JP6143557B2 - 曲げ変形量計測方法および曲げ変形量計測装置 - Google Patents

曲げ変形量計測方法および曲げ変形量計測装置 Download PDF

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Description

本発明は、曲げ変形量計測方法および曲げ変形量計測装置に関する。
地震等の大きな外力が作用することにより、構造物に損傷が生じる場合がある。ところが、杭等のように、地中に埋設された構造部分は、健全度を確認するのが困難であった。
杭等の地中部分の健全度の確認方法としては、周辺地盤を掘削して目視により調査する方法、露出部分を打撃して弾性波を発生させてその反射波を分析する方法等が採用されるが、作業が大掛かりであることや診断が不確実である等の問題点があった。
そのため、杭の健全度を測定する方法として、杭の所定の断面位置(高さ位置)に複数のひずみゲージを取り付けておき、これらのひずみゲージを利用して杭に生じたひずみを電気的に計測する測定方法が採用される場合がある。
また、特許文献1には、コンクリート部材に埋設された棒状の弾性部材と、棒状の弾性部材の外面に軸方向に所定の間隔で設置された複数のひずみゲージとを有した計測装置により、弾性部材のひずみを計測することで曲げ変形が生じたコンクリート部材の曲率を求める測定方法が開示されている。
また、特許文献2には、レーザー光測定器を用いて3点間の位置データを測定することで、曲がり変形が生じたコンクリート部材の曲がり量を計測する方法が開示されている。
特開2006−078214号公報 特開2001−124535号公報
同一の高さ位置に複数のひずみゲージを配設する方法は、複数のひずみゲージを現場作業により設置する必要があるため、作業に手間を要していた。
また、コンクリート杭の場合には、ひずみゲージは鉄筋に設置されているため、実際には鉄筋の伸縮ひずみが計測されており、杭体にひび割れが生じて鉄筋に応力が作用するとひずみが急増するなど、局所的な影響を受けやすかった。
また、特許文献1に記載の測定方法では、コンクリートに弾性部材を付着させているので、コンクリート部材に弾性部材を横切るような曲げひび割れが生じた場合には、ひび割れとひずみゲージとの位置関係によりひずみの検出値が大幅に変わり、適切な曲率を計測することができない場合があった。
また、特許文献2に記載の測定方法では、コンクリート部材の内部に組み込むには装置が大きすぎる場合があり、また、装置が高価であった。
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであって、高精度に計測対象物の曲げ変形量を計測することを可能とした曲げ変形量計測方法と、この曲げ変形計測方法に使用する簡易な構成からなる曲げ変形量計測装置を提案することを課題とする。
前記の課題を解決するために、本発明の曲げ変形量計測方法は、計測対象物に形成された筒状の設置孔に直線状の基準棒を配設するとともに、前記基準棒上の離れた位置に二つの基準点および一つの対比点を設定しておき、前記計測対象物の変形後に、前記二つの基準点を通る直線と前記対比点との少なくとも二方向の垂直離隔距離に相関する物理量を測定することにより、前記計測対象物の多方向の曲げ変形量を測定することを特徴としている。
かかる曲げ変形量計測方法は、計測対象物そのものや計測対象物の鉄筋等に生じた局所的なひずみを計測するものではなく、基準点と対比点との位置関係により計測対象物の一定範囲の全体的な曲げ変形量を計測するものである。したがって、本発明に係る曲げ変形量計測方法によれば、計測対象範囲にひび割れが生じた場合であっても、その局所的なひずみに左右されずに、計測対象範囲の全体的な曲げ変形量を正確に計測することができる。
また、本発明の曲げ変形量計測装置は、計測対象物に形成された筒状の設置孔に配設された一本の棒と、前記計測対象物の多方向の曲げ変形量を検出する計測手段とを備える曲げ変形量計測装置であって、前記設置孔内の同一直線上の離れた位置に二つの基準点および対比点が設定されていて、前記棒には前記二つの基準点の位置において前記棒と前記設置孔とをつなぐ自在継手が形成されており、前記計測手段は前記計測対象物の変形後に前記二つの基準点を通る直線に対する前記対比点の垂直離隔距離に相関する物理量を測定することを特徴としている。
