JP6116214B2 - 動力伝達装置 - Google Patents

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Description

本発明は4輪駆動車用の動力伝達装置に関し、特に2輪駆動状態から4輪駆動状態へスムーズに切り換えられる動力伝達装置に関するものである。
従来より、後輪を主駆動輪とする4輪駆動車用の動力伝達装置において、後輪駆動系の回転速度が前輪駆動系の回転速度より大きいときにワンウェイクラッチが係合して前輪駆動系に動力を伝達する技術が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に開示される技術では、後輪駆動走行中に、例えば後輪のスリップ等により後輪駆動系の回転速度が前輪駆動系の回転速度より大きくなると、ワンウェイクラッチが係合して前輪駆動系に動力が伝達される。その結果、後輪駆動系が駆動される2輪駆動状態から、前輪駆動系および後輪駆動系の両方が駆動される4輪駆動状態となるので、トラクション性能を高く維持できる。
特開2000−142152号公報
しかしながら特許文献1に開示される技術では、ワンウェイクラッチは、出力軸とクラッチハブとの空間内に配置された複数のスプラグを備えて構成されているので(特許文献1の段落0056及び図5参照)、出力軸およびクラッチハブにスプラグが食い込むことにより、スプラグがロックされて動力が伝達される。従って、前輪駆動系の回転速度より後輪駆動系の回転速度が大きくなると、スプラグが瞬時に出力軸およびクラッチハブへ食い込み、前輪駆動系のイナーシャトルクによりショックが発生する。よって、2輪駆動状態から4輪駆動状態への切り換えがスムーズにできないという問題点があった。
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、2輪駆動状態から4輪駆動状態へスムーズに切り換えられる4輪駆動車用の動力伝達装置を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段および発明の効果
この目的を達成するために請求項1記載の4輪駆動車用の動力伝達装置によれば、駆動源からの動力が出力軸により後輪駆動系に伝達される一方、出力軸の動力を前輪駆動系に遮断可能に伝達するクラッチを備えるものであり、そのクラッチは、出力軸の径方向外側に第1内輪が配設され、その第1内輪の径方向外側に第1外輪が配設される。その第1外輪の内周面に第1内周軌道面が形成され、その第1内周軌道面に対向する第1外周軌道面が第1内輪の外周面に形成される。第1外周軌道面と第1内周軌道面との間に介設される複数の第1ローラは、第1保持器により、出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持される。
第1内輪または第1外輪の一方は出力軸と一体回転可能に構成されるので、駆動源からの動力が出力軸に伝達されると、動力は、第1内輪または第1外輪の一方および後輪駆動系に伝達される。第1内輪または第1外輪の他方は、第1内輪または第1外輪の一方に対して相対回転可能に構成されているので、第1内輪または第1外輪の一方に動力を伝達し、第1内輪および第1外輪に所定方向の相対回転を与えると、第1ローラは第1内周軌道面および第1外周軌道面に案内されて自転しつつ出力軸の回りを公転する。その第1ローラの回転に案内されて、第1内輪または第1外輪の他方は径方向に弾性変形しながら、第1内輪または第1外輪の一方に対して軸方向に相対移動する。第1内周軌道面および第1外周軌道面に複数の第1ローラが係合すると、第1内輪、第1外輪および第1ローラが一体に回転し回転動力が伝達される。
第1内輪または第1外輪の他方は、第1内輪または第1外輪の他方と一体回転可能なギヤを備えている
ヤは、軸心に対して歯すじが非平行となるように所定のねじれ角を有する歯が形成され、前輪駆動系に動力を伝達する被動歯車と係合する。ギヤのねじれ方向は、被動歯車と係合して動力を伝達するときのギヤに生じるスラスト力の方向と、第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラが係合して動力を伝達するときの第1内輪または第1外輪の他方が移動する方向とを一致させるように設定される。よって、第1内輪または第1外輪の他方の軸方向移動に伴いギヤが軸方向に移動するときに、歯面のねじれ角によるギヤのスラスト力によって第1内輪または第1外輪の他方の軸方向移動を規制することを防止できる。
以上のように、第1内輪または第1外輪の他方と一体回転可能なギヤを備えることにより、第1内輪または第1外輪の他方が軸方向に移動できなくなることを防止できる。即ち、第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラが係合できなくなることを防止できるので、後輪駆動系の回転速度が前輪駆動系の回転速度より大きいときに第1内輪および第1外輪に第1ローラが係合して、出力軸の動力を前輪駆動系に伝達する4輪駆動状態にできる。
第1ローラが第1内輪および第1外輪に係合するときには、第1ローラは第1内輪の第1外周軌道面および第1外輪の第1内周軌道面を転動すると共に、第1外周軌道面および第1内周軌道面は径方向に弾性変形する。第1ローラの転動や第1内輪および第1外輪の弾性変形により切り換え時の衝撃が吸収されるので、2輪駆動状態から4輪駆動状態へスムーズに切り換えられる効果がある。
被動歯車が駆動側、ギヤが被動側となってギヤに発生する軸方向力は、第1ローラの回転による第1内輪および第1外輪の引き離し力より先に第1内輪または第1外輪に作用する。その結果、第1外周軌道面および第1内周軌道面と第1ローラとの係合解除を素早く行うことができる効果がある。
請求項2記載の動力伝達装置によれば、クラッチは、出力軸の径方向外側に配設される第2内輪が第1内輪の軸方向に並設され、その第2内輪の径方向外側に配設される第2外輪が第1外輪の軸方向に並設される。第2外輪の内周面に第2内周軌道面が形成され、その第2内周軌道面に対向する第2外周軌道面が第2内輪の外周面に形成される。その第2外周軌道面と第2内周軌道面との間に複数の第2ローラが介設される。複数の第2ローラは、第2保持器により、出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持され、第1ローラが係合する方向と反対方向の第2内輪および第2外輪の相対回転により第2内周軌道面および第2外周軌道面に係合して回転動力を伝達する。
第2内輪および第1内輪は出力軸と一体回転可能に構成され、第2外輪は、第2内輪に対して相対回転可能および軸方向に相対移動可能に構成される。第2外輪はギヤと共に第1外輪と一体回転可能に構成されるので、前進走行のときに第1内輪、第1外輪および第1ローラが係合可能となるように設定すれば、第2内輪、第2外輪および第2ローラを、コースティング走行や後退走行のときに係合可能となるように設定できる。第1内輪、及び、それに並設される第2内輪を連動して移動手段により軸方向に移動させることができるので、前進走行、コースティング走行、後退走行等における駆動輪の切り換えを適宜行うことができる。よって、請求項1の効果に加え、駆動輪の選択の幅を広げる効果がある。
請求項3記載の動力伝達装置によれば、移動手段は、往復運動をするソレノイド又は回転運動をするモータの駆動力により第1内輪、及び、それに並設される第2内輪を軸方向移動するので、請求項2の効果に加え、動力伝達装置を小型・軽量化できる効果がある。
請求項4記載の動力伝達装置によれば、第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラが係合して回転動力を伝達するときの第1内輪の軸方向の移動方向に、第1弾性部材により第1内輪が付勢される。第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとの係合を解除するときに、第1付勢解除手段によりソレノイド又はモータを作動させて、第1弾性部材による第1内輪の付勢が解除される。その結果、請求項3の効果に加え、ソレノイド又はモータを作動させて、第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとの係合を解除し、回転動力の伝達を遮断できる効果がある。
請求項5記載の動力伝達装置によれば、第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとの係合を阻止する方向に、第2弾性部材により軸方向に第1内輪または第1外輪が付勢される。第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラを係合するときに、第2付勢解除手段によりソレノイド又はモータを作動させて、第2弾性部材による第1内輪の付勢が解除される。その結果、請求項3の効果に加え、ソレノイド又はモータを作動させて、第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとを係合させ、回転動力を伝達できる効果がある。
請求項6記載の動力伝達装置によれば、第1外周軌道面および第1内周軌道面に第1ローラが係合するときの第1内輪または第1外輪の軸方向移動量が移動規制手段により規制されるので、規制された軸方向移動量を超えて軸方向に移動しなければ伝達できないような過大なトルク(ピークトルク)が出力軸に入力されたときには、第1ローラは、第1外周軌道面および第1内周軌道面に係合不能となる。これにより、前輪駆動系にピークトルクが伝達されることを阻止できるので、請求項1から5のいずれかの効果に加え、ピークトルクを考慮して前輪駆動系の構造を設計する必要をなくし、前輪駆動系を小型・軽量化できる効果がある。
請求項7記載の動力伝達装置によれば、動力の伝達を断続する断続手段が、クラッチから前輪駆動系までの動力伝達経路に配設される。断続手段により前輪駆動系の回転を停止することによって、2輪駆動時(後輪駆動)の回転によるフリクションロス及びユニット内のオイル撹拌によるエネルギーロスをなくすことができる。その結果、請求項1から6のいずれかの効果に加え、後輪駆動(2輪駆動状態)のときの燃費の向上を図ることができる。なお、4輪駆動が必要なときには、クラッチを締結して前輪駆動系の回転数を上昇させた後、断続手段を締結することで4輪駆動状態にできるので、駆動輪の選択の幅を広げられる効果がある。
