JP6148390B1 - 金属材料の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】平衡状態の金属材料を適切に評価可能な金属材料の評価方法を提供する。【解決手段】主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法は、前記主成分と前記添加成分を含む前記合金の試料を作製する試料作製ステップと、前記添加成分の全量が平衡状態において前記主成分に固溶する第1温度と、前記添加成分の一部が平衡状態において前記主成分に固溶せずに析出する第2温度と、を含む複数の温度において前記試料の平衡状態を形成する平衡状態形成ステップと、前記平衡状態形成ステップにおいて前記複数の温度の各々にて前記平衡状態が形成された前記試料について、導電率指標又は強度指標を取得する指標取得ステップと、前記導電率指標又は前記強度指標の前記温度に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限温度を求める固溶限温度取得ステップと、を備える。【選択図】 図1
Description
本開示は金属材料の評価方法に関する。
複数の金属元素を含む合金により構成される金属材料において、主成分金属元素の結晶中に他の金属元素を固溶させることにより、金属材料を強化させることがある。
例えば、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金では、アルミニウム母相中にマグネシウムを固溶させることによってアルミニウム合金を強化可能であることが知られている(特許文献1参照)。
なお、特許文献2には、金属キャスクの構成部材の材料としてアルミニウム合金を用いる場合があること、及び、このようなアルミニウム合金材料について強度特性等の評価をするために、実製品において熱履歴に応じて起こり得る析出物の粗大化等の熱劣化現象を模擬して材料特性評価用試料を作製することが記載されている。
例えば、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金では、アルミニウム母相中にマグネシウムを固溶させることによってアルミニウム合金を強化可能であることが知られている(特許文献1参照)。
なお、特許文献2には、金属キャスクの構成部材の材料としてアルミニウム合金を用いる場合があること、及び、このようなアルミニウム合金材料について強度特性等の評価をするために、実製品において熱履歴に応じて起こり得る析出物の粗大化等の熱劣化現象を模擬して材料特性評価用試料を作製することが記載されている。
ところで、主成分金属中において、通常、他の金属元素(添加成分)は平衡固溶量(固溶限)を超えて固溶することができず、固溶限を超過した量の添加成分は、平衡状態においては金属材料の固溶強化に寄与しない。
よって、例えば、高温下で長時間使用される製品(例えば金属キャスク)の構成材料等、平衡状態での強度が要求される金属材料を開発するうえで、金属材料の平衡固溶量等の評価を適切に行うことは重要である。
よって、例えば、高温下で長時間使用される製品(例えば金属キャスク)の構成材料等、平衡状態での強度が要求される金属材料を開発するうえで、金属材料の平衡固溶量等の評価を適切に行うことは重要である。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、平衡状態の金属材料を適切に評価可能な金属材料の評価方法を提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る金属材料の評価方法は、
主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法であって、
前記主成分と前記添加成分を含む前記合金の試料を作製する試料作製ステップと、
前記添加成分の全量が平衡状態において前記主成分に固溶する第1温度と、前記添加成分の一部が平衡状態において前記主成分に固溶せずに析出する第2温度と、を含む複数の温度において前記試料の平衡状態を形成する平衡状態形成ステップと、
前記平衡状態形成ステップにおいて前記複数の温度の各々にて前記平衡状態が形成された前記試料について、導電率指標又は強度指標を取得する指標取得ステップと、
前記導電率指標又は前記強度指標の前記温度に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限温度を求める固溶限温度取得ステップと、
を備える。
主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法であって、
前記主成分と前記添加成分を含む前記合金の試料を作製する試料作製ステップと、
前記添加成分の全量が平衡状態において前記主成分に固溶する第1温度と、前記添加成分の一部が平衡状態において前記主成分に固溶せずに析出する第2温度と、を含む複数の温度において前記試料の平衡状態を形成する平衡状態形成ステップと、
前記平衡状態形成ステップにおいて前記複数の温度の各々にて前記平衡状態が形成された前記試料について、導電率指標又は強度指標を取得する指標取得ステップと、
前記導電率指標又は前記強度指標の前記温度に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限温度を求める固溶限温度取得ステップと、
を備える。
本発明者らの知見によれば、主成分と添加成分とを含む合金においては、主成分金属への添加成分金属の固溶量に応じて、導電率又は強度特性が変化する。
すなわち、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する温度範囲では、添加成分の固溶量が一定であるため、導電率指標は実質的に温度に依らず一定であり、温度に依存する強度指標は温度に応じて一様な変化をする。また、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する上述の温度範囲の下限値(固溶限温度)以下の温度範囲では、添加成分の固溶量(固溶限)は温度に依存して変化するため、合金の導電率指標は温度に依存して変化し、強度指標は温度に依存した一様な変化とは異なる変化をする。
