本発明は、導電性パターン形成方法、樹脂組成物、導電性パターンおよび電子回路に関するものである。本発明の導電性パターンの形成方法では、例えば、基板上に導電性パターンを形成する場合、基板上に導電性パターンの下地となる下地膜を形成して用いる。本発明の下地膜は、本発明の樹脂組成物を用いて形成されるものである。すなわち、本発明の樹脂組成物は、本発明の下地膜の形成に用いられる。そして、本発明の導電性パターンは、本発明の樹脂組成物を用い、本発明の導電性パターンの形成方法を用いて本発明の下地膜上に形成され、本発明の電子回路に用いることができる。
本発明の導電性パターン形成方法は、本発明の樹脂組成物を基板に塗布する工程と、その樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に、放射線照射および加熱のうちの少なくとも一方をなす工程と、その放射線照射および加熱のうちの少なくとも一方がなされた塗膜上に、導電膜形成インクを塗布する工程と、その導電膜形成インクの塗膜を加熱する工程とを有して構成される。
以下で、本発明の実施形態について説明する。まず、本発明の実施形態の導電性パターン形成方法に用いる、本発明の実施形態の樹脂組成物および導電膜形成インクについて説明する。次いで、本発明の実施形態の導電性パターン形成方法、導電性パターンおよび電子回路について説明する。
実施形態1.
〔樹脂組成物〕
本発明の第1実施形態の樹脂組成物は、後に詳述する本発明の第3実施形態の導電性パターン形成方法に用いられるものであり、[A]重合体と、[B]界面活性剤と、溶剤とを成分として含有する。以下で、本発明の第1実施形態の樹脂組成物に含有される成分について説明する。
<[A]重合体>
本実施形態の樹脂組成物の[A]成分の[A]重合体は、重合性基を有する構成単位を含む重合体である。
上述の重合性基は、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基およびビニル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。[A]重合体は、重合性基として、このような基をその構成単位が有することで、放射線照射および加熱のうちの少なくとも一方によって、本実施形態の樹脂組成物の硬化を容易に行うことができる。そして、本実施形態の樹脂組成物は、本発明の第3実施形態の導電性パターンの形成に好適な下地層を形成することができる。
尚、本発明において、露光に際して照射される「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
また、[A]重合体は、アクリル系重合体、シロキサン系重合体およびノボラック樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。以下、好ましい[A]重合体について説明する。
(アクリル系重合体)
アクリル系重合体は、溶剤中で重合開始剤の存在下、各構造単位を与える化合物をラジカル重合することによって合成できる。以下、各構造単位について詳述する。
[構造単位(a1)]
構造単位(a1)は、下記式(a)で表される。アクリル系重合体が構造単位(a1)を有することで、得られる表示素子用硬化膜の硬化性等を向上させることができる。
上記式(a)中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。Rcは、下記式(a−i)または下記式(a−ii)で表される2価の基である。mは、1〜6の整数である。
上記式(a−i)中、Rdは、水素原子またはメチル基である。上記式(a−i)および上記式(a−ii)中、*は、酸素原子との結合部位を示す。
構造単位(a1)は、後述する構造単位(a3)中のカルボキシ基と、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸化合物が含有するエポキシ基とが反応し、エステル結合を形成することにより得られる。具体例を挙げて詳述すると、例えば、構造単位(a3)を有する重合体に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸化合物を反応させた場合、上記式(a)中のRcは、上記式(a−ii)で表される基となる。一方、構造単位(a3)を有する重合体に、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸化合物を反応させた場合、上記式(a)中のRcは、上記式(a−ii)で表される基となる。
構造単位(a1)の含有割合としては、アクリル系重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜50モル%がより好ましい。構造単位(a1)の含有割合を上記範囲とすることで、優れた硬化性等を有する表示素子用硬化膜を形成することができる。
[構造単位(a2)]
構造単位(a2)は、エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構造単位である。アクリル系重合体が構造単位(a2)を有することで、得られる表示素子用硬化膜の硬化性等をより向上させることができる。
上記エポキシ基としては、オキシラニル基(1,2−エポキシ構造)およびオキセタニル基(1,3−エポキシ構造)が挙げられる。
上記オキシラニル基を含有する不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロへキシルメタクリレート等が挙げられる。
上記オキセタニル基を含有する不飽和化合物としては、例えば、
アクリル酸エステルとして、3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン等;
メタクリル酸エステルとして、3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−トリフルオロメチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ペンタフルオロエチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4−トリフルオロオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2,4,4−テトラフルオロオキセタン等が挙げられる。
これらの中で、反応性および表示素子用硬化膜の耐溶媒性向上の観点から、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルが好ましく、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチルがより好ましく、メタクリル酸グリシジルがさらに好ましい。
構造単位(a2)の含有割合としては、アクリル系重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜60モル%が好ましく、10モル%〜50モル%がより好ましい。構造単位(a2)の含有割合を上記範囲とすることで、優れた硬化性等を有する表示素子用硬化膜を形成できる。
[構造単位(a3)]
構造単位(a3)は、不飽和カルボン酸に由来する構造単位および不飽和カルボン酸無水物に由来する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位である。構造単位(a3)を与える化合物としては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステル、両末端にカルボキシ基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、カルボキシ基を有する不飽和多環式化合物およびその無水物等が挙げられる。
上述の不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。上述の不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。上述の不飽和ジカルボン酸の無水物としては、例えば、上述のジカルボン酸として例示した化合物の無水物等が挙げられる。上述の多価カルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]エステルとしては、例えば、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等が挙げられる。上述の両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。上述のカルボキシル基を有する不飽和多環式化合物およびその無水物としては、例えば、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン無水物等が挙げられる。
これらの中で、モノカルボン酸、ジカルボン酸の無水物が好ましく、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸が、共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性および入手の容易性からより好ましい。
構造単位(a3)の含有割合としては、アクリル系重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%〜30モル%が好ましく、10モル%〜25モル%がより好ましい。構造単位(a3)の含有割合を上述の範囲とすることで、アクリル系重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性を最適化すると共に感度に優れる樹脂組成物が得られる。
アクリル系重合体は、アルカリ現像液(例えば、23℃の0.40質量%水酸化カリウム水溶液等)に溶解するアルカリ可溶性樹脂としてもよい。本実施形態の樹脂組成物が[A]重合体としてアクリル系重合体を含有することで、アルカリ水溶液に対する溶解性を最適化することができる。このアクリル系重合体は、共重合体であることが好ましい。また、アクリル系重合体は、アルカリ可溶性を発現させる場合は構造単位(a3)を有することが好ましい。
尚、アクリル系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の各構成単位以外の他の構造単位を有していてもよい。また、アクリル系重合体は、上述の各構造単位を2種以上有していてもよい。
[他の構造単位]
アクリル系重合体が本発明の効果を損なわない限り含んでいてもよい構造単位(a1)〜構造単位(a3)以外の他の構造単位を与える化合物としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格等をもつ不飽和化合物、マレイミド等が挙げられる。
上述の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、メタククリル酸2−ヒドロキシエチル、メタククリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタククリル酸4−ヒドロキシブチル、メタククリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタククリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
上述の(メタ)アクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸n−ステアリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
上述の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、メタクリル酸イソボロニル、シクロヘキシルアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート等が挙げられる。
上述の(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
上述の不飽和芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等が挙げられる。
上述の共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
上述のテトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オン等が挙げられる。
上述のマレイミドとしては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−トリルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド等が挙げられる。
アクリル系重合体を合成するための重合反応に用いられる溶媒としては、例えば、アルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン、エステル等が挙げられる。
アクリル系重合体を合成するための重合反応に用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用できる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。
アクリル系重合体を製造するための重合反応においては、分子量を調整するために、分子量調整剤を使用できる。分子量調整剤としては、例えば、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
アクリル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、1000〜30000が好ましく、5000〜20000がより好ましい。アクリル系重合体のMwを上述の範囲とすることで、[A]重合体としてそれを含有する樹脂組成物の感度および現像性を高めることができる。
(シロキサン系重合体)
[シロキサン重合体(b)]
シロキサン系重合体として使用可能なシロキサン重合体(b)は、(b1)ラジカル重合性有機基を有するシラン化合物(以下(b1)化合物とも言う)と、(b2)ラジカル重合性有機基を有しないシラン化合物(以下(b2)化合物とも言う)とを共加水分解縮合して得られるラジカル重合性有機基を有するポリシロキサンであって、そのポリシロキサン中の(b1)化合物の割合が15モル%を超えるポリシロキサンである。
(b1)化合物としては、下記式(1)または下記式(2)で示される加水分解性シラン化合物であることが好ましい。
(式(1)中、R
1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
2は単結合、メチレン基またはアルキレン基を示し、Xはビニル基、アリル基、スチリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。)
(式(2)中、R
3は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
4およびR
5は単結合、メチレン基またはアルキレン基を示し、Yはビニル基、アリル基、スチリル基または(メタ)アクリロイル基を示し、Zは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜14の置換若しくは非置換のアリール基、ハロゲン原子、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、ビニル基、スチリル基または(メタ)アクリロイル基を示す。pは1または2の整数である。)
