JP6100694B2 - グリピカン−3(gpc3)に対して親和性を有するヒトリポカリン2の突然変異タンパク質 - Google Patents

グリピカン−3(gpc3)に対して親和性を有するヒトリポカリン2の突然変異タンパク質 Download PDF

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Description

本発明は、新奇で、グリピカン−3(GPC3)を指向し特異的結合性を有する治療上および/または診断に役立つタンパク質に関し、タンパク質が好ましくはリポカリンタンパク質、より好ましくはリポカリン2(Lcn2またはNGAL)の突然変異タンパク質である。また、本発明は、そのようなタンパク質をコードする核酸分子、並びに、そのようなタンパク質および核酸分子の生成および使用のための方法に関する。従って、本発明は、そのようなリポカリンタンパク質を含む、これらタンパク質の使用を含めて、薬学的および/または診断に役立つ組成物を指向するものである。
グリピカン−3(GPC3)は、グリコシル−ホスファチジルイノシトールが結合した(anchored)ヘパリン硫酸プロテオグリカンのグリピカンファミリに属する癌胎児性抗原である。グリピカンは、ヘパリン硫酸グリコサミノグリカンと称される複合多糖鎖に対する共有結合により特徴付けられる。グリピカンは、細胞−細胞外マトリックス界面での細胞シグナリングに含まれている(Sasisekharan et al., Nature Reviews I Cancer, Volume2 (2002))。今日までに、ヒトグリピカンファミリの6つの異なるメンバが同定されている。細胞膜−結合グリピカン−3は、1つまたはそれ以上のジスルフィド結合で結合した2つのサブユニットで構成されている。
グリピカン−3は、成長中の胎児肝および胎盤で現れ、正常成人組織では低下調節されるか沈黙している。グリピカン−3遺伝子における突然変異または減少は、ヒトのシンプソン−ゴラビ−ベヘメル(Simpson-Golabi-Behmel)またはシンプソン異形症症候群(Simpson dysmorphia syndrome)に応答性である。グリピカン−3は、種々の癌、特に、肝細胞癌(「HCC」)、メラノーマ(melanoma)、ウィルムス腫(Wilm’s
tumor)および肝芽細胞腫(hepatoblastoma)で現れる(Jakubovic and Jothy; Ex.Mol.Path. 82: 184-189
(2007);Nakatsura and Nishimura, Biodrugs 19(2): 71-77 (2005))。
HCCは、世界中の癌関連死の第3位の主要原因である。各年、約百万人の死亡原因となる(Nakatsura and Nishimura, Biodrugs 19(2): 71-77 (2005))。肝硬変症を引き起こすB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよび慢性の重度の飲酒習慣は、HCCの最も一般的な原因のままである。その発生率は、C型肝炎ウイルス感染の蔓延のために、合衆国において劇的に増加しており、今後20年間で増加することが予測されている。HCCは、主として、肝臓移植または腫瘍切除により治療される。患者の予後は、基本的な肝機能および腫瘍が診断された時点でのステージの両者に依存している(Parikh
and Hyman, Am J Med. 120(3): 194-202 (2007))。効果的なHCC治療方法(strategies)が求められている。このため、GPC3、好ましくは腫瘍細胞上に現れるGPC3をターゲティングするための有効な手段および方法を有することが望まれている。
GPC3を分離し分析する方法、同様に、GPC3に関連した疾患や異常の治療用薬剤は、国際公開WO2009/012394号、WO2007/137170号やWO2007/047291号に記載されている。しかしながら、本発明で提供されるタンパク質に付随する特徴を有するグリピカン−3結合タンパク質は、以前には記載されていない。
本発明の一実施形態は、グリピカン−3(GPC3)を約10nMまたはそれ未満のKDにより測定された親和性で結合することが可能なリポカリン突然変異タンパク質に関する。より好ましくは、そのリポカリンは、約1nMまたは0.3nMまたはそれ未満のKDにより測定された親和性を有するものである。他の実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質は、競合アッセイにおいて、好ましくは約1nM、0.6nMまたは0.2nMまたはそれ未満のIC50値でGPC3に結合するために競合することが可能である。
他の実施形態では、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質に関し、前記突然変異タンパク質がhLcn2の直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134に対応する1つまたはそれ以上の位置での置換、好ましくはここに記載されるような置換を含む。
