JP6104630B2 - スライディング放電用の電源装置 - Google Patents

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Description

本発明は、スライディング放電用の電源装置に係り、放電の電気流体力学的作用や化学作用の活用を目的に開発が進められているスライディング放電を駆動する電源を単純化し、電源の自己制御性を利用してスライディング放電の安定化を図る際に利用可能な電源装置に関する。
スライディング放電はレーザ励起用に開発され、最近では航空機の翼や風力発電機の回転翼の境界層の制御を目的に検討されているが、ディーゼルエンジン等の排ガス処理をはじめ、プラズマリアクタなどへの広範な応用も有望視される新しい放電形態である。
図8はスライディング放電装置の基本形式を示した説明図である。同図に示されるスライディング放電装置では、絶縁誘電体4の同一面上に、励起電極1とスライディング電極2とを一定間隔の放電ギャップ6をあけて配置し、前記2電極とは絶縁誘電体4を挟んで、前記放電ギャップ6を覆うようにして、絶縁誘電体4の裏面に背面電極3を配置した3電極構造が採用されている。
ただし、必要に応じて複数のユニットを並列にして使用することもできる。(非特許文献1参照)
上記の基本形式では励起電極1には交流高電圧電源7が接続され、絶縁誘電体4を隔てて設置された背面電極3との間に高い交流電界が印加されるため、励起電極1の端部には励起用バリア放電5が発生する。
該背面電極3の役割は、励起電極1の端部に励起用バリア放電5を発生することだけでなく、正ストリーマを絶縁誘電体4の表面にできるだけ引き寄せてスライディング電極2に到達するように電気映像力を作用させることである。したがって、スライディング放電(表面プラズマ)の延伸をさほど大きくしなくても良い場合には背面電極3を簡略化し、局部的なバリア放電を発生させるための補助電極で代用することもある。
上記のように、スライディング放電は絶縁誘電体4の表面に沿って、表面プラズマが広い範囲に延伸する放電方式であるため、プラズマで発生した種々の化学的活性種を絶縁誘電体4の表面に付着、吸着させ、それが強い化学作用を持つと考えられることから、特に不均一触媒反応に対しては顕著な効果が期待できる。このため、通常のプラズマリアクタで用いられる誘電体バリア放電よりもスライディング放電の方が、化学作用が強いことが報告されている。(非特許文献2参照)
スライディング電極2には励起電極1に対し、直流電源8により負電位が印加され、励起用バリア放電5で発生した正ストリーマがスライディング電極2に引き寄せられ、絶縁誘電体4の表面の放電ギャップ6上を表面プラズマがスライディング電極2まで延伸し、スライディング放電として目視される。なおスライディング電極2に逆電位を印加した場合には、安定したスライディング放電を発生することなく、印加電圧を高くするといきなり火花放電に移行する。
特開平9−247945号公報(第4頁図2) 特開平5−064442号公報(第5頁図1および第7頁図4) 特開平6−014462号公報(第7頁図1)
R.Sosa, H.Kelly, D.Grondona,A.Marquaez, V.Lago and G.Artana著"Electrical and plasma characteristics of a quasi-steady sliding discharge"Journal of Physics D:Applied Physics. vol.41(2008) pp35202-35210 M.A.Malik, J.F.Kolb, Y.Sunand K.H.Schoenbach著"Comparative study of NO removal in surface-plasma and volume-plasma reactorsbased on corona discharges" Journal of Hazardous Matters vol.197(2011) pp220-228
一方、スライディング放電をプラズマリアクタに使用するためには安定した運転ができる温度範囲を広くする必要があるが、スライディング放電は雰囲気温度が上昇するにつれ火花放電を生じやすくなり、不安定になる。図9は励起電極1とスライディング電極2の間での火花放電電圧の温度依存性に関する実測結果の一例である。