ここで、本発明において「加水分解性シラン化合物」とは「加水分解性基を有するシラン化合物」をいい、ここでいう「加水分解性基」とは、通常、水との反応により、シラノール基(−Si−OH)を形成可能な基を指す。これに対して、「非加水分解性基」とは、水と反応により、シラノール基を形成せずに、安定に存在する基を指す。また、「加水分解縮合」とは、加水分解により生成したシラノール基同士の脱水縮合反応、および、シラノール基と加水分解性基との縮合反応のうちの少なくとも一方により、シロキサン結合(−Si−O−Si−)が形成されることを意味する。尚、加水分解反応においては、加水分解性基の一部からシラノール基が生成すれば、未加水分解基(−OR1または−OR3)が残存してもよく、すなわちシロキサン重合体(b)の一部に−OR1および−OR3のうちの少なくとも1つを有していてもよい。
R1、R3およびZにおけるアルキル基は、直鎖でも分岐でもよい。R1およびR3におけるアルキル基としては、加水分解縮合の反応性の観点から、炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。また、Zにおけるアルキル基としては、炭素数1〜6、特に1〜4のアルキル基が好ましい。
R2、R4およびR5におけるアルキレン基としては、炭素数2〜6のアルキレン基が好ましく、特に炭素数2〜3のアルキレン基が好ましい。このアルキレン基は、直鎖でも分岐でもよく、具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が挙げられる。
X、YおよびZにおける(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタアクリロイル基を包含する概念である。また、スチリル基の芳香環上のビニル基の置換位置は特に限定されず、オルト位でも、メタ位でも、パラ位であってもよい。
Zにおけるアリール基としては、単環〜3環式芳香族炭化水素基が挙げられる。そのアリール基は、炭素数が6〜14であれば置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、置換アリール基としては、例えば、トリル基が挙げられる。
上記式(1)において、R1としては炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、R2としては単結合または炭素数2〜3のアルキレン基が好ましく、Xとしてはビニル基または(メタ)アクリロイル基が好ましい。
上記式(2)において、R3としては炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、R4およびR5としては単結合または炭素数2〜3のアルキレン基が好ましく、Yとしてはビニル基または(メタ)アクリロイル基が好ましく、Zとしては炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。また、pは1が好ましい。
上記式(1)で表わされる化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、o−スチリルトリメトキシシラン、o−スチリルトリエトキシシラン、m−スチリルトリメトキシシラン、m−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メタクリロキシトリメトキシシラン、メタクリロキシトリエトキシシラン、メタクリロキシトリプロポキシシラン、アクリロキシトリメトキシシラン、アクリロキシトリエトキシシラン、アクリロキシトリプロポキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−メタクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、2−アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリエトキシシラン、2−アクリロキシエチルトリプロポキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記式(2)で表わされる化合物の具体例としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ジビニルメチルメトキシシラン、ジビニルメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルフェニルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルフェニルルジメトキシシラン、3、3’−ジメタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3、3’−ジアクリロキシプロピルジメトキシシラン、3、3’、3’’−トリメタクリロキシプロピルメトキシシラン、3、3’、3’’−トリアクリロキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記式(1)および上記式(2)で表わされる化合物のうち、クラック耐性、表面硬度、導電性パターン等に対する密着性を高いレベルで達成できるとともに、加水分解縮合の反応性の観点から、特にビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい。
また、(b2)化合物としては、下記式(3)で示される加水分解性シラン化合物であることが好ましい。
(式(3)中、R6は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R7は単結合、メチレン基またはアルキレン基を示し、Wは炭素数1〜20の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数6〜14の置換若しくは非置換のアリール基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、グリシジルオキシ基または3,4−エポキシシクロヘキシル基を示し、qは0〜3の整数である。)
R6におけるアルキル基としては上記式(1)のR1と同様のものが挙げられ、Wにおけるアルキル基およびアリール基としては上記式(2)のZと同様のものが挙げられ、R7におけるアルキレン基としては上記式(2)のR5と同様のものが挙げられる。また、Wにおけるアルキル基およびアリール基の置換基としては、上記式(2)のZにおけるアリール基の置換基と同様のものが挙げられる。
R7としては単結合または炭素数2〜3のアルキレン基が好ましく、Wとしては炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数6〜8の置換若しくは非置換のアリール基またはグリシジルオキシ基が好ましい。尚、アルキル基またはアリール基の置換基としては、ハロゲン原子が好ましい。また、qとしては、0または1が好ましい。
上記式(3)で表される加水分解性シラン化合物としては、4個の加水分解性基を有するシラン化合物、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とを有するシラン化合物、2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基とを有するシラン化合物、またはそれらの混合物を挙げることができる。
このような加水分解性シラン化合物の具体例としては、
4個の加水分解性基を有するシラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン等;
1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とを有するシラン化合物として、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−i−プロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、アミノトリメトキシシラン、アミノトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等;
2個の非加水分解性基と2個の加水分解性基を有するシラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等をそれぞれ挙げることができる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの加水分解性シラン化合物のうち、4個の加水分解性基を有するシラン化合物、および1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とを有するシラン化合物が好ましく、1個の非加水分解性基と3個の加水分解性基とを有するシラン化合物が特に好ましい。好ましい加水分解性シラン化合物の具体例としては、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
(b1)化合物と(b2)化合物との共加水分解縮合反応により得られるシロキサン重合体(b)中の(b1)化合物の割合は15モル%を超えるが、16モル%以上、特に18モル%以上であることが好ましい。(b1)化合物の割合が15モル%以下の場合、露光感度が低下し、得られる硬化膜の耐熱性、密着性および解像度が低下する。尚、シロキサン重合体(b)の(b1)化合物の割合の上限は、クラック耐性、耐熱性、密着性の観点から、50モル%、さらに40モル%、特に30モル%であることが好ましい。
(b1)化合物と(b2)化合物とを共加水分解縮合させる条件としては、(b1)化合物および(b2)化合物のうちの少なくとも一部を加水分解して、加水分解性基をシラノール基に変換し、縮合反応を生起させるものである限り、特に限定されるものではないが、一例として以下の方法を挙げることができる。
溶媒中にて、(b1)化合物および(b2)化合物を混合し、混合溶液に水を加え、加水分解縮合する方法が好ましく採用される。
(b1)化合物と(b2)化合物との共加水分解縮合反応に用いられる水としては、逆浸透膜処理、イオン交換処理、蒸留等の方法により精製された水を使用することが好ましい。このような精製水を用いることによって、副反応を抑制し、加水分解の反応性を向上させることができる。水の使用量は、(b1)化合物および(b2)化合物の加水分解性基の合計量1モルに対して、好ましくは0.1モル〜3モル、より好ましくは0.3モル〜2モル、さらに好ましくは0.5モル〜1.5モルである。このような量の水を用いることによって、加水分解縮合の反応速度を最適化することができる。
(b1)化合物と(b2)化合物との共加水分解縮合反応に使用する溶剤としては、特に限定されるものではないが、通常、後述する樹脂組成物の調製に用いられる溶剤と同様のものを使用することができる。このような溶剤の好ましい例としては、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピオン酸エステル類が挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの溶剤の中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート又は3−メトキシプロピオン酸メチルが、特に好ましい。
(b1)化合物と(b2)化合物との共加水分解縮合反応は、好ましくは酸触媒(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、蟻酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リン酸、酸性イオン交換樹脂、各種ルイス酸)、塩基触媒(例えば、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、3級アミン類、ピリジン等の含窒素化合物;塩基性イオン交換樹脂;水酸化ナトリウム等の水酸化物;炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム等のカルボン酸塩;各種ルイス塩基)、または、アルコキシド(例えば、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド)等の触媒の存在下で行われる。アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、トリ−i−プロポキシアルミニウムを用いることができる。触媒の使用量としては、加水分解縮合反応の促進の観点から、(b1)化合物および(b2)化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.2モル以下であり、より好ましくは0.00001モル〜0.1モルである。
(b1)化合物と(b2)化合物との共加水分解縮合反応における反応温度および反応時間は、適宜設定することが可能であるが、例えば、下記の条件が採用できる。反応温度は、好ましくは40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜150℃である。反応時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは1時間〜12時間である。このような反応温度および反応時間とすることによって、加水分解縮合反応を最も効率的に行うことができる。この加水分解縮合反応においては、反応系内に加水分解性シラン化合物、水および触媒を一度に添加して反応を一段階で行ってもよく、または、加水分解性シラン化合物、水および触媒を、数回に分けて反応系内に添加することによって、加水分解反応および縮合反応を多段階で行ってもよい。尚、加水分解縮合反応の後には、脱水剤を加え、次いでエバポレーションにかけることによって、水および生成したアルコールを反応系から除去することができる。この段階で用いられる脱水剤は、一般的に、過剰の水を吸着または包接して脱水能が完全に消費されるか、またはエバポレーションにより除去される。
加水分解縮合反応により得られたシロキサン重合体(b)の分子量は、移動相にテトラヒドロフランを使用したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、ポリスチレン換算の重量平均分子量として測定することができる。シロキサン重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、500〜10000の範囲内とすることが好ましく、1000〜5000の範囲内とすることがさらに好ましい。シロキサン重合体(b)の重量平均分子量の値を500以上とすることによって、それを含有する樹脂組成物の塗膜の成膜性を改善することができる。一方、重量平均分子量を10000以下とすることによって、それを含有する樹脂組成物のアルカリ現像性の低下を防止することができる。
また、重量平均分子量(Mw)と同様の条件により測定される数平均分子量(Mn)との比、すなわち分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜15.0、より好ましくは1.1〜10.0、さらに好ましくは1.1〜5.0である。このような範囲内とすることにより、アルカリ現像性、密着性、クラック耐性を両立することができる。
[シロキサン重合体(b−II)]
シロキサン重合体(b−II)は、ラジカル重合性有機基を有しないシラン化合物を加水分解縮合して得られるポリシロキサンである。シロキサン重合体(b)とシロキサン重合体(b−II)を併用することにより、シロキサン重合体(b)のみを用いる場合に比較して、それを[A]重合体として含有する樹脂組成物から形成される硬化膜のクラック耐性、耐熱性、密着性および解像度を高いレベルで達成することが可能となる。
