JP6111611B2 - オーディオアンプ - Google Patents

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Description

この発明は、複数のスピーカを用いて臨場感の高い音を再生する技術に関する。
この種の技術の一例としては、2個のスピーカから同じ音量、同じ位相の音を出力することでそれらスピーカの中間の位置にあたかも音源があるかのような聴感を聴者に与える(すなわち、それらスピーカの間の位置に音像を定位させる)技術が挙げられる。また、音量変化や周波数変化などによる音響効果の付与により、音像が移動しているかのような聴感(仮想音源が移動しているかのような聴感)を聴者に与えることも一般に行われている。従来、この種の技術は、映画館やテーマパークなどに設置されるオーディオシステムなどの比較的大規模なシステムで採用されることが多かったが、近年ではホームシアターシステムなどの家庭用のオーディオシステムにも採用されるようになってきている。
特開2009−065452号公報
しかし、これら複数のスピーカを用いて臨場感の高い音の再生を可能とするオーディオシステムにおいて、直観的で判り易い操作により仮想音源を所望の位置に設置したり、仮想音源を移動させたりする技術は従来提案されていなかった。
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、第1の目的は、複数のスピーカを有するオーディオシステムにおいて、直観的な操作で所望の位置に仮想音源を設置することを可能にすることであり、第2の目的は、自然な音響効果を付与しつつ自由に仮想音源を移動させることを可能にすることである。
上記課題を解決するために本発明は、受聴者の位置である受聴点から見た仮想音源の位置を示す位置情報を、当該仮想音源の位置を設定する操作が為されたことを契機としてまたは所定時間が経過する毎または位置情報に変化が生じる毎に送信する携帯端末との通信により取得する取得手段と、前記仮想音源に対応するオーディオ信号から複数のスピーカの各々に与えるオーディオ信号を生成して出力する手段であって、前記位置情報の示す位置から遠い位置のスピーカに与えるオーディオ信号ほどゲインが小さくなるように前記仮想音源に対応するオーディオ信号の振り分け量を演算する処理を前記取得手段による位置情報の取得を契機として実行し、当該振り分け量にしたがって各スピーカに与えるオーディオ信号を生成する分配手段とを有することを特徴とするオーディオアンプ、を提供する。
例えば、上記携帯端末としてスマートフォンなど自端末の姿勢を検知するためのセンサ(ジャイロセンサや加速度センサ)を備えた端末装置を用いることが考えられる。このような携帯端末を用いて仮想音源の位置を設定する具体的な方法としては、仮想音源の設置を所望する位置に当該携帯端末を向けた状態で所定の操作が行われたときにその時点の自端末の姿勢を示す角度情報を上記座標空間における位置を示す座標情報に変換し当該座標情報を上記位置情報として上記オーディオアンプへ送信する処理、或いは当該角度情報を上記位置情報として上記オーディオアンプへ送信する処理を当該携帯端末に実行させることが挙げられる。前者の態様であれば、携帯端末から受信した位置情報に基づいて上記振り分け量の演算およびその振り分け量にしたがって各スピーカに与えるオーディオ信号を生成する処理を上記分配手段に実行させれば良い。また、後者の態様であれば、携帯端末から受信した位置情報(角度情報)を座標情報に変換した後に上記振り分け量の演算およびその振り分け量にしたがって各スピーカに与えるオーディオ信号を生成する処理を上記分配手段に実行させれば良い。このように、本発明によれば、仮想音源の設置を所望する位置に携帯端末を向けて所定の操作を行うといった直観的で判り易い操作でユーザの所望の位置に仮想音源を置かせることが可能になる。また、仮想音源の設置位置を示す位置情報を所定の時間間隔で送信する処理または仮想音源の位置が変化する毎に位置情報送信する処理を携帯端末に実行させる場合には、当該携帯端末の姿勢を滑らかに遷移させることで仮想音源の設置位置をリアルタイムで移動させることができる。なお、特許文献1には、音像の大きさおよび明瞭度をユーザに設定させる技術が開示されているが、直観的な操作で所望の位置に仮想音源を設置する技術ではなく、本発明とは全く異なる技術である。
ここで、複数のスピーカの位置についてはその設置位置を示す位置情報を数値入力等することで予めオーディオアンプに記憶させておいても良いが、仮想音源位置の設定と同様の方法によりスピーカ毎にその設置位置をユーザに設定させても良い。このような態様によれば、スピーカの設置位置についても直観的で判り易い操作により設定することが可能になる。
より好ましい態様においては、前記分配手段へ入力されるオーディオ信号または前記分配手段から各スピーカへ出力されるオーディオ信号に、前記座標空間における前記仮想音源と前記受聴点との距離に応じた音響効果を付与する信号処理を施す補正手段を上記オーディオアンプに設けても良い。このような態様によれば、例えば、仮想音源が受聴点から離れているほど、高域成分の減衰を大きくするなどして空間による高帯域の減衰を仮想的に実現することにより臨場感の高い音を再現することが可能になる。また、前記信号処理として、前記座標空間における前記仮想音源と前記受聴点との距離が大きいほど音量が小さくなるようにまたは高域成分の減衰量が大きくなるように各周波数成分の強度を調整する処理を採用するとともに仮想音源の移動を検知する検知手段を上記オーディオアンプに設け、前記検知手段により仮想音源の移動が検知された場合には、前記分配手段には各スピーカへの振り分け量をなだらかに変化させる処理を実行させ、前記補正手段には前記各周波数成分の強度の調整量をなだらかに変化させる処理を実行させる態様が考えられる。このような態様によれば、仮想音源の移動に伴って音が不連続に変化することが回避され、さらに自然な音響効果を付与しつつ仮想音源を移動させることが可能になる。
さらに別の好ましい態様においては、前記取得手段には、複数の仮想音源の各々についての位置情報を各仮想音源に対して位置の設定元として予め定められた複数の携帯端末の各々から取得させ、前記分配手段には、複数の仮想音源の各々について各スピーカに与えるオーディオ信号を当該仮想音源に対する位置の設定元として定められた携帯端末から取得した位置情報に基づいて生成させる態様が考えられる。
本発明の第1実施形態のオーディオシステム1の構成例を示す図である。 オーディオシステム1におけるスピーカ配置の一例を示す図である。 同オーディオシステム1に含まれるオーディオアンプ10の構成例を示すブロック図である。 同オーディオシステム1に含まれる携帯端末20の構成例を示すブロック図である。 同携帯端末20の表示部に表示されるスピーカ位置設定画面の一例と同携帯端末20を用いたスピーカ位置の設定方法を説明するための図である。 同携帯端末20の表示部に表示される仮想音源位置設定画面の一例と同携帯端末20を用いた仮想音源位置の設定方法を説明するための図である。 同携帯端末20の角度・位置変換部220が実行する角度・位置変換処理の一例を説明するための図である。 同携帯端末20の角度・位置変換部220が実行する角度・位置変換処理の一例を説明するための図である。 本発明の第3実施形態による仮想音源の移動を説明するための図である。 本発明の変形例(1)の携帯端末20Aの構成例を示す図である。 同変形例(1)のオーディオアンプ10Aの構成例を示す図である。
