以下、本発明の実施の形態による漏電箇所探査装置を、複数の電気設備が設置された建物の漏電箇所探査に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1〜図10に従って詳細に説明する。
図において、1は事業所等のビル(建築物)である建物を示し、該建物1は、複数のフロア1A〜1E(例えば,5階建ての場合)を有し、最上階となる5階のフロア1E上には、建物1全体の配電設備を統括する変圧器盤等を備えた電気室2が設けられている。この電気室2には、例えば蛍光灯、エアコン等を含めた電気設備3が設置されている。
建物1の1階、2階、3階および4階のフロア1A,1B,1Cおよび1Dには、それぞれ他の電気設備4,5,6,7が設けられている。これらの電気設備4〜7は、例えば蛍光灯、エアコン以外に、事業所の業務に関連した複数の電気機器、電子機器等を含んで構成されている。電子機器としては、マイクロコンピュータを搭載した各種の情報処理機器も含まれ、予期しない停電発生時には、データや情報が消失してしまう可能性がある。
建物1の電気室2内には、1階〜5階にわたる全ての電気設備3〜7の絶縁監視を行う絶縁監視ユニット(図示せず)が設けられている。この絶縁監視ユニットは、建物1全体の絶縁監視を行うもので、建物1内で漏電が発生しているか否かを常に監視している。即ち、絶縁監視ユニットは、建物1全体の絶縁監視を行うために基準信号電圧発生器(図示せず)から商用電源の周波数(例えば、50Hzまたは60Hz)とは違う周波数(一例としては、20Hz)の基準信号の供給を受ける。そして、絶縁監視ユニットは、前記基準信号に基づいて電気設備からの漏れ電流Igを検出し、商用電源だけでは検出できない抵抗成分電流Igrを検出することができるようにしている。
前記絶縁監視ユニットの背面側には、図4、図6に示す背面端子台8が設けられ、この端子台8は、中性相8Aと接地相8Bとを有している。従来から用いられている基準信号入力用ケーブル9は、図7に示すように、長さ方向一側に中性相接続用のクリップ9Aと接地相接続用のクリップ9Bとが設けられ、長さ方向他側には後述のクランプリークメータ11に着脱可能に接続されるコネクタ9Cが設けられている。基準信号入力用ケーブル9は、例えば全長5メートルの長尺なケーブルからなり、前記絶縁監視ユニットの端子台8からクランプリークメータ11に基準信号を入力するために、両者の間を図6に示すように接続する。
即ち、基準信号入力用ケーブル9のクリップ9Aは、例えば赤色のクリップとして形成され、前記端子台8の中性相8Aに接続される。一方、赤色とは異なる色(例えば、黒色)に配色して識別可能となったクリップ9Bは、前記端子台8の接地相8Bに接続される。基準信号入力用ケーブル9は、コネクタ9Cを後述のクランプリークメータ11に接続した状態で、前記絶縁監視ユニットの端子台8からクランプリークメータ11に基準信号を入力するものである。この場合、基準信号の周波数と位相とは、抵抗成分電流Igrをベクトル演算等で計算するために必須の情報となっている。
10は電気設備3に電力を供給する電路としての電源ケーブルで、該電源ケーブル10は、例えば2本の活線相10A,10Bと1本の中性相10Cとからなる3本の導電線を用いて構成されている。図1に示す電気設備4〜7には、電気設備3と同様に夫々の電気設備4〜7に電力を供給する電路としての電源ケーブル10が設けられている(図4参照)。後述のクランプリークメータ11は、これらの電気設備3〜7のうち任意の電路(電源ケーブル10)にクランプするように取付けられ、この状態で任意の電路側で発生している漏洩電流を検出するものである。
11は携帯可能な変流器からなるクランプCT(Current Transformer)としてのクランプリークメータである。このクランプリークメータ11は、図2に示すように、オペレータが手動操作するとき等に把持される長方形状の箱体からなるメータケース12と、該メータケース12の一端(先端)側に設けられ開閉部13Aの位置で左,右方向(図2中に示す矢示A,A方向)に開閉されるクランプ部13と、メータケース12の側面にスライド可能に設けられクランプ部13の開,閉操作を行うクランプ開閉レバー14とを備えている。