動力伝達装置が搭載された4輪駆動車を模式的に示すスケルトン図である。 第1実施の形態における動力伝達装置のクラッチの軸方向断面図である。 走行モード切換後のクラッチの軸方向断面図である。 ギヤの噛み合いを示す模式図である。 第2実施の形態における動力伝達装置のクラッチの軸方向断面図である。 走行モード切換後のクラッチの軸方向断面図である。 (a)は走行モード切換後のクラッチの軸方向断面図であり、(b)は他の走行モードに切換後のクラッチの軸方向断面図である。 第3実施の形態における動力伝達装置のクラッチの軸方向断面図である。 (a)は走行モード切換後のクラッチの軸方向断面図であり、(b)他の走行モードに切換後のクラッチの軸方向断面図である。 第4実施の形態におけるクラッチの軸方向断面図である。 (a)は走行モード切換後のクラッチの軸方向断面図であり、(b)は他の走行モードに切換後のクラッチの軸方向断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して、動力伝達装置1が搭載される4輪駆動車100について説明する。図1は動力伝達装置1が搭載された4輪駆動車100を模式的に示すスケルトン図である。図1に示すように、4輪駆動車100は、エンジン101及びエンジン101に接合される変速機102が前方に配置され、その動力が出力軸103及び後輪差動装置104を介して、左後輪駆動軸105及び右後輪駆動軸106に伝達される。後輪差動装置104は、コーナリング時や路面状態の変化等により左右の後輪107に回転速度差が生じた場合、回転速度を吸収して左後輪駆動軸105及び右後輪駆動軸106を駆動し、左右の後輪107を回転させて駆動力を路面に伝える。
出力軸103には、前輪駆動系に出力軸103の動力を遮断可能に伝達するクラッチ2を備える動力伝達装置1が配設されている。動力伝達装置1のギヤ5と噛合する被動歯車112を介して、出力軸103の動力がフロント駆動軸111に伝達され、前輪差動装置113に伝達される。
フロント駆動軸111を介して前輪差動装置113に伝達された動力は、左前輪駆動軸114及び右前輪第1駆動軸115に伝達され、断続装置116を介して右前輪第2駆動軸117に伝達される。左前輪駆動軸114及び右前輪第2駆動軸117が駆動されることにより左右の前輪118が回転し駆動力が路面に伝えられる。なお、前輪差動装置113は、コーナリング時や路面状態の変化等により左右の前輪118に回転速度差が生じた場合、回転速度を吸収して左前輪駆動軸114及び右前輪第1駆動軸115を駆動する。
断続装置116は、右前輪第1駆動軸115及び右前輪第2駆動軸117間の動力の伝達を断続する手段であり、右前輪第1駆動軸115の右端外周に形成されたスプライン溝116aと、右前輪第2駆動軸117の左端外周に形成されたスプライン溝116bと、それらスプライン溝116a,116bの径方向外側に配設されるスリーブ116cと、スリーブ116cの外周溝に先端が摺動自在に係合するシフトフォークをスリーブ116cの軸方向にスライドさせるアクチュエータ116dとを備えている。スリーブ116cは、スプライン溝116a,116bとスプライン結合して連結する接続位置と、連結を解除する切断位置とを移動可能に構成されている。
4輪駆動車100は、クラッチ2を結合し、クラッチ2から断続装置116までの駆動系部品の回転を上昇させた後、断続装置116を接続すると4輪駆動モードとなる。また、クラッチ2の係合を解除すると共に断続装置116を切断すれば、2輪駆動(後輪駆動)モードとなり、右前輪第1駆動軸115及び前輪差動装置113の右前輪第1駆動軸115側のギヤの回転を停止させることができるので、それらのフリクションロスにより燃費が低下することを防止できる。
次に図2を参照して、動力伝達装置1のクラッチ2について説明する。図2は第1実施の形態における動力伝達装置1のクラッチ2の軸方向断面図である。なお、理解を容易にするため、軸方向力を受けるスラストベアリング等の図示を省略する(この図示の省略は第2実施の形態から第4実施の形態において同じ)。クラッチ2は、出力軸103とフロント駆動軸111(図1参照)との間の動力の伝達および遮断をする装置である。
図2に示すようにクラッチ2は、出力軸103の径方向外側に配設される第1内輪3と、第1内輪3の軸方向に並設されると共に出力軸103の径方向外側に配設される第2内輪4と、第1内輪3及び第2内輪4の径方向外側に配設される外輪5と、外輪5と第1内輪3及び第2内輪4との間に介設される複数の第1ローラ6及び第2ローラ7と、第1ローラ6及び第2ローラ7をそれぞれ保持する第1保持器8及び第2保持器9とを備えている。
第1内輪3は、回転動力を伝達するための機能を担う円環状の部材であり、軸心O回りの単葉回転双曲面をなす第1外周軌道面3aが外周面に形成されている。第1内輪3は、スプラインによって出力軸103に対して回転が規制される一方、出力軸103に対する軸方向の移動が許容されている。出力軸103は、外周面から径方向外側に向かって延びる円盤状のストッパ10が、第1内輪3の軸方向一方側(図2左側)に立設され、出力軸103と一体に回転されると共に軸方向に移動不能に設けられている。ストッパ10と第1内輪3の軸方向一端との間に皿ばね11(弾性部材)が挿入されている。これにより、第1内輪3はストッパ10に対して軸方向他方側(図2右側)に付勢される。なお、第1外周軌道面3aはストッパ10から軸方向他方側に離間するにつれ縮径している。
第2内輪4は、回転動力を伝達するための機能を担う円環状の部材であり、軸心O回りの単葉回転双曲面をなす第2外周軌道面4aが外周面に形成されている。第2内輪4は、スプラインによって出力軸103に対して回転が規制される一方、出力軸103に対する軸方向の移動が許容されている。出力軸103は、外周面から径方向外側に向かって延びる円盤状のストッパ12が、第2内輪4の軸方向他方側(図2右側)に立設されている。
第2内輪4は、軸方向一端面(図2左側面)を、第1内輪3の軸方向他端面(図2右側面)と当接させるように出力軸103に配設されている。これにより、第2内輪4は、皿ばね11により軸方向他方側(図2右側)に付勢された第1内輪3によって軸方向他方側(図2右側)に付勢される。第2内輪4の軸方向位置は、ストッパ12の位置により定められる。なお、第2外周軌道面4aはストッパ12から軸方向一方側(図2左側)に離間するにつれ縮径している。
ストッパ12は、出力軸103と一体に回転されると共に軸方向に移動不能に設けられ、孔部12aが複数箇所の軸方向に貫通形成される。孔部12aは、軸方向に移動可能に構成されたピン18(後述する)が挿通される部位であり、皿ばね11の付勢力に抗して孔部12aからピン18をストッパ12の軸方向一方側(図2左側)に突き出させることにより、第1内輪3及び第2内輪4を、ストッパ10,12間の任意の軸方向位置に移動させることができる。
外輪5は、第1内輪3及び第2内輪4と共に回転動力を伝達するための機能を担う部材であり、第1内輪3及び第2内輪4の径方向外側に配設されている。外輪5が、第1内輪3及び第2内輪4の径方向外側に第1内輪3及び第2内輪4の軸方向長に亘って一体的に設けられているので、堅牢にできると共に構造を簡素化できる。外輪5は、軸心O回りの単葉回転双曲面をなす第1内周軌道面5a及び第2内周軌道面5bが、第1外周軌道面3a及び第2外周軌道面4aと対向する内周面にそれぞれ形成されている。第1内周軌道面5a及び第2内周軌道面5bは、外輪5の軸方向中央から軸方向両側に向かうにつれ内径が次第に大きくなるように形成されている。外輪5は外周面にギヤ5が設けられている。ギヤ5は、フロント駆動軸111(図1参照)の後端外周に形成された被動歯車112と噛合する部位である。
外輪5は、第1内輪3及び第2内輪4と相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に構成されており、軸方向両端の径方向内側に段差状に形成された段部5d,5eがストッパ10,12の径方向外側の軸方向端面に突き当たることにより、それ以上の軸方向の移動が規制される。ストッパ10,12は、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aに第1ローラ6が係合して捻じ込まれたときに、一定位置で外輪5の軸方向移動を停止させ、一定以上のトルクがかからないようにするトルクリミッタの機能と、第1ローラ6及び第2ローラ7の抜け出しを防止する機能とを有する。
第1ローラ6は、第1内輪3及び外輪5に係合して回転動力を伝達するための円筒状の部材であり、第1内輪3及び外輪5の間に複数本が介設される。複数の第1ローラ6は、第1内輪3及び外輪5の間に配設される第1保持器8により、第1外周軌道面3aと第1内周軌道面5aとの間に保持される。
第1保持器8は、第1ローラ6が相互に干渉することなく円滑に回転するように、互いに間隔をあけて第1ローラ6を保持するための部材である。第1ローラ6は、第1保持器8により、軸心Oを含む面から一定角度(例えば15°)傾斜して(軸心Oに対して一定のスキュー角に設定され)、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aの円周方向に複数配設され、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aに外周面が線状に接触(線接触)可能に配置される。
第2ローラ7は、第2内輪4及び外輪5に係合して回転動力を伝達するための円筒状の部材であり、第2内輪4及び外輪5の間に複数本が介設される。複数の第2ローラ7は、第2内輪4及び外輪5の間に配設される第2保持器9により、第2外周軌道面4aと第2内周軌道面5bとの間に保持される。
第2保持器9は、第2ローラ7が相互に干渉することなく円滑に回転するように、互いに間隔をあけて第2ローラ7を保持するための部材である。第2ローラ7は、第2保持器9により、軸心Oを含む面から第1ローラ3と同じ方向に一定角度(例えば15°)傾斜して(軸心Oに対して一定のスキュー角に設定され)、第2外周軌道面4a及び第2内周軌道面5bの円周方向に複数配設され、第2外周軌道面4a及び第2内周軌道面5bに外周面が線状に接触(線接触)可能に配置される。
移動手段13は、第1内輪3及び第2内輪4を連動して軸方向に移動させるための手段であり、ストッパ12から軸方向に離隔して配置されたソレノイド14と、ソレノイド14の往復動に連動して出没するピン18とを備えている。ソレノイド14は、ストッパ12に向けて延びるロッド15を軸方向に往復運動させる装置であり、ソレノイド14とストッパ12との間に配置されて一端16aが軸支されたアーム16の他方側に、ロッド15の先端が当接される。一端16aが軸支されたアーム16は他端がロッド15側(図2反時計回り)に付勢されているので、ロッド15の往復運動に伴い、一端16aを中心に往復回動する。