(A:第1実施形態)
(A−1:オーディオシステム1の構成)
図1は、本発明の第1実施形態のオーディオシステム1の構成例を示すブロック図である。オーディオシステム1は、ユーザの住居のリビングなどに設置されるホームシアターシステムである。図1に示すように、オーディオシステム1には、オーディオアンプ10と、オーディオアンプ10を操作するための携帯端末20と、各々オーディオアンプ10に接続されたスピーカ30−n(n=1〜5)とが含まれている。オーディオシステム1には、図1に示す機器の他にも、DVDなどの記録媒体に記録された映像コンテンツを再生して映像信号とオーディオ信号を出力する再生装置や、オーディオアンプ10を介して与えられる映像信号に応じて映像を表示する表示装置、オーディオアンプ10を介して供給されるオーディオ信号に応じて低音域の音を再生するサブウーハなどが含まれるが、これら再生装置、表示装置およびサブウーハについては本発明との関連が薄いため図1では図示を省略した。
図1に示すオーディオシステム1は、5つのスピーカと1つのサブウーハとを含む所謂5.1チャネルサラウンドシステムである。本実施形態では、スピーカ30−n(n=1〜5)の各々は、図2に示すように、オーディオシステム1のユーザのリビングLRに配置される。
本実施形態では、センタチャネル、右フロントチャネル、左フロントチャネル、右サラウンドチャネルおよび左サラウンドチャネルの5つのチャネルのオーディオ信号が再生装置(図示略)からオーディオアンプ10に与えられる。本実施形態では、これら5つのチャネルの各々(或いは、これら5つのチャネルのうちの任意の2つ以上のミキシング結果)を仮想音源化して所望の位置に設置すること(すなわち、仮想音源化したオーディオ信号に対応する音像の定位位置として当該所望の位置を設定すること)を直観的で判りやすい操作によりユーザに行わせることができる。例えば、センタチャネルを仮想音源化した仮想音源V1をスピーカ30−3とスピーカ30−5の中間の位置(図2では、点線丸印で表記)に置くことが携帯端末20の操作によって指示されると、オーディオアンプ10は、センタチャネルに対応する音像が当該位置に定位するように、センタチャネルのオーディオ信号をスピーカ30−n(n=1〜5)の各々に振り分けて出力する。以下、本実施形態の特徴を顕著に示すオーディオアンプ10および携帯端末20を中心に説明する。
(A−2:オーディオアンプ10の構成)
図3は、オーディオアンプ10の構成例を示すブロック図である。オーディオアンプ10は所謂マルチチャネルアンプであり、スピーカ30−n(n=1〜5)の各々に与えるオーディオ信号を調整することで最大M(Mは任意の整数)個の仮想音源を設置することができる。以下では、通し番号mにより識別される仮想音源を「仮想音源Vm」と表記する場合がある。図3に示すように、オーディオアンプ10は、オーディオ入力端子IN−k(k=1〜5)、オーディオ出力端子OUT−n(n=1〜5)、通信インタフェース部(図3では、「通信I/F部」と表記、以下本明細書でも同じ)110、制御部120、仮想音源化部130−m(m=1〜M)、周波数補正部140−m(m=1〜M)、ゲイン分配部150−m(m=1〜M)、加算器160−(j,n)(j=1〜M−1)、および記憶部170を含んでいる。本実施形態では、図3に示すオーディオアンプ10の構成要素のうち、仮想音源化部130−m(m=1〜M)、周波数補正部140−m(m=1〜M)、ゲイン分配部150−m(m=1〜M)、および加算器160−(j,n)(j=1〜M−1)をDSP(Digital Signal Processor)によるソフトウェア処理で実現するが、これら構成要素を電子回路などのハードウェアで実装しても勿論良い。
オーディオ入力端子IN−k(k=1〜5)はオーディオケーブルなどの信号線を介して再生装置(図示略)に接続されている。オーディオ入力端子IN−k(k=1〜5)には、再生装置(図1では図示略)から出力されるオーディオ信号X−kが与えられる。本実施形態では、オーディオ信号X−1はセンタチャネルのオーディオ信号である。オーディオ信号X−2は右フロントチャネルのオーディオ信号である。オーディオ信号X−3は左フロントチャネルのオーディオ信号である。オーディオ信号X−4は右サラウンドチャネルのオーディオ信号である。オーディオ信号X−5は左サラウンドチャネルのオーディオ信号である。オーディオ出力端子OUT−n(n=1〜5)の各々はオーディオケーブルなどの信号線を介してスピーカ30−nに接続されている。オーディオ入力端子IN−k(k=1〜5)の各々を一意に識別する通し番号kは、オーディオ入力端子IN−kに入力されるオーディオ信号に対応するチャネルを一意に示すチャネル識別子の役割を果たす。同様に、オーディオ出力端子OUT−n(n=1〜5)の各々を一意に識別する通し番号nは、オーディオ出力端子OUT−nに接続されたスピーカ30−nを一意に示すスピーカ識別子の役割を果たす。
通信I/F部110は、例えばNIC(Network Interface Card)であり、オーディオシステム1のユーザの住居に敷設されたLAN(Local Area Network)のネットワークルータ(図1では、図示略)に接続されている。通信I/F部110は、携帯端末20から送信されてくる情報をネットワークルータを介して受信し、制御部120に引き渡す。詳細については後述するが、本実施形態では、前述したスピーカ識別子とそのスピーカ識別子の示すスピーカ30−nの設置位置を示す位置情報の組が携帯端末20から送信されてくるとともに、仮想音源化するチャネルのチャネル識別子とその仮想音源を一意に示す仮想音源識別子と当該仮想音源の設置位置を示す位置情報の組が携帯端末20から送信されてくる。本実施形態では、スピーカ30−nの設置位置を示す位置情報として、図2に示す受聴点LPの位置を座標原点とし、かつ鉛直軸に直交する所定の広さの2次元座標空間(或いは、さらに鉛直軸方向を高さ方向とする所定の広さの3次元座標空間)における当該スピーカ30−nの配置位置の座標を示す座標情報が用いられる。仮想音源の設置位置を示す位置情報についても同様に、同2次元座標空間(或いは3次元座標空間)における当該仮想音源の設置位置の座標を示す座標情報が用いられる。