ここで、クランプリークメータ11のメータケース12内には、前記電路側での漏洩電流を検出するために必要な複数の電子機器および電池(いずれも図示せず)等が設けられている。クランプリークメータ11のクランプ部13は、オペレータがクランプ開閉レバー14を下向きにスライドさせると、開閉部13Aの位置で左,右方向に二又状をなして開閉され、この状態で電気設備3〜7のうち任意の電路(電源ケーブル10)を外側からクランプするように取付けられる(図5、図6参照)。
クランプリークメータ11は、この状態でクランプ部13内を流れる電流(即ち、任意の電路側で発生している漏洩電流)を検出して、その電流値を測定するものである。クランプリークメータ11は、基準信号入力時に、基準信号の位相と電圧値を参照し、抵抗成分電流Igrの電流値を算出する。このときの電圧値は、一例として挙げれば基本的に実効値0.5Vrms±10%となる。
クランプリークメータ11には、メータケース12の表面側に、電源スイッチ12A、ホールドスイッチ12B、測定モード選択スイッチ12C、電路電圧選択スイッチ12Dおよびレンジ選択スイッチ12Eが設けられている。電源スイッチ12Aは、オペレータが指先で押したときに前記電池による電源がクランプリークメータ11に投入される。なお、電源スイッチ12Aは、オペレータがもう一度押したときにOFF状態となり、クランプリークメータ11への電源投入は解除される。
測定モード選択スイッチ12Cは、漏洩電流の測定モードを選択するもので、抵抗成分電流Igr、漏れ電流Ig、漏れ電流Io、静電容量成分電流Igcのいずれを測定するかを手動操作により選択するものである。なお、漏れ電流Igは、抵抗成分電流Igrと静電容量成分電流Igcとを加算した電流(Ig=Igc+Igr)である。電路電圧選択スイッチ12Dは、測定対象となる電路(電源ケーブル10)の電圧を選択するスイッチで、具体的には、測定対象がAC100V、AC200Vのいずれであるかを選択操作するものである。レンジ選択スイッチ12Eは、例えば測定操作を「自動」と「手動」のいずれのレンジで行うかを選択操作するものである。
メータケース12の表面側には、クランプ部13と電源スイッチ12Aとの間に位置して液晶の表示器15が設けられている。この表示器15は、測定モード選択スイッチ12Cで選択された漏洩電流の測定値を表示するもので、抵抗成分電流Igr、漏れ電流Ig、漏れ電流Ioまたは静電容量成分電流Igcのいずれかの測定値を、例えば何アンペアとして表示する。そして、表示器15の画面に表示された測定値が、予め決められた規定値を越えるか否かにより、測定対象の電路側で漏電が発生しているか否かを判定するものである。
クランプリークメータ11には、メータケース12の基端側(図2に示す下端側)に基準信号を入力するためのターミナル(図示せず)が設けられている。このターミナルには、後述するアダプタ16のコネクタ18が直接的にスタッキング接続される。なお、このターミナルには、アダプタ16に替えて基準信号入力用ケーブル9のコネクタ9Cが接続されることもある。
16はクランプリークメータ11に着脱可能に接続されるアダプタで、該アダプタ16は、漏洩電流の測定に必要な基準信号をクランプリークメータ11に供給する基準信号供給装置を構成するものである。図3に示すように、アダプタ16は、略四角形の箱形ケースとして形成されたアダプタケース17を有し、このアダプタケース17内には、図8に示す制御部24、DDSデバイス25および矩形波成形回路26,27等が設けられている。また、アダプタケース17内には、電源としての電池(バッテリ)が取外し可能に設けられている。