図9から解るように、出力電圧が固定されている直流電源8をスライディング電極2に直結した場合には、ある温度以上で火花放電が発生し、交直両電源にパルス状の大電流が流れるため、最悪の場合には電源装置を破損する。このため、図8の電極では安定抵抗9aで放電電流を制限して安定化を図っている。なお、バイパスコンデンサ9bは交流のバリア放電電流に対するインピーダンスを低くするために取り付けてある。
しかしながら、図8の基本形式では励起電極1、スライディング電極2および背面電極3の全ての電極に高電圧がかかるため、全ての電極と筐体との間で、電気的な絶縁を確保しなければならないばかりでなく、高価な給電用のブッシング碍子10が少なくとも2個以上必要になる。とくに高温での電気絶縁の確保は容易でなく、費用もかかる。
この電気絶縁の問題を軽減するためには、交流高電圧に直流高電圧を重畳した放電励起用の高電圧を発生させ、それを励起電極1だけに印加すればスライディング電極2と背面電極3は接地でき、かつブッシング碍子10の個数も削減できる。つまり、交流電源7と直流電源8を直列にして図10のように構成すれば、交流電圧に直流電圧を重畳できる。
即ち、スライディング放電の励起に用いるバリア放電には商用周波数でなく、1kHz〜100kHzの高電圧交流を用いることが効率的であるので、図10のように発振器12と増幅器(あるいはインバータ)11を用い、図10の昇圧トランス7a、インダクタ(あるいはトランスの漏洩インダクタ)7bおよびシステム容量も含めた共振コンデンサ7cで構成された交流高電圧電源(共振回路)7で交流高電圧を発生させるのが実際的である。(特許文献1)
一方で、図10のように電源7,8を直列に構成した場合は、直流電源8の絶縁耐力を交流電圧の重畳分だけ高くしなければならない。仮に、電源の接続順序を逆転したとしても交流電源7の絶縁耐力を高くしなければならず、状況は変らない。
図11は交流電源7と直流電源8を並列に使用した場合である。この場合、電源の絶縁耐力の問題は軽減できるが、交直両電源が必要であることには変わりないし、安定抵抗9aには交流成分も流れるので交流電源7の電流容量を大きくしたり、直流電源8にバイパスコンデンサを付加するなどの対策が必要になる。
前記のいずれの場合でも安定抵抗9aを使用しているため、それによる電力損失が無視できない。つまり、火花放電の発生を軽減するための安定抵抗9aは、電力消費量の増大を招くとともに、安定抵抗9aによる電圧降下の分だけ、直流電源8の出力電圧に余裕を持たせる必要がある。
前述のように、交流高電圧に直流高電圧を重畳する方法は既に公開されているが(特許文献2および3)、上記の問題点を解消するものではなく、かつスライディング放電の安定化には一切の考慮がない。
また、前記の通り、スライディング放電には交流と直流の独立した2つの電源7,8が必要であり、電源構成が複雑化するという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑み、簡略な1電源によって安定したスライディング放電を可能とするスライディング放電用の電源装置の提供を目的とする。
加えて、安定抵抗による電力消費を避けることが可能であり、電源および電極の能力を十分に発揮させることができる電源装置の提供を目的とする。
(1)上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、励起電極、スライディング電極の少なくとも2つの電極、或いは背面電極を加えた3つの電極系で構成されたスライディング放電装置に対し、交流高電圧に直流高電圧を重畳した高電圧を励起電極のみに加えることにより、スライディング放電を生ぜしめることを目的にした電源装置であって、交流高電圧電源と、該交流高電圧電源から供給される交流高電圧を整流する整流回路とを具備し、前記励起電極のみに高電圧を印加し、スライディング電極と背面電極を接地して電気絶縁上の問題を軽減するため、該交流高電圧電源から出力される交流高電圧を、該整流回路によって整流しつつ直流高電圧を該交流高電圧に重畳することを特徴としている。
(2)請求項2記載の発明は、上記1項において、前記整流回路として、コッククロフト・ウォルトン回路が用いられ、前記交流高電圧電源から出力される交流高電圧に直流高電圧を重畳する際、コッククロフト・ウォルトン回路における通常の交流入力端子と接地端子とを逆転して、該コッククロフト・ウォルトン回路の通常の接地端子に交流高電圧を供給することにより、該コッククロフト・ウォルトン回路の出力端子に直流高電圧が重畳された交流高電圧が得られるように構成されていることを特徴としている。