制御部120は例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部170は例えばハードディスクである。記憶部170には、スピーカ管理テーブルと仮想音源管理テーブルが予め格納されている(図2ではいずれも図示略)。スピーカ管理テーブルには、携帯端末20から受信したスピーカ識別子と位置情報が互いに対応付けて格納される。仮想音源管理テーブルには、携帯端末20から受信した仮想音源識別子とチャネル識別子と位置情報が互いに対応付けて格納される。制御部120は、ROM(Read Only Memory:図2では図示略)に記憶された制御プログラムにしたがって以下の各処理を実行する。第1に、携帯端末20から受信したスピーカ識別子および位置情報の組をスピーカ管理テーブルに書き込む処理である。第2に、携帯端末20から受信した仮想音源識別子、チャネル識別子および位置情報の組を仮想音源管理テーブルに書き込む処理である。第3に、上記座標空間における仮想音源Vmと受聴点LP(前述したように、上記座標空間における原点)との間の距離を示す値D(m)を仮想音源管理テーブルの格納内容に基づいて仮想音源Vm毎に算出し、周波数補正部140−mに与える処理である。そして、第4に、上記座標空間におけるスピーカ30−n(n=1〜5)の各々と仮想音源Vmとの距離を示す値D(m,n)をスピーカ管理テーブルの格納内容と仮想音源管理テーブルの格納内容とに基づいて仮想音源Vm毎に算出し、ゲイン分配部150−mに与える処理である。
仮想音源化部130−mは、オーディオ入力端子IN−k(k=1〜5)の各々を介して与えられるオーディオ信号X−kからm番目の仮想音源(仮想音源識別子がmの仮想音源)のオーディオ信号Y−mを生成して出力する。より詳細に説明すると、仮想音源化部130−mは、オーディオ信号X−k(k=1〜5)のうち、仮想音源識別子mに対応付て仮想音源管理テーブルに格納されているチャネル識別子の示すオーディオ信号をミキシングしてオーディオ信号Y−mを生成して周波数補正部140−mに与える。仮想音源化部130−mには、上記ミキシング対象のオーディオ信号を選択するためのスイッチと、当該スイッチのon/off制御により選択されたオーディオ信号をミキシングするミキサとが含まれている(図3では、仮想音源化部130−1についてのみミキサと各スイッチを図示)。これらスイッチのon/off制御は、仮想音源管理テーブルの格納内容に基づいて制御部120によって行われる。例えば、1つ目の仮想音源を示す仮想音源識別子に対応付けてセンタチャネルを示すチャネル識別子が仮想音源管理テーブルに格納されていた場合には、制御部120は仮想音源化部130−1に含まれるスイッチのうち、センタチャネル(すなわち、オーディオ信号X−1)に対応するスイッチのみをonにし、他のスイッチをoffにする。
周波数補正部140−mは、制御部120から与えられる値D(m)が大きいほど高域の周波数成分を大きく減衰させる信号処理をオーディオ信号Y−mに施し、当該信号処理済のオーディオ信号Y´−mをゲイン分配部150−mに与える。前述したように、値D(m)は仮想音源Vmと受聴点LPの距離を表す。周波数補正部140−mは、値D(m)の算出を行う制御部120とともに、音源から受聴点までの距離が大きいほど高域の周波数成分の減衰量が大きくなるといった音響特性を再現するための補正手段として機能する。なお、仮想音源から受聴点までの距離と各周波数成分の減衰量との関係(換言すれば、周波数補正部140−mにおける信号処理の内容)については適宜実験を行って定めるようにすれば良い。
ゲイン分配部150−mは、値D(m,n)(n=1〜5)の中に所定の閾値よりも十分に小さく、ゼロとみなせるものがない場合には、各々のゲイン比が値D(m,n)の逆数比となるようにオーディオ信号Y´−mを振り分けてスピーカ30−n(n=1〜5)の各々に与えるオーディオ信号Z−(m,n)を生成し出力する。一方、値D(m,n)(n=1〜5)の中にゼロとみなせるものが含まれている場合(例えば、仮想音源Vmの位置として何れかのスピーカ30−mの位置或いはスピーカ30−mの近傍の位置が設定された場合)には、ゲイン分配部150−mは、オーディオ信号Z−(m,m)=オーディオ信号Y´−m、かつオーディオ信号Z−(m,n)(n≠m)=0と振り分ける。加算器160−(j、n)(j=1〜M−1)は、オーディオ信号Z−(m,n)(m=1〜M)を加算してスピーカ30−nに与えるオーディオ信号Z−nを生成し、オーディオ出力端子OUT−nに与える。オーディオ出力端子OUT−nはスピーカ30−nに接続されているため、スピーカ30−nにはオーディオアンプ10による信号処理を経たオーディオ信号Z−nが与えられる。このため、本実施形態では、オーディオ信号Z−nに応じた音がスピーカ30−nから放音される。
値D(m,n)(n=1〜5)にゼロとみなせるものがない場合に、仮想音源Vmに対応するオーディオ信号Y´−mを各々のゲイン比が距離D(m,n)の逆数比となるように振り分けてオーディオ信号Z−(m,n)を生成するようにしたのは、このようにすることで、あたかも仮想音源Vmの位置として設定された場所から音が放射されているかのような音場を形成できるからである。しかし、図2に示すように、仮想音源V1の位置としてスピーカ30−3とスピーカ30−5の中間の位置が設定された場合、当該位置と各スピーカ30−nとの距離の逆数比に応じてその仮想音源Vmに対応するオーディオ信号Y´−mの振り分けを行うと、スピーカ30−2やスピーカ30−4に多く配分されすぎ、結果として音の分離が悪くなる場合がある。そこで、仮想音源からの距離が遠いスピーカほど少ない分配量となるように(ゲインが小さくなるように)、距離D(m,n)の2乗或いは4乗の逆数比で分配を行うようにしても良く、距離に応じて乗数を変更するようにしても良い。また、距離に応じてゲイン配分を少なくするような補正関数による補正を施しても良い。
受聴点LPを座標原点とする2次元座標空間においてスピーカ30−n(n=1〜5)の位置が設定され、かつ図2におけるスピーカ30−3とスピーカ30−5の中間の位置が仮想音源V1の位置として設定されたとする。この場合は、受聴点LPから見て仮想音源V1とは反対側のスピーカ(図2に示す例では、スピーカ30−2および30−4)では−40dB程度となるようにゲイン配分を行えば、音の位置を明確に表現することができる。また、ユーザのリビングの天井近傍の四隅および床近傍の四隅にそれぞれ1つずつスピーカを配置し、受聴点LPを座標原点とする3次元座標空間において仮想音源の位置を設定する場合には、高さ方向を加味した対極側のスピーカ(例えば、仮想音源が天井近傍の四隅のうち左側壁側の2つのスピーカの間に設置されている場合には床近傍の四隅のうち右側壁側の2つのスピーカ)において−60dB程度となるようにゲイン配分を行えば良い。
以上がオーディオアンプ10の構成である。
(A−3:携帯端末20の構成)
図4(a)は、携帯端末20の構成例を示すブロック図である。図4(a)に示すように、携帯端末20は、角度情報取得部210、角度・位置変換部220、および情報送信部230を含んでいる。本実施形態の携帯端末20は、所謂スマートフォンであり、図に示す構成要素以外にも、音声通話部やタッチパネル、液晶ディスプレイなどのユーザインタフェース部を備えているが、図4(a)に示すもの以外の構成要素については本発明との関係が薄いため図示および詳細な説明を省略する。
