JP6133640B2 - 環状トリテルペンアシッドの水溶剤 - Google Patents

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本発明は、疎水性物質である環状トリテルペンアシッドおよびその誘導体を親水化して水溶剤とした組成を有する化粧品、医薬部外品および医薬品に関する。
環状トリテルペンアシッド(例えば、オレアノール酸(oleanolic acid)、ウルソール酸(ursolic acid)、コロソール酸(corosolic acid)、マスリン酸(maslinic acid)、ベツリン酸(betulinic acid)、18β-グリチルレチン酸(glycyrrhetinic acid)などの5環性トリテルペンアシッド)は植物に広く存在し、様々な生薬原材料などに含まれている。環状トリテルペンは、炭素数30のスクワレンから生合成される環状骨格を基本とした物質で、多くは2,3-oxidosqualeneを介して閉環反応が起こるため、3位に水酸基またはカルボニル基を有する場合が多く、多様な閉環反応や転移反応により多環性(4環性、5環性)の多様な構造を有する一群の化合物の総称である。環状トリテルペンの一部は、側鎖のメチル基がチトクローム系オキシゲナーゼにより酸化(非特許文献1)されることにより、カルボキシル基に変換され、環状トリテルペンアシッドと総称する一群の化合物となる。トリテルペンと近縁の物質として、同じスクワレンを生合成経路として経由するステロールがよく知られている。ステロールの多くは閉環反応後の生合成の過程でlanosterolを経由した4環性のコレスタン環状骨格を有している。ステロールの一部も酸化され、カルボキシル基が導入される場合があるが、天然に存在するステロールでは、コール酸やデオキシコール酸などに代表されるように、一般的にカルボキシル基の導入部位が環状トリテルペンアシッドのそれとは異なる。
5環性トリテルペンアシッドには、様々な薬効作用が知られている。例えば、オレアノール酸では抗炎症、抗ウイルス、抗腫瘍(抗癌)、抗酸化、肝庇護などの様々な作用が知られている(非特許文献2)。またウルソール酸では抗腫瘍(抗癌)、抗炎症、抗酸化、抗HIV、肝庇護などの作用が知られている(非特許文献3)。同様にベツリン酸では抗腫瘍(抗癌)、抗HIV、抗炎症、抗酸化作用などが知られている(非特許文献4、5)。ウルソール酸の2位に水酸基が導入されたコロソール酸では、抗糖尿病作用などが知れており(非特許文献6)、オレアノール酸の2位に水酸基が導入されたマスリン酸は抗炎症、抗腫瘍、抗マラリアなどの作用が知られている(非特許文献7、8、9)。このように、多くの生体への有益な薬効作用を有する5環性トリテルペンアシッドは、いずれも低い毒性であることが特徴で、薬剤として有用な潜在能力を有する化合物群である。
しかし、これらの5環性トリテルペンアシッドが生薬などの植物体から分離精製された状態で医薬品に応用された例は、5環性トリテルペンアシッドの配糖体であるサポニンとしてのグリチルリチン酸(18β-グリチルレチン酸の配糖体)の注射剤(商品名:強力ネオミノファーゲンシーなど)、あるいは18β-グリチルレチン酸軟膏剤(商品名:デルマクリンA軟膏1%など)などが知られているが、必ずしも多くはない。但し、オレアノール酸などは化粧品原料として皮膚用外用剤使用を目的として製品化されている。
5環性トリテルペンアシッドは、配糖体(サポニン)などのように親水性物質と共有結合した構造でない場合には、単体ではほとんど水に溶解しないため、水溶剤を作製することは極めて困難である。5環性トリテルペンアシッドを親水化する方法としては、例えば、高濃度の界面活性剤を用いてナノコロイド化した懸濁液にする方法、(特許文献1)、界面活性剤等による乳液やクリームなどの乳化による方法(特許文献2)などが知られている。しかし、これらは化粧品や皮膚用外用剤などの用途のために開発されたものであり、注射剤等に使用できる低粘度の水性媒体(水の重量%が90%以上の溶液として)の溶存性を達成した例はほとんどない。またサポニンなどの環状トリテルペンアシッド配糖体では水溶解性が達成されているが、その界面活性作用により強い溶血活性(赤血球溶解作用)を有することは広く知られており、さらにこの配糖体は消化管粘膜からの生体への吸収がほとんど行われないなど(非特許文献10)、製剤化における安全性あるいは生体利用の面において制限がある。以上のように、これまで5環性トリテルペンアシッドを親水化するには、配糖体のように親水性官能基を分子内に導入した誘導体を使用するか、高い濃度の界面活性化剤を加えて懸濁液あるいは乳濁液とするなどの方法しか知られておらず、そのため5環性トリテルペンアシッドは製剤化が難しく、使用用途にも制限があった。
ペクチンは主要な植物多糖の一種で、植物に広く分布しており、ガラクツロン酸を主要な構成糖とする酸性多糖である。その構造は、α-1,4-結合したポリガラクツロン酸のドメイン(Homogalacturonan ドメイン)、ガラクツロン酸とラムノースの繰り返し構造を有するドメイン(Rhamnogalacturonan-I ドメイン)、さらにガラクツロン酸、ラムノース、フコースなどの複数の構成糖が複雑な配列を示すドメイン(Rhamnogalacturonan-II ドメイン)などの異なる3種類のドメインから構成される巨大な高分子多糖である。分子量は由来する原料により異なるが、50,000〜350,000程であると言われている。ペクチンの主要な構成糖であるガラクツロン酸は分子内にカルボキシル基を持つウロン酸の一種で、ペクチンの物性の多くがガラクツロン酸に由来している。天然の植物ではガラクツロン酸のカルボキシル基がさまざまな割合でメチルエステル化されており、その程度により得られるペクチンの物性は大きく異なることが知られている。果実に由来するペクチンではその熟度によってもメチルエステル化の度合が異なり、含有ペクチンに変化が見られる。高度にメチルエステル化されたペクチン(高メチル化ペクチン)は、酸性条件下で糖度が高い状態(活性水分が少ない環境)でゲル化しやすく、酸性食品のゲル化(ジャムなど)や乳製品の乳蛋白安定剤などとして利用される。一方、低いメチルエステル化のペクチン(低メチル化ペクチン)の場合は、カルボキシル基を介してカルシウム塩やマグネイウム塩の存在下でゲル化する性質を有する(極端に低いメチルエステル化の場合は、ペクチン酸として区別する場合がある)。ペクチンは、これらのゲル化しやすい性質から、主に食品の分野で、ゲル化剤、増粘剤、乳製品安定化剤などとして様々な製品に利用されている。そうした意味で、ペクチンは、食用として生体適用や応用が進んでいる安全な植物素材であると言える。また用途により様々な分子的な加工(酸やアルカリなどの化学的加工または酵素による加工)によりその性質を制御された様々なペクチン素材が、食品添加剤の分野で商業的に利用されている。
特表2006−509736号公報 特開2010−030930号公報