特有の実施形態では、本発明の突然変異タンパク質は、NGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134に対応する配列位置で、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20、しばしばそれ以上の置換を含む。
同様に、本発明は、配列番号:27に示されたNGALを含むポリペプチドに関し、前記NGALが配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の突然変異したアミノ酸残基を含む。そのようなポリペプチドは、好ましくは、アンチカリンである。
他の特有の実施形態では、本発明に従うリポカリン突然変異タンパク質は、配列番号:1〜配列番号:8で構成する群から選択されたアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、その突然変異タンパク質がヒトリポカリン2(hNGAL)を含む野生型ヒトリポカリンの配列に対して、少なくとも70%の同一性を有している。好ましくは、前記突然変異タンパク質は、NGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20、しばしばそれ以上の突然変異したアミノ酸残基を含む。
他の実施形態では、本発明の突然変異タンパク質は、有機分子、酵素ラベル(酵素標識)、放射性ラベル、有色ラベル、蛍光ラベル、発色ラベル、発光ラベル、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、細胞増殖抑制剤、毒素、金属複合体、金属およびコロイド金で構成する群から選択された1つの化合物と結合(conjugate)している。突然変異タンパク質は、そのN末端および/またはC末端で、タンパク質、タンパク質ドメインまたはペプチドである融合パートナに融合されていてもよい。
他の実施形態では、突然変異タンパク質は、その突然変異タンパク質の血清半減期を延長する化合物に結合されている。より好ましくは、突然変異タンパク質は、ポリアルキレングリコール分子、ヒドロエチルでんぷん、免疫グロブリンのFc部位、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン結合ペプチドおよびアルブミン結合タンパク質で構成する群から選択された化合物に結合されている。
他の実施形態では、本発明の突然変異タンパク質は、GPC3のアンタゴニストである。
他の実施形態では、本発明は、本発明の突然変異タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。
さらに他の実施形態では、本発明は、その核酸分子を含むホスト(宿主)細胞を包含する。
他の実施形態では、本発明のリポカリン突然変異タンパク質は、レチノール結合タンパク質(RBP)、ビリン結合タンパク質(BBP)、アポリポプロテインD(APO D)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、涙リポカリン(TLPC)、α2−ミクログロブリン関連タンパク質(A2m)、24p3/ユテロカリン(24p3)、von Ebners gland protein 1(VEGP 1)(エブネル腺タンパク質1)、von Ebners gland protein 2(VEGP 2)および主要アレルゲンCan f1前駆体(ALL−1)(Major allergen Can f1 precursor)の突然変異タンパク質で構成する群から選択される。関連する実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質は、ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(hNGAL)、ヒト涙リポカリン(hTLPC)、ヒトアポリポプロテインD(APO D)およびシロチョウ(Pieris
brassicae)のビリン結合タンパク質で構成する群から選択される。
また、本発明は、腫瘍、好ましくは肝臓腫瘍やメラノーマを治療する方法を含み、その方法がここに記載されるような突然変異タンパク質を含む薬学的組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む。
成熟Lcn2のアミノ酸配列における20のアミノ酸位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および134(下線および番号を付した)の同時のランダム突然変異生成のためのPCRアッセンブリストラテジィを示す。これら20の位置は、4つの配列サブセットに分かれている。各サブセットにおけるアミノ酸のランダム化のために、オリゴデオキシヌクレオチド(配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19)を合成し、ヌクレオチドのNNK混合物を突然変異したコドンで使用した。Nは全4つの塩基A、C、GおよびTの混合物を意味しており、一方、Kは2つの塩基GおよびTのみの混合物を意味しており;このため、そのようなトリプレットは、全20の天然アミノ酸と同様にアンバー停止コドンのTAGをコードしており、そのコドンは、ファージミド生成および遺伝子発現のために使用される、大腸菌(E.coli)supE−株(strains)のXL1−blue(Bullock et al., BioTechniques5(1987), 376-378)やTG1(Sambrook et al., Molecular Cloning. A Laboratory Manual (1989),Cold Spring Harbor Press)においてグルタミンとして翻訳される。