かかる変形量計測装置によれば、低価格な部品を使い、簡単かつコンパクトに構成することができるため、設置が容易でかつ安価である。
また、計測対象物の曲げ変形量を簡易かつ高精度に計測することができる。
なお、前記計測手段は、前記棒と前記設置孔の内壁面との間に介設されたバネ部材と前記バネ部材に設置されたひずみゲージとからなり、前記棒と前記対比点との垂直離隔距離に相関する物理量を測定するものであってもよいし、前記棒の外面に接するスライド片と前記スライド片と前記設置孔の内壁面との間に介設されたバネ部材と前記バネ部材に設置されたひずみゲージとからなり、前記棒と前記対比点との垂直離隔距離に相関する物理量を測定するものであってもよい。
また、前記基準点が前記棒の一端部および中央部に設定されていて、前記計測手段は前記設置孔に固定された記録盤を有しており、前記記録盤は前記棒の他端に接しているか、あるいは前記棒の他端部を貫通したものであってもよい。
また、前記変形量計測装置は、前記基準点は前記棒の上端部および下端部に設定されていて、前記対比点は前記棒の中央部に設定されていて、前記棒には前記対比点の位置において前記設置孔の内壁面に当接する当接部材が設けられていて、前記計測手段は前記計測対象物の変形後に前記二つの基準点を通る直線に対する前記対比点の垂直離隔距離に相関する物理量を測定するものであってもよい。
本発明の曲げ変形量計測方法および曲げ変形量計測装置によれば、高精度に計測対象物の曲げ変形量を計測することが可能となる。
本発明の実施形態に係る曲げ変形量計測装置を備えた杭を模式的に示す断面図である。 第一の実施形態に係る曲げ変形量計測装置の設置状況を模式的に示す斜視図である。 (a)は図2の曲げ変形量計測装置を示す斜視図、(b)は(a)の模式図である。 (a)は変形量計測装置の計測手段を示す平断面図、(b)は同縦断面図である。 (a)は図4の計測手段のバネ部材を示す平面図、(b)は同縦断面図である。 (a)は図1に示す杭の変形後を示す側面図、(b)は(a)の拡大図である。 (a)および(b)は曲げ変形が生じた杭の曲率および折れ角の算出方法の説明用の参考図である。 第二の実施形態に係る曲げ変形量計測装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は平断面図、(c)は側面図、(d)は横断面図、(e)は抑え環を示す平面図、(f)はスライド片とリングバネを示す平面図である。 (a)〜(c)は、図8に示す曲げ変形量計測装置による曲げ変形量の計測状況を示す平断面図である。 (a)は第三の実施形態に係る曲げ変形量計測装置を示す斜視図、(b)は(a)の模式図である。 図10の(a)の曲げ変形量計測装置の一部を示す拡大斜視図、(b)は同曲げ変形量計測装置の断面図である。 第四、五の実施形態に係る曲げ変形量計測装置を示す斜視図である。 第四の実施形態に係る曲げ変形量計測装置を示す図であって、(a)は計測手段の斜視図、(b)は同計測手段の記録盤の断面図、(c)は(b)の記録盤を上方から望む平面図、(d)は(b)の記録盤を下方から望む平面図である。 (a)および(b)は曲げ変形が生じた杭の曲率および折れ角の算出方法の説明用の参考図である。 第五の実施形態に係る曲げ変形量計測装置を示す図であって、(a)は計測手段の斜視図、(b)は同計測手段の記録盤を示す平面図である。
<第一の実施形態>
第一の実施形態では、地震等により大きな外力が作用した杭の健全度を確認するための曲げ変形量計測装置および曲げ変形量計測方法について説明する。
曲げ変形量計測装置1は、図1に示すように、杭2の曲げ変形量を計測したい箇所に配設されている。また、曲げ変形量計測装置1は、杭2の施工時に設けても良いし、既設の杭2に後施工により設けてもよい。なお、符号Fはフーチングである。
曲げ変形量計測装置1は、図2に示すように、杭2に形成された円筒状の設置孔21に配設されている。本実施形態では、杭2の断面中心において、杭2の軸心に沿って設置孔21が形成されている。設置孔21は、コンクリート打設時に筒状部材を配設することにより形成してもよいし、杭2の形成後に削孔して形成してもよい。