移動板17は、アーム16の他方側が連係される円環状の部材であり、出力軸103が貫設され、アーム16の往復回動に伴い軸方向に移動可能に構成される。また、移動板17は、ストッパ12に貫設されるピン18の軸方向端面に一端面が当接するように配置される。ピン18は、ストッパ12の軸方向に貫通形成された孔部12aに遊挿される部材であり、軸方向長がストッパ12の軸方向厚さより大きく設定されている。よって、移動板17が軸方向一方側(図2左側)に移動すると、ピン18がストッパ12から第2内輪4側へ押し出される。
移動手段13は、ソレノイド14がオンのときにロッド15を軸方向一方側(図2左側)に押出し、オフのときにロッド15を軸方向他方側(図2右側)に後退させる。ロッド15が後退したときは、図2に示すように、皿ばね11の付勢力により第1内輪3及び第2内輪4を介して、ピン18がストッパ12から移動板17側へ押し出される。
ソレノイド14をオフすることによりロッド15が後退して、皿ばね11の付勢力により第1内輪3及び第2内輪4が軸方向他方側(図2右側)に押されると、第2内輪4の第2外周軌道面4aは第2ローラ7の外周面から離れる方向に移動される。一方、第1内輪3の第1外周軌道面3aは第1ローラ6の外周面に押し付けられる。この状態で、第1内輪3と外輪5との相対回転で、外輪5に対して第1内輪3が所定の一方向に回転する回転動力(4輪駆動車100を前進走行させる回転動力)を出力軸103に入力すると、第1ローラ6は第1内輪3の第1外周軌道面3aを転動する。第1ローラ6は、そのトラクションで外輪5の第1内周軌道面5aに食い込み、クサビ作用でロック(係合)して第1内輪3及び外輪5と一体に回転する。これにより出力軸103に入力された回転動力が外輪5からギヤ5cに伝達され、前輪駆動系(前輪差動装置113等)に伝達される。これにより4輪駆動状態にできる。
なお、第2ローラ7については、第2内輪4の第2外周軌道面4aが第2ローラ7の外周面から離れる方向に移動されているので、第2ローラ7は外輪5の第2内周軌道面5bに食い込むことができない。よって、第2ローラ7を介する動力伝達は遮断される。
従って、前輪駆動系(前輪差動装置113等)の回転速度が大きくなって第1内輪3の回転速度より外輪5の回転速度が大きくなる場合(例えば、コースティング走行の場合)、その回転速度差によって第1ローラ6の係合が解除されるので、外輪5から第1内輪3への動力の伝達は遮断される。出力軸103の回転動力は後輪駆動系(後輪差動装置104等)には伝達されるので、4輪駆動車100は2輪駆動(後輪駆動)状態となる。また、出力軸103の回転方向が前進走行時の回転方向と反対となる後退走行のときも、同様に2輪駆動(後輪駆動)状態となる。
第1ローラ6が第1内輪3及び外輪5と係合するときには、第1ローラ6は、弾性変位分だけ僅かに転動し軸方向一方側(ストッパ10側)に変位する。同時に、外輪5も軸方向一方側(ストッパ10側)に変位する。外輪5の軸方向移動量は、ストッパ10に外輪5の段部5dが突き当たることにより規制されるので、外輪5はそれ以上移動できない。即ち、規制された軸方向移動量を超えて外輪5が軸方向に移動しなければ伝達できないような過大なトルク(ピークトルク)が出力軸103に入力されたときには、第1ローラ6は、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aに係合不能となる。これにより、前輪駆動系にピークトルクが伝達されることを阻止できるので、ピークトルクを考慮して前輪駆動系の構造を設計する必要をなくし、前輪駆動系を小型・軽量化できる。
次に図3を参照して、ソレノイド14をオンしてロッド15を押し込んだときのクラッチ2の動作について説明する。図3は走行モード切換後のクラッチ2の軸方向断面図である。図3に示すように、ソレノイド14をオンしてロッド15を押し出したときには、移動板17はストッパ12側へ移動されてピン18を押し込む。その結果、皿ばね11の付勢力に抗して第1内輪3及び第2内輪4がストッパ10側に押し戻され、第1内輪3の第1外周軌道面3aは第1ローラ6の外周面から離れる方向に移動される。一方、第2内輪4の第2外周軌道面4aは第2ローラ7の外周面に押し付けられ、それに伴い、第2内周軌道面5bに第2ローラ7の外周面が押し付けられる。
4輪駆動車100が前進走行するときには、第1ローラ6は第1内輪3及び外輪5に係合できないので、出力軸103の動力は、クラッチ2を介して前輪駆動系に伝達されない。従って、4輪駆動車100は2輪駆動(後輪駆動)状態となる。一方、コースティング走行のときは、第2内輪4と外輪5との相対回転で、第2内輪4に対して外輪5が所定の一方向に回転するので、第2内輪4と外輪5との回転速度差により、第2ローラ7は外輪5の第2内周軌道面5bを転動する。第2ローラ7は、そのトラクションで第2内輪4の第2外周軌道面4aに食い込み、クサビ作用でロック(係合)して第2内輪4及び外輪5と一体に回転する。これにより、外輪5に入力された回転動力が第2内輪4を介して出力軸103(エンジン101)に伝達されるので、4輪駆動状態で走行しつつ制動作用が得られる。
後退走行のときは、出力軸103の回転方向が前進走行と反対方向になるので、第2内輪4と外輪5との相対回転で、外輪5に対して出力軸103(第2内輪4)が、前進走行の場合と反対方向に回転する。そうすると、第2ローラ7は第2内輪4の第2外周軌道面4aを転動する。第2ローラ7は、そのトラクションで外輪5の第2内周軌道面5bに食い込み、クサビ作用でロック(係合)して第2内輪4及び外輪5と一体に回転する。これにより、出力軸103に入力された回転動力が外輪5からギヤ5cに伝達され、前輪駆動系(前輪差動装置113等)に伝達される。その結果、4輪駆動車100は4輪駆動状態で後退走行する。以上のように、クラッチ2によれば、2つの走行モードに切り換えることが可能となる。
次に図4を参照して、軸方向に移動する外輪5に設けられたギヤ5cに作用する軸方向力(スラスト)について説明する。図4はギヤ5cの噛み合いを示す模式図である。図4では、ギヤ5c及びそれに係合する被動歯車112を図示し、クラッチ2の他の各部の図示を省略すると共に、ギヤ5c及び被動歯車112にそれぞれ形成された歯5c1,112aの一部の図示を省略している。
図4は、出力軸103からクラッチ2に回転動力が入力されて、ギヤ5cが矢印Ro方向に回転して4輪駆動車100(図1参照)が前進走行するときの状態(図2に示す状態)を示している。ギヤ5cは、軸心Oに対して歯すじが非平行となる歯5c1が形成されており、本実施の形態では、ヘリカルギヤによりギヤ5cが構成されている。ギヤ5cと噛合する被動歯車112も、軸心Oに対して歯すじが非平行となる歯112aが形成されたヘリカルギヤにより構成されている。
出力軸103からギヤ5cに伝達された動力によって(回転方向は矢印Ro方向)、被動歯車112に回転が伝達されると(回転方向は矢印Rt方向)、ギヤ5c及び被動歯車112に、それぞれ一定方向(図4矢印A方向及び矢印P方向)の軸方向力(スラスト力)が発生する。ギヤ5c及び被動歯車112の歯すじの方向は、ギヤ5cに作用する軸方向力の向き(図4矢印A方向)が、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5a(図2参照)に第1ローラ6が係合するときの軸方向における外輪5の移動方向(図4矢印A方向)と同一になるように設定されている。
ここで、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aと第1ローラ5とに生じる摩擦力の軸方向分力は、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aに第1ローラ6が係合するときの第1内輪3及び外輪5の軸方向の引き寄せ力を抑制し、第1内輪3から外輪5へ所定のトルクを伝達できない原因となる。これに対しクラッチ2によれば、第1ローラ6の転動による第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aの引き寄せ力に加え、被動歯車112の反力による軸方向力によって、外輪5は軸方向への移動が促進される。その結果、第1内輪3及び外輪5の軸方向の引き寄せ力を増加させることができるので、クラッチ2は所定のトルクを確実に伝達できる。
一方、前輪駆動系(前輪差動装置113等)の回転速度が後輪駆動系(後輪差動装置104等)の回転速度より大きくなると、被動歯車112が駆動側、ギヤ5cが被動側となる。この場合には、ギヤ5c及び被動歯車112にそれぞれ反対方向(図4反矢印A方向および反矢印P方向)の軸方向力が発生する。この軸方向力は、被動歯車112が駆動側、ギヤ5cが被動側となると同時に働くので、第1ローラ6の回転による第1内輪3及び外輪5の引き離し力より外輪5に早く作用する。その結果、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aと第1ローラ6との係合解除を素早く行うことができる。
なお、ギヤ5c及び被動歯車112が平歯車により構成されている場合には、外輪5が軸方向に移動するときに、歯面同士が擦れ合って軸心Oと平行方向の摩擦力が生じる。この摩擦力は、第1外周軌道面3a及び第1内周軌道面5aに第1ローラ6が係合するときの第1内輪3及び外輪5の軸方向の引き寄せ力を抑制するので、外輪5がスムーズに移動できない原因となる。これに対しクラッチ2は、ギヤ5cの歯すじを軸心Oに対して非平行とすることより、軸方向のスラストを発生させ、外輪5の軸方向の移動を促進できる。また、軸方向の摩擦力を小さくするためにギヤ5c及び被動歯車112の歯面間の間隔を大きくする必要がないので、ギヤ5cと被動歯車112とのガタつきを抑制できる。
また、ギヤ5c及び被動歯車112はヘリカルギヤによって構成されているので、同じ大きさの平歯車に比べて強度を大きくできると共に、静かに回転動力を伝達できる。また、高速回転を伝達可能であると共に、ギヤ5c及び被動歯車112の歯数の組み合わせに制限がなく自在性に優れる。
次に図4を参照して、ギヤ5c及び被動歯車112の歯面同士の摩擦について検討する。ギヤ5cを一方向(図4矢印Ro方向)に回転した場合には、被動歯車112の反力によってギヤ5cの歯面に、軸直角平面における円周力Nが作用する。一方、被動歯車112の歯面にも、軸直角平面における円周力Nが作用する。円周力Nは、軸心Oと垂直方向の接線力F及び軸心Oと平行方向の軸方向力Sに分解される。ギヤ5cのねじれ角をβとすれば、軸方向力Sは式(1)で表される。
