JP6129826B2 - ビス−金属サンドイッチ化合物による有機半導体のn−ドーピング - Google Patents

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Description

関連出願
本願は、2011年6月14日に出願された米国仮出願番号第61/496,667号の優先権を主張し、その完全な開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
政府の許諾権の記載
Princetonの発明者らは、助成金番号DMR−0705920の下、米国国立科学財団および助成金番号DMR−0819860の下、米国国立科学財団のPrinceton MRSECを通して部分的な財政支援を受けた。Georgia Techの発明者らは、助成金番号DMR−0120967の下、米国国立科学財団、助成金番号DE−FG02−07ER46467の下、エネルギー省、基礎エネルギー科学および助成金番号N00014−11−1−0313の下、海軍研究所を通して部分的な財政支援を受けた。連邦政府は、これらの発明において特定の権利を有する。
本明細書において開示、記載、および/または特許請求される種々の発明は、ビス−金属サンドイッチ化合物を用いて有機半導体をn−ドーピングするための方法、製造されたドープされた組成物および有機電子デバイスにおけるドープされた組成物の使用の分野に関する。
トランジスタ、太陽電池、発光ダイオードおよびケイ素、ゲルマニウムまたはガリウムヒ素をベースとする無機半導体に由来する同様のデバイスなどの電子デバイスの構成要素の製造は、このような無機半導体の製造におけるドーパントの使用のように、当技術分野で非常によく知られている。電気的に中性であるが、基本の無機半導体材料と比較して1個または複数の余分の価電子を含む「n−ドーパント」無機元素の原子は、一般に、不純物として無機半導体格子中に直接的にドープされ、それによって、このような「n型」無機半導体に生じる非局在化伝導帯中に、電流を搬送する可能性がある電子を提供する。伝統的な無機半導体を直接「ドーピング」する技術は、極めて良好な電気性能を有する電子半導体をもたらすが、製造費用が極めて高い可能性があり、剛性の高価な無機半導体は、潜在的な関心の高いいくつかの極めて望ましい最終用途には適していない。
おそらくは、プラスチックまたは紙などのフレキシブル基板などの上に、相当に安い費用で処理される溶液であり得る可能性がある、有機半導体(有機小分子、オリゴマーまたはポリマー)をベースとする、大面積の、および/または「印刷可能な」電子構成要素およびデバイスの開発に向けた多くの最近の研究があり、その結果、多数の新規の可能性ある回路、電子デバイスまたは最終用途応用が開発され得る。
無機および有機半導体間には重要な相違がある。例えば、一般に、バルク固体中に広がる有機半導体中に、電子または正孔の完全に非局在化された「帯」または「伝導状態」はない。正孔および/または電子が、不飽和有機半導体分子の共役π軌道内に移動できるが、電流の巨視的伝導は、通常、固体状態にある隣接するが個別の有機分子間の正孔または電子の量子力学的「ホッピング」によって制限される。
有機半導体材料の制御された化学ドーピングは、いくつかの種類の有機半導体材料および/またはデバイスの導電率および/または電気性能を改善する技術として当技術分野で公知である。例えば、有機半導体におけるドーピングの一般的な主たるもの(principals)ならびに有機発光ダイオード(「OLED」)および有機光電池(「OPV」)における多数の特定の応用の両方を記載するWalzerら、Chem. Rev. 2007年、107、1233〜127頁を参照のこと。有機半導体のn型ドーピングでは、n型ドーパントは、通常、有機半導体化合物の最低空軌道(「LUMO」)へ還元的に電子を供与して、残りのドープされていない有機半導体分子間に少なくとも2、3のアニオンを形成し、n−ドーパント化合物は、その過程でカチオンに酸化される。電位差の存在下で、LUMOに注入された電子は、通常、n−ドープされた有機半導体分子間を「ホッピング」して、電流を搬送する。
当技術分野では、有機半導体組成物を直接的にn−ドーピングすることの2つの主要な機能は、(i)伝導に利用可能な「自由」電子電流キャリアの密度を増大することおよび/あるいは(ii)固体状態構造における深いトラップ状態(トラップは、通常、不純度または半導体よりも低位の空軌道を有する欠点と関連している)または、欠陥、すなわち、静的もしくは動的障害の選択的充填であり、それによって、有機分子から有機分子への電子の「ホッピング」輸送プロセスに必要な活性化エネルギーを低下させることと考えられている。さらに、電極接触面で有機材料を直接的にドーピングすることは、狭い接触面欠乏領域を通り抜ける改善された電子または正孔を提供することによって、また、有機−有機ヘテロ−接合部で分子エネルギー準位の整合を操作することによって接触抵抗を低減し得る;これらの低減は、有機フィルムの伝導率において桁違いの増大を提供することもある。
n−ドーパント材料由来の正電荷を有するカチオンは、半導体固体内に自らを位置づけ、および/またはさまざまに、その固体状態構造を破壊し得る。n−ドーパント分子由来のカチオンが小さい場合には(アルカリ金属カチオンなど)、それらが半導体の固体構造を破壊する可能性は低いが、それらは、望ましくないことに、有機格子内および/またはドープされたデバイス内の異なる構造の間に移動し、ならびに、隣接する半導体分子上の電子の静電的トラップとして作用し得る。
さらに、Walzerら、および多数の当業者によって記載されたように、「p−型ドーピングとは対照的に、n−型分子ドーピングは、…本質的により困難である。効率的なドーピングには、ドーパントのHOMOレベルは、マトリックス材料のLUMOレベルをエネルギー的に上回っていなければならず…、このことは、このような材料を酸素に対して不安定にする。LUMOエネルギーを増大させるにつれ、適した材料を見出す難しさが増大する。」実際、対象とする多数の有機半導体の高位LUMO中に電子をドーピングできるほど十分に強力な還元剤である、安定であり、容易に処理可能なn型ドーパント分子を同定することは困難であるとわかっている。十分に強力なn−ドーパントが同定された場合には、それらはそれ自体で化学的に不安定であるか、または処理されている間もしくは処理後に空気もしくは水に曝露されると不安定であることが多かった。多くの場合、n−ドープされた半導体はまた、空気および/または水による酸化に対してそれ自体で不安定である。
したがって、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池および有機発光ダイオードにおける応用のために、改善されたn−ドープされた有機半導体を含む、改善された、経済的に実行可能なn−ドープされた有機半導体デバイスを作製するために、当技術分野には、かなり改善されたn−ドーパント材料、その使用方法、改善されたn−ドープされた半導体組成物に対して満たされていない必要性がある。以下に記載される本発明の種々の実施形態は、その目的に向けられている。
WO2005/036667およびその米国相当物US2007/0278479では、フラーレンのための還元剤としての、特定の高度還元性の単量体の電気化学的に作製されたルテニウムテルピリジンおよびクロムビピリジン複合体ならびに亜鉛フタロシアニンの使用が開示された。
コバルトセニウムカチオン(以下に示される構造)は、安定な「18電子」反磁性塩のカチオンとして化学的先行技術において長い間知られている。コバルトセニウムカチオンは、1個の電子によって、アルカリ金属などの極めて強力な無機還元剤によって還元されて、中性の、単量体の「19電子」単量体ラジカル化合物「コバルトセン」(「Co(C」)を形成し得るということも当技術分野で公知であった。デカメチルコバルトセン(「Co(CMe」)および対応するデカメチルコバルトセニウムカチオンも化学の技術分野では公知である。
このような電気的に中性である19電子コバルトセン化合物は、単離され得るが、酸素および水などの潜在的酸化体に対して極めて反応性の還元体であり、したがって、周囲条件下で、またはほとんどの工業プロセスにおいて作製、取り扱い、保存および使用することが困難である。
Domrachevら(Russ. Chem. Bull. 43(8) 1305〜1309頁、1994年)は、中性の「19電子」コバルトセンを使用して、C60および/またはC70フィルムを還元および/またはn−ドーピングして、ドープされたフラーレンフィルム中に、少なくともいくらかのコバルトセニウムフレリド(fulleride)塩の形成を誘導することを報告した。
近年、コバルトセンおよびデカメチルコバルトセンはまた、銅フタロシアニン(CuPc)およびペンタセンなどの有機半導体化合物のフィルムのためのn−ドーパントとして記載された。例えば、Chanら、Chem. Phys. Lett. 431(2006年)67〜71頁;Chanら、Organic Electronics 9(2008年)575〜581頁、Chanら、Appl. Phys. Lett 94、2003306(2009年)、ChanおよびKahn、Appl. Phys. A(2009年)95 7〜13頁を参照のこと。
米国特許公報2007/029594では、有機半導体の可能性あるn−ドーパントとして、多数の単量体メタロセンおよびその他のサンドイッチ化合物を含めた広範囲の還元力を有する種々の有機金属化合物の使用が開示され、特許請求された。しかし、その中に開示された単量体サンドイッチ化合物の多くは、「19電子」ラジカル化合物ではなく、比較的低い電子親和性を有する対象とする多数の有機半導体化合物または組成物を効率的にn−ドーピングするのに十分に強力な還元剤でもない。その特許公報は、より詳しくは、コバルトセン、デカメチルコバルトセンなどの2、3の単量体19電子サンドイッチ化合物ならびに2つの置換単量体鉄ベースサンドイッチ化合物(Fe(C)(CMe)および(Fe(CMe)(CMe))を記載した。US2007/029594では、それらの単量体19電子化合物が有効なn−ドーパントであることおよびこのような19電子金属サンドイッチn−ドーパントが、開示されたドーピング法によって製造されたより大きな金属サンドイッチカチオンが、半導体固体内のドーパントのカチオンの望ましくない移動性に対してより抵抗性であるために、いくつかの点でリチウム金属などのこれまでに知られている無機ドーパントよりも優れていることが示唆された。しかし、US2007/029594は、そのプロセスにおいて二量体もしくはオリゴマーのメタロセン化合物を作製および使用する方法または二量体もしくはオリゴマービス−金属サンドイッチ化合物が有効なn−ドーパントであろうということまたはビス−金属サンドイッチ化合物をn−ドーパントとして使用することの任意のその他の利点を開示または示唆しなかった。
文献には、特定の18電子金属サンドイッチカチオンを還元して、高度還元性19電子単量体金属サンドイッチラジカルを製造しようとする2、3の試みが開示されているが、特定のその他の18電子金属サンドイッチカチオンを用いた場合には、それらの試みは、2つの18電子単量体断片間の炭素−炭素結合の形成を用いる19電子単量体の二量体化をもたらすことが多い。例えば、Gusevら(J. Orgmet. Chem、452、219〜222頁、1993年)は、安定で、中性の19電子ロドセン単量体を製造することよりも、18電子ロドセニウム(rhodocenium)カチオンの塩を電気化学的に還元する試みが、実際には、以下に示されるように、ロドセン単量体の環の間の炭素−炭素結合の形成を誘導し、適度に化学的に、空気安定性の、単離された「ロドセン二量体」を形成することを開示した。[Fe(η−C)(η−CMe6−n)](n=0〜5)、[Fe(η−CMe)(η−C)]、[Ru(η−C)(η−C)](R=H、Me)および[Ir(η−CR’)(η−CR”)](R’、R”=H、Me)塩の還元によって誘導された同様の二量体の鉄およびイリジウムベースのメタロセンも、Gusevらなどによって続いて報告されている。
しかし、Gusevらも、先行技術の報告書(Gusevら、J. Organomet. Chem. 1997年、531、95〜100頁、Hamonら、Am. Chem. Soc. 1981年、103、758〜766頁、Murrら、Inorg. Chem. 1979年、18、1443〜1446頁およびFischerら、Organomet. Chem. 1966年、5、559〜567頁を参照のこと)も、炭素−炭素結合によって連結している2つの18電子サンドイッチ化合物を含むこのような二量体メタロセン化合物が、有機半導体のn−ドーパントとして有用であるということは示唆しなかった。
出願人は、先行技術に記載されたいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物および以下に記載されるその他のビス−金属サンドイッチ化合物は、予想外に強力であるが、適度に空気および/もしくは水に安定な還元剤ならびに/または種々の有機半導体のn−ドーパントとして予期せぬことに働き得るということを発見した。さらに、出願人の方法および/または以下に記載されたビス−金属サンドイッチn−ドーパントの使用によって、新規の、予想外に有用なn−ドープされた組成物およびこのようなn−ドープされた組成物を含む有機電子デバイスを製造するための溶液処理の使用が可能となる。
本明細書に開示された種々の発明および/またはその多数の実施形態は、いくつかの実施形態では、有機半導体組成物または有機半導体化合物のn−ドーピングおよび/またはその電流搬送能の増大のためのプロセスに関し、
(a)互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環を含む有機半導体組成物または有機半導体化合物を得るか、または提供するステップと、
(b)2つの連結している金属サンドイッチのグループを含むビス−金属サンドイッチ化合物を得るか、または提供するステップであって、
(i)各金属サンドイッチグループは、少なくとも1つの置換されていてもよいベンゼンまたはシクロペンタジエニル環を含む、2つのアリールまたはヘテロアリール環と結合している、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウムおよびイリジウムから独立に選択される遷移金属原子を含み、
(ii)各金属サンドイッチグループに由来する一方のベンゼンまたはシクロペンタジエニル環は、炭素−炭素結合によって、他方の金属サンドイッチのグループに由来するベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と結合している
ステップと、
(c)有機半導体組成物または有機半導体化合物を、少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物と接触させるステップと
を含む。
このようなn−ドープされた有機半導体組成物または有機半導体化合物を作製するプロセスは、2つの連結している金属サンドイッチのグループを含むほとんど知られていないか、研究されていないビス−金属サンドイッチ化合物の、n−ドーパント材料としてのその使用のために新規である。
2つの連結している金属サンドイッチのグループを含む、出願人のビス−金属サンドイッチ化合物は、先行技術の「メタロセン」化合物と多くを共有するが、幾分かより広く定義される。先行技術における全部ではないが一部の研究者は、「メタロセン」を、環の炭素原子と遷移金属の間の「マルチ−ハプト(multi-hapto)」結合を形成する非局在化されたπ軌道のセットを有する、2つのシクロペンタジエニル(C)環と結合している遷移金属原子または鉄から形成される化合物に限定されると狭く定義している。
出願人のビス−金属サンドイッチ化合物、金属サンドイッチのグループおよび/または金属サンドイッチカチオン(以下のさらなる記載を参照のこと)は、フェイシャル「マルチ−ハプト」様式で、2つの、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール環群と結合している遷移金属原子または鉄を含む。2つのアリールまたはヘテロアリール環群のうち少なくとも一方は、別の金属サンドイッチのグループに由来するベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と、同様に、炭素−炭素結合を形成して、ビス−金属サンドイッチ化合物を形成する可能性があり得る「ベンゼン」(C)または「シクロペンタジエニル」(C)環のうち少なくとも一方を含む。「ベンゼン」または「シクロペンタジエニル」環のすべての炭素が、特に、それらも別の「ベンゼン」または「シクロペンタジエニル」環と炭素−炭素結合を形成する場合には、遷移金属原子または鉄と結合しているか、結合したままである必要があるわけではない。
ビス−金属サンドイッチ化合物、金属サンドイッチのグループおよび/または金属サンドイッチカチオンの各遷移金属原子または鉄と結合している第2のアリールまたはヘテロアリール環は、同様に、「マルチ−ハプト」様式で遷移金属原子または鉄と結合している、環中に少なくとも2つの多重結合を有する任意の4から8員の環を含み得る。例えば、第2のアリールまたはヘテロアリール環は、シクロブテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、ベンゼニル、シクロヘプタジエイル(cycloheptadieyl)もしくはシクロオクタジエニル環または環中に酸素、窒素もしくはケイ素原子を含むその複素環バリエーションを含み得る。4〜8員の環のいずれも、単結合しているか、または縮合している有機または無機置換基で置換されていてもよい。
好ましいビス−金属サンドイッチ化合物の限定されない例として、以下の構造を有する化合物が挙げられる
[式中、
a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
種々の置換基の正体は、以下にさらに記載する]。
上記で示される図中の、ビス−メタロセン化合物を形成する2つの金属サンドイッチのグループを連結する炭素−炭素結合は(図から文字通り解釈されると)、通常の飽和炭素−炭素「単」結合であると思われるが、このような特性決定は、完全または正確ではない場合もあるということは留意されなくてはならない。理論に拘束されようとは思わないが、これらの結合は、その実際の特徴に影響を及ぼす遷移金属のd−軌道との相互作用に関与し得る。それにもかかわらず、このような「炭素−炭素」結合は、予想外に弱い、および/または反応性であり、予想外に、破壊または切断して、単量体金属サンドイッチカチオンを形成し、かつ/または有機半導体のn−ドーピングを誘導できることは明らかであると思われる。