曲げ変形量計測装置1は、筒状ケース10と、筒状ケース10内に配設された基準棒3と、基準棒3の両端に設置された球体4,4と、筒状ケース10内において両球体4,4から離れた位置に配設された計測手段5とを備えて構成されている。
筒状ケース10は、設置孔21内に挿入された筒状の部材である。筒状ケース10は、設置孔21との隙間に樹脂材等の充填材が充填されることで、杭2に一体に固定されている。なお、筒状ケース10を構成する材料は限定されないが、杭2(設置孔21)の変形に伴って変形する材質を備えたものを使用する。
基準棒3は、地震時の自らの慣性力や対比点からの作用力によって変形することのない強度と剛性を有している。
基準棒3の外周面と筒状ケース10の内周面との間には隙間が設けられていて、杭2が変形したときでも、筒状ケース10の内周面は基準棒3と接しないように構成されている。
球体4は、筒状ケース10の内壁面に接する外径を有している。球体4は、筒状ケース10に対して上下方向に摺動可能であるとともに、基準棒3を傾動可能に支持するいわゆるユニバーサルジョイント(自在継手)を構成しており、筒状ケース10が曲げ変形した場合であっても、基準棒3の直線性を維持することが可能に構成されている。つまり、本実施形態では、図3に示すように、基準棒3の両端部(球体4の中心)を基準点P1に設定している。
計測手段5は、杭2の多方向の曲げ変形量を検出するものであって、二つの球体4,4の中間(基準棒3の長手方向の中央部)に配設されている。つまり、本実施形態では、基準棒3の長手方向の中央部に対比点P2を設定している。
計測手段5は、図4に示すように、内環51と、外環52と、リングバネ(バネ部材)53と、ひずみゲージ54(図5参照)とを備えて構成されている。
内環51は、基準棒3の外面に周設された環状部材である。
内環51は、上下に配設された2枚の円帯状の板材により構成されている。2枚の板材は、リングバネ53の一部を内挿することが可能な間隔をあけて対向している。内環51は、基準棒3の外面に固定されている。
外環52は、内環51よりも大きな内径を有した環状部材からなり、外環52と内環51との間には一定のクリアランス(隙間)が設けられている。
また、外環52は、筒状ケース10の内径と同等の外径を有していて、外環52の外面は筒状ケース10の内壁面に当接している(図2参照)。
外環52は、断面コ字状の部材からなり、リングバネ53の一部を内挿することが可能に構成されている。
リングバネ53は、円筒状の部材であり、内環51と外環52との間に形成されたクリアランスに配設されている。つまり、リングバネ53は、内環51と外環52を介して基準棒3と筒状ケース10の内壁面との間に介設されている。なお、リングバネ53は、直接基準棒3と筒状ケース10に当接した状態で配設されていてもよい。
本実施形態では、基準棒3の周囲を囲むように、4つのリングバネ53が等間隔で配設されている。なお、リングバネ53の数や配置は限定されるものではないが、曲げ変形量および曲げ変形の方向を計測する観点から、3つ以上、好ましくは4の倍数の数で、かつ、等間隔に配置されているのが望ましい。
リングバネ53は、基準棒3側において一部が内環51に挿入されていて、基準棒3と反対側において一部が外環52に挿入されている。
リングバネ53は、内環51に挿入された部位において、内環51に固定された固定ピン55を介して、内環51に固定されている。
また、リングバネ53は、外環52に挿入された部位において、外環52に固定された固定ピン55を介して外環52に固定されている。
固定ピン55は、リングバネ53の中心を通る直線上のリングバネ53を挟んで対向する位置において、内環51または外環52を貫通しているとともに、リングバネ53の外面に固定されている。
なお、リングバネ53の固定方法は限定されない。
図5に示すように、各リングバネ53には、ひずみゲージ54が2箇所に取り付けられている。
ひずみゲージ54は、両ひずみゲージ54を結ぶ直線が固定ピン55同士を結ぶ直線と直交するように、リングバネ53の内側面に取り付けられている。
本実施形態の曲げ変形量計測装置1を利用した杭の曲げ変形量の測定は、基準棒3に対する外環52の移動距離を測定することにより行う。
外環52の変位量は、リングバネ53の変形をひずみゲージ54により測定することで計測することができる。本実施形態では、曲げ変形の時間的変化を時系列で計測する。