アダプタケース17の一側(図3の上端側)には、クランプリークメータ11のメータケース12に下側から嵌合される嵌合部としての凹窪部17Aが設けられている。そして、凹窪部17Aの底部側には、クランプリークメータ11の前記ターミナルにスタッキング接続されるコネクタ18が設けられている。アダプタケース17の他側(図2、図3の下端側)には、一対の端子19A,19Bを有したターミナル19が設けられている。
アダプタケース17の表面側には、電源スイッチ20Aおよび電源ランプ20Bと、開始スイッチ21Aおよび状態表示ランプ21Bと、出力スイッチ22Aおよび出力ランプ22Bとが設けられている。電源スイッチ20Aは、オペレータが指先で押したときに前記電池による電源がアダプタ16に投入され、これにより電源ランプ20Bが点灯される。その後に、オペレータが電源スイッチ20Aをもう一度押したときにはOFF操作となって、アダプタ16に対する電源投入が解除される。
開始スイッチ21Aは、アダプタ16による制御処理を開始させるときにオペレータが指先等で押圧操作するもので、この押圧操作に伴って状態表示ランプ21Bが点滅を開始する。そして、後述する基準信号の調整処理(図9のステップ7参照)が行われている間は、状態表示ランプ21Bが点滅を続ける。基準信号の調整処理が完了したときには、状態表示ランプ21Bが点滅状態から点灯状態に切換わり、これによって、オペレータは基準信号の調整処理が完了したことを知ることができる。
出力スイッチ22Aは、アダプタ16からクランプリークメータ11に擬似的な基準信号を出力するとき(即ち、クランプリークメータ11を用いて前述した電気設備4〜7の漏電探査を実際に行うとき)に、オペレータが押圧操作するものである。出力ランプ22Bは、出力スイッチ22Aを押圧すると点灯し、その後に電源スイッチ20Aが押圧(OFF)操作されるまでは点灯を続ける。これにより、オペレータはクランプリークメータ11を用いた漏電探査が可能か否かを出力ランプ22Bを見て知ることができる。
図3に示すように、アダプタ16のターミナル19は、導電ケーブル23を介して前記絶縁監視ユニットの端子台8(図4参照)に接続される。即ち、絶縁監視ユニットの端子台8には、前記基準信号入力用ケーブル9に替えて導電ケーブル23が着脱可能に接続される。導電ケーブル23は、2芯ケーブルを用いて形成され、長さ方向一側には中性相接続用のクリップ23Aと接地相接続用のクリップ23Bとが設けられている。即ち、導電ケーブル23には、一方の導線23C側に中性相接続用のクリップ23Aが取付けられ、他方の導線23D側には接地相接続用のクリップ23Bが取付けられている。
導電ケーブル23の一方の導線23Cは、ターミナル19の一方の端子19Aに圧着端子等を介して接続され、他方の導線23Dは他方の端子19Bに接続される。ここで、導電ケーブル23のクリップ23Aは、例えば赤色のクリップとして形成され、図4に示すように前記端子台8の中性相8Aに接続される。一方、赤色とは異なる色(例えば、黒色)に配色して識別可能となったクリップ23Bは、前記端子台8の接地相8Bに接続される。
導電ケーブル23は、アダプタ16のターミナル19を前記絶縁監視ユニットの端子台8に接続した状態で、前記絶縁監視ユニットの端子台8からアダプタ16に基準信号を入力するものである。導電ケーブル23は、基準信号入力用ケーブル9のように長尺なケーブルで形成する必要はなく、例えば1〜3メートル程度の長さであれば、アダプタ16と端子台8との間を接続して基準信号の読込み操作を行う上でも十分である。
次に、アダプタ16の内部構成について説明する。アダプタ16は、後述の制御部24、DDSデバイス25および矩形波成形回路26,27等を含んで構成されている。
24はアダプタケース17内に回路基板(図示せず)を介して設けられた制御部で、該制御部24は、中央演算装置(CPU)を含んで構成され、入出力制御部(インターフェース)には、ポートA部24A、ポートB部24B、アナログ出力部24C、CLK部24DおよびSPI部24E等が設けられている。なお、図11に示す変形例のように、制御部24の入出力制御部には、シリアルインターフェースであるSPI部24Eに替えて、パラレルインターフェースであるパラレル出力部24F等を設ける構成としてもよい。