シロキサン重合体(b−II)は、シロキサン重合体(b)と同様の条件にて、上記式(3)で表される加水分解性シラン化合物の少なくとも1種を(共)加水分解縮合することで得ることができる。
加水分解縮合反応により得られたシロキサン重合体(b−II)の重量平均分子量(Mw)は、シロキサン重合体(b)と同様の条件にて測定することが可能であり、塗膜の成膜性および現像性の観点から、好ましくは500〜10000、さらに好ましくは1000〜5000である。
また、重量平均分子量(Mw)と同様の条件により測定される数平均分子量(Mn)との比、すなわち分散度(Mw/Mn)は、アルカリ現像性、密着性、クラック耐性の観点から、好ましくは1.0〜15.0、より好ましくは1.1〜10.0、さらに好ましくは1.1〜5.0である。
シロキサン重合体(b)とシロキサン重合体(b−II)の使用割合は、シロキサン重合体(b)およびシロキサン重合体(b−II)中の全Si原子上の結合基に占めるラジカル重合性有機基の含有率が1モル%〜20モル%、さらに5モル%〜18モル%、特に10モル%〜15モル%となるように適宜調整することが好ましい。シロキサン重合体(b)とシロキサン重合体(b−II)の使用割合を上述の範囲内とすることで、それを[A]重合体として含有する樹脂組成物から形成される硬化膜の密着性、クラック耐性、耐熱性、耐擦傷性を高いレベルで達成することができる。尚、本実施形態の樹脂組成物は、[A]重合体としてシロキサン系重合体を含有する場合、ラジカル重合性有機基を上述の割合で含有するため、感放射線性を具備することができる。
尚、ポリシロキサン中のラジカル重合性有機基は、1H−NMR、13C−NMR、FT−IR、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析により、定性・定量分析が可能である。
(エポキシ樹脂)
本実施形態の樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(c)としては、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、トリスフェノールメタン型、テトラフェノールエタン型、ビキシレノール型またはビフェノール型のエポキシ樹脂;脂環式または複素環式のエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型またはナフタレン型の構造を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂(c)を含有する本実施形態の樹脂組成物は、各種基板(例:銅基板、ポリイミドフィルム)に対する密着性に優れた硬化膜を形成することができる。
尚、本発明におけるエポキシ樹脂は、[構造単位(a2)]において説明したメタクリル酸グリシジル等によるエポキシ基を含有する単量体に由来する構成単位を有するアクリル系重合体を含まないものとする。
エポキシ樹脂(c)としては、各種の市販品を用いることができ、TECHMORE(登録商標) VG3101L(商品名;三井化学(株)製)、エピコート828、同834、同1001、同1004(商品名;ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロン840、同850、同1050、同2055(商品名;DIC社製)、エポトートYD−011、同YD−013、同YD−127、同YD−128(商品名;東都化成社製)、D.E.R.317、同331、同661、同664(商品名;ダウケミカル社製)、アラルダイド6071、同6084、同GY250、同GY260(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミ−エポキシESA−011、同ESA−014、同ELA−115、同ELA−128(商品名;住友化学工業社製)、A.E.R.330、同331、同661、同664(商品名;旭化成工業社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;
エピコート152、同154(商品名;ジャパンエポキシレジン社製)、D.E.R.431、同438(商品名;ダウケミカル社製)、エピクロンN−730、同N−770、同N−865(商品名;DIC社製)、エポトートYDCN−701、同YDCN−704(商品名;東都化成社製)、アラルダイドECN1235、同ECN1273、同ECN1299(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、XPY307、EPPN(登録商標)−201、EOCN(登録商標)−1025、EOCN(登録商標)−1020、EOCN(登録商標)−104S、RE−306(商品名;日本化薬社製)、スミーエポキシESCN−195X、同ESCN−220(商品名;住友化学工業社製)、A.E.R.ECN−235、同ECN−299(商品名;ADEKA社製)等のノボラック型エポキシ樹脂;
エピクロン830(商品名;DIC社製)、JER(登録商標)807(商品名;ジャパンエポキシレジン社製)、エポトートYDF−170(商品名;東都化成社製)、YDF−175、YDF−2001、YDF−2004、アラルダイドXPY306(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;エポトートST−2004、同ST−2007、同ST−3000(商品名;東都化成社製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;
セロキサイド(登録商標)2021(商品名;ダイセル化学工業社製)、アラルダイドCY175、同CY179、同CY184(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等の脂環式エポキシ樹脂;
YL−933(商品名;ジャパンエポキシレジン社製)、EPPN(登録商標)−501、EPPN(登録商標)−502(商品名;ダウケミカル社製)等のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;YL−6056、YX−4000、YL−6121(商品名;ジャパンエポキシレジン社製)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;
EBPS−200(商品名;日本化薬社製)、EPX−30(商品名;ADEKA社製)、EXA−1514(商品名;DIC社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;JER(登録商標)157S(商品名;ジャパンエポキシレジン社製)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;YL−931(商品名;ジャパンエポキシレジン社製)、アラルダイド163(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;
アラルダイドPT810(商品名;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、TEPIC(登録商標)(商品名;日産化学工業社製)等の複素環式エポキシ樹脂;HP−4032、EXA−4750、EXA−4700(商品名;DIC社製)等のナフタレン含有エポキシ樹脂;HP−7200、HP−7200H、HP−7200HH(商品名;DIC社製)等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂(c)の中でも、硬化性の観点からフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂が好ましい。
また、エポキシ樹脂中のエポキシ基に、(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸を反応させてエポキシ基を開環させて水酸基を生成させ、その水酸基の一部に多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸無水物を反応させて得られるエポキシ基とカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ変性エポキシ樹脂を用いることができる。尚、変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂中の一部のエポキシ基をカルボキシル基または(メタ)アクリロイル基に変性させたことを意味するものとする。
このようなエポキシ樹脂中の一部のエポキシ基をカルボキシル基または(メタ)アクリロイル基に変性させることで、カルボキシル基によりアルカリ可溶性を付与が可能となり、また(メタ)アクリロイル基によりラジカル重合性を付与することが可能となる。
(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸としては、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
上記、多価カルボン酸および多価カルボン酸無水物としては、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸およびオクタデセニルコハク酸等の脂肪族飽和多価カルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸およびナフタレンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸)およびそれらの無水物(例えば、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、ペンタデセニル無水コハク酸およびオクタデセニル無水コハク酸等の脂肪族飽和多価カルボン酸無水物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物およびナフタレンテトラカルボン酸無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物)が挙げられる。
好ましいのは、反応性および現像性の観点から飽和多価カルボン酸無水物である。
(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸とエポキシ樹脂中のエポキシ基との反応時間は、特に限定されないが、好ましくは70℃〜110℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは5時間〜30時間である。また、必要により触媒(例えば、トリフェニルホスフィン等)およびラジカル重合禁止剤(ヒドロキノン、p−メトキシフェノール等)を用いてもよい。
また、(メタ)アクリル酸付加物の重量に対する、多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物の仕込み当量は、得られる樹脂の酸価が、好ましくは10mgKOH/g〜500mgKOH/gとなるような仕込み当量であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸付加物と多価カルボン酸または多価カルボン酸無水物との反応における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは70℃〜110℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは3時間〜10時間である。
<[B]界面活性剤>
本発明の実施形態の樹脂組成物は、[B]界面活性剤を含有する。本実施形態の樹脂組成物において、[B]界面活性剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.5質量部〜10質量部である。本実施形態の樹脂組成物を用いて膜を形成する場合、[B]界面活性剤は、形成された膜の表面に局在化する。その結果、導電膜形成インクの膜に対する接触角が高くなり、膜中への導電膜形成インクの染み込みを抑制し、かつ導電膜形成インクの濡れ広がりを防ぐことができる。したがって、本実施形態の樹脂組成物を用いて下地膜を形成した場合、導電膜形成インクを用い、その上に、高精細な導電性パターンを形成することができる。
尚、本実施形態の樹脂組成物が[B]界面活性剤を含有することで、それを用いて形成された下地膜の上では、導電膜形成インクの下地膜に対する接触角が高くなり、制御できないハジキを発生させることが懸念される。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物は、上述したように選択された[A]重合体を含有する効果により、そうしたハジキの発生を抑制することができる。このような観点からは、分子内にケイ素原子を含有する界面活性剤がより好ましい。
[B]界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤が好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸系共重合体類等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系共重合体類の例としては、市販されている商品名で、ポリフローNo.57、同No.95(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル等のフルオロエーテル類;パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム;1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロデカン等のフルオロアルカン類;フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類;フルオロアルキルオキシエチレンエーテル類;フルオロアルキルアンモニウムヨージド類;フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類;パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類;パーフルオロアルキルアルコキシレート類;フッ素系アルキルエステル類等を挙げることができる。
これらのフッ素系界面活性剤の市販品としては、エフトップEF301、303、352(新秋田化成(株)製)、メガファック(登録商標)F171、172、173(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S−382、SC−101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、FTX−218((株)ネオス製)等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤の例としては、市販されている商品名で、SH200−100cs、SH28PA、SH30PA、ST89PA、SH190(東レダウコーニングシリコーン(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
[B]界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。[B]界面活性剤の使用量は、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは0.5質量部〜10質量部であり、好ましくは、0.7質量部〜10質量部であり、より好ましくは、1.0質量部〜8質量部である。本実施形態の樹脂組成物を用いて下地膜を形成し、その上に高精細な導電性パターンを形成するという効果を得る観点からは、[D]界面活性剤の使用量を0.5質量部以上であることすることが好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物の基板上での成膜性を向上するという効果を得る観点からは、[B]界面活性剤の使用量を10質量部以下とすることが好ましい。