このようなビス−金属サンドイッチ化合物は、それにもかかわらず、通常、固体として空気および水に対して比較的安定であり、溶液では種々のより低い程度に酸素または水に対して安定であり、数時間から数週間の期間、時として空気中で容易に合成され、取り扱われ得る。このようなビス−金属サンドイッチ化合物はまた、溶液中または固相中のいずれかで、有機半導体組成物または有機半導体化合物と接触すると予想外に強力な還元剤および/またはn−ドーパントとして機能する予想外の能力を示す。ビス−金属サンドイッチ化合物の少なくともいくつかは、先行技術において知られている、同様の単量体金属サンドイッチドーパントと比較して、予想外に強力なn−ドーパントであり、先行技術の単量体金属サンドイッチドーパントを用いた場合には上手く調製され得なかった半導体組成物または化合物をドーピングするための幾分か困難なn−ドーピングを可能にする。
本明細書に記載されたプロセスの多数の実施形態では、2つの金属サンドイッチのグループの環を連結する炭素−炭素結合が、n−ドーピング反応の間に破壊され、2つの単量体金属サンドイッチカチオンが形成され、金属サンドイッチカチオンの形成が、有機半導体組成物または半導体化合物の少なくとも部分的な還元を伴い、n−ドーピング効果をもたらす。このような実施形態では、金属サンドイッチカチオンは、以下の構造を有し得る。
しかし、n−ドーパントとして使用されるビス−金属サンドイッチ化合物の取り扱いの比較的容易さならびに適度に良好な空気および水安定性と相まった高い還元力の予想外の組合せにもかかわらず、n−ドーピング反応は、固体および溶液状態の両方において、有機半導体組成物または化合物の構造上の詳細およびビス−金属サンドイッチ化合物の構造につれて速度が大きく変わり得る。反応速度が速い場合には、ビス−金属サンドイッチ化合物は、n−ドーピング反応の進行によって金属サンドイッチカチオンに迅速に変換される前に短時間しか存在し得ない。
n−ドーピング反応の速度が適当に遅いか、室温でほとんどゼロである場合には、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環および以下の構造のうち1つを有する少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物を含む少なくとも1つの有機半導体化合物を含む有用な中間化学組成物を調製することが有利であり得る:
[式中、
a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムである]。
このような化学中間体組成物が調製および使用される場合には、いくつかの実施形態では、それらは時には、水または空気の存在下で組成物および/または電子デバイスを調製するために使用され得、次いで、電子デバイスがすでに形成された後、炭素−炭素結合の破壊が、熱分解、光分解、超音波処理またはマイクロ波処理によって開始されて、n−ドーピング反応を開始および/または加速することができ、これによって、その他のn−ドーパントおよび/またはn−ドープされた半導体を用いて製造することが極めて困難であろうデバイスの製造が可能になり得る。
最後に、本発明の多数の実施形態では、n−ドーピング反応が完了すると、本明細書に記載された発明は、本明細書に記載されたn−ドーピングプロセスの最終製品、すなわち、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環および以下の構造を有する1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンのうち少なくともいくつかを含む、少なくとも1つの有機半導体化合物を含むn−ドープされた固体有機半導体組成物に関する
[式中、
a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
d)各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、
e)xは、1〜5の整数であり、
f)x’は、1〜5の整数であり、
g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
h)y’は、1〜6の整数である]。
いくつかのこのような実施形態では、有機半導体化合物は、炭素の同素体、フラーレンまたはフラーレン誘導体を含まない。
このようなn−ドープされた半導体組成物は、有機電界効果トランジスタ(「OFETS」)、有機光起電力デバイス(「OPV」)および有機発光ダイオード(「OLED」)などのさまざまなn−ドープされた電子デバイスの製造にとって有用である。
Walzerらなどによって記載された、n−ドープされた有機半導体材料の調製の固有の困難さを考慮して、出願人の新規方法および組成物は、組成物としてこれまでに開示されなかったか、または先行技術の方法によって利用可能ではなかったさまざまな新規のn−ドープされた有機半導体組成物および化合物の調製を可能にする予期しない新規n−ドーパント材料(すなわち、ビス−金属サンドイッチ化合物)を使用する。
上記で広く概説された種々の発明の好ましい実施形態のさらなる詳細な記載は、提供される詳細な説明の節において以下に提供される。上記または下記のいずれかで本明細書に挙げられるすべての参照文献、特許、出願、試験、標準、文書、刊行物、小冊子、教本、論文などは、参照により本明細書に組み込まれる。
ロドセン二量体のサイクリックボルタモグラムを示す図である。実施例5を参照のこと。 0.1M BuNPFおよびフェロセンを含有するTHF中の[(CMe)Fe(C)]二量体のサイクリックボルタモグラムを示す図である。実施例5を参照のこと。 0.1M BuNPFおよびフェロセンを含有するTHF中の[(CMe)Ir(C)]二量体の異性体の混合物のサイクリックボルタモグラムを示す図である。実施例5を参照のこと。 0.1M BuNPFおよびフェロセンを含有するTHF中の[(η−CMe)Ru(メシチレン)]二量体のサイクリックボルタモグラムを示す図である。実施例5を参照のこと。 0.1M BuNPFおよびフェロセンを含有するTHF中の[(η−CMe)Ru(1,3,5−トリエチルベンゼン)]二量体のサイクリックボルタモグラムを示す図である。実施例5を参照のこと。 混合後60分の、5.0×10−5Mルテニウム二量体溶液、1.0×10−4M TIPS−ペンタセン溶液および混合物溶液(5.0×10−5M[CpRu(TEB)]二量体および1.0×10−4M TIPSペンタセン)のクロロベンゼンにおけるUV−Vis−NIRスペクトルを示す図である。実施例6を参照のこと。 種々の反応時間での、[CpRu(TEB)]、TIPSペンタセンならびに1.45×10−3M TIPS−ペンタセンおよび4.54×10−5M[CpRu(TEB)]の反応混合物溶液のUV−Vis−NIR吸収スペクトルを示す図である。 混合物溶液の時間に対する750nmでの吸収を示す図である。実線は、フィッティングされた一次反応曲線である。実施例6を参照のこと。 種々の反応時間での、4.38×10−5M TIPS−ペンタセンおよび8.82×10−4M[CpRu(TEB)]の反応混合物溶液のUV−Vis−NIR吸収スペクトルを示す図である。 混合物溶液の時間に対する750nmでの吸収を示す図である。実線は、フィッティングされた一次反応曲線である。実施例6を参照のこと。 種々の反応時間でのクロロベンゼン中の4.38×10−5M TIPS−ペンタセンおよび8.82×10−4Mロドセン二量体の反応混合物溶液のUV−Vis−NIR吸収スペクトルを示す図である。実施例6を参照のこと。 90ÅドープされていないCuPc(実線)および続いて蒸着された88Åの3.5重量%ロドセン二量体でドープされたCuPc(破線)のUPS He Iスペクトルを示す図である。 図1aのデバイスの分光学的研究の結果から導かれた模式的エネルギー図である。 ドープされていない(下の2曲線)およびロドセン二量体でドープされた(上の2曲線)のいずれかの同様のCuPcダイオードデバイスでのその場電流対電圧(I−V)測定の結果を示す図である。2つのダイオードの構造は、右に示されている。実施例7を参照のこと。 90ÅのドープされていないCuPc(実線)およびその後に蒸着された88Åの5.0重量%(Fe(CMe)(C))二量体でドープされたCuPcのUPS He Iスペクトルを示す図である。 図2aのデバイスの分光学的研究の結果から導かれた模式的エネルギー図である。 ドープされていない(下の2曲線)および(Fe(CMe)(C))でドープされた(上の2曲線)のいずれかの同様のCuPcダイオードデバイスでのその場I−V測定の結果を示す図である。2つのダイオードの構造は、右に示されている。実施例8を参照のこと。 Au上の、ドープされていない、および2重量%のロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)コポリマーフィルムで獲得されたUPS He Iスペクトルの(a)光電子放出カットオフおよび(b)HOMO領域を示す図である。 Au上の、ドープされていない、および2重量%のロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)コポリマーフィルムで獲得されたUPS He Iスペクトルの(a)光電子放出カットオフおよび(b)HOMO領域を示す図である。 2重量%のロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)フィルムで獲得された、組み合わされたUPS He IおよびIPESスペクトルを示す図である。 スペクトル測定に基づいた、ドープされていない、およびドープされたP(NDIOD−T)フィルムの模式的エネルギー準位図である。実施例9を参照のこと。 ITO基板上にスピンコーティングされた、ドープされていない、および2重量%ロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)(フィルム厚 約50nm)のI−V特徴を示す図である。実施例9を参照のこと。 P(NDIOD−T)のロドセン二量体でドープされたフィルムの可変温度伝導率測定に使用された櫛型Au電極を有する石英基板の略図を示す図である。 170Kおよび300Kの間のさまざまな温度での電流密度対電場(J−F)結果を示す図である。 2重量%ロドセン二量体でドープされた50nm厚P(NDIOD−T)フィルムの1000/Tの関数として伝導率を示す図である。 (a)ITO上のドープされていないTIPS−ペンタセンの薄いフィルム(14nm)で獲得された組み合わされたUPS/IPESスペクトルを示す図である。(b)図11aに示された分光分析データに基づいたエネルギー準位略図である。実施例10を参照のこと。 ドープされていないTIPSペンタセンフィルムおよび5重量%ロドセン二量体でドープされたTIPSペンタセンフィルム両方の伝導率特徴のグラフを開示する図である。実施例9を参照のこと。 (a, b)ドープされていないBT(実線)およびロドセン二量体でドープされたBT(破線)の、それぞれ、He IおよびHe II UPSスペクトルを示す図である。(c)は、ドーピングの際にLUMOに向けたフェルミ準位移動を有する、BTのエネルギー略図である。実施例9を参照のこと。 (a, b)ドープされていないBT(実線)およびロドセン二量体でドープされたBT(破線)の、それぞれ、He IおよびHe II UPSスペクトルを示す図である。(c)は、ドーピングの際にLUMOに向けたフェルミ準位移動を有する、BTのエネルギー略図である。実施例9を参照のこと。 ドープされていない、および6重量%のロドセン二量体でドープされたTFBフィルムで獲得されたUPS He Iスペクトルを示す図である。 対応するエネルギー準位略図である。 ドープされていない、および「ロドセン二量体でドープされた」TFBフィルムで獲得された電流密度対電場(J−F)曲線を示す図である。実施例10を参照のこと。 ドープされていない、および6重量%RhCp二量体でドープされたTFBフィルムで獲得されたUPS He Iスペクトルを示す図である。 試みられたTFBのロドセン二量体ドーピングによって誘導されるTFBの電子状態間のエネルギー関係において極めて小さい変化のみを示す図である。 ドープされていない、および「ロドセン二量体でドープされた」TFBフィルムで獲得された電流密度対電場(J−F)曲線を示す図である。実施例11を参照のこと。 ソース/ドレインコンタクト電極の局所ドーピングを含むn型有機半導体材料としてC60を有するデバイスの実施形態を示す図である。 ドープされた対ドープされていないOFETの、図16に示されるような、種々のデバイスの伝達および出力特徴の実施形態を示す図である。 ドープされた対ドープされていないOFETの、図16に示されるような、種々のデバイスの伝達および出力特徴の実施形態を示す図である。 ドープされた対ドープされていないOFETの、図16に示されるような、種々のデバイスの伝達および出力特徴の実施形態を示す図である。 ドープされた対ドープされていないOFETの、図16に示されるような、種々のデバイスの伝達および出力特徴の実施形態を示す図である。
以下の参考文献、およびその中で引用された参考文献は、使用可能性を高める:(1)Guoら、「n-Doping of Organic Electronic Materials Using Air-Stable Organometallics」、Advanced Materials、2012年、24、699〜703頁;(2)Qiら、「Solution Doping of Organic Semiconductors Using Air-Stable n-Dopants」、Applied Physics Letters、100、083305(2012年)には、実施形態が記載されている。
最初に開示され、上記で記載された広い発明の多数の態様およびその他の特徴または実施形態は、以下を調査すると当業者に明らかとなるか、または背景情報および先行技術ならびに本発明の実施から学ばれ得るように、以下の詳細な説明においてより十分にここで示される。本明細書に記載された発明のいくつかの態様または実施形態の利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘されるように理解され、得られ得る。理解されるであろうが、本発明は、その他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明からすべて逸脱することのない種々の明らかな点における改変であり得る。以下の説明は、本来例示として見なされなくてはならず、特許請求されるような本発明の制限と見なされてはならない。
本出願では、要素または構成要素が、列挙された要素または構成要素のリストに含まれる、および/またはそれから選択されるといわれる場合には、本明細書において明確に考慮される関連実施形態では、要素または構成要素はまた、個々の列挙された要素もしくは構成要素のいずれか1つであり得るか、または明確に記載された要素もしくは構成要素のうちいずれか2つ以上からなる群から選択され得るということは理解されなくてはならない。さらに、本明細書に記載された組成物、装置または方法の要素および/または特徴は、明確であろうが、暗黙的であろうが、本教示の範囲および開示内容から逸脱することなく種々の方法で組み合わされ得るということは理解されなくてはならない。
本明細書における単数形の使用は、具体的に別に記載されない限り、複数形を含む(逆もまた同様)。さらに、用語「約」の使用が、定量的値の前である場合には、本教示はまた、具体的に別に記載されない限り、特定の定量的値自体も含む。本明細書において、用語「約」とは、名目上の値からの+−10%の変動を指す。
本明細書において、「電子−輸送半導体」とは、多数電流キャリアとして電子を使用する半導体材料を指す。好ましくは、電子−輸送半導体は、電流キャリアとして、効果的にもっぱら電子を使用する(すなわち、材料の正孔移動性に対する電子移動性の比率が、少なくとも10である)。電子−輸送半導体材料が基板上に蒸着される場合には、約10−6cm/Vsを超える電子移動性を提供し得る。電界効果デバイスの場合には、電子−輸送半導体はまた、約10−6cm/Vsを超える電界効果電子移動性および/または約10もしくは10もしくは10もしくは10を超える電流オン/オフ比を示し得る。しかし、OFETSから測定された電界効果電子および正孔移動性、電流オン/オフ比などの実験によって測定された値は、このようなOFET中のその他の構成要素の同一性および物理的配置に応じて大幅に変わり得るということは理解されなければならない。
本明細書において、「溶液処理可能な」とは、スピンコーティング、印刷(例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、リソグラフ印刷など)、スプレーコーティング、エレクトロスプレーコーティング、ドロップ鋳造、ディップコーティングおよびブレードコーティングを含めた種々の溶液相プロセスにおいて使用できる化合物、オリゴマー(例えば、ビス多環式化合物)、ポリマー材料または組成物を指す。
本明細書において、「ヘテロアリール」とは、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)およびセレン(Se)から選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を含有する芳香族単環式環系または環系中に存在する環のうち少なくとも1つが芳香族であり、少なくとも1つの環ヘテロ原子を含有する多環式環系を指す。ヘテロアリール基は、全体として、例えば、5から16個の環原子を有し、1〜5個の環ヘテロ原子(すなわち、5〜16員のヘテロアリール基)を含有し得る。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、1個または複数の末端R基で置換され得、Rは、本明細書において定義されるとおりである。本明細書に記載された置換および非置換ヘテロアリール基の両方とも、R置換基を含む1〜30個または1〜20個の間の炭素原子を含み得る。
n−ドーパントとしてビス−金属サンドイッチ化合物を使用するN−ドープされた半導体の調製プロセス
本明細書に開示された種々の発明および/またはそれらの多数の実施形態は、いくつかの実施形態では、有機半導体組成物または有機半導体化合物のn−ドーピングおよび/またはその電流搬送能の増大のためのプロセスに関し、
a)互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環を含む有機半導体組成物または有機半導体化合物を得るか、または提供するステップと、
b)2つの連結している金属サンドイッチのグループを含むビス−金属サンドイッチ化合物を得るか、または提供するステップであって、
i)各金属サンドイッチグループは、少なくとも1つの置換されていてもよいベンゼンまたはシクロペンタジエニル環を含む、2つのアリールまたはヘテロアリール環と結合している、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウムおよびイリジウムから独立に選択される遷移金属原子を含み、
