以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。図1において、光学系101は、CMOS型撮像素子の受光部に被写体像を結像させる。光学系101は、図示されていない鏡筒内に配置されたズームレンズや絞り機構等を含む。光学系101の各機構は、CPU(Central Processing Unit)104の制御により、各部を機械的に駆動してオートフォーカス等の制御を行う。
撮像部102は、CMOS型撮像素子を用いて被写体の撮像を行う。撮像部102では、CMOS型撮像素子の出力信号に対して、AGC(自動利得制御)、OB(オプティカルブラック)クランプ、アナログ・デジタル(AD:Analog Digital)変換といった処理を行い、デジタル撮像信号を生成して出力する。撮像部102は、システムコントロール部103に備えられた、DSP(Digital Signal Processor)107に撮像信号を出力する。
システムコントロール部103は、CPU104、ROM(Read Only Memory)105、RAM(Random Access Memory)106、DSP107、及び外部インターフェース108等を備える。CPU104は、ROM105及びRAM106等を用いて、供給される処理プログラムを実行し、本撮像装置の各部に指示を送ることでシステム全体の制御を行う。ROM105は、撮像装置を駆動するためのファームウェア等の情報を記憶するためのものであり、RAM106は、撮像装置の制御情報を一時的に蓄えるためのものである。
DSP107は、撮像部102からの撮像信号に対して各種の信号処理を行うことにより、所定のフォーマットによる静止画又は動画の映像信号(例えばYUV信号等)を生成する。外部インターフェース108には、各種エンコーダやデジタル・アナログ(DA:Digital Analog)変換器が設けられる。システムコントロール部103と、それに接続される外部要素(本例では、ディスプレイ112、メモリ媒体109、操作パネル111など)との間での各種制御信号やデータのやり取りは、外部インターフェース108を介して行われる。
ディスプレイ112は、撮像装置に組み込まれた、撮像した画像を表示する表示装置である。なお、撮像装置に組み込まれた表示装置に加えて、外部の表示装置に画像データを伝送し、表示できる構成とすることも勿論可能である。メモリ媒体コントローラ110は、各種メモリカード等に撮影された画像を適宜保存可能なメモリ媒体109に係る制御を行う。メモリ媒体109は、交換可能なメモリ媒体であり、例えば各種メモリカードの他に、磁気や光を用いたディスク媒体等を用いることができる。操作パネル111は、撮像装置で撮影作業等を行うに際して、ユーザが各種の指示を行うための入力キーが設けられている。CPU104は、この操作パネル111からの入力信号を監視して、その入力内容に基づいて各種の動作制御を実行する。
図2は、本実施形態における撮像部102の撮像素子の構成例を示すブロック図である。図2に示す撮像素子は、CMOS型撮像素子であり、画素アレイ201、行走査部(垂直走査部)202、AD変換部203、参照電圧生成部204、列走査部(水平走査部)205、出力部206、及びタイミング制御部207を有する。画素アレイ201は、行列状に配置された複数の単位画素208を有する。単位画素208は、画素列毎に配置された列信号線213及び画素行毎に配置された行制御線214に接続されている。単位画素208は、光電変換素子を含み、受光した光を信号電圧に変換する。単位画素208での光電変換により得られた信号電圧は、列信号線213を介してAD変換部203に出力される。