S=N・sinβ …式(1)
また、ギヤ5c及び被動歯車112の歯面同士の摩擦係数をμとすれば、駆動歯車8bの歯面による摩擦力の軸方向分力S´は式(2)で表される。
S´=μN・cosβ …式(2)
ここで、外輪5を軸方向一方側(図2左側)へ移動させるには、被動歯車112に対してギヤ5cを軸方向(図4矢印A方向)に移動させることが必要である。そのためには摩擦力の軸方向分力S´の絶対値より軸方向力Sの絶対値が大きいこと、即ち式(3)が成立することが必要である。なお、S>0,S´>0なので、式(3)では絶対値記号を省略する。
S−S´>0 …式(3)
式(3)に式(1)及び式(2)を代入して解くと、式(4)が導かれる。
μ<tanβ …式(4)
式(4)に示すようにギヤ5c及び被動歯車112の歯面同士の摩擦係数μとギヤ5cのねじれ角βとを設定すれば、被動歯車112に対してギヤ5cを軸方向(図4矢印A方向)に移動させることができる。それに伴い外輪5を軸方向(図4矢印A方向)へ移動させることができるので、ギヤ5c及び被動歯車112の歯面同士の摩擦によって、第1内輪3及び外輪5の軸方向の引き寄せ力が抑制されることを防止できる。これによりクラッチ2は所定のトルクを確実に伝達できる。
次に図5から図7を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、軸方向に往復運動をするソレノイド14により第1内輪3及び第2内輪4を一括して軸方向に移動させるクラッチ2について説明した。これに対し第2実施の形態では、モータ30により2つの端面カム31,32を回転させ、軸方向に第1内輪23及び第2内輪24を別個に移動させることができるクラッチ22について説明する。
なお、クラッチ22は、第1実施の形態で説明した4輪駆動車100に、クラッチ2に代えて搭載されるものとする(他の実施の形態において同じ)。また、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第2実施の形態における動力伝達装置1のクラッチ22の軸方向断面図であり、図6は走行モード切換後のクラッチ22の軸方向断面図であり、図7(a)は走行モード切換後のクラッチ22の軸方向断面図であり、図7(b)は他の走行モードに切換後のクラッチ22の軸方向断面図である。
図5に示すようにクラッチ22は、出力軸103の径方向外側に配設される第1内輪23と、第1内輪23の軸方向に並設されると共に出力軸103の径方向外側に配設される第2内輪24と、第1内輪23及び第2内輪24の径方向外側に配設される外輪5と、外輪5と第1内輪23及び第2内輪24との間に介設される複数の第1ローラ6及び第2ローラ7と、第1ローラ6及び第2ローラ7をそれぞれ保持する第1保持器8及び第2保持器9とを備えている。
第1内輪23は、回転動力を伝達するための機能を担う円環状の部材であり、軸方向に亘って貫通する貫通孔23aが形成されている以外は第1実施の形態で説明した第1内輪3と同様の構成なので、以下の説明を省略する。出力軸103は、外周面から径方向外側に向かって延びる円盤状のストッパ25が、第1内輪23の軸方向一方側(図5左側)に立設され、貫通孔23aと対応する位置に、軸方向に亘って貫通する孔部25aが形成されている。また、ストッパ25と第1内輪23の軸方向一端との間にコイルばね26(弾性部材)が配設されている。これにより、第1内輪23はストッパ25に対して軸方向他方側(図5右側)に付勢される。
第2内輪24は、回転動力を伝達するための機能を担う円環状の部材であり、軸方向に亘って貫通する貫通孔24aが形成されている以外は第1実施の形態で説明した第2内輪4と同様の構成なので、以下の説明を省略する。出力軸103は、外周面から径方向外側に向かって延びる円盤状のストッパ27が、第2内輪24の軸方向他方側(図5右側)に立設され、貫通孔24aと対応する位置に、軸方向に亘って貫通する孔部27aが形成されている。また、ストッパ27と第2内輪24の軸方向他端との間にコイルばね28(弾性部材)が配設されている。これにより、第2内輪24はストッパ27に対して軸方向一方側(図5左側)に付勢される。
移動手段29は、第1内輪23及び第2内輪24を連動して軸方向に移動させるための手段であり、ストッパ27から軸方向に離隔して配置されたモータ30と、そのモータ30の回転により出没するピン37,41とを備えている。モータ30は、ストッパ25,27の軸方向外側にそれぞれ配置される端面カム31,32を回転させる装置である。ガイドレール33は、出力軸103と平行に配置される軸状の部材であり、ガイドレール33に沿って摺動可能に構成された案内部34,38がストッパ25,27の軸方向外側位置に装着されている。案内部34,38には案内ピン34a,38aが突設されており、案内ピン34a,38aが端面カム31,32のカム面31a,32aにそれぞれ当接するように、各案内部34,38は軸方向外側にそれぞれ付勢されている。
案内部34,38から出力軸103に向かって延びるアーム35,39が、案内部34,38にそれぞれ設けられている。移動板36,40は、アーム35,39の先端側が連係される円環状の部材であり、出力軸103が貫設され、アーム35,39の軸方向の往復運動に伴い軸方向に移動可能に構成される。また、移動板36,40は、ストッパ25,27の孔部25a,27a及び貫通孔23a,24aに遊挿されるピン37,41の軸方向一端に一端面が当接するように配置される。ピン37,41は、移動板36,40に軸方向一端が押されて、他端が第1内輪23、第2内輪24の軸方向端面にそれぞれ当接可能な軸方向長に設定されている。よって、移動板36,40がそれぞれストッパ27,25側に移動すると、ピン37,41がそれぞれ軸方向に押し出されて、第1内輪23、第2内輪24がコイルばね26,28の付勢力に抗してそれぞれ軸方向に移動する。
以上説明したように移動手段29は、モータ30の回転角に応じて、端面カム31,32のカム面31a,32aにより案内部34,38及びアーム35,39(従節)が駆動されて移動板36,40が軸方向に移動される。移動板36,40の位置によりピン47,41の押し出される長さが変わり、第1内輪23及び第2内輪24は軸方向位置が異なる4つのポジションをとる(図5、図6、図7(a)及び図7(b))。
図5に示すポジションでは、カム面31a,32aにより、移動板36,40はストッパ25,27から離間して位置する。これにより、第1内輪23及び第2内輪24がコイルばね26,28により軸方向内側に付勢され、第1内輪23の第1外周軌道面3a及び第2内輪24の第2外周軌道面4aは、第1ローラ6及び第2ローラ7の外周面にそれぞれ押し付けられる。このポジションでは、第1内輪23と外輪5との相対回転で、外輪5に対して第1内輪23が所定の一方向に回転する回転動力(4輪駆動車100を前進走行させる回転動力)を出力軸103に入力すると、第1ローラ6は、第1内輪23の第1外周軌道面3aを転動し、そのトラクションで外輪5の第1内周軌道面5aに食い込み、クサビ作用でロック(係合)して第1内輪23及び外輪5と一体に回転する。これにより、出力軸103に入力された回転動力が外輪5からギヤ5cに伝達され、前輪駆動系(前輪差動装置113等)に伝達される。
なお、コースティング走行のときには、第2内輪24と外輪5との相対回転で、第2内輪24に対して外輪5が所定の一方向に回転するので、第2内輪24と外輪5との回転速度差により、第2ローラ7は外輪5の第2内周軌道面5bを転動する。第2ローラ7は、そのトラクションで第2内輪24の第2外周軌道面4aに食い込み、クサビ作用でロック(係合)して第2内輪24及び外輪5と一体に回転する。これにより、外輪5に入力された回転動力が第2内輪4を介して出力軸103(エンジン101)に伝達されるので、制動作用が得られる。後退走行のときも同様に、第2ローラ7が外輪5の第2内周軌道面5bに食い込み、第2内輪24及び外輪5と一体に回転する。これにより、出力軸103に入力された回転動力が外輪5からギヤ5cに伝達され、前輪駆動系(前輪差動装置113等)に伝達される。従って、このクラッチ22のポジションでは、4輪駆動車100は常に4輪駆動状態で走行可能となる。
図6に示すポジションでは、カム面31a,32aにより移動板40はストッパ25に近接し、移動板36はストッパ27から離間して位置する。このときは、コイルばね26により軸方向他方側(図6右側)に第1内輪23が付勢される一方、コイルばね28の付勢力に抗してピン41により軸方向他方側(図6右側)に第2内輪24が押し付けられる。その結果、第1内輪23の第1外周軌道面3aは第1ローラ6の外周面に押し付けられ、第2内輪24の第2外周軌道面4aは第2ローラ7の外周面から離される。この場合、4輪駆動車100を前進走行させる回転動力を出力軸103に入力すると、第1ローラ6はロック(係合)して第1内輪23及び外輪5と一体に回転するので、4輪駆動状態となる。一方、第2ローラ7は、第2内輪24及び外輪5に対してフリー状態となるので、コースティング走行や後退走行のときには2輪駆動(後輪駆動)状態となる。
図7(a)に示すポジションでは、カム面31a,32aにより移動板36,40はストッパ27,25に近接する。このときは、コイルばね26,28の付勢力に抗してピン37,41により軸方向外側に第1内輪23及び第2内輪24が押し付けられる。その結果、第1内輪23の第1外周軌道面3a及び第2内輪24の第2外周軌道面4aは、第1ローラ6及び第2ローラ7の外周面から離される。第1ローラ6及び第2ローラ7は、第1内輪23、第2内輪24及び外輪5に対してフリー状態となるので、4輪駆動車100は常に2輪駆動(後輪駆動)状態となる。
この2輪駆動状態のときに断続装置116(図1参照)を切断することにより、右前輪第1駆動軸115及び前輪差動装置113の右前輪第1駆動軸115側のギヤの回転を停止させることができるので、それらのフリクションロスにより燃費が低下することを防止できる。これにより、前進走行時、図7(a)に示すポジションにより2輪駆動状態としつつ断続装置116を切断することで、燃費低下を抑制できる。
