JP6146715B2 - オゾンを利用する酸化亜鉛粒子の製造方法 - Google Patents

オゾンを利用する酸化亜鉛粒子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6146715B2
JP6146715B2 JP2013208951A JP2013208951A JP6146715B2 JP 6146715 B2 JP6146715 B2 JP 6146715B2 JP 2013208951 A JP2013208951 A JP 2013208951A JP 2013208951 A JP2013208951 A JP 2013208951A JP 6146715 B2 JP6146715 B2 JP 6146715B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zinc
zinc oxide
aqueous solution
oxide particles
glass substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2013208951A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2015071518A (ja
Inventor
健次 飯村
健次 飯村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Hyogo
Original Assignee
University of Hyogo
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Hyogo filed Critical University of Hyogo
Priority to JP2013208951A priority Critical patent/JP6146715B2/ja
Publication of JP2015071518A publication Critical patent/JP2015071518A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6146715B2 publication Critical patent/JP6146715B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)

Description

本発明は、簡易な工程によって、高品質な酸化亜鉛粒子を安価に製造するための製造方法に関する。
酸化亜鉛は、酸化物半導体の一種であり、化学的安定性、光電特性及び光触媒性が高く、バンドギャップも大きく、さらに安価であるため、太陽電池、ガスセンサ、リチウム二次電池又は光学デバイスといった幅広い技術分野への応用が期待されている。
高品質な酸化亜鉛の製造方法としては、例えば、化学気相成長法(CVD法)、ゾルゲル法、水熱法又はレーザアブレーションが知られている。しかし、結晶性の良い高品質な酸化亜鉛を低温で製造することは困難であり、特に、CVD法又はレーザアブレーション法においては、真空装置又は高周波装置のような特別な設備又は装置が必要とされる。
例えば、特許文献1は、酸化亜鉛の水性スラリーに炭酸アルカリ塩を反応させて塩基性炭酸亜鉛を得る工程、該塩基性炭酸亜鉛を加熱熟成する工程、得られる熟成液に、IIIB族元素、IVB族元素及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種の元素の水溶液塩を混合して再熟成する工程、該熟成物を脱水し乾燥する工程、得られる乾燥物を焼成する工程、該焼成物を解砕する工程を順次実施することを特徴とする導電性酸化亜鉛粉末の製法を開示している)。特許文献1では、焼成を300℃以上600℃以下の温度で行うと記載されている。
また、特許文献2は、高い生産性で結晶性が高く、優れた分散性を有する酸化亜鉛微粒子を製造する方法として、亜鉛化合物と酢酸とグリコールを混合して混合液を調製し、調製した混合液を50〜200℃の温度で0.5〜5時間保持することにより、平均粒径が200nm以下の酸化亜鉛微粒子を生成させる方法を開示している。この方法によって生成された酸化亜鉛微粒子は、球状、三角錐状及び棒状からなる群より選ばれた少なくとも一つの形状を有するとされている。
一方、特許文献3には、水酸化テトラメチルアンモニウムをNH3/SnO2モル比0.01〜0.3の範囲で含有してなる粒子径30nm以下のアルカリ安定型酸化スズゾルが記載されている。この酸化スズゾルは、酸化スズ濃度がSnO2として15質量%以下のアルカリ型酸化スズゾルに水酸化テトラメチルアンモニウムを添加し、濃縮を行うことで製造し得るとされる。