<[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物>
本発明の第1実施形態の樹脂組成物は、上述した[A]重合体と、[B]界面活性剤と、後述する溶剤とを含有するが、さらに、[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、および、後述する[D]感放射線性重合開始剤を含有することができる。本実施形態の樹脂組成物は、[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、および、[D]感放射線性重合開始剤を含有することで、放射線照射によって、高い感度で、硬化を行うことができる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物は、[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、および、[D]感放射線性重合開始剤を含有することで、高感度な感放射線性樹脂組成物として好適に用いることができる。
[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、後述する[D]感放射線性重合開始剤の存在下において放射線を照射することにより重合する不飽和化合物である。但し、[A]重合体は除かれる。
このような重合性不飽和単量体としては、重合性が良好であり、得られる硬化膜の強度が向上するという観点から、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−101、同M−111、同M−114、同M−5300(以上、東亞合成社);KAYARAD(登録商標)TC−110S、同TC−120S(以上、日本化薬社);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業社)等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート等が挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−210、同M−240、同M−6200(以上、東亞合成社);KAYARAD(登録商標) HDDA、同HX−220、同R−604(以上、日本化薬社);ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業社);ライトアクリレート1,9−NDA(共栄社化学社)等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの他、直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基とを有し、かつ3個、4個または5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等が挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−309、同M−315、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同TO−1450(以上、東亞合成社);KAYARAD(登録商標) TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DPEA−12(以上、日本化薬社);ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業社);多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品としては、ニューフロンティア(登録商標)R−1150(第一工業製薬社)、KAYARAD(登録商標) DPHA−40H(日本化薬社)等が挙げられる。
これらの[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物のうち、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートや、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品等が好ましい。中でも、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物が特に好ましい。
[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の使用量は、[A]重合体と[B]界面活性剤の合計100質量部に対して、5質量部〜300質量部が好ましく、10質量部〜200質量部がより好ましく、20質量部〜100質量部がさらに好ましい。[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の使用量を上述の範囲内とすることで、それを含有する本実施形態の樹脂組成物の感度、得られる硬化膜の表面高度、耐熱性がより一層良好となる。
<[D]感放射線性重合開始剤>
本発明で使用する感放射線性重合開始剤(以下、「ラジカル重合開始剤」とも称する)としては、O−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等を挙げることができる。
O−アシルオキシム化合物の具体例としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。これらのO−アシルオキシム化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
これらのうちで、好ましいO−アシルオキシム化合物としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)を挙げることができる。
アセトフェノン化合物としては、例えばα−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物を挙げることができる。
α−アミノケトン化合物の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を挙げることができる。
α−ヒドロキシケトン化合物の具体例としては、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等を挙げることができる。これらのアセトフェノン化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
これらのアセトフェノン化合物のうちα−アミノケトン化合物が好ましく、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが特に好ましい。
ビイミダゾール化合物の具体例としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。これらのビイミダゾール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
これらのビイミダゾール化合物のうち、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが特に好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、[D]感放射線性重合開始剤としてビイミダゾール化合物を使用する場合、これを増感するために、ジアルキルアミノ基を有する脂肪族または芳香族化合物(以下、「アミノ系増感剤」という)を添加することができる。
このようなアミノ系増感剤としては、例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等を挙げることができる。これらのアミノ系増感剤のうち、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。これらのアミノ系増感剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
さらに、ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、水素ラジカル供与剤としてチオール化合物を添加することができる。ビイミダゾール化合物は、アミノ系増感剤によって増感されて開裂し、イミダゾールラジカルを発生するが、そのままでは高い重合開始能が発現しない場合がある。しかし、ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とが共存する系に、チオール化合物を添加することにより、イミダゾールラジカルにチオール化合物から水素ラジカルが供与される。その結果、イミダゾールラジカルが中性のイミダゾールに変換されると共に、重合開始能の高い硫黄ラジカルを有する成分が発生し、低放射線照射量であっても表面硬度の高い硬化膜を形成することができる。
そのようなチオール化合物の具体例としては、
2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール等の芳香族チオール化合物;
3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル等の脂肪族モノチオール化合物;
ペンタエリストールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリストールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)等の2官能以上の脂肪族チオール化合物
を挙げることができる。これらのチオール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
これらのチオール化合物の中でも、2−メルカプトベンゾチアゾールが特に好ましい。
ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、アミノ系増感剤の使用量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは1質量部〜20質量部である。アミノ系増感剤の使用量を上記範囲内とすることによって、露光時の硬化反応性が向上し、得られる硬化膜の表面硬度を高めることができる。
また、ビイミダゾール化合物、アミノ系増感剤およびチオール化合物を併用する場合、チオール化合物の使用量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは1質量部〜20質量部である。チオール化合物の使用量を上述の範囲内とすることによって、得られる硬化膜の表面硬度を改善することができる。
本実施形態の樹脂組成物においては、[D]感放射線性重合開始剤を含有する場合、O−アシルオキシム化合物およびアセトフェノン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、さらにビイミダゾール化合物を含有するものであってもよい。
[D]成分の使用量は、[A]重合体と[B]界面活性剤の合計100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜30質量部、より好ましくは0.1質量部〜15質量部である。[D]成分の使用量を上述の範囲内とすることによって、本実施形態の樹脂組成物は、低露光量の場合でも、高い放射線感度を示し、充分な表面硬度を有する硬化膜を形成することができる。
<溶剤>
本発明の実施形態の樹脂組成物は、上述した[A]重合体と、[B]界面活性剤と、溶剤とを含有する。本発明の実施形態の樹脂組成物は、さらに、[C]エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、および、[D]感放射線性重合開始剤を含有することができる。
溶剤としては特に限定されないが、特にプロトン性溶剤であるアルコール系溶剤を含有することが望ましい。アルコール系溶剤を用いることで、各成分を均一に溶解または分散することができ、これにより本実施形態の樹脂組成物の大型基板への塗工性向上を可能にし、さらに、塗布時の筋状ムラ、ピン跡ムラ、モヤムラ等の塗布ムラの発生を抑制し、膜厚均一性を一層向上させることがきる。
このようなアルコール系溶剤としては、
1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−ドデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の長鎖アルキルアルコール類;
ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類
等を挙げることができる。これらのアルコール系溶剤は、単独でまたは2種以上併用して使用することができる。
これらアルコール系溶剤のうち、特に塗工性向上の観点から、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。溶剤の使用量は、本実施形態の樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは200質量部〜1600質量部、より好ましくは400質量部〜1000質量部である。溶剤の使用量を上述の範囲内とすることによって、ガラス基板等に対する塗工性向上を可能にし、さらに塗布ムラ(筋状ムラ、ピン跡ムラ、モヤムラ等)の発生を抑制し、塗膜の膜厚均一性をさらに向上できる。
本実施形態の樹脂組成物においては、上述のアルコール系溶剤と共に、他の溶剤、例えば、エーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等を挙げることができる。
アルコール系溶剤以外の溶剤としては、次のものが挙げられる。
エーテル類として、例えば、テトラヒドロフラン、ヘキシルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン等;
ジエチレングリコールアルキルエーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等;
エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類として、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類として、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等;
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類として、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート等;
脂肪族炭化水素類としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、デカリン等;
芳香族炭化水素類として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等;
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等;
エステル類として、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等をそれぞれ挙げることができる。これらの溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
実施形態2.