図6に示すように、杭2に変形が生じた場合には、三つの計測点(二つの基準点P1,P1および一つの対比点P2)の位置がそれぞれ変位し、直線配列が変化して、対比点P2が基準線LBに対して垂直方向に相対変位する(図3の(b)参照)。なお、基準棒3は、その両端部が自在継手(球体4)を介して筒状ケース10(設置孔21)に支持されているため、杭2に変形が生じた場合であっても、直線状態が維持され、したがって、基準棒3に対する対比点P2(外環52)の変位量を計測することで、基準線(基準点P1同士の結ぶ直線)LBに対する垂直方向の相対変位量d(二つの基準点を通る直線に対する対比点P2の垂直離隔距離に相関する物理量)を計測することができる。なお、ひずみゲージ54で得られるひずみ量と相対変位量dとの関係は、事前に実験等を行って、予め求めておく。
図7に示すように、基準点P1同士の区間長をLとすると、計測された相対変位量dを利用することで、基準点P1同士の間の区間における曲げ変形の曲率1/R(曲率半径=R)、および、基準線LBに対する基準点P1と対比点P2とを結ぶ直線の折れ角度θは、それぞれ式1,2で表すことができる。
Figure 0006143557
以上のように、本実施形態の曲げ変形量計測装置によれば、杭2の曲げ変形に伴う、曲げ変形の曲率および折れ角度を計測することが可能となり、この計測結果に基づいて、杭2の健全度を把握することができる。
また、変形量計測装置は、低価格な部品を使い、簡単かつコンパクトに構成することができるため、設置が容易でかつ安価である。
また、杭2に生じたひび割れが計測装置1を通過するように形成された場合であっても、対象区間を均した曲率や折れ角を計測することができる。
変位の計測は、ひずみゲージ54により計測された結果をコンピュータなどにより受信して算出するため、地中に埋設された構造物の健全度を簡易に把握することができる。
<第二の実施形態>
第二の実施形態に係る曲げ変形量計測装置は、地震時の曲げ変形の時間的変化のうち、最大値のみを計測する機構を備えている点で、同時間的変化を時系列で計測する第一の実施形態と異なっている。
曲げ変形量計測装置1は、図2に示すように、杭2に形成された円筒状の設置孔21に配設されている。本実施形態では、杭2の断面中心において、杭2の軸心に沿って設置孔21が形成されている。
曲げ変形量計測装置1は、筒状ケース10と、筒状ケース10に配設された基準棒3と、基準棒3の両端に設置された球体4,4と、筒状ケース10内において両球体4,4から離れた位置に配設された計測手段6とを備えて構成されている。
なお、筒状ケース10、基準棒3および球体(基準点)4は、第一の実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
計測手段6は、杭2の多方向の曲げ変形量を検出するものであって、二つの球体4,4の中間(基準棒3の長手方向の中央部)に配設されている。つまり、本実施形態では、第一の実施形態と同様に、基準棒3の長手方向の中央部に対比点P2を設定している。
計測手段6は、図8に示すように、スライド制御機構61と、変位記憶機構62と、スライド片63と、リングバネ(バネ部材)64と、ひずみゲージ65と、抑え環66とを備えて構成されている。
スライド制御機構61は、図8の(a)および(c)に示すように、基準棒3の外径よりも大きな開口を有した環状部材である。
スライド制御機構61は、基準棒3の外面との間に隙間を有しており、水平方向(基準棒3に対して直交する方向)に移動可能である。
スライド制御機構61は、図8の(c)に示すように、変位記憶機構62の上方に配設されており、固定部材61aを介して変位記憶機構62に固定されている。
スライド制御機構61は、変位記憶機構62の上面に配設されたスライド片63に対して、抑え環66を介して押し付け力を付与している。
また、スライド制御機構61は、図8の(d)に示すように、中空の部材からなり、内部に電磁石61bが配設されている。
電磁石61bは、通電されることで磁力を発現し、抑え環66をスライド制御機構61側に引き上げる。
変位記憶機構62は、図8の(b)および(c)に示すように、基準棒3の外径よりも大きな開口を有した環状部材である。