ii)各金属サンドイッチグループに由来する一方のベンゼンまたはシクロペンタジエニル環は、炭素−炭素結合によって、他方の金属サンドイッチのグループに由来するベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と結合している
ステップと、
c)有機半導体組成物または有機半導体化合物を、少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物と接触させるステップと
を含む。
このようなn−ドープされた有機半導体組成物または有機半導体化合物を作製するプロセスは、2つの連結している金属サンドイッチのグループを含むビス−金属サンドイッチ化合物の、n−ドーパント材料としてのその使用のために新規であり、自明ではなく、これによって、先行技術のものよりも好都合であり実用的であり得る処理条件下で、先行技術においてはこれまでは利用可能ではない、新規のn−ドープされた半導体組成物の調製が可能になる。
2つの連結している金属サンドイッチのグループの各々は、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウムおよびイリジウムから独立に選択される遷移金属原子を含み、ここで、2つの金属原子は、独立に選択され得、各遷移金属は、独立に選択され、置換されていてもよいベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と結合しており、その結果、本発明のプロセスにおいて非対称のビス−金属サンドイッチ化合物が使用され得る。いくつかの実施形態では、ビス−金属サンドイッチ化合物の遷移金属原子は、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウムおよびイリジウムまたはそれらの混合物から独立に選択される。その他の実施形態では、ビス−金属サンドイッチ化合物の遷移金属原子は、ルテニウム、オスミウム、ロジウムおよびイリジウムまたはそれらの混合物から独立に選択される。
ベンゼンおよびシクロペンタジエニル環の、任意選択で、独立に選択される1個または複数の置換基として、ベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と単結合しているか、または縮合している、ハロ、シアノ、C〜C12アルキル、トリフルオロアルキル、アルコキシ、ペルフルオロアルコキシ、シクロアルキル、複素環またはアリールもしくはヘテロアリール基を挙げることができる。好ましくは、ベンゼンおよびシクロペンタジエニル環の、任意選択で、独立に選択される1個または複数の置換基として、シアノ、アルキル、アルコキシまたはアリール基を挙げることができる。
本明細書に記載されたプロセスの多数の実施形態では、ビス−金属サンドイッチ化合物の2つの遷移金属は、結合している置換されていてもよいベンゼンまたはシクロペンタジエニル環がそうであるように同一であり、ビス−金属サンドイッチ「二量体」を形成する。多数の実施形態では、ビス金属サンドイッチ化合物は、以下の一般構造の1つを有する:
[式中、
a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
d)各Rcp、RbzおよびRは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、
e)xは、1〜5の整数であり、
f)x’は、1〜4の整数であり、
g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
h)y’は、1〜6の整数である]。
多数の実施形態では、Rcp、RbzおよびRは、水素、メチル、エチルおよびフェニル基から独立に選択される。
適したレニウムビス−金属サンドイッチ化合物の限定されない例として、以下が挙げられる
適した鉄ビス−金属サンドイッチ化合物の限定されない例として、以下が挙げられる
適したロジウムビス−金属サンドイッチ化合物の限定されない例として、以下が挙げられる
適したイリジウムビス−金属サンドイッチ化合物の限定されない例として、以下が挙げられる
適したルテニウムビス−金属サンドイッチ化合物の限定されない例として、以下が挙げられる
各ビス−金属サンドイッチ化合物では、各金属サンドイッチグループに由来する1つのベンゼンまたはシクロペンタジエニル環が、その他の金属サンドイッチのグループに由来するベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と炭素−炭素結合によって結合している。炭素−炭素結合によって連結されたこのようなビス−金属サンドイッチ化合物は、対応する周知の、安定な18電子金属サンドイッチカチオン(例えば、ロドセニウムカチオンなど)の電子供給源を用いる化学的または電気化学的還元によって調製され得ることが多い。理論に拘束されようとは思わないが、このような還元反応は、反応性中間体として、還元された、電気的に中性である、高度に反応性の19電子単量体ラジカルをもたらすと思われる。19電子金属サンドイッチラジカルは、次いで、「二量体化して」別のこのような19電子ラジカルの環と炭素−炭素結合を形成し、2つの金属サンドイッチのグループのベンゼンまたはシクロペンタジエニル基の間に炭素−炭素単結合を有するビス−金属サンドイッチ化合物を形成すると考えられる。したがって、ビス−金属サンドイッチ化合物は、金属サンドイッチのグループ間の新規炭素−炭素結合の形成および各金属中心での18電子立体配置の達成の結果として、対応する19電子中性金属サンドイッチのグループよりも空気および水にさらにより安定である傾向がある。しかし、驚くべきことに、このようなビス−金属サンドイッチ化合物は、非常に重大な、高度に予想外の、有機半導体組成物または有機半導体化合物を還元および/またはn−ドーピングする力を依然として保持する。
還元剤として働くためのビス−金属サンドイッチ化合物のこの予想外の還元力の一部は、おそらくは、少なくとも間接的には、それらの金属サンドイッチカチオン前駆体の比較的高還元性の還元電位に由来するか、またはそれと関連している。多数の実施形態では、本発明の方法によって製造されたか、または本発明の組成物中に存在する1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンは、フェロセニウム/フェロセン対の溶液半波電位に対して、等しいか、または約−1.5、約−1.75、−2.0もしくは−2.35ボルトより陰極である溶液半波還元電位を有すると、乾燥THF中の0.1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートからなり、内部標準としてフェロセンを含有する電解質中のヘキサフルオロホスフェート塩の溶液でのサイクリックボルタメトリーによって測定される。比較すると、US2007/029,941では、コバルトセン/コバルトセニウム対の還元電位は、−1.33ボルトだけであると報告され、Fe(CMe)CMe/Fe(CMe)CMe)の報告された最高半波電位は、−2.30ボルトであった。以下の実施例5において報告されるように、特定のイリジウムおよびルテニウムカチオンの還元電位は、−2.6ボルトよりも大きく、これが、少なくともそれらのビス−金属サンドイッチ二量体に、先行技術の単量体金属サンドイッチ化合物を用いた場合には還元され得なかった有機半導体化合物をn−ドーピングする熱力学的能力を添えると考えられる。
しかし、ビス−金属サンドイッチ化合物のベンゼンまたはシクロペンタジエニル基の間の単結合は、おそらくは、金属サンドイッチのグループの遷移金属原子上にd軌道を有する環基上の炭素の相互作用のために、通常の炭素−炭素単結合を含むほとんどの化合物と比較して並外れて化学的に、および/または電気化学的に反応性である。本発明のプロセスは、2つの金属サンドイッチのグループの環を連結する炭素−炭素単結合の並外れた反応性を利用する。
本発明のプロセスの多数の実施形態では、適した有機半導体組成物または有機半導体化合物と接触した際か、またはそれに続いて、溶液中か、または固体状態のいずれかで、2つの金属サンドイッチのグループの環を連結する炭素−炭素結合が破壊され、2つの単量体金属サンドイッチカチオンが形成される。理論に拘束されようとは思わないが、酸化還元および/または電子伝達プロセスが関与している可能性があり、ここで、ビス−金属サンドイッチ化合物および/または金属サンドイッチのグループを連結する炭素−炭素単結合は、酸化されて、安定な18電子単量体金属サンドイッチカチオンおよび/または19電子単量体金属サンドイッチラジカルを形成し、放出する。理論に拘束されようとは思わないが、おそらく、2つの電子がビス−金属サンドイッチ化合物からか、またはおそらくは、ビス−金属サンドイッチ化合物と平衡状態で存在し得る少量の19電子単量体金属サンドイッチラジカルから除去されて、有機半導体組成物または半導体化合物を少なくとも部分的に還元し、それによって、それらを少なくとも部分的に「n−ドーピングする」。したがって、本明細書に記載された本発明の多数の実施形態では、そのプロセスによって製造されたn−ドープされた有機半導体組成物または有機半導体化合物は、有機半導体組成物または有機半導体化合物の少なくともいくつかのアニオンを含む。本明細書に記載された発明の多数の実施形態では、そのプロセスによって製造されたn−ドープされた有機半導体組成物または有機半導体化合物は、少なくともいくつかの金属サンドイッチカチオンを含む。
本明細書に記載された発明の多数の実施形態では、本発明のプロセスによって製造され、n−ドープされた組成物中に存在し得る金属サンドイッチカチオンは、以下の構造を有する
[式中、
a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
d)各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキル基もしくはC〜C12フェニル基から個々に選択され、
e)xは、1〜5の整数であり、
f)x’は、1〜5の整数であり、
g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
h)y’は、1〜6の整数である]。
本明細書に記載されたプロセスまたは組成物の多数の実施形態では、1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンは、以下の構造を有し得る
[式中、各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、xおよびx’は、1〜5の整数であり、yおよびy”は、1〜5の整数である]。多数の実施形態では、RcpおよびRbzは、水素、メチル、エチルおよびフェニルから個々に選択される。
本発明のプロセスでは、有機半導体組成物または有機半導体化合物は、気相、溶液中または固体状態のいずれかにおいて、少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物と接触され得る。
いくつかの実施形態では、得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物および/またはビス−金属サンドイッチ化合物は、電気デバイスの基板、電極またはその他の前駆体の表面上に、高真空で実施されることが多い気相プロセスによって個々に蒸着されるか、または同時蒸着されて、少なくともいくつかの有機半導体組成物または有機半導体化合物および少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物もしくは金属サンドイッチカチオンまたはそれらの混合物を含む表面上の固層を形成する。表面上の蒸着または同時蒸着の面積は、以下の実施例8および9に示されるようなシャドウマスクまたは当業者に周知のその他の方法もしくは装置の使用によって容易に制御され得る。実施例8および9に示されるように、有機半導体組成物または有機半導体化合物のn−ドーピング、還元(すなわち、「n−ドーピング」)は、表面上に蒸着された固層において観察されることが多いが、いくつかの場合には、ビス−金属サンドイッチ化合物による固体有機半導体組成物または有機半導体化合物の実際の還元を誘導するために、さらなる活性化(熱的、電気的、光化学的、超音波処理、マイクロ波加熱など)が必要とされる場合があり、これは、金属サンドイッチカチオンの形成を伴う。
本発明のプロセスのいくつかの実施形態では、有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物またはそれらの混合物は、ステップcの間に、液体溶媒中に分散または溶解されて、液体溶液または分散物を形成し、これが、電気デバイスの基板、電極および/または前駆体の表面上に適用され得、次いで、通常減圧下で溶媒が除去されて、少なくともいくつかの有機半導体組成物または有機半導体化合物を含む表面上の固層を形成する。ビス−金属サンドイッチ化合物は、溶液中の有機半導体組成物または有機半導体化合物と接触され得(実施例6、9、10および11に例示されるように)、その結果、溶液中で、ビス金属サンドイッチ溶液による有機半導体組成物または有機半導体化合物の還元が起こり、続いて、表面に適用されるか(「溶液ドーピング」)、または有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物の溶液が表面に適用されて、固体フィルムを形成し得、次いで、固体フィルムが、任意の適した手段によって適用されるビス金属サンドイッチ二量体と接触され得る。
固体有機半導体組成物または有機半導体化合物のn−ドーピングの成功は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、成功裏に電子を供給して、固体有機半導体組成物または有機半導体化合物の固体状態構造における深いトラップを充填するならば、ビス−金属サンドイッチ化合物が、固体有機半導体組成物または有機半導体化合物の個々の分子を実際に還元しない場合であっても起こり得るということも理解されなければならない。
有機半導体組成物または有機半導体化合物の望ましい程度の還元は、特に、有機半導体組成物または有機半導体化合物が、個々の有機半導体分子のモノアニオン、ジアニオンなどを形成するよう十分に還元されるか、さらには多重に還元される可能性があり得る溶液プロセスにおいては、広い範囲にわたって変わる可能性があり得るということは理解されなければならない。しかし、n−ドープされた固体半導体の形成が望まれるプロセスの多数の実施形態では、ドーピングは比較的小さい程度にしか実施されず、その結果、バルク固体有機半導体組成物または有機半導体化合物は、部分的にしか還元および/またはn−ドープされない。多数の実施形態では、プロセスにおいて使用されるビス−金属サンドイッチ化合物は、使用される有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物の約0.001重量%から約30重量%または約0.1から約10重量%または約0.5から約5重量%を構成する。
n−ドーピングプロセスが行われた後、ビス−金属サンドイッチ化合物は、それがn−ドーピングプロセスの間に金属サンドイッチカチオンに変換されているので、もはや存在しない場合がある。したがって、多数の実施形態では、金属サンドイッチカチオンは、本発明のプロセスによって製造された有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物の約0.001重量%から約30重量%または約0.1から約10重量%または約0.5から約5重量%を構成する。
さまざまなn−ドーピング可能である可能性がある有機半導体組成物および/または有機半導体化合物が、当技術分野で公知であり、および/または本発明のプロセスにおいて使用可能である。適した有機半導体化合物は、通常、n−ドーパント分子に由来する高エネルギーHOMOから電子が伝達され得るよう、有機半導体化合物の最低空軌道(「LUMO」)が、十分に低いエネルギーにある(通常、約2.0〜5.0eVの間の電子親和性を有する)よう、π−軌道および/または十分に共役している結合の組合せを含む。
このような大きな電子親和性を達成するために、ほとんどの有機半導体化合物は、通常、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環を含み、これらは、適切に高い電子親和性をもたらすのに必要な高い程度の電子共役を可能にするいずれかの様式で互いに結合され得る。有機半導体化合物中に存在し得るアリール環の例として、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニルおよびペンタセニル環、フラーレンもしくはフラーレン誘導体またはこのようなアリール化合物もしくはその他のものもしくはヘテロアリール化合物から形成されたこのような環化合物もしくは縮合化合物の混合物がある。いくつかの実施形態では、有機半導体化合物または組成物は、フラーレンまたはフラーレン誘導体を含まない。
有機半導体化合物中に存在し得るヘテロアリール環の例として、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、フェナントロリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル、フタロシアニン、ペリレンジイミド、またはナプタレンジイミド(napthalenediimide)環がある。
このようなアリールおよびヘテロアリール環の共役した組合せを含む2、3の特定の例の有機半導体化合物は、以下の実施例に引用されており、より多くの例は、電荷輸送有機半導体化合物の実施例に関するその開示内容について、参照により本明細書に組み込まれるShirotaら、Chem Rev. 2007年、107、953〜1010頁によって開示された。
好ましい実施形態では、プロセスにおいて使用するために得られるか、または提供される有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物およびn−ドープされた組成物は、それらがn−ドープされる前は、少なくとも1×10−6または少なくとも1×10−5または少なくとも1×10−4cm/Vsecの移動性で電子を伝導できると、ボトムゲート、ボトムコンタクト配置を有し、ゲート材料としてドープされたケイ素、ゲート誘電体として二酸化ケイ素を使用し、金供給源ならびに400〜800μmのチャネル幅および20〜40μmの長さでクロム接着層を有するドレイン電極を使用し、活性半導体として有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物を使用する薄膜トランジスタから測定される。