Fukishima EO et.al., CYP716A subfamily members are multifunctional oxidase in triterpenoid biosynthesis., Plant Cell Physiol. (2011) 52(12):2050-61 Sultana N, et.al., Oleanolic acid and related derivatives as medicinally important compounds., J Enzyme Inhib Med Chem. (2008) 23(6):739-56 Sultana N., Clinically useful anticancer, antitumor, and antiwrinkle agent, ursolic acid and related derivatives as medicinally important natural product., J Enzyme Inhib Med Chem. (2011) 26(5):616-42 Yogeeswari P., Betulinic acid and its derivatives: a review on their biological properties., Curr Med Chem. (2005) 12(6):657-66 Mullauer FB, et.al., Betulinic acid, a natural compound with potent anticancer effects., Anticancer Drugs. (2010) 21(3):215-27 Miura T, et.al., Antidiabetic effects of corosolic acid in KK-Ay diabetic mice., Biol Pharm Bull. (2006) 29(3):585-7 Huang L, et.al., Anti-inflammatory effects of maslinic acid, a natural triterpene, in cultured cortical astrocytes via suppression of nuclear factor-kappa B., Eur J Pharmacol. (2011) 672(1-3):169-74 Moneriz C, et.al., Multi-targeted activity of maslinic acid as an antimalarial natural compound., FEBS J. (2011) 278(16):2951-61 Reyes-Zurita FJ, et.al., The natural triterpene maslinic acid induces apoptosis in HT29 colon cancer cells by a JNK-p53-dependent mechanism., BMC Cancer. (2011) 27(11):154. 古閑健二朗 他, 肝庇護治療薬グリチルリチンの新しい製剤化の試み, YAKUGAKU ZASSH 2007, 127(7):1103-1114
前述のように、従来、5環性トリテルペンアシッドは、様々な薬効が知られているものの、水へ溶解性が極めて低くまた生体への吸収率も低いことから、製剤化が進んでいなかった。例えば、ウルソール酸などに代表される5環性トリテルペンアシッドは、有機溶媒には一定の溶解性を示すが、水を溶媒とした様々な水溶液にはほとんど溶解しない。したがって、生体や細胞などに5環性トリテルペンアシッドを単純に添加しても、水中で沈降する懸濁状態となり、有効な生体内拡散や細胞への取り込みを確保することが難しい。また、5環性トリテルペンアシッドを注射剤として生体に投与した場合を想定すると、生体媒体で希釈されたときの固形物析出および分散性低下が問題となる。したがって、5環性トリテルペンアシッドの製剤化のためには、その水溶性の向上、希釈における固形物析出の抑制と分散性の維持、および希釈安定性の向上が重要である。適切かつ容易な方法による5環性トリテルペンアシッドの親水化および可溶化技術を開発できれば、製剤化を容易にするだけでなく、注射剤、経口剤、経皮剤などへの応用範囲の拡大も期待できる。
本発明者らは、5環性トリテルペンアシッド類の親水化をより高めるための方法として、カルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)に強い結合性を有する親水性の糖類であるガラクツロン酸の性質に着目し、鋭意研究を重ねた結果、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンを介した5環性トリテルペンアシッドとガラクツロン酸とのイオン的会合を形成させることにより、5環性トリテルペンアシッド類の親水化と可溶化を達成できることを見出した。さらに、該イオン的会合体に特定の界面活性剤を低濃度で添加することにより、5環性トリテルペンアシッドの可溶化状態を安定化させることに成功した。
よって本発明は、5環性トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩と、ガラクツロン酸と、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートとを含有するトリテルペンアシッド水溶剤であって、該5環性トリテルペンアシッド1mg/mLに対して、該ガラクツロン酸を0.1〜5%(w/v)、該ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートを0.5〜2%(w/v)、および該カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをその合計で75mM〜150mM含有する、環状トリテルペンアシッド水溶剤を提供する。
また本発明は、環状トリテルペンアシッド水溶剤の製造方法であって、
(1)5環性トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩のエタノールまたは水性エタノール溶液と、ガラクツロン酸およびポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの水溶液とを混合する工程、あるいは
(2)5環性トリテルペンアシッドのエタノールまたは水性エタノール溶液と、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが溶存するガラクツロン酸およびポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの水溶液とを混合する工程、
を含み、
該環状トリテルペンアシッド水溶剤中、該5環性トリテルペンアシッド1mg/mLに対して、該ガラクツロン酸を0.1〜5%(w/v)、該ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートを0.5〜2%(w/v)、および該カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをその合計で75mM〜150mM含有させる、
方法を提供する。
本発明により提供される5環性トリテルペンアシッドの水溶剤は、60℃程度の加熱や4℃程度の冷温、または弱酸性〜弱アルカリ性(pH5.0〜9.0)の条件下でも5環性トリテルペンアシッドが析出しない安定な水溶剤である。また本発明の水溶剤は、水により希釈しても短期間であれば水溶媒中の5環性トリテルペンアシッドを分散状態で維持できるので、希釈に対して安定である。さらに本発明の水溶剤は、5環性トリテルペンアシッドが可溶化しているために0.22μmの滅菌フィルターで滅菌が可能であり、また、希釈に安定で析出しにくいため、生体内や消化管、皮膚における吸収効率が改善されている。したがって、本発明により提供される5環性トリテルペンアシッドの水溶剤は、注射投与、特に静脈内への直接投与、経口投与、経皮投与などの様々な形態での投与を可能し、薬剤としての応用範囲を大幅に拡大できる。