ポートA部24Aは、前記絶縁監視ユニットの端子台8からアダプタ16に入力された基準信号(周波数と位相とが予め設定されたアナログ信号)を矩形波成形回路26で矩形波のデジタル信号S1に変換した状態で、このデジタル信号S1から前記基準信号の周波数と位相とを読込むものである。ポートB部24Bは、アナログ出力部24Cとの間で後述の如く擬似的な基準信号のループバック出力制御を行うものである。
CLK部24Dは、DDSデバイス25(即ち、ダイレクトデジタルシンセサイザ)から出力される出力信号S2(例えば、10MHz)をCPU動作クロック信号として受信するものである。SPI部24Eは、クロック同期式のシリアルインターフェースであり、DDSデバイス25の初期出力周波数を設定する。即ち、SPI部24Eは、CPU動作クロックの初期値を設定するものである。
ダイレクトデジタルシンセサイザであるDDSデバイス25は、例えば特開平7−202692号公報に記載の周波数シンセサイザにも用いられており、これらと同様に構成されるものである。矩形波成形回路26は、前記絶縁監視ユニットの端子台8から入力される基準信号(周波数と位相とが予め設定されたアナログ信号)を矩形波のデジタル信号S1に変換し、このデジタル信号S1を制御部24のポートA部24Aに出力するものである。
矩形波成形回路27は、制御部24のアナログ出力部24Cから出力されたアナログ信号S3を矩形波のデジタル信号S4に変換し、このデジタル信号S4を制御部24のポートB部24Bに出力するものである。これにより、アダプタ16の制御部24は、アナログ出力部24CとポートB部24Bとの間で矩形波成形回路27を通じて擬似的な基準信号のループバック出力制御を行う。
即ち、アダプタ16の制御部24は、前述の如き基準信号のデジタル信号S1をポートA部24Aで読込みつつ、DDSデバイス25の出力周波数(即ち、CLK部24Dから受取った出力信号S2の周波数)を、前記デジタル信号S1に従って変更する周波数調整処理を行う。そして、制御部24は、このように周波数調整されたアナログ信号S3をアナログ出力部24Cから矩形波成形回路27にループバックさせるように出力し、矩形波成形回路27からポートB部24Bにループバックされる周波数調整後のデジタル信号S4と前記デジタル信号S1との位相調整処理を行う。
換言すると、アダプタ16の制御部24は、前記デジタル信号S1に対してデジタル信号S4の周波数と位相を一致させた状態(または、限りなく近似させた状態)で前記基準信号に代替される擬似的な基準信号を、アナログ出力部24Cから出力されるアナログ信号S3として生成する。即ち、アダプタ16の制御部24は、絶縁監視ユニットの端子台8から出力される前記基準信号に代替される擬似的な基準信号を生成するために、周波数調整手段と位相調整手段とを備えている。
ここで、アダプタ16の制御部24は、前述の如く基準信号に従って周波数と位相とが調整された擬似的な基準信号(即ち、前記アナログ信号S3)をループバック出力する状態とし、このループバック出力状態は、前記絶縁監視ユニットの端子台8に対する導電ケーブル23を介した接続を解除したときにも保持されて待機される。そして、アダプタ16のコネクタ18がクランプリークメータ11の前記ターミナルに接続され、出力スイッチ22Aが押下されたときには、前記ループバック状態にある前記擬似的な基準信号がアダプタ16からクランプリークメータ11に出力して供給されるものである。
本実施の形態による漏電箇所探査装置は、上述の如き構成を有するもので、次に、その具体的な漏電箇所の探査処理について説明する。
まず、建物1の電気室2内には、1階〜5階にわたる全ての電気設備3〜7の絶縁監視を行う絶縁監視ユニット(図示せず)が設けられている。この絶縁監視ユニットは、建物1全体の絶縁監視を行うもので、建物1内で漏電が発生しているか否かを常に監視している。しかし、電気設備3〜7のうちいずれの位置で漏電が発生しているかを探査するためには、クランプリークメータ11を用いる必要がある。