酸化スズゾルの製造方法の別法として、特許文献4は、0.1〜8規定の塩酸にスズをHCl/Sn(モル比)=0.5〜1となるように添加し、この液に過酸化水素水を添加する方法を開示している。特許文献4によれば、この方法で得られる酸化スズ粒子の平均粒子径は、5〜100nmとされる。
さらに、特許文献5は、均一に分散し安定性に優れ、高活性な光触媒、抗菌剤、色素増感太陽電池等の分野に利用可能な金属酸化物及び/又は金属過酸化物の微粒子分散ゾルの製造方法として、金属塩を含有する溶液に塩基性溶液を加えて金属水酸化物の沈殿を生成する工程と、前記の工程で得られた金属水酸化物の沈殿を溶液から分離する工程と、前記の分離された金属水酸化物を過酸化水素水中に分散し、得られた溶液を加熱処理する工程と、前記の加熱処理工程において、金属酸化物及び/又は金属過酸化物の微粒子が生成する工程と、を備えた前記の微粒子分散ゾルの製造方法を開示している。特許文献5では、金属には、亜鉛、アルミニウム、ニオブ等が含まれるとされる。
国際公開第2004/058645号パンフレット 特開2012−193107号公報 特開2004−359477号公報 特開2008−222540号公報 特開2003−26422号公報
従来の酸化亜鉛粒子の製造方法は、高温に加熱する必要があったり、製造工程が複雑であったりする等の問題点があった。また、従来の製造方法によって得られる酸化亜鉛粒子は、凝集体である場合が多く、ナノ粒子の有する透明性という特性が活かしきれていなかった。さらに、特許文献1〜5に開示されているような溶液プロセスによって酸化亜鉛粒子を製造する方法は、原料溶液に不純物として有機物が混入し、得られる酸化亜鉛粒子に結晶欠陥が生じやすいという不可避的な問題が内包されていた。
本発明は、溶液プロセスを利用した簡易な工程によって、高品質な酸化亜鉛粒子を製造するための製造方法の提供を目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、酢酸亜鉛のような亜鉛塩の水溶液に水酸化ナトリウムのような苛性アルカリを添加して、水酸化物イオン濃度[OH-]を0.75mol/L以上に調整した後、酸化剤としてオゾンを通気させるという簡易な方法によって、溶液プロセスでありながら酸素欠陥の少ない、非常に高品質な酸化亜鉛粒子を製造し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、
亜鉛塩水溶液に苛性アルカリを添加して水酸化物イオン濃度0.75mol/L以上に調整するアルカリ添加工程と、
アルカリ添加工程後の混合水溶液が透明になるまで撹拌する撹拌工程と、
撹拌工程後の混合水溶液にオゾンを通気させる酸化工程と、
を有する酸化亜鉛粒子の製造方法に関する。
本発明の酸化亜鉛粒子の製造方法では、まず、亜鉛塩水溶液に水酸化ナトリウムのような苛性アルカリを添加し、水酸化物イオン濃度[OH-]を0.75mol/L以上に調整する。苛性アルカリを添加された亜鉛塩水溶液(混合水溶液)は、当初は白濁しているが、継続して撹拌することによって、透明に変化する。苛性アルカリの具体例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム又は水酸化セシウムであるが、水溶性アルカリであり、アルカリ金属水酸化物であれば足りる。苛性アルカリは、水溶液として亜塩塩水溶液に添加されてもよく、固体として亜塩塩水溶液に添加されてもよい。
次に、透明になった亜鉛塩水溶液(混合水溶液)にオゾン(オゾンガス)を通気させ、Znイオンを酸化亜鉛(ZnO)へと酸化する。オゾンガスの通気後、混合水溶液中には粒径20〜200nm程度(二次凝集体としては数百nm〜数μm)の酸化亜鉛粒子が生成される。得られる酸化亜鉛粒子は、結晶構造分析の結果から、結晶性が高く、酸素欠損が少ないことが確認された。
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛及び塩化亜鉛からなる群より選択される一種以上であることが好ましい。
前記亜鉛塩は、酢酸亜鉛であることが好ましい。
前記亜鉛塩が硝酸亜鉛又は塩化亜鉛からなる群より選択される一種以上である場合、前記酸化工程における前記混合水溶液の液温は40℃以上90℃以下であることが好ましい。
前記酸化工程における混合水溶液中の前記酢酸塩濃度は、0.05mol/L以上1.0mol/L以下に調整されることが、実用的には好ましい。
実用的及び経済的観点からは、前記酸化工程におけるオゾンガスの通気量は、1L/min/100mL以上10L/min/100mL以下であることが好ましく、3L/min/100mL以上7L/min/100mL以下であることがより好ましい。
なお、酸化工程時に混合溶液を加熱する方が、酸化亜鉛が形成されるまでの時間が短いことが確認された。酸化工程に要する時間は、20℃の場合には120分以上、40℃の場合には100分以上、60℃の場合には60分以上とすることが好ましい。