非コードストランド(下記3’−5’方向におけるDNA二本鎖配列)に対応し、上述したオリゴデオキシヌクレオチド間のギャップを満たす確定したヌクレオチド配列を有する4つの追加のオリゴデオキシヌクレオチド(配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23)もアッセンブリ反応に使用した。過剰に添加されビオチングループを有する2つのより短いフランキング(flanking)オリゴデオキシヌクレオチド(配列番号:24、配列番号:25)は、アッセンブルされた完全合成の遺伝子フラグメントのPCR増幅用のプライマとして供給した。2つのフランキングプライマのそれぞれは、酵素消化で相互に非適合性オーバーハングを引き起こすBstXI制限サイト(CCANNNNNNTGG)を包含する。この制限サイトの特定の配列が合成遺伝子の特有の効率的なライゲーションおよびクローニングを可能とする。オリジナルLcn2配列についてのアミノ酸Gln28のHisへの置換は、第1のBstXIサイトを導入するために必要であるが、第2のものではLcn2のcDNAにおいて自然に生じる。また、対になっていない残基Cys87は、遺伝子アッセンブリの間にSerに置き換えられた。1ポットのPCRの後、得られた遺伝子フラグメントを、Lcn2構造遺伝子の欠損部を提供するベクタに挿入した。また、この図は、2つのBstXI制限サイトに隣接された(flanked)カセットの上流側および下流側のそれぞれの2つの短鎖プライマ(配列番号:32、配列番号:33)を表しており、二本鎖DNAの配列決定用に供給した。 合成Lcn2遺伝子のライブラリのヌクレオチド配列を示す(図1のように、2つのBstXI制限サイトに隣接された中央のカセットのみを示す。)。この遺伝子フラグメントは、スローニング バイオテクノロジィ社(Sloning BioTechnology GmbH)により調製されたものである。図1に記載したDNAライブラリと比較して、2つの相違点がある。第1に、可能であればいつでも、大腸菌発現用に最適化されたコドンが突然変異していないアミノ酸位置の全体で使用された。第2に、それぞれがシステイン以外の異なるアミノ酸をコードする19の異なるトリプレット(GAC、TTC、CTG、CAC、AAT、AGC、ACC、GCA、ATG、CCT、GTT、TGG、GAG、CAA、ATC、GGA、CGT、GCA、TAC)の混合物が、20のランダム化された位置で用いられており、図1に表された1つと同一である。アミノ酸の番号付けは、スローニング バイオテクノロジィ社により用いられた内部スキームに対応しており、これにより、Glyの1番は、上流側BstXI制限サイトに直接続く第1アミン酸コドンである。 野生型NGALリポカリンのポリペプチド配列と比較して、グリピカン−3特異的、NGALベースのリポカリン突然変異タンパク質の特定アミノ酸配列の並び(alignment)を示している。NGALに誘導されグリピカン−3に結合する突然変異タンパク質は、1から178までの残基を含み、それらが成熟した野生型タンパク質の長さを有することを意味している。残基179から188までは、生成した突然変異タンパク質の分離に用いたストレプトアビジン結合タグStrep−tagTMの配列である。 ヒトグリピカン−3のための選択されたLcn2突然変異タンパク質のダイレクトELISAのグラフである。Lcn2野生型タンパク質は、グリピカン−3についてのこのアッセイで無視しうるシグナルを示し、ネガティブコントロールとして供給した。 選択されたLcn2突然変異タンパク質の競合結合アッセイの結果を示す。 表面プラズモン共鳴(SPR)により決定されたヒトグリピカン−3に対する選択された突然変異タンパク質の親和性を示す。 ヒト、カニクイザルおよびマウスのGPC3を感染させたSK−Hep1細胞に対する選択されたLcn2突然変異タンパク質の細胞ベースの結合アッセイの結果を示す。 配列番号:27のアミノ酸配列を示す。
一態様では、本発明は、グリピカン−3(GPC3)に対して指向し、または、グリピカン−3について特異的な、新奇で特異的結合性を有するタンパク質に関する。本発明のタンパク質は、治療的および/または診断的目的のために使用されてもよい。本発明のタンパク質は、特に、リポカリン突然変異タンパク質、同様にここに記載された「リポカリンの突然変異タンパク質」または「アンチカリン」を含む。より好ましくは、本発明のタンパク質は、ここに記載されたhNGAL突然変異タンパク質である。ここで用いられるように、結合特異性が絶対的なものではなく、相対的な性質のため、ターゲット(標的)と、1またはそれ以上の参照ターゲットとの間を区別することができるのであれば、本発明のタンパク質がターゲット(ここでは、GPC3)に「特異的に結合する」。「特異的結合性」は、例えば、ウエスタンブロット、ELISA−、RIA−、ECL−、IRMA−テスト、FACS、IHCおよびペプチドスキャンに従い決定され得る。
