けば、実施例1と同様である。その点とは、炭素同素体が添加された混合物が容器の中へ流し込まれた後、その混合物へ力が加えられる点である。力の向きは、素形材の厚さ方向である。これにより、完成した素形材は、実施例1にかかる素形材に比べ、薄くなる。本実施例において使用された炭素同素体は、実施形1にかかる炭素同素体と同一物である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本実施例にかかる素形材の面方向(厚さ方向に直交する方向)の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)を測定した。熱伝導度は27.36ワット毎メートルケルビンであった。
本比較例にかかる炭素同素体の製造方法は実施例1における加熱工程のみを備える。その加熱工程の具体的内容は実施例1と同様である。本比較例にかかる素形材の製造方法は、実施例1と同様である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本比較例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.009グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は15.0平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は0.113Ω・センチメートルであった。熱伝導度は5.71ワット毎メートルケルビンであった。
本比較例にかかる炭素同素体の製造方法は実施例1にかかる接触工程のみを備える。その接触工程の具体的内容は実施例1と同様である。本比較例にかかる素形材の製造方法は、実施例1と同様である。作業者は、実施例1と同一の方法により、本比較例にかかる炭素同素体の密度とその炭素同素体の比表面積と素形材の厚さ方向の電気抵抗率と素形材の厚さ方向の熱伝導度(温度が293.15ケルビン以上298.15ケルビン以下の場合の値)とを測定した。密度は0.35グラム毎立方センチメートルであった。比表面積は0.7平方メートル毎グラムであった。電気抵抗率は859000Ω・センチメートルであった。熱伝導度は1.05ワット毎メートルケルビンであった。
以下、実施例1乃至実施例3と比較例1と比較例2とにかかる、熱伝導度と電気抵抗率との対比結果が説明される。
12,20:開閉弁
14 :加圧ポンプ
16 :加熱部
18 :反応容器
22 :貯留槽
Claims (7)
- 黒鉛へ超臨界状態のインターカラント又は亜臨界状態のインターカラントを接触させる接触工程と、
前記黒鉛が前記インターカラントと接触した後に前記インターカラントを気化させる気化工程とを備える炭素同素体の製造方法であって、
前記黒鉛を加熱する加熱工程をさらに備え、
前記黒鉛が膨張黒鉛を含むことを特徴とする炭素同素体の製造方法。 - 前記加熱工程が、前記接触工程の前に前記黒鉛を加熱する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の炭素同素体の製造方法。
- 前記炭素同素体の製造方法が、前記接触工程の後に前記黒鉛を再加熱する再加熱工程をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の炭素同素体の製造方法。
- 前記再加熱工程が、前記黒鉛へマイクロ波を照射する工程を有することを特徴とする請求項3に記載の炭素同素体の製造方法。
- 前記加熱工程が、前記接触工程の後に前記黒鉛を加熱する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の炭素同素体の製造方法。
- 前記加熱工程が、前記黒鉛へマイクロ波を照射する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の炭素同素体の製造方法。
- 前記インターカラントが二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の炭素同素体の製造方法。
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