本発明の酸化亜鉛粒子の製造方法によれば、安価で入手容易な酢酸亜鉛を原料として用い、苛性アルカリの添加、撹拌及びオゾンガス通気という簡易な工程によって、100℃以下の温度範囲において、高品質な酸化亜鉛粒子を製造することが可能である。
予備的実験1における乾燥後のガラス基板の外観写真を示す。 実施例1のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。 比較例1のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。 実施例2における乾燥後のガラス基板の外観写真を示す。 実施例2のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。 比較例2のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。 実施例3のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。 比較例3のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。 参考例の酸化亜鉛粉末のX線回析結果に関するグラフを示す。 比較例4のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。 実施例2、比較例2及び参考例のフォトルミネセンス分析した結果に関するグラフを示す。 参考例の酸化亜鉛粉末(a)及び実施例2の酸化亜鉛粒子(b)のローダミンB分解率の測定結果に関するグラフを示す。 参考例の酸化亜鉛粉末(a)及び実施例2の酸化亜鉛粒子(b)について、照射時間tに対して(1/Co-1/Ct)値をプロットしたグラフを示す。 実施例5で得られた粒子のX線回析結果に関するグラフを示す。 実施例6で得られた粒子のX線回析結果に関するグラフを示す。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の記載に限定されない。
<予備的実験1/苛性アルカリ添加及び加熱しない製造方法>
0.15M 酢酸亜塩水溶液100mLを、電気炉を用いて500℃で2時間焼成することにより表面処理を施されたガラス基板(76×26mm)を予め底面に設置した、底面の直径が100mmであるセパラブルフラスコに採取した。三角フラスコ内の酢酸亜塩水溶液に、オゾン発生装置(株式会社ハマネツ製、型番SO-03UN-OX)から供給されるオゾンを2時間通気させた(流量5.0mL/min/100mL)。酢酸亜塩水溶液の液温は20℃であった。ガラス基板上には、徐々に白色の固形物が沈着した。通気終了後、ガラス基板を三角フラスコから取り出し、乾燥させた。
図1は、乾燥後のガラス基板の外観写真を示す。ガラス基板上には、脆弱で不均質な被膜が形成されていた。この被膜について、Rigaku社製Mini Flex II型を用いて、Cu-Kα線源を用い、スキャン速度5.0 deg/min、サンプリング幅0.02 degという条件でX線回析した結果、酸化亜鉛は形成されていないことが確認された。
<予備的実験2/苛性アルカリ添加せずに混合溶液を加熱する製造方法>
オゾンを通気させる際に、酢酸亜鉛水溶液を40℃、50℃及び60℃に加熱する以外、予備的実験1と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜について、SEM画像を撮影したところ、花弁状の結晶が得られていることが確認された。次に、ガラス基板上に形成された被膜についてX線回析したところ、40℃及び50℃の場合には、被膜はα−水酸化亜鉛と酸化亜鉛の混晶であり、60℃の場合には酸化亜鉛結晶であることが確認された。
なお、60℃の場合に、オゾンの通気時間10分ごとにガラス基板上に酢酸亜鉛水溶液を滴下し、乾燥させて得られた被膜をX線解析した。その結果、通気10分ではα−水酸化亜鉛のピークのみ観察され、時間の経過と共にα−水酸化亜鉛のピークが減少し、通気60分では酸化亜鉛のピークのみ確認された。
A.亜鉛塩として酢酸亜鉛を使用する実験例
[実施例1]
0.15M 酢酸亜塩水溶液50mLに1.5M NaOH水溶液50mLを添加し、水酸化物イオン濃度[OH-]を0.75mol/L(pH12.75)に調整した後、オゾンを混合水溶液(20℃)に通気させる以外、すべて予備的実験1と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
[比較例1]
オゾンを混合水溶液(20℃)に通気させないこと以外、すべて実施例1と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
実施例1及び比較例1でガラス基板上に形成された被膜をX線回析した。図2は、実施例1のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。図3は、比較例1のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。実施例1のグラフには、酸化亜鉛のデータベースに一致した明確なピークが確認されたが、比較例1のグラフには、酸化亜鉛ではなく、α-水酸化亜鉛のデータベースに一致したピークしか確認されなかった。