変位記憶機構62は、基準棒3の外面との間に隙間を有しており、基準棒3に対して水平方向に移動可能である。
変位記憶機構62は、環状に形成された円帯状板材であって、図8の(b)に示すように、上面と内周面に開口する凹部62aを備えている。凹部62aは、等間隔で4箇所形成されている。なお、凹部62aの数や配置は限定されない。
凹部62aには、図8の(d)に示すように、リングバネ64が配設されているとともに、スライド片63の一部が挿入されている。
スライド片63は、スライド制御機構61と変位記憶機構62との間に配設されている。本実施形態では、変位記憶機構62の凹部62aの配置に応じて、4つのスライド片63が基準棒3の四方を囲うように配置されている。
図8の(b)および(d)に示すように、スライド片63は直方体に形成されていて、基準棒3の外面に接している。
スライド片63の上面には、抑え環66が配設されている。
抑え環66は、図8の(e)に示すように、金属製の環状部材からなり、外縁に板バネ66aが固定されている。抑え環66は、板バネ66aを介してスライド片63に抑え力(変位記憶機構62方向の押圧力)を付与している。
スライド片63は、変位記憶機構62と抑え板66により把持されている。
リングバネ64は、変位記憶機構62の凹部62a内に配設されており、スライド片63と凹部62aの側面と当接している。
リングバネ64は、図8の(f)に示すように、凹部62a内の底面に立設された固定ピン64aを介して、変位記憶機構62に固定されている。
各リングバネ64には、ひずみゲージ65が取り付けられている。
本実施形態では、ひずみゲージ65が、リングバネ64の内面のスライド片63側に固定されているが、ひずみゲージ65の配置は限定されない。
本実施形態の変形量計測装置1によれば、図9に示すように、地震時等の外力が作用して基準棒3に対して計測手段6が移動(相対変位)した場合には、計測手段6の移動方向の反対側に配設されたスライド片63が基準棒3により凹部62a内に押し込まれる。
スライド片63は、抑え環66の抑え力により、摩擦すべりが制御されているため、移動量の最大値(相対変位の最大値)が保持される。
つまり、図9の(b)に示すように、基準棒3に対して計測手段6が右下方向に移動する力が作用すると、基準棒3の左側と上側に配設されたスライド片63a,63bが凹部62aに押し込まれた状態となる。
さらに、図9の(c)に示すように、基準棒3に対して計測手段6が左方向に移動する力が作用すると、基準棒3の右側に配設されたスライド片63cが凹部62aに押し込まれた状態となる。
基準棒3がスライド片63a〜63dから離れても、抑え環66によりスライド片63a〜63dの位置は保持される。
そして、リングバネ64の変形をひずみゲージ65により測定することで、基準線(基準点P1同士を結ぶ直線)LBに対する垂直方向の最大相対変位量d(基準棒3と対比点P2との垂直離隔距離に相関する物理量)を計測することができる。
最大相対変位量dと基準点P1同士の区間長Lを利用して、基準点P1同士の間の区間における曲げ変形の曲率1/R(曲率半径=R)、および、基準線LBに対する基準点P1と対比点P2とを結ぶ直線の折れ角度θを算出する。
なお、曲げ変形の曲率1/R(曲率半径=R)および折れ角度θの算出方法は、第一の実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
最大相対変位量dの計測後、電磁石61aに通電すれば、抑え環66が引き上げられるため、リングバネ64の復元力を使って、スライド片63が凹部62aから押し戻されて、基準棒3に対する計測手段6の各部材の配置が元の状態に戻される(図9の(a)参照)。
以上のように、本実施形態の曲げ変形量計測装置1によれば、杭2の曲げ変形に伴う、曲げ変形の曲率および折れ角度を計測することが可能となり、この計測結果に基づいて、杭2の健全度を把握することができる。
また、変形量計測装置1は、低価格な部品を使い、簡単かつコンパクトに構成することができるため、設置が容易でかつ安価である。
杭2に曲げ変形が生じた後に、変位の最大値のみを計測するため、常時計測する場合に比べて安価である。
<第三の実施形態>