よって、ある化学成分組成の合金について、温度と導電率指標又は強度指標との相関を示す相関曲線は、固溶限温度において変曲点を有する。
すなわち、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する温度範囲では、添加成分の固溶量が一定であるため、導電率指標は実質的に温度に依らず一定であり、温度に依存する強度指標は温度に応じて一様な変化をする。また、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する上述の温度範囲の下限値(固溶限温度)以下の温度範囲では、添加成分の固溶量(固溶限)は温度に依存して変化するため、合金の導電率指標は温度に依存して変化し、強度指標は温度に依存した一様な変化とは異なる変化をする。
よって、ある化学成分組成の合金について、温度と導電率指標又は強度指標との相関を示す相関曲線は、固溶限温度において変曲点を有する。
上記(1)の方法によれば、複数の温度の各々にて平衡状態の試料の導電率指標又は強度指標を取得することで、導電率指標又は強度指標の温度に対する相関曲線の変曲点が得られ、該変曲点に対応する固溶限温度を取得することができる。よって、上記(1)の方法によれば、上述のように固溶限温度を取得することにより、金属材料を適切に評価することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記試料作製ステップでは、前記添加成分の含有量が異なる複数の合金からそれぞれ形成された複数の試料を作製し、
前記複数の試料のそれぞれについて、前記平衡状態形成ステップ及び前記指標取得ステップを行い、
前記固溶限温度取得ステップでは、前記複数の試料のそれぞれに対応する複数の前記固溶限温度を取得し、前記複数の試料の前記固溶限温度に基づいて、各温度に対応する前記添加成分の固溶限を示す曲線を取得する。
前記試料作製ステップでは、前記添加成分の含有量が異なる複数の合金からそれぞれ形成された複数の試料を作製し、
前記複数の試料のそれぞれについて、前記平衡状態形成ステップ及び前記指標取得ステップを行い、
前記固溶限温度取得ステップでは、前記複数の試料のそれぞれに対応する複数の前記固溶限温度を取得し、前記複数の試料の前記固溶限温度に基づいて、各温度に対応する前記添加成分の固溶限を示す曲線を取得する。
上記(2)の方法によれば、複数の試料のそれぞれに対応する複数の固溶限温度を取得するので、該複数の試料の固溶限温度に基づいて、各温度に対応する添加成分の固溶限を示す曲線を取得することができる。このように取得した固溶限を示す曲線により、金属材料を適切に評価することができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、
前記平衡状態形成ステップでは、
前記試料の加工硬化が回復するように前記試料を熱処理し、
熱処理された前記試料を、少なくとも一部の温度領域において閾値以下の冷却速度で冷却するとともに、
前記冷却速度の前記閾値は、前記冷却速度に対する前記導電率指標の傾きの絶対値、又は、前記冷却速度に対する前記強度指標の傾きの絶対値の少なくとも一方が所定値以下となる冷却速度である。
前記平衡状態形成ステップでは、
前記試料の加工硬化が回復するように前記試料を熱処理し、
熱処理された前記試料を、少なくとも一部の温度領域において閾値以下の冷却速度で冷却するとともに、
前記冷却速度の前記閾値は、前記冷却速度に対する前記導電率指標の傾きの絶対値、又は、前記冷却速度に対する前記強度指標の傾きの絶対値の少なくとも一方が所定値以下となる冷却速度である。
上記(3)の方法では、平衡状態形成ステップにおいて、冷却速度に対する導電率指標又は強度指標の傾きの絶対値が所定値以下となる冷却速度の閾値以下の冷却速度で試料を冷却する。これにより、冷却中の各温度での平衡状態に近い状態で試料が冷却されるため、該試料において、過飽和固溶の状態を回避しつつ添加成分等が析出される。よって、上記(3)の方法によれば、閾値以下の冷却速度で試料を冷却することにより、試料の平衡状態を形成することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、
前記平衡状態形成ステップでは、前記閾値以下の冷却速度で前記試料を前記第2温度よりも低い第3温度まで冷却した後、前記第3温度から前記複数の温度の各々まで平衡状態を維持しながら前記試料を昇温し、
前記指標取得ステップでは、前記複数の温度の各々まで前記試料が昇温された後、前記複数の温度の各々において前記導電率指標又は前記強度指標を取得する。
前記平衡状態形成ステップでは、前記閾値以下の冷却速度で前記試料を前記第2温度よりも低い第3温度まで冷却した後、前記第3温度から前記複数の温度の各々まで平衡状態を維持しながら前記試料を昇温し、
前記指標取得ステップでは、前記複数の温度の各々まで前記試料が昇温された後、前記複数の温度の各々において前記導電率指標又は前記強度指標を取得する。
上記(4)の方法によれば、平衡状態形成ステップにおいて、試料の導電率指標又は強度指標を取得する第1温度及び第2温度よりも低い第3温度まで試料を一旦冷却してから、導電率指標又は強度指標の取得が行われる複数の温度まで昇温される。このため、複数の試料について、閾値以下の冷却速度で試料を第3温度まで冷却する工程を同時に実施することが可能となり、試料の作製を効率的に行うことができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、前記指標取得ステップでは、前記平衡状態形成ステップにおいて前記閾値以下の冷却速度で前記試料を前記第2温度まで冷却する過程において、前記複数の異なる温度の各々において前記導電率指標又は前記強度指標を取得する。
上記(5)の方法によれば、平衡所状態形成ステップにおいて試料を第2温度まで冷却する過程において、複数の温度で導電率指標又は強度指標を取得する。このため、試料に複雑な熱履歴を与えることなく、各温度における導電率指標又は強度指標の取得を適切に行うことができる。
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係る金属材料の評価方法は、