[実施例2]
混合水溶液の液温を60℃とする以外、すべて実施例1と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。図4は、実施例2における乾燥後のガラス基板の外観写真を示す。
[比較例2]
混合水溶液100mLにオゾンを通気させないこと以外、すべて実施例2と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
実施例2及び比較例2でガラス基板上に形成された被膜をX線回析した。図5は、実施例2のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。図6は、比較例2のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。実施例2のグラフには、酸化亜鉛のデータベースに一致した明確なピークが確認されたが、比較例1のグラフからは、水酸化物(水酸化亜鉛)の生成が示された。
ブラッグ角(2θ)30〜40degの間において、実施例2及び比較例2のグラフにはそれぞれ3つのピークが確認されたが、これらのピークについて半値幅β(FWHMβ)を算出した。半値幅βは、式(1)によって算出した。
t = 0.94λ/βcosθ ・・・(1)
ここで、t:結晶子サイズ、λ:入射X線の波長、β:半値幅、θ:X線入射角である。表1は、算出された半値幅(deg)と平均結晶子サイズ(nm)を示す。平均結晶子サイズとは、単結晶とみなせる最大の集まりであり、X線回折パターンにより上式によって計算された。
実施例2のピークのブラッグ角は、酸化亜鉛のデータベースのブラッグ角と完全に一致したが、比較例2のピークのブラッグ角は、高角度側に若干シフトしていることが確認された。イオン半径の小さな不純物が結晶構造に混入した場合、ブラッグ角が高角度側にシフトすることが知られている。このことから、実施例2で得られた酸化亜鉛粒子は、比較例2で得られた酸化亜鉛粒子と異なり、亜鉛及び酸素よりもイオン半径の小さな炭素又は水素のような原子の混入が少ないと推測された。
また、実施例2の酸化亜鉛粒子の平均結晶子サイズは、比較例2の酸化亜鉛粒子の平均結晶子サイズ2倍以上であり、実施例2の製造方法によれば、得られる酸化亜鉛粒子の結晶性が高いことが確認された。
[実施例3]
オゾン通気量を3.0L/minとする以外、すべて実施例2と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。図7は、実施例3のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。実施例3のグラフについても、酸化亜鉛のデータベースに一致した明確なピークが確認された。
[参考例]
市販されている酸化亜鉛(試薬特級品、キシダ化学)について、実施例2と同様にしてX線回析した。図8は、参考例のX線回析結果に関するグラフを示す。
表2は、実施例3及び参考例で算出された半値幅(deg)と平均結晶子サイズ(nm)を示す。
実施例3のピークのブラッグ角は、酸化亜鉛のデータベースのブラッグ角とほぼ完全に一致したが、参考例のピークのブラッグ角は、低角度側に若干シフトしていることが確認された。イオン半径の大きな原子が結晶に混入すると、ピークは低角度側にシフトすることが知られている。このことから、実施例3で得られた酸化亜鉛粒子は、試薬特級品である酸化亜鉛よりも、亜鉛及び酸素よりもイオン半径の大きな酢酸イオンのようなイオンの結晶構造への混入が少ないと推測された。試薬特級品である酸化亜鉛は、気相法によって合成されているため、不純物は非常に少ないと考えられることから、実施例3で得られた酸化亜鉛粒子は、極めて純度の高い結晶であることが推察された。
[比較例3]
オゾン通気量を0.1L/minとする以外、すべて実施例2と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。しかし、比較例3のガラス基板上に形成された被膜をX線回析した結果、図9に示されるように、酸化亜鉛のデータベースに一致した明確なピークが確認されたが、水酸化亜鉛のピークも確認された。
なお、オゾン通気量を3L/minとする以外、すべて比較例3と同様に操作したところ、X線回析によって水酸化亜鉛のピークは確認されなかった。
[比較例4]
苛性アルカリ添加後の混合溶液100mLにオゾンを通気させる替わりに、過酸化水素水(30%、試薬特級品、キシダ化学)30mLを添加する以外、すべて実施例2と同様に操作した。