先行技術において「p型」半導体として単に認識されていた可能性がある有機半導体化合物が、それにもかかわらず、エネルギー的に利用可能なLUMOを有し得、したがって、少なくとも本発明の目的のためにn−ドープ可能な化合物として実際に機能できる可能性があるということも認識されなければならない。したがって、本明細書に記載されたプロセスおよび組成物のいくつかの実施形態では、得られるか、または提供される有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物は、(n−ドーピングに先立って)少なくとも1×10−6cm/Vsecの移動性で正孔を伝導できると、ボトムゲート、ボトムコンタクト配置を有し、ゲート材料としてドープされたケイ素、ゲート誘電体として二酸化ケイ素を使用し、金供給源ならびに400〜800μmのチャネル幅および20〜40μmの長さのクロム接着層を有するドレイン電極を使用し、活性半導体として有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物を使用する薄膜トランジスタから測定される。
本明細書に記載されたn−ドーピングプロセスに続いて、n−ドープされた有機半導体組成物または有機半導体化合物から形成された固層は、好ましくは、ビス−金属サンドイッチ化合物と接触させずに形成された同一の有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物またはそれらの混合物から調製された比較層のものよりも少なくとも約5倍、10倍、50倍、10、10、10、10または10倍高い電流密度で電流を搬送できると、固層が、約100から約200nmの間の間隔で2つの金電極の間に配置され、電極にcmあたり約10ボルトの電場がかけられ、電流密度が、cmあたりのミリアンペアで測定されるデバイスで測定される。
本明細書に記載された発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されたプロセスによって製造されたn−ドープされた有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物に関するか、またはこのようなn−ドープされた有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物を含む電子デバイスに関する。このような電子デバイスとして、有機電界効果トランジスタ(「OFET」)、有機光起電力デバイス(「OPV」)および有機発光ダイオード(OLED)を挙げることができる。
ビス−金属サンドイッチ化合物および有機半導体化合物を含む組成物
実施例6からわかるように、ビス−金属サンドイッチ化合物および有機半導体組成物または有機半導体化合物のn−ドーピング反応は、ビス−金属サンドイッチ化合物および有機半導体組成物または有機半導体化合物の構造ならびに反応の条件に応じて種々の速度で進行するが、n−ドーピング反応は、通常、ビス−金属サンドイッチ化合物および有機半導体組成物または有機半導体化合物の両方を含む中間体組成物が、n−ドーピング反応が開始または終了する前に、単離または利用され得ないことがあるほど迅速には起こらない。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載された発明は、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環および以下の構造:
[式中、
(i)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
(j)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
(k)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
(l)各Rcp、RbzおよびRは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、
(m)xは、1〜5の整数であり、
(n)x’は、1〜4の整数であり、
(o)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
(p)y’は、1〜6の整数である]
のうち1つを有するビス−金属サンドイッチ化合物の少なくともいくつかを含む、少なくとも1つの有機半導体化合物を含む有機半導体組成物に関する。
このような中間体有機半導体組成物は、電子デバイスまたはn−ドープされた有機半導体組成物を作製するために、固体、液体、溶液または液体分散物の形態で作製または使用され得る。このような中間体有機半導体組成物は、上記または下記に記載されるビス−金属サンドイッチ化合物および/または有機半導体組成物または有機半導体化合物のいずれの属または種も含み得る。
金属サンドイッチ化合物および有機半導体化合物を含むn−ドープされた半導体組成物
上記で開示された新規プロセスにおいて使用されるビス−金属サンドイッチ化合物の適度な空気および/または水安定性ならびにさらに、公知の同様の強力なn−ドーパント化合物(先行技術において知られている単量体鉄またはコバルト19電子金属サンドイッチドーパントなど)と比較して、還元剤および/またはn−ドーパントとしての予想外の力のために、出願人のプロセスを使用して、先行技術のドーパントを用いた場合に効率的にn−ドープされ得ない有機半導体組成物または化合物を含めた、先行技術のドーパントを使用しても全く調製され得ない新規のn−ドープされた半導体組成物を調製できる。さらに、先行技術の単量体鉄またはコバルト19電子金属サンドイッチドーパントと比較したビス−金属サンドイッチドーパントの相対的空気および水安定性のために、n−ドープされた有機半導体組成物および/または化合物は、比較的安価な溶液処理条件を含めた、あまり厳格でない、高価でない条件下で調製され得る、および/または取り扱われ得る。
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示された発明は、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環および以下の構造
[式中、
a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
d)各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、
e)xは、1〜5の整数であり、
f)x’は、1〜5の整数であり、
g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
h)y’は、1〜6の整数である]
を有する1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンのうち少なくともいくつかを含む、少なくとも1つの有機半導体化合物を含むn−ドープされた有機半導体組成物に関する。
上記のn−ドープされた有機半導体組成物は、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環を含む少なくとも1つの有機半導体化合物を含む。存在する有機半導体化合物は、組成物中に存在する有機半導体化合物の少なくともいくつかが、n−ドープされた形態において、アニオン電荷を生じる電子が、有機半導体化合物分子のLUMO間または固体状態構造の欠陥中の深いトラップ間を移動できるようアニオンラジカル形態に還元されている点を除いて、上記のプロセスにおいて記載された化合物のいずれでもあり得る。いくつかの実施形態では、有機半導体化合物は、炭素の同素体、フラーレンまたはフラーレン誘導体を含まない。
好ましくは、n−ドープされた組成物は、n−ドーピングを用いずに同一の有機半導体組成物または有機半導体化合物から調製された比較組成物のものよりも少なくとも約5倍、10倍、50倍、10、10、10、10または10倍高い電流密度で電流を搬送できる。
本明細書に記載されたプロセスまたは組成物の多数の実施形態では、1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンは、以下の構造を有し得る
[式中、各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、xおよびx’は、1〜5の整数であり、yおよびy”は、1〜5の整数である]。多数の実施形態では、RcpおよびRbzは、水素、メチル、エチルおよびフェニルから個々に選択される。
多数の実施形態では、金属サンドイッチカチオンは、n−ドープされた組成物中に存在する有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物の約0.001重量%から約30重量%または約0.1から約10重量%または約0.5から約5重量%を構成する。
優先権仮実施形態
2011年6月14日に出願された優先権米国仮出願番号第61/496,667号は、48の請求項を含み、これらは以下の48の実施形態において本明細書において以下に組み込まれる。
第1の実施形態(「実施形態1」)は、有機半導体組成物または有機半導体化合物のn−ドーピングおよび/またはその電流搬送能の増大のためのプロセスを提供し、これは、
a)互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環を含む有機半導体組成物または有機半導体化合物を得るか、または提供するステップと、
b)2つの連結している金属サンドイッチのグループを含むビス−金属サンドイッチ化合物を得るか、または提供するステップであって、
i)各金属サンドイッチグループは、少なくとも1つの置換されていてもよいベンゼンまたはシクロペンタジエニル環を含む、2つのアリールまたはヘテロアリール環と結合している、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウムおよびイリジウムから独立に選択される遷移金属原子を含み、
ii)各金属サンドイッチグループに由来する一方のベンゼンまたはシクロペンタジエニル環は、炭素−炭素結合によって、他方の金属サンドイッチのグループに由来するベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と結合している
ステップと、
c)有機半導体組成物または有機半導体化合物を、少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物と接触させるステップと
を含む。
第2の実施形態は、2つの金属サンドイッチのグループの環を連結する炭素−炭素結合が破壊され、2つの単量体金属サンドイッチカチオンが形成される、実施形態1のプロセスを提供する。
第3の実施形態は、金属サンドイッチカチオンの形成が、有機半導体組成物または半導体化合物の少なくとも部分的な還元を伴う、実施形態2のプロセスを提供する。
第4の実施形態は、プロセスによって製造されたn−ドープされた有機半導体組成物または有機半導体化合物が、少なくともいくつかの金属サンドイッチカチオンを含む、実施形態2のプロセスを提供する。
第5の実施形態は、プロセスによって製造されたn−ドープされた有機半導体組成物または有機半導体化合物が、有機半導体組成物または有機半導体化合物の少なくともいくつかのアニオンを含む、実施形態2のプロセスを提供する。
第6の実施形態は、得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物およびビス−金属サンドイッチ化合物が、電気デバイスの基板、電極またはその他の前駆体の表面上に気相プロセスによって個別に蒸着されるか、または同時蒸着されて、少なくともいくつかの有機半導体組成物または有機半導体化合物および少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物もしくは金属サンドイッチカチオンまたはそれらの混合物を含む表面上の固層を形成する、実施形態1のプロセスを提供する。
第7の実施形態は、有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物またはそれらの混合物が、ステップcの間に液体溶媒中に分散または溶解されて、液体溶液または分散物を形成する、実施形態1のプロセスを提供する。
第8の実施形態は、液体溶液または分散物が、電気デバイスの基板、電極および/または前駆体の表面に適用され、溶媒が除去されて、少なくともいくつかの有機半導体組成物または有機半導体化合物を含む表面上の固層を形成する、実施形態7のプロセスを提供する。
第9の実施形態は、形成された固層が、ビス−金属サンドイッチ化合物と接触せずに形成された、比較有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物またはそれらの混合物から調製された比較層のものよりも少なくとも5倍高い電流密度で電流を搬送すると、固層が、約100から約200nmの間の間隔で2つの金電極の間に配置され、電極にcmあたり約10ボルトの電場がかけられ、電流密度が、cmあたりのミリアンペアで測定されるデバイスにおいて測定される、実施形態6または8のプロセスを提供する。
第10の実施形態は、プロセスにおいて使用されるビス−金属サンドイッチ化合物が、使用される有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物の約0.001重量%から約30重量%を構成する、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第11の実施形態は、金属サンドイッチカチオンが、製造された有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物の約0.001重量%から約30重量%を構成する、実施形態2〜5のいずれか1つのプロセスを提供する。
第12の実施形態は、炭素−炭素結合の破壊が、熱分解、光分解、超音波処理またはマイクロ波処理によって開始される、実施形態2〜5のいずれか1つのプロセスを提供する。
第13の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物の遷移金属原子が、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウムおよびイリジウムまたはそれらの混合物から独立に選択される、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第14の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
[式中、
a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
d)各Rcp、RbzおよびRは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、
e)xは、1〜5の整数であり、
f)x’は、1〜4の整数であり、
g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
h)y’は、1〜6の整数である]
のうち1つを有する、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第15の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
のうち1つを有する、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第16の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
のうち1つを有する、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第17の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
のうち1つを有する、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第18の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造
を有する、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第19の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造
を有する、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第20の実施形態は、金属サンドイッチカチオンが、以下の構造
[式中、
i)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
j)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
k)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
l)各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキル基もしくはC〜C12フェニル基から個々に選択され、
m)xは、1〜5の整数であり、
n)x’は、1〜5の整数であり、
o)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
p)y’は、1〜6の整数である]
を有する、実施形態2〜5のいずれか1つのプロセスを提供する。