第三の実施形態に係る曲げ変形量計測装置は、基準棒3として、杭2の曲げ変形(設置孔21の変形)に伴って曲げ変形する弾性棒を使用している点で、第一の実施形態と異なっている。
本実施形態の曲げ変形量計測装置1は、図2に示すように、杭2に形成された筒状の設置孔21に配設されている。本実施形態では、杭2の断面中心において、杭2の軸心に沿って設置孔21が形成されている。
曲げ変形量計測装置1は、図10の(a)に示すように、筒状ケース10と、筒状ケース10に配設された基準棒3と、基準棒3の両端に設置された球体4,4と、筒状ケース10内において両球体4,4から離れた位置に配設された計測手段7とを備えて構成されている。
なお、筒状ケース10および球体(基準点)4は、第一の実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。
基準棒3は、いわゆる弾性体により構成されており、図10の(b)に示すように、杭2が曲げ変形した場合に、両端の基準点P1を基点にしなるように構成されている。
計測手段7は、杭2の多方向の曲げ変形量を検出するものであって、二つの球体4,4の中間(基準棒3の長手方向の中央部)に配設されている。つまり、本実施形態では、第一の実施形態と同様に、基準棒3の中央部に対比点P2を設定している。
計測手段7は、図11に示すように、当接部材71と、ひずみゲージ72とを備えて構成されている。
当接部材71は、基準棒3に周設された円板である。当接部材71の外縁は、筒状ケース10の内面に当接するとともに基準棒3の外周面に当接している。
当接部材71の内縁(基準棒3との当接面)には、ひずみゲージ72を配設するための凹部71aが形成されている。
本実施形態では、4つの凹部71aが等間隔で形成されているが、凹部の数の配置は限定されない。
凹部71aは、ひずみゲージ72よりも大きな形状を有しており、当接部材71とひずみゲージ72とが接触することがないように構成されている。
ひずみゲージ72は、基準棒3の外面に固定されていて、基準棒の曲げひずみ量を測定することが可能に構成されている。本実施形態では、4つのひずみゲージ72が、基準棒3の外周囲に等間隔で配設されている。
なお、ひずみゲージの種類は、限定されるものではないが、抵抗線式のひずみゲージが望ましい。
4つのひずみゲージ72を等間隔で配設することで、2方向の曲げ変形に対応したひずみ量を測定することができる。
本実施形態の計測手段7は、杭2に曲げ変形が生じると、当接部材71を介して基準棒3に曲げ変形を生じさせる。つまり、対比点P2(基準棒3の長手方向の中央部)が、基準点P1,P1を結ぶ直線に対して変位する。基準棒3は、単純梁の力学法則にしたがって曲るので、対比点P2における変位量(撓み量)d、対比点部分に生じる曲げモーメントMおよび、基準棒3の曲げひずみ量εには、式3〜5の関係が成り立つ。
Figure 0006143557
式3〜5より、式6が導かれ、対比点P2における基準棒3の曲げひずみを計測することにより、対比点P2における変位量d(基準点P1同士の結ぶ直線に対する垂直方向の相対変位量d)がわかる。なお、式6から明らかなように、対比点P2における変位量dは、基準棒3のスパン長Lと基準棒3の断面の寸法(直径)Dによって決定する。
Figure 0006143557
以上のように、本実施形態の曲げ変形量計測装置1によれば、杭2の曲げ変形に伴う、対比点P2における変位量(二つの基準点を通る直線に対する対比点P2の垂直離隔距離に相関する物理量)を計測することが可能となり、この計測結果に基づいて、杭2の健全度を把握することができる。
また、変形量計測装置1は、低価格な部品を使い、簡単かつコンパクトに構成することができるため、設置が容易でかつ安価である。
<第四の実施形態>
第四の実施形態に係る曲げ変形量計測装置1は、曲げ変形の最大値のみを計測する機構を備えているものであるが、計測後に元の状態に復帰しない点で、第二の実施形態と異なっている。
本実施形態の曲げ変形量計測装置1は、図12に示すように、杭2に形成された筒状の設置孔21に配設されている。本実施形態では、杭2の断面中心において、杭2の軸心に沿って設置孔21が形成されている。