行走査部202は、画素アレイ201における画素行を順次選択する行走査を行う。AD変換部203は、列信号線213毎に設けられた複数のAD変換回路301を有し、複数の列信号線213に出力された画素208からの信号電圧を並列してデジタル信号に変換する。参照電圧生成部204は、時間の経過にともなって所定の傾きで電圧が変化する参照電圧RAMPを生成する。参照電圧RAMPとして、上位ビットのAD変換に用いる上位ビット変換参照電圧(コースDAC)、及び下位ビットのAD変換に用いる下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)が、参照電圧生成部204から各列に備えられたコンパレータ209へ供給される。列走査部205は、画素列を順次選択する列走査を行う。出力部206は、AD変換部203でのAD変換により得られたデジタル信号を外部に出力する。タイミング制御部207は、行走査部202、AD変換部203、参照電圧生成部204、及び列走査部205の動作タイミングを制御する。タイミング制御部207には、CPU104よりタイミング制御用のクロックMCLKが供給される。
AD変換回路301は、コンパレータ209、パワーダウン制御部210、及びアップダウンカウンタ211を有する。コンパレータ209は、列信号線213の電圧と参照電圧(ランプ信号)RAMPとのうち何れが大きいかの比較を行う。パワーダウン制御部210は、コンパレータ209への電力供給を制御する。パワーダウン制御部210は、コンパレータ209の電力供給制御に係る制御信号(パワーダウン信号)を、コンパレータ209に出力する。アップダウンカウンタ211は、クロックADCLKを用いてカウント値をカウントする。メモリ212は、アップダウンカウンタ211のカウント値を保持するメモリである。なお、コンパレータ209には、アナログ回路系の電源電圧が供給され、アップダウンカウンタ211にはデジタル回路系の電源電圧が供給される。
図3は、本実施形態におけるAD変換部203の構成例を示す図である。AD変換部203は、列信号線213毎に設けられたAD変換回路301を有する。AD変換回路301の各々は、コンパレータ209、パワーダウン制御部210、及びアップダウンカウンタ211を有し、対応する列信号線213に出力された画素からの電圧をデジタル信号に変換する。コンパレータ209は、列信号線213の電圧と参照電圧(ランプ信号)RAMPとを比較して比較結果を出力する。コンパレータ209は、パワーダウン制御部210から供給されるパワーダウン信号SPDにより電力供給が制御される。
パワーダウン制御部210は、バッファ302、フリップフロップ303、論理和演算回路(OR回路)308、310、314、論理積演算回路(AND回路)311、316、及び反転回路(NOT回路)315を有する。また、アップダウンカウンタ211は、AND回路304、312、上位ビットカウンタ回路305、及び下位ビットカウンタ回路313を有する。
パワーダウン制御部210において、バッファ302は、アナログ回路系の電源電圧(例えば、3.3V)の振幅のコンパレータ209の出力を、デジタル回路系の電源電圧(例えば、1.2V)の振幅の信号に変換して出力する。フリップフロップ303は、クロック入力端子にバッファ302の出力端子が接続され、データ入力端子に電源電圧VDDが接続される。フリップフロップ303の出力は、NOT回路315、AND回路316、及びアップダウンカウンタ211のAND回路304、312に供給される。
AND回路316には、フリップフロップ303の出力及び自身の出力が入力される。OR回路308には、NOT回路315を介してフリップフロップ303の出力が入力されるとともに、AND回路316の出力が入力される。NOT回路315は、入力される信号を、1クロック分遅延させるととともに論理を反転して出力する。OR回路310には、信号SUP及びAND回路316の出力が入力され、OR回路314には、信号SLOW及びAND回路316の出力が入力される。信号SUP、SLOWは、アップダウンカウンタ211の上位ビットカウンタ回路305より出力される信号である。
ここで、OR回路308、310、314の各々は、コンパレータ209の電源供給の停止条件について判定を行うものであり、電源供給の停止条件に合った場合にそのOR回路308、310、314の出力がローレベルとなる。OR回路308は、フリップフロップ303の出力が2度目に反転した際に、コンパレータ209への電源供給を停止させるための出力を発生する。OR回路310は、上位ビットカウンタ回路305のカウント値が任意の上限値(第1の閾値)を上回っている状態で、フリップフロップ303の出力が1度目の反転をした場合に、コンパレータ209への電源供給を停止させるための出力を発生する。OR回路314は、上位ビットカウンタ回路305のカウント値が任意の下限値(第2の閾値)を下回っている状態で、フリップフロップ303の出力が1度目の反転をした場合に、コンパレータ209への電源供給を停止させるための出力を発生する。
