本発明は、画像形成装置の転写電流の環境補正制御において、以下の特徴を有する。機内に異なる2つ以上の環境検知手段が設けられており、第1の環境検知結果に基づいて、転写電流の環境補正を行うための第2の環境検知の実行有無を判断する。第1の環境検知手段は定着装置近傍などの温度上昇が比較的起きやすい場所に設けられており、連続出力などで機内温度が高まっていると、第1の環境検知結果は設定されている温度閾値から機内温度が高まっていると判断し、第2の環境検知手段の検知を行わない。一方、第1の環境検知手段の検知結果から、機内温度が高くなっていないと判断すると、第2の環境検知手段の検知を実行し、その検知結果に基づいて転写電流の補正を行う。これにより、転写電流の過不足による異常画像の発生を起こすことなく、環境状態に応じた適正な転写電流へと補正を行うことが特徴になっている。
上記のような特徴を有する本発明を実施するための形態について、以下に図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一例である複写機を示す縦断正面図である。この図に示す複写機1は、上側に配置されたスキャナ装置2と、このスキャナ装置2で読み取った原稿の画像を用紙に形成するプリンタ装置3とを有している。
プリンタ装置3内には、シート状の用紙を積層保持する給紙トレイ4或いは手差しでの用紙を受付ける手差しトレイ5から、プリンタエンジン6、定着ユニット7を介して排紙スタッカ部8へ至る用紙搬送路9が形成されている。
図2はプリンタエンジン6のドラム状の感光体10周りの構成を抽出して示す拡大正面図である。感光体10周りには、電子写真プロセスに従い、帯電ローラ11、光書き込み装置12(図1参照)による書き込み光Pの照射露光位置、現像器13、接触転写方式の転写手段となる転写ローラ14、クリーニングブレード15等が順に配置・設定されている。現像器13は現像スリーブ16、トナーセンサ17等を備える。また、18は感光体10上に形成されたトナー像のトナー濃度を検出するためのいわゆるPセンサである。また、19は転写位置への用紙の給紙搬送タイミングを制御するレジストローラである。定着装置としての定着ユニット7は、加熱源(例えばヒータや誘導加熱コイル等)を備え、トナー像を熱及び圧力により用紙上に溶融・定着する。
このような構成において、基本的には、帯電ローラ11により感光体10表面に一様な電荷を供給することで、一定電位に一様に帯電する。帯電済みの感光体10表面に光書き込み装置12からのレーザによる書き込み光Pを照射することで潜像が形成され、現像器13を通過する際に感光体10上にトナー像が形成される。給紙トレイ4等から給紙されレジスローラ19により感光体10に送り込まれた用紙は、転写部を通過する際に、転写ローラ14による転写作用を受けることにより、感光体10上のトナー像が当該転写部において用紙上へ転写され、さらに定着ユニット7において溶融・定着する。
このような基本的な構成において、本実施の形態でも採用している接触転写方式について説明する。
まず、本実施形態で使用している転写ローラ14は、接触転写方式の転写手段である。当該転写ローラ14の抵抗値は常温常湿環境23℃50%RhでDC1000V印加で10^6〜10^9Ωであり、一般的に低温低湿環境では抵抗値は高く、高温高湿環境では抵抗値は低くなる傾向がある。この抵抗値変動は通紙される際の用紙についても同様の傾向を持つ。そのため、定電流制御を行っている転写装置においては、通紙時に流れる電流値を一定にするように転写ローラ14に印加する転写バイアスを調整するが、その大きさは環境によって大きく異なるのが一般的である。
吸引転写の基本特性として、用紙裏面にトナーと逆電荷を与えることにより、感光体10上のトナー像を電気的に用紙表面に引き寄せる働きを持たせる必要がある。転写電流を一定にするということは、このトナー像を引き寄せるのに必要な電荷量を環境によらず用紙裏面に与えるためである。
電流不足になるとトナー像を十分に引き付けることができず、いわゆる転写不足の画像になる。また、電流が大きすぎる場合には、転写ニップ部及びその近傍において強い電位差から生じる放電現象が発生し、その結果、トナーの極性が反転したり、潜像や転写後の画像が乱れたりする等の異常を引き起こす場合がある。
本発明では、このような異常画像を抑制するため、環境変化に対して適正な転写電流を選択する構成に特徴があり、この環境変化に対する補正制御について説明する。
上述したように、本発明では2つ以上の環境センサが異なる位置に設けられている。図1に示す実施形態では、第1の環境検知手段である温度センサ21は定着ユニット7の近傍に設けられている。第2の環境検知手段である温度センサ22は画像形成装置本体の略中央部、図示しない制御基盤上に設けられており、第1及び第2の環境センサそれぞれがその周辺温度を検知することが可能である。
次に、本実施形態における転写電流の補正制御について図3のフローチャートを参照して説明する。
図3のフローチャートにおいて、画像形成装置の電源がONされると(S1)、第1の環境センサである温度センサ21が温度を検知し(S2)、その検知結果T1と予め設定されている閾値Aとを比較する(S2)。なお、ここでの設定閾値Aは、通常の室温より高く、かつ、印刷時の定着設定温度以下、すなわち「(室温<)設定閾値≦印刷時定着温度」に設定されており、制御実施例では、40℃に設定している。
そして、温度センサ21による検知温度T1が設定閾値Aよりも低い場合はS4に進み、第2の環境センサである温度センサ22で検知が行われる(S4)。そして、転写電流制御用の温度制御値Bを検知した温度T2(温度センサ22による検知結果)に更新し(S5)、S6に進む。
一方、S3での判断が「No」の場合、すなわち、第1の環境センサである温度センサ21の検知結果T1が設定された閾値A以上の場合は、S3からS6に進む。このルートの場合、上記温度制御値Bの更新は実施されず、制御部の記憶手段(例えばRAM)内に格納されている温度制御値Bの値が保持される。
S6では、上記のように更新された温度制御値B(温度T2)、または更新されなかった温度制御値Bに基づき、制御テーブルを参照して転写電流値を決定(設定)する。制御テーブルの一例を下記の表1に示す。
上記フローチャートにおいて、S3→S4→S5→S6と進む流れの場合は、温度制御値Bを温度センサ22の検知結果T2に更新することにより、転写電流値は第2の環境センサで検出した環境条件に応じて設定(補正)されることになる。一方、S3→S6と進む流れの場合は、温度制御値Bの更新を行わないので、第2の環境センサによる転写電流値補正は行われず、保持されている温度制御値Bにより転写電流値が設定(決定)される。
表1に示すように、転写電流値を決定するための閾値として複数の閾値(本例では第1〜第3閾値)が設定されており、上記温度制御値Bと各閾値の大小関係から転写電流値が選択される。転写電流値を決定するための温度閾値と転写電流値はあらかじめ各温度域に対して異常画像の発生がなく、転写効率の良い最適な転写電流値になる様に設定されており、表1に示す制御テーブルの場合、上段(#1)から下段(#4)に行くに従って、温度が高い条件に適したものとなっている。したがって、例えば、低温環境では#1の値が選択され、高温環境では#4の値が選択される。
なお、第2面の転写電流値は、両面印刷における第2面(後から転写される印刷面)に対しての転写電流値である。
また、ここに示した制御テーブルは一例であり、転写電流値を決定するための閾値の数も任意であり、2つ、あるいは4つ以上の閾値により制御することも可能である。また、転写電流値の値も一例であり、各装置構成等に応じて適宜設定されるものである。
ところで、連続出力などの直後や途中に紙詰まり等のエラーが生じて装置電源をOFF、ONした場合には、機内温度が上昇しているため、第2の環境センサである温度センサ22周辺部の温度も上昇しており、従来技術においては転写電流の補正を過剰に行ってしまう可能性がある。すると、転写電流が過剰に供給されて放電などによる異常画像が発生してしまう。これに対し本発明では、第1の環境センサである温度センサ21の検知結果が所定温度(閾値A)以上の場合は転写電流の補正(第2の環境センサに基づく補正)を行わないために、過剰な転写電流の供給を防ぐことが可能である。 本実施形態では、第1の環境センサである温度センサ21は、連続出力時に温度上昇しやすい定着ユニット7の近傍に設けて、環境温度と機内温度との差が出やすい場所としている。また、本実施形態では部品数低減のため、定着温度制御に用いるための温度センサを第1の環境センサとして併用しており、定着ユニット7が備える定着ローラの長手方向中央部近傍に設けられる温度センサを第1の環境センサである温度センサ21として使用している。
また、図3のフローチャートに示す制御例では、第1の環境センサの結果を判断する閾値Aを40℃と設定している。この温度は、連続出力後の各部の温度測定結果を元に第2の環境センサ付近の機内温度が十分に低下する閾値温度として設定している。この閾値温度は画像形成装置の構成(各ユニットのレイアウトや冷却手段など)により最適な値が異なるため、それぞれの画像形成装置で最適な値を設定する必要がある。
また、本実施形態では低コスト化のため、第2の環境センサである温度センサ22は制御基盤上に直接設けられており(ハーネス等を省き低コスト化している)、連続出力時には制御基盤自体が温度上昇するため、さらに機内温度上昇による誤検知を起こしやすい構成となっている。しかし本発明の制御により、誤検知を招くことはなく、経時で安定した画像品質を保つことができる。
転写電流補正に関しては、下記表2に示す制御テーブルの様に、各温度閾値に対して補正値「C」を用いて(標準値に対する%を設定して)補正する方法もある。
また、両面印刷における第2面では一度転写紙が定着装置を通過するために水分量が減少し、抵抗上昇するため、第1面とは異なる電流設定値を設ける必要がある。このため、テーブルの項目数が増加してしまう(表1参照)。
これに対し、標準値に対する割合(%)を設定する方法である次式
転写電流補正値=転写電流基準値×補正値C
により、転写電流値を設定することで、テーブル数を減少させることが可能である。
また、用紙のサイズが異なる場合には、転写手段(転写ローラ14)と感光体10とが直接接する部分で電流が流れやすくなることから、画像転写に必要な(実施形態の構成では、トナー像を引き寄せるために必要な電荷を用紙裏面に与えるための)電流量を大きく取る必要がある。このようなことを考慮すると、一般に、用紙サイズに応じた転写電流の適正値を決定する必要がある。