図10は、比較例4のガラス基板上に形成された被膜のX線回析結果に関するグラフを示す。図9より、比較例4では酸化亜鉛粒子が形成されていないことが確認された。実施例1〜3においては、オゾンが酸化剤として機能し、酢酸亜鉛から酸化亜鉛粒子が形成されると考えられる。しかし、過酸化水素を酸化剤として使用した場合には、オゾンを使用した場合と異なり、酸化亜鉛粒子を製造することが不可能であった。
<フォトルミネセンス測定による酸素欠損の確認>
実施例2のガラス基板、比較例2のガラス基板、及び参考例の酸化亜鉛粉末について、蛍光分光光度計を用いてフォトルミネセンス分析を行った。蛍光分光光度計として、日本分光社製FP6200を使用した。励起波長は365nmとし、実施例2及び比較例2のガラス基板上に形成された被膜から発せられる蛍光強度を測定した。参考例の酸化亜鉛粉末は、粉末状態のまま蛍光強度を測定した。図11は、実施例2、比較例2及び参考例の被膜のフォトルミネセンス測定した結果に関するグラフを示す。
参考例の酸化亜鉛粉末は、酸素欠損に基づく黄緑色に発色した。一方、実施例2及び比較例2のガラス基板は、橙色に発色した。図11より、比較例2は、参考例よりも450nm〜650nmにかけての蛍光強度が大幅に小さかったが、実施例2は比較例2よりも450nm〜650nmにかけての蛍光強度がさらに小さかった。このことから、オゾンを利用する実施例2によって得られる酸化亜鉛粒子は、オゾンを利用しない比較例2によって得られる酸化亜鉛粒子よりも酸素欠陥が少ないことが確認された。
[実施例4]
0.15M 酢酸亜塩水溶液50mLの代わりに0.2M 酢酸亜塩水溶液50mLを使用すること以外、すべて実施例1と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。また、X線回析の結果も、実施例1と同様であった。なお、0.15M 酢酸亜塩水溶液50mLの代わりに0.5M 酢酸亜塩水溶液50mLを使用した場合についても、実施例1と同様の実験結果が得られた。
亜鉛塩として酢酸亜鉛を使用する場合、酸化工程における混合溶液の液温が20℃以下であっても高品質の酸化亜鉛粒子が得られた。しかし、液温が低いと酸化工程に要する時間が長くなる。一方、液温が**℃を超えても、酸化工程に要する時間はあまり短くならない一方、混合溶液の加温に要するエネルギーが増大するため、変化高いと、酸化工程に要する時間が長くなる。このため、酸化工程における混合溶液の液温は、実用的には20℃以上80℃以下とすることが好ましい。
[比較例5]
0.15M 酢酸亜塩水溶液50mLに1.5M NaOH水溶液30mLを添加し、水酸化物イオン濃度[OH-]を0.56mol/L(pH12.6)に調整する以外、実施例2と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。しかし、実施例2とは異なり、X線回析の結果から、得られた粒子には水酸化亜鉛が大量に残存していることが確認された。水酸化物イオン濃度を0.75mol/L以上としたところ、水酸化亜鉛のピークが消失したことから、アルカリ添加工程においては、混合溶液中の水酸化物イオン濃度が0.75mol/L以上となるように、亜鉛塩水溶液に苛性アルカリを添加する必要があることが確認された。
一方、混合溶液中の水酸化物イオン濃度が3mol/Lを超えると、強アルカリであり腐食性が高くなるために危険であり、苛性アルカリの使用量が増加してコスト高ともなる。そのため、混合溶液中の水酸化物イオン濃度は、実用的には、0.75mol/L以上3mol/L以下とすることが好ましい。
<光触媒機能の比較>
参考例で使用された酸化亜鉛粉末(試薬特許品)と、実施例2で得られた酸化亜鉛粒子について、塩基性色素であるローダミンBの分解実験を行い、両者の光触媒機能を比較した。まず、ローダミンBの10ppm水溶液を調製した。次に、試薬の酸化亜鉛粉末0.1g又は実施例2で得られた酸化亜鉛粒子0.1gを、10ppmローダミンB水溶液100mLを分注した石英ビーカーに添加した。その後、面積率エネルギー743μW/cm2、365nmの光源を有する2個のUVランプ(アズワン株式会社SLUV-4)の間に設置し、常温の暗室条件下で連続的に365nmの紫外線を照射した。それぞれのUVランプとビーカー壁面との距離は、入射する光の照度を一定にするために、2.5cmで固定した。
ローダミンBの分解率を分析するため、石英フラスコ内から水溶液サンプルを所定時間後に採取し、紫外―可視分光光度計(日本分光V-650)を用いて5nmステップ、200〜800nmの波長範囲でサンプルの透過測定によって吸収スペクトルを測定した。酸化亜鉛粒子へのローダミンBの吸着による影響を考慮するために、暗室条件下、UVランプによって紫外線を照射しないこと以外、すべて同じ条件で対照実験を行った。
採取された水溶液サンプルについて、554nmの吸光値を測定することにより、ローダミンB分解率を式(2)に基づいて算出した。
ローダミンB分解率(%) ={(Co−Ct)/Co}×100 ・・・(1)