AND回路311は、OR回路308、310、314の出力及び自身の出力が入力され、出力をパワーダウン制御部210の出力であるパワーダウン信号として出力する。つまり、コンパレータ209の電源供給の停止条件に合った場合に、AND回路311にはローレベルが入力され、パワーダウン信号SPDがローレベルとなる。また、AND回路311は、自身の出力が入力され、コンパレータ209の電源供給が停止になった場合、1つの画素の読み出しが終わるまで、その状態を維持するようになっている。
アップダウンカウンタ211において、AND回路304は、クロックADCLK及びフリップフロップ303の出力が入力され、出力が上位ビットカウンタ回路305のクロック入力端子に接続される。また、AND回路312は、クロックADCLKが入力されるとともに、フリップフロップ303の出力が反転入力され、出力が下位ビットカウンタ回路313のクロック入力端子に接続される。すなわち、AND回路304は、上位ビットカウンタ回路305にカウント用のクロックを与え、AND回路312は、下位ビットカウンタ回路313にカウント用のクロックを与える。
上位ビットカウンタ回路305は、AD変換により上位ビットの値を得る第1のアナログ・デジタル変換を行う。上位ビットカウンタ回路305は、コンパレータ209の出力における最初の反転までの期間(上位ビットについての比較動作の開始からコンパレータ209の出力が反転するまでの期間)をカウントする。下位ビットカウンタ回路313は、AD変換により下位ビットの値を得る第2のアナログ・デジタル変換を行う。下位ビットカウンタ回路313は、コンパレータ209の出力における2度目の反転までの期間(下位ビットについての比較動作の開始からコンパレータ209の出力が反転するまでの期間)をカウントする。
また、上位ビットカウンタ回路305は、カウント値に応じたレベルの信号SUP、SLOWを出力する。信号SUPは、通常はローレベルであり、カウント値がある上限値より大きくなる(第1の閾値より大きくなる)ことでハイレベルとなる信号である。信号SUPは、例えば2進数で各桁を表すビットのうち第1の任意の桁以上のビットのAND演算をとることで容易に実現可能である。また、信号SLOWは、通常はローレベルであり、カウント値がある下限値より大きくなる(第2の閾値より大きくなる)ことでハイレベルとなる信号である。信号SLOWは、例えば2進数で各桁を表すビットのうち第2の任意の桁以上のビットのAND演算をとることで容易に実現可能である。なお、第1の任意の桁よりも、第2の任意の桁のほうが小さい桁である。
図4は、本実施形態におけるコンパレータ209の構成例を示す図である。複数のコンパレータ209は、1つの駆動電流供給回路401に接続され、駆動電流の供給を受ける。出力バッファ402の出力が、パワーダウン制御部のバッファ302に入力されるとともに、上位ビットAD変換と下位ビットAD変換の参照電圧切り替え制御用のメモリ403に入力される。メモリ403の出力が、参照電圧RAMPの上位ビット変換参照電圧(コースDAC)をスイッチするためのトランジスタ405のゲートに供給される。トランジスタ406は、オートゼロ動作制御に係るトランジスタであり、ゲートに供給されるオートゼロパルスPSETによりオン/オフ制御される。
トランジスタ407は、参照電圧(RAMP)側の入力トランジスタであり、トランジスタ408は、列信号線213側の入力トランジスタである。トランジスタ407は、ゲートにトランジスタ405を介して参照電圧RAMPの上位ビット変換参照電圧(コースDAC)が供給可能になっている。また、トランジスタ407のゲートは、一方の電極に参照電圧RAMPの下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)が供給されるキャパシタ412の他方の電極に接続される。トランジスタ408のゲートは、一方の電極が列信号線213に接続され列信号線213の出力を受けるキャパシタ415の他方の電極に接続される。