さらに、用紙サイズに応じた各転写電流値に対して、環境補正も考慮する必要があり、例えば下記表3に示すような制御テーブルを用いると好適である。実施形態では、給紙トレイ3、4内に用紙サイズ検知手段が設けられており、用紙サイズを自動検知するようになっている。また、オペレーションパネル(図示せず)によるサイズ指定によっても、用紙サイズを設定することが可能である。これらの用紙サイズ検知手段により、用紙サイズD(本例では、用紙搬送方向と直交する方向におけるサイズとする)が決定され、あらかじめ設定された用紙サイズ閾値に対して用紙サイズを比較することで表3の縦列(用紙サイズに応じた転写電流値)が決定され、環境補正については上記した制御方法により同様に転写電流値が選択され(表3の横列が決定され)、最終的な転写電流値が決定される。
例えば、温度制御値Bが温度の第1閾値より小さく、用紙サイズDが用紙サイズの第1閾値以下の場合の転写電流値は16μAである。また例えば、温度制御値Bが温度の第1閾値以上で第2閾値より小さく、用紙サイズDが用紙サイズの第2閾値以上で第3閾値より小さい場合の転写電流値は20μAである。
なお、表3では用紙サイズの閾値を3つ(第3閾値)までしか記載していないが、それ以上に展開してもよい。その場合、順次、「第3閾値≦D<第4閾値」、「第4閾値≦D<第5閾値」と、用紙サイズDと用紙サイズ閾値とを比較する。
また、用紙サイズに応じた転写電流値を設定する場合も、表2で説明したと同様に、標準値に対する割合(%)により転写電流値を設定することで、テーブル数を減少させることが可能である。
ここまで、第2の環境検知手段を温度センサとして説明してきたが、より精度良く環境補正を行うために、第2の環境検知手段として温湿度センサを用いることができる。温湿度センサを用いる場合は、これまで説明してきた温度の変わりに絶対湿度により環境補正を行う。補正方法は上記の説明と同様に行うことが可能で、温度による補正よりも転写に対してより相関がある絶対湿度を用いることで、異常画像の発生をより低減することが可能となる。補正方法は上記温度センサを用いる場合と同様であるため、説明を省略する。
また、近年では消費電力低減のため、通常電源ON時よりも消費電力を抑制する省エネモードが搭載されている場合がある。この省エネモードはマシン動作から停止状態の時間で省エネモードに切り替わる場合が一般的であるが、この切り替わる停止時間が短い場合には、機内温度が低下する前に印刷が開始されるため、これまで説明したと同じように、従来技術においては温度を誤検知してしまう場合がある。このような省エネモードからの復帰時についても、本発明により、第1の環境センサの検知結果に基づいて、第2の環境センサの検知有無判断を行う制御が有効である。この場合、図4に示すようなフローで転写電流の補正制御を行う。
すなわち、図4のフローチャートにおける「省エネモード復帰(S11)」が、図3のフローにおける「電源ON(S1)」に相当するものであり、S12以降の制御は図3のフローと同じである。したがって、制御内容の説明は省略する。
本実施形態における転写電流の補正は、定電流制御を想定して説明してきたが、定電圧制御の場合は、転写電流を転写電圧に置き換えて同様の制御により転写電圧の環境補正を行うことができる。これにより、定電圧制御においても、機内温度上昇の影響を排除した、適切な転写電圧の環境補正を行い、異常画像の発生を抑制することが可能である。
図5は、本発明の効果を、実施例と比較例で比べて示すものである。グラフの縦軸は転写電流、横軸は環境温度である。
この図において、点線の枠内が異常画像の発生しない転写電流の成立範囲であり、太実線が環境補正により制御される狙いの転写電流値を示している。環境補正がうまくいっていれば、枠線内に転写電流が設定されるため、異常画像が発生することがない。
比較例として、電源OFF⇒ON時に必ず第2の環境センサである温度センサ22で検知を行い、その結果により転写電流補正を行う制御を用いた。発明の実施例は、上記説明のように、第1の環境センサである温度センサ21の検知結果に基づき環境補正を行うか否かを決定する制御を用いた。装置構成は同じで、上記2つの制御で比較実験を行った。比較実験では、機内温度を上昇させるため、連続通紙を行った直後に電源をOFF⇒ONし、その際に設定される転写電流と異常画像の確認を行った。
図5にその際の転写電流設定値の比較例を×、発明の実施例を○で示している。比較例では温度を高めに検知してしまい、その際の環境に対して高めの転写電流値が設定されたため、転写電流設定値が成立範囲外となっている。このため、出力された画像も放電により白く抜けた異常画像が発生した。一方で、発明の実施例は成立範囲を外れることなく、異常画像の発生も見られなかった。
次に、マシンエラーが発生してからの経過時間に応じて転写電流を補正する場合の制御例について図6のフローチャートを参照して説明する。
本制御を実施する場合、エラー(紙詰まり等)が発生し、マシンが停止した際にそのエラーの時間(エラー発生からの経過時間)を記録する記録手段が設けられており(例えば画像形成装置制御部のタイマなどを用いることができる)、あらかじめ設定されたエラー発生経過時間の閾値Erに対して、エラー発生から電源ON時点での経過時間が短い場合にのみ、第1の環境検知手段の検知結果による判断を行う構成となっている。エラー発生経過時間の閾値Erはコントロールパネルで任意に設定可能となっており、実施例ではこの閾値を15分と設定している。
図6のフローチャートにおいて、エラー発生が検知されると(S21)、エラー発生フラグを立てて経過時間をカウントする(S22)。そして、エラー経過時間を閾値Erと比較し(S23)、経過時間が閾値Erより小さい(短い)場合はS24に進み、経過時間が閾値Er以上の場合はS25に進む。
エラー経過時間が閾値Erより小さい場合はS24にて、第1の環境センサである温度センサ21の検知結果T1と予め設定されている閾値Aとを比較する(S24)。そして、温度センサ21による検知温度T1が設定閾値Aよりも低い場合はS25に進み、第2の環境センサである温度センサ22で検知を行い(S25)、転写電流制御用の温度制御値Bを検知した温度T2に更新し(S26)、S27に進む。S24で検知温度T1が設定閾値A以上の場合には直ちにS27に進む(温度制御値Bの更新を行わない)。
一方、S23にてエラー経過時間が閾値Er以上の場合はS25に進み(温度センサ21による検知を行うことなく)、温度センサ22で検知を行い(S25)、転写電流制御用の温度制御値Bを検知した温度T2に更新し(S26)、S27に進む。
S27では、上記のように更新された温度制御値B(温度T2)、または更新されなかった温度制御値Bに基づき、制御テーブルを参照して転写電流値を決定(設定)する。制御テーブルは、上記説明した各テーブルを使用可能である。
本制御の場合、エラー発生から電源ONまでの時間が閾値時間Er以上の場合は、第1の環境センサによる検知を行わず(S23→S25)、第2の環境センサの検知を行って、その結果に基づき転写電流の補正を行う。一方、エラー発生から電源ONまでの時間が閾値時間Erより短い場合は、図3で説明したと同様に第1の環境センサでの検知結果に基づく環境補正を行うこととなる。通常は第1の環境センサの検知結果を判断する閾値設定は第2の環境センサの誤検知が行われないように出力後の機内温度が冷却される時間を考慮して設定されている。しかし、第1の環境センサ付近の温度が下がる前に第2の環境センサ付近の温度の方が速く温度低下している場合も想定され、この場合は第2の環境センサの誤検知が行われない状態においても環境補正が実施されないため、環境の変化に対して補正が行われるべき状態でも補正されることがなく、逆に異常画像が発生してしまう可能性もある。それに対し、図6の制御によれば、第1の環境センサ及び第2の環境センサ位置の冷却タイミング差により発生する検知の見逃しを起こすことなく、より精度の良い環境補正を行うことが可能であり、異常画像の発生を防止することができる。
上記説明したように、本発明によれば、環境条件を的確に判断して転写バイアスを適正に補正することができるので、環境条件の誤検知により不適切な転写バイアス補正が行なわれることが無く、異常画像の発生を防止することができる。
ところで、従来技術においては、転写バイアスを定電流制御した場合に、画像面積が少ないときと多いときとでは転写効率が変わってしまうという不具合が生じる可能性がある。また、印加した転写バイアスが最適な転写バイアスよりも低い場合には充分な転写効率が得られず、画像濃度が薄くなったり、チリなどの異常画像が発生してしまう。一方、転写バイアスが高すぎると、放電により白抜けなどの異常画像が発生してしまう恐れがある。このため、転写電流(または転写バイアス)には成立範囲があり、転写電流(または転写バイアス)をその成立範囲内に設定する必要がある。
またその一方で、環境条件により転写ベルトや転写ローラなどの転写手段を構成する部材の抵抗は変化する場合が一般に見られる。転写ローラとして、経時の抵抗上昇の小さいエピクロロヒドリンゴムとアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とを配合したゴムを使用することがあるが、この転写ローラは優れた導電性および物性を示す一方で、環境による抵抗変動が大きい。転写体の抵抗が変化すると、転写に最適な転写バイアスが変わってしまうため、環境変化に対して一定の転写電流(またはバイアス)に設定すると、上記のような転写成立範囲から外れて問題が生じてしまう可能性が高い。
これを防ぐため、温湿度検知センサを設けて、温湿度環境に基づく転写電流へ補正を行う技術が例えば特許文献1等に示されている。しかし、画像形成装置で連続出力を行うと、定着の熱が機内に回り、徐々に機内温度が上昇する。温湿度センサの検知タイミングが適切でない場合、温湿度を誤検知して転写電流の補正が正しく行われず、異常画像を発生してしまう恐れがある。
また、低コスト化のために温度センサを基板上に設ける場合があり、この様な構成では基板の熱が温度センサに伝わり、温度を誤検知する可能性があり、温湿度検知を行う場合、位置とタイミングを適切に考慮する必要がある。
さらに近年、電子写真装置においてはトナーの低温定着化が求められている。これは、定着に要するエネルギーを少なくすることによる省エネルギー化はもとより、電子写真画像形成装置の高速化、高画質化の要求にも起因している。