(3)請求項3記載の発明は、上記1項及び2項において、交流高電圧の発生源としてLC共振回路とコッククロフト・ウォルトン回路の出力インピーダンスの特性を利用して、電力を消費する安定抵抗を用いることなく、スライディング放電を適切に安定化する自己制御性を電源に付与することを特徴としている。
(4)請求項4記載の発明は、上記1項〜3項のうち、何れか1項において、広範な温度変化によるスライディング放電装置の放電電流や静電容量変化に適切に追従させるために、LC共振回路へ供給する電圧の周波数を共振周波数付近で調整して行うことを特徴としている。
本発明によれば、交流高電圧に直流高電圧を重畳させた直流重畳交流高電圧電源が安価に構成でき、スライディング放電の利用が簡単化されると同時に、スライディング放電装置の電気的絶縁の問題も軽減できる。
しかも、電源を構成する共振回路およびコッククロフト・ウォルトン回路には電力を消費する要素(安定抵抗等)を含まないので、スライディング放電における電力損失を大幅に低減することができる。
また、自己制御性の調整は共振回路を駆動する電源周波数を適切に選定することによって行なうことができ、通常は運転中の調整は不要である。
更に広範な雰囲気温度やガス組成などの環境変化に対応するために、共振回路を含む交流高電圧電源の駆動周波数の調整を手動制御あるいは自動制御によることも可能であるため、安定抵抗を使用する場合と異なり、運転の中断を要する素子等の交換は不要になる。
本発明に係るスライディング放電用の電源装置における実施例1の構成を示した概略図であって、交流単一電源を用いて交流電圧に直流電圧を重畳する構成を示している。 実施例1における絶縁誘電体としてアルミナ管を用いたスライディング放電装置を示す写真である。 実施例1の電源装置を用いたスライディング放電時の様子を示す写真である。 実施例1の電源装置における自己制御性を示す実測結果を示すグラフであり、雰囲気温度と励起電圧およびスライディング放電電力との関係を示している。 4種の駆動周波数について火花放電が生じないようにアンプの出力電圧を火花放電限界値に固定したときの雰囲気温度とスライディング放電電力との関係を示すグラフである。 ディーゼルエンジン排ガス処理用のプラズマリアクタに使用される放電装置を本発明に係る電源装置によって駆動した場合の写真である。 本発明に係るスライディング放電用の電源装置が適用可能なプラズマリアクタの筐体内部に設置される電極の構造を示す概略説明図である。 従来におけるスライディング放電用の電極の基本構成、並びに当該放電装置を駆動する電源系を示した概略図である。 励起電極とスライディング電極との間での火花放電電圧の温度依存性に関する実測結果を示すグラフの一例である。 交流電圧に直流電圧を重畳してスライディング放電装置を駆動する際に、交直両電源を直列にした場合を示す概略図である。 交流電圧に直流電圧を重畳してスライディング放電装置を駆動する際に、交直両電源を並列にした場合を示す概略図である。
以下、添付図面にしたがって本発明に係るスライディング放電用の電源装置について説明する。
(実施例1)
図1は本発明に係わるスライディング放電用の電極構造とともに、当該電極を駆動する電源装置の概略構成を示す説明図である。
図1に示されるスライディング放電用の電極構造自体は図8の基本形式と同じであり、絶縁誘電体4の同一面上に、励起電極1とスライディング電極2を10〜100mm程度の一様な間隔になるように配置されて構成されている。そして、絶縁誘電体4を挟んでその裏面側に、励起電極1とスライディング電極2の間隙を覆うように、背面電極3を配置した3電極構造が採られている。しかし、基本形式とはスライディング電極2と背面電極3が接地されている点が異なる。
励起電極1には、交流高電圧に直流高電圧を重畳した電圧が印加される。これによって、励起電極1と絶縁誘電体4の間に高い交流電界が加わり、励起電極1の端部には励起用バリア放電5が発生する。印加した直流電圧成分の作用により、放電ギャップ6には励起用バリア放電5から発した表面プラズマが生じ、スライディング放電として目視される。
図1において、交流高圧電源7は高電圧トランス7a,共振用インダクタ7b,共振コンデンサ7c,アンプ(インバータ)11及び発振器12等を備えたLC共振回路であり、アンプ(インバータ)11の出力を高電圧トランス7aに入力し、得られた高周波高電圧交流をコッククロフト・ウォルトン回路13に供給して、交流高電圧に直流高電圧を重畳したスライディング放電駆動用の高電圧を発生させる。