シリカゲル薄層クロマトグラフィーによる環状トリテルペンアシッド水溶剤成分の抽出分析。 環状トリテルペンアシッド水溶剤の血清への添加希釈により遠心沈降した固形物の分析。 HL-60細胞におけるウルソール酸(UA)投与の効果(24時間)。本発明のウルソール酸水溶剤およびウルソール酸エタノール液がHL-60(ヒト骨髄性白血病細胞株)における細胞増殖抑制作用(growth inhibition)ならびに細胞生存率(cell viability)に及ぼす影響の比較。 HL-60細胞におけるウルソール酸投与の効果(72時間)。本発明のウルソール酸水溶剤およびウルソール酸エタノール液がHL-60(ヒト骨髄性白血病細胞株)における細胞増殖抑制作用(growth inhibition)に及ぼす影響の比較。 各ウルソール酸水溶剤におけるウルソール酸含有量の測定。レーンS:ウルソール酸標準品、レーンA〜G:評価液A〜G。
様々な有機酸化合物(カルボキシル酸化合物)では、酸の状態(−COOH)よりも、その塩類で水溶性が向上することがある。しかし、5環性トリテルペンアシッドの場合、単純な生体適用可能な金属塩(Na塩、K塩、Ca塩、Mg塩など)やアンモニウム塩としただけでは十分な水溶性は得られない。本発明では、5環性トリテルペンアシッドのカルボキシル基(−COOH)をカルシウム塩またはマグネシウム塩とし、さらにそのカルシウムまたはマグネシウムを、ガラクツロン酸などの親水性物質と会合させることにより、5環性トリテルペンアシッドの可溶化に成功した。また本発明では、該5環性トリテルペンアシッドの塩とガラクツロン酸との会合体に、さらに特定の界面活性剤を低濃度で添加することにより、5環性トリテルペンアシッドの可溶化状態を安定化させることに成功した。
実施例3に示すように、水への溶解度が極めて低いウルソール酸を例にして、本発明で提供されるウルソール酸水溶剤を血清で希釈し、固形物析出(遠心沈降物)を評価した場合、少なくとも希釈後10分以上は、遠心沈降物中にウルソール酸はほとんど検出されない。一方、通常の5環性トリテルペンアシッドを溶解する様な溶媒による添加液(例えば少量のエタノールに溶解状態のウルソール酸)を血清で希釈した場合には、添加10分後に遠心沈降する固形物中に添加したウルソール酸のほぼ全量が検出される。このことは血液への投与直後における生体内での希釈において安定した分散性を実現させるために重要な希釈安定性が、本発明により達成できることを意味する。また、実施例5に示すように、構成する成分を適切にして作製すれば、本発明による水溶剤は精製水で4倍希釈した状態で24時間経過しても、沈降物(遠心沈降)が確認されず、水溶媒中での5環性トリテルペンアシッドの分散を維持する。
さらに、生体反応の例として実施例4に示すように、ウルソール酸によるがん細胞株の細胞増殖抑制作用と細胞死誘導作用を評価した場合、添加濃度を減量しても細胞への反応が得られる。このことは、水溶媒系への優れた分散と溶解性により、生体反応をより低い濃度で達成できることを意味するものである。このように投与剤として5環性トリテルペンアシッドの水への溶存性を達成した本発明は、5環性トリテルペンアシッドの生体や細胞への適用において優れた希釈安定性を達成でき、少ない投与量で効果を発現させることが可能な特徴を有する。さらに投与量を減らすことができることは、予期せぬ副作用などの有害反応を抑制する上でも、過剰な生体暴露を抑止できるという観点で意味を持つ。
本発明の水溶剤は、環状トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩、ガラクツロン酸、およびポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートを含有する。
本発明の水溶剤に含まれる環状トリテルペンアシッドとしては、特に限定されないが、好ましくは5環性トリテルペンアシッドおよびその誘導体、より好ましくは、分子内の環状構造に直結するカルボキシル基をもつ5環性トリテルペンアシッドおよびその誘導体が挙げられる。さらに好ましくは、天然に存在する周知の5環性トリテルペンアシッドおよびその誘導体:例えば、これらに限定されないが、オレアナン骨格を有するオレアノール酸、マスリン酸、18β-グリチルレチン酸;ウルサン骨格を有するウルソール酸およびコロソール酸;ルパン骨格を有するベツリン酸、などが挙げられる。本発明の水溶剤は、上記に挙げた環状トリテルペンアシッドのいずれか1種またはいずれか2種以上を組み合わせて含有することができる。さらに類似の構造を有する4環性のステロール骨格にカルボキシル基を導入した誘導体も利用可能である。
本発明の水溶剤に含まれるガラクツロン酸としては、ガラクツロン酸モノマー、低分子化ポリガラクツロン酸、低分子化ペクチン分解物、およびそれらの塩、ならびにそれらの組み合わせなどを使用することができる。あるいは、上記ガラクツロン酸に替えて、同様のカルシウムやマグネシウム結合性を有するウロン酸であるグルクロン酸を使用してもよい。
本発明に用いる低分子化ポリガラクツロン酸または低分子化ペクチン分解物は、分子量が10,000以下のものが好ましい。より好ましくは、分子量3,000以下の分子量の低分子化ポリガラクツロン酸もしくは低分子化ペクチン分解物を使用することがよい。10,000以上の分子量をもつ低分子化ポリガラクツロン酸または低分子化ペクチン分解物を使用すると、カルシウムイオンの存在下でガラクツロン酸分子同士が会合して溶液がゲル化したり、ペクチン由来の不溶物を形成したりすることがあるため好ましくない。分子量10,000以下の低分子化ポリガラクツロン酸や低分子化ペクチン分解物は、高分子量の一般的なペクチン素材を酸性条件やアルカリ性条件において加熱加水分解する化学的処理、もしくはペクチン分解酵素による酵素学的な処理などに続いて、限外濾過膜(分画分子量10,000)により分子量を制限する分離方法により調製できる。同様の方法で、制限分子量の異なる限外濾過膜(分画分子量3,000)を使用すれば分子量3,000以下の低分子化ポリガラクツロン酸や低分子化ペクチン分解物を得ることができる。さらに分子量を制限する方法として一般的なゲルろ過法によりカラム分離すれば、目的とする分子量の低分子化ポリガラクツロン酸や低分子化ペクチン分解物を分離精製することができる。低分子化ペクチン分解物を調製する素材としては、メチルエステル化度の低い低メチル化ペクチンを使用することが好ましい。これにより分解処理過程におけるメタノールの発生を抑制することができる。このような方法により低分子化されたペクチン分解物は、すでに食品添加物として流通しており、経口による生体適用において安全な素材である。
本発明の水溶剤に含まれるポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートとしては、ポリオキシエチレンソルビタン(モノ、ジまたはトリ)ラウレート、ポリオキシエチレンソルビタン(モノ、ジまたはトリ)ステアレート、ポリオキシエチレンソルビタン(モノ、ジまたはトリ)オレエートなどが挙げられる。このうち、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートが好ましく、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(例えば、Tween(登録商標)80)およびポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例えば、Tween(登録商標)20)などがより好ましい。