一般に、電子写真画像形成装置を高速化すると画像品質は低下していく。これには様々な要因が関係するが、その中でも特に寄与が大きいのは定着工程における定着不良の影響である。定着工程では、紙に代表される記録媒体上の未定着トナー画像が、熱と圧力により記録媒体上に固着されて定着画像となるが、システム速度が高速となると、定着工程で未定着トナー画像が充分な熱量を得られなくなり、その結果、定着不良が発生し、最終的なトナー画像の表面が荒れたり、コールドオフセットと呼ばれる残像現象が発生して不良画像となったりする。そのため、システム速度を高速にする際には、それに伴い、画像品質を落とさないために定着温度を上げることが考えられる。しかし、定着装置から漏れる温度の画像形成装置内の他プロセスに対する副作用、定着部材の消耗速度の加速、消費エネルギー増加の観点から、定着温度の高温化は必ずしも最善の対策とはなり得ない。
そこで、特に、高速な画像形成装置においてはトナー自身の定着性能の向上が求められており、より具体的には、定着工程において、より低温で十分な定着性を有するトナーが求められている。
この目的を達成するために開発されたトナーとしては以下のような例がある。
少なくとも4種類以上の結着樹脂を含有し、結着樹脂が少なくとも、結晶性を有するポリエステル樹脂(a)と、非結晶性樹脂(b)と、非結晶性樹脂(c)と、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(d)とを含み、前記非結晶性樹脂(b)はクロロホルム不溶分を含有し、前記非結晶性樹脂(c)は前記非結晶性樹脂(b)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上低く、該トナーのTHF可溶分により求められたGPCによる分子量分布において1000〜10000の間にメインピークを有し、該分子量分布の半値幅が15000以下としたトナーである。また、トナーの平均粒径を小粒径化し(平均粒径が従来の9.5μmに対して6.8μm)、感光体上のトナー付着量を低付着量化する(従来の約0.8mg/cm^3から約0.54mg/cm^2)ことでも低温定着化がなされている。
しかし、このようなトナーは電気特性の観点で懸念が生じる。それは結晶性を有するポリエステル樹脂は比較的電気抵抗が低いため、分散径が大きいままトナー中に存在するとトナーの電気抵抗が低くなる傾向がある。電気抵抗が低くなり、許容範囲を超えると、画像形成時に転写工程において転写不良の原因となる。特に、前記のように低温定着性の維持を目的として結晶性ポリエステル(a)の相溶を抑制した場合、結晶性ポリエステル(a)は分散径の大きい状態を維持しやすくなり、結晶性ポリエステル(a)の電気特性がトナー中で支配的になりやすいため、電気抵抗が低下しやすい。
このようなトナーを用いたとき、転写ニップ近傍において感光体と紙の密着性が悪いと放電現象によりトナーがプラス荷電され、転写できなくなる現象が確認されている。さらに低付着量化により、放電現象による転写不良が生じた際に、画像への影響がより顕著になることも確認されている。このため、このようなトナーを使いこなすためには、さらに精度良く転写電流を設定する必要が求められる。
上記のような各点に対し、本発明によれば、環境条件を的確に判断して転写バイアスを適正に補正することができるので、転写不良を起こすこと無く良好な画像を得ることが可能となる。また、高速対応のトナーを用いる場合でも、転写不良の発生が防止される。
最後に、実施形態の画像形成装置で用いられるトナーの一例について説明する。
上記にも記載したが、近年、電子写真においてトナーの低温定着化が求められている。これは、定着に要するエネルギーを少なくすることによる省エネルギー化はもとより、電子写真画像形成装置の高速化、高画質化の要求にも起因しており、電子写真画像形成装置の使用目的が多様化していることも相まって、要求が高まってきている。
単にトナーを低温定着化とさせるためには、トナーの軟化温度(T1/2)を低いものにすればよい。しかし、軟化温度を低くするとガラス転移温度も低下し、耐熱保存性が悪化する。また、画像品質に問題の発生しない定着可能な温度の下限(定着下限温度)の低下と共に定着可能な温度の上限(定着上限温度)も低下してしまうため、耐ホットオフセット性も損ねてしまう。そのため、低温定着性と耐熱保存性、耐ホットオフセット性の三者を両立させることは電子写真画像形成用トナーの設計者にとって非常に難しい命題であった。
この命題に対し、本願出願人は以下の技術構想を見出し、上記課題を解決できるトナーを提案するに至った。
電子写真画像形成用トナーに用いる結着樹脂に結晶性ポリエステル(a)を用いると、そのシャープメルト性により、トナーに低温定着性及び耐熱保存性を付与することができる。
しかし、結着樹脂として結晶性ポリエステル(a)を単体で使用したのでは、耐ホットオフセット性が非常に悪くなるため、定着温度幅が非常に狭くなり実用に耐えられない。
そこで、本願出願人の研究者らは、結晶性ポリエステル樹脂(a)と共に、クロロホルム不溶分を含む非結晶性樹脂(b)を用いることで、耐ホットオフセット性が向上し、定着可能な温度に幅を持たせることができると考えた。
しかし、結晶性ポリエステル(a)と非結晶性樹脂(b)だけを処方した場合、非結晶性樹脂(b)が多すぎると低温定着性が薄れてしまう。結晶性ポリエステル(a)が多いと、製造工程において溶融混練を施した際に非結晶性樹脂(b)のクロロホルム不溶分以外の成分と相溶してしまい、非結晶性樹脂(b)のガラス転移温度を著しく低下させてしまうため、耐熱保存性が極端に悪化する。研究者らが検討を重ねた結果、結晶性ポリエステル(a)と非結晶性樹脂(b)の配分をどのよう変化させても、これらの欠点が近年の電子写真に対する要求のすべてを許容できる水準になる混合比は存在しなかった。
そこで、更に検討を重ねた結果、非結晶性樹脂(b)よりも軟化温度が25℃以上低い非結晶性樹脂(c)を更に併用すると、結晶性ポリエステル(a)の配分を少なくして相溶を抑制させ、かつ、結晶性ポリエステル(a)の低温定着性を非結晶性樹脂(c)が補助しつつ、非結晶性樹脂(b)の耐ホットオフセット性も阻害しないことを見出した。
しかし、この場合でも、耐熱保存性へのリスクは完全には消滅しない。結晶性ポリエステル(a)の相溶が抑制され、結着樹脂のガラス転移温度の低下が抑えられても、分散径が大きいまま結晶性ポリエステル(a)が存在すると、粉砕工程の際に結晶性ポリエステル(a)と結着樹脂との界面が粉砕界面になりやすく、結果として結晶性ポリエステル(a)がトナー表面に現れやすくなる。結晶性ポリエステル(a)はシャープメルトな材料であるため、トナー粒子内部に存在する場合は前記のように優れた耐熱保存性を発揮するが、ガラス転移温度以下の温度でも僅かに融解するため、トナー粒子表面に存在する場合、僅かに融解した結晶性ポリエステル(a)がトナー粒子間でバインダーとして働き、結果としてトナーの耐熱保存性を悪化させる。この現象は、特に、結晶化度の低い結晶性ポリエステル樹脂で顕著となる。
また、トナーの電気特性の観点でも、前記結晶性ポリエステル樹脂(a)と非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)を組み合わせた処方のトナーでは懸念が生じる。結晶性を有するポリエステル樹脂は比較的電気抵抗が低いため、分散径が大きいままトナー中に存在するとトナーの電気抵抗が低くなる傾向がある。電気抵抗が低くなり、許容範囲を超えると、画像形成時に転写工程において転写不良の原因となる。特に、前記のように低温定着性の維持を目的として結晶性ポリエステル(a)の相溶を抑制した場合、結晶性ポリエステル(a)は分散径の大きい状態を維持しやすくなり、結晶性ポリエステル(a)の電気特性がトナー中で支配的になりやすいため、電気抵抗が低下しやすい。
また、後述のように抵抗調整剤を含有させた場合、抵抗調整剤は結晶性ポリエステル樹脂(a)の構成しているドメイン内に入り込めないため、非結晶性樹脂(b)及び(c)の中に比較的濃度の高い状態で存在することになる。そのため、凝集体のままトナー中に閉じ込められやすくなり、抵抗が過剰に低下しやすくなる。抵抗調整剤を、単に抵抗を下げる目的だけのために用いているのであれば、抵抗調整剤の処方量を調整することにより解決できる場合もあるが、例えばカーボンブラックのように抵抗調整剤と着色剤を兼ねている場合は、着色力の観点から処方量を少なくすることができない場合があり、最適な電気抵抗に調整できないことがある。
研究者らはこれら技術課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、上記結晶性ポリエステル樹脂(a)、非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)を組み合わせた処方に対して、縮重合系樹脂ユニット及び付加重合系樹脂ユニットを含む複合樹脂(d)を更に処方すると、上記結晶性ポリエステル樹脂(a)、非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)を組み合わせた際に特徴的に発現する耐熱保存性低下の懸念と電気抵抗低下の懸念を同時に解決することが可能であることを見出した。
複合樹脂(d)を処方すると、離型剤の分散を向上させることは従来知られているが、上記結晶性ポリエステル樹脂(a)、非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)を組み合わせた処方では、結晶性ポリエステル(a)の分散性も向上し、結晶性を保持したまま微分散の状態でトナー中に存在させることができる。特に、樹脂(c)を併用して溶融混練を施した場合、樹脂(c)の粘度が著しく低下するため、原材料にシェアがかかりにくくなり、結晶性ポリエステル樹脂(a)の分散径はより大きくなる傾向があるが、結晶性ポリエステル樹脂(a)及び非結晶性樹脂(c)と共に複合樹脂(d)を加えて溶融混練を施すと、適度にシェアが掛かるようになるため、結晶性ポリエステル樹脂(a)の微分散化が促される。結晶性ポリエステル樹脂(a)が微分散状態となると、粉砕時に結晶性ポリエステル樹脂(a)がトナー表面に現れる頻度が少なくなり、耐熱保存性が劇的に向上する。また、結晶性ポリエステル樹脂(a)が微分散となるため、適度な電気抵抗を維持することが可能となる。
更に、複合樹脂(d)は、比較的低い分子量領域に分子量分布のピークを有する非結晶樹脂樹脂(c)よりも硬いため、粉砕時に界面になりやすい。そのため、比較的トナー表面に存在しやすく、軟化温度の低い非結晶樹脂(c)がトナー表面へ表れる確率を低減させる効果もあり、耐熱保存性の向上に貢献する。
加えて、トナー表面の硬度を高めることができるため、トナーに物理的なストレスが掛かったときのトナー劣化が少ない。特に、外添剤の埋め込まれが改善されるため、ストレス付与前後での帯電特性の変化が少なくなり、長期に渡って安定した画質を提供することが可能となる。
ところが、上記の結晶性ポリエステル樹脂(a)、非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)、複合樹脂(d)を併用しても、粉砕トナー製造工程において溶融混練を行なうと、原材料樹脂の熱特性に起因する各長所が発揮されない場合がある。これは、溶融混練工程において、樹脂の分子の繋がりが切断され、分子量が変化してしまうことが主要因である。特に、樹脂(b)に含有されるクロロホルム不溶分の分子の繋がりが切断されると、トナー全体の分子量分布がブロードになり、樹脂(c)に起因する熱特性に悪影響を及ぼし、低温定着性が損ねられてしまう。
研究者が鋭意検討を重ねた結果、例えば、後述するように、適度に温度を掛けて溶融混練を行なうことで原材料樹脂にかかるシェアを最適なものにしつつ、結晶性ポリエステル樹脂(a)を冷却工程にて再結晶させるような手法をとることで、THF可溶分により求められたGPCによるトナーの分子量分布において1000〜10000の間にメインピークを有し、かつ、分子量分布の半値幅を15000以下とすることで、低分子量分の絶対量が多く、かつ、シャープな分子量分布となり、上記結晶性ポリエステル樹脂(a)、非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)、複合樹脂(d)のそれぞれの特徴を活かした、低温定着かつ耐熱保存性、耐ホットオフセット性の優れたトナーを提供することができるという知見を見出した。
トナーにおける前記結晶性ポリエステル(a)の含有量は、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。前記非結晶性樹脂(b)の含有量は10〜40質量%が好ましく、前記非結晶性樹脂(c)の含有量は50〜90質量%が好ましく、前記複合樹脂(d)の含有量は3〜20質量%が好ましい。
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)は次のようにして測定される。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05〜0.6質量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。
試料(トナー)の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.あるいは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
結着樹脂の軟化温度(T1/2)は、高架式フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用い、ダイス穴径1mm、加圧20kg/cm2、昇温速度6℃/minの条件下で1cm2の試料を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点までの1/2に相当する温度により測定される。
本トナーにおける結晶性ポリエステル樹脂(a)は、アルコール成分として1.4−ブタンジオール、1.5−ペンタンジオール、1.6−ヘキサンジオール等、カルボン酸成分としてフマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、コハク酸、トリメリット酸等、従来公知の化合物を用いたものを使用することが可能ではあるが、より好ましくはその分子主鎖中に下記一般式(1)で表わされるエステル結合を含有することが好ましい。
[−OCO−R−COO−(CH2)n−] 一般式(1)
(式中、Rは炭素数2〜20の直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸残基を示し、nは2〜20の整数を示す。)
一般式(1)の構造の存在は固体C13NMRにより確認することができる。
前記直鎖状不飽和脂肪族基の具体例としては、マレイン酸、フマル酸、1,3−n−プロペンジカルボン酸、1,4−n−ブテンジカルボン酸等の直鎖状不飽和2価カルボン酸由来の直鎖状不飽和脂肪族基などが挙げられる。
前記一般式(1)において、(CH2)nは直鎖状脂肪族2価アルコール残基を示す。この場合の直鎖状脂肪族2価アルコール残基の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の直鎖状脂肪族2価アルコールから誘導されたものなどが挙げられる。
ポリエステル樹脂(a)は、その酸成分として、直鎖状不飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることで、芳香族ジカルボン酸を用いた場合よりも結晶構造を形成し易いという利点があり、結晶性ポリエステル樹脂の機能をより効果的に発揮させることができる。
ポリエステル樹脂(a)は、例えば、(i)直鎖状不飽和脂肪族2価カルボン酸またはその反応性誘導体(酸無水物、炭素数1−4の低級アルキルエステル、酸ハライド等)からなる多価カルボン酸成分と、(ii)直鎖状脂肪族ジオールからなる多価アルコール成分とを、重縮合反応をさせることによって製造することができる。この場合、多価カルボン酸成分には、必要に応じ、少量の他の多価カルボン酸を添加してもよい。
その場合、多価カルボン酸には、(i)分岐鎖を有する不飽和脂肪族二価カルボン酸、(ii)飽和脂肪族2価カルボン酸や、飽和脂肪族3価カルボン酸等の飽和脂肪族多価カルボン酸、(iii)芳香族2価カルボン酸や芳香族3価カルボン酸等の芳香族多価カルボン酸等が包含される。
これらの多価カルボン酸の添加量は、全カルボン酸に対して、通常、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
必要に応じて添加することのできる多価カルボン酸の具体例としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の2価カルボン酸;無水トリメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコール成分には、必要に応じ、少量の脂肪族系の分岐鎖2価アルコールや環状2価アルコールの他、3価以上の多価アルコールを添加してもよい。
その添加量は、全アルコールに対して、30モル%以下、好ましくは10モル%以下であり、得られるポリエステルが結晶性を有する範囲内で適宜添加される。
必要に応じて添加される多価アルコールを例示すると、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ポリエチレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、グリセリン等が挙げられる。
ポリエステル樹脂(a)において、その分子量分布は、低温定着性の観点からシャープであることが好ましく、また、その分子量は、比較的低分子量であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(a)の分子量は、o−ジクロルベンゼン可溶分のGPCによる分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が5500〜6500、数平均分子量(Mn)が1300〜1500およびMw/Mn比が2〜5であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(a)についての前記分子量分布は、横軸をlog(M:分子量)とし、縦軸を質量%とする分子量分布図に基づくものである。本発明で用いるポリエステル樹脂(a)の場合、この分子量分布図において、3.5〜4.0(質量%)の範囲に分子量ピークを有することが好ましく、また、そのピークの半値幅が1.5以下であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(a)において、そのガラス転移温度(Tg)および軟化温度(T1/2)は、トナーの耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが望ましいが、一般的には、そのTgは80〜130℃、好ましくは80〜125℃であり、そのT1/2は80〜130℃、好ましくは80〜125℃である。TgおよびT1/2が前記範囲より高くなると、トナーの定着下限温度が高くなり、低温定着性が悪化する。
本トナーにおけるポリエステル樹脂が結晶性を有するか否かは、粉末X線回折装置によるX線回折パターンにピークが存在するかどうかで確認できる。
本発明で用いる結晶性ポリエステル樹脂(a)は、その回折パターンにおいて、2θが19°〜25°の位置に少なくとも1つの回折ピークが存在すること、より好ましくは2θが(i)19°〜20°、(ii)21°〜22°、(iii)23°〜25°および(iv)29°〜31°の位置に回折ピークが存在することが好ましい。トナー化後にも、2θ=19°〜25°の位置に回折ピークが存在すると、即ちそれは、結晶性ポリエステル樹脂(a)が結晶性を維持していることを示しており、結晶性ポリエステル樹脂(a)の機能を確実に発揮させることができるため好ましい。
粉末X線回折測定は、理学電機RINT1100を用い、管球をCu、管電圧−電流を50kV〜30mAの条件で広角ゴニオメーターを用いて測定した。
図7に、実施例で用いた結晶性ポリエステル樹脂a6のX線回折結果を、図8に実施例35のトナーのX線回折結果を示す。
本トナーに用いる非結晶性樹脂(b)はクロロホルム不溶分を含有している。特に、クロロホルム不溶分を5〜40質量%含有していると耐ホットオフセット性が発現しやすくなるため好ましい。また、トナー化後に、トナー中のクロロホルム不溶分が2〜20質量%となるようにすると、耐ホットオフセット性を維持しつつ、非結晶性樹脂(b)以外の樹脂の配分も確保できるため好ましい。トナー中のクロロホルム不溶分が2質量%より少なくなると、クロロホルム不溶分に起因する耐ホットオフセット性が希薄になり、20質量%よりも多くなると、低温定着性に寄与する分の結着樹脂の配分が相対的に少なくなるため、低温定着性が悪化する。
クロロホルム不溶分は以下のように測定される。
トナー(もしくは結着樹脂)約1.0gを秤量し、これにクロロホルムを約50g加える。十分に溶解させた溶液を遠心分離で分け、JIS規格(P3801)5種Cの定性濾紙を用いて常温で濾過する。濾紙残渣が不溶分であり、用いたトナー質量と濾紙残渣質量の比(質量%)でクロロホルム不溶分の含有量を表わす。
なお、トナーとしたときのクロロホルム不溶分を測定する場合には、トナー約1.0gを秤量して結着樹脂と同様の方法で行なうが、濾紙残渣の中には顔料などの固形物が存在するので、熱分析により別途求める。
本トナーに用いる非結晶性樹脂(c)は非結晶性樹脂(b)よりも軟化温度(T1/2)が25℃以上低い。これは、前述のように、非結晶性樹脂(c)には結晶性ポリエステル樹脂(a)の低温定着性を補助させるべく、定着下限に寄与する機能、非結晶性樹脂(b)にはクロロホルム不溶分に起因する耐ホットオフセット性、つまり定着上限に寄与する機能というように、非結晶性樹脂(b)と非結晶性樹脂(c)で役割を分け、機能分離をさせているためである。
非結晶性樹脂(c)は、THF可溶分により求められたGPCによる分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、該分子量分布の半値幅が15000以下であることが好ましい。このような非結晶性樹脂(c)は非常に良好な低温定着性を示すため、トナーに処方した際に結晶性ポリエステル樹脂(a)を減量しても十分に低温定着性を補助することができる。また、逆説的ではあるが、上記の分子量分布を持つ非結晶性樹脂(c)を用いても、トナーの分子量分布が1000〜10000の間にメインピークを有し、半値幅が15000以下となるのであれば、トナーを構成する結着樹脂のうち非結晶性樹脂(c)の占める割合は高くなる。本発明者らが検討を重ねた結果、結晶性ポリエステル樹脂(a)、非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)、複合樹脂(d)を組み合わせた処方でトナーを製造すると、非結晶性樹脂(c)の割合を高めた場合が最もバランスがよく、過剰な結晶性ポリエステル樹脂や過剰なTHF不溶分による副作用や、複合樹脂(d)の硬さによる定着下限への悪影響が顕在化せず、それぞれの樹脂の機能が有効に発揮され、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性が良好になるということを見出した。
本発明において、非結晶性樹脂(b)、非結晶性樹脂(c)としては、前述のように、非結晶性樹脂(b)がクロロホルム不溶分の含有、非結晶性樹脂(c)が分子量分布、かつ、非結晶性樹脂(b)と非結晶性樹脂(c)の軟化温度の大小関係が満たされていれば従来公知の材料を用いることができる。例えば、以下に示すような樹脂を用いることが可能である。これらの樹脂は単独使用に限らず、二種以上併用することも可能である。
ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリα−メチルスチレン、スチレン/クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/塩化ビニル共重合体、スチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸エステル共重合体(スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、スチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/メタクリル酸エステル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル共重合体、スチレン/メタクリル酸エチル共重合体、スチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン/メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン/α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単独重合体又は共重合体)、塩化ビニル樹脂、スチレン/酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン/エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等、石油系樹脂、水素添加された石油系樹脂等が例として挙げられる。
これらの樹脂の製造法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれも利用できる。
本トナーの非結晶性樹脂(b)及び非結晶性樹脂(c)は、より好ましくはポリエステル樹脂であると低温定着性の観点から好ましい。例えば、アルコールとカルボン酸との縮重合によって通常得られるものも使用可能である。
該アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1.4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びビスフェノールA等のエチル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
また、カルボン酸としては、例えばマレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
特に、ポリエステル樹脂としては、熱保存性の関係から、ガラス転位温度Tgが55℃以上のものが好ましく、さらに60℃以上のものがより好ましい。
前記複合樹脂(d)は、縮重合系モノマーと付加重合系モノマーとが化学的に結合した樹脂(ハイブリッド樹脂と称することもある)である。即ち、前記複合樹脂(d)は、縮重合系樹脂ユニットと、付加重合系樹脂ユニットとを有している。
前記複合樹脂(d)は、原料となる縮重合系モノマーと付加重合系モノマーを含む混合物を、同一反応容器中で縮重合反応と付加重合反応を同時に並行反応して行うか、縮重合反応と付加重合反応、又は付加重合反応と縮重合反応を順次行うことによって得ることができる。
前記複合樹脂(d)における縮重合系モノマーとしては、ポリエステル樹脂ユニットを形成する多価アルコールと多価カルボン酸、ポリアミド樹脂ユニットもしくはポリエステル−ポリアミド樹脂ユニットを形成する多価カルボン酸とアミン、又はアミノ酸が挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素添加ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。 3価以上の多価アルコールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、などが挙げられる。
これらの中でも、水素添加ビスフェノールA、又はビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオール等のビスフェノールA骨格を有するアルコール成分は、樹脂に耐熱保存性や機械的強度を付与するので好適に用いることができる。
カルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のべンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等のアルキルジカルボン酸類又はその無水物;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物、などが挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステル、などが挙げられる。
これらの中でも、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の芳香族多価カルボン酸化合物が、樹脂の耐熱保存性、機械的強度の観点から好適に用いられる。
アミン成分もしくはアミノ酸成分としては、例えば、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
前記ジアミン(B1)としては、例えば芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等)、脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等)、脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)などが挙げられる。
前記3価以上のポリアミン(B2)としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
前記アミノアルコール(B3)としては、例えばエタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
前記アミノメルカプタン(B4)としては、例えばアミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
前記アミノ酸(B5)としては、例えばアミノプロピオン酸、アミノカプロン酸、ε−カプロラクタムなどが挙げられる。
前記(B1)〜(B5)のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記(B1)〜(B5)のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。
前記複合樹脂(d)中における縮重合系モノマー成分のモル比率は、5モル%〜40モル%であることが好ましく、10モル%〜25モル%がより好ましい。
前記モル比率が、5モル%未満であると、ポリエステル系樹脂との分散性が悪化し、50モル%を超えると、離型剤の分散が悪化する傾向が現れる。
また、縮重合反応を行う際にはエステル化触媒等を使用してもよく、前述したような触媒を全て用いることが可能である。
前記複合樹脂(d)における付加重合系モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ビニル系モノマーが代表的である。