この状態(断続装置116が切断された状態)から4輪駆動状態(前進走行)とする場合には、まず、クラッチ22を図6に示すポジションにする。これにより、第1ローラ6は第1内輪23及び外輪5に係合可能となり、出力軸103の動力により第1内輪23及び外輪5に第1ローラ6が食い込み、出力軸103と一体に外輪5が回転する。ギヤ5cに係合する被動歯車112及びフロント駆動軸111の回転速度および前輪駆動系(特に右前輪第1駆動軸115)の回転速度を上げることができるので、右前輪第1駆動軸115及び右前輪第2駆動軸117の回転速度を検出装置(図示せず)で検出し、それらの回転速度とが一致したとき又はそれらの回転速度の差が所定の範囲となったときに、断続装置116を接続する。これにより、断続装置116を接続するときのショックを抑制し、スムーズに2輪駆動状態から4輪駆動状態へ切り換えることができる。
図7(b)に示すポジションでは、カム面31a,32aにより移動板36はストッパ27に近接し、移動板40はストッパ25から離間して位置する。このときは、コイルばね28により軸方向一方側(図7(b)左側)に第2内輪24が付勢される一方、コイルばね26の付勢力に抗してピン37により軸方向外側に第1内輪23が押し付けられる。その結果、第2内輪24の第2外周軌道面4aは第2ローラ7の外周面に押し付けられ、第1内輪23の第1外周軌道面3aは第1ローラ6の外周面から離される。この場合、4輪駆動車100を前進走行させる回転動力を出力軸103に入力すると、第1ローラ6は第1内輪23及び外輪5に対してフリー状態となるので、前進走行のときには2輪駆動(後輪駆動)状態となる。
一方、コースティング走行や後退走行のときには、第2ローラ7はロック(係合)して第2内輪24及び外輪5と一体に回転するので、4輪駆動状態となる。以上のように第2実施の形態では、移動手段29により第1内輪23と第2内輪24とを別個に移動させることができるので、走行モード毎の駆動輪の選択の幅を広げることができる。
次に図8及び図9を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、ソレノイド14により第1内輪3及び第2内輪4を一括して軸方向に移動させる場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、ソレノイド58により第1内輪53及び第2内輪54を別個に軸方向に移動させる場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明したものと同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図8は第3実施の形態における動力伝達装置1のクラッチ52の軸方向断面図であり、図9(a)は走行モード切換後のクラッチ52の軸方向断面図であり、図9(b)他の走行モードに切換後のクラッチ52の軸方向断面図である。
図8に示すようにクラッチ52は、出力軸103の径方向外側に配設される第1内輪53と、第1内輪53の軸方向に並設されると共に出力軸103の径方向外側に配設される第2内輪54と、第1内輪53及び第2内輪54の径方向外側に配設される外輪5と、外輪5と第1内輪53及び第2内輪54との間に介設される複数の第1ローラ6及び第2ローラ7と、第1ローラ6及び第2ローラ7をそれぞれ保持する第1保持器8及び第2保持器9とを備えている。
第1内輪53は、皿ばね11によりストッパ10から離間する方向に付勢される円環状の部材であり、コイルばね55(後述する)を係止する凹部が軸方向端部に形成されている以外は第1実施の形態で説明した第1内輪3と同様の構成である。第2内輪54は、軸方向に亘って貫通する貫通孔54aが形成され、コイルばね55(後述する)を係止する凹部が軸方向端部に形成されている。それら以外は第1実施の形態で説明した第1内輪3や第2内輪4と同様の構成なので、以下の説明を省略する。第2内輪54は、第1内輪53との間にコイルばね55(弾性部材)が配設されているので、第2内輪54は第1内輪53に対して軸方向他方側(図8右側)に付勢される。
出力軸103は、外周面から径方向外側に向かって延びる円盤状のストッパ56が、第2内輪54の軸方向他方側(図8右側)に立設され、ストッパ56は、貫通孔54aと対応する位置に、軸方向に亘って貫通する孔部56aが形成されている。ストッパ56は、孔部56aと異なる位置に、軸方向に亘って貫通する孔部56bが形成されている。貫通孔54a及び孔部56aにはピン60が挿通され、孔部56bにはピン61が挿通される。
移動手段57は、第1内輪53及び第2内輪54を連動して軸方向に移動させるための手段であり、ストッパ56から軸方向に離隔して配置されたソレノイド58と、そのソレノイド58が作動することにより出没するピン60,61とを備えている。ソレノイド58は、オフのときに、ストッパ56に向けて延びるロッド59が後退し、オンのときのロッド59の押出長さが2段階に調整可能とされている。ソレノイド58とストッパ56との間に配置されて一端16aが軸支されたアーム16の他方側に、ロッド59の先端が当接される。
アーム16の往復回動により軸方向に移動される移動板17は、ストッパ56に貫設されるピン60,61の軸方向端面に一端面が当接可能に配置される。ピン60,61は、移動板17に軸方向一端が押されて、他端が第1内輪53、第2内輪54の軸方向端面にそれぞれ当接可能な軸方向長に設定されている。
なお、ピン61は、ソレノイド58がオフのとき(図8参照)、移動板17に当接しない軸方向長に設定されている。ソレノイド58を作動させてロッド59を最大に押し出すと(図9(a)参照)、ピン60,61がそれぞれ軸方向に押し出されて、第1内輪53、第2内輪54が皿ばね11、コイルばね55の付勢力に抗してそれぞれ軸方向に移動する。また、ソレノイド58の作動によりロッド59を中間位置まで押し出すと(図9(b)参照)、ピン60が軸方向に押し出されて、第1内輪53が皿ばね11の付勢力に抗して軸方向に移動する。従って、移動手段57は、ソレノイド58によるロッド59の押出長さに応じて、移動板17が軸方向に移動される。移動板17の位置によりピン60,61の押し出される長さが変わり、第1内輪53及び第2内輪54は軸方向位置が異なる3つのポジションをとる(図8、図9(a)及び図9(b))。
図8に示すポジション(ロッド59の後退位置)では、皿ばね11、コイルばね55により第1内輪53及び第2内輪54が軸方向他方側(図8右側)に付勢される。このときには、第1内輪53の第1外周軌道面3aは第1ローラ6の外周面に押し付けられる一方、第2内輪54の第2外周軌道面4aは第2ローラ7の外周面から離される。この場合、4輪駆動車100を前進走行させる回転動力を出力軸103に入力すると、第1ローラ6はロック(係合)して第1内輪53及び外輪5と一体に回転するので、4輪駆動状態となる。一方、第2ローラ7は、第2内輪54及び外輪5に対してフリー状態となるので、コースティング走行や後退走行のときには2輪駆動(後輪駆動)状態となる。
図9(a)に示すポジション(ロッド59の最大押出位置)では、皿ばね11、コイルばね55の付勢力に抗してピン60,61により軸方向一方側(図9(a)左側)に第1内輪53及び第2内輪54が押し付けられる。このときには、第2内輪54の第2外周軌道面4aは第2ローラ7の外周面に押し付けられる一方、第1内輪53の第1外周軌道面3aは第1ローラ6の外周面から離される。この場合、4輪駆動車100を前進走行させる回転動力を出力軸103に入力すると、第1ローラ6は第1内輪52及び外輪5に対してフリー状態となるので、前進走行のときには2輪駆動(後輪駆動)状態となる。一方、コースティング走行や後退走行のときには、第2ローラ7はロック(係合)して第2内輪54及び外輪5と一体に回転するので、4輪駆動状態となる。
図9(b)に示すポジション(ロッド59の中間位置)では、皿ばね11の付勢力に抗してピン60により軸方向一方側(図9(b)左側)に第1内輪53が押し付けられ、コイルばね55により第2内輪54が軸方向他方側(図9(b)右側)に付勢される。このときには、第1内輪53の第1外周軌道面3a及び第2内輪54の第2外周軌道面4aは、第1ローラ6及び第2ローラ7の外周面から離される。第1ローラ6及び第2ローラ7は、第1内輪53、第2内輪54及び外輪5に対してフリー状態となるので、4輪駆動車100は常に2輪駆動(後輪駆動)状態となる。以上のように第3実施の形態では、ソレノイド58を用いた簡易な移動手段57により、第1内輪53と第2内輪54とを別個に移動させることができるので、走行モード毎の駆動輪の選択の幅を広げることができると共に装置を簡素化できる。
次に図10及び図11を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施の形態では、ソレノイド58を用いて第1ローラ6、第2ローラ7のいずれかがフリーとなるポジションをとり得るクラッチ52について説明した。これに対し第4実施の形態では、ソレノイド58を用いて第1ローラ6、第2ローラ7のいずれもがロックされるポジションをとり得るクラッチ62について説明する。なお、第1実施の形態から第3実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図10は第4実施の形態におけるクラッチ62の軸方向断面図であり、図11(a)は走行モード切換後のクラッチ62の軸方向断面図であり、図11(b)は他の走行モードに切換後のクラッチ62の軸方向断面図である。
図10に示すようにクラッチ62は、出力軸103の径方向外側に配設される第1内輪63と、第1内輪63の軸方向に並設されると共に出力軸103の径方向外側に配設される第2内輪64と、第1内輪63及び第2内輪64の径方向外側に配設される外輪65と、外輪65と第1内輪63及び第2内輪64との間に介設される複数の第1ローラ66及び第2ローラ67と、第1ローラ66及び第2ローラ67をそれぞれ保持する第1保持器68及び第2保持器69とを備えている。
第1内輪63及び第2内輪64は、いずれも円環状の部材であり、軸心O回りの単葉回転双曲面をなす第1外周軌道面63a及び第2外周軌道面64aが外周面に形成されている。第1内輪63及び第2内輪64は、スプラインによって出力軸103に対して回転が規制される一方、出力軸103に対する軸方向の移動が許容されている。
外輪65は、第1内輪63及び第2内輪64の径方向外側に配設される円環状の部材であり、軸心O回りの単葉回転双曲面をなす第1内周軌道面65a及び第2内周軌道面65bが、第1外周軌道面63a及び第2外周軌道面64aと対向する内周面にそれぞれ形成されており、外周面にスプロケット65cが設けられている。スプロケット65cは、フロント駆動軸111(図1参照)に設けられた被動歯車112に代えて形成されるスプロケット(図示せず)との間でチェーン73が係回される部位である。チェーン73を介して外輪65とフロント駆動軸111との間に動力が伝達される。