曲げ変形量計測装置1は、設置孔21に配設された筒状ケース10と、筒状ケース10に配設された基準棒3と、基準棒3の下端部と中央部に設置された球体4,4と、筒状ケース10の上部に配設された計測手段8とを備えて構成されている。つまり、本実施形態では、基準点P1が曲げ変形量計測装置1の下端部(一端部)と中央部に設定されており、対比点P2が上端部(他端部)に設定されている。
なお、筒状ケース10、基準棒3および球体4(基準点P1)の詳細は、第一の実施形態で示したものと同様なため、詳細な説明は省略する。また、基準点P1は曲げ変形量計測装置1の上端部と中央部に設定されていてもよく、同様に、対比点P2は曲げ変形量計測装置1の下端部に設定されていてもよい。
計測手段8は、基準線(基準棒3)に対する対比点P2の相対変位量を撮影するための撮影機構81と、相対変位量の最大値を、電気を使わずに残す計測機構82(図13の(a)参照)と、を備えている。
撮影機構81は、筒状ケース10の上端(対比点側の端部)に配設されており、カメラ81aと、光源81bと、を備えて構成されている。
カメラ81aは、計測機構82を撮影する。また、光源81bは、カメラ81aによる撮影時に、計測機構82に光を当てる。
計測機構82は、図13に示すように、基準棒3の上端(他端)に設けられたけがき針82aと、けがき針82aと当接するように、基準棒3の上方に配設された記録盤82bとを備えている。なお、基準棒3の上端に設ける部材は、必ずしもけがき針82aでなくてもよく、例えば、インクペンでもよい。
記録盤82bは、透明のガラス板により構成されており、筒状ケース10に固定されている。
記録盤82bのけがき針82a側の面には、けがき針82aにより削り取ることが可能な塗料82cが塗布されていて、カメラ81a側の面には、目盛り線82dが描かれている。
なお、記録盤82bには、必ずしも塗料82cが塗布されている必要はない。例えば、けがき針82aに換えて、インクペンが基準棒3の上端に設けられている場合には、記録盤82bが描画面を構成すればよい。
本実施形態の曲げ変形量計測装置1によれば、杭2に曲げ変形が生じた際に、図13の(d)に示すように、けがき針82aが記録盤82bの塗料82cを削り取り、記録盤82bに線条痕が残る。
カメラ81aは、記録盤82bの線条痕を目盛線82dとともに撮影するため、この撮影結果により、基準点P1同士を結ぶ直線の延長線と対比点P2との相対変位量の大きさを読取ることができる。
図14に示すように、曲げ変形量計測装置1の下端部に配設された(下側の)基準点P1から対比点P2までの距離をLとすると、計測された相対変位量eを利用することで、下側の基準点P1と対比点P2との間の区間における曲げ変形の曲率1/R(曲率半径=R)、および、中央部(上側)の基準点P1と対比点P2とを結ぶ直線の折れ角度θは、それぞれ式7,8で表すことができる。
Figure 0006143557
以上のように、本実施形態の曲げ変形量計測装置1によれば、杭2の曲げ変形に伴う、対比点P2における変位量(二つの基準点を通る直線に対する対比点P2の垂直離隔距離に相関する物理量)を計測することが可能となり、この計測結果に基づいて、杭2の健全度を把握することができる。
変形量計測装置1は撮影時のみに電気を使用するため経済的である。
<第五の実施形態>
第五の実施形態に係る曲げ変形量計測装置1は、対比点P2において、基準棒3が記録盤83を貫通している点で、第四の実施形態の曲げ変形量計測装置と異なっている。
記録盤83は、例えば粘土等の塑性材料を盤状に形成することにより構成されており、筒状ケース10を遮蔽するように配設されている。
記録盤83の上方には目盛り線82dが描かれた透明のガラス板82eが配設されており、カメラ81aによる記録盤83の撮影が可能に構成されている。
この他の第五の実施形態に係る曲げ変形量計測装置1の構成は、第四の実施形態で示した曲げ変形量計測装置1と同様なため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の曲げ変形量計測装置1によれば、杭2に曲げ変形が生じた際に、図15の(b)に示すように、基準棒3が記録盤83を構成する塑性材料を圧して変形させるため、対比点における基準棒3の最大変位が圧縮痕として残存する。