角度情報取得部210は、図4(b)に示すように携帯端末20の中心(例えば、携帯端末20の重心)を通って互いに直交する3つの軸X,YおよびZ(図4(b)に示すように、本実施形態では、Z軸が鉛直方向の軸であり、X軸は携帯端末20の短手方向の軸である)の各々を回転軸とした携帯端末20の回転角度pitch、rollおよびyawを検出し、携帯端末20の姿勢を示す情報として、それら3つの角度を示す角度情報を出力する。角度情報取得部210としては、ジャイロセンサを用いても良く、また、3軸の加速度センサとその加速度センサにより検出された加速度を上記角度に変換する変換部との組み合わせ、或いは角度センサとジャイロセンサの組み合わせを用いても良い。
角度・位置変換部220は、携帯端末20の制御部(例えば、CPU)により実現されるソフトウェアモジュールである。角度・位置変換部220は、スピーカ30−nの位置或いは仮想音源Vmの位置を設定する旨の操作が操作部(図示略)に対して行われたことを契機として、角度情報取得部210から与えられる角度情報を携帯端末20の中心の位置を座標原点とする所定の広さの座標空間における位置を示す座標情報(すなわち、本実施形態における位置情報)に変換して情報送信部230に与える。なお、角度・位置変換部220における角度情報から位置情報への具体的な変換方法については後に明らかにする。情報送信部230はネットワークルータ経由でデータをオーディオアンプ10に送信する無線通信回路である。本実施形態では、角度情報取得部210、角度・位置変換部220および情報送信部230の働きにより、スピーカ識別子とそのスピーカ識別子により示されるスピーカの設置位置を示す位置情報の組、或いは仮想音源化するチャネルのチャネル識別子と当該仮想音源の設置位置を示す位置情報と当該仮想音源の仮想音源識別子の組がオーディオアンプ10に送信される。
携帯端末20を用いてスピーカ30−nの設置位置または仮想音源Vmの設置位置の設定を行う場合、ユーザは、まず、携帯端末20を持って受聴点LPの位置に立ち、携帯端末20のY軸を所定のリセット方向(本実施形態では、スピーカ30−1の方向)に向けた状態でリセットボタンを押下する。角度情報取得部210は、リセットボタンの押下を検出するとyawをゼロにリセットする。次いで、ユーザは、スピーカの設置位置の設定を所望する場合には携帯端末20の操作部(図示略)を操作してスピーカ位置の設定を行うプログラムを開始し、仮想音源Vmの設置位置の設定を所望する場合には携帯端末20の操作部(図示略)を操作して仮想音源位置の設定を行うプログラムを開始する。
スピーカ位置の設定が開始されると、携帯端末20は、図5(a)に示すスピーカ位置設定画面を表示部(図示略)に表示する。図5(a)に示すように、スピーカ位置設定画面には、スピーカ30−n(n=1〜5)の各々を示すスピーカ識別子nに対応づけて位置の設定をユーザに指示させるボタンBn(本実施形態では、タッチパネルにより実現される仮想操作子)が設けられている。例えば、図2におけるスピーカ30−2の設置位置の設定を行う場合、ユーザは、スピーカ位置設定画面を表示させた状態の携帯端末20のY軸をスピーカ30−2の方向(本実施形態では、yaw=45°の方向:図5(b)参照)に向け、当該スピーカ30−2に対応するボタンB2を押下する、といった操作を行えば良い。このような操作が為されると、携帯端末20は、押下されたボタンB2に対応するスピーカ識別子と、当該操作が為された時点の角度情報を角度・位置変換部220により変換して得られる位置情報との組を情報送信部230によりオーディオアンプ10へ送信する。同様に、スピーカ30−n(n=1、3〜4)の設置位置を設定する場合には、スピーカ位置設定画面を表示させた状態の携帯端末20のY軸をスピーカ30−nに向けてボタンBnを押下すれば良い。
図6(a)は、仮想音源位置の設定が開始された場合に携帯端末20が表示部(図示略)に表示する仮想音源位置設定画面の一例を示す図である。図6(a)に示すように、仮想音源位置設定画面には、仮想音源識別子m(m=1〜M)に対応づけて仮想音源化するチャネルをユーザに選択させるためのボタンCmと、当該仮想音源識別子の示す仮想音源の位置をユーザに設定させるためのボタンEmが設けられている。例えば、センタチャネルを仮想音源V1として仮想音源化し、スピーカ30−3とスピーカ30−5の中間の位置に置くことを所望する場合、ユーザは以下の操作を行えば良い。ユーザは、スピーカ位置の設定の場合と同様に、仮想音源位置設定画面を表示させた状態の携帯端末20のY軸を当該仮想音源の設置を所望する位置の方向(例えば、yaw=−90°の方向:図6(c)参照)に向け、ボタンC1を押下する。すると、図6(b)に示すように、チャネル選択の為のプルダウンメニューPDMが表示される。ユーザは、当該プルダウンメニューPDMに対する操作により、仮想音源化するチャネル(この例では、センタチャネル)を選択する。次いで、ユーザは、ボタンE1を押下する。このような操作が為されると、携帯端末20は、押下されたボタンC1,E1に対応する仮想音源識別子と、プルダウンメニューPDMに対する操作により選択されたチャネル識別子と、ボタンE1の押下が為された時点の角度情報を角度・位置変換部220により変換して得られる位置情報との組を情報送信部230によりオーディオアンプ10へ送信する。
(A−4:本実施形態におけるスピーカ位置等の設定方法)
次いで、角度・位置変換部220が実行する角度・位置変換処理について図7および図8を参照しつつ説明する。図7は、携帯端末20の中心を座標原点とする所定の広さ2次元座標空間において仮想音源位置およびスピーカ位置を設定する方法を説明するための図である。一方、図8は、携帯端末20の中心を座標原点とする所定の広さの3次元座標空間において仮想音源位置およびスピーカ位置を設定する方法を説明するための図である。
(A−4−1:2次元座標空間における位置の設定)
携帯端末20の中心を座標原点とする2次元座標空間において仮想音源位置およびスピーカ位置を設定する場合には、角度・位置変換部220は、図7(a)或いは図7(b)に示すように、角度情報取得部210の出力する角度情報のうちyawのみを用いて位置情報(X,Y)を算出する。前述したように、本実施形態では、仮想音源位置およびスピーカ位置を設定しようとするユーザは携帯端末20を持って受聴点LPの位置に立っているため、携帯端末20の中心の位置と受聴点LPの位置は概ね一致する。したがって、受聴点LPの位置は上記2次元座標空間の座標原点に概ね一致する。