第21の実施形態は、得られるか、または提供される有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物が、少なくとも1×10−6cm/Vsec(1×10−5、1×10−4)の移動性で電子を伝導できると、ボトムゲート、ボトムコンタクト配置を有し、ゲート材料としてドープされたケイ素、ゲート誘電体として二酸化ケイ素を使用し、金供給源ならびに400〜800μmのチャネル幅および20〜40μmの長さのクロム接着層を有するドレイン電極を使用し、活性半導体として有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物を使用する薄膜トランジスタから測定される、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第22の実施形態は、得られるか、または提供される有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物が、少なくとも1×10−6cm/Vsecの移動性で正孔を伝導できると、ボトムゲート、ボトムコンタクト配置を有し、ゲート材料としてドープされたケイ素、ゲート誘電体として二酸化ケイ素を使用し、金供給源ならびに400〜800μmのチャネル幅および20〜40μmの長さのクロム接着層を有するドレイン電極を使用し、活性半導体として有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物を使用する薄膜トランジスタから測定される、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第23の実施形態は、得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物のアリール環が、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニルおよびペンタセニル環、フラーレンもしくはフラーレン誘導体またはそれらの混合物から選択される、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第24の実施形態は、得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物のヘテロアリール環が、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、フェナントロリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル、フタロシアニン、ペリレンジイミド、またはナプタレンジイミド(napthalenediimide)環から選択される、実施形態1〜8のいずれか1つのプロセスを提供する。
第25の実施形態は、先行する実施形態1〜24のいずれかのプロセスによって製造された有機半導体組成物または有機半導体化合物を提供する。
第26の実施形態は、実施形態26の有機半導体組成物または有機半導体化合物を含む電子デバイスを提供する。
第27の実施形態は、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環および以下の構造:
[式中、
q)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
r)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
s)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
t)各Rcp、RbzおよびRは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、
u)xは、1〜5の整数であり、
v)x’は、1〜4の整数であり、
w)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
x)y’は、1〜6の整数である]
のうち1つを有するビス−金属サンドイッチ化合物の少なくともいくつかを含む、少なくとも1つの有機半導体化合物を含む有機半導体組成物を提供する。
第28の実施形態は、固体形態の、実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第29の実施形態は、液体、溶液または液体分散物の形態の、実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第30の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
のうち1つを有する、実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第31の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
のうち1つを有する実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第32の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
のうち1つを有する実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第33の実施形態は、ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:
のうち1つを有する実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第34の実施形態は、得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物のアリール環が、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニルおよびペンタセニル環、フラーレンもしくはフラーレン誘導体またはそれらの混合物から選択される、実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第35の実施形態は、得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物のヘテロアリール環が、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、フェナントロリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル、フタロシアニン、ペリレンジイミド、またはナプタレンジイミド(napthalenediimide)環から選択される、実施形態27の有機半導体組成物を提供する。
第36の実施形態は、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環および以下の構造
[式中、
y)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
z)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
aa)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
bb)各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC〜C12アルキルもしくはC〜C12フェニルから個々に選択され、
cc)xは、1〜5の整数であり、
dd)x’は、1〜5の整数であり、
ee)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
ff)y’は、1〜6の整数である]
を有する1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンのうち少なくともいくつかを含む、少なくとも1つの有機半導体化合物を含むn−ドープされた固体有機半導体組成物を提供する。
第37の実施形態は、1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンが、以下の構造
[式中、各RcpおよびRbzは、個々に選択される]
を有する、実施形態36の有機半導体組成物を提供する。
第38の実施形態は、1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンが、以下の構造
[式中、各RcpおよびRbzは、個々に選択される]
を有する、実施形態36の有機半導体組成物を提供する。
第39の実施形態は、1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンが、以下の構造
[式中、各RcpおよびRbzは、個々に選択される]
を有する、実施形態36の有機半導体組成物を提供する。
第40の実施形態は、1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンが、以下の構造
[式中、各RcpおよびRbzは、個々に選択される]
を有する、実施形態36の有機半導体組成物を提供する。
第41の実施形態は、少なくとも1つの有機半導体化合物の少なくともいくつかのアニオンが組成物中に存在する、実施形態36の有機半導体組成物を提供する。
第42の実施形態は、各RcpおよびRbzが、水素、メチル、エチルまたはフェニルから個々に選択される、実施形態36〜41のいずれか1つの有機半導体組成物を提供する。
第43の実施形態は、1つまたは複数の金属サンドイッチカチオンが、フェロセニウム/フェロセン対の溶液半波電位に対して、等しいか、または−1.5Vより陰極である溶液半波還元電位を有すると、乾燥THF中の0.1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートからなり、内部標準としてフェロセンを含有する電解質中のヘキサフルオロホスフェート塩の溶液でのサイクリックボルタメトリーによって測定される、実施形態36〜41のいずれか1つの有機半導体組成物を提供する。
第44の実施形態は、組成物から形成された固層が、ビス−金属サンドイッチ化合物と接触せずに調製された有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物またはそれらの混合物から調製された比較層のものよりも少なくとも5倍高い電流密度で電流を搬送し、電流密度が、固層が、ケイ素/酸化ケイ素基板上に、約100から約200nmの間の間隔で2つの金電極の間に配置され、電極にcmあたり約10ボルトの電場がかけられるデバイスから測定される、実施形態36〜41のいずれか1つの有機半導体組成物を提供する。
第45の実施形態は、有機半導体組成物または有機半導体化合物が、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ペンタセニル環またはそれらの混合物から選択される1つまたは複数のアリール環を含む、実施形態36〜41のいずれか1つの有機半導体組成物を提供する。
第46の実施形態は、有機半導体化合物が、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトビアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフイル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル、フタロシアニン、ジケトピロロピロール、ペリレンジイミド、またはナプタレンジイミド(napthalenediimide)環から選択される1つまたは複数のヘテロアリール環を含む、実施形態36〜41のいずれか1つの有機半導体組成物を提供する。
第47の実施形態は、実施形態36〜46のいずれか1つの有機半導体組成物を含む電子デバイスを提供する。
第48の実施形態は、有機発光ダイオード、有機光起電力デバイスまたはトランジスタである実施形態47の電子デバイスを提供する。これは、48の実施形態を結論づける。
上記の種々の発明は、以下の特定の実施例によってさらに示されるが、これらは、本発明の開示内容または本明細書に添付される特許請求の範囲に制約を課すと解釈されるように決して意図されるものではない。反対に、本明細書における記載を読んだ後には、本発明の趣旨または添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、それ自体を当業者に示唆し得る、種々のその他の実施形態、改変およびその等価物が頼られ得るということは明確に理解されなければならない。
「ロドセン二量体」の合成
パートA)ロドセニウムPF:[(η−C)Rh[(η−C)][PF]の合成
ロドセニウムカチオンのPF塩を、先に記載されたとおりに調製した(Netoら、Synth. React. Inorg. Met. -Org. Chem.、1997年、27、1299〜1314頁を参照のこと))。
パートB)[(η−C)Rh(μ−η−C:η−C)Rh(η−C)](ロドセン二量体)の合成
新たに調製した1%Na−Hg(3.5gm、15.8mmol)に、乾燥THF(20mL)中の[Rh(η−C]PF(300mg、0.79mmol)を窒素下で添加した。2時間室温で撹拌した後、溶液を除去し、真空下で揮発性物質を除去し、黒褐色の固体を乾燥トルエンに抽出した。トルエン溶液をデカントし、セライトを通して濾過した。溶液を減圧下で乾燥させると、黄色の固体が単離され、これを、脱気したペンタン(2×3mL)でさらに洗浄し、次いで、真空下で乾燥させると、300mg(54%)の[(η−C)Rh(μ−η−C:η−C)Rh(η−C)]が黄色の固体として得られた。固体状態の生成物は、空気および水分に対して適度に安定であり、空気中で、あまり分解することなく、少なくとも数日間保存され得る。
1H NMR(400MHz, ベンゼン-d6): δ 5.09(d, JH-Rh=0.8Hz, 5H), 4.90(m, 2H), 3.26(s, 2H), 2.19 ppm(s, 1H). 1H NMR(400MHz, クロロベンゼン-d5) δ 5.21(d, JH-Rh=0.7Hz, 5H), 5.07(m, 2H), 3.37(s, 2H), 2.23 ppm(s, 1H). 13C NMR(100MHz, クロロベンゼン-d5) δ 82.2(d, JC-Rh=6.0Hz, Cp), 73.8(d, JC-Rh=9.1Hz, β-C), 67.5(d, JC-Rh=4.0Hz, i-C), 44.4 ppm(d, JC-Rh=12.1Hz, α-C)
[(CMe)Fe(C)]二量体の合成
上記で示された合成は、先に記載されたとおりに従った(Hamonら、J. Am. Chem. Soc.、1981年、103、758〜766頁を参照のこと)。
[(η−CMe)Ru(メシチレン)]および[(η−CMe)Ru(1,3,5−トリエチルベンゼン)]二量体の合成
パートA−[(η−CMe)Ru(NCMe)]PFの合成
この調製は、Steinmetzら、Organometallics、1999年、18、943頁の手順によって実施した。
4.5g(33.2mmol)ペンタメチルシクロペンタジエンおよび35mLのエタノールの十分にN脱気した溶液に、5.8g(22.18mmol)のRuCl・xHOを添加した。4時間還流した後、溶液を濾過すると、赤褐色の固体が得られた。固体を、少量のエタノール(3×7mL)で、次いで、ジエチルエーテルで洗浄し、次いで、真空下で乾燥させると、5.52g(81%)の赤褐色の固体[(η−CMe)RuClが得られた。化合物を、何らかのさらなる特性決定は行わずに使用した。
アセトニトリル(40mL)中の[(η−CMe)RuCl(5.52g、17.9mmol)の溶液に、亜鉛末(2.23g、34.2mmol)およびNaPF(3.92g、23.4mmol)を添加した。室温で、4時間撹拌した後、混合物をセライト上で濾過し、溶液を蒸発乾固させた。粗黄色残渣を、CHCl(30mL)を用いて抽出し、セライト上で濾過し、再度蒸発させた。黄色の固体、[(η−CMe)Ru(NCMe)]PFをジエチルエーテルを用いて洗浄し、真空下で乾燥させた。収率:7.2g(79.5%)。化合物を何らかのさらなる特性決定を行わずに使用した。
パートB−[(η−CMe)Ru(アレーン]PF塩の合成
さまざまに置換されたアレーンを有する[(η−CMe)Ru(アレーン]PF塩は、[(η−CMe)Ru(NCMe)]PFの、適宜置換されたアレーンとの反応によって、以下に示されるように作製され得る。
[(η−CMe)Ru(η−TEB)]PF(TEB=1,3,5−トリエチルベンゼン)、あるいは、[(Cp*)Ru(η−TEB)]PFと呼ばれるものの合成
ジクロロエタン(20mL)中の十分にN脱気した1,3,5−トリエチルベンゼン(5.0g、30.8mmol)に、新たに調製した[(η−CMe)Ru(NCMe)]PF(2.22g、4.4mmol)を添加した。混合物を24時間還流した。溶媒を蒸発させると、褐色の油性残渣が得られた。残渣をアセトンに溶解し、溶液を中性のアルミナカラムに通して、褐色の不純物を除去した。溶媒を蒸発させると、灰白色の固体が得られた。固体を、CHClおよびジエチルエーテルからの再結晶化によってさらに精製すると、灰白色の結晶性固体1.376g(収率58.3%)が得られた。[(η−CMe)Ru(η−TEB)]PF
1H NMR(400MHz, アセトン-d6): δ=5.89(s, 3H, Ar, TEB). 2.46(q, JH-H=7.6Hz, 6H, CH2, Et), 1.91(s, 15H, C5Me5), 1.25(t, JH-H=7.2Hz, 9H, CH3, Et). 13C NMR(100MHz, アセトン-d6, 297 K): δ=107.0(s, CTEB), 95.4(s, C5Me5), 87.6(s, CTEB), 26.7(s, CH2, TEB), 15.9(s, CH3, TEB), 10.1(s, C5Me5).
パートC−CpRu(ベンゼン)二量体の合成
これまでに知られている化合物[(η−CMe)Ru(μ−η:η−TMB−TMB)Ru(η−CMe)]、(式中、TMB=1,3,5−トリメチルベンゼン=メシチレン)を、これまでに記載されたとおりに調製した(Gusevら、J. Organomet. Chem.、1997年、534、57〜66頁を参照のこと)。
[(η−CMe)Ru(μ−η:η−TEB−TEB)Ru(η−CMe)]
あるいは、[(Cp*)Ru(TEB)]二量体と呼ばれるもの
[(Cp*)Ru(TEB)]二量体、新規化合物を、以下の手順によって調製した。乾燥THF(20mL)中の新たに調製した1%Na−Hg(15.3g、68.57mmol)に、[(η−CMe)Ru(η−TEB)]PF(0.931g(1.714mmol)に添加した。反応物を室温で2時間撹拌した。揮発性物質を真空下で除去し、粗固体を乾燥トルエンに抽出した。トルエン溶液をデカントし、セライト上で濾過した。溶媒を除去すると、淡黄色の固体が得られた。固体を冷ペンタン(1×3mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させると、得られた二量体が、淡黄色の結晶性固体(238mg、34%)として得られた。
1H NMR(400MHz, ベンゼン-d6): δ 3.47(s, 2H, CH, TEB), 2.18-2.08 [(m, 4H,(2H, o-CCH2),(2H, p-CCH2)), 1.76(s, 1H, i-CH), 1.67(s, 15H, C5Me5), 1.63-1.57(m, 2H, o-CCH2), 1.46(t, JH-H=7.2Hz, 3H, p-CCH3), 1.23 ppm(t, JH-H=7.2Hz, 6H, o-CCH3). 13C NMR(100MHz, ベンゼン-d6): δ 92.42(s, p-CTEB), 87.43(s, C5Me5), 79.64(s, m-CTEB), 48.49(s, o-CTEB), 48.36(s, i-CTEB), 28.36(s, p-CCH2), 28.02(s, o-CCH2), 17.41(s, p-CCH3), 12.91(s, o-CCH3), 10.78 ppm(s, C5Me5).