主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法であって、
前記主成分と前記添加成分を含み、前記添加成分の含有量が互いに異なる複数の前記合金の試料を作製する試料作製ステップと、
規定温度において前記複数の試料の平衡状態を形成する平衡状態形成ステップと、
前記平衡状態形成ステップにおいて前記規定温度にて前記平衡状態が形成された前記複数の試料の各々について、導電率指標又は強度指標を取得する指標取得ステップと、
前記導電率指標又は前記強度指標の前記添加成分の含有量に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限を求める固溶限取得ステップと、を備え、
前記試料作製ステップでは、前記規定温度において、前記添加成分の全量が平衡状態において前記主成分に固溶する第1試料と、前記規定温度において、前記添加成分の一部が平衡状態において前記主成分に固溶せずに析出する第2試料と、を含む複数の試料を作製する。
主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法であって、
前記主成分と前記添加成分を含み、前記添加成分の含有量が互いに異なる複数の前記合金の試料を作製する試料作製ステップと、
規定温度において前記複数の試料の平衡状態を形成する平衡状態形成ステップと、
前記平衡状態形成ステップにおいて前記規定温度にて前記平衡状態が形成された前記複数の試料の各々について、導電率指標又は強度指標を取得する指標取得ステップと、
前記導電率指標又は前記強度指標の前記添加成分の含有量に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限を求める固溶限取得ステップと、を備え、
前記試料作製ステップでは、前記規定温度において、前記添加成分の全量が平衡状態において前記主成分に固溶する第1試料と、前記規定温度において、前記添加成分の一部が平衡状態において前記主成分に固溶せずに析出する第2試料と、を含む複数の試料を作製する。
本発明者らの知見によれば、主成分と添加成分とを含む合金においては、主成分金属への添加成分金属の固溶量に応じて、導電率又は強度特性が変化する。
すなわち、ある規定温度において、該規定温度における固溶限以下の含有量を含む金属材料の場合、添加成分の全量が主成分に固溶するため、含有量の変化に応じて固溶量が変化する。よって、導電率指標又は強度指標も、含有量の変化に応じて変化する。
また、ある規定温度において、該規定温度における固溶限を超える含有量の添加成分を含む金属材料の場合、添加成分のうち、固溶限に相当する量のみが主成分に固溶し、残部は析出するため、添加成分の含有量に依らず固溶量は一定である。よって、導電率指標は実質的に添加成分の含有量に依らず一定であり、温度に依存する強度指標は温度に応じて一様な変化をする。
よって、ある規定温度について、添加成分の含有量と導電率指標又は強度試料との相関を示す相関曲線は、固溶限(平衡固溶量)において変曲点を有する。
すなわち、ある規定温度において、該規定温度における固溶限以下の含有量を含む金属材料の場合、添加成分の全量が主成分に固溶するため、含有量の変化に応じて固溶量が変化する。よって、導電率指標又は強度指標も、含有量の変化に応じて変化する。
また、ある規定温度において、該規定温度における固溶限を超える含有量の添加成分を含む金属材料の場合、添加成分のうち、固溶限に相当する量のみが主成分に固溶し、残部は析出するため、添加成分の含有量に依らず固溶量は一定である。よって、導電率指標は実質的に添加成分の含有量に依らず一定であり、温度に依存する強度指標は温度に応じて一様な変化をする。
よって、ある規定温度について、添加成分の含有量と導電率指標又は強度試料との相関を示す相関曲線は、固溶限(平衡固溶量)において変曲点を有する。
上記(6)の方法によれば、規定温度にて、添加成分の含有量が異なる複数の試料の導電率指標又は強度指標を取得することで、導電率指標又は強度指標の添加成分の含有量に対する相関曲線の変曲点が得られ、該変曲点に対応する固溶限(平衡固溶量)を取得することができる。よって、上記(6)の方法によれば、上述のように固溶限を取得することにより、金属材料を適切に評価することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の方法において、
複数種の前記規定温度のそれぞれについて、前記平衡状態形成ステップ及び前記指標取得ステップを行い、
前記固溶限取得ステップでは、複数種の前記規定温度のそれぞれに対応する複数の前記固溶限を求める。
複数種の前記規定温度のそれぞれについて、前記平衡状態形成ステップ及び前記指標取得ステップを行い、
前記固溶限取得ステップでは、複数種の前記規定温度のそれぞれに対応する複数の前記固溶限を求める。
上記(7)の方法にでは、複数種の規定温度のそれぞれに対応する複数の固溶限を取得する。よって、該複数の固溶限により、金属材料を適切に評価することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、
前記試料の前記導電率指標は、前記試料の導電率、電気抵抗又は熱伝導率のうち少なくとも一つである。
前記試料の前記導電率指標は、前記試料の導電率、電気抵抗又は熱伝導率のうち少なくとも一つである。
上記(8)の方法によれば、金属材料の導電率を示す導電率指標として一般的な導電率、電気抵抗又は熱伝導率の少なくとも一つを用いて、金属材料を適切に評価することができる。
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの方法において、
前記試料の前記強度指標は、前記試料の引張強さ、耐力又は硬度の少なくとも一つである。
前記試料の前記強度指標は、前記試料の引張強さ、耐力又は硬度の少なくとも一つである。
上記(9)の方法によれば、金属材料の強度を示す強度指標として一般的な引張強さ、耐力又は硬度の少なくとも一つを用いて、金属材料を適切に評価することができる。
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの方法において、