トランジスタ409は、入力トランジスタ407、408に流れる電流を制限するためのものである。トランジスタ416は、駆動電流供給回路401とカレントミラーを構成する。トランジスタ410、411は、パワーダウン制御部からのパワーダウン信号SPDを受けて、駆動電流供給回路401からコンパレータへの電流供給を断つためのトランジスタである。なお、コンパレータ209は、図4に示す構成に限定されるものではなく、同様の機能を有する構成であればよい。例えば、トランジスタ411は、駆動電流供給回路401とカレントミラーを構成するP型トランジスタ416のドレイン側に直列に接続されているが、ソース側に直列に接続されてもよい。
次に、本実施形態における撮像素子において、行走査部202により選択された画素行の画素208から列信号線213を介して出力される信号電圧のAD変換に係るAD変換部203の動作について説明する。
図5は、本実施形態におけるAD変換部203の通常出力領域の動作例を示すタイミングチャートである。ここで、AD変換後の信号にて上位ビットの信号値が、0レベルから所定の下限値以下(第2の閾値以下)の範囲を領域Aとする。また、その下限値より大きく所定の上限値以下(第1の閾値以下)の範囲を領域Bとする。また、その上限値より大きく上位ビットの取り得る最大値までの範囲を領域Cとする。例えば、AD変換部203の通常出力領域が領域Bに対応し、低出力領域が領域Aに対応し、高出力領域が領域Cに対応している。また、下限値とは、遮光状態での暗電流成分のみの信号値である黒レベルに相当し、上限値とは、後述のJPEG信号における飽和付近の信号値に相当する。領域A、B、Cの各領域を、上位ビットのAD変換の時刻で述べると、図示したタイミングチャートにおいて時刻t3〜t4が領域Aに相当し、時刻t4〜t6が領域Bに相当し、時刻t6〜t7が領域Cに相当する。
以下では、AD変換の処理内容について説明した後、本実施形態において、どのように消費電力を削減するかについて説明する。まず、図5を参照して、コンパレータ209の出力が領域Bで反転した場合について説明する。なお、本実施形態では、AD変換後のデジタル信号における上位ビットのビット数をKビットとし、下位ビットのビット数をLビットとする。
はじめに、時刻t1〜t2のオートゼロ期間PH0にオートゼロ動作を行う。時刻t1にて、コンパレータ209のオフセット電圧除去及びコンパレータ反転電圧を設定する。このためコンパレータ209において、メモリ403をハイレベルにセットする。これにより、下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)に接続されたキャパシタ412と入力トランジスタ407のゲートとの間に一方の端子が接続され、他方の端子が上位ビット変換参照電圧(コースDAC)に接続されたトランジスタ405をオン状態にする。
また、オートゼロパルスPSETをハイレベルにする。これにより、列信号線213に接続されたキャパシタ415と入力トランジスタ408のゲートとの間に一方の端子が接続され、他方の端子がコンパレータ209の出力に接続されたトランジスタ406をオン状態とする。参照電圧であるコースDAC及びファインDACは、それぞれオートゼロレベルとした状態、画素出力はリセットレベルを列信号線213に出力した状態で、オートゼロパルスPSETをローレベルにしてトランジスタ406のみをオフ状態にする。このオートゼロ動作により、時刻t2にて、コンパレータ209のオフセット電圧がキャパシタ412にゼロレベルとして保持される。
次に、時刻t3〜t7の上位ビット変換期間PH1に上位ビットに係るAD変換(第1のアナログ・デジタル変換)を行う。時刻t3にて、上位ビットのAD変換を行うために、アップダウンカウンタ211の上位ビットカウンタ回路305のカウント値をリセットする。上位ビット変換期間PH1にて、参照電圧RAMPの上位ビット変換参照電圧(コースDAC)の電圧波形は、コンパレータ209の反転電圧よりも高い電位から始まって低下していく、上位ビット数分である2のK乗個のレベルを有する階段波形を発生する。そして、コンパレータ209は、列信号線213の出力レベルと上位ビット変換参照電圧(コースDAC)との比較を行う。上位ビットカウンタ回路305は、上位ビット変換期間PH1において、上位ビット変換参照電圧(コースDAC)の電圧が列信号線213の電圧より高い間、上位ビットをアップカウントする。