同様に、他の態様では、本発明は、リポカリン突然変異タンパク質に関し、その突然変異タンパク質がhLcn2の直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134に対応する1またはそれ以上の位置での置換、好ましくはここに記載された置換を含む。
代わりの態様では、本発明は、リポカリン、好ましくは配列番号:27に示されるhNGALを含み、そのhNGALがhLcn2の直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134に対応する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のアミノ酸位置での置換、好ましくはここに記載された置換を含むポリペプチドに関する。この代わりの態様のポリペプチドは、好ましくはアンチカリンである。
同様に、本発明は、4つのループにより一端でペアワイズに結合された8つのβ−ストランドを含み、それにより結合ポケットが定められる円筒状β−折りたたみシートの超二次構造領域を有するNGALから誘導されたリポカリン突然変異タンパク質に関し、4つのループの少なくとも3つのそれぞれにおける少なくとも1つのアミノ酸が突然変異されており、そのリポカリンが、検出可能な親和性で、所与の非天然ターゲットとしてのGPC3と結合することに効果的である。有利なことに、リポカリン突然変異タンパク質は、NGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134でのアミノ酸に対応する、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20のアミノ酸位置での置換、好ましくはここに記載された置換を含む。
本発明に関し用いられるときには用語「位置」は、ここに示されるアミノ酸配列におけるいずれかのアミノ酸の位置、または、ここに示される核酸配列におけるヌクレオチドの位置を意味する。ここで用いられる用語「対応する」は、先行するヌクレオチド/アミノ酸の番号により決定されるのみではない位置も含んでいる。従って、本発明に関する所与のアミノ酸の位置は、置換されていてもよいが、(突然変異体または野生型)リポカリンにおけるどこかのアミノ酸の欠失または付加に起因して変えてもよい。同様に、本発明に関する所与のヌクレオチドは、置換されていてもよいが、プロモータおよび/または他のいずれかの制御配列(regulatory sequences)または遺伝子(エキソンおよびイントロンを含む)を含む突然変異タンパク質または野生型リポカリン5’−未翻訳領域(UTR)におけるどこかの欠失または付加ヌクレオチドに起因して変わり得る。
このため、本発明に関する「対応する位置」では、ヌクレオチド/アミノ酸が示された番号が違っていてもよく、同様に隣接するヌクレオチド/アミノ酸を依然として有していてもよいと理解されるべきことが好ましい。そのヌクレオチド/アミノ酸は、交換、欠失または付加されていてもよいが、用語「対応する位置」により含まれるものでもある。
特に、本発明のNGALリポカリン突然変異タンパク質と異なるリポカリンのヌクレオチド残基またはアミノ酸配列のアミノ酸残基が、記載されたように、NGALリポカリン突然変異タンパク質、特に配列番号:1〜8のいずれか、または、NGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134での1またはそれ以上のアミノ酸置換を有するヌクレオチド配列またはアミノ酸配列における特定の位置に対応するかどうかを決定するために、当業者は、本技術分野においてよく知られた手法および方法、例えば、アライメントを使用することができ、手動でもよく、Basic Local Alignment Search ToolやClustalWまたは配列アライメントを生成するために適する他のいずれかの適切なプログラムの代わりとなる、BLAST2.0等のコンピュータプログラムを使用してもよい。従って、配列番号:1〜8のいずれか、または、NGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134での1またはそれ以上のアミノ酸置換を有するリポカリン突然変異タンパク質は、「サブジェクト配列(subject sequence)」としての役割を果たし、一方、NGALと異なるリポカリンのアミノ酸配列は「クエリ配列(query
sequence)」としての役割を果たす。
上述のように、当業者は、ここに記載されたLcn2において突然変異したいずれのアミノ酸位置がLcn2以外のスカフォールド(scaffold)、好ましくはここに記載されたものの1つ等のアミノ酸に対応するかを位置において容易に決定する。特に、当業者は、その突然変異タンパク質のいずれのアミノ酸が異なるリポカリンのアミノ酸配列のそれぞれのアミノ酸に対応するかを決定するために、ここに記載された突然変異タンパク質、特に異なるリポカリンのアミノ酸配列を有する本発明のNGAL突然変異タンパク質(またはアンチカリン)のアミノ酸配列を整列(align)することができる。このため、特に、当業者は、その異なるリポカリンのアミノ酸配列のいずれのアミノ酸が、hLcn2の直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134でのアミノ酸に対応するかを決定することができる。