〔導電膜形成インク〕
本発明の第3実施形態の導電性パターン形成方法に用いる、本発明の第2実施形態の導電膜形成インクは、金属塩と還元剤を含む組成物であり、還元反応型の組成物である。また、本実施形態の導電膜形成インクは、さらに金属微粒子を含有することができる。そして、本実施形態の導電膜形成インクは、さらに溶剤を含有することができる。本実施形態の導電膜形成インクは各種の印刷法、塗布法による塗膜の形成が可能であり、またその塗膜は、加熱されて導電性の導通部を形成することができる。本実施形態の導電膜形成インクの各成分について以下で説明する。尚、本発明において、導電膜形成インクとは、還元反応により導電性を発現し、導電性膜(導電性パターン)を形成できるインクを指す。
<金属塩>
金属塩は、それに含まれる金属イオンが導電膜形成インク中の還元剤により還元されて金属単体となり、形成される導通部の導電性を発現させる役割を有する。例えば、金属塩が銅塩である場合、銅塩に含まれる銅イオンは還元剤により還元され、銅単体となり、導電性の導通部を形成することができる。
本実施形態の導電膜形成インクの金属塩としては銅塩、銀塩が好ましい。
銅塩としては、銅イオンを含有する化合物であればよく、特に限定するものではないが、例えば、銅イオンと、無機アニオン種および有機アニオン種のうちの少なくとも一方とからなる銅塩が挙げられる。これらの中でも、溶解度の観点から、銅カルボン酸塩、銅の水酸化物、および銅とアセチルアセトン誘導体との錯塩からなる群より選ばれる一種または二種以上を用いることが好ましい。
銅カルボン酸塩としては、例えば、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、イソ酪酸銅、2−メチル酪酸銅、2−エチル酪酸銅、吉草酸銅、イソ吉草酸銅、ピバリン酸銅、ヘキサン酸銅、ヘプタン酸銅、オクタン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、ノナン酸銅等の脂式カルボン酸との銅塩、マロン酸銅、コハク酸銅、マレイン酸銅等のジカルボン酸との銅塩、安息香酸銅、サリチル酸銅等の芳香族カルボン酸との銅塩、ギ酸銅、ヒドロキシ酢酸銅、グリオキシル酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、酒石酸銅、リンゴ酸銅、クエン酸銅等のカルボキシ基を有する有機酸との銅塩等が好適なものとして挙げられる。尚、ギ酸銅は、無水和物でもよく、水和していてもよい。ギ酸銅の水和物としては、四水和物が挙げられる。
また、銅とアセチルアセトン誘導体との錯塩としては、例えば、アセチルアセトナト銅、1,1,1−トリメチルアセチルアセトナト銅、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチルアセチルアセトナト銅、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトナト銅、および1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト銅等が好適なものとして挙げられる。
これらの中でも、還元剤または溶剤に対する溶解性や分散性、形成される導通部の抵抗特性を考慮した場合、酢酸銅、プロピオン酸銅、イソ酪酸銅、吉草酸銅、イソ吉草酸銅、ギ酸銅、ギ酸銅四水和物、グリオキシル酸銅等の銅カルボン酸塩が好ましい。
銀塩としては、銀の塩であれば特に限定されない。
例えば、硝酸銀、酢酸銀、酸化銀、アセチルアセトン銀、安息香酸銀、臭素酸銀、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、クエン酸銀、フッ化銀、ヨウ素酸銀、ヨウ化銀、乳酸銀、亜硝酸銀、過塩素酸銀、リン酸銀、硫酸銀、硫化銀、およびトリフルオロ酢酸銀を挙げることができる。
本実施形態の導電膜形成インクにおいては、形成される導通部において、金属原子のマイグレーションを抑制する観点から、銅塩の使用が好ましい。銅塩の中でも、特に還元性を有するギ酸銅が好ましい。ギ酸銅としては、無水和物でもよく、ギ酸銅四水和物でもよい。
金属塩の含有量としては、本実施形態の導電膜形成インクの全量に対して0.01質量%〜50質量%の範囲が好ましく、0.1質量%〜30質量%の範囲がより好ましい。金属塩の含有量を0.01質量%〜50質量%の範囲とすることによって、安定かつ優れた導電性を有する金属層として導通部を形成することができる。低抵抗値の金属層を得る観点からは金属塩の含有量が0.01質量%以上であることが好ましい。また、化学的に安定した導電膜形成インクを得る観点からは金属塩の含有量が50質量%以下であることが好ましい。
<還元剤>
本実施形態の導電膜形成インクは、金属塩に含まれる金属イオンを還元して金属単体とすることを目的として、上述した金属成分である金属塩とともに、還元剤を含有する。還元剤は、導電膜形成インクの金属塩に含まれる金属イオンに対し還元性を有していれば特に限定するものではない。また、還元性とは、導電膜形成インクの金属塩に含まれる金属イオンを還元できる性質を指す。
上述の還元剤としては、例えば、チオール基、ニトリル基、アミノ基、ヒドロキシ基、またはヒドロキシカルボニル基からなる群より選ばれる一種または二種以上の官能基を有する単分子化合物や、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子からなる群より選ばれる一種または二種以上のヘテロ原子を分子構造内に有するポリマー等が挙げられる。
このような単分子化合物としては、例えば、アルカンチオール類、アミン類、ヒドラジン類、モノアルコール類、ジオール類、ヒドロキシアミン類、α−ヒドロキシケトン類、およびカルボン酸類等が挙げられる。
ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびポリエチレンオキシド等が挙げられる。
これらの中でも、金属塩の溶解性、および導通部形成時の除去性を考慮すると、アルカンチオール類およびアミン類からなる群より選ばれる一種以上が好ましい。
アルカンチオール類としては、例えば、エタンチオール、n−プロパンチオール、i−プロパンチオール、n−ブタンチオール、i−ブタンチオール、t−ブタンチオール、n−ペンタンチオール、n−ヘキサンチオール、シクロヘキサンチオール、n−ヘプタンチオール、n−オクタンチオール、2−エチルヘキサンチオール等が例示される。
また、アミン類としてはアミン化合物を挙げることができ、例えば、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−エチルヘキシルプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、ベンジルアミン、アミノアセトアルデヒドジエチルアセタール等のモノアミン化合物、エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン化合物、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N−(アミノエチル)ピペラジン、N−(アミノプロピル)ピペラジン等のトリアミン化合物等が挙げられる。
ヒドラジン類としては、1,1−ジ−n−ブチルヒドラジン、1,1−ジ−t−ブチルヒドラジン、1,1−ジ−n−ペンチルドラジン、1,1−ジ−n−ヘキシルヒドラジン、1,1−ジシクロヘキシルヒドラジン、1,1−ジ−n−ヘプチルヒドラジン、1,1−ジ−n−オクチルヒドラジン、1,1−ジ−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1,1−ジフェニルヒドラジン、1,1−ジベンジルヒドラジン、1,2−ジ−n−ブチルヒドラジン、1,2−ジ−t−ブチルヒドラジン、1,2−ジ−n−ペンチルドラジン、1,2−ジ−n−ヘキシルヒドラジン、1,2−ジシクロヘキシルヒドラジン、1,2−ジ−n−ヘプチルヒドラジン、1,2−ジ−n−オクチルヒドラジン、1,2−ジ−(2−エチルヘキシル)ヒドラジン、1,2−ジフェニルヒドラジン、又は1,2−ジベンジルヒドラジンが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が挙げられる。
ジオール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,3−ヘプタンジオール、3,4−ヘキサンジオール、3,4−ヘプタンジオール、3,4−オクタンジオール、3,4−ノナンジオール、3,4−デカンジオール、4,5−オクタンジオール、4,5−ノナンジオール、4,5−デカンジオール、5,6−デカンジオール、3−N,N−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−N,N−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−N,N−ジ−n−プロピルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−N,N−ジ−i−プロピルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−N,N−ジ−n−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−N,N−ジ−i−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオールおよび3−N,N−ジ−t−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオールを挙げることができる。
ヒドロキシルアミン類としては、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジ−n−プロピルヒドロキシルアミン、N,N−ジ−n−ブチルヒドロキシルアミン、N,N−ジ−n−ペンチルヒドロキシルアミン、およびN,N−ジ−n−ヘキシルヒドロキシルアミンが挙げられる。
α−ヒドロキシケトン類としては、ヒドロキシアセトン、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、1−ヒドロキシ−2−ペンタノン、3−ヒドロキシ−2−ペンタノン、2−ヒドロキシ−3−ペンタノン、3−ヒドロキシ−2−ヘキサノン、2−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、4−ヒドロキシ−3−ヘキサノン、4−ヒドロキシ−3−ヘプタノン、3−ヒドロキシ−4−ヘプタノン、および5−ヒドロキシ−4−オクタノンが挙げられる。
カルボン酸類としては、金属塩に対し還元性を有するものであれば特に限定するものではないが、例えば、ギ酸、ヒドロキシ酢酸、グリオキシル酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、リンゴ酸、およびクエン酸を挙げることができる。