図7(a)は、携帯端末20の中心を座標原点とし、Y軸方向の長さが2、かつX軸方向の長さも2の矩形上の2次元座標空間において仮想音源位置およびスピーカ位置を設定する場合の動作を説明するための図である。この場合、角度・位置変換部220は、yawの値が−45°〜45°であれば、Xをyawの値に応じて−1〜1に設定するとともにYを1に設定する。また、yawの値が45°〜135°であれば、角度・位置変換部220は、Yをyawの値に応じて+1〜−1に設定するとともにXを1に設定する。また、yawの値が−45°〜−135°であれば、角度・位置変換部220は、Yをyawの値に応じて+1〜−1に設定するとともにXを−1に設定する。そして、角度・位置変換部220は、yawの値が135°〜180であればXの値をyawの値に応じて1〜0に設定するとともにY=−1に設定し、yawの値が−135°〜−180°であれば、Xをyawの値に応じて−1〜0に設定するとともにYを−1に設定する。つまり、角度情報取得部210の出力する角度情報は、図7(a)に示す矩形上の2次元座標空間の境界上の座標(X,Y)に変換される。図7(b)は、携帯端末20の中心を座標原点とする半径rの2次元座標空間において仮想音源位置およびスピーカ位置を設定する場合の動作を説明するための図である。この場合、角度・位置変換部220は、X=r×sin(yaw)、Y=r×cos(yaw)と設定する。つまり、角度情報取得部210の出力する角度情報は図7(b)に示す半径rの円周上の座標(X,Y)に変換される。
(A−4−2:3次元座標空間における位置の設定)
携帯端末20の中心を座標原点とする所定の広さの3次元座標空間において仮想音源位置およびスピーカ位置を設定する場合には、上記の要領でX軸方向およびY軸方向の座標を求めた後、pitchを利用して高さ方向の座標Zを求めるようにすれば良い。具体的には、pitchの値が−45°〜45°であれば、Zをpitchの値に応じて−1〜1に設定し、pitchの値が−45°より小さければZを−1に設定し、pitchの値が45°より大きければZを+1に設定すれば良い。このような態様によれば、角度情報取得部210の出力する角度情報は図8(a)に示す立方体状の3次元座標空間の側面上の位置や図8(b)に示す円柱状の3次元座標空間の側面上の位置(X,Y,Z)に変換される。また、pitchの値が45°〜90°の場合は、Z=1とし、さらに、図7(a)或いは図7(b)に示す要領で求めたXおよびYに、(90−pitch)/45を乗算するとともに、pitchの値が−45°〜−90°の場合は、Z=−1とし、さらに、図7(a)或いは図7(b)に示す要領で求めたXおよびYに、(pitch+90)/45を乗算することで、図8(a)または図8(b)に示す3次元座標空間の天井または底面上の位置(X,Y,Z)に変換しても良い。また、X=r×sin(pitch)×cos(yaw)、Y=r×sin(pitch)×cos(yaw)、Z=r×cos(pitch)と設定することで、角度情報取得部210の出力する角度情報を半径rの球面上の座標(X,Y,Z)に変換しても良い。
例えば、図2に示すようにスピーカ30−n(n=1〜5)の各々が設置されており、スピーカ位置等の設定方法として図7(a)に示す2次元座標空間における設定方法が採用されていたとする。この場合、受聴点LPから見たスピーカ30−1の方向はリセット方向であるから、スピーカ30−1の位置設定においては、角度情報取得部210の出力する角度情報の示すyawの値は0となり、角度・位置変換部220は当該角度情報を位置情報(0,1)に変換して情報送信部230に与える。スピーカ30−2の位置設定においては、受聴点LPから見たスピーカ30−2の方向はリセット方向から+45°の方向であるため、角度情報取得部210の出力する角度情報の示すyawの値は45°となる。このため、角度・位置変換部220は当該角度情報を位置情報(1,1)に変換して情報送信部230に与える。
ここで留意すべき点は、本実施形態において携帯端末20から送信されてくる位置情報は、携帯端末20の中心を座標原点とする所定の広さの2次元(或いは3次元座標空間)における仮想音源位置またはスピーカ位置を示しているものの、これら座標空間における仮想音源位置、スピーカ位置および受聴点位置の相対的な位置関係はユーザのリビングにおける仮想音源位置、スピーカ位置および受聴点位置の相対的な位置関係と概ね一致する、という点である。このため、携帯端末20から送信されてくる位置情報に基づいて算出される値D(m)およびD(m,n)の各々の大きさの比は、リビングにおける受聴点LPと仮想音源Vmの距離および仮想音源Vmとスピーカ30−nの距離の各々の大きさの比と概ね一致する。したがって、値D(m)およびD(m,n)に基づいてゲイン分配や周波数補正を行っても特段の問題は生じない。なお、座標空間における仮想音源位置、スピーカ位置および受聴点位置の相対的な位置関係はユーザのリビングにおける仮想音源位置、スピーカ位置および受聴点位置の相対的な位置関係に大きな乖離が生じることを回避するために、前述したリセット操作を適宜行っておくことが好ましい。
(A−5:本実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、スピーカ位置設定画面を表示させた状態の携帯端末20のY軸をスピーカ30−nに向けてボタンBnを押下するといった直観的な操作でスピーカ30−nの位置をオーディオアンプ10に設定することができる。同様に、仮想音源位置設定画面を表示させた状態の携帯端末20のY軸を仮想音源Vmの設置を所望する場所に向けて、当該仮想音源Vmとして仮想音源化するチャネルを選択し、ボタンEmを押下するといった直観的な操作で仮想音源Vmとして仮想音源化するチャネルおよび当該仮想音源Vmの設置位置をオーディオアンプ10に設定することができる。
仮想音源を直観的で判り易い操作により設置することが可能になると、図2のリビングLRに居る全ての場所の人に快適に映像コンテンツを視聴させることを直観的で判り易い操作により実現することが可能になる。例えば、図2に示すように各スピーカを配置し、オーディオ信号X−k(k=1〜5)の各々をスピーカ30−kに与えている状況下では、スピーカ30−5の近傍に着席している人のようにセンタチャネルの出力スピーカであるスピーカ30−1から離れた着席している人が当該スピーカ30−1から出力される音を聴き取り難いような場合がある。このような場合、従来はセンタチャネルの音量を上げるといった対処法しかなかったが、このような対処ではスピーカ30−1の近くの人には音が大きくなりすぎるという問題があった。これに対して、本実施形態では、直観的で判り易い操作によりセンタチャネルを仮想音源化してスピーカ30−3とスピーカ30−5の間の位置に置くことができ、スピーカ30−1の出力する音の音量を上げることなく全ての場所の人に快適に映像コンテンツを視聴させることができる。
また、本実施形態によれば、例えば、映画などの再生を行う場合に、フロント側の高い位置に設置されたプレゼンススピーカにセリフ成分を割り当てるなどして、テレビやプロジェクタの画像の人物が発声している箇所にセリフ成分が配置されるようにすることで、画像中の人物の口からセリフが発声されているかのような聴感をユーザに与え、よりリアルで臨場感の高い音を再生することが可能になる。また、映画における静かなシーンではサラウンドの音(右サラウンドチャネルや左サラウンドチャネルの音)を本来の位置よりも外側に配置し、戦闘シーンなどではサラウンドの音を本来の位置より近くに配置するなどしてユーザの好みに応じて臨場感を調整することも可能になる。同様に左フロントスピーカLの音に対応する仮想音像を左フロントスピーカLと左サラウンドスピーカSLの中間の位置に置くなどの微調整をユーザに行わせることもできる。また、オーディオ信号X−1に対応する仮想音源の位置としてスピーカ30−1の位置の他にその近傍の位置を複数設定することで、センタチャネルの仮想音源(音像)の大きさを制御することも可能である。