そして、図5の時刻t5に示すように、上位ビット変換参照電圧(コースDAC)の電圧が列信号線213の電圧よりも低くなった場合には、コンパレータ209の出力が反転して、フリップフロップ303の出力がハイレベルからローレベルに変化する。フリップフロップ303の出力がローレベルになることで、AND回路304を介した、上位ビットカウンタ回路305へのクロックADCLKの供給が停止される。これにより、上位ビットのカウント動作が停止し、期間CNTUにて行った上位ビットアップカウントでのカウント値が、上位ビットについてのAD変換結果として上位ビットカウンタ回路305に保持される。また、このとき、コンパレータ209の出力反転がバッファ402を通ってメモリ403に保存され、トランジスタ405をオフ状態にする。トランジスタ405がオフ状態になると、下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)と上位ビット変換参照電圧(コースDAC)との電位差が、入力トランジスタ407に接続されるキャパシタ412に保持される。
上位ビットのAD変換が領域Bで完了する場合には、後述する理由により下位ビットのAD変換を行う必要がある。そこで、時刻t8〜t10の下位ビット変換期間PH2に下位ビットに係るAD変換(第2のアナログ・デジタル変換)を行う。時刻t8の時点では、キャパシタ412には既に上位ビット分の電位差がオフセットとして保持されている。そのため、コンパレータ209には最初に行ったオートゼロの反転電位から、保持されている下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)と上位ビット変換参照電圧(コースDAC)との電位差に応じたオフセット電圧Vof分だけシフトしているように見える。
時刻t8にて、下位ビットのAD変換を行うために、アップダウンカウンタ211の下位ビットカウンタ回路313のカウント値をリセットする。その後、下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)の電圧値を段階的に変化させ、コンパレータ209が、列信号線213の出力電圧と下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)の電圧との比較を行う。ここで、下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)は、上位ビット変換参照電圧(コースDAC)の1ステップ分の電圧振幅をフルスケールとし、下位ビット分のカウント数の間に段階的に電圧を変化させる。下位ビットカウンタ回路313による下位ビットについてのカウント動作は、上位ビットカウントの停止値を起点としたダウンカウントを行う。
そして、図5の時刻t9に示すように、下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)の電圧が列信号線213の電圧よりも高くなった場合には、コンパレータ209の出力が反転して、フリップフロップ303の出力がローレベルからハイレベルに変化する。フリップフロップ303の出力がハイレベルになることで、AND回路312を介した、下位ビットカウンタ回路313へのクロックADCLKの供給が停止される。これにより、下位ビットのカウント動作が停止し、期間CNTDにて行った下位ビットダウンカウントでのカウント値が、下位ビットについてのAD変換結果として下位ビットカウンタ回路313に保持される。時刻t10以降に、上位ビットカウンタ回路305及び下位ビットカウンタ回路313に保持された信号値をメモリ212に読み出すことで、1行の画素からの出力のAD変換が完了する。アップダウンカウンタ211でカウントされた値は、読み出されてメモリ212に保存された後、行出力線206を介して撮像部102より外部へ出力される。