図6、図7に示すように、絶縁監視ユニットの背面端子台8とクランプリークメータ11との間を長尺(例えば、全長5メートル)な基準信号入力用ケーブル9を用いて接続すれば、前記絶縁監視ユニットからクランプリークメータ11に基準信号を入力することができ、基準信号入力用ケーブル9が届く範囲にある漏電探査対象の電気設備(具体的には、屋上階の電気設備3)においては、漏れ電流Igの抵抗成分電流Igrを正確に測定することができる。
しかし、基準信号入力用ケーブル9が届かない位置にある漏電探査対象の電気設備(具体的には、1〜4階の電気設備4〜7)の場合には、絶縁監視ユニットからの基準信号をクランプリークメータ11に入力することができない。このため、クランプリークメータ11を用いて電気設備4〜7の漏れ電流Igを測定したとしても、前記基準信号を入力することができない場合は、その抵抗成分電流Igrを正確には測定することができず、漏電箇所の特定が難しくなる。
そこで、本実施の形態は、このような問題を解決するため、クランプリークメータ11に着脱可能に接続する構成としたアダプタ16を用意し、絶縁監視ユニットの端子台8から出力される基準信号に代替される擬似的な基準信号を、アダプタ16からクランプリークメータ11に対して供給する構成としている。
即ち、本実施の形態では、アダプタ16を用いて図9、図10に示す制御処理を実行することにより、基準信号入力用ケーブル9を用いることなく、アダプタ16からの擬似的な基準信号をクランプリークメータ11に供給することができ、全ての電気設備3〜7に対する漏電箇所の探査を安定して行うことができる。
ここで、図9に示す処理動作がスタートすると、ステップ1で基準信号の入力を行う。即ち、導電ケーブル23を図3に示すように、アダプタ16のターミナル19に接続し、導電ケーブル23の一方のクリップ23Aを図4に示すように前記端子台8の中性相8Aに接続すると共に、他方のクリップ23Bを前記端子台8の接地相8Bに接続する。これにより、導電ケーブル23を用いて絶縁監視ユニットの端子台8とアダプタ16との間を接続し、絶縁監視ユニットからの基準信号をアダプタ16に入力できるようにする。
次のステップ2では、アダプタ16の電源スイッチ20AがON操作されたか否かを判定し、「NO」と判定される間は待機状態とする。そして、ステップ2で「YES」と判定したときには、次のステップ3で電源ランプ20Bを点灯する。これにより、アダプタ16のオペレータは、電源の投入によりステップ4の処理が開始されたことを知ることができる。
即ち、ステップ4では、図8に示すアダプタ16の制御部24により、クロック同期式のシリアルインターフェースであるSPI部24Eにおいて、DDSデバイス25の初期出力周波数を設定する。即ち、SPI部24Eは、CPU動作クロックの初期値を設定する。
次のステップ5では、アダプタ16の開始スイッチ21AがON操作されたか否かを判定し、「NO」と判定される間は待機状態とする。そして、ステップ5で「YES」と判定したときには、次のステップ6で状態表示ランプ21Bを点滅させる。次のステップ7では、後述の如く基準信号の調整処理を図10に示すプログラムに沿って行う。
次のステップ8では基準信号の調整処理が完了したか否かを判定し、「NO」と判定される間は待機状態とする。そして、ステップ8で「YES」と判定したときには、次のステップ9で状態表示ランプ21Bを点灯させる。これにより、アダプタ16のオペレータは、基準信号の調整処理が図10に示すプログラムに沿って行われ、アダプタ16の制御部24は、前述の如く基準信号に従って周波数と位相とを調整した擬似的な基準信号(即ち、図8に示すアナログ信号S3)のループバック出力が可能な状態になっていることを知ることができる。