本発明のタンパク質は、GPC3を指向するか、または、GPC3について特異的であり、タンパク質スカフォールドを定める基礎となるいくつかの特異的結合性を有するタンパク質の突然変異タンパク質を包含している。ここで用いられる、「突然変異タンパク質」、「突然変異した」本体(タンパク質または核酸)、または、「突然変異体」は、それぞれ、自然に生じる(野生型)核酸またはタンパク質の「参照」スカフォールドと比較して、1またはそれ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸の交換(exchange)、欠失(deletion)または挿入に関する。好ましくは、それぞれ、交換され、欠失され、または、挿入されるヌクレオチドまたはアミノ酸の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または、25、30、35、40、45または50等のそれ以上である。しかしながら、本発明の突然変異タンパク質がGPC3を結合することが可能なままであることが好ましい。
本発明のタンパク質は、リポカリン、好ましくは、レチノール結合タンパク質(RBP)、ビリン結合タンパク質(BBP)、アポリポプロテインD(APO D)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、涙リポカリン(TLPC)、α2−ミクログロブリン関連タンパク質(A2m)、24p3/ユテロカリン(24p3)、von Ebners gland protein 1(VEGP 1)、von Ebners gland protein 2(VEGP 2)および主要アレルゲンCan f1前駆体(ALL−1)で構成する群から選択されるリポカリンの突然変異タンパク質とすることができ、NGALが好適なリポカリンである。ここで用いられる「リポカリン」は、重量およそ18〜20kDAのモノマタンパク質(monomeric protein)であり、複数(好ましくは4つ)のループにより一端でペアワイズに結合された複数(好ましくは8つ)のb−ストランドを含み、それにより結合ポケットが定められる円筒状b−折りたたみシートの超二次構造領域を有するものとして定義される。それは、リポカリンファミリのメンバ間の異なる結合モードの変化を引き起こし、それぞれが異なるサイズ、形状および化学的性質のターゲットに適応することが可能である、他の強固なリポカリンスカフォールドにおけるループの多様性である(例えば、Flower,
D.R. (1996)、前掲; Flower, D.R. et al. (2000)、前掲、または、Skerra, A. (2000) Biochim. Biophys.
Acta 1482, 337-350に報告されている)。実際に、タンパク質のリポカリンファミリは、全体の折りたたみ(folding)形態を高度に保存しながら、通常、低レベルの全体の配列保存(しばしば、20%より低い配列同一性)を共有し、広範囲のスペクトルのリガンドを結合するために自然に進化している。種々のリポカリンにおける位置間の対応は、当業者によく知られている。例えば、米国特許第7,250,297号を参照されたい。
好適な実施形態では、本発明のタンパク質は、リポカリン2(Lcn2;ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、hNGALとして、またはシデロカリン(siderocalin)としても知られる)の突然変異タンパク質である。ここで用いられる用語「ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン」、「hNGAL」、「リポカリン2」または「Lcn2」は、SWISS−PROT/UniProtデータバンクのアクセッション番号(Accession
Number)P80188(Isoform 1)の成熟hNGALに関する。SWISS−PROT/UniProtデータバンクのアクセッション番号P80188に示されたアミノ酸配列は、「参照配列(reference
sequence)」として好適である。
最も好適には、配列番号:27に示された(図8にも示されている)アミノ酸配列が「参照配列」として好適である。配列番号:27は成熟hNGALを示す。用語「参照配列」および(NGALの)「野生型配列」は、ここでは交換可能に用いられる。このタンパク質の成熟形態は、アミノ酸1〜20のシグナルペプチド(MPLGLLWLGLALLGALHAQA)が切断されているため、アミノ酸21から198までの全配列を有している。また、このタンパク質は、成熟タンパク質の位置76および175でのアミノ酸残基間に形成されたジスルフィド結合を有している。
通常、ここで参照されるときは、「リポカリンの突然変異タンパク質」または「リポカリン突然変異タンパク質」、特に「リポカリン2の突然変異タンパク質」または「リポカリン2突然変異タンパク質」は、「アンチカリン」としても示されうるものである。従って、これらの用語は、ここでは等しく用いられる。好ましくは、アンチカリンは、自然に生じる対応(counterpart)のリポカリンと異なるものであり、少なくとも1つのアミノ酸が自然に生じる対応のリポカリンと異なる。相違点は、アミノ酸の置換、欠失および/または付加でもよいが、置換されていることが好ましい。好ましくは、本発明のアンチカリンは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20、または、それ以上のアミノ酸位置、好ましくはここに記載されたアミノ酸位置で異なっている。