次に、コンパレータ209への電源供給の制御について説明する。
前述のように、時刻t3〜t7の上位ビット変換期間PH1では、列信号線213の電圧と、その列信号線213の電圧と比較するための参照電圧RAMPとをコンパレータ209に入力する。コンパレータ209は、列信号線213の電圧と参照電圧RAMPとを比較して比較結果を出力する。具体的には、コンパレータ209は、列信号線213の電圧が参照電圧RAMPの上位ビット変換参照電圧(コースDAC)より大きい場合には、ローレベルを出力する。一方、コンパレータ209は、列信号線213の電圧が参照電圧RAMPの上位ビット変換参照電圧(コースDAC)より小さい場合には、ハイレベルを出力する。
アップダウンカウンタ211の上位ビットカウンタ回路305のカウント値が所定の下限値を超える(領域Aを超えて領域Bに入る)時刻t4で、上位ビットカウンタ回路305から出力される信号SLOWがローレベルからハイレベルに遷移する。信号SLOWがハイレベルになることによって、OR回路314の出力が常にハイレベルになる。したがって、コンパレータ209の出力反転に伴ってフリップフロップ303の出力が反転してローレベルになっても、OR回路308、310、314の出力はハイレベルを維持する。これにより、パワーダウン制御部210から出力されるパワーダウン信号SPDがローレベルになることがなくなる。このように、時刻t4〜t6の領域Bの期間では、上位ビットのAD変換が終了しても、コンパレータ209への電源供給を停止させない。
次に、時刻t7にて上位ビットのAD変換を行うための動作が完了した後、時刻t8にて下位ビットのAD変換が始まる。時刻t8における、コンパレータ209の初期状態は、列信号線213の電圧が参照電圧RAMPより大きく、コンパレータ209はローレベルを出力している。ここから、列信号線213の電圧と参照電圧RAMPとの大小関係が反転するまでの期間、アップダウンカウンタ211の下位ビットカウンタ回路313はダウンカウントを行う。時刻t9にて、コンパレータ209の出力が反転してハイレベルになると、フリップフロップ303の出力がハイレベルとなり、OR回路308への入力が、すべてローレベルとなる。このため、パワーダウン制御部210から出力されるパワーダウン信号SPDにあたる、AND回路311の出力が、ローレベルになり、コンパレータ209への電源供給が停止される。
以上が、コンパレータ209への電源供給の制御に関する説明である。このように、領域Bでは、下位ビットのAD変換が終了した直後にコンパレータ209への電力供給を停止することで、消費電力を削減することができる。また、領域Bでは、AD変換の分解能をJビットとしたとき、1回でAD変換する場合には2のJ乗回の電圧比較が必要となるが、本実施形態のように2回に分けたAD変換では、(2のK乗)+(2のL乗)回の電圧比較(J=K+L)で得ることができる。したがって、AD変換に要する時間を短縮することができ、消費電力も削減することができる。
次に、上位ビットのAD変換時に、領域A、領域Cでコンパレータ209の出力が反転する場合について説明する。この場合には、上位ビットのAD変換のみで信号値が確定し、AD変換部203が使用されない期間においては、パワーダウン制御部210によりコンパレータ209への電力供給が停止されるため、その期間は電力消費を抑えることができる。
図6は、本実施形態におけるAD変換部203の低出力領域の動作例を示すタイミングチャートである。図6を参照して、コンパレータ209の出力が、時刻t3〜t4の間に当たる領域Aの範囲で反転する場合について説明する。
領域Aでは、アップダウンカウンタ211の上位ビットカウンタ回路305のカウント値が、所定の下限値以下(第2の閾値以下)であるので、上位ビットカウンタ回路305から出力される信号SLOWはローレベルである。図6の時刻t4に示すように、上位ビット変換参照電圧(コースDAC)の電圧が列信号線213の電圧よりも低くなり、コンパレータ209の出力がハイレベルからローレベルに反転すると、フリップフロップ303の出力がローレベルに反転する。このとき、フリップフロップ303の出力反転を受けて、AND回路316の出力がローレベルに反転することにより、OR回路314への入力がすべてローレベルになる。このため、AND回路311の出力がローレベルに反転し、パワーダウン制御部210から出力されるパワーダウン信号SPDがローレベルになり、コンパレータ209への電力供給が停止される。