前記主成分はアルミニウムであり、前記添加成分はマグネシウム、銅又はマンガンのうち少なくとも1つを含む。
前記主成分はアルミニウムであり、前記添加成分はマグネシウム、銅又はマンガンのうち少なくとも1つを含む。
マグネシウム、銅、又はマンガン等は、アルミニウム合金において固溶強化に寄与する成分である。この点、上記(10)の方法によれば、マグネシウム、銅、又はマンガンを添加成分として含むアルミニウム合金を材料としてつくられる製品について、金属材料の評価を適切に行うことができる。例えば、マグネシウム含有アルミニウム合金から形成されたバスケット(金属キャスクの構造部材の一つ)について、金属材料の評価を適切に行うことができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、平衡状態の金属材料を適切に評価可能な金属材料の評価方法が提供される。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
まず、一実施形態に係る金属材料の評価方法の概要について説明する。以下に説明する金属材料の評価方法は、主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法である。図1は、一実施形態に係る金属材料の評価方法の概要を示すフローチャートである。
図1に示すように、一実施形態に係る金属材料の評価方法では、まず、主成分と添加成分とを含む合金の試料を作製する(S2)。すなわち、ステップS2では、評価対象の金属材料を、例えば押出成形等の手法により、評価用の試料の形状に成形する。
次に、複数の条件下においてステップS2で作製した試料の平衡状態を形成する(S4)。複数の条件とは、例えば、温度が異なる複数の条件であってもよく、あるいは、試料の組成(添加成分等の含有量)が異なる複数の条件であってもよい。
そして、ステップS4で平衡状態が形成された試料について導電率指標又は強度指標を取得し(S6)、ステップS6で得られた導電率指標又は強度指標に基づいて、試料の固溶限に関する情報(固溶限温度又は固溶限(最大固溶濃度))を取得する(S8)。
次に、複数の条件下においてステップS2で作製した試料の平衡状態を形成する(S4)。複数の条件とは、例えば、温度が異なる複数の条件であってもよく、あるいは、試料の組成(添加成分等の含有量)が異なる複数の条件であってもよい。
そして、ステップS4で平衡状態が形成された試料について導電率指標又は強度指標を取得し(S6)、ステップS6で得られた導電率指標又は強度指標に基づいて、試料の固溶限に関する情報(固溶限温度又は固溶限(最大固溶濃度))を取得する(S8)。
本発明者らの知見によれば、主成分と添加成分とを含む合金においては、主成分金属への添加成分金属の固溶量に応じて、導電率又は強度特性が変化する。
すなわち、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する温度範囲では、添加成分の固溶量が一定であるため、導電率指標は実質的に温度に依らず一定であり、温度に依存する強度指標は温度に応じて一様な変化をする。また、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する上述の温度範囲の下限値(固溶限温度)以下の温度範囲では、添加成分の固溶量(固溶限)は温度に依存して変化するため、合金の導電率指標は温度に依存して変化し、強度指標は温度に依存した一様な変化とは異なる変化をする。
すなわち、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する温度範囲では、添加成分の固溶量が一定であるため、導電率指標は実質的に温度に依らず一定であり、温度に依存する強度指標は温度に応じて一様な変化をする。また、ある化学成分組成の合金において、添加成分の全量が主成分金属に固溶する上述の温度範囲の下限値(固溶限温度)以下の温度範囲では、添加成分の固溶量(固溶限)は温度に依存して変化するため、合金の導電率指標は温度に依存して変化し、強度指標は温度に依存した一様な変化とは異なる変化をする。
このことについて、図2を参照して以下に説明する。図2は、アルミニウム合金の状態図の一部を模擬的に示す図である。図2の状態図において、横軸はアルミニウム合金の組成を表し、原点においてアルミニウムが100%であり、正方向に行くに従いアルミニウムの含有量が少なくなるとともに、添加成分の含有量が多くなる。また、図5の状態図において縦軸は温度Tを表す。また、図5の状態図において、点K、M、Nを通る曲線は固相線であり、点M、Q、S、Tを通る曲線は固溶限を示す曲線L(固溶線)である。
添加成分が主成分金属に固溶した固溶体を、例えば、比較的大きな冷却速度で冷却すると、試料は冷却前の高温での平衡状態での組織の状態が維持されたままで冷却されるため、試料において添加成分が過飽和固溶した状態となりやすい。図2を用いて説明すると、例えば、組成がX1の点Pの状態(固溶体)であるアルミニウム合金は、比較的大きな冷却速度で急冷されると、点Qを通って点Uの過飽和固溶の状態に向かって移行する。この場合、点Pの固溶体の状態と、点Uの過飽和固溶の状態とでは、添加成分の固溶量(固溶濃度)は基本的には変化しない。
一方、添加成分が主成分金属に固溶した固溶体を、比較的小さな冷却速度で冷却すると、試料は冷却中の各温度での平衡状態により近づきながら冷却されるため、試料において添加成分の過飽和固溶の状態が緩和されるとともに、添加成分の析出が進む。図2を用いて説明すると、例えば、組成がX1の点Pの状態(固溶体)であるアルミニウム合金は、十分小さな冷却速度で徐冷されると、点Qから固溶限を示す曲線に沿って平衡状態に近い状態を保ちながら点Sに向かって状態が移行する。この場合、点Pの固溶体の状態と、点Sの固溶体の状態とでは、添加成分の固溶量が異なる。すなわち、点Pから点Qまでは、添加成分の全量が主成分金属に固溶しているため、添加成分の固溶量は実質的に変化しないが、点Qから点Sまでは、固溶限を示す曲線に沿って状態が移行するため、添加成分の固溶量が徐々に減少する。