この実施例では、共振用インダクタ7bは高電圧トランス7aの漏洩インダクタンス(約0.8H)で、また共振コンデンサ7cは放電装置などのシステム容量(約140pF)で構成した。このときの無放電時の共振周波数は約15kHzであった。コッククロフト・ウォルトン回路13のコンデンサ13bおよび13cの静電容量は、それぞれ11nFおよび22nFとした。
図1に示したコッククロフト・ウォルトン回路13の二つの入力端子13d、13eのうち、通常は13dを接地し13eに交流電圧を加えて、出力端子13fに直流高電圧を得ている。しかし本実施例では入力端子13d、13eを意図的に逆転し、出力端子13fに直流高電圧が重畳された交流電圧を得て、励起電極1に供給している。
このように、実施例1では、3電極系のスライディング放電に利用できる簡便な電源を提供するために、LC共振回路による交流高電圧電源(共振回路)7の出力を、変形したコッククロフト・ウォルトン回路13により、高周波交流高電圧に高電圧直流バイアスを重畳した高電圧を発生させ、それを励起電極1にのみ給電することにより、スライディング電極2並びに背面電極3を接地可能とする。これにより、励起電極1とこれに給電する配電線のみに対して電気絶縁を施せばよいことになる。
なお、コッククロフト・ウォルトン回路13のコンデンサ13bの静電容量は放電装置の静電容量の5〜20倍とし、コンデンサ13cは、コンデンサ13bの2倍にするのが原則であるが、これらの静電容量を変化させることによっても出力電圧の低下特性をある程度調整可能である。
また、図1におけるコッククロフト・ウォルトン回路13では、暫定的に2段構成(倍電圧整流)として描いてあるが、重畳する直流電圧を更に高めたいとき、あるいは交流電源の電圧を下げたいときには段数を増やすことによって対応できる。
図2は、スライディング放電の放電装置の構成部材となる絶縁誘電体4としてアルミナ管を用いた場合を示す写真である。
図2に示される放電装置は外径100mm、肉厚5mmの高純度アルミナ管の外表面端部に、厚さ40μmのステンレステープを一周巻き付けてスライディング電極2とした。スライディング電極2から放電ギャップ40mm±0.5mmを隔てて厚さ40μmのステンレステープをアルミナ管外表面に一周巻き付け、励起電極1とした。またアルミナ管の内面には幅70mmにわたりステンレステープを貼って背面電極3とした。
図3は実施例1の電源装置によって放電電極にスライディング放電を発生させた状態を示す写真であり、同図に示されるように、コッククロフト・ウォルトン回路13の出力を放電装置の励起電極1に供給し、他の電極は接地して、スライディング電極2と励起電極1との間の40mmの放電ギャップ6に一様なスライディング放電を発生させた。
図4はこのときの電源の自己制御性を示す実測結果である(高電圧トランスの入力電圧および周波数は一定値に固定してある)。図4のうち、白丸をプロットしたカーブがスライディング放電電力、黒丸をプロットしたカーブが平均励起電圧を示している。
同図に示されるように、雰囲気温度の上昇に伴い放電電力(電流)が増加するが、電源の自己制御性が発揮されて、安定抵抗を用いることなく、放電電力(電流)増加に応じて放電の平均励起電圧が自然に低下し(自己制御性)、火花放電の発生を防止している。この例では励起電圧の低下があってもスライディング放電電力の温度依存性はほぼ平坦であり、広い温度範囲で好ましい放電状態が実現できている。
(実施例2)
前述の実施例1では電源と、放電装置の電力吸収能力とがよくマッチしているために、試験温度範囲(100〜300℃)では火花放電が全く起らない。ここでは放電装置の電力吸収能力を故意に小さくした電極を製作し、周波数による電源の自己制御性の調整を可能ならしめた実施例について例示する。
スライディング放電用の電源は実施例1と同じものを使用した。放電装置は実施例1の励起電極1の長さを1/5(約60mm)にし、放電ギャップも30mmに短縮した。その結果、放電の電流密度が増加し、火花放電が容易に起きるようになる。
図5は電源の共振周波数付近で与えられた周波数に対して、80℃〜300℃の雰囲気温度範囲で火花放電が生じないようにアンプの出力電圧の限界値を予め探り、その限界値に固定したときの雰囲気温度とスライディング放電電力の関係を示すグラフである。