第1ローラ66は円筒状に形成される部材であり、第1保持器68により、軸心Oを含む面から一定角度傾斜して(軸心Oに対して一定のスキュー角に設定され)、第1外周軌道面63a及び第1内周軌道面65aの円周方向に複数配設される。第2ローラ67は円筒状に形成される部材であり、第2保持器99により、軸心Oを含む面から第1ローラ63と反対方向に一定角度傾斜して(軸心Oに対して一定のスキュー角に設定され)、第2外周軌道面64a及び第2内周軌道面65bの円周方向に複数配設される。第1外周軌道面63a及び第1内周軌道面65aに第1ローラ66が係合することにより動力の伝達が行われ、第2外周軌道面64a及び第2内周軌道面65bに第2ローラ67が係合することにより動力の伝達が行われる。
外輪65は、第1内輪63及び第2内輪64と相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能に構成されており、軸方向他方側(図10右側)の径方向内側に段差状に形成された段部65eが、出力軸103に対して移動不能に設けられたストッパ72の径方向外側の軸方向端面に突き当たることにより、それ以上の外輪65の軸方向他方側への移動が規制される。また、出力軸103の軸方向一方側(図10左側)に設けられた鍔部103aに、外輪65と一体に形成された壁部65dが突き当たることにより、それ以上の外輪65の軸方向一方側への移動が規制される。ストッパ72及び段部65eは、第1外周軌道面63a及び第1内周軌道面65aに第1ローラ66が係合して捻じ込まれたときに、一定位置で外輪65の軸方向移動を停止させ、一定以上のトルクがかからないようにするトルクリミッタの機能と、第1ローラ66や第2ローラ67の抜け出しを防止する機能とを有する。
なお、軸方向に移動可能に構成された外輪65は、チェーン73によりフロント駆動軸111と連係されている。チェーン73は軸心Oに対して直交する方向に架け渡されているので、軸心O方向に柔軟性を有している。よって、チェーン73は外輪65の軸方向の変位に追随することができ、チェーン73により外輪65の軸方向移動の移動が規制されるのを防止できる。
外輪5の壁部65dと第1内輪63との間に皿ばね70が挿入され、第1内輪63と第2内輪64との間に皿ばね71が挿入されている。また、ストッパ72の軸方向に貫通形成された孔部72aにピン75が挿通されている。ストッパ72からのピン75の突出長さ及び皿ばね70,71の付勢力により、第1内輪63及び第2内輪64の軸方向位置を定めることができる。なお、皿ばね71の付勢力は、皿ばね70の付勢力より大きく設定されている。
移動手段74は、ソレノイド58の往復動に連動して出没するピン75により、第1内輪63及び第2内輪64を連動して軸方向に移動させるための手段である。ソレノイド58は、ロッド59の押出長さを2段階に切り換えることができるので、移動板17の位置によりピン75の押出長さを変えることができる。その結果、第1内輪63及び第2内輪64は軸方向位置が異なる3つのポジションをとる(図10、図11(a)及び図11(b))。
図10に示すポジション(ロッド59の後退位置)では、皿ばね70,71により第1内輪63及び第2内輪64が軸方向他方側(図10右側)に付勢される。このときには、第1内輪63の第1外周軌道面3a及び第2内輪64の第2外周軌道面4aは、第1ローラ66及び第2ローラ67の外周面から離される。第1ローラ66及び第2ローラ67は、第1内輪63、第2内輪64及び外輪65に対してフリー状態となるので、4輪駆動車100は常に2輪駆動(後輪駆動)状態となる。
図11(a)に示すポジション(ロッド59の最大押出位置)では、皿ばね70,71の付勢力に抗してピン75により軸方向一方側(図11(a)左側)に第2内輪64が移動され、皿ばね71の付勢力により第1内輪63が移動される。このときには、第1内輪63の第1外周軌道面63a及び第2内輪64の第2外周軌道面64aは、第1ローラ66及び第2ローラ67の外周面に押し付けられる。この場合、4輪駆動車100は前進走行、コースティング走行および後退走行のとき、いずれも4輪駆動状態となる。
図11(b)に示すポジション(ロッド59の中間位置)では、皿ばね71の付勢力により、軸方向他方側(図11(b)右側)に第2内輪64が押され、軸方向一方側(図11(a)左側)に第1内輪63が押される。このときには、第1内輪63の第1外周軌道面63aは第1ローラ66の外周面に押し付けられる一方、第2内輪64の第2外周軌道面64aは第2ローラ67の外周面から離される。この場合、4輪駆動車100を前進走行させる回転動力を出力軸103に入力すると、第1ローラ66はロック(係合)して4輪駆動状態となる。一方、第2ローラ67は、第2内輪64及び外輪65に対してフリー状態となるので、コースティング走行や後退走行のときには2輪駆動(後輪駆動)状態となる。皿ばね70の付勢力より皿ばね71の付勢力が大きく設定されているので、第1ローラ66が係合した状態で、皿ばね71の付勢力により第2ローラ67の係合を解除できる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態では、エンジン101を駆動源とする4輪駆動車100について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、エンジン及びモータを駆動源とする4輪駆動車、モータを駆動源とする4輪駆動車等に適用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、第1内輪3,23,53,63及び第2内輪4,24,54,64に出力軸103の動力が伝達され、外輪5,65から前輪駆動系に動力が伝達される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。外輪5,65から径方向内側に向かって延びる連結部を設け、その連結部を出力軸103と連結する一方、出力軸103と外輪との間に内輪を設けるようにすることは当然可能である。その場合、内輪の軸方向端面を軸方向に延設して、外輪の軸方向端面より軸方向外側に延びる延設部を設け、その延設部の外周面にギヤやスプロケットを設ける。これにより、軸方向長は大きくなるが、本実施の形態と同様の作用効果を実現できる。
上記各実施の形態では、内輪を軸方向に2つに分けて第1内輪3,23,53,63及び第2内輪4,24,54,64とし、それらの径方向外側に位置する外輪5,65は軸方向に分けずに一体とする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。(1)外輪5,65を軸方向に2つに分けて第1外輪および第2外輪とし、それらの径方向内側に位置する内輪は軸方向に分けずに一体とするもの、(2)内輪および外輪の双方を軸方向に2つに分けて第1内輪、第2内輪、第1外輪及び第2外輪を設け、第1内輪の径方向外側に第1外輪を配置すると共に、第2内輪の径方向外側に第2外輪を配置するもの等を採用することは当然可能である。これらの場合も、本実施の形態と同様の作用効果を実現できる。
なお、上記各実施の形態では、外輪5,65を軸方向に分けずに一体とする場合について説明したので、被動歯車112又はチェーン73と係合する単一のギヤ5c又はスプロケット65cを設けているが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、外輪5,65を軸方向に2つに分けて第1外輪および第2外輪とする場合には、第1外輪および第2外輪の各々にギヤ又はスプロケットを設けることが必要である。第1外輪および第2外輪の各々とフロント駆動軸111との間で動力伝達をするためである。但し、外輪5,65を軸方向に2つに分けて第1外輪および第2外輪とする場合であっても、第1外輪および第2外輪が連結され一体的に回転するように構成されている場合には、第1外輪または第2外輪の一方にギヤ又はスプロケットを設けることができる。
上記各実施の形態では、第1外周軌道面3a,63a、第2外周軌道面4a,64a(外周軌道面)、第1内周軌道面5a,65a、第2内周軌道面5b,65b(内周軌道面)を単葉回転双曲面で形成し、円筒状の第1ローラ6,66及び第2ローラ7,67(ローラ)を採用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の形態における外周軌道面、内周軌道面およびローラを採用することは当然可能である。他の形態としては、例えば外周軌道面および内周軌道面を単葉回転双曲面で形成しローラを円錐状とするもの、外周軌道面および内周軌道面を円錐状面とするもの、外周軌道面または内周軌道面を円筒状としたり、ローラを鼓状、太鼓状や円筒状としたりするもの等が挙げられる。
なお、内周軌道面および外周軌道面をローラの外周面と線接触する単葉回転双曲面または円錐状面として形成することが望ましい。軌道面の形状を単純な円錐状面とすることにより、内周軌道面および外周軌道面の加工を容易にできるからである。また、軌道面を単葉回転双曲面とすることにより、軌道面を円錐状面とする場合と比較して耐久性を向上できる。即ち、スキュー角を有するローラを軌道面(単葉回転双曲面)に係合させるときには、ローラの軸方向の撓み量が小さくてもローラと軌道面とを線接触させることができるので、ローラ径を大きくすることができると同時に接触面積を大きくできる(線接触長さを大きくできる)からである。
上記実施の形態では、ギヤ5c及び被動歯車112を一対のヘリカルギヤ(斜歯ギヤ)で構成する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、歯すじが軸心Oと非平行となるように歯を形成し軸方向力(スラスト)が発生するものであれば、他のギヤを採用することは当然可能である。他のギヤとしては、例えば、かさ歯車、ねじ歯車等を挙げることができる。
上記各実施の形態では、4輪駆動車100に配設される断続手段として、スプラインクラッチ式の断続装置116を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他のクラッチ方式の断続装置を採用することは当然可能である。他のクラッチ方式としては、例えばドグクラッチ式、円錐摩擦クラッチ式等を挙げることができる。
<その他>
<手段>