本発明の水溶剤における上記環状トリテルペンアシッドの濃度は、特に限定されないが、環状トリテルペンアシッドの種類に応じて1.0mg/mLから0.1mg/mL程度であることが好ましい。水溶剤中に溶存させ得る環状トリテルペンアシッドの量は、当該水溶剤中のガラクツロン酸濃度、またはカルシウムイオンやマグネシウムイオン、またはポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの濃度により異なる。一般的には、本発明の水溶剤におけるガラクツロン酸(ガラクツロン酸モノマーとして)の量は、環状トリテルペンアシッド1mg/mLに対して0.1〜5%(w/v)、好ましくは1%以下とすることが望ましい。より具体的な例としては、下記実施例1および実施例5に示すように、ウルソール酸であれば、約1%(w/v)またはそれ以下の低分子化ポリガラクツロン酸溶液を用いて0.3mg/mL(ウルソール酸重量として)の水溶剤(pH6.8)、または1%(w/v)ガラクツロン酸溶液を用いて0.5mg/mL(ウルソール酸重量として)の水溶剤(pH6.0)が作製できる。またオレアノール酸であれば、1%(w/v)のガラクツロン酸溶液を用いて0.6mg/mL(オレアノール酸重量として)の水溶剤(pH6.8)が達成できる。また、ベツリン酸では、1%(w/v)以下の濃度の低分子化ペクチン分解物溶液を用いて1.0mg/mL(ベツリン酸として)の水溶剤(pH6.8)が作製できる。なお、ガラクツロン酸に替えてグルクロン酸を用いる場合も、上記ガラクツロン酸の場合と同様の濃度で使用すればよい。
また、本発明の水溶剤におけるポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートは、水溶剤中に環状トリテルペンアシッドを安定に含有させるための安定剤としての役割を果たす。本発明の水溶剤における当該ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの量は、環状トリテルペンアシッド1mg/mLに対して0.5〜2%(w/v)程度とすることが望ましい。より具体的な例としては、実施例1に示す様に、1%(w/v)ガラクツロン酸溶液を用いて0.3mg/mLのオレアノール酸が溶存する水溶剤を作成した場合では(溶液pH6.8)、0.5%(w/v)のTween(登録商標)80もしくはTween(登録商標)20添加で水溶剤を安定化できる。同様に1%(w/v)以下の濃度の低分子化ポリガラクツロン酸(分子量3000以下)を用い0.3mg/mLのウルソール酸を溶存する水溶剤を作成した場合では、0.5%(w/v)のTween(登録商標)80もしくはTween(登録商標)20の添加で水溶剤を安定化できる。本発明の水溶剤の安定性は、目的の溶液pHにおける60℃加温溶液中での環状トリテルペンアシッドの析出などで判断できる。より長期的には、本発明の水溶剤を希釈した場合や、4℃に冷却した場合での環状トリテルペンアシッドの析出などで判断できる。
カルシウムやマグネシウムは、本発明の水溶剤中での環状トリテルペンアシッドの溶存に必要である一方、水溶剤を生体適用した際に生体のイオンバランスに影響を与える。したがって、本発明の水溶剤においては、カルシウムやマグネシウムの量が過量になることを避ける必要がある一方で、可逆的な結合である環状トリテルペンアシッドとカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンとの結合を維持するため、少なくとも使用直前まで、一定量の酢酸カルシウムもしくは酢酸マグネシウム、または塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムなどの水溶性のカルシウムもしくはマグネシウム塩を添加しておくことが必要である。本発明の水溶剤におけるカルシウムイオンまたはマグネシウムイオンの量は、水溶剤に含まれる環状トリテルペンアシッドの種類や濃度、またはガラクツロン酸濃度により異なるが、環状トリテルペンアシッド1mg/mLに対して、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンの総量として75mM〜150mMが望ましい。さらに、本発明の水溶剤を0℃〜8℃の冷所保存や、室温での長期(4週間以上)保存で安定に維持するためには、環状トリテルペンアシッド1mg/mLに対してカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを総量で100mM以上添加することが好ましい。但し、本発明の水溶剤は、一旦作製すれば、希釈によりカルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が低下しても急速に環状トリテルペンアシッドが析出することはないため、使用時に精製水などで適宜希釈することが可能である(実施例5参照)。なお、上記した水溶剤中のカルシウムやマグネシウムの量は、環状トリテルペンアシッドの溶存を可能にするための必要量を示したものであり、それらの溶存可能な上限濃度を示すものではない。
本発明の水溶剤は、(1)上記環状トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩の溶液(溶液A)と、上記ガラクツロン酸およびポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの溶液(溶液B)とを混合する方法、あるいは(2)上記環状トリテルペンアシッドの溶液(溶液C)と、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが溶存するガラクツロン酸およびポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの溶液(溶液D)とを混合する方法、により作製することができる。
上記溶液Aおよび溶液Cは、上記環状トリテルペンアシッドを含む溶液である。溶液AおよびCの溶媒は、アルコールを50%(v/v)以上含有するアルコール系溶媒であり、好ましくはエタノールまたはエタノール濃度が50%(v/v)の水性エタノールである。環状トリテルペンアシッドは種類により完全溶解濃度が異なるため、特に溶解度が低い環状トリテルペンアシッドで溶液AまたはCを作製する場合は、必要に応じて可能な範囲で溶媒を加温(好ましくは60〜70℃)することが好ましい。例えば60℃のエタノール溶媒の場合、少なくとも、ウルソール酸では10mg/mL、オレアノール酸では15mg/mL、ベツリン酸では10mg/mL、18β-グリチルレチン酸では40mg/mL、またはそれ以上が溶解するので、それらの濃度を超えない範囲で環状トリテルペンアシッドを溶媒に添加し、完全溶解液を作製するとよい。
上記溶液Aは、上記アルコール系溶媒に上記環状トリテルペンアシッドが溶存する溶液に、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが溶存する溶液を添加して、当該環状トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩を形成させることによって作製することができる。当該カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが溶存する溶液は、エタノールへの溶解性の高さから、酢酸カルシウムまたは酢酸マグネシウム水溶液であることが好ましい。上記環状トリテルペンアシッドのカルシウム塩やマグネシウム塩は、酸性条件では生成されにくいため、さらに水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムなどのアルカリ剤を加えて溶液を中性〜弱アルカリ性(好ましくは、pH6.8〜10.0)にすることで、環状トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩の生成を促進することができる。