そこで、オペレータは、導電ケーブル23を用いた絶縁監視ユニットの端子台8とアダプタ16との接続を解除する。即ち、図2に示す導電ケーブル23をアダプタ16のターミナル19から取外し、この状態でアダプタ16を、例えば建物1の1〜4階にある電気設備4〜7のうち、いずれかの電気設備の位置まで任意に持ち運ぶようにする。
ここで、建物1の1階にある電気設備4に対してクランプリークメータ11による漏電箇所の探査を行う場合には、建物1の1階部分において、アダプタ16をクランプリークメータ11に対し図2および図5に示すように接続する。この間、アダプタ16は、前記擬似的な基準信号をループバック出力する状態に保持され、信号出力の待機状態となっている。即ち、アダプタ16は、絶縁監視ユニットの端子台8に対する導電ケーブル23を介した接続を解除したときにも、擬似的な基準信号をループバック出力することが可能な状態に保持されている。
次に、この状態で、アダプタ16のコネクタ18がクランプリークメータ11のターミナルに接続され、出力スイッチ22Aが押下されたときには、図9に示すステップ10で「YES」と判定される。ステップ10で「NO」と判定する間は、アダプタ16の出力スイッチ22AがON操作されるのを待機する。そして、ステップ10で「YES」と判定したときには、次のステップ11で出力ランプ22Bを点灯させる。これにより、オペレータはクランプリークメータ11を用いた漏電箇所の探査作業が可能な状態になっていることを、出力ランプ22Bを見て知ることができる。
次のステップ12では、前述の如くループバック出力の待機状態にある擬似的な基準信号を、アダプタ16からクランプリークメータ11に出力して供給する。これにより、例えば1階の電気設備4に対する漏電箇所の探査をクランプリークメータ11を用いて行う場合に、アダプタ16から擬似的な基準信号をクランプリークメータ11に供給することができ、クランプリークメータ11を用いて電気設備4の漏れ電流Ig(特に、抵抗成分電流Igr)を正確に測定することができる。
次のステップ13では、アダプタ16の電源スイッチ20AがOFF操作されたか否かを判定し、「NO」と判定される間は1階の電気設備4に対する漏電探査が終了した後に、他の階(例えば、2〜4階)の電気設備5〜7に対する漏電箇所の探査を行う場合であり、この場合には、前記ステップ12による処理動作を繰返す。そして、ステップ13で「YES」と判定したときには、全ての電気設備3〜7に対する漏電箇所の探査が完了している場合であり、電源スイッチ20AをOFF操作することにより、アダプタ16を用いた図9の制御処理を終了させる。
なお、屋上階の電気設備3に対する漏電箇所の探査は、前述の如くアダプタ16を用いて電気設備4〜7と同様に行ってもよい。勿論、オペレータの任意な判断により、図6に示すように絶縁監視ユニットの背面端子台8とクランプリークメータ11との間を基準信号入力用ケーブル9により接続して、漏電箇所の探査を行うようにしてもよい。
次に、アダプタ16を用いた基準信号の調整処理について図10を参照して説明する。即ち、この調整処理は、アダプタ16の開始スイッチ21AがON操作(図9中のステップ5参照)されることにより開始され、状態表示ランプ21Bが点滅(ステップ6参照)している間に行われるものである。
まず、図10中のステップ21で、アダプタ16の制御部24は、絶縁監視ユニットの端子台8からアダプタ16に入力された基準信号(図8に示す如く周波数と位相とが予め設定されたアナログ信号)を矩形波成形回路26で矩形波のデジタル信号S1に変換し、この状態のデジタル信号S1をポートA部24Aから読込みつつ、前記基準信号の周波数を一定時間(例えば、1〜2分前,後)にわたって測定(検出して認識)する。
次のステップ22では、図8に示すDDSデバイス25の出力周波数を変更して調整する。即ち、アダプタ16の制御部24は、前記基準信号に擬似した基準信号を出力するのに最適な周波数となるように、DDSデバイス25の出力周波数を変更して調整する。換言すると、制御部24は、前述の如き基準信号のデジタル信号S1をポートA部24Aで読込みつつ、DDSデバイス25の出力周波数(即ち、CLK部24Dから受取った出力信号S2の周波数)を、前記デジタル信号S1に従って変更する周波数調整処理を行う。