このシステムの共振周波数は、低電圧印加時(無放電時)では15.3kHz、室温雰囲気で火花放電直前まで印加電圧を増加した場合、約14kHzであるが、雰囲気温度が上がると更に低下する。
同図のグラフに示されるように、室温での共振周波数直近(14〜15kHz)で運転するとスライディング放電電力は雰囲気温度の影響が少なく、ほぼ平坦である。周波数を上記の共振周波数より低くするとスライディング放電電力が高温域で倍増できる。ただし低温域ではスライディング放電電力が急減し、放電電力が平坦な温度範囲は狭くなる。
上記の例のように、周波数の調整によって、使用目的に適した放電状態を実現する自己制御性を電源に付与できることが確認できた。
かくして、放電装置の能力を最大限、発揮させつつ、かつ広い温度範囲で火花放電を発生させないために、放電部の温度上昇に伴う放電電流の増加に応じた出力電圧の低下特性を、共振周波数付近で運転される交流高電圧電源(共振回路)7に付与しているので、負荷電流に対する出力電圧の自己制御性を調整できる。これは交流高電圧電源(共振回路)7に加える駆動電圧の周波数を共振周波数付近で適切に選定することにより可能である。
(実施例3)
次に、プラズマリアクタ用の電源として、本発明に係る電源装置を利用する場合の実施例について説明する。
プラズマリアクタは、ディーゼルエンジンの排ガス処理装置、メタンやメタノールのリフォーミングなど、水素発生を目的にしたプラズマリアクタへの広範な応用が企図されており、本実施例はプラズマ反応に際してバリア放電とスライディング放電を併用した例である。
図6はディーゼルエンジンの排ガス処理装置のプラズマリアクタに用いられた放電装置を駆動したときの写真である。同図に示される放電装置は前述した二つの実施例より大きく、外径160mm、肉厚6mm、長さ400mmの高純度アルミナ管を使用している。この管の外表面の両端に放電ギャップ65mmのスライディング放電部6を設けた。ここで、本実施例でも前述した実施例と同一の符号を使用している。
上記アルミナ管表面の中央部250mmの区間には直径0.5mmのステンレス線を間隔5mmで45周巻き付けて励起電極1に接続し、バリア放電高圧側電極とした。スライディング放電のギャップ6に対応する管の内壁の部分にはステンレステープで幅約75mmの背面電極3を形成した。管内壁の背面電極3の間は約9mmの間隔で50本のステンレス線を管軸方向に管の内壁に沿わせて貼り付けて、接地してある。この接地線の周りにもバリア放電が生じる。
電源は公称最大出力1200Wの市販品で、400V、15kHzのインバータ出力を昇圧トランスで片振幅10kVに昇圧している。共振用のインダクタは35mH、電極系も含めたシステム容量は800pFに固定されているため、共振周波数は約30kHzとなるが、実際の運転周波数は共振周波数の1/2の15kHzに固定されている。これは市販の電源が、その出力インピーダンスがあまり高くならないように選定された結果であると思われる。コッククロフト・ウォルトン回路13は前記2例と同じものを用いた。
図6の放電状態の写真に示されるように、ステンレス線の周り見られる放電はバリア放電であり、雰囲気温度に関係なく発生するが、管の端部に設けた65mmの放電ギャップ6に生じるスライディング放電は雰囲気温度が150℃以上で発生する。写真は雰囲気温度が約180℃の状態である。この雰囲気温度では良好な放電状態であるが、雰囲気温度が250℃程度に上昇するとスライディング放電は火花放電に移行し、電源のブレーカーが作動して放電が停止する。これは電源の周波数が共振周波数の1/2に固定されているため、電源の出力特性がスライディング放電装置に整合できていないことによる。電源周波数をある範囲内で可変にして適切な自己制御性を電源に付与すれば実施例1のように安定した放電状態を実現できる。
次に、前述した構成とは異なる形態のプラズマリアクタに本発明に係る電源装置を利用する場合について説明する。
図7はリアクタを構成する筐体内部に設置されている電極の構造を示す概略説明図で、図7(A)は筐体内部に設置される電極(放電ユニット)を横方向から視た説明図、図7(B)は図7(A)のA−A断面の矢視説明図である。
図7に示されるプラズマリアクタの平板状放電ユニットは、処理対象気流経路(ガス流路)15に面する側に図7(B)に示されるような励起電極1およびスライディング電極2が絶縁誘電体平板4上に形成され、絶縁誘電体平板の内面あるいは背面に背面電極3が該励起電極1と電気的に絶縁された状態で配置される。なお、図7(A)では励起電極1とスライディング電極2が重なって描かれるため、励起電極1を描いていない。