上記溶液Bおよび溶液Dは、上記ガラクツロン酸の水溶液である。当該溶液中の当該ガラクツロン酸の濃度は、最終濃度として0.5〜5%(w/v)とすることが好ましい。当該溶液BおよびD中のガラクツロン酸の量は、最終的に目的とする水溶剤中の環状トリテルペンアシッドの量にあわせて調整する。またガラクツロン酸水溶液はそのままでは酸性であるため、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムなどのアルカリ剤を添加して、ガラクツロン酸を適切な金属塩にするとともに、該溶液を生体適用可能な液性(pH)に調整する。これにより、溶液BおよびDはガラクツロン酸のカルシウム塩またはマグネシウム塩の水溶液になるとともに、生体適用に適切な中性領域(好ましくは、pH5.0〜9.0)の溶液となる。
溶液BおよびDには、上述したガラクツロン酸の中和に用いる水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムに由来するカルシウムイオンやマグネシウムイオン以外に、必要に応じて水溶性のカルシウム塩やマグネシウム塩、例えば塩化カルシウムや塩化マグネシウムをさらに加えて、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを補足する。溶液Dへの塩化カルシウムや塩化マグネシウムの添加量は、トリテルペンアシッド0.5mg/mLあたり、塩化カルシウムと塩化マグネシウム総量として12.5mM〜50mM(1.0mg/mLの場合は総量で25mM〜100mM)を目安として添加するとよい。溶液Bの場合は、溶液Aに含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンを考慮し、必要に応じて補足的に塩化カルシウムや塩化マグネシウムを添加すればよい。溶液BおよびDに補足する塩化カルシウムや塩化マグネシウムの量は、上述した本発明の水溶剤中におけるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの最終濃度を考慮して、適宜決定することができる。
上記(1)および(2)の方法は、疎水性の環状トリテルペンアシッドの粉末をカルシウムイオンやマグネシウムイオンを含む水溶液に直接溶解させることが難しいため、一旦環状トリテルペンアシッドをアルコールに溶解させ、これをカルシウムやマグネシウムイオンを含む水溶液と混合することにより、目的とするトリテルペンアシッドの塩を含む溶液を生成させるものである。
上記(1)の方法の具体例を説明する。まず、上述したように加温した上記アルコール系溶媒に上記環状トリテルペンアシッドを溶解して環状トリテルペンアシッド溶液を作製し、これに、0.25M〜1.0M、好ましくは約0.5Mの酢酸カルシウムまたは酢酸マグネシウム水溶液とpH調整用の飽和水酸化カルシウムまたは飽和水酸化マグネシウム水溶液との混液(混合割合は1:1〜5:1)を添加して、溶液Aを作製する。この溶液Aは不安定であり、冷却すると環状トリテルペンアシッドやその塩が析出するため、加温状態のうちに溶液Bと混合させる必要がある。溶液Bは、好ましくはpH6.0〜pH8.0に調整しておく。溶液Aと溶液Bを混合することで、本発明の水溶剤を作製することができる。
上記(2)の方法において、溶液Cは、溶液Aと同様の手順で、必要に応じて加温した溶媒に環状トリテルペンアシッドを添加することにより作製できる。溶液Dには、上述したように必要に応じて塩化カルシウムや塩化マグネシウムを加えておく。溶液Dは、好ましくはpH6.0〜pH9.0に調整する。上記溶液Cと溶液Dを混合することにより、環状トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩が形成され、本発明の水溶剤を得ることができる。
好ましくは、上記(1)または(2)の手順に続いて、水溶剤の作製に用いたエタノールを減圧条件下で可能なかぎり留去するか、または水溶剤を希釈してエタノール濃度を低下させるとよい。
上記の手順で作製した本発明の環状トリテルペンアシッドを含む水溶剤は、適切な孔径のフィルターを用いて不溶物を除去するともに、滅菌用フィルター(孔径0.22μm以下)を使用して無菌化することが好ましい。本発明の水溶剤は、環状トリテルペンアシッドが可溶化されているため、0.22μmの孔径を有する滅菌用フィルターを使用した滅菌処理が可能である。このように本発明では、環状トリテルペンアシッドを、好ましくは1.0mg/mL以下の意図する濃度で、0.22μm孔径を通過できる水溶剤へと調製することができる。また、上記本発明の水溶剤をその作製に使用した溶液(ガラクツロン酸、カルシウムイオンもしくはマグネシウムイオン、ならびにポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートを溶存する溶液)を使用して希釈すれば1.0mg/mL以下の随意の濃度に希釈調製された水溶剤を得ることができる。さらに、本発明の水溶剤を、上述のように滅菌用フィルターで無菌化することにより、製剤用、特に静脈注射などの注射剤の製造にも安全に使用できる溶液となる。
本発明の水溶剤のpHは、目的に応じた中性領域、例えばpH5.0〜9.0が好ましい。水溶剤がpH9.0以上であると、アルカリが強すぎるため生体投与が困難となる。一方、pH5.0以下では、環状トリテルペンアシッドの析出が促進され、長期の液剤安定性(例えば、室温で1週以上の沈降物形成がない状態)が保てない。本発明の水溶剤の安定性ならびに生体適応を可能にする観点からは、本発明の水溶剤のpHは、pH6.0〜7.0の範囲であることがより好ましい。pH6.0〜7.0の範囲で、本発明の水溶剤は、少なくとも4週間の室温保存(18℃〜25℃)による安定性が確保できる。最終的に得られる水溶剤のpHを上記範囲にするためには、上記溶液A〜D中の水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムなどのアルカリ剤の量を調整するか、または少量の酢酸もしくは塩酸などの生体適用が可能な酸や、pHへの緩衝作用を有する塩類などを用いて得られた水溶剤を中和すればよい。但し、カルシウム塩として析出またはキレートすることでカルシウム濃度を低下させる恐れのある塩類(例えばリン酸カルシウム塩を析出させるリン酸塩や、カルシウムイオンやマグネシウムイオンをキレートするクエン酸塩など)は、本発明の水溶剤のpH調整には使用できない。
本発明の環状トリテルペンアシッドを含む水溶剤は、肉眼では無色透明または淡黄色透明な溶液状となるが、レーザー光を当てるとチンダル現象(レーザー光の散乱)が認められることから、実際は、コロイド様粒子を含むゾルである。粒子径は0.22μmの滅菌フィルターを通過できることから220nm以下の粒子径に調整されている真の溶液に近いゾル溶液である。本発明の水溶剤は、コロイド様粒子を含むため、コロイド様粒子の一般的な性質と同様に、高温でより安定化され、低温では不安定となる傾向を有する。したがって、冷所(0℃〜18℃)保存より、室温保存(18℃〜25℃)が好ましい。但し、短時間(1時間〜4時間)であれば4℃〜8℃などの冷所に本発明の水溶剤を置いても、環状トリテルペンアシッドが析出したり、水溶剤自体が固形化したりすることはない。また、1価の陽イオンであるナトリウムイオンやカリウムイオンを生じさせる塩類を本発明の水溶剤に多量に添加すると、環状トリテルペンアシッドのカルシウム塩やマグネシウム塩が、ナトリウム塩やカリウム塩となることにより、溶液安定性が低下する。したがって、ナトリウムイオンやカリウムイオンを溶存させるような塩類を添加することは避ける必要がある。例えば、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度のおよそ半量以上の濃度のナトリウムイオン(塩化ナトリウム)を添加すると、徐々に環状トリテルペンアシッドが溶液中に析出して白濁し、24時間後には環状トリテルペンアシッドの沈降が確認される。本発明の環状トリテルペンアシッドを含む水溶剤を注射剤として成体内に直接投与する場合、特に静脈内投与する場合には、通常注射液に使用される生体適用が可能な糖類(例えばブドウ糖やショ糖)などを本発明の水溶剤に添加して等張液(生体の浸透圧である280ミリオスモルと同等)に調製することができる。浸透圧調節のために、塩化ナトリウムや塩化カリウムを添加したり、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合する塩類を添加したりすることは、上述した理由により避けるべきである。