次のステップ23では、前述の如く周波数が調整された擬似的な基準信号(図8中に示すアナログ信号S3)のループバック出力を開始する。次のステップ24では、周波数が調整されたアナログ信号S3をアナログ出力部24Cから矩形波成形回路27にループバックさせるように出力し、矩形波成形回路27からポートB部24Bにループバックされる周波数調整後のデジタル信号S4(即ち、擬似的な基準信号)と前記デジタル信号S1(即ち、前記基準信号)との位相差を一定時間(例えば、10〜20秒前,後)にわたって測定(検出して認識)する。
次のステップ25では、前記基準信号と擬似的な基準信号との位相差の平均値で擬似的な基準信号の位相を変更して位相調整処理を行う。これにより、アダプタ16の制御部24は、前記デジタル信号S1に対してデジタル信号S4の周波数と位相を一致させた状態(または、限りなく近似させた状態)で前記基準信号に代替される擬似的な基準信号を、アナログ出力部24Cから出力されるアナログ信号S3として生成する。
次のステップ26では、このように周波数と位相とが調整された擬似的な基準信号(図8中に示すアナログ信号S3)をループバック出力が可能な状態に保持し、この状態を継続させて信号出力の待機状態とする。そして、次のステップ27でリターンすることにより、図9に示すステップ8では、基準信号の調整処理が完了していることを「YES」として判定するものである。
かくして、本実施の形態によれば、アダプタ16をクランプリークメータ11から取外して分離した状態で、このアダプタ16を絶縁監視ユニットの端子台8に導電ケーブル23を介して接続することにより、アダプタ16は、前記絶縁監視ユニットの端子台8から基準信号を読込みつつ、この基準信号に従って周波数と位相とが調整された擬似的な基準信号を生成する構成としている。そして、擬似的な基準信号を生成した状態のアダプタ16は、絶縁監視ユニットの端子台8に対する導電ケーブル23を介した接続を解除した後に、オペレータが手に持って持ち運ばれ、クランプリークメータ11にコネクタ18を介して接続される構成としている。
このように構成することにより、建物1に設置された複数の電気設備3〜7のうち任意の電路(電源ケーブル10)から漏洩電流を検出するクランプリークメータ11に対し、アダプタ16を用いて絶縁監視ユニットからの基準信号(前記電気設備3〜7に関連して周波数と位相とが予め決められた擬似的な基準信号)を供給することができる。即ち、アダプタ16は、前記絶縁監視ユニットから前記基準信号を読込みつつ、この基準信号に従って周波数と位相とが調整された擬似的な基準信号を生成するので、絶縁監視ユニット(端子台8)とアダプタ16との接続を解除した状態でも、アダプタ16からは前記擬似的な基準信号をクランプリークメータ11に供給することができる。
このため、前記絶縁監視ユニットから遠く離れた電気設備4〜7(即ち、基準信号入力用ケーブル9が届かない位置)の漏電探査をクランプリークメータ11で行う場合でも、クランプリークメータ11に対してアダプタ16を接続することにより、基準信号入力用ケーブル9を用いることなく、アダプタ16からの擬似的な基準信号をクランプリークメータ11に供給することができ、全ての電気設備3〜7に対する漏電箇所の探査を安定して行うことができる。
特に、本実施の形態によると、擬似的な基準信号を生成した状態のアダプタ16は、絶縁監視ユニットの端子台8に対する接続が解除されたときにも、この状態では前記擬似的な基準信号をループバックで出力可能な状態に保つことができる。そして、アダプタ16をクランプリークメータ11に接続したときには、前記ループバック状態にある前記擬似的な基準信号をアダプタ16からクランプリークメータ11に供給し続けることができる。