Co:酸化亜鉛未添加の10ppmローダミンB水溶液の吸光値
Ct:酸化亜鉛添加液の時間t経過時におけるローダミンB水溶液の吸光値
図12は、参考例の酸化亜鉛粉末及び実施例2の酸化亜鉛粒子のローダミンB分解率の測定結果に関するグラフを示す。図12(a)は参考例の酸化亜鉛粉末の実験結果、図12(b)は実施例2の酸化亜鉛粒子の実験結果をそれぞれ示す。図12(a)及び図12(b)のいずれの場合にも、紫外線を照射することによりローダミンBが経時的に分解されていくことが確認された。しかし、紫外線照射180分におけるローダミンB分解率は、図12(a)では50%に過ぎなかったが、図12(b)では約75%に達した。このように、実施例2の酸化亜鉛粒子は、参考例で使用された試薬である酸化亜鉛粉末よりも、光触媒機能が高いことが確認された。
<光溶解の比較>
上記実験における経過時間毎の吸光値の測定結果に基づき、ローダミンBの分解速度定数を算出した。分解速度定数は、ローダミンBの分解反応が色素濃度に対する2次反応と仮定し、式(3)に基づいて算出された。
1/ Ct - 1/Co = k・t ・・・(3)
k:反応速度定数
t:紫外線照射時間
図13は、照射時間tに対して(1/Co-1/Ct)値をプロットしたグラフを示す。図13(a)は、参考例の酸化亜鉛粉末のグラフであり、図13(b)及び実施例2の酸化亜鉛粒子のグラフである。図13(a)に示されるように、参考例の酸化亜鉛粉末については、プロットが直線にはならなかった。一方、図13(b)に示されるように、実施例2の酸化亜鉛粒子については、プロットが直線となった。
酸化亜鉛は、水中で紫外線を照射されると、生成した正孔により自己溶解(光溶解)することが知られている。図13(a)のグラフが直線とならなかったことから、市販されている試薬特級品である酸化亜鉛粉末は、水溶液中で光溶解していることが推察された。これに対し、図13(b)のグラフは直線であったことから、実施例2の酸化亜鉛粒子(すなわち、本発明の製造方法によって得られる酸化亜鉛粒子)は、水溶液中で光溶解しないことが推察された。
B.亜鉛塩として硝酸亜鉛を使用する実験例
[実施例5]
亜鉛塩水溶液として、0.15M 硝酸亜鉛水溶液を使用する以外、すべて実施例2と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
[比較例6]
混合水溶液100mLにオゾンを通気させないこと以外、すべて実施例5と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
[比較例7]
酸化工程における混合溶液の液温を20℃とする以外、すべて実施例5と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
C.亜鉛塩として塩化亜鉛を使用する実験例
[実施例6]
亜鉛塩水溶液として、0.15M 塩化亜鉛水溶液を使用する以外、すべて実施例2と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
[比較例8]
混合水溶液100mLにオゾンを通気させないこと以外、すべて実施例6と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
[比較例9]
酸化工程における混合溶液の液温を20℃とする以外、すべて実施例6と同様に操作した。ガラス基板上に形成された被膜は、均一で高密着性であった。
<X線回析結果の比較>
図14は、実施例5で得られた粒子のX線回析結果に関するグラフを示す。亜鉛塩として硝酸亜鉛を使用した場合も、酢酸亜鉛を使用した実施例2と同様に、酸化亜鉛に特有のピークが確認された。
図15は、実施例6で得られた粒子のX線回析結果に関するグラフを示す。亜鉛塩として塩化亜鉛を使用した場合も、酢酸亜鉛を使用した実施例2と同様に、酸化亜鉛に特有のピークが確認された。
表3は、実施例5及び実施例6で算出された半値幅(deg)を示す。実施例5及び実施例6のピークのブラッグ角も、酸化亜鉛のデータベースのブラッグ角とよく一致した。
一方、比較例6〜9で得られた粒子は、酸化亜鉛粒子と水酸化亜鉛との混晶であることが確認された。なお、比較例7又は9について、酸化工程における混合溶液の液温を40℃以上とした場合には、得られた粒子には水酸化亜鉛のピークは確認されなかった。
本発明の酸化亜鉛粒子の製造方法は、安価で入手容易な酢酸亜鉛を原料としながら、100℃以下の溶液中にオゾンを通気させるという簡易な溶液プロセスにより、高品質で結晶性の高い酸化亜鉛粒子を製造することができる。また、原料である酢酸亜鉛及び酸化剤として使用するオゾンは、いずれも安全性が高く、環境負荷も小さい。さらに、特別な装置も必要とせず、エネルギーコストも低い利点を有する。
本発明の酸化亜鉛粒子の製造方法は、薄膜トランジスタ又は透明導電膜のような半導体分野の他、化粧品、ガスセンサ又は光触媒等の技術分野において有用である。