実施例1 環状トリテルペンアシッド水溶剤の作製
(1)オレアノール酸水溶剤
ガラクツロン酸1水和物(和光純薬工業)を精製水に溶解して1%(w/v)ガラクツロン酸溶液とし、水酸化カルシウムで溶液pHを6.0に調整した。この溶液に最終濃度が0.5%(w/v)となるようにポリオキシアルキレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)を添加しておく。これとは別に、五環性オレアナン骨格トリテルペンアシッドとしてオレアノール酸(和光純薬工業)を蓋付試験管に10mg量り取り、1mLのエタノールを加え、蓋を閉めて加温(60℃水浴中)して溶解させた。この液に、0.5M酢酸カルシウム溶液と飽和水酸化カルシウム水溶液の等量混液1mLを加えて攪拌し、オレアノール酸をカルシウム液(オレアノール酸としての濃度5mg/mL)とした。このオレアノール酸のカルシウム液0.6mLを、先の1%(w/v)ガラクツロン酸(Tween(登録商標)80添加)水溶液に加えて10mLとし、0.3mg/mLオレアノール酸として)のオレアノール酸水溶剤を作製した。さらに、この溶液を0.22μm(孔径)の滅菌フィルターを通して滅菌した。同様の手順で、0.6mg/mLのオレアノール酸水溶剤を作製することも可能である。
(2)ウルソール酸水溶剤の作製
ポリガラクツロン酸(Alfa Aesar、分子量25,000〜50,000)1gを約80mL精製水に加えて攪拌し可能なかぎり溶解させ、ポリガラクツロン酸の懸濁液(酸性液)とした。この溶液を1N NaOHでpH7.0にまで中和し、攪拌してさらにポリガラクツロン酸を溶解させた。この溶液に、0.25Nとなる様に塩酸を加えて強酸性とし、総容量を100mLとした。この際、ポリガラクツロン酸は、塩酸添加によりゲル状物に変化する。この強酸性ポリガラクツロン酸溶液を強く攪拌しながら80℃で5時間加水分解した。この加水分解によりポリガラクツロン酸溶液はゲル状液体から粘度が低下し、溶液状懸濁液に変化する。得られたポリガラクツロン酸の酸分解液を冷却後、直ちに水酸化カルシウムを加えて中和した後、ろ紙によりろ過を行い、不溶物を除去した。ろ液であるポリガラクツロン酸分解物溶液を、遠心型限外濾過膜装置(Merck Millipore)により限外濾過し、分子量3,000以下に低分子化したポリガラクツロン酸溶液を得た。これとは別に五環性ウルサン骨格トリテルペンアシッドとしてウルソール酸(和光純薬工業)を蓋付試験管に10mgを秤量し、1mLのエタノールを加え、蓋を閉めて加温(60℃水浴中)して溶解させた。この液に、0.5M酢酸カルシウム溶液と水酸化カルシウム飽和液の等量混液1mLを加え攪拌しウルソール酸をカルシウム塩の溶液(ウルソール酸濃度5mg/mL)とした。このウルソール酸のカルシウム塩液600μLを、先の低分子化したポリガラクツロン酸の1%(w/v)溶液(最終濃度0.5%(w/v)Tween(登録商標)80添加)9.4mLに攪拌しながら加えて、0.3mg/mL(ウルソール酸重量として)のウルソール酸水溶剤を作製した。さらに、この溶液を0.22μm(孔径)の滅菌フィルターを通して滅菌した。
(3)ベツリン酸水溶剤の作製
ペクチンカリウム塩(citrus fruit由来、メチルエステル化度20%〜34%、Sigma-Aldrich)1gを約80mL精製水に加えて攪拌し可能なかぎり溶解させた。この溶液に、0.25Nとなる様に塩酸を加えて強酸性とした。この際、ペクチンは、塩酸添加によりゲル状懸濁液に変化する。この強酸性ペクチン溶液を強く攪拌しながら80℃で5時間加水分解した。この加水分解によりペクチン溶液はゲル状から粘度が低下し、溶液状に変化する。得られたポリガラクツロン酸の酸分解液を冷却後、直ちに水酸化カルシウムを加えて中和した後、ろ紙によりろ過を行い不溶物を除去した。ろ液であるペクチン分解物溶液を、遠心型限外濾過膜装置により限外濾過し、分子量3,000以下に低分子化したペクチン溶液を得た。これとは別に5環性ルパン骨格トリテルペンアシッドとしてベツリン酸(Sigma-Aldrich)を蓋付試験管に10mgを秤量し、1mLのエタノールを加え、蓋を閉めて加温(70℃水浴中)して溶解させた。先の低分子化したペクチン分解物溶液(最終濃度0.5%(w/v)Tween(登録商標)80添加)9mLに、0.5M酢酸カルシウム溶液と水酸化カルシウム飽和液の2:1混液1mLを加えた。このカルシウム液を添加した低分子化したペクチン分解物の1%(w/v)溶液(Tween(登録商標)80添加 最終濃度0.5%)9.6mLに攪拌しながら、ベツリン酸のエタノール液300μLを加えて、0.3mg/mL(ベツリン酸として)のベツリン酸水溶剤を作製した。さらに、この溶液を0.22μm(孔径)の滅菌フィルターを通して滅菌した。この場合、1.0mg/mLのベツリン酸水溶剤としても固形物の析出は確認できなかった。
実施例2 水溶剤中の環状トリテルペンアシッドの検出
上記実施例1のように作製したオレアノール酸水溶剤(0.3mg/mL)、ウルソール酸水溶剤(0.3mg/mL)、ベツリン酸水溶剤(0.3mg/mL)のそれぞれ3mLを蓋付試験管に分取し、各々にヘキサンを5mLと1N塩酸0.3mLを添加して攪拌し、遠心分離によりヘキサン層を分取し、環状トリテルペンアシッドを抽出した。ヘキサン層を分離して濃縮した一部をシリカゲル薄層クロマトグラフィーにより分析した。
クロマトグラフィー分析では、実施例1で作製した各環状トリテルペンアシッド水溶剤3mLに、ヘキサン−酢酸エチル(5:1)混液5mLと1N塩酸0.3mLを加えて攪拌・抽出し、ヘキサン層に抽出された疎水性成分サンプルを薄層シリカゲルクロマトグラフィーにより分析した。展開溶媒はヘキサン−酢酸エチル−メタノール(70:25:5)とし、発色は5%硫酸噴霧による加熱発色で行った。各抽出物は0.5mLのエタノールに溶解し、その3μLをスポットした。標準試薬(オレアノール酸、ウルソール酸またはベツリン酸)をヘキサンに溶解し6μgをスポットした。
その結果、各抽出物においては、抽出効率により定量的ではないが、移動度および色調ともに標準試薬と同じ成分が検出された。すなわち、標準試薬(オレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸)と同一の位置に同一の色調で成分を検出した(図1)。このことによりオレアノール酸水溶剤、ウルソール酸水溶剤、ベツリン酸水溶剤中にそれぞれに、標準品と同等の各環状トリテルペンアシッドが溶存していたことを確認した。
実施例3 希釈安定性評価
上記実施例1で作製したウルソール酸水溶剤(ウルソール酸として0.3mg/mL)と、対照として1mg/mLに調整したウルソール酸のエタノール溶液を準備した。培養用の牛胎児血清(Fetal bovine serum、以下FCS)を希釈媒体として、以下の希釈試験を行った。