この状況において、本発明者らは、GPC3について検出可能な親和性と同様に特異性を示し、特定の位置での突然変異を有するリポカリン2突然変異タンパク質の特定のグループを分離した。突然変異についての適切なアミノ酸位置は、ヒトリポカリン2の直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134を含む。本発明は、これらのタンパク質をコードする核酸にも関する。
検出可能な親和性でGPC3を結合するタンパク質の突然変異タンパク質を提供するために本発明に従い工学設計され得る他のタンパク質スカフォールドは、以下のものを含む:EGF様ドメイン、クリングル−ドメイン(a Kringle-domain)、フィブロネクチンI型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、フィブロネクチンIII型ドメイン、PANドメイン、G1aドメイン、SRCRドメイン、クーニッツ(a
Kunitz)/ウシ膵臓トリプシンインヒビタドメイン、テンダミスタット(tendamistat)、カザール型セリンプロテアーゼインヒビタドメイン(a
Kazal-type serine protease inhibitor domain)、トレフォイル(Trefoil)(P型)ドメイン、フォンヴィレブランド因子(von
Willebrand factor)C型ドメイン、アナフィラトキシン様ドメイン、CUBドメイン、チログロブリンI型反復、LDL−レセプタクラスAドメイン、スシドメイン(a
Sushi domain)、リンクドメイン、トロンボスポンジンI型ドメイン、免疫グロブリンドメインまたは免疫グロブリン様ドメイン(例えば、ドメイン抗体またはキャメル重鎖抗体)、C型レクチンドメイン、MAMドメイン、フォンヴィレブランド因子A型ドメイン、ソマトメジンBドメイン、WAP型4ジスルフィドコアドメイン、F5/8C型ドメイン、ヘモペキシン(Hemopexin)ドメイン、SH2ドメイン、SH3ドメイン、ラミニン型EGF様ドメイン、C2ドメイン、「カッパボディ(Kappabodies)」(Ill.
et al. "Design and construction of a hybrid immunoglobulin domain with
properties of both heavy and light chain variable regions" Protein Eng 10:
949-57 (1997))、「ミニボディ(Minibodies)」(Martin et al. "The affinity-selection
of a minibody polypeptide inhibitor of human interleukin-6" EMBO J 13: 5303-9
(1994))、「ダイアボディ(Diabodies)」(Holliger et al. "‘Diabodies’: small bivalent
and bispecific antibody fragments" PNAS USA 90: 6444-6448 (1993))、「ジャヌシン(Janusins)」(Traunecker
et al. "Bispecific single chain molecules (Janusins) target cytotoxic
lymphocytes on HIV infected cells" EMBO J 10: 3655-3659 (1991) and
Traunecker et al. "Janusin: new molecular design for bispecific reagents"
Int J Cancer Suppl 7: 51-52 (1992))、ナノボディ、アドネクチン、テトラネクチン、ミクロボディ、アフィリン、アフィボディ(an
affibody)、アンキリン、クリスタリン、ノッティン(a knottin)、ユビキチン、ジンク−フィンガタンパク質、自己蛍光タンパク質、アンキリンまたはアンキリン反復タンパク質またはロイシンリッチ反復タンパク質、アビマ(an
avimer)(Silverman, Lu Q, Bakker A, To W, Duguay A, Alba BM, Smith R, Rivas A, Li
P, Le H, Whitehorn E, Moore KW, Swimmer C, Perlroth V, Vogt M, Kolkman J, Stemmer
WP 2005, Nat Biotech, Dec; 23(12): 1556-61, E-Publication in Nat Biotech. 2005
Nov 20 edition);同様に、ヒトレセプタドメインのファミリのエキソンシャフリング(exon shuffling)により進化した多価アビマタンパク質(Silverman
J, Lu Q, Bakker A, To W, Duguay A, Alba BM, Smith R, Rivas A, Li P, Le H, Whitehorn