Claims (4)

  1. 亜鉛塩水溶液に苛性アルカリを添加して水酸化物イオン濃度0.75mol/L以上に調整するアルカリ添加工程と、
    アルカリ添加工程後の混合水溶液が透明になるまで撹拌する撹拌工程と、
    撹拌工程後の混合水溶液にオゾンを通気させる酸化工程と、
    を有する酸化亜鉛粒子の製造方法。
  2. 前記亜鉛塩が酢酸亜鉛、硝酸亜鉛及び塩化亜鉛からなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
  3. 前記亜鉛塩が酢酸亜鉛である、請求項2に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
  4. 前記亜鉛塩が硝酸亜鉛又は塩化亜鉛からなる群より選択される一種以上であり、
    前記酸化工程における前記混合水溶液の液温が40℃以上90℃以下である、
    請求項2に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
JP2013208951A 2013-10-04 2013-10-04 オゾンを利用する酸化亜鉛粒子の製造方法 Expired - Fee Related JP6146715B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013208951A JP6146715B2 (ja) 2013-10-04 2013-10-04 オゾンを利用する酸化亜鉛粒子の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013208951A JP6146715B2 (ja) 2013-10-04 2013-10-04 オゾンを利用する酸化亜鉛粒子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015071518A JP2015071518A (ja) 2015-04-16
JP6146715B2 true JP6146715B2 (ja) 2017-06-14