(M/2)のMALDI−MS理論値399.1、実測値399.1。C4466Ruの元素分析理論値(%):C66.29、H8.34;実測値:C66.17、H8.27。
溶液中の[(η−CMe)Ru(μ−η:η−TEB−TEB)Ru(η−CMe)]の空気安定性
[(η−CMe)Ru(μ−η:η−TEB−TEB)Ru(η−CMe)](2.0mg)の溶液を、NMRチューブ中で市販のC(0.7mL)を用いて空気中で調製し、キャップした。24時間後、H−NMRによると、[(η−CMe)Ru(μ−η:η−TEB−TEB)Ru(η−CMe)]二量体のおよそ90%が残存しており、およそ10%は、対応するカチオンであった。H−NMRでは、二量体およびカチオン間の芳香族プロトンの積分からパーセンテージ比が算出された。溶液の調製の合計72時間後、およそ70%の[(η−CMe)Ru(μ−η:η−TEB−TEB)Ru(η−CMe)]二量体が残存していた。
合計2.5mgの[(η−CMe)Ru(μ−η:η−TEB−TEB)Ru(η−CMe)]−二量体を、空気中で0.7mLの市販のTHF−dに溶解したが、NMRチューブにはキャップをしなかった。10時間後、上記のH−NMRは、二量体のおよそ90%が残存していたことを示した。72時間後、二量体のおよそ50%が残存していた。
[(CMe)Ir(C)]二量体の調製
[(CMe)Ir(C)]二量体は、以下に示される異性体の混合物として存在することが当技術分野で知られている(Gusevら、J. Orgmet Chem 1997年、531、95〜100頁を参照のこと)。
これらの混合された[(CMe)Ir(C)]二量体のサンプルを、これまでに記載されたように調製した(Gusevら、J. Organomet. Chem.、1997年、531、95〜100頁を参照のこと)。
ビス−金属サンドイッチ二量体およびそれらの単量体カチオン前駆体の電気化学的特性決定
その調製が実施例1〜4に記載されるビス−金属サンドイッチ二量体および前駆体単量体メタロセニウムヘキサフルオロホスフェート塩を、0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート支援電解質、ガラス状炭素作用電極、Ptワイヤ補助電極および偽参照電極として含水KClにおいて陽極酸化されたAgワイヤを有する、THFおよび/または塩化メチレン溶媒中でサイクリックボルタメトリーによって電気化学的に特性決定した。内部参照としてフェロセンを使用した。いくつかの金属サンドイッチ二量体の例示的サイクリックボルタモグラムが、図1a〜eに示されている。酸化スキャンにおいて見られた不可逆的ピークが、二量体の酸化に対応する一方で、還元スキャンにおいてより還元電位で見られる特徴は、カチオン/単量体対に対応し、0Vに集中される可逆特徴は、フェロセン標準によるものである。
THF中の、ビス−金属サンドイッチ二量体の測定された酸化電位および前駆体メタロセニウムカチオン塩の還元電位が、以下の表に示され、単量体コバルトセニウムまたはデカメチルコバルトセニウムヘキサフルオロホスフェート塩と比較されている。
この電気化学的データから、単量体ロドセニウムカチオンが、コバルトセニウムカチオンのものよりもかなり高く、デカメチルコバルトセニウムカチオンのものと同等である還元電位を有するということがわかる。しかし、鉄、イリジウムおよびルテニウムの金属サンドイッチカチオンはすべて、コバルトセニウムまたはデカメチルコバルトセニウムカチオンよりも大幅に陰性の還元電位を有し、このことは、二量体または単量体は、有機半導体の強力な還元剤であり得るということを示唆する。Rh、Fe、IrおよびRuビス−金属サンドイッチ二量体が酸化される電位はすべて、単量体のものまたはコバルトセン誘導体のものよりも大幅に陽性であり、このことは、空気および水安定性の可能性を示唆する。しかし、すべては、フェロセンに対して大幅に陰性の酸化電位を有する。
[Ru(Cp*)(TEB)]二量体を用いるTIPSペンタセンの溶液ドーピングの速度論
[Ru(Cp*)(TEB)]二量体(実施例4を参照のこと)を用いるTIPSペンタセンの溶液n−ドーピングの速度論の予備調査を実施した。TIPSペンタセンは、高効率のp型半導体として機能し得る溶液処理可能な結晶性固体として当技術分野で周知である。
しかし、以下に記載される固体TIPSペンタセンのUPS/IPES研究は、3.08eVの電子親和性を有するエネルギー的に利用可能なLUMOを有すると示唆し、これは、TIPSペンタセンが還元され得る、および/またはn−ドープされ得ることを示唆した。
予備溶液ドーピング実験では、それぞれ、TIPS−ペンタセン(2mg、3.1×10−3mmol)および[CpRu(TEB)]二量体(1.24mg、1.56×10−3mmol)の2:1モル比溶液を、窒素下、グローブボックス中で、乾燥THF−d(0.7mL)中で調製し、NMRチューブ中に入れ、窒素下でテフロン(登録商標)で密閉した。青色から緑色へ、即時の溶液の色変化があった。記録された(混合後、できる限り迅速に)H−NMRスペクトルによって、TIPS−ペンタセンピークの速い消失が示され、これは、中性のTIPS−ペンタセンのかなりの部分が、その常磁性TIPSペンタセンラジカルアニオンに迅速に(可視的な色の変化と同時に)変換したことを示唆した。このプロセスによって生じたCpRu(TEB)カチオンは、溶液中に残り、CpRu(TEB)カチオンのピークは、NMRで検出された。30分後、未反応のRu−二量体のおよそ30%が残った。93分後、Ru−二量体のおよそ24%が残った。サンプル混合の12時間後、未反応のRu−二量体の11%が残った。TIPS−ペンタセンに起因するピークは、おそらくTIPSペンタセンアニオンの、微量の酸化体(外来性の空気および水など)との副反応のためにゆっくりと戻り、その他の副生成物が最終的に観察された。
同様の予備溶液ドーピング実験を実施し、UV−Vis−NIR分光法によってモニタリングした。図2は、1)[CpRu(TEB)]二量体溶液、2)TIPS−ペンタセン溶液および3)2つの反応体が混合された60分後の、[CpRu(TEB)]およびTIPS−ペンタセンの混合物のクロロベンゼン溶液のオーバーレイUV−Vis−NIRスペクトルを示す。[CpRu(TEB)]二量体も、TIPS−ペンタセンも、700〜1600nmの範囲に吸収を示さない。混合物中のルテニウム二量体の初期濃度は、5.0×10−5Mとし、TIPS−ペンタセンの初期濃度は、1.0×10−4Mとした。しかし、混合物溶液は、750nm、1152nmおよび1381nmに、混合後最初の120分にかけて漸増する吸収ピークを示した。NIR範囲におけるこれらの新規吸収ピークは、クロロベンゼン中でのルテニウム二量体によるTIPS−ペンタセンの溶液n−ドーピング反応からの予想される直接生成物であるTIPS−ペンタセンアニオンの形成に起因する。
[CpRu(TEB)]二量体によるTIPSペンタセンの溶液ドーピングの速度論研究
クロロベンゼン溶媒中での[CpRu(TEB)]二量体によるTIPSペンタセンの溶液ドーピングの予備速度論研究を実施して、TIPSペンタセンおよび[CpRu(TEB)]二量体における速度則および反応順序の形を調べた。
1.45×10−3M TIPS−ペンタセン(Sigma−Aldrich St. Louis、MOから入手し、購入されたとおりに使用した)および4.31×10−5M[CpRu(TEB)](実施例4の手順によって調製した)のクロロベンゼン溶液を、窒素下で調製した。過剰のTIPSペンタセンを使用して、ルテニウム二量体の濃度に対する速度の依存を調べた。溶液を、UHV−PTFE栓10mm石英キュベット中に密閉し、次いで、グローブボックスから取り出し、UV−Vis−NIR吸収測定のためにVarian Cary 5E UV−vis−NIRスペクトロメーターに入れた。溶液のUV−Vis−NIR吸収スペクトルを、周囲温度で3.5時間超連続してとった。反応開始後3.4分、60.4分および210.4分にとられた3つのスペクトルが、図3aに示されており、反応進行を経時的に示す。
特に、[CpRu(TEB)]二量体の主な吸収ピークは、TIPS−ペンタセンがかなり高い吸光係数を有する330nmにある。したがって、UV−vis−NIR吸収測定によってルテニウム二量体の濃度変化をモニタリングすることは実現可能ではない。しかし、700〜1600nmの間で、混合物溶液において4つの新規ピークが円滑に増大する。これらの4つの新規ピークは、ドーピング産物、TIPS−ペンタセンモノアニオンに起因していた。750nmにあるそれらの中で最強のピークを使用して、ドーピング産物の形成を測定した。750nmの吸収の経時的変化が、図3bにプロットされている。750nmでの吸収を、一次反応フィッティング曲線にフィッティングした:
図3bに示されたフィットが良好であることは、n−ドーピング反応が、ルテニウム二量体、[CpRu(TEB)]において一次であったことを示す。
4.38×10−5M TIPS−ペンタセンおよび8.37×10−4M[Ru(Cp*)(TEB)]の同様の混合物溶液を、窒素下で調製した。この反応では、過剰の[Ru(Cp*)(TEB)]の存在下で、TIPS−ペンタセンが律速試薬である。TIPS−ペンタセンは、[CpRu(TEB)]二量体が全く吸収を有さない646nmにその最強の吸収ピークを有する。したがって、反応プロセスの間同時に、750nmでのその吸収によって、TIPS−ペンタセンの消失およびTIPS−ペンタセンアニオンの対応する形成をモニタリングするのに極めて好都合であった。UV−Vis−NIR吸収スペクトルを、3.5時間超の間、連続記録した。反応開始後2.5分、29.5分および219.5分にとられた3つのスペクトルが、図4aに示されている。750nmのピークは増大し、646nm吸収は時間とともに低下し続ける。最終的に220分あたりで、646nmピークは消失し、750nmは増大を停止する。このことは、TIPS−ペンタセンが、n−ドープされて、TIPS−ペンタセンアニオンを形成したことを示す。646nmおよび750nmから得られた動的データは、ほとんど同一の結果をもたらすが、TIPSペンタセンモノアニオンの出現についての750nmのデータだけは、図4bに示されている。750nmでの吸収の増大を、一次反応曲線にフィッティングした:
図4bに示されたフィットが良好であることは、TIPSペンタセンおよび[Ru(Cp*)(TEB)]間の反応の律速段階が、TIPS−ペンタセンにおいて一次であることを示す。
したがって、クロロベンゼン溶液中での[CpRu(TEB)]二量体によるTIPSペンタセンのn−ドーピングの速度則全体は:
反応速度=k・[TIPS−ペンタセン]・[ルテニウム二量体]
(式中、k=11.7分−1−1
として表され得る。
理論に拘束されようとは思わないが、このような速度則は、[CpRu(TEB)]二量体が、TIPSペンタセンを還元する電子伝達機序を含む反応の律速段階と一致する。
クロロベンゼン中でのロドセン二量体によるTIPSペンタセンの溶液ドーピングの速度論の同様の研究を試みた。上記のものと同様の手順によって、1.18×10−3Mロドセン二量体および3.90×10−4M TIPS−ペンタセンの溶液混合物を調製し、UV−Vis−NIRスペクトルによって室温でモニタリングした。これらの条件下では、TIPS−ペンタセンが律速試薬である。
反応開始後28.5時間でとられた混合物溶液のスペクトルが、図5に示されている。TIPS−ペンタセンアニオンの吸収ピークが、700〜1600nmの範囲に明確に見られ、これは、TIPS−ペンタセンが、クロロベンゼン中のロドセン二量体によって還元および/またはn−ドープされることの直接的な証拠を提供する。しかし、28時間後であっても、依然として相当な量の未反応のTIPS−ペンタセンがあった。出願人は、ロドセン二量体[Rh(Cp)によるTIPS−ペンタセンのn−ドーピング反応は、ルテニウム二量体[Ru(Cp*)(TEB)]の同様の反応よりも相当に遅いと結論づけ、速度論研究を中止した。
ロドセン二量体を用いる真空同時蒸着による銅フタロシアニンのn−ドーピング
基板上へのCuPcおよびロドセン二量体(実施例1を参照のこと)の真空同時蒸着によって、銅フタロシアニン(「CuPc」)をn−ドープし、製造されたドープされた材料を、紫外線光電子分光法(Ultra-Violet Photoemission Spectroscopy)(「UPS」)によって研究し、逆光電子分光法(Inverse Photoemission Spectroscopy)(「IPES」)研究は、CuPcのn−ドーピングが実際に起こったことを示す、ドープされたサンプルにおけるフェルミ準位シフトを実証した。次いで、n−ドープされたCuPcのフィルムを含む簡単なダイオードデバイスを電流密度測定に付し、これは、n−ドープされたCuPcフィルムの電流搬送能が、同様のドープされていないCuPcデバイス/フィルムと比較して、およそ10倍増大することを実証した。
ロドセン二量体によってn−ドープされたCuPcのUPS/IPES研究
Sigma−Aldrich(St. Louis、MO)から入手した、以下に示される構造を有するCuPcは、通常、当技術分野では、正孔輸送有機半導体材料として記載されるが、それは、3.3eVという比較的高い電子親和性を有する。出願人の一部は、デカメチルコバルトセンを用いるCuPcのn−ドーピングと、CuPcの電子輸送特徴が、その正孔輸送特徴と大きさが同程度であり得るということとをこれまでに実証している(Chanら、Organic Electronics、9(2008年)575〜581頁を参照のこと)。
CuPcを、2サイクルの勾配昇華によって精製した。Au基板上のCuPcのドープされたフィルムおよびドープされていないフィルムを、以下のとおりに調製した。予め蒸着されたチタン接着層(約5nm厚)を有するケイ素ウエハーは、Alfa Aesar(Ward Hill、MA 01835)から入手し、約100nmの厚さの金フィルムを、約100nmの圧力でウエハー上に真空蒸着し、次いで、Auコーティングされたウエハーを沸騰アセトン(20分)および沸騰メタノール(20分)中に浸漬することによって清浄にし、次いで、Nガス流下で乾燥させた。
清浄にしたAu基板を、有機フィルム蒸着および分光分析のために超高真空(UHV)システムに移した。UHVシステムは、3つのチャンバーを含む:(i)ドープされていない有機半導体フィルムが蒸着される(調製チャンバー中に蒸着されたドーパントでの汚染を防ぐために)成長チャンバー;(ii)ドープされた有機半導体の真空蒸着およびその場I−V測定のための調製チャンバー;ならびに(iii)直接および逆光電子分光法測定が実施される分析チャンバー。直接光電子放出は、SPECSによるHe放電光子供給源およびダブルパス円筒鏡型分析器電子検出器(Perkin−Elmer PHI15−255GAR)を用いて行われる。逆光電子放出設定は、自作であり、Wuら、Chem. Phys. Lett. 272、43頁(1997年)に記載されている。I−V測定は、半導体パラメータ分析器HP4155Aを用いて行った。
およそ10nmのドープされていない(「固有の」)CuPc(「i−CuPc」)を、タングステンコイルによって抵抗加熱された石英るつぼからの蒸発によって、成長チャンバー中に約10−6Torrで、清浄にしたAu基板上に蒸着させた。分子蒸発の速度およびフィルム厚は、石英結晶微量天秤によってモニタリングされる。i−CuPc蒸着の速度は、約1Å/秒であった。
別々に、i−PCで先にコーティングしたAu基板を、2つの異なる石英るつぼ/微量天秤設定を含有し、その一方が、予め昇華されたCuPcを含有し、他方がロドセン二量体を含有していた調製チャンバーに移した。CuPc(約1Å/秒の速度で)およびロドセン二量体(約0.035Å/秒の速度で、120℃の温度で石英結晶を加熱することから得られる)を、i−Pcフィルムの最上部上に、約88Åの厚みに同時蒸着させて、約3.5%のロドセン二量体でドープされたCuPcを含むフィルムを形成し、これは、「n−CuPc」と呼ばれる。このダイオードデバイスで製造された中間のドープされていないi−CuPc層は、基板とドープされたn−CuPc層の間にバッファー層を提供して、n−ドーパントがAu接触面に到達することおよびAu基板の仕事関数を改変するのを防ぐ)。
i−CuPcおよび/またはn−CuPcフィルムでコーティングされたAu基板(構造が図6aに示されている)を分析チャンバーに移し、UPS/IPESによって分析し、得られたスペクトルはまた、図6bに示されている。これらのスペクトルの解釈は、図6cに示される模式的エネルギー図中の上記の結果に詳細に論じられている。
ロドセン二量体によってn−ドープされたCuPc(「n−CuPc」)のI−V研究
上記のものと同様であるが、電気接触を確立するために最上部上にさらなるAu電極層を有する、Au上に蒸着されたi−CuPcおよび/またはn−CuPc層を含むダイオードデバイスを、上記のものと同様の手順によって調製し、調製チャンバー中で電流−電圧(「I−V」)分析に付した。