また、AND回路311は、自身の出力を入力されているため、AND回路311のその他の3つの入力がハイレベルとなっても、AND回路311の出力はローレベルを維持し続ける。パワーダウン制御部210の出力を受けた後の動作は、図5で説明したので省略する。このようにコンパレータ209の出力が領域Aで反転した場合には、下位ビットのAD変換を行わずに、下位ビットのAD変換の期間はコンパレータ209への電力供給を停止させることにより、消費電力の削減が可能となる。なお、AD変換を行わなかった下位ビットは、例えばすべて0にしておけばよい。
図7は、本実施形態におけるAD変換部203の高出力領域の動作例を示すタイミングチャートである。図7を参照して、コンパレータ209の出力が、時刻t6〜t7の間に当たる領域Cの範囲で反転する場合について説明する。
領域Cでは、アップダウンカウンタ211の上位ビットカウンタ回路305のカウント値が、所定の上限値を超えている(第1の閾値より大きい)ので、上位ビットカウンタ回路305から出力される信号SUPはハイレベルである。信号SUPは、OR回路310に反転入力されローレベルになっている。図7の時刻t6に示すように、上位ビット変換参照電圧(コースDAC)の電圧が列信号線213の電圧よりも低くなり、コンパレータ209の出力がハイレベルからローレベルに反転すると、フリップフロップ303の出力がローレベルに反転する。このとき、フリップフロップ303の出力反転を受けて、AND回路316の出力がローレベルに反転することにより、OR回路310への入力がすべてローレベルになる。このため、AND回路311の出力がローレベルに反転し、パワーダウン制御部210から出力されるパワーダウン信号SPDがローレベルになり、コンパレータ209への電力供給が停止される。
また、AND回路311は、自身の出力を入力されているため、AND回路311のその他の3つの入力がハイレベルとなっても、AND回路311の出力はローレベルを維持し続ける。パワーダウン制御部210の出力を受けた後の動作は、図5で説明したので省略する。このようにコンパレータ209の出力が領域Cで反転した場合には、下位ビットのAD変換を行わずに、下位ビットのAD変換の期間はコンパレータ209への電力供給を停止させることにより、消費電力の削減が可能となる。なお、AD変換を行わなかった下位ビットは、例えばすべて0にしておけばよい。
次に、コンパレータ209の出力が領域Aとあるいは領域Cで反転した場合には、下位ビットのAD変換を行わなくても画質劣化がほとんど起きない理由について説明する。図8は、本実施形態に係るガンマカーブの一例を示す図である。図8において、信号値の幅81が上位ビットの信号精度であり、信号値の幅82が下位ビットの信号精度である。撮像部102の出力をJPEGなどの画像に変換する際、通常はガンマカーブを使用して短いビット長で、広いダイナミックレンジを得ようとする。ここでは、領域Aは、黒レベル以下の入力信号領域とした。また、領域Bは、入力信号に対してJPEG出力がリニアに変化する領域から、ニー特性を持ち始めた領域である。また、領域Cは、入力信号の変化に対してJPEG出力がほとんど変化しない、飽和近傍の領域である。
まず、領域Aについて説明する。CMOS型撮像素子では、画素毎に暗電流成分にばらつきが出ることで、黒レベルの信号値にばらつきが出る。そこで、RAW信号を扱う場合、黒レベルを0とせず、ダイナミックレンジに対して数パーセント程度浮かせる。例えばフルレンジで0〜16385の出力値に対して、1024を黒レベルとするなどしている。入力信号が黒レベル以下の場合でのJPEG出力は、黒つぶれしてしまい有効ビット長が短くとも画質に影響を与えない。このため、領域Aでは、電力消費を抑えるため下位ビットのAD変換を行わなくとも画質を劣化させない。領域Bでは、入力信号の変化量に対してJPEG出力の変化量が大きい領域であるため、有効ビット長が長くとれないと、画質低下を招く。領域Cでは、入力信号の変化量に対してJPEG出力がほとんど変化しないため、有効ビット長が短くとも画質に影響を与えない。このため、領域Cでは、電力消費を抑えるため下位ビットのAD変換を行わなくとも画質を劣化させない。