上述の還元剤は、上述の金属塩の種類に応じて、これを還元できるものを一種または二種以上、適宜選択または組み合わせて用いることができる。例えば、金属塩としてギ酸銅を用いる場合、還元剤はアミン化合物が好ましく、2−エチルヘキシルプロピルアミンおよび3−エトキシプロピルアミンがより好ましい。
還元剤の含有量としては、本実施形態の導電膜形成インクの全量に対して、1質量%〜99質量%の範囲が好ましく、10質量%〜90質量%の範囲がより好ましい。還元剤の含有量を1質量%〜99質量%の範囲とすることによって、優れた導電性を有する導通部を形成できる。またさらに、10質量%〜90質量%の範囲とすることによって、低い抵抗値を有し、電極との密着性に優れた導通部を形成することができる。
<金属微粒子>
本実施形態の導電膜形成インクは、金属塩の還元析出速度を向上させる、あるいは導電膜形成インクの粘度を調節する目的で、さらに金属微粒子を含有することができる。
本実施形態の導電膜形成インクにおいて、金属微粒子としては、特に限定するものではないが、導電性と安定性の観点からは、例えば、金、銀、銅、白金およびパラジウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属種を含有するものであることが好ましい。これらの金属種は、単体であってもその他の金属との合金であっても差し支えない。これらの金属種が単体である場合、好ましい金属微粒子としては、金微粒子、銀微粒子、銅微粒子、白金微粒子およびパラジウム微粒子からなる群より選択される少なくとも1種または2種以上の組合せとなる。
これらの中でもコスト面、入手の容易さ、および導電性の導通部を形成するときの触媒能から、銀、銅およびパラジウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属種を含有することが好ましい。これら以外の金属微粒子を使用しても差し支えないが、例えば、金属塩に銅塩を用いた場合、銅イオンにより金属微粒子が酸化を受けたり、触媒能が低下して銅塩から金属銅への還元析出速度が低下したりするおそれがあるため、上述した金属微粒子を使用することがより好ましい。
本実施形態の導電膜形成インクにおいて、金属微粒子の平均粒子径は、0.05μm〜5μmの範囲であることが好ましい。金属表面の活性が高くなって酸化反応が生じることを防止する観点、および、金属微粒子同士の凝集を防止する観点から、金属微粒子の粒子径は0.05μm以上が好ましい。また、長期保存する際に金属微粒子の沈降を防止する観点から、金属微粒子の平均粒子径は5μm以下であることが好ましい。
本発明の実施形態において、金属微粒子の平均粒子径の測定方法は以下の通りである。透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)等の顕微鏡を用いて観測された視野の中から、金属微粒子の粒子径が比較的揃っている箇所を3箇所選択し、粒径測定に最も適した倍率で撮影する。得られた各々の写真から、粒子径が比較的揃っていると思われる粒子を100個選択し、その直径をものさし等の測長機で測定し、測定倍率を除して粒子径を算出し、これらの値を算術平均することにより、求めることができる。また、標準偏差については、上述の観察時に個々の金属微粒子の粒子径と数により求めることができる。そして、変動係数は、上述した平均粒子径およびその標準偏差に基づいて、下記式により算出することができる。
金属微粒子は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。公知の合成方法としては、例えば、スパッタリング法やガス中蒸着法等、物理的な手法で合成反応を行う気相法(乾式法)や、金属化合物溶液を表面保護剤の存在下、還元して金属微粒子を析出させる等の液相法(湿式法)等が一般的に知られている。
金属微粒子の純度については特に限定するものではないが、低純度であると導電性薄膜とした際に導電性に悪影響を与えるおそれがあるため、95%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
本実施形態の導電膜形成インクに含有される金属微粒子の含有量としては、本実施形態の導電膜形成インクの全量に対して、通常、0質量%〜60質量%の範囲であり、1質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜20質量%の範囲がより好ましい。
<溶剤>
本実施形態の導電膜形成インクは、導電膜形成インクの粘度を調節して生産性を向上させる観点や、低抵抗で均一な導通部を得る観点から、溶剤を含有することが好ましい。
溶剤としては、導電膜形成インク中の各成分を溶解または分散することができるものであり、金属塩の還元反応に関与しない有機溶媒が挙げられる。具体的には、エーテル類、エステル類、脂肪族炭化水素類、および芳香族炭化水素類からなる群より選ばれる一種、または相溶性のある二種以上の混合物が挙げられる。
エーテル類、脂肪族炭化水素類、および芳香族炭化水素類としては、上述した樹脂組成物の<溶剤>において例示したものが挙げられる。
エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、γ−ブチロラクトン、その他、樹脂組成物の<溶剤>において例示したもの等が挙げられる。
これら有機溶剤のうち、特に液状の導電膜形成インクの粘度の調整のし易さの観点から、エーテル類が好ましく、特にヘキシルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が好ましい。
本実施形態の導電膜形成インクに含有される溶剤の含有量は、本実施形態の導電膜形成インクの全量に対して0質量%〜95質量%の範囲であり、1質量%〜70質量%の範囲であることが好ましく、10質量%〜50質量%の範囲であることがより好ましい。
本実施形態の導電膜形成インクを製造する場合の混合方法としては、特に限定するものではないが、例えば、攪拌羽による攪拌、スターラーおよび攪拌子による攪拌、沸盪器による攪拌、超音波(ホモジナイザー)による攪拌等が挙げられる。攪拌条件としては、例えば、攪拌羽による攪拌の場合、攪拌羽の回転速度が、通常1rpm〜4000rpmの範囲、好ましくは100rpm〜2000rpmの範囲である。
実施形態3.
〔導電性パターン形成方法〕
本発明の第3実施形態の導電性パターン形成方法は、本発明の第1実施形態の樹脂組成物を基板に塗布する工程(以下、樹脂組成物塗布工程ともいう)と、その樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に、放射線照射および加熱のうちの少なくとも一方をなす工程(以下、放射線照射/加熱工程ともいう)と、その放射線照射および加熱のうちの少なくとも一方がなされた塗膜上に、本発明の第2実施形態の導電膜形成インクを塗布する工程(以下、導電膜形成インク塗布工程ともいう)と、その導電膜形成インクの塗膜を加熱する工程(以下、加熱工程ともいう)とを有して構成される。
本実施形態の導電性パターン形成方法においては、樹脂組成物塗布工程と放射線照射/加熱工程とにより、例えば、基板上に、導電性パターンの下地膜の形成を行う。そして、導電膜形成インク塗布工程と加熱工程とにより、得られた下地膜の上に導電性パターンの形成を行う。
以下、各工程について、より詳しく説明する。
<導電性パターンの下地膜の形成>
本実施形態の導電性パターン形成方法において、導電性パターンの下地膜の形成は、本発明の実施形態の樹脂組成物を用い、上述したように、樹脂組成物塗布工程と放射線照射/加熱工程とにより行うことができる。より詳細には、導電性パターンの下地膜の形成の方法は、以下の工程(1)〜工程(4)を含むことができる。工程(1)が、樹脂組成物塗布工程であり、工程(2)〜工程(4)が放射線照射/加熱工程に対応する。
(1)本発明の実施形態の樹脂組成物を基板上に塗布しての塗膜を形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、および
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱する工程。
上述の工程(2)〜工程(4)は、使用する樹脂組成物が感放射線性を有するか、熱硬化性を有するか等の性質や、下地膜のパターニングの必要性の有無に従って、適宜選択されて実施される。例えば、下地膜のパターニングが不要であって、基板上に形成された本発明の実施形態の樹脂組成物の塗膜が、基板上の塗布面全面で硬化されて使用される場合には、工程(3)は省略される。
また、下地膜のパターニングが不要で、使用する樹脂組成物が熱硬化性のみを有するものである場合には、工程(2)および工程(3)は省略され、工程(4)のみが実施される。また、下地膜のパターニングが不要で、使用する樹脂組成物が感放射線性である場合には、工程(2)のみ、または工程(2)と工程(4)とが実施される。
次に、工程(1)〜工程(4)の各工程を説明する。
工程(1)
工程(1)においては、基板上に本発明の実施形態の樹脂組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶剤を除去して、塗膜を形成する。
図1は、基板上に形成された本発明の実施形態の樹脂組成物の塗膜を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本工程においては、基板1上に本発明の実施形態の樹脂組成物の塗膜2が形成される。
使用できる基板の材質としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、樹脂等を挙げることができる。樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体およびその水素添加物等を挙げることができる。尚、基板に対しては、必要に応じて洗浄、粗面化、微少な凹凸面の付与等の前処理を施すことができる。
本発明の実施形態の樹脂組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法またはスリットダイ塗布法が好ましい。プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、好ましくは70℃〜120℃で1分間〜10分間程度とすることができる。本発明の実施形態の樹脂組成物の粘度は塗布方法および所望の膜厚によって調節すればよく、膜厚3μm〜7μmとする場合、スピンコート法であれば10cP(0.01Pa・s)〜50cP(0.05Pa・s)、スリットダイ塗布法であれば1cP(0.001Pa・s)〜10cP(0.01Pa・s)が例示される。
工程(2)