したがって、ある組成の金属材料について、温度と各温度での平衡状態の試料における添加成分の固溶量との相関を示す相関曲線は、変曲点(図2に示す例では点Q)を有する。この変曲点は、ある組成における固溶限温度、又は、ある温度における固溶限(最大固溶濃度)を示す。
ここで、試料の導電率指標及び強度指標は、該試料における添加成分の固溶量を示す指標である。したがって、ある組成の合金について、温度と各温度での平衡状態の試料の導電率指標又は強度指標との相関を示す相関曲線は、固溶限温度において変曲点を有する。そして、この変曲点は、ある組成における固溶限温度、又は、ある温度における固溶限(最大固溶濃度)を示す。
ここで、試料の導電率指標及び強度指標は、該試料における添加成分の固溶量を示す指標である。したがって、ある組成の合金について、温度と各温度での平衡状態の試料の導電率指標又は強度指標との相関を示す相関曲線は、固溶限温度において変曲点を有する。そして、この変曲点は、ある組成における固溶限温度、又は、ある温度における固溶限(最大固溶濃度)を示す。
すなわち、試料の導電率指標の導電率は、該試料に含まれる添加成分(例えば合金における添加成分)の固溶量と相関性を有し、試料中において添加成分の固溶量が多いほど、電気抵抗が上昇するため導電率及び導電率指標は小さくなる。よって、試料の導電率指標は、添加成分の固溶量を示す指標である。
また、試料の強度は、該試料に含まれる添加成分の固溶量と相関性を有し、固溶量が多いほど試料の強度が大きくなるため、強度指標は大きくなる。また、試料の強度は、該試料に含まれる添加成分の固溶限を超える添加量である場合は、固溶限を超える成分量が析出物となり、析出された量に相当する強度が低下するため、強度指標は小さくなる。よって、試料の強度指標は、添加成分の固溶量を示す指標である。
したがって、上述のステップのS8において、温度と各温度での平衡状態の試料の導電率指標又は強度指標との相関を示す相関曲線から、固溶量に関する情報を取得することができる。よって、このようにして取得した固溶量に関する情報に基づいて、金属材料を適切に評価することができる。
なお、試料の導電率指標としては、例えば、試料の導電率、電気抵抗又は熱伝導率のうち少なくとも一つを用いることができる。
また、試料の強度指標としては、例えば、冷却速度検討用試料の引張強さ、耐力(例えば0.2%耐力)又は硬度のうち少なくとも一つを用いることができる。
また、試料の強度指標としては、例えば、冷却速度検討用試料の引張強さ、耐力(例えば0.2%耐力)又は硬度のうち少なくとも一つを用いることができる。
幾つかの実施形態では、評価対象の金属材料は、アルミニウムを主成分とし、マグネシウム、銅又はマンガンなど固溶強化に寄与する成分を添加成分として含有するアルミニウム合金である。
例えば、金属キャスクの構成部材であるバスケットは、マグネシウム含有アルミニウム合金から形成されることがある。よって、マグネシウム含有アルミニウム合金を評価対象とすることで、上述のバスケットについて、金属材料の評価を適切に行うことができる。
例えば、金属キャスクの構成部材であるバスケットは、マグネシウム含有アルミニウム合金から形成されることがある。よって、マグネシウム含有アルミニウム合金を評価対象とすることで、上述のバスケットについて、金属材料の評価を適切に行うことができる。
次に、幾つかの実施形態について、上述のステップS2〜S8についてより具体的に説明する。
(第1実施形態)
試料を作製するステップS2では、主成分と添加成分とを含む金属材料(合金)の試料を作製するが、金属材料を試料形状に成形する方法は特に限定されない。例えば、押出成形、射出成型、鋳造又は鍛造等の方法によって金属材料を試料形状に成形してもよい。
また、ステップS2では、評価対象の金属材料の使用が想定される実製品と同様の条件及び方法により金属材料を成形してもよい。
金属材料が、金属キャスクを形成することが想定されるアルミニウム合金である場合、押出成形により試料を成形してもよい。また、金属材料が上述のアルミニウム合金である場合、成形温度は、例えば450℃〜550℃程度の温度であってもよい。
試料を作製するステップS2では、主成分と添加成分とを含む金属材料(合金)の試料を作製するが、金属材料を試料形状に成形する方法は特に限定されない。例えば、押出成形、射出成型、鋳造又は鍛造等の方法によって金属材料を試料形状に成形してもよい。
また、ステップS2では、評価対象の金属材料の使用が想定される実製品と同様の条件及び方法により金属材料を成形してもよい。
金属材料が、金属キャスクを形成することが想定されるアルミニウム合金である場合、押出成形により試料を成形してもよい。また、金属材料が上述のアルミニウム合金である場合、成形温度は、例えば450℃〜550℃程度の温度であってもよい。
試料の平衡状態を形成するステップS4では、複数の温度において、ステップS2で作製した試料の平衡状態を形成する。複数の温度は、添加成分の全量が平衡状態において主成分に固溶する第1温度(例えば、図2に示すT1)と、添加成分の一部が平衡状態において主成分に固溶せずに析出する第2温度(例えば、図2に示すT2)と、を含む。
そして、指標を取得するステップS6では、第1温度T1及び第2温度T2を含む複数の温度の各々にて、平衡状態が形成された試料の導電率指標又は強度指標を取得する。
そして、指標を取得するステップS6では、第1温度T1及び第2温度T2を含む複数の温度の各々にて、平衡状態が形成された試料の導電率指標又は強度指標を取得する。
ステップS4では、試料の加工硬化が回復するように試料を熱処理し、熱処理された該試料を、少なくとも一部の温度領域において閾値以下の冷却速度で冷却するようにしてもよい。ここで、前述の冷却速度の閾値は、冷却速度に対する導電率指標の傾きの絶対値、又は、冷却速度に対する強度指標の傾きの絶対値の少なくとも一方が所定値以下となる冷却速度である。
上述したように、添加成分が主成分金属に固溶した固溶体を、比較的小さな冷却速度で冷却すると、試料は冷却中の各温度での平衡状態により近づきながら冷却されるため、試料において添加成分の過飽和固溶の状態が緩和されるとともに、添加成分の析出が進む。
そして、冷却速度を十分小さくすることで、試料を冷却中の各温度で平衡状態に十分近づけることができ、この場合、それ以上冷却速度を小さくしても、冷却後の試料において固溶及び析出の状態に大きな変化は現れないため、冷却後の試料の導電率指標はほとんど変化しなくなる。すなわち、冷却速度に対する導電率指標の傾きの大きさは小さくなる。