それぞれFCS 3mLあたりに、実施例1のウルソール酸水溶剤を0.6mL(添加量180μg)、またはウルソール酸のエタノール溶液を0.18mL(添加量180μg)添加した。それぞれ、よく混和した後、ただちに10分間遠心(3,000rpm、室温)し、沈殿を採取した。沈殿をジエチルエーテル1mLに可能なかぎり溶かし、上記実施例2と同様に、シリカゲル薄層クロマトグラフィーによりウルソール酸を検出した(スポット量40μL)。標準サンプルには2.5〜12.5μg/mLのウルソール酸(和光化学工業)エタノール溶液を使用し、薄層シリカゲルに各40μLをスポットした。
その結果、ウルソール酸エタノール溶液をFCSに添加した場合、沈降物中にウルソール酸が検出され、沈降物抽出液濃度は、7.5μg/mL程度で、添加量180μgのほぼ全量近くが沈降物中に検出された。一方、実施例1のウルソール酸水溶剤を同量添加しても、明らかな沈降は認められず、少なくとも検出限界以下(添加量の3分の1以下)の沈降であった(図2)。これらの結果は、本発明により作製された環状トリテルペンアシッド溶液が、注射剤等の薬剤として生体に添加され、生体媒体で薬剤が希釈された場合(例えば静脈内に投与された場合)であっても、短時間では環状トリテルペンアシッドの析出がほとんどないことを示しており、ひいては、該溶液が環状トリテルペンアシッドの体内分布や生体内拡散に優れた特性を有すること、さらに該溶液を注射剤として用いることにより、血液内での固形物析出といった不利益を回避できることを示している。
実施例4 細胞への薬理活性の評価
上記実施例1で作製したウルソール酸水溶剤(0.3mg/mLウルソール酸として)と、対照として1mg/mLに調整したウルソール酸のエタノール溶液を準備した。RPMI-1640培地(10%血清含有)で維持培養したHL-60(ヒト白血病細胞株)を24wellプレートに1×105/mL/wellで播種した。この細胞に実施例1のウルソール酸水溶剤、またはウルソール酸のエタノール溶液をそれぞれ1μg/mL、2μg/mL、5μg/mLとなるように添加して24時間培養した(CO2インキュベータ、37℃)。この細胞を培養プレートから回収し、細胞増殖抑制率(growth inhibition)および細胞生存率(cell viability)を、トリパンブルー染色により細胞数を計測して評価した。細胞増殖抑制率は、無添加で同時に通常培養したHL-60の細胞数を100%として増殖細胞が抑制された割合として評価した。細胞生存率は、総細胞数における生細胞の割合を評価した。各データはTriplet assayの平均値を求めた。その結果、ウルソール酸のエタノール溶液の場合には、5μg/mLのウルソール酸の添加では細胞増殖抑制と細胞生存率の低下が観察されたが、2μg/mL以下の濃度の添加では明らかな反応はみられなかった。一方、本発明により作製したウルソール酸水溶剤を添加した場合、2μg/mLの濃度でも強い細胞増殖抑制と細胞生存率の低下が観察された(図3)。
さらに、溶媒の影響等を考慮し、2μg/mLの実施例1のウルソール酸水溶剤、またはウルソール酸のエタノール溶液を用いて、培養時間を72時間に延長して、同様に追試を行った。この場合でも、ウルソール酸のエタノール溶液を添加した場合には細胞増殖抑制率は32.2%であったが、実施例1のウルソール酸水溶剤を添加した場合には細胞増殖抑制率は51.5%となり、より強い作用を示した(図4)。
実施例5 本発明の環状トリテルペンアシッド水溶剤における構成成分の検討
ウルソール酸を5環性トリテルペンアシッドの代表例として、本発明の水溶剤を構成する成分の種類および濃度を検討することを目的に、以下の評価液A〜Hを調製した。
評価液A
ガラクツロン酸1水和物(和光純薬工業)を精製水に溶解し、水酸化カルシウムで溶液pHをpH7.0に調整し、さらに最終濃度(評価液A中の最終濃度、以下同じ)が0.05Mとなるように塩化カルシウム(二水和物)を加え、ガラクツロン酸の最終濃度を1%(w/v)とした。この溶液に最終濃度が1%(w/v)となるようにポリオキシアルキレンソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80)を添加した。このガラクツロン酸を含む溶液(Tween(登録商標)80、CaCl2含有)47.5mLに、60℃に加温した2.5mLの10mg/mLのウルソール酸エタノール溶液を攪拌しながら加えて、0.5mg/mLのウルソール酸水溶剤を調製した。この最終溶液の液性を、希塩酸を用いてpH6.0とした。この溶液を評価液Aとした。
評価液B
評価液Aと同様の調製法で、ガラクツロン酸の中和試薬を水酸化カルシウムに替えて水酸化マグネシウムとし、さらに添加する0.05M塩化カルシウムを0.05M塩化マグネシウム(六水和物)に替えてウルソール酸水溶剤を調製した。この溶液を評価液Bとした。
評価液C
評価液Aと同様の調製法で、ガラクツロン酸の中和試薬を水酸化カルシウムのままで、添加する0.05M塩化カルシウムを、0.025M塩化カルシウムと0.025M塩化マグネシウムの混合に替えてウルソール酸水溶剤を調製した。この溶液を評価液Cとした。
評価液D
評価液Aと同様の調製法で、1%(w/v)Tween(登録商標)80を1%(w/v)ポリオキシアルキレンソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20)に替えてウルソール酸水溶剤を調製した。この溶液を評価液Dとした。
評価液E
評価液Aと同様の調製法で、1%(w/v)ガラクツロン酸を1%(w/v)グルクロン酸に替えてウルソール酸水溶剤を調製した。この溶液を評価液Eとした。
評価液F
評価液Aと同様の調製法で、1%(w/v)ガラクツロン酸を使用せずに、0.05M塩化カルシウムおよび1%(w/v)Tween(登録商標)80を添加し、pH調整を行なった溶液で、60℃に加温した2.5mLの10mg/mLのウルソール酸エタノール溶液を攪拌しながら加え、0.5mg/mLのウルソール酸溶液を調製した。この溶液を評価液Fとした。
評価液G
評価液Aと同様の調製法で、0.05Mの塩化カルシウムを添加せずにウルソール酸溶液を調製した。この溶液を評価液Gとした。
評価液H
評価液Aと同様の調製法で、1%(w/v)Tween(登録商標)80を添加せずにウルソール酸溶液を調製し、評価液Hとした。この溶液は調製後すぐに白濁した。
評価1:環状トリテルペンアシッドの水溶性
以上の評価液A〜Hにおける環状トリテルペンアシッドの可溶化状態を、調製後室温下で24時間経過した時点での0.22μm(孔径)滅菌フィルターの通過が可能か否かにより判定した。
結果を下記表1に示す。評価液A〜EおよびGは滅菌フィルターを問題なく通過した。しかし評価液Fでは、滅菌フィルターに通す際にフィルターの抵抗が強くなり、フィルターの一部が目詰まりを起こしたことが確認され、また評価液Hは、滅菌フィルターが詰まったため通過液は得られなかった。これらの結果は、評価液FやHでは、調製24時間後に環状トリテルペンアシッドが十分に可溶化していなかったことを示す。
評価2:希釈安定性
フィルターを通過した各評価液A〜Gについて、希釈による安定性を評価した(評価液Hはフィルターを通過しなかったため評価せず)。フィルターを通過した各評価液を精製水で4倍希釈(2mLを8mLに希釈)し、24時間室温で放置した後に遠心操作(室温、3000rpm〔2200×g〕、5分間)を行い、沈降物が確認されるか否かでウルソール酸の可溶化状態を評価した。さらに、冷温における安定性を評価する目的で、フィルターを通過した各評価液(5mL)を、4℃に4時間保管した後に、遠心操作(室温、3000rpm〔2200×g〕、5分間)を行い、沈降物が確認されるか否かで可溶化状態を評価した。