i−CuPcの1700Åの層を、上記の手順によって清浄にしたAu基板上に蒸着させ、次いで、シャドウマスクによって小さい2×10−4cmパッド中で、成長チャンバー中で、Auを最上部上に蒸着させて、得られた「i−CuPcデバイス」上に最上部コンタクトを形成した。
同様の「n−CuPcダイオード」デバイスを、清浄にした金基板上に48Åの「i−CuPcのバッファー層を蒸着させることによって(基板とドープされた層の間にバッファー層を提供して、ドーパントがAu接触面に到達することおよびAu基板の仕事関数を改変することを防ぐために)、同様の手順によって作製した。続く1652Åの「n−CuPcの層を、次いで上記の手順によってi−CuPc表面上に同時蒸着させ、続いて、Au最上部コンタクト電極を蒸着させた。
i−CuPcおよびn−CuPcダイオードデバイスの両方のその場I−V測定を、Auパッドと接触するための薄い金ワイヤを使用して調製チャンバーにおいて実施した。I−Vデータは、半導体パラメータ分析器(HP4155A)を用いて得た。i−CuPcおよびn−CuPcダイオードデバイス両方の構造は、図7aおよび7bに示されている。
ロドセン二量体を用いる溶液ドーピングによるP(NDIOD−T)コポリマーのn−ドーピング
P(NDIOD−T)(Yanら、Nature 457、679〜686頁、2009年を参照のこと、また、イリノイ州スコーキーのPolyeraからN2200として市販されている)は、最も知られており、最も効率のよいポリマー有機電子輸送半導体の1つであり、以下に示される構造を有し、溶液処理可能であり、約0.1〜0.8cm/Vsの間の電子移動性を有すると報告されている。P(NDIOD−T)の電子親和性は、逆光電子分光法(IPES)によって測定し、3.92eVであるとわかった。
分光学的研究のためには、使用される基板は、5nmのTi接着層で覆われた高度にドープされたSiウエハーであり、その上に約100nmのAu層を蒸着させた。アセトンおよびメタノール中での逐次10分浴を用いてAu基板を清浄にし、窒素を用いて送風乾燥させた。
ドープされていない、および1重量%のロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)のおよそ10nm厚のフィルムを両方とも、以下のようにAu基板上にコーティングした。1重量%のロドセン二量体を含有するP(NDIOD−T)のクロロベンゼン溶液を、Nグローブボックス中で調製し、Au基板上に4000rpmで30秒間スピンコーティングし、短期間の空気曝露(<1分)を用いて、UPS測定のためにUHV分析チャンバーに移した。
図8aおよび8bは、(a)光電子放出カットオフならびに(b)ドープされていない、および1重量%のロドセンでドープされたP(NDIOD−T)サンプルで獲得されたUPS He IスペクトルのHOMO領域を示す。ロドセンを用いるドーピングの際に、P(NDIOD−T)の光電子放出カットオフエッジおよびHOMOエッジの両方とも、フェルミ準位から0.44eVだけ離れており(図8b中のHOMOの最上部の2つの交点の間の差からわかる)、これは、ロドセン二量体によるP(NDIOD−T)フィルムのn−ドーピングの明確な証拠である。
ドープされたサンプルにおけるフェルミ準位とLUMO間のエネルギー差を測定するために、またP(NDIOD−T)の電子構造を調べるために、IPESスペクトルもまた、Au上のロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)フィルムで記録した。ドープされていないP(NDIOD−T)フィルムのイオン化エネルギー、電子親和性、HOMO−LUMOギャップを、それぞれ、5.52eV、3.92eVおよび1.60eVであると測定した。図8cは、1重量%のロドセン二量体を用いてn−ドープされたP(NDIOD−T)フィルム上で獲得された、組み合わされたUPS He IおよびIPESスペクトルを示し、5.55eVのイオン化エネルギーおよび3.95eVの電子親和性、したがって、1.6eVのHOMO−LUMOギャップを示す。
図8dは、スペクトル測定に基づいた、ドープされていない、およびドープされたP(NDIOD−T)フィルムの模式的エネルギー準位図を示す。ドーピングの際、ロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)のフェルミ準位は、ギャップが上方にシフトし、P(NDIOD−T)LUMOを0.1eVだけ下回る4.05eVの電位に達し、これは、P(NDIOD−T)LUMOのn−ドーピングの証拠である。
次いで、半導体フィルムのI−V測定のために、ITO基板上に、ドープされていない、またはロドセン二量体を用いてドープされたP(NDIOD−T)のフィルムを調製した。インジウムスズ酸化物(「ITO」)でコーティングされた基板は、Delta Technologies,Limited、Intergalactic Headquarters、13960 North 47th Street、Stillwater、MN 55082−1234 USAから入手し、洗浄剤(Alconox)溶液を用いてブラシをかけ、洗浄剤溶液中で15分間超音波処理し、大量のDI水を用いて5分間すすぎ、DI水中で15分間超音波処理し、アセトン中で15分間およびメタノール中で15分間超音波処理し、次いで、乾燥N2を用いて乾燥させ、UVオゾンに対して30分間曝露した。
P(NDIOD−T)フィルム(約50nm厚、ドープされていないか、またはロドセン二量体でドープされたかのいずれか)を、15.8mgのP(NDIOD−T)および/または1mlのクロロベンゼンに溶解した0.3mgのロドセン二量体から調製された溶液を使用し、2000RPMのスピン速度で40秒間、Nグローブボックス中でITO基板上にスピンコーティングした。フィルムコーティングされたデバイスを、Hg−電極(水銀プローブモデルCGME1105、Bioanalytical Systems Inc. W. Lafayette、IN 47906)との最上部コンタクトを使用する水銀滴I−V測定のために、周囲に曝露することなくNグローブボックスに移した。電流は、半導体パラメータ分析器(HP−4155A)を用いてかけられた電圧の関数として測定した。
図9は、ITO上にスピンコーティングされた、ドープされていない、および2重量%のロドセンでドープされたP(NDIOD−T)フィルムでHgプローブを用いて測定されたI−V特徴を示す。ロドセンでドープされたP(NDIOD−T)フィルムにおいて観察される搬送される電流密度は、特に、低電場で数桁増強される(ITOに対するHg電極の両極性について)。例えば、ITOからn−ドープされたP(NDIOD−T)フィルムへの電子注入に対応する破線の曲線を考えると、伝導率増強は、ドープされていないP(NDIOD−T)フィルムと比較して、2×10V/cmの電場で約5×10倍であり、これは、ロドセン二量体がP(NDIOD−T)をドープすることの強力な証拠である。
次いで、2重量%のロドセン二量体を用いて溶液ドープされ、櫛型金電極を用いて予めパターンが付けられた石英基板上に蒸着された、同様の50nm厚のP(NDIOD−T)フィルムの伝導率の可変温度測定を実施した。石英基板をアセトン中で10分間煮沸し、アセトン中で10分間超音波処理し、メタノール中で10分間煮沸し、メタノール中で10分間超音波処理し、N下で乾燥させた。櫛型電極(図10a)を、シャドウマスクを使用し、最初に、石英上の接着層として10nm Tiを用いて、続いて、100nm Au層を用いて石英基板上に蒸着させて、150μmの間隙によって分離している5mmの櫛型電極を形成した。電極の最上部上に、ポストアニール処理を行うことなく、2000RPMの速度で40秒間、1mlのクロロベンゼン中の15.8mgのNDIの溶液から、ドープされたP(NDIOD−T)フィルムをN下でスピンコーティングした。
VT−IV測定は、温度制御されたサンプルステージを備えたUHVシステムで実施した。サンプルを、短期間の空気曝露(<1分)を用いてUHVシステムに移した。温度コントローラー(Lakeshore 325;Lake Shore Cryotronics,Inc. 575 McCorkle Blvd、Westerville、OH 43082、USA)を使用して、測定の間、サンプル温度を制御した。I−V曲線は、ソースメータ(Keithley 2400、Keithley Instruments,Inc. 28775 Aurora Road、Cleveland、Ohio 44139)を使用して−50Vから+50Vで記録した。電極分離(150μm)のために、測定における電場は小さく、電流はオーム伝導に支配され、I−V曲線は直線である。伝導率測定は、170Kから300Kの間の温度範囲で実施した(170Kより下では、測定される電流は、ノイズに支配される)。
170Kから300Kの間では、J−F曲線は、全電場範囲にわたって直線である(図5b)。図10bに見られるように、種々の温度の伝導率(σ)を、J−F曲線への直線フィッティングから抽出し、In(σ)を、1000/Tの関数としてプロットした。図10cからわかるように、ロドセン二量体でドープされたP(NDIOD−T)フィルムの伝導率は、活性化エネルギーE=0.23eVを用いて温度に対して簡単なアレニウス依存に従う。このような低い活性化エネルギーは、おそらくは、ロドセン二量体ドーパントによって放出された電子による深いトラップ状態の最初の充填に起因するが、続いて、移動度端により近い状態において/状態から電子輸送が起こる。0.23eVの活性化エネルギーは、p−ドープされたα−NPD:Mo(tfd)において正孔について得られるものよりも低く(Qiら、Chem. Mat. 22、524頁(2010年)を参照のこと)、p−ドープされたペンタセン:F−TCNQ(おそらく、大幅により正しく並べられた固体である)について得られたものに近づく。伝導率は、室温で、3.7×10−4S/cmであり、これは、ロドセンでn−ドープされたP(NDIOD−T)における電子移動性が高い可能性があることを示す。
ロドセン二量体を用いる溶液同時蒸着によるTIPS−ペンタセンのn−ドーピング
Sigma−Aldrich(St. Louis、MO)から入手した、以下に示される構造を有するTIPS−ペンタセンは、溶液処理可能であるが、約1cm/Vsecの正孔移動性を示し得る溶液から鋳造されると結晶または半結晶フィルムおよび/または相を容易に形成する、正孔輸送有機半導体材料として周知である[Hamiltonら、Adv. Mater. 21、1166頁(2009年)]。
この実施例は、基板上へのTIPS−ペンタセンおよびロドセン二量体の溶液同時蒸着によるTIPS−ペンタセンのn−ドーピング、ならびにドープされたサンプルにおけるフェルミ準位シフトを実証するための、紫外線光電子分光法(「UPS」)および逆光電子分光法(「IPES」)によるn−ドープされた材料の分光学的研究を記載し、TIPS−ペンタセンのn−ドーピングが実際に起こったという証拠を提供する。次いで、n−ドープされたTIPS−ペンタセンのフィルムを含む簡単なダイオードデバイスを、n−ドープされたTIPS−ペンタセンフィルムの電流搬送能が、同様のドープされていないTIPS−ペンタセンデバイス/フィルムと比較しておよそ100倍増大したということを実証する測定に付した。
ロドセン二量体によってn−ドープされたTIPS−ペンタセンのUPS/IPES研究
インジウム−スズ酸化物(「ITO」)基板は、Delta Technologiesから入手し、上記の手順によって清浄にした。10mgのドープされていないTIPS−ペンタセンのサンプルを、空気中で1mlのクロロホルム溶液に溶解し、Nグローブボックスに入れた。1mlのTIPS−ペンタセンを含有するクロロベンゼンの溶液に、0.4mgのロドセン二量体を添加した。次いで、溶液を5分間超音波処理して、材料を完全に溶解した。ドープされていない、およびドープされたTIPS−ペンタセンの薄いフィルムを、Nボックス中で清浄にしたITO基板上に、4000RPMで30秒間スピンコーティングした。ポストアニール処理は実施しなかった。薄いフィルムを、UPS/IPES測定のために超高真空(UHV)システムに移した。これらのTIPS−ペンタセンフィルム上でAFMイメージングを実施して、平均フィルム厚を決定した。
図11aは、14nm厚のドープされていないTIPS−ペンタセンフィルムから獲得された、組み合わされたUPS He IおよびIPESスペクトルを示す。それらのスペクトルから、TIPS−ペンタセンのイオン化エネルギー(IE)および電子親和性(EA)をそれぞれ、5.10eVおよび3.08eVであると決定した。図11bは、ドープされていないTIPS−ペンタセンHOMOおよびLUMOに対する、相対的エネルギー関係を示すエネルギー準位略図を示す。
図12aは、ドープされていないTIPS−ペンタセンフィルム(実線)で、および4重量%ロドセン二量体を用いてドープされたTIPS−ペンタセンフィルム(破線)で獲得されたUPS He I スペクトルの拡大されたHOMO領域を比較する。ロジウムでn−ドープされたフィルムのUPSスペクトルは、ドープされていないフィルムのものに対して1.01eVだけより高い結合エネルギーに向かってシフトする、すなわち、ドープされたフィルムのフェルミ準位(E)は、TIPS−ペンタセンLUMOに向かって上方にシフトする。図12bのエネルギー準位略図において示されるように、n−ドープされたTIPS−ペンタセンフィルムの最終フェルミ準位(「E」)位置は、TIPS LUMOの下の0.43eVに上がり(図9b)、ロドセンによるTIPSペンタセンのn型ドーピングを明確に示す。
ロドセン二量体によってn−ドープされたTIPS−ペンタセンのフィルム伝導率研究
ロドセンでドープされたTIPS−ペンタセンのフィルム伝導率研究を、以下のとおりに実施した。0.5mgのロドセン二量体および11mgのTIPS−ペンタセンを、Nグローブボックス中で0.6mlのクロロベンゼン中に混合し、室温で2時間、十分に撹拌して材料を完全に溶解し、クロロベンゼン中のロドセン/TIPS−ペンタセンの5重量%溶液を製造した。150μmの間隔をもって、櫛型Au電極を用いてパターンが付けられた石英ガラス基板(上記の説明を参照のこと])、ドープされていない、およびドープされたフィルムは、Nボックス中で、90℃に加熱された基板上に、純粋なTIPS−ペンタセンの溶液または共溶液(ドーパントを有する)をドロップ鋳造することと、それに続く同一温度での5分間のポストアニール処理によって形成された。得られた簡単なデバイスの電気的特徴を、2点プローブステーションを、デバイスの金電極と接続することによってグローブボックス中で測定した。
図13は、ドープされていない、および5重量%のRhCp二量体でドープされたTIPS−ペンタセンフィルムの両方から測定された電流密度−電場(J−F)曲線を示す。Au電極間の150μmの間隔および50Vに制限されたかけられる電圧を考えると、これらのJ−V測定における電場は、極めて低い(E=0.1〜100V/cm)。TIPS−ペンタセンは、通常、電子伝導材料ではなく、正孔伝導材料として知られており、ドープされていないTIPSペンタセンの低い曲線は、正孔電流であるということは留意されなければならない。
n−ドープされたTIPSペンタセンフィルムデバイスの測定された電流密度は、電子電流であり、図13に示されるように、1の傾斜を有するlog(J)およびlog(F)間の直線関係は、したがって、オーム伝導に支配されていた。n−ドープされたTIPS−ペンタセンフィルムの測定された電流密度は、ドープされていないTIPSペンタセンフィルムのものよりも2桁大きかった。これらの結果は、ロドセンは、TIPSペンタセンフィルムをn−ドーピングできるということを示す。ロドセンは、3.1eVの電子親和性を有するTIPSペンタセンを明確にドーピングできると思われる。伝導率増強は、その他の材料を用いて観察された係数10よりも大幅に少なかったが、TIPSペンタセンの電子(正孔ではなく)移動性は未知であり、その他の実施例において示されるようにCuPcおよびP(NDIOD−T)などの成功裏にn−ドープされたその他の半導体のものよりも大幅に低いものであり得る。
ロドセン二量体を用いる溶液同時蒸着によるPDTP−BTコポリマーのn−ドーピング
PDTP−BT、(ポリ−ジチエノピロール−co−ベンゾチアジアゾール)、以下に示される構造を有する低いバンドギャップ正孔伝導コポリマーを、Yueら、J. Mater. Chem 2009年、19、2199〜2206頁によって報告されるものに類似した手順によって調製した。
分光法:PDTP−BTのロドセン二量体ドーピングの際のフェルミ準位シフト