カメラ81aは、記録盤83の圧縮痕を目盛線82dとともに撮影するため、この撮影結果により基準点P1(球体4)同士を結ぶ直線の延長線と対比点P2との相対変位の大きさを読取ることができる。
以上のように、本実施形態の曲げ変形量計測装置1によれば、杭2の曲げ変形に伴う、対比点における変位量(二つの基準点を通る直線に対する対比点P2の垂直離隔距離に相関する物理量)を計測することが可能となり、この計測結果に基づいて、杭2の健全度を把握することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、曲げ変形量計測装置を杭に設置する場合について説明したが、曲げ変形量計測装置により計測を行う計測対象物は、杭に限定されない。
曲げ変形量計測装置は、予め工場等において一体型の製品として製作したものを計測対象物に設置してもよいし、現地において組み立ててもよい。
また、曲げ変形量計測装置は、計測対象物の施工時に埋め込んでおいてもよいし、既設の計測対象物を削孔して配設してもよい。
計測手段の構成は、基準線に対する対比点の離隔距離に相関する物理量を測定することが可能であれば、前記各実施形態で示したものに限定されない。
前記各実施形態では、球体により自在継手を形成するものとしたが、自在継手の構成は限定されない。
バネ部材は、リングバネに限定されない。
1 曲げ変形量計測装置
2 杭(計測対象物)
21 設置孔
3 基準棒(棒)
4 球体
5 計測手段
53 リングバネ(バネ部材)
54 ひずみゲージ
6 計測手段
63 スライド片
64 リングバネ(バネ部材)
65 ひずみゲージ
7 計測手段
71 当接部材
72 ひずみゲージ
8 計測手段
82b,83 記録盤
P1 基準点
P2 対比点

Claims (6)

  1. 計測対象物に形成された筒状の設置孔に直線状の基準棒を配設するとともに、前記基準棒上の離れた位置に二つの基準点および一つの対比点を設定しておき、
    前記計測対象物の変形後に、前記二つの基準点を通る直線と前記対比点との少なくとも二方向の垂直離隔距離に相関する物理量を測定することにより、前記計測対象物の多方向の曲げ変形量を測定することを特徴とする曲げ変形量計測方法。
  2. 計測対象物に形成された筒状の設置孔に配設された一本の棒と、
    前記計測対象物の多方向の曲げ変形量を検出する計測手段と、を備える曲げ変形量計測装置であって、
    前記設置孔内の同一直線上の離れた位置に二つの基準点および対比点が設定されていて、
    前記棒には、前記二つの基準点の位置において前記棒と前記設置孔とをつなぐ自在継手が形成されており、
    前記計測手段は、前記計測対象物の変形後に前記二つの基準点を通る直線に対する前記対比点の垂直離隔距離に相関する物理量を測定することを特徴とする、曲げ変形量計測装置。
  3. 前記計測手段は、前記棒と前記設置孔の内壁面との間に介設されたバネ部材と、前記バネ部材に設置されたひずみゲージとからなり、前記棒と前記対比点との垂直離隔距離に相関する物理量を測定することを特徴とする、請求項2に記載の曲げ変形量計測装置。
  4. 前記計測手段は、前記棒の外面に接するスライド片と、前記スライド片と前記設置孔の内壁面との間に介設されたバネ部材と、前記バネ部材に設置されたひずみゲージとからなり、前記棒と前記対比点との垂直離隔距離に相関する物理量を測定することを特徴とする、請求項2に記載の曲げ変形量計測装置。
  5. 前記基準点は、前記棒の一端部および中央部に設定されていて、
    前記計測手段は、前記設置孔に固定された記録盤を有しており、
    前記記録盤は、前記棒の他端部に接しているか、あるいは前記棒の他端部を貫通していることを特徴とする、請求項2に記載の曲げ変形量計測装置。
  6. 前記基準点は、前記棒の上端部および下端部に設定されていて、
    前記対比点は、前記棒の中央部に設定されていて、
    前記棒には、前記対比点の位置において前記設置孔の内壁面に当接する当接部材が設けられていて、
    前記計測手段は、前記計測対象物の変形後に前記二つの基準点を通る直線に対する前記対比点の垂直離隔距離に相関する物理量を測定することを特徴とする、請求項2に記載の曲げ変形量計測装置。
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