図7に示されるように、プラズマリアクタの筐体は、上下壁面16a,16a、側壁面16b,16b、図示しない前後壁面によって直方体状の筐体が形成されている。
このプラズマリアクタでは、スライディング電極2並びに背面電極3を、リアクタの筐体を介して接地可能としたため、絶縁に必要な碍子などが不要となり、結果的にプラズマリアクタの構造を簡素化かつ小型化することが可能となり、製作費用のコストダウンを図ることができる。
図7に示すプラズマリアクタでは、各放電ユニットを、その放電面が互いに向き合うように配置することにより、励起電極1から出発する正ストリーマが、対向する面からの静電気的な反発によって、放電面付近からあまり拡散することなくスライディング電極2に向かう。このため、発生した表面プラズマの拡散を防止し局在させて、プラズマ反応を促進することが可能になっている。
以上説明したように、スライディング放電において励起電極1のみに給電する方式は実用上の大きな利点があり、本発明に係る電源装置はこのような電極構造に対して極めて有用である。
本発明によれば、例えば、ディーゼルエンジンの排ガス処理装置や、燃料電池に重要なメタンリフォーミングなどを目的としたプラズマリアクタ用の電源装置として極めて適合性に優れ、簡便かつ安価な構成を採ることを可能にするものであり、スライディング放電の安定化に寄与する。
1 励起電極
2 スライディング電極
3 背面電極
4 絶縁誘電体
5 励起用バリア放電
6 放電ギャップ(スライディング放電部)
7 交流高電圧電源(共振回路含む)
7a 高電圧トランス
7b インダクタ(漏洩インダクタ)
7c 共振コンデンサ(電極等のシステム容量を含む)
8 直流高圧電源
9 安定器
9a 安定抵抗
9b バイパスコンデンサ
10 ブッシング碍子
11 アンプ(インバータ)
12 発振器
13 コッククロフト・ウォルトン回路(2段)
13a 高電圧整流ダイオード
13b 高電圧コンデンサ
13c 高電圧コンデンサ
13d コッククロフト・ウォルトン回路入力端子(高圧側)
13e コッククロフト・ウォルトン回路入力端子(接地側)
13f コッククロフト・ウォルトン回路出力力端子
14 放電駆動電圧供給用リード線
15 処理対象気流流路
16a 16a 上下壁面
16b 16b 側壁面(放電ユニット取付け側)

Claims (4)

  1. 励起電極、スライディング電極の少なくとも2つの電極、或いは背面電極を加えた3つの電極系で構成されたスライディング放電装置に対し、交流高電圧に直流高電圧を重畳した高電圧を励起電極のみに加えることにより、スライディング放電を生ぜしめることを目的にした電源装置であって、
    交流高電圧電源と、該交流高電圧電源から供給される交流高電圧を整流する整流回路とを具備し、
    前記励起電極のみに高電圧を印加し、スライディング電極と背面電極を接地して電気絶縁上の問題を軽減するため、該交流高電圧電源から出力される交流高電圧を、該整流回路によって整流しつつ直流高電圧を該交流高電圧に重畳することを特徴とするスライディング放電用の電源装置。
  2. 前記整流回路として、コッククロフト・ウォルトン回路が用いられ、前記交流高電圧電源から出力される交流高電圧に直流高電圧を重畳する際、コッククロフト・ウォルトン回路における通常の交流入力端子と接地端子とを逆転して、該コッククロフト・ウォルトン回路の通常の接地端子に交流高電圧を供給することにより、該コッククロフト・ウォルトン回路の出力端子に直流高電圧が重畳された交流高電圧が得られるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライディング放電用の電源装置。
  3. 交流高電圧の発生源としてLC共振回路とコッククロフト・ウォルトン回路の出力インピーダンスの特性を利用して、電力を消費する安定抵抗を用いることなく、スライディング放電を適切に安定化する自己制御性を電源に付与することを特徴とする請求項1及び2に記載のスライディング放電用の電源装置。
  4. 広範な温度変化によるスライディング放電装置の放電電流や静電容量変化に適切に追従させるために、LC共振回路へ供給する電圧の周波数を共振周波数付近で調整して行うことを特徴とする請求項1〜3のうち、何れか1項に記載のスライディング放電用の電源装置。
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