Family

ID=53014205

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013208951A Expired - Fee Related JP6146715B2 (ja) 2013-10-04 2013-10-04 オゾンを利用する酸化亜鉛粒子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6146715B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6774014B2 (ja) * 2016-08-19 2020-10-21 公立大学法人兵庫県立大学 金属酸化物ナノ粒子の製造方法
CN112110475B (zh) * 2020-09-24 2022-06-21 安徽省含山县锦华氧化锌厂 一种采用膏状前驱体制备氧化锌的生产工艺
CN113149061B (zh) * 2021-04-26 2024-01-19 江苏贝丽得新材料有限公司 一种超细氧化锌粉体的制备方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008254990A (ja) * 2007-04-09 2008-10-23 Ishihara Sangyo Kaisha Ltd 酸化亜鉛及びその製造方法並びにそれを用いた化粧料
US20110151619A1 (en) * 2008-09-24 2011-06-23 Toshiba Mitsubishi-Electric Industrial Sys. Corp. Method of forming metal oxide film and apparatus for forming metal oxide film
JP5438530B2 (ja) * 2009-01-30 2014-03-12 富士フイルム株式会社 星型酸化亜鉛粒子の製造方法
JP2011021069A (ja) * 2009-07-14 2011-02-03 Sakai Chem Ind Co Ltd 放熱性フィラー組成物、樹脂組成物、放熱性グリース及び放熱性塗料組成物
IN2014DN07648A (ja) * 2012-03-08 2015-06-26 Sakai Chemical Industry Co

Also Published As

Publication number Publication date
JP2015071518A (ja) 2015-04-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Hezam et al. Synthesis of heterostructured Bi2O3–CeO2–ZnO photocatalyst with enhanced sunlight photocatalytic activity
Li et al. Microwave hydrothermal synthesis of Sr2+ doped ZnO crystallites with enhanced photocatalytic properties
Chandrappa et al. Electrochemical synthesis and photocatalytic property of zinc oxide nanoparticles
Hu et al. Low-temperature preparation of photocatalytic TiO2 thin films from anatase sols
Mythili et al. Characterization studies on the chemically synthesized α and β phase PbO nanoparticles
Benhebal et al. Photodegradation of phenol and benzoic acid by sol–gel-synthesized alkali metal-doped ZnO
Ye et al. Garden-like perovskite superstructures with enhanced photocatalytic activity
Goodall et al. Structure–property–composition relationships in doped zinc oxides: enhanced photocatalytic activity with rare earth dopants
Khore et al. Green sol–gel route for selective growth of 1D rutile N–TiO 2: a highly active photocatalyst for H 2 generation and environmental remediation under natural sunlight
Grzmil et al. Preparation and characterization of single-modified TiO2 for pigmentary applications
Perumal et al. Investigation of structural, optical and photocatalytic properties of Sr doped Zno nanoparticles
Ramkumar et al. Effect of Fe doping on structural, optical and photocatalytic activity of WO 3 nanostructured thin films
Preethi et al. A comparative analysis of the properties of zinc oxide (ZnO) nanoparticles synthesized by hydrothermal and sol-gel methods
Bouhouche et al. Effect of Er3+ doping on structural, morphological and photocatalytical properties of ZnO thin films
Vadivel et al. Effect of W doping on structural, optical and photocatalytic activity of SnO 2 nanostructure thin films
Han et al. Strontium-induced phase, energy band and microstructure regulation in Ba 1− x Sr x TiO 3 photocatalysts for boosting visible-light photocatalytic activity
JP6146715B2 (ja) オゾンを利用する酸化亜鉛粒子の製造方法
Sen et al. Silver incorporated α-MoO3 nanoplates to nanorods: Exploring the effects of doping on structural, morphological and optical properties
Jithin et al. Influence of Fe-doping on the structural and photoluminescence properties and on the band-gap narrowing of SnO2 nanoparticles
Lassoued et al. Influence of iron doping on the photocatalytic activity of nanocrystalline TiO 2 particles fabricated by ultrasound method for enhanced degradation of organic dye
Preethi et al. Cubic and orthorhombic Cd2SnO4 microcrystals: molten salt synthesis, phase evolution and dye degradation studies
Mousa et al. Characterization and photo-chemical applications of nano-ZnO prepared by wet chemical and thermal decomposition methods
Ücker et al. Study of CaTiO3–ZnS heterostructure obtained by microwave-assisted solvothermal synthesis and its application in photocatalysis
Komaraiah et al. Effect of annealing temperature on spectroscopic features and photocatalytic activity of TiO2: 0.07 Eu3+ nanoparticles
Bhattacharyya et al. Intrinsic defects formation and subsequent direct and indirect transitions due to ammonia in rGO–ZnO nanocomposites

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160926

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170425

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170428

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170508

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6146715

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees