JP6130996B2 - プラスチック材料の評価方法 - Google Patents

プラスチック材料の評価方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6130996B2
JP6130996B2 JP2012042195A JP2012042195A JP6130996B2 JP 6130996 B2 JP6130996 B2 JP 6130996B2 JP 2012042195 A JP2012042195 A JP 2012042195A JP 2012042195 A JP2012042195 A JP 2012042195A JP 6130996 B2 JP6130996 B2 JP 6130996B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
plastic material
wear
plastic
higher order
evaluating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012042195A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013178163A (ja
Inventor
慎治 加藤
慎治 加藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KYB Corp
Original Assignee
KYB Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KYB Corp filed Critical KYB Corp
Priority to JP2012042195A priority Critical patent/JP6130996B2/ja
Publication of JP2013178163A publication Critical patent/JP2013178163A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6130996B2 publication Critical patent/JP6130996B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Sliding-Contact Bearings (AREA)

Description

本発明は、プラスチック材料とプラスチック材料とのトライボロジー特性(摩擦特性)とプラスチック材料の表面高次構造との関係に基づいてプラスチック材料を評価する方法に関し、特に、金属材料と接触して使用されるエンジニアリングプラスチック材料の評価に有用な評価方法を提供するものである。
プラスチックは、金属と比較し比重が小さく製品の軽量化、複雑形状の成形が可能などの利点から、金属に代わる機械部品として利用されている。しかし、プラスチックは強度や耐熱性などの低さから低面圧下における摺動部品としての利用が多く、高面圧下における摺動部品としての利用は少ない。したがって、エンジニアリングプラスチック(以下、「エンプラ」と称することがある。)を高面圧下における摺動部品として利用することが可能となればプラスチックが利用される範囲が広がる。そのためにはプラスチックのトライボロジー特性(摩擦特性)を解明する必要がある。プラスチックの摺動による研究では、乾燥下における熱可塑性プラスチックの摩擦試験において、Rz=0.3μm付近までは表面粗さが大きくなるにつれて摩擦係数が小さくなるという報告がある(非特許文献1)。この現象は、表面粗さが小さいときは凝着が支配的だが、粗さが大きくなるとアブレシブな要素が支配的となるためである。
また、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)とアルミナまたはステンレスの摩耗試験において、相手金属材料が変化することで摩耗量の上昇傾向が変化するという報告がある(非特許文献2)。このようにプラスチックと鉄鋼材料などの金属材料との摩擦・摩耗特性については、これまでにも複数の報告が行われているが、未だに不明な点も多く残されている。その大きな要因の一つとして、プラスチックの高次構造が成形条件や加工方法により異なり、過去の研究では高次構造の影響を考慮していなかったためと考える。
Tribology International,Vol.22,No.2 (1989),pp.103-109. Biomaterials,Vol.7(1986),pp.20-24. 材料,Vol.33,No.372 (1984),pp.82-88.
さまざまな分野に用途が拡大されているエンジニアリングプラスチックなどのプラスチック材料は、その優れた特性が、成形・加工法などに依存して高次構造が変化することが十分に考えられる。そのため、個々のニーズに合う材料としての諸物性を実現させるためには、一次構造から高次構造までを制御することが必要になる。すなわち、成形品の物性がいかに高次構造に影響されるかを明らかにすることにより、その重要性を確認すると共に、高次構造を解析することにより最新かつ基礎的なデータの取得に有用な手法を開発することを必要とする。
一般に、プラスチック材料は、金属と比較し比重が小さく製品の軽量化、複雑形状の成形が可能などの利点から、金属に代わる機械部品として利用されているが、プラスチック材料は強度や耐熱性などの低さから低面圧下における摺動部品としての利用が多く、高面圧下における摺動部品としての利用は少ないのが現状である。
近年、プラスチック材料の機械的特性や成形性はプラスチック材料の高次構造に影響され、さらに、高次構造の違いは表面のトライボロジー特性にも影響をもたらすとの知見が得られるようになった。表面の高次構造は、摩擦刺激によってバルクとは異なる状態へと変化することが予想されるため、プラスチックのトライボロジー特性を摺動速度、摺動圧力、摩擦面温度、相手材料などの摺動条件との関係において測定し、解明することが必要である。また、機械部品として使用するに適したプラスチック材料を選択するには、その用途に適したトライポロジー特性とプラスチック材料の高次構造の関連を把握する必要があることは明らかである。
従来、トライボロジー技術は、機械システムの信頼性や性能の向上など資するひとつのコア技術と捉えることもできる。しかしながら、トライボロジー、特に摩擦、摩耗現象については、これらを説明できる理論が存在していないし、過去の実験データを基に必要とされる摩擦係数や摩耗量を推定することが困難である。そのため、特に新規の摺動形態や摺動条件を設計対象とする場合には、机上の設計のみで性能を予測することやトラブルを未然に防ぐ方策を講じることは難しい。その結果として,実機での実用運転によってはじめて発現するような現象も少なからず存在するのが現状である。
また、機械が長期にわたり安心して使用されるためには、摩擦部の摩耗や焼付きを防ぎ適正な摩擦特性を維持する必要があり、性能評価には、実用機械そのものをベンチやフィールドで使用するものから実機の摩擦部を想定したモデル摩擦試験に至るまで、様々な試験方法が使用される。実機を使用する方法では実用性能を容易に判断できるが、膨大なコストや時間を要し、また必要な摩擦部以外からのノイズ因子が多く解析が難しいことが問題である。一方、モデル摩擦試験は簡便かつ低コストでの評価が可能であるが、機構が単純なために実機試験結果との相関を見いだすことが大変困難である。この間に位置づけられる試験方法として、歯車試験や軸受試験に代表される単体試験やユニット試験がある。これらは実機の一部を取り出して評価されるため、実機試験結果との相関が得られやすく、比較的低コストで評価できる。
しかしながら、これらの従来公知の試験方法からは、低コストで、簡便、正確な評価ができる手法を見出すことはできなかった。
本発明は、プラスチック材料の機械部品などへの使用において、プラスチック材料を適正に評価し、特定の用途に適した表面高次構造を有するプラスチック材料を選択するための評価方法を提供することを目的とするものであり、用途、使用箇所、組み合わせる材料などに応じて適切なプラスチック材料を選択するための基礎的データの蓄積に寄与するものである。
すなわち、本発明の目的は、高面圧下における摺動部品として利用可能なプラスチック材料をスクリーニングするべく、当該プラスチック材料のトライボロジー特性を簡便に解明するためのモデル摩擦試験方法を提供することにある。また、本発明の目的は、高面圧下などの任意の圧力下における摺動部品としての有用性を評価できるように、プラスチック材料の表面高次構造と摩擦特性の相関が得られやすく、比較的低コストで評価できるモデル摩擦試験方法の提供することにある。
本発明者は、一対の試験片を一定の荷重と速度のもとで摺動面させ、このときの摩擦力を計測するとともに,所定距離摺動後の摩擦量を測定することによって行う試験実施したときの相手材料の表面粗さとプラスチックの表面高次構造との関連に着目し、表面粗さをコントロールした金属材料とプラスチック材料との摺動試験によりプラスチック材料の高次構造を評価するものである。本発明により、例えば、プラスチック材料として汎用エンジアリングプラスチックとして知られ強度や耐熱性の高いポリアミド66を用いて摺動実験を行い高次構造の評価試験方法を開発し提供することができる。
本発明は、以下の技術的要素から構成される。
(1)プラスチック材料選択のための一対の試験片を摺動させて磨耗量を測定する摩擦試験において、該試験片が摺動面の表面粗さをコントロールした金属材料とプラスチック材料からなり、金属材料によるプラスチック材料の磨耗量を測定し、その摩耗量の値から、結晶化度またはMFRを推定し、推定した結晶化度またはMFRを材料選択の指標とすることを特徴とする、プラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
(2)金属材料の摺動面の表面粗さが、Raが0.2〜0.6、Rpkが0.2〜0.8である上記(1)に記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
(3)金属材料の摺動面の表面粗さをブラストにより調製する上記(1)または(2)に記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
(4)摩擦試験が金属材料の円筒端面をプラスチック材料からなる平板片に押し付ける面接触方式で行われる上記(1)から3のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
(5)磨耗量が、金属材料がプラスチック材料を磨耗して形成した溝の深さで測定される上記(1)から(4)のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
(6)金属材料として鉄、軽金属またはこれらの合金を用い、プラスチック材料としてエンジニアリングプラスチックを用いる上記(1)から(5)のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
(7)金属材料の表面粗さがブラストまたは切削面より形成されている上記(1)から(6)のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
(8)研削による金属表面の粗さが円筒の中心部から半径方向に放射状となる凹凸により形成されている上記(7)に記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
本発明により、高面圧下における摺動部品などとして利用可能なプラスチック材料をスクリーニングするのに役立つ。また、エンプラの摩擦特性とプラスチック材料の表面高次構造の関係を解明するためのモデル摩擦試験方法を提供することができる。高面圧下における摺動部品との相関が得られやすく、比較的低コストで評価できるモデル摩擦試験方法を提供することができる。
スラストシリンダー式試験機を用いた摩擦、摩耗試験を説明する図面をしめす。 加工後金属表面の表面粗さの一態様について、顕微鏡による表面画像について、研削加工した画像を示す。 加工後金属表面の表面粗さの他の態様について、顕微鏡による表面画像について、ブラスト加工した画像を示す。 粗さ測定機を用いて測定した摩耗深さと表面粗さとの関係を示す。 鏡面、研削、ブラストのRaと摩耗深さとの関係を示す。 鏡面、研削、ブラストのRpk(表面粗さパラメータ)と摩耗深さとの関係を示す。 ポリアミド66の高次構造と摩耗深さの関係を示す。
本発明は、一対の試験片を摺動させて磨耗量を測定する摩擦試験において、該試験片が表面粗さをコントロールした金属材料とプラスチック材料からなり、金属材料によるプラスチック材料の磨耗量を測定すると共にその摩耗量の値に基づきプラスチック材料表面の高次構造を評価することを特徴とするプラスチック材料の表面高次構造の評価方法に関するものであり、簡便な摺動摩擦試験により、プラスチック材料の高次構造に関する情報を得ることができる。
本発明によりプラスチック材料の表面高次構造と表面トライボロジーの関係を簡便に評価できるため、特定の用途や摩耗などに関する特定のトライボロジー物性を有するプラスチック材料を選択する手法として有用である。すなわち、プラスチック材料の結晶化度などの高次構造と摩耗量の関係を詳細に検討することによりプラスチック材料が必要とする高次構造を評価するための手段とすることができる。
本発明のプラスチック材料の高次構造の評価方法は、スラストシリンダー試験機を用いて、金属材料からなるシリンダーの端面とプラスチック材料からなる平板を加圧接触させ、金属シリンダーを回転することにより両者を摺動してプラスチック材料が研磨されて形成された溝の深さを摩耗量として評価するものであり、試験装置の概要は図1に示す。
[プラスチック材料の高次構造とトライボロジー特性]
プラスチック材料の一次構造(化学構造、立体構造、分子量と分布、末端基、ブロック・グラフト、シーケンスなど)を制御することは飛躍的に発展しているが、このようなプラスチック材料の分子鎖自体の制御が高分子材料の様々な物性(例えば、力学物性、電気特性、熱的性質など)と直結していれば材料の選択は簡単に行うことができるが、現実には必ずしもそうではないことはよく知られている。その理由は、プラスチック材料の内部構造には、相分離構造、結晶・球晶構造、非晶構造などの高次構造が存在し、これらの不均一構造が諸物性に大きな影響を与えるからである。この不均一構造の存在が、特異な物性を時として生む原因である。このことを言い換えると、不均一構造である高次構造を精密に制御できれば、あるいは、不均一構造と諸物性との関係が分かっていれば、高機能・高性能な新しい高分子機能材料を創生することができるものと考えられる。また、このような高次構造は、プラスチック材料の射出成型などの加熱成形、切削加工、加熱、冷却などの処理加工の過程において変化が生ずることがある。また、プラスチック材料からなる部品類の加工された表面は内部とは異なる高次構造を有することがあるため、プラスチック材料の表面の高次構造が重要な要素となることがある。
トライボロジーとは潤滑と同じ内容を意味する用語である。機械類には、軸受、歯車などその他様々な摩擦部分が存在し、その機械を円滑に動かし、十分に働かせるためには、摩擦部分の動きを滑らかにするための「潤滑」が必須であり、大、小、重、軽、いろいろな機械の性能、効率、信頼性向上をつかさどる。機械には歯車や軸受けなどのように二つの部品が接触しながら運動する物が多く、摩耗によって精度が低下したり破壊したりする。この様な摩耗現象は、材料の性質によるだけでなく接触する相手材料の性質によっても変化し、例えば、歯車の歯面の摩耗は荷重が繰り返し作用する結果として疲労破壊から起こり、軸受けの摩耗は摩擦熱から焼き付きの現象となって現れることもある。
機械的部品類において、金属材料とプラスチック材料を組合せて使用することが行われるようになり、これらの材料間のトライボロジーを評価することは重要な課題として残されている。
[プラスチック材料]
本発明で評価されるプラスチック材料は主に、金属材料と接触摺動する材料から選ばれ、例えば、エンジニアリングプラスチックを挙げることができる。エンジニアリングプラスチックの中では主要に使用されている5種類(ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエステル)があり、エンジニアリングプラスチック全体の約9割を占めるといわれている。これらにはそれぞれ性能に特徴があるため、用途に応じて使い分けられているが、主に自動車や電機、電子機器などに多く使用されている。
本発明の実施例に用いたポリアミド66は、化学式[CO(CHCONH(CHHH]で現されるアミド結合(−CONH−)の繰り返しによって構成される線状の高分子化合物である。ポリアミド66は、ポリアミド系樹脂の中では結晶化度が高く、物性のバランスがとれたエンプラでもあり、ポリアミド6と比較すると、耐熱性、機械的強度において、より優れた値を示す。すなわち、機械的強度のバランスが良く、ポリアミド系樹脂の中では、最も優れた機械的強度がある。また、ガソリン、オイルなどの有機溶剤に対して、優れた耐性がある。ガラス繊維などを充填して、機械的強度、剛性、熱変形温度などを大きく向上させることが可能であり、衣料用繊維、軸受け、ライナー、ローラー、ギア、絶縁部品、食品加工機械部品、包装機械部品などに用いられている。本発明の説明および実施例では、ポリアミド66を例とする。
[金属材料]
本発明の金属材料としては、各種の金属具品として用いられ、特に、エンジニアリングプラスチック類と共同して用いられる材料から選ばれる。金属材料は鉄鋼材料と非鉄金属に分けられる。鉄鋼(炭素鋼)S45CやSS400に代表される鉄鋼は、安価であること、溶接性に優れていること、様々な熱処理ができることなどの特徴がある。最もよく使われる材料の一つであるSS材は強度を基準とした炭素鋼である。例えば,SS400は引張り強さが400N/mm以上の炭素鋼である。一方,S−C材は材料成分を基準とした材料であり、例えば、S45Cは、0.45%の炭素が含まれている材料である。鉄鋼にはかなり多くの種類がある。また、非鉄材料としては、アルミニウム、マグネシウム、チタンなどの軽量金属とそれらの合金類が挙げられる。
[プラスチック材料の流動性の指数(MRF)]
歯車などの機械部品は射出成形により製造される。射出成形加工では溶融させた樹脂の流動性の善し悪しによって成形条件、特に射出圧力や射出速度、金型温度の設定が大きく左右される。樹脂の流動性を評価する方法として最も簡易的で目安として利用されているものがメルトフローレート(MFR)である。メルトフローレートの数値が大きい樹脂ほど流動性が良いと評価される。メルトフローレートが小さい樹脂は流れが悪い。汎用エンプラのトライボロジー特性の評価には射出成形加工性との相関を見る必要がある。
メルトフローレート(MFR)とは、溶液状態にある樹脂の流動性を示す尺度の一つである。メルトインデックス(MI)とも言い、ISOでの名称がメルトフローレートである。測定方法は、円筒状の押出式プラストメーターに入れた樹脂を一定の温度で加熱、加圧し、容器の底の開口部から10分間に押出された樹脂量を測定する。単位はg/10minで表される。メルトフローレートの値が大きいほど溶融時の流動性や加工性は良好とされるが、引張り強さなどは低下する。市販のポリアミド66のメルトフローレート10〜80g/10minである。
[プラスチック材料の結晶化度]
結晶性樹脂とは架橋や枝分かれがほとんど無く、規則正しい分子構造をもった高分子を言うが、一般に全ての分子が結晶化することはない。結晶化している部分の量を結晶化度で示し、結晶化度が高いほど硬度、弾性率強度などが向上し透明性はない。二つの部品が接触しながら運動する歯車や軸受けは、摩耗によって精度が低下したり破壊したりする。歯車の歯面の摩耗は荷重が繰り返し作用する結果として疲労破壊から起こり、軸受けの摩耗は、摩擦熱から焼き付きの現象となって現れることもある。エンジニアリングプラスチックのトライボロジー特性の評価にはエンプラの結晶化度との相関を見る必要がある。また、プラスチック材料の結晶性などの高次構造は、熱、機械的な力などを受けた表面部分に偏在することがありプラスチック材料の表面での高次構造を評価することが重要となる。
[摩擦試験]
一対の試験片を一定の荷重と速度のもとで摺動面させ、このときの摩擦力を計測するとともに、所定距離摺動後の摩擦量を測定することによって行う試験である。摩擦係数の測定方式には、歪ゲージやロードセル、回転トルク計などで摩擦力を直接計測する方法、駆動モータの負荷電力から変換して求める方法、振り子式摩擦試験機のように摩擦による振動減衰挙動から求める方法、斜面上においた物質が滑り出す角度から最大静止摩擦力を求める方法などがある。本発明では、スラストシリンダー式を採用する。円筒の端面を平板試験片に押し付ける面接触方式で、摩擦の進行によっても接触面積が変化しないため、すべり軸受けなどの焼付き荷重の評価などに適用される試験方法である。日本では鈴木式とも呼ばれ、プラスチック系材料の摩耗試験方法としてJIS規格(JIS
K 7218-1986)で規定されている、プラスチック系材料の摩擦試験方法としても使われている。
一般に摩擦、摩耗試験はマクロな現象を評価の対象にするが、基本となる現象は摩擦表面における原子、分子レベルの状態によって支配されるため、雰囲気の湿度の違いや試験片のごくわずかな汚れなどでも試験結果に大きな違いとなって現れることがある。また、摩擦面の状態は試験中に常に変化するが、変化の具合は摩擦面からの摩耗粉の排出しやすさなど、2次的な因子によっても影響を受けることになる。さらに、摩擦、摩耗試験は、データ取得までに複数のプロセスと時間を必要とする。摩擦試験片の準備に限っても、素材の製造、加工から表面仕上げ、洗浄、取り付けまで、試験実施者が直接操作する以外のところでも多くのプロセスが関与している。これらの個々のプロセスにおける不確かさや誤りは、累積もしくは連成されて最終的な試験結果に影響を及ぼすことになる。試験を行う際には摩擦、摩耗試験におけるばらつきや不安定性をもたらす原因を極力排除して行うことが好ましい。
本発明においては、表面粗さRaが0.02〜0.6、Rpkが0.02〜0.8の範囲にブラストあるいは研削により加工した金属材料(S54C)の表面とプラスチック材料(ポリアミド66)の表面を回転摺動させることにより摩擦試験を行ったところ、表面粗さが増加するにつれて摩耗量は増加した。同じ表面粗さでは、ブラストによる表面の摩耗量が多くなることが判明した。プラスチック材料の高次構造の一種である結晶化度、MFRに関しては、研磨量と結晶化度、MFRの値が相関関係にあることが判明した。表3および図7の結果から明らかなように、試料A、B、Cと結晶化度が低下するに対応して研磨量も低下する。このことは、研磨量からプラスチック材料の高次構造を推定できること、あるいはプラスチック材料の高次構造から研磨量などのトライボロジーを推定評価できることを示している。
プラスチック材料の高次構造とトライボロジーの関係を明確に示すには、高次構造の変化に対してトライボロジーが大きく変化することが好ましいが、これに適した表面粗さは、Raが0.2〜0.6、Rpkが0.2〜0.8の範囲であることは図5、6より求めることができる。
なお、本発明における表面粗さRaは算術平均粗さ、Rpkは初期摩耗粗さであり、文献、JIS、DINなどに記載の測定方法で得られる。
以下に本発明の実施例を説明する。本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
1 実験方法
1.1 実験装置
摩擦、摩耗試験には図1に示すスラストシリンダー式試験機を用いた。摺動条件について表1に示す。試験後、粗さ測定器を用いて摩耗深さを測定した。
1.2 試験片
シリンダーに表面を加工し粗さを変化させたS45Cを用いる。シリンダーの表面粗さを変化させる方法として、鏡面加工(以下、「鏡面」と称する。)、研削加工(以下、「研削」と称する。)、ブラスト加工(以下、「ブラスト」と称する。)の3種類の加工を行なった。鏡面について1種類、研削とブラストについてはそれぞれ3種類の表面粗さの試験片を用意した。このとき、3種類の試験片は表面粗さパラメータRaを基準に揃えた。試験片寸法の詳細は試験条件とともに表1に示す。詳しい加工の種類と加工後金属表面の表面粗さについて表2に示す。顕微鏡による表面画像について、研削の画像を図2、ブラストの画像を図3に示す。研削の方向は、図2に示すように円の半径方向に放射状に研削跡がつくように加工した。
プラスチックに結晶性熱可塑性樹脂のポリアミド66を用いる。本実験では、プラスチックの高次構造として結晶化度とMelt
flow rate(以下、「MFR」と称する。)に着目しその値を変化させた。それぞれの値を表3に示す。
2 実験結果
2.1 相手材表面粗さ
粗さ測定機を用いて測定した摩耗深さと表面粗さとの関係を図4に示す。これより表面粗さパラメータRaが大きくなると摩耗深さが大きくなることが確認できた。ウエットブラストと研削200の摩耗深さを比較すると、摩耗深さは同程度にもかかわらず研削200方がRaが大きいことが確認できた。
次にRaと摩耗深さを比較した結果を図5に示す。図5より、研削での摩耗深さの上昇傾向とブラストでの摩耗深さの上昇傾向が異なり、ブラストは研削に比べ摩耗深さが大きくなることが確認できた。 そこで、表面粗さパラメータとしてRpkについて、摩耗深さとの関係を比較した。図6より、Rpkが大きくなると研削とブラストの両方で似た摩耗深さの上昇傾向を示すことが確認できた。これより、金属とプラスチックの摩耗のように軟らかい材料と硬い材料のアブレシブ摩耗では、金属の突出した山部の高さが摩耗量に関係していると推察される。
2.2 プラスチックの高次構造
相手金属材料の表面は、研削325で加工し、Ra=0.3μm、Rpk=0.2μm程に揃えた試験片を用いた。高次構造を変化させた試験片について、それぞれの摩耗深さを図7に示す。A、B、Cについて比較したところ、結晶化度が大きくなると摩耗深さが小さくなることが確認できる。その理由として、結晶化度が大きくなるプラスチック内部の分子間力が大きくなり、せん断強さが上昇し、耐摩耗性が向上するためと推察される。
3 試験結果
ポリアミド66に対し、相手材料の粗さおよび、プラスチックの高次構造による摩耗深さの変化を調べ以下の知見を得た。
(1)表面粗さRa、Rpkが大きくなるにしたがって摩耗量が増加し、Ra、Rpkの値が0.2以上で摩耗量が大きくなる、という表面粗さと摩耗量には相関関係がある。
(2)表面粗さRaとRpkと摩耗深さの関係を比較した結果、加工方法に依らず摩耗と表面粗さの相関がみられたが、ブラストにより表面を粗くすると、研削による表面と比較して摩耗量が大きくなる。
(3)結晶化度と耐摩耗性は相関関係があり、結晶化度が大きくなると耐摩耗性が向上する。
(4)摩耗量からプラスチック材料の相関を求めるにはRaが0.2〜0.6、Rpkが0.2〜0.8の範囲が好ましい。
構造部材として材料に求められる性質と、外部との境界を成す材料表面に求められる性質とは必ずしも一致せず、場合によっては相反する特性が求められることもある。そこで、表面に必要とされる性質を内部とは独立に付与し、機能の役割分担による材料全体での高性能化を図る手段として、本発明は、表面改質表面の摩耗量を測定しは、これをプラスチック材料の高次構造に関連して評価し、新た材料開発に有用である。

Claims (8)

  1. プラスチック材料選択のための一対の試験片を摺動させて磨耗量を測定する摩擦試験において、該試験片が摺動面の表面粗さをコントロールした金属材料とプラスチック材料からなり、金属材料によるプラスチック材料の磨耗量を測定し、その摩耗量の値から、結晶化度またはMFRを推定し、推定した結晶化度またはMFRを材料選択の指標とすることを特徴とする、プラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
  2. 金属材料の摺動面の表面粗さが、Raが0.2〜0.6、Rpkが0.2〜0.8である請求項1に記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
  3. 金属材料の摺動面の表面粗さをブラストにより調製する請求項1または2に記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
  4. 摩擦試験が金属材料の円筒端面をプラスチック材料からなる平板片に押し付ける面接触方式で行われる請求項1から3のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
  5. 磨耗量が、金属材料がプラスチック材料を磨耗して形成した溝の深さで測定される請求項1から4のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
  6. 金属材料として鉄、軽金属またはこれらの合金を用い、プラスチック材料としてエンジニアリングプラスチックを用いる請求項1から5のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
  7. 金属材料の表面粗さがブラストまたは切削面より形成されている請求項1から6のいずれかに記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
  8. 研削による金属表面の粗さが円筒の中心部から半径方向に放射状となる凹凸により形成されている請求項7に記載のプラスチック材料の表面高次構造の評価方法。
JP2012042195A 2012-02-28 2012-02-28 プラスチック材料の評価方法 Active JP6130996B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012042195A JP6130996B2 (ja) 2012-02-28 2012-02-28 プラスチック材料の評価方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012042195A JP6130996B2 (ja) 2012-02-28 2012-02-28 プラスチック材料の評価方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013178163A JP2013178163A (ja) 2013-09-09
JP6130996B2 true JP6130996B2 (ja) 2017-05-17

Family

ID=49269933

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012042195A Active JP6130996B2 (ja) 2012-02-28 2012-02-28 プラスチック材料の評価方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6130996B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108387511B (zh) * 2015-07-29 2020-10-09 中国石油化工股份有限公司 一种用于srv模拟评价变速箱齿轮油同步器的摩擦性能的摩擦副试件
JP6794684B2 (ja) 2016-07-12 2020-12-02 横浜ゴム株式会社 ゴムの耐摩耗性評価方法
JP6821981B2 (ja) * 2016-07-12 2021-01-27 横浜ゴム株式会社 ゴムの摩耗試験装置
CN117388313B (zh) * 2023-12-07 2024-02-20 广东凯洋新材料有限公司 一种工程塑料齿轮用质量检测装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07190065A (ja) * 1993-12-27 1995-07-28 Sutaaraito Kogyo Kk 摺動部材
JPH11209640A (ja) * 1998-01-19 1999-08-03 Starlite Co Ltd 摩擦・摩耗特性に優れた合成樹脂成形品およびその製造方法
JP4618911B2 (ja) * 2001-03-09 2011-01-26 倉敷紡績株式会社 Pfa樹脂の改良方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013178163A (ja) 2013-09-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Pogačnik et al. Tribological properties of polyamide (PA6) in self-mated contacts and against steel as a stationary and moving body
Quaglini et al. Influence of counterface roughness on friction properties of engineering plastics for bearing applications
Kalácska An engineering approach to dry friction behaviour of numerous engineering plastics with respect to the mechanical properties.
JP6130996B2 (ja) プラスチック材料の評価方法
Gordon et al. The wear and friction of polyamide 46 and polyamide 46/aramid-fibre composites in sliding–rolling contact
Khoddamzadeh et al. Novel polytetrafluoroethylene (PTFE) composites with newly developed Tribaloy alloy additive for sliding bearings
Budinski Laboratory testing methods for solid friction
Sukumaran et al. Revisiting polymer tribology for heavy duty application
Brezinová et al. Friction conditions during the wear of injection mold functional parts in contact with polymer composites
Samyn et al. Large-scale tests on friction and wear of engineering polymers for material selection in highly loaded sliding systems
Keresztes et al. Tribological characteristics of cast polyamide 6 (PA6G) matrix and their composite (PA6G SL) under normal and overload conditions using dynamic pin-on-plate system
Sonawane et al. Dry sliding wear characteristics of carbon filled polytetrafluoroethylene (PTFE) composite against Aluminium 6061 alloy
Koike et al. Influence of radial load on PEEK plastic bearings life cycle
Unal et al. Friction and wear behaviours of some industrial polyamides against different polymer counterparts under dry conditions
Kandeva et al. Wear-resistance of aluminum matrix microcomposite materials
Unal et al. Comparison of tribological performance of PEEK, UHMWPE, glass fiber reinforced PTFE and PTFE reinforced PEI composite materials under dry and lubricated conditions
Samyn et al. Effect of test scale on the friction properties of pure and internal-lubricated cast polyamides at running-in
Petre et al. Aspects regarding the tribological behavior of Turcite and Relamid polymeric materials, in sliding motion couples
Krasmik et al. Experimental investigation of the friction and wear behaviour with an adapted ball-on-prism test setup
Sędłak et al. Friction coefficient and wear resistance of a modified polypropylene impregnated with different oils
Greškovič et al. Evaluation of process wear of selected tool steels for injection molds
Georgescu et al. Influence of adding materials in PBT on tribological behaviour
Petrica et al. Impact of surface roughness and contact pressure on wear behaviour of PEEK, POM, and PE-UHMW
Nadermann et al. Tribological behavior of short carbon fibre reinforced PEEK under diesel lubrication
Sukumaran et al. Effect of velocity on roll/slip for low and high load conditions in polymer composite

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20141219

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150821

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150909

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20151105

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160420

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160615

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161122

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170112

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170411

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170417

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6130996

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150