工程(2)においては、本実施形態の樹脂組成物が感放射線性の樹脂組成物である場合には、工程(1)で形成された塗膜の放射線を照射して露光を行う。露光は、塗膜の少なくとも一部に対して行われるが、下地膜のパターニングが不要な場合には、塗膜全面を露光する。下地膜のパターニングが必要な場合には、塗膜の一部を露光する。通常、塗膜の一部に露光する際には、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光する。露光に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
本工程における露光量は、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは10mJ/cm2〜1000mJ/cm2、より好ましくは20mJ/cm2〜700mJ/cm2である。
工程(3)
工程(3)においては、本実施形態の樹脂組成物が感放射線性の樹脂組成物であり、下地膜をパターニングする場合には、(2)工程の露光の後の塗膜を現像することにより、不要な部分(放射線の非照射部分)を除去して、所定の塗膜パターンを形成する。
現像工程に使用される現像液としては、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液が好ましい。アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
また、このようなアルカリ水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を利用することができる。現像時間は、本実施形態の樹脂組成物の組成によって異なるが、好ましくは10秒間〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば、流水洗浄を30秒間〜90秒間行った後、例えば、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
工程(4)
工程(4)においては、本実施形態の樹脂組成物が熱硬化性を有する場合には、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用い、本実施形態の樹脂組成物の塗膜を加熱する。そして、本実施形態の樹脂組成物を硬化させ、本発明の実施形態の下地膜を得ることができる。
図2は、基板上の全面に形成された本発明の実施形態の下地膜を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、本工程により、基板1上に本発明の第1実施形態の樹脂組成物を用いて形成された下地膜3が得られる。
下地膜3は、図2に示すように、基板1の全面に形成することができる。また、上述の工程(2)および工程(3)により、樹脂組成物の塗膜がパターニングされている場合には、パターニングされた塗膜を加熱することによって、パターニングされた塗膜を硬化させ、パターニングされた下地膜3を得ることができる。
加熱温度は、例えば、120℃〜250℃である。加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えば、ホットプレート上で加熱工程を行う場合には5分間〜30分間、オーブン中で加熱工程を行う場合には30分間〜90分間とすることができる。2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。このようにして、目的とする導電性パターンの下地膜3を基板1の表面に形成することができる。
以上の工程(1)〜工程(4)による形成された本実施形態の下地膜3の膜厚は、好ましくは0.1μm〜10μm、より好ましくは0.1μm〜6μm、さらに好ましくは0.1μm〜4μmである。
<導電性パターンの形成>
本実施形態の導電性パターン形成方法において、導電性パターンの形成は、上述した樹脂組成物塗布工程と放射線照射/加熱工程とにより形成された下地膜を用いて行うことができる。導電性パターンの形成は、上述した導電膜形成インク塗布工程と加熱工程とによって行われる。
図3は、本発明の実施形態の導電性パターン形成方法の導電膜形成インク塗布工程を模式的に説明する断面図である。
図3に示すよう、導電膜形成インク塗布工程では、上述した樹脂組成物塗布工程と放射線照射/加熱工程とにより、基板1上に形成された下地膜3の上の少なくとも一部の領域に、本発明の第2実施形態の導電膜形成インク4を塗布する。
次いで、導電膜形成インク塗布工程により基板1上に形成された導電膜形成インクの塗膜を加熱工程で加熱する。
図4は、基板上に形成された本発明の実施形態の導電性パターンを模式的に示す断面図である。
図4に示すように、加熱工程によって、基板1上の下地膜3の上に所望の形状にパターニングされた導電性パターン5が形成される。
本実施形態においては、導電膜形成インク塗布工程における導電膜形成インクの塗布方法に対応して、導電膜形成インクの粘度を調整することができる。導電膜形成インクの粘度は、0.1Pa・s〜100Pa・sの範囲が好ましく、0.5Pa・s〜70Pa・sの範囲がより好ましく、1Pa・s〜50Pa・sの範囲がさらに好ましい。用いられる塗布方法に応じて還元剤の種類と量を調整して、導電膜形成インクの粘度を調整することができる。また、必要に応じて用いられる金属微粒子および溶剤の種類と量を調節することで、導電膜形成インクの粘度を調節することができる。
本実施形態の導電膜形成インクの粘度は、キャピラリー型、二重円筒型等の剪断速度が規定できる粘度測定方法ならばいずれの方法を用いても測定可能であるが、例えば、コーン/プレート型(E型)粘度計の使用が好ましい。
本実施形態の導電膜形成インク塗布工程における導電膜形成インクの塗布方法としては、オフセット印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、(シルク)スクリーン印刷、凸版印刷等の印刷塗布の方法、ディスペンサによる塗布の方法等が挙げられる。微細で厚みがあり、低抵抗で断線しにくい導電膜形成を行う観点からは、オフセット印刷が好ましい。オフセット印刷は、例えば、特開2010−159350号、特開2011−178006号の記載を基に行うことができる。
例えば、オフセット印刷、凸版印刷、(シルク)スクリーン印刷等の高粘度領域の導電膜形成インクが適した方法である場合、1Pa・s〜50Pa・sが好ましい。とくにオフセット印刷の場合、10Pa・s〜50Pa・sが好ましい。尚、上記粘度における温度は20℃、剪断速度は10sec−1である。
本実施形態の導電膜形成インク塗布工程の後に行う、加熱工程では、加熱を、非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気としては、窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、アルゴン雰囲気等が挙げられる。これらの中でも、安価な窒素ガスを用いることができる窒素雰囲気が好ましい。また、処理能力向上のため、窒素フローリフロー炉等の連続焼成炉を使用し、加熱処理をすることも可能である。その結果、本実施形態の導電膜形成インクは、塗布された後、水素ガス等の還元性ガスを用いた還元雰囲気を形成する必要はなく、安全な状態で加熱され、所望とする導電性パターンを形成することができる。
本実施形態の加熱工程での加熱温度は、例えば、銅塩等の金属塩が還元され、有機物が分解または揮発する温度であれば特に限定するものではない。好ましくは、50℃〜500℃の範囲であり、120℃〜360℃の範囲がより好ましく、120℃〜260℃の範囲がさらに好ましい。例えば、銅塩等である金属塩の還元反応を進行させ、また有機物の残存を防ぐためには加熱温度が50℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。そして、加熱温度は、500℃以下であることが好ましく、導電性パターンの形成される基板が有機材料からなる基板である場合を考慮すると、360℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがより好ましい。
本実施形態の加熱工程での加熱時間は、使用する本実施形態の導電膜形成インクが含有する金属塩の種類や、形成される導通部の導電性を考慮して適宜選択すればよく、特に限定するものではないが、300℃程度の加熱温度を設定した場合には、通常10分〜60分間程度であり、250℃程度の加熱温度を設定した場合には、通常10分〜70分間程度である。
以上の本実施形態の導電性パターン形成方法により、基板上の下地膜の上に形成された本実施形態の導電性パターンは、導通性および密着性等の特性に優れ、高精細な配線や電極の形成の配線の形成に有効となる。
そして、本実施形態の導電性パターンは、本発明の実施形態の電子回路の形成に好適に用いることができる。すなわち、本発明の実施形態の電子回路は、本発明の実施形態の導電性パターンを有して構成される。そして、本発明の実施形態の電子回路は、本発明の実施形態の導電性パターンを有し、回路基板を形成して電子機器の構成に用いることができる。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例に本発明が限定的に解釈されるものではない。
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部およびジエチレングリコールジメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きメタクリル酸16質量部、メタクリル酸グリシジル20質量部、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート16質量部、メチルメタクリレート38質量部およびスチレン10質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇し、この温度を4時間保持して重合することにより、[A]重合体として、アクリル系重合体である共重合体(A−1)を含有する溶液を得た(固形分濃度=34.3質量%、Mw=8000、Mw/Mn=2.3)。尚、固形分濃度は共重合体溶液の全質量に占める共重合体質量の割合を意味する。
[合成例2]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4質量部およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル300質量部を仕込み、引き続き構造単位(a3)を与えるメタクリル酸23質量部、他の構造単位を与えるスチレン10質量部、メタクリル酸ベンジル32質量部およびメタクリル酸メチル35質量部、並びに分子量調節剤としてのα−メチルスチレンダイマー2.7質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇し、この温度を4時間保持した後、100℃に上昇させ、この温度を1時間保持して重合することにより共重合体を含有する溶液を得た(固形分濃度=24.9質量%)。得られた共重合体のMwは、12500であった。