該ビニル系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−フエニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−アミルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−へキシルスチレン、p−n−4−ジクロロスチレン、m−ニトロスチレン、o−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン等のスチレン系ビニルモノマー;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ノマー;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸系ビニルモノマー;その他のビニルモノマー又は共重合体を形成する他のモノマー、などが挙げられる。
前記その他のビニルモノマー又は共重合体を形成する他のモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のモノオレフイン類;ブタジエン、イソプレン等のポリエン類;塩化ビニル、塩化ビニルデン、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸若しくはメタクリル酸誘導体;マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸等の不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物等の不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アルケニルコハク酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、メサコン酸モノメチルエステル等の不飽和二塩基酸のモノエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸等の不飽和二塩基酸エステル;クロトン酸、ケイヒ酸等のα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物等のα,β−不飽和酸無水物;該α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物、アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物又はこれらのモノエステル等のカルボキシル基を有するモノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルへキシル)スチレン等のヒドロキシ基を有するモノマー、などが挙げられる。
これらの中でも、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等が好適に用いられ、少なくともスチレンとアクリル酸を含む組合せで用いると、離型剤の分散性が極めて良好であるので特に好ましい。
更に必要に応じて付加重合系モノマーの架橋剤を添加することができる。
該架橋剤としては、例えば、芳香族ジビニル化合物として、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、などが挙げられる。
アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6へキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類として、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、これらの化合物のアクリレートをメタアクリレートに代えたもの、などが挙げられる。
その他、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物、ジメタクリレート化合物も挙げられる。
ポリエステル型ジアクリレート類として、例えば、商品名MANDA(日本化薬株式会社製)が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテートが挙げられる。
前記架橋剤の添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部が好ましく、0.03質量部〜5質量部がより好ましい。
付加重合系モノマーを重合させる際に用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、n−ブチル−4,4−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
これらは、樹脂の分子量及び分子量分布を調節する目的で二種類以上を混合して用いることが可能である。
前記重合開始剤の添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、0.01質量部〜15質量部が好ましく、0.1質量部〜10質量部がより好ましい。
縮重合系樹脂ユニットと、付加重合系樹脂ユニットを化学的に結合するには、例えば、縮重合と付加重合のいずれでも反応可能なモノマーを用いる。
このような両反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその無水物;ヒドロキシ基を有するビニル系モノマーなどが挙げられる。
前記両反応性モノマーの添加量は、使用される付加重合系モノマー100質量部に対して、1質量部〜25質量部が好ましく、2質量部〜20質量部がより好ましい。
前記複合樹脂(d)は、同一反応容器内であれば、縮重合反応と付加重合反応の両反応の進行及び/又は完了を同時に行う他、それぞれの反応温度、時間を選択して、独立に反応の進行を完了することができる。
例えば、反応容器中に縮重合系モノマーの混合物中に、付加重合系モノマー及び重合開始剤からなる混合物を滴下してあらかじめ混合し、最初にラジカル重合反応により付加重合を完了させ、次いで反応温度を上昇させることにより縮重合を行う方法がある。
このように、反応容器中で独立した二つの反応を進行させることにより、二種の樹脂ユニットを効果的に分散、結合させることが可能である。
複合樹脂(d)が、ポリエステルの縮重合系樹脂ユニットとビニル系樹脂の付加重合系ユニットを有する複合樹脂であることが好ましく、複合樹脂(d)の機能をより効果的に発揮させることができる。
前記複合樹脂(d)の軟化温度(T1/2)としては、90℃〜130℃が好ましく、100℃〜120℃がより好ましい。
前記軟化温度(T1/2)が、90℃より低い場合は、耐熱保存性、耐オフセット性が悪化することがあり、130℃より高い場合は、低温定着性を悪化させることがある。
また、前記複合樹脂(d)のガラス転移温度は、定着性、保存性及び耐久性の観点から、45℃〜80℃が好ましく、50℃〜70℃がより好ましく、53℃〜65℃が更に好ましい。
前記複合樹脂(d)の酸価は、帯電性と環境安定性の観点から、5mgKOH/g〜80mgKOH/gが好ましく、15mgKOH/g〜40mgKOH/gがより好ましい。
本トナーは、必要に応じて帯電制御剤を配合することも可能である。
帯電制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩、サリチル酸金属化合物等がある。他にも、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類等があり、これら従来公知のいかなる極性制御剤も、単独あるいは混合して使用できる。これらの極性制御剤の使用量は、トナー樹脂成分100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
これら帯電制御剤の中でも、サリチル酸金属化合物を含有させると、同時に耐ホットオフセット性を改良できるため好ましい。特に、6配位の構成を取りうる3価以上の金属を有する錯体は、樹脂とワックスの反応性が高い部分と反応し、軽度の架橋構造を作るため、耐ホットオフセットへの効果が大きい。また、樹脂(d)と併用することで分散性が向上し、帯電極性制御の機能をより有効に発揮させることができる。
ここで、サリチル酸金属化合物としては、下式で表される化合物を用いることができ、Mが亜鉛である金属錯体の例としては、ボントロンE−84 オリエント化学工業(株)製が挙げられる。
更に、3価以上の金属の例としては、Al,Fe,Cr,Zr等が挙げられる。
(式中、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立して水素原子、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基、Mはクロム、亜鉛、カルシウム、鉄、ジルコニウム又はアルミニウム、mは2以上の整数、nは1以上の整数を示す)
本発明における電子写真画像形成用トナーは、DSCによるトナーの吸熱ピーク測定にて、90〜130℃の範囲に結晶性ポリエステル樹脂(a)に起因する吸熱ピークを有することが好ましい。結晶性ポリエステル樹脂(a)に起因する吸熱ピークが90〜130℃の範囲に存在すると、結晶性ポリエステル樹脂が常温では溶融せず、かつ、比較的低温な定着温度領域でトナーが溶融し、記録媒体に定着できるため、耐熱保存性と低温定着性をより効果的に発現させることができる。
また、吸熱ピークの吸熱量が1J/g以上、15J/g以下であることが好ましい。
吸熱量が1J/g未満であると、トナー中で有効にはたらく結晶性ポリエステル樹脂の量が少なすぎるため、結晶性ポリエステル樹脂の機能が十分に発揮されない。吸熱量が15J/gより多いと、トナー中で有効な結晶性ポリエステル樹脂の量が過剰であるため、非結晶性ポリエステル樹脂と相溶する絶対量が多くなり、トナーのガラス転移温度が低下し、耐熱保存性の低下を招く。
本トナーにおけるDSC測定(吸熱ピーク、ガラス転移温度Tg)は、示差走査熱量計(「DSC−60」;島津製作所製)を用い、10℃/分で20〜150℃まで昇温して測定する。
結晶性ポリエステル由来の吸熱ピークは、結晶性ポリエステルの融点である80〜130℃付近に存在するものであり、吸熱量はベースラインと吸熱曲線で囲まれた範囲の面積から求められる。一般的に、DSC測定における吸熱量は温度上昇を二度行い測定を行なうことが多いが、本発明における吸熱ピーク及びガラス転移温度の測定は一度目の昇温の際の吸熱曲線を用いて導き出す。
結晶性ポリエステル(a)由来の吸熱ピークがワックスの吸熱ピークと重なる場合には、重なったピークの吸熱量からワックス分の吸熱量を減算する。ワックス分の吸熱量は、ワックス単独の吸熱量とトナー中のワックス含有量から計算される。