分光学的研究のために、ドープされていない、およびドープされたPDTP−BTフィルムを、Au/Ti/Si基板(上記で先に記載された)上にスピンコーティングした。ドープされていないPDTP−BT溶液を調製するために、N2グローブボックス中で2.7mgのPDTP−BTを、1mlのクロロベンゼンに溶解した。ロドセン二量体でドープされたPDTP−BT溶液を調製するために、Nグローブボックス中で2.7mgのPDTP−BTおよび0.16mgのロドセン二量体を、1mlのクロロベンゼンに一緒に溶解し、5分間超音波処理した。基板上への溶液のスピンコーティングは、N中、3000RPMで40秒間行い、それに、2時間の60℃でのアニール処理を続けた。UPS/IPES測定のために、基板上のフィルムを、短期間の周囲曝露を用いてUHVシステムに移した。
UPSおよびIPESデータの分析から、図14cにおけるエネルギー準位略図において報告されるように、PDTP−BTについて、約5.64eVのイオン化エネルギー(IE)および約3.65eVの比較的大きな電子親和性(EA)が得られる。IEおよびEAは、ドープされていないフィルムとドープされたフィルム間でわずかに変わるが、これらの変動は、実験上の不確実性内である。
ドープされていないフィルムとドープされたフィルム間の主な相違は、ドーピングの際のフェルミ準位シフトである。He I(図14a)およびHe II(図14b)スペクトルの両方における、ドーピングの際のより高い結合エネルギーへ向かう分子レベルのシフトは、PDTP−BT LUMOの約0.2eV内への、およそ0.6eVのエネルギーギャップにおける上方へのフェルミ準位移動を明確に示す(結合価特徴のシフト、HOMOの位置および材料のギャップから推定される。ロドセン二量体は、PDTP−BTコポリマーを成功裏にn−ドーピングする。しかし、ドープされていないか、またはドープされたフィルムのいずれからも、測定可能な電子電流は得られなかった。理論に拘束されようとは思わないが、出願人は、PDTP−BTコポリマーは成功裏にn−ドープされたと推測するが、n−ドープされたPDTP−BTコポリマーの電子輸送特性は、実際の電子輸送が測定可能でないほど十分に乏しいものである可能性があるという理論を立てている。
ロドセン二量体を用いる溶液同時蒸着によるTFBコポリマーの試みられたn−ドーピング
TFB、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−co−ビス−N,N’−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)、以下に示される構造を有する公知の低バンドギャップ正孔伝導コポリマーは、Sigma−Aldrich(St. Louis、MO)から入手し、10−2cm/Vsを超える正孔移動性を示し得る[Fongら、Adv. Funct. Mater. 19、304頁(2009年)]。
TFBのロドセン二量体ドーピングの分光測定
ドープされていないTFB溶液を調製するために、N2グローブボックス中で、2.7mgのTFBを1mlのクロロベンゼンに溶解した。ドープされたTFB溶液を調製するために、グローブボックス中で、2.7mgのTFBおよび0.16mgのロドセン二量体(6重量%)を1mlのクロロベンゼンに一緒に溶解し、両サンプルを30分間超音波処理し、これは、材料を完全に溶解すると思われた。3000RPMで40秒間のN中でのスピンコーティングによって、その天然の酸化物(Al)で覆われたアルミニウム基板上に、ドープされていない、およびドープされたTFBの薄いフィルム(約10nm)を調製した。ポストアニール処理は実施しなかった。UPS測定のために、フィルムを、周囲に曝露することなくUHVシステムに移した。
図15aは、ドープされていないTFBフィルムおよび6重量%のRhCp二量体でドープされたTFBフィルム上で獲得されたUPS He I スペクトルを示す。両フィルムについて、TFBのイオン化エネルギー(IE)は、5.60eVであるとわかり、Hwangら[J. Phys. Chem. C 111、1378頁(2007年)]による以前の測定と良好に一致し、両フィルムの電子親和性は比較的小さい2.55eVであると測定され、これは、TFB LUMOは、調べたその他の有機半導体材料と比較してエネルギーが比較的高いことを示した。「ロドセン二量体でドープされた」TFBフィルムの全スペクトルが、ドーピングの際に、中程度の0.2eVだけ、より高い結合エネルギーに向かってシフトした(すなわち、上方へのフェルミ準位シフト)。真空において100℃で15分間、ロドセンでドープされたフィルムをアニール処理することは、ロドセン二量体でドープされたサンプルのフェルミ準位のさらなるシフトをもたらさず、ロドセン二量体が、TFBのLUMOを効率的にn−ドーピングするか否かについて疑念が生じた。図15bは、TFBの試みられたロドセン二量体ドーピングによって誘導された、TFBの電子状態間のエネルギー関係における極めて小さい変化を示す。
ドープされていない、および「ロドセン二量体でドープされた」TFBフィルムのフィルム伝導率
ドープされていないTFB溶液を調製するために、27mgのTFBを1mlのクロロベンゼンに溶解した。「ロドセン二量体でドープされた」TFB溶液を調製するために、27mgのTFBおよび2mgのロドセン二量体を、1mlのクロロベンゼン中で混合し、30分間超音波処理したが、超音波処理後に瓶の底で溶解されないまま残った溶解されないロドセン二量体があると思われた。両溶液とも、Nグローブボックス中で調製した。ドープされていない、およびドープされたTFBフィルムのフィルム(厚さ約100nm)を、N中で、3000RPMで40秒間スピン鋳造によってAlO基板上に調製し、ポストアニール処理は実施しなかった。AlOx基板は、ケイ素(5nmのTi接着層で覆われた)上でのAl(100nm)の真空蒸着と、それに続く周囲への曝露によって得た。これらの条件下で、Alは、天然の酸化物層を約1〜2nm厚発達させる。[Vaynzof、Jら、Appl. Phys. Lett. 93、103305(2008年)]。サンプルのI−V特徴は、Nグローブボックス中でHg滴電極設定を用いて測定した。
図15cは、ドープされていない、および「ロドセン二量体でドープされた」TFBフィルム上で獲得された電流密度対電場(J−F)曲線を示す。アルミニウム対Hg電極のどちらの相対的極性についても、「ロドセン二量体でドープされた」TFBフィルムの伝導率は、ドープされていないTFBフィルムのものよりおよそ16倍だけ大きかった。
理論に拘束されようとは思わないが、分光学的結果および伝導率結果は、ロドセン二量体によるTFBフィルム中の深いトラップ状態の幾分か制限された還元に起因すると合理的に説明され得るが、そのロドセン二量体は、TFBの比較的高いエネルギーLUMO(EA=2.55eV)を効率的にn−ドーピングするには十分に強力な還元体ではない可能性がある。
ドープされていない、および「ロドセン二量体でドープされた」C60フィルムのフィルム伝導率
デバイスを、有機半導体材料としてC60および図16に示される立体配置を用いて製造した。種々のW/L立体配置を試験し、その結果が、図17a〜dに示されており、以下の表中にまとめられている。
結論
上記の明細書、実施例およびデータは、本発明の種々の組成物およびデバイスの製造および使用ならびにその製造および使用のための方法の例示的説明を提供する。当業者ならば、それらの開示内容を考慮して、本明細書において開示および特許請求される本発明の多数のさらなる実施形態が明らかであるように思い浮かべることができ、それらは、本発明および開示内容の範囲から逸脱することなく行われ得る。添付の以下の特許請求の範囲は、それらの実施形態のいくつかを定義する。

Claims (14)

  1. 電流搬送能力を増大させる、n−ドーピングのための、または有機半導体組成物または有機半導体化合物両方のためのプロセスであって、
    有機半導体組成物有機半導体化合物、またはそれらの混合物をビス−金属サンドイッチ化合物と接触させるステップを含み、前記有機半導体組成物または有機半導体化合物は、互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環を含み、前記ビス−金属サンドイッチ化合物は、2つの連結している金属サンドイッチのグループを含み、各金属サンドイッチのグループは、
    a)場合により置換される少なくとも1つのベンゼンまたはシクロペンタジエニル環を含む、2つのアリールまたはヘテロアリール環と結合している、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウムおよびイリジウムから独立に選択される遷移金属原子、および
    b)一方の金属サンドイッチのグループに由来するベンゼンまたはシクロペンタジエニル環と炭素−炭素結合により結合している、各金属サンドイッチグループに由来する他方のベンゼンまたはシクロペンタジエニル環
    を含み、
    場合により、2つの金属サンドイッチのグループの環を連結する炭素−炭素結合が破壊され、2つの単量体金属サンドイッチカチオンが形成される、
    プロセス。
  2. 単量体金属サンドイッチカチオンの形成が、有機半導体組成物または半導体化合物の少なくとも部分的な還元を伴い、場合により、そのプロセスによって製造されたn−ドープされた有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物が、少なくともいくつかの単量体金属サンドイッチカチオンを含み、かつ/またはそのプロセスによって製造されたn−ドープされた有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物が、有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物の少なくともいくつかのアニオンを含む、請求項1に記載のプロセス。
  3. 得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物およびビス−金属サンドイッチ化合物が、電気デバイスの基板、電極またはその他の前駆体の表面上に気相プロセスによって個別に蒸着されるか、または同時蒸着されて、少なくともいくつかの有機半導体組成物または有機半導体化合物および少なくともいくつかのビス−金属サンドイッチ化合物もしくは金属サンドイッチカチオンまたはそれらの混合物を含む表面上に固層を形成する、請求項1または2に記載のプロセス。
  4. 有機半導体組成物もしくは有機半導体化合物またはそれらの混合物が、前記接触させるステップの間に、液体溶媒中に分散または溶解されて、これにより液体溶液または分散物を形成し、場合により、液体溶液または分散物が、電気デバイスの基板、電極および/または前駆体の表面上に適用され、溶媒が除去されて、少なくともいくつかの有機半導体組成物または有機半導体化合物を含む表面上に固層を形成する、請求項1または2に記載のプロセス。
  5. そのプロセスに使用されるビス−金属サンドイッチ化合物が、使用される有機半導体組成物もしくは少なくとも1つの有機半導体化合物の約0.001重量%から約30重量%を構成し、かつ/または単量体金属サンドイッチカチオンが、製造された有機半導体組成物もしくは少なくとも1つの有機半導体化合物の約0.001重量%から約30重量%を構成する、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
  6. ビス−金属サンドイッチ化合物の遷移金属原子が、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウムおよびイリジウムならびにそれらの混合物から独立に選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
  7. ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:

    [式中、
    a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
    b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
    c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
    d)各Rcp、RbzおよびRdは、水素または置換されていてもよいC1〜C12アルキルもしくはC1〜C12フェニルから個々に選択され、
    e)xは、1〜5の整数であり、
    f)x’は、1〜4の整数であり、
    g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
    h)y’は、1〜6の整数である]
    のうち1つを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
  8. ビス−金属サンドイッチ化合物が、以下の構造:

    のうち1つを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
  9. 単量体金属サンドイッチカチオンが、以下の構造

    [式中、
    a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
    b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
    c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
    d)各RcpおよびRbzは、水素または置換されていてもよいC1〜C12アルキル基もしくはC1〜C12フェニル基から個々に選択され、
    e)xは、1〜5の整数であり、
    f)x’は、1〜5の整数であり、
    g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
    h)y’は、1〜6の整数である]
    を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
  10. 得られるか、または提供される有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物が、少なくとも1×10−6cm2/Vsecの移動性で電子または正孔を伝導できると、ボトムゲート、ボトムコンタクト配置を有し、ゲート材料としてドープされたケイ素、ゲート誘電体として二酸化ケイ素を使用し、金供給源ならびに400〜800μmのチャネル幅および20〜40μmの長さのクロム接着層を有するドレイン電極を使用し、活性半導体として有機半導体組成物または少なくとも1つの有機半導体化合物を使用する薄膜トランジスタから測定される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
  11. 得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物のアリール環が、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニルおよびペンタセニル環、フラーレンもしくはフラーレン誘導体またはそれらの混合物から選択され、得られるか、または提供される有機半導体組成物または有機半導体化合物のヘテロアリール環が、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、フェナントロリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノキサゾリル、チエノイミダゾリル、フタロシアニン、ペリレンジイミド、またはナフタレンジイミド(naphthalenediimide)環から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
  12. 互いに結合している少なくとも2つのアリールまたはヘテロアリール環および以下の構造:

    [式中、
    a)Mviiは、マンガンまたはレニウムであり、
    b)Mviiiは、鉄、ルテニウムまたはオスミウムであり、
    c)Mixは、ロジウムまたはイリジウムであり、
    d)各Rcp、RbzおよびRdは、水素または置換されていてもよいC1〜C12アルキルもしくはC1〜C12フェニルから個々に選択され、
    e)xは、1〜5の整数であり、
    f)x’は、1〜4の整数であり、
    g)yおよびy”は、1〜5の整数であり、
    h)y’は、1〜6の整数である]
    のうち1つを有するビス−金属サンドイッチ化合物の少なくともいくつかを含む、少なくとも1つの有機半導体化合物を含む有機半導体組成物。
  13. 固体形態の、または液体、溶液、もしくは液体分散物の形態の、請求項12に記載の有機半導体組成物。
  14. 場合により、有機発光ダイオード、有機光起電力デバイス、またはトランジスタである、請求項12から13のいずれか一項に記載の有機半導体組成物を含む電子デバイス。
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