そして、冷却速度を十分小さくすることで、試料を冷却中の各温度で平衡状態に十分近づけることができ、この場合、それ以上冷却速度を小さくしても、冷却後の試料において固溶及び析出の状態に大きな変化は現れないため、冷却後の試料の導電率指標はほとんど変化しなくなる。すなわち、冷却速度に対する導電率指標の傾きの大きさは小さくなる。
よって、ステップS4において冷却速度に対する導電率指標又は強度指標の傾きの絶対値が所定値以下となる冷却速度の閾値以下の冷却速度で熱処理された試料を冷却することにより、冷却中の各温度での平衡状態に近い状態で試料が冷却されるため、該試料において、過飽和固溶の状態を回避しつつ添加成分等が析出される。よって、上述の閾値以下の冷却速度で試料を冷却することにより、試料の平衡状態を形成することができる。
図3及び図4は、それぞれ、一実施形態に係る平衡状態形成ステップ(S4)及び指標取得ステップ(S6)のフローを示す図である。
幾つかの実施形態では、図3に示すように、ステップS4では、上述のように試料を熱処理し(ステップS102)、熱処理した試料を、上述の閾値以下の冷却速度で第2温度T2よりも低い第3温度まで冷却する(ステップS104)。その後、第3温度から、第1温度T1及び第2温度T2を含む複数の各々の温度まで平衡状態を維持しながら(例えば、小さな昇温速度で)試料を昇温する(ステップS106)。そして、ステップS6では、第1温度T1及び第2温度T2を含む各温度において、平衡状態が維持された試料の導電率指標又は前記強度指標を取得する(ステップS108)。
幾つかの実施形態では、図3に示すように、ステップS4では、上述のように試料を熱処理し(ステップS102)、熱処理した試料を、上述の閾値以下の冷却速度で第2温度T2よりも低い第3温度まで冷却する(ステップS104)。その後、第3温度から、第1温度T1及び第2温度T2を含む複数の各々の温度まで平衡状態を維持しながら(例えば、小さな昇温速度で)試料を昇温する(ステップS106)。そして、ステップS6では、第1温度T1及び第2温度T2を含む各温度において、平衡状態が維持された試料の導電率指標又は前記強度指標を取得する(ステップS108)。
あるいは、幾つかの実施形態では、各温度で試料の平衡状態を形成するステップS4の実行過程で、指標を取得するステップS6を行ってもよい。すなわち、図4に示すように、試料を熱処理し(ステップS202)、熱処理後の試料を上述の閾値以下の冷却速度で第2温度T2まで冷却する過程において、第1温度T1及び第2温度T2を含む各温度において導電率指標又は前記強度指標を取得する(ステップS204〜S208)。
図5は、ある組成(添加成分の含有量)X1の金属(合金)材料を試料としたときに、上述のステップS2〜S6を実行することにより得られた温度と導電率との相関曲線の一例である。なお、ここでは、導電率指標として導電率を用いている。
図5の相関曲線は、第1温度T1と第2温度T2との間の温度TX1において、変曲点を有する。すなわち、第1温度T1を含む温度Tx1以上の温度では、添加成分の全量が主成分金属に固溶しており、添加成分の固溶量は実質的に変化しないため(図2参照)、図5に示すように、試料の導電率は変化しない。一方、第2温度T2を含む温度Tx1以下の温度では、固溶限を示す曲線(図2参照)に沿って添加成分の固溶量が徐々に減少するため、図5に示すように、試料の導電率は徐々に増加する。
図5の相関曲線は、第1温度T1と第2温度T2との間の温度TX1において、変曲点を有する。すなわち、第1温度T1を含む温度Tx1以上の温度では、添加成分の全量が主成分金属に固溶しており、添加成分の固溶量は実質的に変化しないため(図2参照)、図5に示すように、試料の導電率は変化しない。一方、第2温度T2を含む温度Tx1以下の温度では、固溶限を示す曲線(図2参照)に沿って添加成分の固溶量が徐々に減少するため、図5に示すように、試料の導電率は徐々に増加する。
そして、固溶限に関する情報を取得するステップS8では、図5に示す相関曲線の変曲点より、組成X1の金属材料の固溶限温度TX1が得られる。
なお、ステップS4で試料の平衡状態を形成するとともに、ステップS6で試料の指標を取得する複数の温度(第1温度T1と第2温度T2とを含む複数の温度)を多数とすることで、温度と指標との相関曲線がより精度良く得られ、変曲点もより精度良く得ることができる。
なお、ステップS4で試料の平衡状態を形成するとともに、ステップS6で試料の指標を取得する複数の温度(第1温度T1と第2温度T2とを含む複数の温度)を多数とすることで、温度と指標との相関曲線がより精度良く得られ、変曲点もより精度良く得ることができる。
上述のステップS2〜S8を含む方法によれば、複数の温度の各々にて平衡状態の試料の導電率指標又は強度指標を取得することで、導電率指標又は強度指標の温度に対する相関曲線の変曲点が得られ、該変曲点に対応する固溶限温度を取得することができる。よって、このようにして固溶限温度を取得することにより、金属材料を適切に評価することができる。
また、幾つかの実施形態では、添加成分の含有量が異なる複数の試料を用いて、固溶限を示す曲線(金属材料の状態図の一部)を得ることができ、これに基づいて金属材料の評価を行うことができる。ここで、図6は、添加成分の含有量が異なる複数の試料を用いて得られる固溶限を示す曲線の一例である。
より具体的に説明すると、幾つかの実施形態では、試料作製ステップ(S2)では、添加成分の含有量が異なる複数の合金から形成された複数の試料を作製する。例えば、組成(添加成分の含有量)がX1,X2,X3,X4…の複数の試料を作製する。
そして、ステップS2作製した試料のそれぞれについて、平衡状態形成ステップ(S4)及び指標取得ステップ(S6)を行う。
そして、固溶限に関する情報を取得するステップ(S8)では、上述の複数の試料のそれぞれについて、温度と指標(導電率指標又は強度指標)の相関曲線から変曲点を求め(図5参照)、上述の複数の試料のそれぞれに対応する複数の固溶限温度TX1,TX2,TX3,TX4…を取得する。そして、これらの複数の固溶限温度と温度との相関関係を取得することにより、図6に示すような固溶限を示す曲線L1が得られる。