技術的思想1の動力伝達装置は、駆動源からの動力を出力軸により後輪駆動系に伝達する一方、前記出力軸の動力を前輪駆動系に遮断可能に伝達するクラッチを備える4輪駆動車用の動力伝達装置であって、前記クラッチは、前記出力軸の径方向外側に配設される第1内輪と、その第1内輪の径方向外側に配設される第1外輪と、その第1外輪の内周面に形成される第1内周軌道面と、その第1内周軌道面に対向すると共に前記第1内輪の外周面に形成される第1外周軌道面と、その第1外周軌道面と前記第1内周軌道面との間に介設され、前記第1内輪および前記第1外輪の所定方向の相対回転により前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に係合して回転動力を伝達する複数の第1ローラと、その複数の第1ローラを、前記出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持する第1保持器とを備え、前記第1内輪または前記第1外輪の一方は、前記出力軸と一体回転可能に構成され、前記第1内輪または前記第1外輪の他方は、前記第1内輪または前記第1外輪の一方に対して相対回転可能および軸方向に相対移動可能に構成されると共に、前記第1内輪または前記第1外輪の他方と一体回転可能に構成されるスプロケット又はギヤを備え、そのスプロケットは、前記前輪駆動系に動力を伝達する無端状のチェーンと係合し、前記ギヤは、前記軸心に対して歯すじが非平行となるように所定のねじれ角を有する歯が形成され、前記前輪駆動系に動力を伝達する被動歯車と係合し、前記ギヤのねじれ方向は、前記被動歯車と係合して動力を伝達するときの前記ギヤに生じるスラスト力の方向と、前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に前記第1ローラが係合して動力を伝達するときの前記第1内輪または前記第1外輪の他方が移動する方向とを一致させるように設定され、前記後輪駆動系の回転速度が前記前輪駆動系の回転速度より大きいときに前記出力軸の動力を前記前輪駆動系に伝達可能に構成されている。
技術的思想2記載の動力伝達装置は、技術的思想1記載の動力伝達装置において、前記クラッチは、前記出力軸の径方向外側に配設されると共に、前記第1内輪の軸方向に並設される第2内輪と、その第2内輪の径方向外側に配設されると共に、前記第1外輪の軸方向に並設される第2外輪と、その第2外輪の内周面に形成される第2内周軌道面と、その第2内周軌道面に対向すると共に前記第2内輪の外周面に形成される第2外周軌道面と、前記第2外周軌道面と前記第2内周軌道面との間に介設され、前記第1ローラが係合する方向と反対方向の前記第2内輪および前記第2外輪の相対回転により前記第2内周軌道面および前記第2外周軌道面に係合して回転動力を伝達する複数の第2ローラと、その複数の第2ローラを、前記出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持する第2保持器とを備え、前記第2内輪または前記第2外輪の一方は、前記出力軸と一体回転可能に構成され、前記第2内輪または前記第2外輪の他方は、前記第2内輪または前記第2外輪の一方に対して相対回転可能および軸方向に相対移動可能に構成されると共に、前記スプロケット又は前記ギヤと共に前記第1内輪または前記第1外輪の他方と一体回転可能に構成され、前記第1内輪または前記第1外輪の他方、及び、それに並設される前記第2内輪または前記第2外輪を連動して軸方向に移動させる移動手段を備えている。
技術的思想3記載の動力伝達装置は、技術的思想2記載の動力伝達装置において、前記移動手段は、往復運動をするソレノイド又は回転運動をするモータの駆動力により前記第1内輪または前記第1外輪の他方、及び、それに並設される前記第2内輪または前記第2外輪を軸方向移動する。
技術的思想4記載の動力伝達装置は、技術的思想3記載の動力伝達装置において、前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に前記第1ローラが係合して回転動力を伝達するときの前記第1内輪または前記第1外輪の軸方向の移動方向に前記第1内輪または前記第1外輪を付勢する第1弾性部材と、前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面と前記第1ローラとの係合を解除するときに、前記第1弾性部材による前記第1内輪または前記第1外輪の付勢を前記ソレノイド又は前記モータを作動させて解除する第1付勢解除手段とを備えている。
技術的思想5記載の動力伝達装置は、技術的思想3記載の動力伝達装置において、前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面と前記第1ローラとの係合を阻止する方向に前記第1内輪または前記第1外輪を軸方向に付勢する第2弾性部材と、前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に前記第1ローラを係合するときに、前記第2弾性部材による前記第1内輪または前記第1外輪の付勢を前記ソレノイド又は前記モータを作動させて解除する第2付勢解除手段とを備えている。
技術的思想6記載の動力伝達装置は、技術的思想1から5のいずれかに記載の動力伝達装置において、前記第1外周軌道面および前記第1内周軌道面に前記第1ローラが係合するときの前記第1内輪または前記第1外輪の軸方向移動量を規制する移動規制手段を備えている。
技術的思想7記載の動力伝達装置は、技術的思想1から6のいずれかに記載の動力伝達装置において、前記クラッチから前記前輪駆動系までの動力伝達経路に配置され、動力の伝達を断続する断続手段を備えている。
<効果>
技術的思想1記載の4輪駆動車用の動力伝達装置によれば、駆動源からの動力が出力軸により後輪駆動系に伝達される一方、出力軸の動力を前輪駆動系に遮断可能に伝達するクラッチを備えるものであり、そのクラッチは、出力軸の径方向外側に第1内輪が配設され、その第1内輪の径方向外側に第1外輪が配設される。その第1外輪の内周面に第1内周軌道面が形成され、その第1内周軌道面に対向する第1外周軌道面が第1内輪の外周面に形成される。第1外周軌道面と第1内周軌道面との間に介設される複数の第1ローラは、第1保持器により、出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持される。
第1内輪または第1外輪の一方は出力軸と一体回転可能に構成されるので、駆動源からの動力が出力軸に伝達されると、動力は、第1内輪または第1外輪の一方および後輪駆動系に伝達される。第1内輪または第1外輪の他方は、第1内輪または第1外輪の一方に対して相対回転可能に構成されているので、第1内輪または第1外輪の一方に動力を伝達し、第1内輪および第1外輪に所定方向の相対回転を与えると、第1ローラは第1内周軌道面および第1外周軌道面に案内されて自転しつつ出力軸の回りを公転する。その第1ローラの回転に案内されて、第1内輪または第1外輪の他方は径方向に弾性変形しながら、第1内輪または第1外輪の一方に対して軸方向に相対移動する。第1内周軌道面および第1外周軌道面に複数の第1ローラが係合すると、第1内輪、第1外輪および第1ローラが一体に回転し回転動力が伝達される。
第1内輪または第1外輪の他方は、第1内輪または第1外輪の他方と一体回転可能なスプロケット又はギヤを備えている。スプロケットは、前輪駆動系に動力を伝達するチェーンと係合する。チェーンは巻き掛け方向と交差する方向に変位できるので、第1内輪または第1外輪の他方の軸方向移動に追随できる。
また、ギヤは、軸心に対して歯すじが非平行となるように所定のねじれ角を有する歯が形成され、前輪駆動系に動力を伝達する被動歯車と係合する。ギヤのねじれ方向は、被動歯車と係合して動力を伝達するときのギヤに生じるスラスト力の方向と、第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラが係合して動力を伝達するときの第1内輪または第1外輪の他方が移動する方向とを一致させるように設定される。よって、第1内輪または第1外輪の他方の軸方向移動に伴いギヤが軸方向に移動するときに、歯面のねじれ角によるギヤのスラスト力によって第1内輪または第1外輪の他方の軸方向移動を規制することを防止できる。
以上のように、第1内輪または第1外輪の他方と一体回転可能なスプロケット又はギヤを備えることにより、第1内輪または第1外輪の他方が軸方向に移動できなくなることを防止できる。即ち、第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラが係合できなくなることを防止できるので、後輪駆動系の回転速度が前輪駆動系の回転速度より大きいときに第1内輪および第1外輪に第1ローラが係合して、出力軸の動力を前輪駆動系に伝達する4輪駆動状態にできる。
第1ローラが第1内輪および第1外輪に係合するときには、第1ローラは第1内輪の第1外周軌道面および第1外輪の第1内周軌道面を転動すると共に、第1外周軌道面および第1内周軌道面は径方向に弾性変形する。第1ローラの転動や第1内輪および第1外輪の弾性変形により切り換え時の衝撃が吸収されるので、2輪駆動状態から4輪駆動状態へスムーズに切り換えられる効果がある。
技術的思想2記載の動力伝達装置によれば、クラッチは、出力軸の径方向外側に配設される第2内輪が第1内輪の軸方向に並設され、その第2内輪の径方向外側に配設される第2外輪が第1外輪の軸方向に並設される。第2外輪の内周面に第2内周軌道面が形成され、その第2内周軌道面に対向する第2外周軌道面が第2内輪の外周面に形成される。その第2外周軌道面と第2内周軌道面との間に複数の第2ローラが介設される。複数の第2ローラは、第2保持器により、出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持され、第1ローラが係合する方向と反対方向の第2内輪および第2外輪の相対回転により第2内周軌道面および第2外周軌道面に係合して回転動力を伝達する。
第2内輪または第2外輪の一方は出力軸と一体回転可能に構成され、第2内輪または第2外輪の他方は、第2内輪または第2外輪の一方に対して相対回転可能および軸方向に相対移動可能に構成される。第2内輪または第2外輪の他方は、スプロケット又はギヤと共に第1内輪または第1外輪の他方と一体回転可能に構成されるので、前進走行のときに第1内輪、第1外輪および第1ローラが係合可能となるように設定すれば、第2内輪、第2外輪および第2ローラを、コースティング走行や後退走行のときに係合可能となるように設定できる。第1内輪または第1外輪の他方、及び、それに並設される第2内輪または第2外輪を連動して移動手段により軸方向に移動させることができるので、前進走行、コースティング走行、後退走行等における駆動輪の切り換えを適宜行うことができる。よって、技術的思想1の効果に加え、駆動輪の選択の幅を広げる効果がある。