本トナーは、脂肪酸アミド化合物を含有することが好ましい。
トナー製造時に溶融混練工程を含む粉砕トナーに対し、結晶性ポリエステル樹脂と共に脂肪酸アミド化合物を配合すると、混練時に溶融していた結晶性ポリエステル樹脂が冷却される際の混練物中での再結晶が促進されるため、樹脂との相溶が少なくなり、トナーのガラス転移温度の低下を抑えることができるため、耐熱保存性を改善することができる。また、離型剤と併用した場合には、離型剤を定着画像表面に留めることが可能となるため、擦れに強く(耐スミア性の向上)なる。
トナーにおける脂肪酸アミド化合物の含有量は、0.5〜10質量%が好ましい。
脂肪酸アミド化合物としては、R1−CO−NR2R3で表される化合物が適用される。
R1は炭素数10〜30の脂肪族炭化水素基であり、R2、R3は各々独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数7〜10のアラルキル基である。ここで、R2、R3のアルキル基、アリール基、アラルキル基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基等の通常不活性な置換基で置換されていても良い。より好ましくは無置換のものである。
好ましい化合物としては、ステアリン酸アミド、ステアリン酸メチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミド、ステアリン酸ベンジルアミド、ステアリン酸フェニルアミド、ベヘン酸アミド、ベヘン酸ジメチルアミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド等が挙げられる。
本トナーでは、脂肪酸アミド化合物としては、中でも、アルキレンビス脂肪酸アミドが特に好適に用いられる。
アルキレンビス脂肪酸アミドは、下記の一般式(II)で示される化合物である。
(式中R
1、R
3は炭素数5〜21のアルキル基またはアルケニル基、R
2は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。)
上記一般式(II)で示されるアルキレンビス飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスパルミチン酸アミド、エチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサエチレンビスパルミチン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド等を挙げることができる。これらのうちでは、エチレンビスステアリン酸アミドが最も好ましい。
これら脂肪酸アミド化合物は、軟化温度(T1/2)が、定着時の定着部材表面の温度より低いと、定着部材表面で離型剤としての効果も果たすことができる。
上記の他に使用できるアルキレンビス脂肪酸アミド系の化合物として、具体的には、プロピレンビスステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、プロピレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、プロピレンビスラウリン酸アミド、ブチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスミリスチン酸アミド、エチレンビスミリスチン酸アミド、プロピレンビスミリスチン酸アミド、ブチレンビスミリスチン酸アミド、プロピレンビスパルミチン酸アミド、ブチレンビスパルミチン酸アミド、メチレンビスパルミトレイン酸アミド、エチレンビスパルミトレイン酸アミド、プロピレンビスパルミトレイン酸アミド、ブチレンビスパルミトレイン酸アミド、メチレンビスアラキジン酸アミド、エチレンビスアラキジン酸アミド、プロピレンビスアラキジン酸アミド、ブチレンビスアラキジン酸アミド、メチレンビスエイコセン酸アミド、エチレンビスエイコセン酸アミド、プロピレンビスエイコセン酸アミド、ブチレンビスエイコセン酸アミド、メチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、プロピレンビスベヘニン酸アミド、ブチレンビスベヘニン酸アミド、メチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、プロピレンビスエルカ酸アミド、ブチレンビスエルカ酸アミド等の、飽和または1〜2価の不飽和の脂肪酸のアルキレンビス脂肪酸アミド系の化合物を挙げることができる。
本トナーに用いる着色剤としては、例えばカーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6Cレーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料等の染顔料など、従来公知のいかなる染顔料をも単独あるいは混合して使用することが可能であり、ブラックトナーとしてもフルカラートナーとしても使用できる。
特に、カーボンブラックは良好な黒色着色力を持つ。しかし、同時に、良好な導電性材料でもあるため、使用量が多かったり、トナー中で凝集状態で存在したりすると電気抵抗が低下し、転写工程において転写不良を招く原因になる。特に、結晶性ポリエステル樹脂と併用した場合、カーボンブラック粒子は結晶性ポリエステル樹脂のドメイン中に入り込めないため、結晶性ポリエステル樹脂が大きな分散径をもってトナー中に存在した場合、結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂中に比較的濃度の高い状態で存在することになる。そのため、凝集体のままトナー中に閉じ込められやすくなり、抵抗が過剰に低下しやすくなる。
本トナーの場合、複合樹脂(d)と併用するため、カーボンの分散も良好となり、上記のリスクは軽減することができる。また、カーボンブラックを含有すると、記録媒体へトナーを定着する際に、溶融したトナーの粘性を高いものにすることができるため、非結晶性樹脂(c)を多く処方した場合に、粘性低下に起因して発生するホットオフセットを抑制できるという効果も付与することができる。
これらの着色剤の使用量はトナー樹脂成分に対して、通常1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%である。
本トナーの離型剤には従来公知のものが使用できる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックスやフィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックスや蜜ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド、合成エステルワックス等及びこれらの各種変性ワックスが挙げられる。
これら離型剤の中でも、カルナウバワックス及びその変性ワックスやポリエチレンワックス、合成エステル系ワックスが好適に用いられる。特にカルナウバワックスは、ポリエステル樹脂やポリオール樹脂に対して適度に微分散し、耐ホットオフセット性と転写性・耐久性ともに優れたトナーとすることが容易なため非常に好適である。また、脂肪酸アミド化合物と併用した場合、定着画像表面に留まる効果が非常に強くなり、耐スミア性が更に向上する。
これら離型剤は、1種又は2種以上を併用して用いることができる。また、これらの離型剤の使用量は、トナーに対して2〜15質量%が好適である。2質量%未満ではホットオフセット防止効果が不十分であり、15質量%を超えると転写性、耐久性が低下する。
離型剤の融点は70〜150℃であることが好ましい。70℃より低いとトナーの耐熱保存性が低下する。150℃より高いと離型性が十分に果たせない。
本トナーの粒径については、特に限定的でないが、細線再現性等に優れた高画質を得るためには、体積平均粒径が4〜10μmであることが好ましい。
4μmより小さいと現像工程におけるクリーニング性、転写工程における転写効率に支障をきたし、画像品質が低下する。10μmより大きいと、画像の細線再現性が低下する。
ここで、トナー体積平均粒径の測定は、種々の方法によって測定可能であるが、本発明では米国コールター・エレクトロニクス社製のコールターカウンターTAIIが用いられる。
本トナーは、製造工程に少なくとも溶融混練工程を含む、所謂粉砕法を用いて製造された粉砕トナーであることが好ましい。
粉砕法は、結晶性ポリエステル樹脂(a)、非晶性樹脂(b)、非晶性樹脂(c)、複合樹脂(d)、着色剤、及び離型剤を少なくとも含有するトナー材料を乾式混合し、混練機にて溶融混練し、粉砕して粉砕トナーを得る方法である。
まず、トナー材料を混合し、該混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。該溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。具体的な例としては、神戸製鋼所社製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型押出機、ケイシーケイ社製二軸押出機、池貝鉄工所社製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は結着樹脂の軟化点を参考にして行われ、該軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。
粉砕工程では、前記混練で得られた混練物を粉砕する。この粉砕においては、まず、混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。この際ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。
分級工程では、前記粉砕工程にて得られた粉砕物を分級し、所定粒径の粒子に調整する。分級は、例えば、サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行うことができる。
前記粉砕及び分級が終了した後に、粉砕物を遠心力などで気流中にて分級し、所定の粒径のトナーを製造する。