そして、ステップS2作製した試料のそれぞれについて、平衡状態形成ステップ(S4)及び指標取得ステップ(S6)を行う。
そして、固溶限に関する情報を取得するステップ(S8)では、上述の複数の試料のそれぞれについて、温度と指標(導電率指標又は強度指標)の相関曲線から変曲点を求め(図5参照)、上述の複数の試料のそれぞれに対応する複数の固溶限温度TX1,TX2,TX3,TX4…を取得する。そして、これらの複数の固溶限温度と温度との相関関係を取得することにより、図6に示すような固溶限を示す曲線L1が得られる。
このように、複数の試料の固溶限温度に基づいて、各温度に対応する添加成分の固溶限を示す曲線を取得することができ、該固溶限を示す曲線を用いて金属材料を適切に評価することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、試料作製ステップ(S2)において、ある規定温度において、添加成分の全量が平衡状態において主成分に固溶する第1試料と、同一の規定温度において、添加成分の一部が平衡状態において主成分に固溶せずに析出する第2試料と、を含む複数の試料を作製する。すなわち、第1試料及び第2試料を含む複数の試料は、それぞれ、添加成分の含有量が異なる。
なお、ステップS2における、試料の形成方法は、上述の第1実施形態におけるステップS2と同様の方法を採用することができる。
本実施形態では、試料作製ステップ(S2)において、ある規定温度において、添加成分の全量が平衡状態において主成分に固溶する第1試料と、同一の規定温度において、添加成分の一部が平衡状態において主成分に固溶せずに析出する第2試料と、を含む複数の試料を作製する。すなわち、第1試料及び第2試料を含む複数の試料は、それぞれ、添加成分の含有量が異なる。
なお、ステップS2における、試料の形成方法は、上述の第1実施形態におけるステップS2と同様の方法を採用することができる。
ステップS4では、上述の規定温度において、複数の試料の平衡状態を形成する。ステップS4では、上述の第1実施形態と同様に、試料の加工硬化が回復するように試料を熱処理し、熱処理された該試料を、少なくとも一部の温度領域において閾値以下の冷却速度で冷却するようにしてもよい。ここで、前述の冷却速度の閾値は、冷却速度に対する導電率指標の傾きの絶対値、又は、冷却速度に対する強度指標の傾きの絶対値の少なくとも一方が所定値以下となる冷却速度である。
指標を取得するステップS6では、上述のステップS4において規定温度にて平衡状態が形成された複数の試料の各々について、導電率指標又は強度指標を取得する。
なお、ステップS4及びステップS6は、上述の第1実施形態と同様、図3又は図4に示すフローに従って行ってもよい。
なお、ステップS4及びステップS6は、上述の第1実施形態と同様、図3又は図4に示すフローに従って行ってもよい。
固溶限に関する情報を取得するステップS8では、各試料の導電率指標又は強度指標の添加成分の含有量に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限を求める。
なお、ステップS4において試料の平衡状態を形成するとともに、ステップS6において試料の導電率指標又は強度指標を取得する規定温度としては、実製品の使用温度付近の温度又は室温等を採用することができる。
なお、ステップS4において試料の平衡状態を形成するとともに、ステップS6において試料の導電率指標又は強度指標を取得する規定温度としては、実製品の使用温度付近の温度又は室温等を採用することができる。
ここで、図7は、ある規定温度TY1における試料の強度指標の添加成分の含有量に対する相関曲線の一例である。この例において、各試料は、アルミニウムを主成分とし、マグネシウム(Mg)を添加成分として含有するアルミニウム合金から形成された試料である。また、この例では、強度指標として0.2%耐力を用いている。
組成(添加成分であるMgの含有量)がXS1である第1試料及び組成(Mgの含有量)がXS2である第2試料を含む複数の試料を用いて、上述のステップS2〜S6を行うと、図7に示すような、0.2%耐力と添加成分の含有量との相関曲線が得られる。
図7に示す相関曲線は、XS1とXS1との間の組成XTY1において変曲点を有する。すなわち、規定温度TY1において、第1試料(Mg含有量:XS1)を含む、Mg含有量がXTY1以下の組成では、添加成分(Mg)の全量が主成分に固溶するため、Mg含有量の変化に応じて固溶量が変化する。よって、0.2%耐力(強度指標)もMg含有量の変化に応じて変化する。また、規定温度TY1において、第2試料(Mg含有量:XS2)を含む、Mg含有量がXTY1以上の組成では、添加成分(Mg)のうち、固溶限に相当する量のみが主成分(アルミニウム)に固溶し、残部は析出するため、Mgの含有量に依らず固溶量は一定である。よって、0.2%耐力(強度指標)も、実質的にMgの含有量に依らず一定となる。
すなわち、図7に示すMg含有量と0.2%耐力(強度指標)との相関曲線の変曲点に対応するMg含有量XTY1は、規定温度TY1におけるMgの固溶限(最大固溶量)である。
図7に示す相関曲線は、XS1とXS1との間の組成XTY1において変曲点を有する。すなわち、規定温度TY1において、第1試料(Mg含有量:XS1)を含む、Mg含有量がXTY1以下の組成では、添加成分(Mg)の全量が主成分に固溶するため、Mg含有量の変化に応じて固溶量が変化する。よって、0.2%耐力(強度指標)もMg含有量の変化に応じて変化する。また、規定温度TY1において、第2試料(Mg含有量:XS2)を含む、Mg含有量がXTY1以上の組成では、添加成分(Mg)のうち、固溶限に相当する量のみが主成分(アルミニウム)に固溶し、残部は析出するため、Mgの含有量に依らず固溶量は一定である。よって、0.2%耐力(強度指標)も、実質的にMgの含有量に依らず一定となる。
すなわち、図7に示すMg含有量と0.2%耐力(強度指標)との相関曲線の変曲点に対応するMg含有量XTY1は、規定温度TY1におけるMgの固溶限(最大固溶量)である。