結果を下記表1に示す。評価液Fならびに評価液Gでは、4℃の冷温保存で微量ながら沈降物が確認され、液剤の安定性が不十分であった。
評価3:他成分がウルソール酸溶解性に与える影響
次に、評価液A〜Gと同様の手順で、但しウルソール酸を加える前の調製溶媒を精製水で1/2に希釈した溶媒を用いて評価液を調製し、評価液A〜Gに対してウルソール酸およびエタノール以外の成分が1/2である評価液A(1/2)〜G(1/2)をそれぞれ調製した。これらの評価液におけるウルソール酸の濃度は0.5mg/mLであった。さらに、同様の手順で
1/4希釈溶媒で調製した評価液A(1/4)〜G(1/4)をそれぞれ調製した。これらの評価液におけるウルソール酸の濃度は0.5mg/mLであった。
調製から24時間後に、0.22μm(孔径)の滅菌フィルターを用いて、上記評価1および2と同様の手順で、各評価液A(1/2)〜G(1/2)およびA(1/4)〜G(1/4)についてウルソール酸の可溶化状態および希釈安定性を評価した。その結果、評価液G(1/2)液では、滅菌フィルターが目詰まりし、十分な可溶化状態が得られなかったことが示された。また、評価液F(1/2)液では、滅菌フィルターは通過したが、4倍希釈した場合や4℃に保管した場合に沈降物がみられ、液剤の安定性を保てなかった。さらに評価液A(1/4)〜G(1/4)は、全て白濁し、滅菌フィルターを通過できなかった。結果を下記表1に示す。
評価4:ウルソール酸含量
フィルターを通過した評価液A〜E、カルシウム添加量が少ない評価液G、および不完全ではあるがフィルターを通過した評価液F(組成は上記表1参照)について、上記実施例2と同様にヘキサン抽出し、シリカゲル薄層クロマトグラフィーにより各溶液中のウルソール酸を検出した。標準品(ウルソール酸のエタノール溶液)との比較により、シリカゲル薄層クロマトグラフィーで標準品(ウルソール酸)と同一の位置に同一の色調で発色する成分を検出した。
その結果、いずれの評価液からも移動度および色調ともにウルソール酸標準品と同じ成分が検出され、孔径0.22μmのフィルターを通過した各評価液A〜Gにウルソール酸が安定して溶存していたことが示された。但し、フィルターが目詰まりした評価液F、およびカルシウム添加量が少ない評価液Gでは、抽出されたウルソール酸の含量が若干低下していた。

Claims (10)

  1. 環状トリテルペンアシッド水溶剤であって、
    5環性トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩と、
    ガラクツロン酸モノマー、分子量10,000以下の低分子化ポリガラクツロン酸、分子量10,000以下の低分子化ペクチン分解物、およびそれらの塩から選択される1種以上と、
    ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートと
    を含有し、かつ
    該5環性トリテルペンアシッド1mg/mLに対して、以下:
    該ガラクツロン酸モノマー、分子量10,000以下の低分子化ポリガラクツロン酸、分子量10,000以下の低分子化ペクチン分解物、およびそれらの塩から選択される1種以上を0.1〜5%(w/v)、
    該ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートを0.5〜2%(w/v)、および
    該カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをその合計で75mM〜150mM
    含有する、
    環状トリテルペンアシッド水溶剤。
  2. 前記水溶剤中における前記5環性トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩の溶存状態が、220nm以下の粒子径を有するソリッドゾルである、請求項1記載の水溶剤。
  3. 前記5環性トリテルペンアシッドが、分子内の環構造に直結するカルボキシル基を有する5環性トリテルペンアシッドである請求項1または2の水溶剤。
  4. 前記5環性トリテルペンアシッドが、オレアノール酸、マスリン酸、18β-グリチルレチン酸、ウルソール酸、コロソール酸およびベツリン酸から選択される1種以上である請求項3記載の水溶剤。
  5. 前記ガラクツロン酸に替えてグルクロン酸を含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の水溶剤。
  6. 前記ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートが、ポリオキシアルキレンソルビタンモノオレエートまたはポリオキシアルキレンソルビタンモノラウレートである、請求項1〜のいずれか1項記載の水溶剤。
  7. 環状トリテルペンアシッド水溶剤の製造方法であって、
    (1)以下の溶液を混合する工程
    5環性トリテルペンアシッドのカルシウム塩またはマグネシウム塩のエタノールまたは水性エタノール溶液、および
    ガラクツロン酸モノマー、分子量10,000以下の低分子化ポリガラクツロン酸、分子量10,000以下の低分子化ペクチン分解物、およびそれらの塩から選択される1種以上と、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの水溶液、
    を含むか、あるいは
    (2)以下の溶液を混合する工程
    5環性トリテルペンアシッドのエタノールまたは水性エタノール溶液、および
    カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンが溶存するガラクツロン酸モノマー、分子量10,000以下の低分子化ポリガラクツロン酸、分子量10,000以下の低分子化ペクチン分解物、およびそれらの塩から選択される1種以上と、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートの水溶液、
    を含み、
    該環状トリテルペンアシッド水溶剤中、該5環性トリテルペンアシッド1mg/mLに対して、以下:
    該ガラクツロン酸モノマー、分子量10,000以下の低分子化ポリガラクツロン酸、分子量10,000以下の低分子化ペクチン分解物、およびそれらの塩から選択される1種以上を0.1〜5%(w/v)、
    該ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートを0.5〜2%(w/v)、および
    該カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをその合計で75mM〜150mM
    含有させる、
    方法。
  8. 前記5環性トリテルペンアシッドが、オレアノール酸、マスリン酸、18β-グリチルレチン酸、ウルソール酸、コロソール酸およびベツリン酸から選択される1種以上である請求項記載の方法。
  9. 前記ガラクツロン酸に替えてグルクロン酸を使用する、請求項7又は8記載の方法。
  10. 前記ポリオキシアルキレンソルビタンアルキレートが、ポリオキシアルキレンソルビタンモノオレエートまたはポリオキシアルキレンソルビタンモノラウレートである、請求項7〜9のいずれか1項記載の方法。
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