次いで、得られた共重合体を含む溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド1.1質量部、重合禁止剤としての4−メトキシフェノール0.05質量部を加え、空気雰囲気下90℃で30分間攪拌後、メタクリル酸グリシジル16質量部を入れて90℃のまま10時間反応させることにより、[A]重合体として、アクリル系重合体である共重合体(A−2)を得た(固形分濃度=29.0質量%)。共重合体(A−2)のMwは、14200であった。共重合体(A−2)をヘキサンに滴下することで再沈殿精製を行い、再沈殿した樹脂固形分について、1H−NMR分析によりメタクリル酸グリシジルの反応率(構造単位(a1)の生成率)を算出した。6.1ppm付近および5.6ppm付近にメタクリル酸グリシジルのメタクリル基に由来するピークと共重合体のメタクリル酸ベンジルの構造単位に由来する6.8ppm〜7.4ppm付近の芳香環のプロトンとの積分比の比較から、メタクリル酸グリシジルと共重合体中のカルボキシ基との反応率を算出した。その結果、反応させたメタクリル酸グリシジルの96モル%が共重合体中のカルボキシ基と反応したことが確認された。
[合成例3]
撹拌機付の容器内に、プロピレングリコールモノメチルエーテル23質量部を仕込み、続いて、メチルトリメトキシシラン24質量部、テトラメトキシシラン22質量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン17質量部を仕込み、溶液温度が60℃になるまで加熱した。溶液温度が60℃に到達後、ギ酸0.1質量部、イオン交換水21質量部を仕込み、75℃になるまで加熱し、2時間保持した。45℃に冷却後、脱水剤としてオルト蟻酸メチル30質量部を加え、1時間攪拌した。さらに溶液温度を40℃にし、温度を保ちながらエバポレーションすることで、イオン交換水および加水分解縮合で発生したメタノールおよびエタノールを除去した。以上により、[A]重合体として、シロキサン系重合体であるポリシロキサン(A−3)を得た。ポリシロキサン(A−3)は、固形分濃度が34質量%であり、重量平均分子量(Mw)が2600であり、分散度(Mw/Mn)が2.3であった。
[合成例4]
加熱冷却・攪拌装置、環流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EOCN(登録商標)−1020」(日本化薬製、エポキシ当量200)200質量部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート245質量部を仕込み、110℃まで加熱して均一に溶解させた。続いて、アクリル酸76質量部(1.07モル部)、トリフェニルホスフィン2質量部、およびp−メトキシフェノール0.2質量部を仕込み、110℃にて10時間反応させた。反応物にさらにテトラヒドロ無水フタル酸91質量部(0.60モル部)を仕込み、さらに90℃で5時間反応させ、冷却後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて固形分濃度を調整し、[A]重合体として、カルボキシル基およびアクリロイル基を有する樹脂(A−4)(Mn:2200、SP値:11.26、HLB値:6.42、酸価:91mgKOH/g)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(固形分濃度=25質量%)。
<樹脂組成物の調製>
実施例および比較例で用いた各成分の詳細を以下に示す。
<[A]重合体>
A−1:合成例1参照
A−2:合成例2参照
A−3:合成例3参照
A−4:合成例4参照
<[B]界面活性剤>
B−1:メガファック(登録商標)EXP.TF−1694 (DIC(株)製)
B−2:SH8400FLUID (東レ・ダウコーニング(株)製)
B−3:FTX−218、(ネオス(株)製)
B−4:ポリフローNo.95 (共栄社(株)製)
<[C]重合性化合物>
C−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
C−2:1,9−ノナンジオールジアクリレート
<[D]感放射線性重合開始剤>
C−1:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア(登録商標)907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)
C−2:2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュア(登録商標)379、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)
C−3:エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)(イルガキュア(登録商標)OXE02、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)
[実施例1〜10および比較例1〜4]
表1に示す種類、含有量の各成分を混合し、固形分濃度が30質量%となるように、それぞれプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えた後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例4の各樹脂組成物を調製した。尚、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
<導電膜形成インクの調製>
[調製例1]
セパラブルフラスコに40.7gの2−エチルヘキシルアミンを加え、続いてメカニカルスターラーで攪拌しながら無水ギ酸銅19.3gを30分かけて徐々に添加した。添加終了後、メカニカルスターラーでの攪拌を継続しながら30℃に加温して反応を3時間行うことにより、粘度6.8Pa・sの濃青色の銅錯体インクを得た。
<導線性パターンの形成と評価>
実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例4で調製した各樹脂組成物を用い、調製例1で調製した導電膜形成インクを用い、以下の評価を実施した。評価結果を表2に示す。
実施例11
[インク印刷性]
無アルカリガラス基板上に、実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例4で調製した各樹脂組成物をスピンナーにより塗布した後、90℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより膜厚0.5μmの塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜に高圧水銀ランプを用いて露光量を1000mJ/cm2として放射線照射を行った。その後、さらにオーブン中150℃で60分ポストベークすることにより、導電性パターンを形成するための下地膜を形成した(以下、「導電性パターン下地膜形成工程」と称することがある)。
次に、調製例1で調製した導電膜形成インクを用い、下地膜を形成した無アルカリガラス基板上にスクリーン印刷法を用いて塗膜を形成した。塗膜はパターニングされ、長方形状の2つのパッド部を線幅100μmの直線状の部分が接続する形状を備える。そして、導電膜形成インクが、良好な印刷性を示した場合にはA(良好)、塗布後に滲みが生じた際にはB(滲み)、ハジキが生じた際にはC(ハジキ)として性能を評価した。評価結果、後述する他の実施例と同様、表2にまとめて示した。
実施例12
[金属配線形成性]
上述した実施例11と同様に、導電性パターン下地膜形成工程を用いて下地膜形成基板を作製し、調製例1で調製した導電膜形成インクを用いて、同様のスクリーン印刷を行った。次いで、得られた塗膜を、窒素下で、ホットプレートにて190℃、30分焼成し、導電性パターンを得た。
図5は、本発明の実施例で形成された導電性パターンの形状を示す平面図である。
図5に示すように、本実施例の導電性パターン11は、下地膜12上に形成され、長方形状の2つのパッド部13が線幅100μmの直線状の金属配線14により接続される形状を備える。
尚、図5では、導電膜形成インクの印刷性が良好で、断線等が無い例を示している。
その後、形成された導電性パターンを用い、レーザー顕微鏡(VK−8500、キーエンス社)による観察を行った。その結果、金属配線が、良好な直線状である際にはA(良好)、濡れ広がってしまった場合にはB(濡れ性不良)、ハジキ等による断線が生じた場合にはC(断線不良)として評価した。
実施例13
[外観]
上述した実施例11と同様に、導電性パターン下地膜形成工程を用いて下地膜形成基板を作製し、調製例1で調製した導電膜形成インクを用いて、上述した実施例11と同様のスクリーン印刷を行った。次いで、得られた塗膜を、窒素下で、ホットプレートにて190℃、30分焼成し、導電性パターンを得た。得られた金属配線およびパッド部を目視して確認し、金属光沢があれば○、金属光沢がなければ×として外観の評価を行った。
実施例14
[密着性]
上述した実施例11と同様に、導電性パターン下地膜形成工程を用いて下地膜形成基板を作製し、調製例1で調製した導電膜形成インクを用いて、上述した実施例11と同様のスクリーン印刷を行った。次いで、得られた塗膜を、窒素下で、ホットプレートにて190℃、30分焼成し、導電性パターンを得た。
得られた導電性パターンの金属配線にテープ剥離試験を施し、剥がれが生じなかった際には○(良好)、部分的に剥がれが生じた際には△(やや不良)、剥がれが生じた際には×(不良)として密着性の評価を行った。
実施例15
[導電性]
上述した実施例11と同様に、導電性パターン下地膜形成工程を用いて下地膜形成基板を作製し、調製例1で調製した導電膜形成インクを用いて、上述した実施例11と同様のスクリーン印刷を行った。次いで、得られた塗膜を、窒素下で、ホットプレートにて190℃、30分焼成し、導電性パターンを得た。
得られた導電性パターンの金属配線の抵抗(導通性)を評価した。評価方法としては、テスターにて、導電性パターンの両側のパッド部を用いて2端子法にて測定し、その結果、導通が得られれば○、断線していれば×と判断した。
表2の結果から、実施例1〜実施例10で調製した樹脂組成物を用いて形成された下地膜は、比較例1〜比較例4で調製した樹脂組成物を用いて形成された下地膜と比べ、良好な導電膜形成インクのインク印刷性を有し、より良好な金属配線の形成性、金属配線の外観、金属配線の密着性および金属配線の導電性を付与できることがわかった。