なお、上位ビットのAD変換結果が、領域Aあるいは領域Cに有る場合に、下位ビットのAD変換を完全に止めるのではなく、下位ビットのAD変換の変換条件を領域Bとは異なるように切り替えて下位ビットのAD変換を行うようにしても良い。例えば、上位ビットのAD変換結果が領域Aあるいは領域Cに有る場合に、下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)の傾きを2倍、4倍などと急峻にして、下位ビットのAD変換を行ってもよい。この場合には、下位ビットのAD変換期間を、それぞれ1/2、1/4に短縮することによって消費電力の削減が可能となる。なお、このように参照電圧の傾きを変えると、下位ビットのAD変換結果が傾きを変えなかった場合と相違するが、傾きを2倍にしたときは上位側に1ビットシフトし、4倍にしたときは上位側に2ビットシフトすることで、同等の出力を得ることができる。この場合、ビットシフトによって空いた下位ビットには、例えば0を入れておけばよい。任意の値を入れてよい理由は、図8での説明と同様、領域Aと領域Cでは、JPEG出力に対して下位ビットの出力結果がほとんど依存しないためである。
なお、特殊なガンマカーブを用いてJPEG出力を得る場合には、領域Aと領域Cのどちらかのみ下位ビットのAD変換を行わないなどの方法を用いてもよい。また、領域Aと領域Cのどちらかのみ下位ビット変換参照電圧(ファインDAC)の傾きを2倍、4倍などと急峻にするように変換条件を制御して下位ビットのAD変換を行うようにしてもよい。前述のように、どちらの方法を用いても、2回に分けてAD変換を行う方式で、電力の消費を抑えることができる。
なお、前述した構成において、システムの構成要素となる単位デバイスや単位モジュールの組み合わせ方、セットの規模等については、製品化の実情等に基づいて適宜選択可能であり、本実施形態に係る撮像装置は、種々の変形を幅広く含むものとする。
なお、前述した本実施形態におけるAD変換部は、以下の第1〜第4のステップを実行するAD変換方法を含んでいる。第1のステップは、画素からのアナログ信号が変換されるデジタル信号の上位ビットのための上位ビット変換参照電圧を生成し出力するステップである。第2のステップは、アナログ信号と上位ビット変換参照信電圧とを比較器により比較し、アナログ信号と上位ビット変換参照電圧との大小関係が入れ替わるまでの時間量からデジタル信号の上位ビットのデジタル値を求めるステップである。第3のステップは、デジタル信号の下位ビットのための下位ビット変換参照電圧を生成し出力するステップである。第4のステップは、アナログ信号と下位ビット変換参照電圧とを比較器により比較して大小関係が入れ替わるまでの時間量から求めたデジタル信号の下位ビットのデジタル値を基に、アナログ信号をAD変換したときのデジタル値を決定するステップである。
また、本実施形態におけるAD変換部は、下位ビット変換参照電圧が、アナログ信号と上位ビット変換参照電圧との大小関係が入れ替わるまでの時間量から求めた上位ビットのデジタル値に対応した電圧を基準にした信号であるとするAD変換方法を含む。さらに、本実施形態におけるAD変換部は、以下の第1要素及び第2要素を有するAD変換方法を含む。第1要素は、上位ビット変換参照電圧及び下位ビット変換参照電圧が段階的に値が変化する信号であることである。第2要素は、下位ビット変換参照電圧が、上位ビット変換参照電圧の単位ステップ分の振幅をフルスケールとする下位ビット分のカウント数の間に段階的に値が変化する信号であることである。
本実施形態によれば、1画素からの出力を2回に分けてAD変換を行うAD変換部において、上位ビットのAD変換の結果が、領域Aや領域Cといった所定の領域にある場合、下位ビットのAD変換を中止して、コンパレータへの電力供給を停止する。これにより、画質を劣化させることなく、消費電力を低減することが可能となる。
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。