即ち、複数の電気設備3〜7に対する漏電探査をクランプリークメータ11で行う場合でも、それぞれの電路(電気設備3〜7の電源ケーブル10)に対してクランプリークメータ11をクランプするように取付ける度毎に、アダプタ16からループバック出力状態にある擬似的な基準信号をクランプリークメータ11に供給することができ、全ての電気設備3〜7に対する漏電箇所の探査を正確に行うことができる。
なお、屋上階の電気設備3に対する漏電箇所の探査は、前述の如くアダプタ16を用いて必ずしも行う必要はない。即ち、オペレータの任意な判断により、図6に示すように絶縁監視ユニットの背面端子台8とクランプリークメータ11との間を基準信号入力用ケーブル9により接続し、この状態で漏電箇所の探査を行ってもよいものである。
また、本発明者等は、絶縁監視ユニットの背面端子台8に無線の送信器(図示せず)を接続し、搬送波を使用して基準信号を無線でクランプリークメータ11側の受信器(図示せず)に送信することも検討した。この場合、基準信号をクランプリークメータ11側にリアルタイムで供給することができる。しかし、このような無線設備は、現段階では高価であり、実現は難しいので、基準信号に代替される擬似的な基準信号をアダプタ16からクランプリークメータ11に供給する構成を採用したものである。
また、絶縁監視ユニットからの基準信号(または、これに代替される擬似的な基準信号)をメモリ等の記憶手段を用いて更新可能に記憶させることも検討した。しかし、このようにメモリに記憶させた基準信号は、位相にずれが生じ易く、擬似的な基準信号としてクランプリークメータ11に安定して供給することが難しいものである。
さらに、本実施の形態で採用したアダプタ16は、絶縁監視ユニットの端子台8に対する接続を解除した状態でも、前記擬似的な基準信号をループバックで出力可能な状態に保つことができる。しかし、この場合の擬似的な基準信号は、例えば10〜20時間程度経過したときに、周波数と位相(特に、位相)がずれてしまう。このため、漏電箇所の探査を数時間が経過した後に再び行うような場合には、電源スイッチ20Aを一旦はOFFし、その後に実際の漏電箇所探査時にアダプタ16の電源スイッチ20Aを再度投入して、図9に示す制御処理を再度行うようにするのがよいものである。
なお、前記実施の形態では、図8に示す如く、制御部24の入出力制御部(インターフェース)に、ポートA部24A、ポートB部24B、アナログ出力部24C、CLK部24DおよびSPI部24Eを設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図11に示す変形例のように、制御部24の入出力制御部には、シリアルインターフェースであるSPI部24Eに替えてパラレル出力部24Fを設ける構成としてもよい。この場合、パラレル出力部24Fはパラレルインターフェースであり、CPU動作クロックの初期値を設定するものである。
また、前記実施の形態では、アダプタ16をクランプリークメータ11から取外し両者を分離した状態で、アダプタ16を絶縁監視ユニットの端子台8に導電ケーブル23を介して接続する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えばアダプタ16をクランプリークメータ11に接続した状態で、アダプタ16を絶縁監視ユニットの端子台8に導電ケーブル23を介して接続することも可能であり、このような場合でも、アダプタ16は絶縁監視ユニットの端子台8から基準信号を読込むことができる。
さらに、前記実施の形態では、建物1全体の絶縁監視を行う絶縁監視ユニットから、例えば20Hzの基準信号をアース(接地相)側に流す場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば12.5Hzまたは15Hzの基準信号を絶縁監視ユニット側で用いる場合もある。そこで、このような場合には、例えば選択スイッチ等を用いて基準信号の周波数を選択できる構成としてもよいものである。