また、本実施形態では、スピーカ30−n(n=1〜5)の各々の設置位置を示す位置情報および仮想音源Vm(m=1〜M)の各々を置く位置を示す位置情報は記憶部170に記憶され、その記憶内容に基づいてゲイン配分および周波数補正が行われる。このため、リビングの模様替えなどによりスピーカの設置位置を変更するものの、仮想音源Vm(m=1〜M)の各々の位置を変更したくない場合には、各スピーカの設置位置のみを再設定すれば良い。新たなスピーカ設置位置を携帯端末20を用いて設定すれば、オーディオアンプ10では、当該新たなスピーカ位置と従前の仮想音源Vmの位置とに基づいて、当該従前の位置に仮想音源Vmが位置するようにゲイン分配や周波数補正が実行されるからである。
(B:第2実施形態)
上記第1実施形態では、スピーカ30−n(n=1〜5)およびサブウーハ(図1では図示略)によって構成される5.1チャネルサラウンドシステムであるオーディオシステム1を用いて映画などの映像コンテンツを再生する場合について説明した。しかし、オーディオアンプ10に入力されるオーディオ信号は1つの映像コンテンツを構成するオーディオ信号に限定される訳ではない。例えば、互いに異なるコンテンツに対応する複数種のオーディオ信号をオーディオアンプ10に入力し、各コンテンツに対応する仮想音源をそれぞれユーザにより設定された位置に置くようにしても良い。具体的には、テレビ番組の音声のオーディオ信号と、音楽プレイヤにより再生された楽音のオーディオ信号とをオーディオアンプ10へ入力するとともに、テレビ番組の音声に対応する仮想音源を置く位置と音楽プレイヤにより再生された楽音に対応する仮想音源を置く位置とを携帯端末20の操作によりユーザに設定させるのである。
例えば、オーディオシステム1の設置されたリビングのテーブルの位置が音楽プレイヤにより再生された楽音に対応する仮想音源の位置として設定され、キッチンに近い位置がテレビ番組の音声に対応する仮想音源の位置として設定されたとする。すると、テーブルのところでは音楽プレイヤにより再生される楽音を聴くことができ、キッチンではテレビの音声を聴くことができる。つまり、ユーザの住居内のエリア毎に任意の音を聴くことができるようになる。また、各々異なる場所に配置されたスピーカに同じ音源の音を位相をずらして放音させると、それらスピーカから放射される音の干渉によって当該音源の音が強く聴こえる場所と弱く聴こえる場所とが生じる。したがって、上記位相差等を適宜調整することで複数の音源の音が互いに邪魔にならないように別々の人に聴取させることが可能になる。
(C:第3実施形態)
1つの仮想音源に対して当該仮想音源を置く位置として複数の位置の各々をユーザに順次設定させ、携帯端末20から順次送信されてくる情報(仮想音源識別子、チャネル識別子および位置情報の組)にしたがってゲイン分配部150−mにおけるゲイン配分を時間変化させることで、仮想音源の移動を実現しても良い。例えば、角度情報取得部210により取得されるyawおよびpitchから、図8(a)に示す3次元座標空間の底面上の位置(X,Y,Z)を算出して仮想音源Vmの位置設定を行う場合において、図9に示す位置X0(yaw=−90°かつpitch=θ0(ただし、−90°<θ0<−45°)となる位置)に携帯端末20のY軸を向けた状態で前述した仮想音源位置設定画面に対する操作によって仮想音源Vmの位置の設定が為され、音との再生が開始されたとする。そして、音の再生開始後、位置X1(yaw=−90°かつpitch=θ1(ただし、θ0<θ1<−45°)となる位置)に携帯端末20のY軸を向けて仮想音源Vmの位置を設定する操作が為され、さらにその後、位置X2(yaw=−90°かつpitch=θ2(ただし、θ1<θ2<−45°)となる位置)に携帯端末20のY軸を向けて仮想音源Vmの位置を設定する操作が為され、さらにその後、位置X3(yaw=−90°かつpitch=θ3(ただし、θ2<θ3<−45°)となる位置)の各々に携帯端末20のY軸を向けて仮想音源Vmの位置を設定する操作が為されたとする。このように、仮想音源Vmの移動先の位置として、図9に示すX1、X2およびX3を設定する操作が順次為されると、携帯端末20は当該操作が為される毎にその時点の自端末の姿勢を示す角度情報を角度・位置変換部220により変換して得られる位置情報を、仮想音源識別子およびチャネル識別子とともにオーディオアンプ10に送信する(位置情報としてZ方向の位置情報を削除して2次元座標情報として送信しても良い)。
一方、オーディオアンプ10では、仮想音源識別子とチャネル識別子と位置情報の組を携帯端末20から受信する毎に、制御部120によって、仮想音源管理テーブルの格納内容が更新され、更新後の仮想音源管理テーブルの格納内容に基づいて値D(m)の再計算が行われ、スピーカ管理テーブルの格納内容と更新後の仮想音源管理テーブルの格納内容とに基づいて値D(m,n)の再計算が行われる。そして、周波数補正部140−mでは、オーディオ信号Y−mの高域の周波数成分の強度を、再計算された値D(m)に基づいて調整する処理が実行され、ゲイン分配部150−mでは、再計算された値D(m,n)に基づいてゲイン配分の再計算する処理が実行される。その結果、スピーカ30−nに与えるオーディオ信号のゲイン配分が時間変化し、仮想音源Vmに対応する音像の定位位置は図9にて矢印で示すように、X0→X1→X2→X3・・・と変化する。また、仮想音源Vmの移動によって受聴点LPから当該仮想音源Vmまで距離D(m)が時間変化することに伴い、スピーカ30−nに与えるオーディオ信号における高域の周波数成分の減衰量も時間変化するため、自然な音響効果を付与しつつ仮想音源Vmを移動させることができる。
前述した仮想音源位置設定画面に対する操作によって仮想音源の移動先の位置をユーザに順次設定させるのではなく、移動させる仮想音源を予め定めておき、当該仮想音源の仮想音源識別子、チャネル識別子および位置情報を送信する処理を所定の時間間隔でまたは位置情報に変化が生じたことを契機として携帯端末20に実行させるようにしても良い。このようなことを可能にするには、まず、前述した仮想音源位置設定画面に移動させる仮想音源をユーザに設定させるための設定手段、例えば操作子を仮想音源識別子に対応付けて設けておく。そして、前述した仮想音源位置設定画面に対する操作によって仮想音源Vmについてのチャネル識別子およびその設置位置の設定が為された後に、移動させる仮想音源として当該仮想音源Vmが指定された場合には、当該操作により指定された仮想音源の仮想音源識別子とチャネル識別子とを図示せぬ記憶部内の所定の記憶領域に書き込む処理を携帯端末20に実行させる。以降、所定時間が経過する毎に、角度情報取得部210により角度情報を取得し、当該角度情報を角度・位置変換部220により変換して得られる位置情報を上記記憶領域に記憶されている仮想音源識別子およびチャネル識別子と共にオーディオアンプ10に送信する処理を携帯端末20に実行させるのである。このような態様において上記所定時間の長さを十分に短く定めておけば、ユーザは図9における位置X0、X1、X2およびX3をこの順になぞるように携帯端末20を振るなどの動作(すなわち、仮想音源の移動経路に沿って携帯端末20の向き(或いは携帯端末20の姿勢)を変化させるといった操作)を行うだけで、当該仮想音源の位置を逐一指定する操作を行うことなく、その仮想音源を移動させることができる。