本トナーは、製造工程において溶融混練工程を経る粉砕トナーであるが、原材料を溶融混練させた後の冷却工程にて、混練物の厚さを2.5mm以上にすると、混練物の冷却速度が遅くなり、混練物中で溶融している結晶性ポリエステル樹脂(a)の再結晶行なわれる時間が長くなるため、再結晶が促進され、結晶性ポリエステル樹脂(a)の機能をより効果的に発揮させることができる。再結晶を促進させるには前述のように脂肪酸アミドを配合するのも有効な手段ではあるが、このように製造工程を調整することでも効果が得られる。混練物の厚さに上限はないが、8mmより厚くすると、粉砕工程において効率が著しく低下するため、8mm以下の厚さに留めることが好ましい。
トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高めるために、上記のようにして製造されたトナー母体粒子に更に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。
このような添加剤の混合は、一般の粉体の混合機が用いられるがジャケット等装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、例えば、途中又は漸次に添加剤を加えていけばよい。
混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを適宜変化させてもよい。また、初めに強い負荷を与え、次いで、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。
外添剤混合工程に使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。混合工程を施した後に、250メッシュ以上の篩を通過させ、粗大粒子や凝集粒子を除去してもよい。
本トナーを現像剤として使用する際は、トナーのみにて構成される一成分現像剤として用いても、キャリアと混合して二成分現像剤として用いてもよく、特に限定はされないが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンター等に使用する場合には、寿命向上等の観点から、二成分現像剤として用いることが好ましい。
以下、本トナーを実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本トナーはここに例示される実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は質量部を表す。
(実施例1)
[粉砕トナーの作製]
<粉砕トナー1>
結晶性ポリエステル樹脂:a1 4質量部
非結晶性樹脂:b1 35質量部
非結晶性樹脂:c1 55質量部
複合樹脂:d1 10質量部
着色剤:p1 14質量部
離型剤:カルナウバワックス(融点:81℃) 6質量部
帯電制御剤:モノアゾ金属錯体
(クロム系錯塩染料(ボントロンS−34 オリエント化学工業(株)製)2質量部
下記表1〜5に記載の原材料と、上記離型剤、帯電制御剤によるトナー原材料を、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM−30)で100〜130℃の温度で溶融、混練した。得られた混練物はローラーにて2.8mmの厚さに圧延した後にベルトクーラーにて室温まで冷却し、ハンマーミルにて200〜300μmに粗粉砕した。次いで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業株式会社製、MDS−I)で重量平均粒径が5.6±0.2μmとなるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK−2000、クラリアント株式会社製)1.0質量部をヘンシェルミキサーで攪拌混合し、粉砕トナー1を作製した。
作製した粉砕トナーの分子量メインピーク、分子量分布の半値幅、結晶性ポリエステル樹脂(A)に起因する90〜130℃の範囲におけるDSCピーク温度・吸熱量、X線回折測定における19〜25°の範囲での回折ピークの有無、体積平均粒径を表10に示す。
作製した粉砕トナー1を5質量%と、コーティングフェライトキャリア95質量%を、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一混合し、粉砕トナー現像剤1を作製した。
(実施例2〜35、比較例1〜8)
以下、下記表4〜8に記載の原材料と表9に記載の離型剤、帯電制御剤、圧延厚さ、また、製造例によっては脂肪酸アミドを表9に記載の質量部にて実施例1と同様に混合、混練、粉砕、添加剤混合を施し、トナー2〜43を得、現像剤を作製した。
ただし、トナー31においては、樹脂中での顔料の分散が悪いため、他の原材料と混合する前に、非結晶性樹脂c3と純水を用いて予備混練を行い、マスターバッチ化を行って着色剤p2を用いたトナーを作製した。トナー化にあたっては、マスターバッチ中に含有されている非結晶性樹脂c3の量から逆算し、最終的に配合される原材料比率が表9の分量となるように調整した。
<粉砕トナー31のマスターバッチ作製>
非結晶性樹脂:c3 100質量部
着色剤:p2 50質量部
純水 50質量部
無論、本発明において、マスターバッチの作製方法は上記に限定されるものではない。
尚、実施例30〜35で用いた帯電制御剤のサリチル酸金属化合物は、サリチル酸亜鉛化合物である金属錯体(ボントロンE−84 オリエント化学工業(株)製)を使用した。
上記結晶性ポリエステルa1〜a6は、アルコール成分として1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールから選択される化合物を、カルボン酸成分としてフマル酸、マレイン酸、テレフタル酸から選択される化合物を用いて得られた樹脂である。
具体的には、表4に示すアルコール成分及びカルボン酸成分の単量体を、常圧下、170〜260℃、無触媒の条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン酸成分に対し400ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮合を行い、結晶性の樹脂を得た。尚、架橋反応は攪拌トルクが10kg・cm(100ppm)となるまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止させた。
また、上記結晶性ポリエステルa1〜a6は、粉末X線回折装置によるX線回折パターンにおいて、2θ=19°〜25°の位置に少なくとも1つの回折ピークが存在し、結晶性ポリエステルであることを確認した。結晶性ポリエステル樹脂a6のX線回折結果を図7に示す。
上記非結晶性樹脂b1〜b5、c1、c3は以下のようにして得られた樹脂である。
芳香族ジオール成分及びエチレングリコール、グリセリン、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、イタコン酸より選ばれた単量体を、常圧下、170〜260℃、無触媒の条件でエステル化反応せしめた後、反応系に全カルボン酸成分に対し400ppmの3酸化アンチモンを加え3Torrの真空下でグリコールを系外へ除去しながら250℃で重縮合を行い樹脂を得た。尚、架橋反応は攪拌トルクが10kg・cm(100ppm)となるまで実施し、反応は反応系の減圧状態を解除して停止させた。
上記非結晶性樹脂b1〜b6、c1〜c3はX線回折パターンにより、回折ピークが存在せず、非結晶性であることを確認した。
縮重合系モノマーである、テレフタル酸0.8mol、フマル酸0.6mol、無水トリメリット酸0.8mol、ビスフェノールA(2,2)プロピレンオキサイド1.1mol、ビスフェノールA(2,2)エチレンオキサイド0.5mol、及びエステル化触媒としてジブチル錫オキシド9.5molを、窒素導入管、脱水管、攪拌器、滴下ロート、及び熱電対を装備した5リットル容器の四つ口フラスコ内に入れ、窒素雰囲気下、135℃まで加熱した。
攪拌を行いながら、さらに付加重合系モノマーである、スチレン10.5mol、アクリル酸3mol、2−エチルヘキシルアクリレート1.5mol、重合開始剤としてt−ブチルハイドロパーオキサイド0.24molを滴下ロートに入れ、混合物を5時間かけて滴下し、6時間反応を行った。
続けて、210℃まで3時間かけて昇温を行い、210℃、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、複合樹脂d1を合成した。
得られた複合樹脂d1の軟化温度は115℃、ガラス転移温度は58℃、酸価は25mgKOH/gであった。
また、縮重合系モノマーとしてヘキサメチレンジアミン、ε−カプロラクタム、付加重合系モノマーとしてスチレン、アクリル酸、2−エチルヘキシルアクリレートを用いること以外は複合樹脂d1と同様にして複合樹脂d2を合成した。
上記説明した本発明の画像形成装置によれば、環境条件を的確に判断して転写バイアスを適正に補正することができるので、環境条件の誤検知により不適切な転写バイアス補正が行なわれることが無く、異常画像の発生を防止することができる。
省エネモードからの復帰時に第1の環境検知手段の検知結果により第2の環境検知手段による検知を実行するか否かを判断する構成により、省エネモードからの復帰時にも適切な画像転写を行なうことができる。
第1の環境検知手段および第2の環境検知手段が温度検知手段であることにより、コストの低減を図ることができる。
第2の環境検知手段が温度及び湿度を検知する手段である場合には、絶対湿度を検出可能なので、より高精度に転写バイアスを設定することができる。
制御テーブルを参照して転写電流値または電圧値の設定を行なうことで、バイアス設定に係る制御の負担が軽減する。
標準の転写電流値または電圧値に対する割合を指定して転写電流値または電圧値の設定を行なうことで、より簡単な制御で転写バイアスを設定できる。
第1の環境検知手段が定着装置近傍の温度環境を検知することで、環境温度と機内温度との差を的確に判断することができる。
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、直接転写方式又は間接転写方式のいずれにも適用可能なものである。また、転写方式も、吸引転写に限らず、反発転写でもよい。また、転写手段は適宜な構成を採用可能である。
画像形成装置の各部構成も任意であり、像担持体としてはドラム上に限らず、ベルト状のものを採用することもできる。また、モノクロ装置に限らず、フルカラー機や多色機にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としては複写機に限らず、プリンタやファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。