技術的思想3記載の動力伝達装置によれば、移動手段は、往復運動をするソレノイド又は回転運動をするモータの駆動力により第1内輪または第1外輪の他方、及び、それに並設される第2内輪または第2外輪を軸方向移動するので、技術的思想2の効果に加え、動力伝達装置を小型・軽量化できる効果がある。
技術的思想4記載の動力伝達装置によれば、第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラが係合して回転動力を伝達するときの第1内輪または第1外輪の軸方向の移動方向に、第1弾性部材により第1内輪または第1外輪が付勢される。第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとの係合を解除するときに、第1付勢解除手段によりソレノイド又はモータを作動させて、第1弾性部材による第1内輪または第1外輪の付勢が解除される。その結果、技術的思想3の効果に加え、ソレノイド又はモータを作動させて、第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとの係合を解除し、回転動力の伝達を遮断できる効果がある。
技術的思想5記載の動力伝達装置によれば、第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとの係合を阻止する方向に、第2弾性部材により軸方向に第1内輪または第1外輪が付勢される。第1内周軌道面および第1外周軌道面に第1ローラを係合するときに、第2付勢解除手段によりソレノイド又はモータを作動させて、第2弾性部材による第1内輪または第1外輪の付勢が解除される。その結果、技術的思想3の効果に加え、ソレノイド又はモータを作動させて、第1内周軌道面および第1外周軌道面と第1ローラとを係合させ、回転動力を伝達できる効果がある。
技術的思想6記載の動力伝達装置によれば、第1外周軌道面および第1内周軌道面に第1ローラが係合するときの第1内輪または第1外輪の軸方向移動量が移動規制手段により規制されるので、規制された軸方向移動量を超えて軸方向に移動しなければ伝達できないような過大なトルク(ピークトルク)が出力軸に入力されたときには、第1ローラは、第1外周軌道面および第1内周軌道面に係合不能となる。これにより、前輪駆動系にピークトルクが伝達されることを阻止できるので、技術的思想1から5のいずれかの効果に加え、ピークトルクを考慮して前輪駆動系の構造を設計する必要をなくし、前輪駆動系を小型・軽量化できる効果がある。
技術的思想7記載の動力伝達装置によれば、動力の伝達を断続する断続手段が、クラッチから前輪駆動系までの動力伝達経路に配設される。断続手段により前輪駆動系の回転を停止することによって、2輪駆動時(後輪駆動)の回転によるフリクションロス及びユニット内のオイル撹拌によるエネルギーロスをなくすことができる。その結果、技術的思想1から6のいずれかの効果に加え、後輪駆動(2輪駆動状態)のときの燃費の向上を図ることができる。なお、4輪駆動が必要なときには、クラッチを締結して前輪駆動系の回転数を上昇させた後、断続手段を締結することで4輪駆動状態にできるので、駆動輪の選択の幅を広げられる効果がある。
1 動力伝達装置
2,22,52,62 クラッチ
3,23,53,63 第1内輪
3a,63a 第1外周軌道面
4,24,54,64 第2内輪
4a,64a 第2外周軌道面
5,65 外輪(第1外輪、第2外輪)
5a,65a 第1内周軌道面
5b,65b 第2内周軌道面
5c ギヤ
5c1 歯
5d,5e 段部(移動規制手段の一部)
6,66 第1ローラ
7,67 第2ローラ
8,68 第1保持器
9,69 第2保持器
10,12,25,27,56,72 ストッパ(移動規制手段の一部)
11,71 皿ばね(第1弾性部材)
13,29,57,74 移動手段
14,58 ソレノイド
26 コイルばね(第1弾性部材)
30 モータ
55 コイルばね(第2弾性部材)
65c スプロケット
70 皿ばね(第2弾性部材)
73 チェーン
100 4輪駆動車
101 エンジン(駆動源)
103 出力軸
104 後輪差動装置(後輪駆動系の一部)
105 左後輪駆動軸(後輪駆動系の一部)
106 右後輪駆動軸(後輪駆動系の一部)
112 被動歯車
113 前輪差動装置(前輪駆動系の一部)
114 左前輪駆動軸(前輪駆動系の一部)
115 右前輪第1駆動軸(前輪駆動系の一部)
116 断続装置(断続手段)
117 右前輪第2駆動軸(前輪駆動系の一部)
O 軸心

Claims (7)

  1. 駆動源からの動力を出力軸により後輪駆動系に伝達する一方、前記出力軸の動力を前輪駆動系に遮断可能に伝達するクラッチを備える4輪駆動車用の動力伝達装置であって、
    前記クラッチは、
    前記出力軸の径方向外側に配設される第1内輪と、
    その第1内輪の径方向外側に配設される第1外輪と、
    その第1外輪の内周面に形成される第1内周軌道面と、
    その第1内周軌道面に対向すると共に前記第1内輪の外周面に形成される第1外周軌道面と、
    その第1外周軌道面と前記第1内周軌道面との間に介設され、前記第1内輪および前記第1外輪の所定方向の相対回転により前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に係合して回転動力を伝達する複数の第1ローラと、
    その複数の第1ローラを、前記出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持する第1保持器とを備え、
    前記第1内輪または前記第1外輪の一方は、前記出力軸と一体回転可能に構成され、
    前記第1内輪または前記第1外輪の他方は、前記第1内輪または前記第1外輪の一方に対して相対回転可能および軸方向に相対移動可能に構成されると共に、前記第1内輪または前記第1外輪の他方と一体回転可能に構成されるギヤを備え
    記ギヤは、前記軸心に対して歯すじが非平行となるように所定のねじれ角を有する歯が形成され、前記前輪駆動系に動力を伝達する被動歯車と係合し、
    前記ギヤのねじれ方向は、前記被動歯車と係合して動力を伝達するときの前記ギヤに生じるスラスト力の方向と、前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に前記第1ローラが係合して動力を伝達するときの前記第1内輪または前記第1外輪の他方が移動する方向とを一致させるように設定され、
    前記後輪駆動系の回転速度が前記前輪駆動系の回転速度より大きいときに前記出力軸の動力を前記前輪駆動系に伝達可能に構成され
    前記被動歯車が駆動側、前記ギヤが被動側となって前記ギヤに発生する軸方向力は、前記第1ローラの回転による前記第1内輪および前記第1外輪の引き離し力より先に前記第1内輪または前記第1外輪に作用することを特徴とする動力伝達装置。
  2. 前記クラッチは、
    前記出力軸の径方向外側に配設されると共に、前記第1内輪の軸方向に並設される第2内輪と、
    その第2内輪の径方向外側に配設されると共に、前記第1外輪の軸方向に並設される第2外輪と、
    その第2外輪の内周面に形成される第2内周軌道面と、
    その第2内周軌道面に対向すると共に前記第2内輪の外周面に形成される第2外周軌道面と、
    前記第2外周軌道面と前記第2内周軌道面との間に介設され、前記第1ローラが係合する方向と反対方向の前記第2内輪および前記第2外輪の相対回転により前記第2内周軌道面および前記第2外周軌道面に係合して回転動力を伝達する複数の第2ローラと、
    その複数の第2ローラを、前記出力軸の軸心を含む面から所定角度傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持する第2保持器とを備え、
    前記第2内輪および前記第1内輪は、前記出力軸と一体回転可能に構成され、
    記第2外輪は、前記第2内輪に対して相対回転可能および軸方向に相対移動可能に構成されると共に、前記ギヤと共に前記第1外輪と一体回転可能に構成され、
    前記第1内輪、及び、それに並設される前記第2内輪を連動して軸方向に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
  3. 前記移動手段は、往復運動をするソレノイド又は回転運動をするモータの駆動力により前記第1内輪、及び、それに並設される前記第2内輪を軸方向移動することを特徴とする請求項2記載の動力伝達装置。
  4. 前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に前記第1ローラが係合して回転動力を伝達するときの前記第1内輪の軸方向の移動方向に前記第1内輪を付勢する第1弾性部材と、
    前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面と前記第1ローラとの係合を解除するときに、前記第1弾性部材による前記第1内輪の付勢を前記ソレノイド又は前記モータを作動させて解除する第1付勢解除手段とを備えていることを特徴とする請求項3記載の動力伝達装置。
  5. 前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面と前記第1ローラとの係合を阻止する方向に前記第1内輪を軸方向に付勢する第2弾性部材と、
    前記第1内周軌道面および前記第1外周軌道面に前記第1ローラを係合するときに、前記第2弾性部材による前記第1内輪の付勢を前記ソレノイド又は前記モータを作動させて解除する第2付勢解除手段とを備えていることを特徴とする請求項3記載の動力伝達装置。
  6. 前記第1外周軌道面および前記第1内周軌道面に前記第1ローラが係合するときの前記第1内輪または前記第1外輪の軸方向移動量を規制する移動規制手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の動力伝達装置。
  7. 前記クラッチから前記前輪駆動系までの動力伝達経路に配置され、動力の伝達を断続する断続手段を備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の動力伝達装置。
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