また、移動させる仮想音源を指定する操作が為されたことを契機として、当該仮想音源の仮想音源識別子およびチャネル識別子とともに当該仮想音源の位置情報を上記記憶領域に書き込んでおき、以降、所定時間が経過する毎に角度情報取得部210により角度情報を取得し、当該角度情報を角度・位置変換部220により変換して得られる新たな位置情報と上記記憶領域に記憶されている位置情報とが異なるか否かを判定する処理を携帯端末20に実行させ、上記判定結果がYesである場合には、新たな位置情報と上記記憶領域に記憶されている仮想音源識別子およびチャネル識別子とをオーディオアンプ10に送信し、当該位置情報を用いて上記記憶領域内の位置情報を上書きする処理を携帯端末20に実行させても良い。このような態様によっても、ユーザは、仮想音源の移動経路をなぞるように携帯端末20を振る(或いは携帯端末20の姿勢を変化させる)といった動作を行うことで、当該仮想音源の位置を逐一指定する操作を行うことなく、その仮想音源を移動させることができる。また、本態様によれば、移動させる旨を指定された仮想音源の位置が実際に変化したときに、当該仮想音源の仮想音源識別子、チャネル識別子および位置情報が携帯端末20からオーディオアンプ10へ送信されるため、所定時間が経過する毎に位置情報を送信する態様に比較して携帯端末20とオーディオアンプ10との間のデータ通信量を低減させることができる。
以上に説明した各態様によれば、ユーザは、仮想音源の移動経路を、携帯端末20を振る(或いは携帯端末20の姿勢を変化させる)といった直観的な動作を行うことで指定することができる。このため、例えばライブパフォーマンスなどにおいて歌唱者や楽器の演奏者の各々に携帯端末20を持たせておき、各自の携帯端末において移動させる仮想音源として自身の歌唱音や演奏音に対応する仮想音源を指定する操作を行わせておけば、歌唱者や楽器の演奏者の各々が携帯端末20を振るなどの動作を行うことで自身の歌唱音や楽器演奏音に対応する仮想音源を移動させることができ、ライブパフォーマンスにおける演出の幅を広げることができる。また、仮想音源位置設定画面に対する操作によって仮想音源の位置を設定する動作モードと、携帯端末20を振るなどの動作によって仮想音源の位置を設定する動作モードとを切り換え可能なように携帯端末20を構成し、ユーザにより指示された動作モードで動作させるようにしても良い。
オーディオアンプ10側では、仮想音源Vmと受聴点LPの距離を示す値D(m)が大きくなるにつれて全体のゲインが小さくなるよう各周波数成分の強度を引き下げる処理を周波数補正部140−mに実行させるようにして良い。ゲイン分配部150−mにおけるゲインの調整(すなわち、値D(m,n)を利用したゲイン調整)では、仮想音源Vmが受聴点LPからどの程度離れているかを表現することができないが、仮想音源Vmと受聴点LPとの距離に応じて全体のゲインを調整することで、例えば仮想音源Vmが受聴点LPから遠ざかるにつれて音が小さくなるといった自然な音響効果を付与することが可能になるからである。
また、値D(m)の更新(或いは値D(m,n)の更新)の有無に基づいて仮想音源Vmの移動の有無を制御部120に検知させ、移動が検知された場合には、各スピーカに与えるオーディオ信号のゲインをLPF処理を施すなどして時定数を持たせてなだらかに変化させる処理を制御部120による制御の下でゲイン分配部150−mに実行させても良い。同様に、仮想音源の移動が検知された場合には、高域の減衰量(或いは音量調整のための各周波数成分の強度の調整量)をなだらかに変化させる処理を周波数補正部140−mに実行させても良い。時定数を持たせて変化させることによって、音の急激な変化に起因する違和感を和らげることができ、さらに自然な音響効果を付与することができると期待されるからである。また、各スピーカに与えるオーディオ信号のゲインを時定数を持たせて変化させるようにすると、処理負荷の関係でユーザにより設定された位置情報を間引いて演算を行い仮想音源Vmを移動させる場合や、複数の仮想音源の移動を指示された状況化で全ての仮想音源を同時に移動させることができず、やむを得ず時間をずらして仮想音源を移動させる演算を別々に行う場合に特に効果的である。また、配分する音量が小さすぎる場合には、ゲインをゼロとみなして該当スピーカへの配分をやめることで処理負荷を低減し、処理を簡略化できる。なお、値D(m)の更新(或いは値D(m,n)の更新)の有無に基づいて仮想音源Vmの移動の有無を検知する態様の具体例としては、予め定められた単位時間内に所定の閾値を超える頻度で値D(m)等の更新が発生した場合に仮想音源Vmの移動を検知する態様や、値D(m)の更新量が所定の閾値を超えた場合に仮想音源Vmの移動を検知する態様が考えられる。
なお、本実施形態では、仮想音源を置く位置を逐次ユーザに設定させることで仮想音源の移動を実現した。しかし、ユーザにより設定された初期位置から予め定められた軌跡(受聴点LPと仮想音源の初期位置とを通る直線、或いは、受聴点LPを中心として仮想音源の初期位置を通る円など)に沿って仮想音源を移動させる場合には、移動方向と移動速度のみをユーザに設定させれば良い。移動方向と移動速度が与えられれば、各時刻における仮想音源の位置を算出することができるからである。また、仮想音源を置く位置として複数の位置をユーザに順次設定させたり、移動軌跡、移動速度および移動方向をユーザに設定させたりするのではなく、仮想音源に対応するオーディオ信号を解析して移動軌跡、移動速度および移動方向を求め、その解析結果にしたがって仮想音源を移動させても良い。
(D:変形)
以上本発明の各実施形態について説明したが、これら実施形態に以下の変形を加えても勿論良い。