このように、上述のステップS2〜S6を含む方法によれば、規定温度TY1にて、添加成分(例えばMg)の含有量が異なる複数の試料の導電率指標又は強度指標を取得することで、導電率指標又は強度指標の添加成分の含有量に対する相関曲線の変曲点が得られ、該変曲点に対応する固溶限(平衡固溶量)を取得することができる。このように得られた固溶限を用いて、金属材料を適切に評価することができる。
幾つかの実施形態では、複数種の規定温度TY1,TY2,…のそれぞれについて、試料の平衡状態を形成するとともに(ステップS4)、導電率指標又は強度指標の取得を行い(ステップS6)、固溶限に関する情報を取得するステップS8において、複数種の規定温度TY1,TY2,…のそれぞれに対応する複数の固溶限を求めてもよい。
複数種の規定温度TY1,TY2,…のそれぞれに対応する複数の固溶限を取得することにより、これら複数の固溶限により金属材料を適切に評価することができる。
複数種の規定温度TY1,TY2,…のそれぞれに対応する複数の固溶限を取得することにより、これら複数の固溶限により金属材料を適切に評価することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
本明細書において、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
Claims (9)
- 主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法であって、
前記主成分と前記添加成分を含む前記合金の試料を作製する試料作製ステップと、
前記添加成分の全量が平衡状態において前記主成分に固溶する第1温度と、前記添加成分の一部が平衡状態において前記主成分に固溶せずに析出する第2温度と、を含む複数の温度において前記試料の平衡状態を形成する平衡状態形成ステップと、
前記平衡状態形成ステップにおいて前記複数の温度の各々にて前記平衡状態が形成された前記試料について、導電率指標又は強度指標を取得する指標取得ステップと、
前記導電率指標又は前記強度指標の前記温度に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限温度を求める固溶限温度取得ステップと、
を備え、
前記平衡状態形成ステップでは、
前記試料の加工硬化が回復するように前記試料を熱処理し、
熱処理された前記試料を、少なくとも一部の温度領域において閾値以下の冷却速度で冷却するとともに、
前記冷却速度の前記閾値は、前記冷却速度に対する前記導電率指標の傾きの絶対値、又は、前記冷却速度に対する前記強度指標の傾きの絶対値の少なくとも一方が所定値以下となる冷却速度である
ことを特徴とする金属材料の評価方法。 - 前記試料作製ステップでは、前記添加成分の含有量が異なる複数の合金からそれぞれ形成された複数の試料を作製し、
前記複数の試料のそれぞれについて、前記平衡状態形成ステップ及び前記指標取得ステップを行い、
前記固溶限温度取得ステップでは、前記複数の試料のそれぞれに対応する複数の前記固溶限温度を取得し、前記複数の試料の前記固溶限温度に基づいて、各温度に対応する前記添加成分の固溶限を示す曲線を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の金属材料の評価方法。 - 前記平衡状態形成ステップでは、前記閾値以下の冷却速度で前記試料を前記第2温度よりも低い第3温度まで冷却した後、前記第3温度から前記複数の温度の各々まで平衡状態を維持しながら前記試料を昇温し、
前記指標取得ステップでは、前記複数の温度の各々まで前記試料が昇温された後、前記複数の温度の各々において前記導電率指標又は前記強度指標を取得する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属材料の評価方法。 - 前記指標取得ステップでは、前記平衡状態形成ステップにおいて前記閾値以下の冷却速度で前記試料を前記第2温度まで冷却する過程において、前記複数の異なる温度の各々において前記導電率指標又は前記強度指標を取得する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属材料の評価方法。 - 主成分と添加成分とを含む合金から形成された金属材料を評価する方法であって、
前記主成分と前記添加成分を含み、前記添加成分の含有量が互いに異なる複数の前記合金の試料を作製する試料作製ステップと、
規定温度において前記複数の試料の平衡状態を形成する平衡状態形成ステップと、
前記平衡状態形成ステップにおいて前記規定温度にて前記平衡状態が形成された前記複数の試料の各々について、導電率指標又は強度指標を取得する指標取得ステップと、
前記導電率指標又は前記強度指標の前記添加成分の含有量に対する相関曲線の変曲点に対応する固溶限を求める固溶限取得ステップと、を備え、
前記試料作製ステップでは、前記規定温度において、前記添加成分の全量が平衡状態において前記主成分に固溶する第1試料と、前記規定温度において、前記添加成分の一部が平衡状態において前記主成分に固溶せずに析出する第2試料と、を含む複数の試料を作製する
ことを特徴とする金属材料の評価方法。 - 複数種の前記規定温度のそれぞれについて、前記平衡状態形成ステップ及び前記指標取得ステップを行い、
前記固溶限取得ステップでは、複数種の前記規定温度のそれぞれに対応する複数の前記固溶限を求める
ことを特徴とする請求項5に記載の金属材料の評価方法。 - 前記試料の前記導電率指標は、前記試料の導電率、電気抵抗又は熱伝導率のうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の金属材料の評価方法。
- 前記試料の前記強度指標は、前記試料の引張強さ、耐力又は硬度の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の金属材料の評価方法。
- 前記主成分はアルミニウムであり、前記添加成分はマグネシウム、銅又はマンガンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の金属材料の評価方法。
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