(1)上記各実施形態では、センサにより検出した角度情報を角度・位置変換部220により変換して得られる座標情報を、スピーカ設置位置または仮想音源位置を示す位置情報としてオーディオアンプ10へ送信する処理を携帯端末20に実行させた。しかし、上記角度情報そのものを位置情報として携帯端末20からオーディオアンプ10へ送信し、この角度情報から座標情報を算出する処理をオーディオアンプ10の制御部120に実行させるようにしても良い。具体的には、図10に示すように角度・位置変換部220を除去した構成の携帯端末20Aと、図11に示すように角度・位置変換部220を含む制御部120Aを制御部120の代わりに設けたオーディオアンプ10Aとによりオーディオシステムを構成する。そして、スピーカ位置を設定する操作が為された場合にはスピーカ識別子とその時点の角度情報との組をオーディオアンプ10Aに送信し、仮想音源位置を設定する操作が為された場合には仮想音源識別子と仮想音源化するチャネルのチャネル識別子と当該操作が行われた時点の角度情報の組をオーディオアンプ10Aに送信する処理を実行させる。オーディオアンプ10Aの制御部120Aには、携帯端末20Aから受信した角度情報を角度・位置変換部220により位置情報に変換する処理を実行させる。このような態様においては、ジャイロセンサや加速度センサなどのセンサとスピーカ或いは仮想音源の位置をユーザに設定させるためのユーザインタフェースと情報送信部とを有す端末であれば、携帯端末20Aとして使用することができる。また、上記各実施形態では、周波数補正部140−mをゲイン分配部150−mの前段に設けたが、ゲイン分配部150−mの後段に周波数補正部140−mを設けても良い。
(2)上記各実施形態では、所謂5.1チャネルサラウンドシステムへの本発明の適用例を説明した。しかし、2.1チャネルや7.1チャネル、或いは9.1チャネルのサラウンドシステムに本発明を適用しても良く、また、サブウーハを有さない或いはサブウーハを複数有するサラウンドシステムに本発明を適用しても良い。要は、複数のスピーカを含み、それら複数のスピーカの各々から出力される音によって1または複数の仮想音源を設置する(各仮想音源に対応する音像を定位させる)オーディオシステムであれば、本発明を適用することによってそれら仮想音源をユーザの所望の位置に置いたり、自然な効果を付与しつつそれら仮想音源を移動させたりすることが可能になる。
(3)上記各実施形態では、スピーカ30−n(n=1〜5)の各々の設置位置を携帯端末20の操作によってユーザに設定させた。しかし、スピーカ30−n(n=1〜5)の各々および携帯端末20に、GPS受信器と、このGPS受信器により受信した位置情報をオーディオアンプ10へ送信する送信器とを装着(或いは内蔵)させておくとともに、オーディオアンプ10の制御部120には、これら送信器から送信されてくる情報から、受聴点の位置を原点とする所定の広さの座標空間における各スピーカの設置位置を示す位置情報を算出して記憶部170に書き込む処理を実行させても良い。このような態様であれば、ユーザにスピーカ30−n(n=1〜5)の各々の位置を設定させる必要はない。
(4)上記各実施形態では、1つの携帯端末20を用いて複数の仮想音源の各々の位置を設定する場合について説明した。しかし、仮想音源毎に設置位置の設定を行う携帯端末を定めておき、複数の携帯端末の各々により複数の仮想音源の各々の設置位置を設定しても良い。例えば、携帯端末20−1によって仮想音源V1の設置位置を設定させ、携帯端末20−2によって仮想音源V2の設置位置を設定させ、・・・携帯端末20−Mによって仮想音源VMの位置を設定させ、オーディオアンプ10には、仮想音源Vm(m=1〜M)に対応する音像が携帯端末20−mにより設定された位置に定位するように、スピーカ30−n(n=1〜5)に与えるオーディオ信号を当該携帯端末20−mから受信した位置情報に基づいて振り分ける処理を実行させるようにすれば良い。
1…オーディオシステム、10,10A…オーディオアンプ、IN−k(k=1〜5)…オーディオ入力端子、OUT−n(n=1〜5)…オーディオ出力端子、110…通信I/F部、120,120A…制御部、130−m(m=1〜M)…仮想音源化部、140−m(m=1〜M)…周波数補正部、150−m(m=1〜M)…ゲイン分配部、160−(m、n)(n=1〜5、m=1〜M−1)…加算器、170…記憶部、20,20A…携帯端末、210…角度情報取得部、220…角度・位置変換部、230…情報送信部、30−n(n=1〜5)…スピーカ。

Claims (4)

  1. 受聴者の位置である受聴点から見た仮想音源の位置を示す位置情報を、当該仮想音源の位置を設定する操作が為されたことを契機としてまたは所定時間が経過する毎または位置情報に変化が生じる毎に送信する携帯端末との通信により取得する取得手段と、
    前記仮想音源に対応するオーディオ信号から複数のスピーカの各々に与えるオーディオ信号を生成して出力する手段であって、前記位置情報の示す位置から遠い位置のスピーカに与えるオーディオ信号ほどゲインが小さくなるように前記仮想音源に対応するオーディオ信号の振り分け量を演算する処理を前記取得手段による位置情報の取得を契機として実行し、当該振り分け量にしたがって各スピーカに与えるオーディオ信号を生成する分配手段と、を備え、
    前記取得手段の通信相手となる携帯端末は、仮想音源位置およびスピーカ位置を各々別個に設定するためのユーザインタフェースを有し、各ユーザインタフェースに対する操作により、当該携帯端末の位置を原点とする所定の広さ座標空間にて当該携帯端末の向きにより仮想音源位置およびスピーカ位置の各々を別個独立に設定させ、
    前記取得手段は、前記受聴点から見た前記複数のスピーカの各々の位置を示す位置情報を前記携帯端末との通信により取得し、
    前記分配手段は、前記仮想音源の位置を示す位置情報と前記複数のスピーカの各々の位置を示す位置情報とから前記複数のスピーカの各々と前記仮想音源との距離をスピーカ毎に算出し、当該距離に基づいて前記仮想音源に対応するオーディオ信号の振り分け量を演算する
    ことを特徴とするオーディオアンプ。
  2. 前記分配手段へ入力されるオーディオ信号または前記分配手段から各スピーカへ出力されるオーディオ信号に、前記座標空間における前記仮想音源と前記受聴点との距離の大きさに応じた音響効果を付与する信号処理を施す補正手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のオーディオアンプ。
  3. 前記信号処理は、前記座標空間における前記仮想音源と前記受聴点との距離が大きいほど音量が小さくなるようにまたは高域の減衰量が大きくなるように各周波数成分の強度を調整する処理であり、
    仮想音源の移動を検知する検知手段を備え、前記検知手段により仮想音源の移動が検知された場合には、前記分配手段には各スピーカへの振り分け量をなだらかに変化させる処理を実行させ、前記補正手段には前記各周波数成分の強度の調整量をなだらかに変化させる処理を実行させることを特徴とする請求項2に記載のオーディオアンプ。
  4. 前記取得手段は、複数の仮想音源の各々についての位置情報を各仮想音源に対して位置の設定元として予め定められた複数の携帯端末の各々から取得し、
    前記分配手段は、複数の仮想音源の各々について各スピーカに与えるオーディオ信号を当該仮想音源に対する位置の設定元として定められた携帯端末から取得した位置情報に基づいて生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のオーディオアンプ。
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