E, Moore KW, Swimmer C, Perlroth V, Vogt M, Kolkman J, Stemmer WP, Nat Biotech,
Dec; 23(12): 1556-61, E-Publication in Nat. Biotechnology. 2005 Nov 20 editionにも記載されている)。
本発明のタンパク質は、突然変異したアミノ酸配列位置の外側で「ペアレンタル(parental)」タンパク質スカフォールド(リポカリン等)の野生型(天然)アミノ酸配列を含んでいてもよく;代わりに、リポカリン突然変異タンパク質は、突然変異タンパク質の結合活性および折りたたみを阻害しない突然変異生成を受けた配列位置の外側でアミノ酸突然変異を含んでいてもよい。そのような突然変異は、確立された標準的方法(Sambrook,
J. et al. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring
Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY)を用いてDNAレベルで行われ得る。アミノ酸配列の可能な変更は、挿入または欠失、同様にアミノ酸置換である。
そのような置換は、保存的、すなわち、アミノ酸残基が化学的に同類のアミノ酸残基と置換されてもよい。保存的な置換の例としては、以下のグループのメンバ間での入れ換えがある:1)アラニン、セリンおよびスレオニン;2)アスパラギン酸およびグルタミン酸;3)アスパラギンおよびグルタミン;4)アルギニンおよびリジン;5)イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリン;並びに、6)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。一方、アミノ酸配列における非保存的な変更を導入することも可能である。さらに、単一のアミノ酸残基を置き換えることに代えて、ペアレンタルなタンパク質スカフォールドの一次構造における1またはそれ以上の連続したアミノ酸を挿入するかまたは欠失するかのいずれかでも可能であり、これらの欠失または挿入が、安定な折りたたみ/機能的な突然変異タンパク質の結果となり、当業者により容易にテストされ得る。
当業者は、本発明により意図されるタンパク質突然変異タンパク質を調製するために有効な方法を評価するだろうけれども、それらタンパク質や核酸配列がここに明確に示されていない。概略として、アミノ酸配列のそのような改変は、例えば、特定の制限酵素に対する切断部位を組み込むことにより、突然変異したリポカリン遺伝子またはその部分のサブクローニングを単純化するために単一のアミノ酸位置の指示された突然変異生成を含む。さらに、これらの突然変異は、所与のターゲットに対するリポカリン突然変異タンパク質の親和性をさらに向上させるために組み込まれてもよい。また、突然変異は、必要であれば、折りたたみ安定性、血清安定性、タンパク質抵抗性(protein resistance)や水溶解性を向上させる、または、凝集傾向を減少させる等の突然変異タンパク質の特定の性質を調整するために導入されてもよい。例えば、ジスルフィド結合形成を回避するために、自然に生じるシステイン残基が他のアミノ酸に突然変異されてもよい。
従って、本発明は、ここに開示されたタンパク質の機能的変異体も含み、その変異体が参照タンパク質に対する配列同一性や配列相同性の限界を有する。「同一性」や「配列同一性」では、それらの類似性や関連性を測定する配列の特性を意味するものである。本発明で用いられる用語「配列同一性」や「同一性」は、これら2つの配列の長い方における残基数について、−当の配列を有する本発明のポリペプチド配列の(同種の)アライメントに続く−ペアワイズで同一な残基のパーセンテージを意味している。パーセント同一性は、同一残基数を全残基数で除算し、結果に100を乗算することにより決定される。用語「相同性」は、ここでは通常の意味で用いられ、同一のアミノ酸、同様に、2つのタンパク質の直鎖状アミノ酸配列における同じ(equivalent)位置での保存的な置換(例えば、グルタミン酸塩残基のアスパラギン酸塩残基との交換)であると考えられるアミノ酸を含むものである。
配列相同性や配列同一性のパーセンテージは、ここでは、例えば、プログラムBLASTP、バージョンblastp2.2.5(2002年11月16日;Altschul, S. F. et al. (1997) Nucl. Acids Res. 25, 3389-3402参照)を使用して決定され得る。本実施形態では、相同性のパーセンテージは、プロペプチド配列を含み、好ましくはペアワイズ比較における参照として野生型タンパク質スカフォールドを用いて、全体のポリペプチド配列アライメント(マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:11.1;カットオフ値を10−3までにセット)に基づいている。それは、BLASTPプログラム出力での結果として示される「ポジティブ」(同種のアミノ酸)の数がアライメントについてプログラムで選択されたアミノ酸の全数により除算されたパーセンテージとして算出される。
また、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルでんぷん(HES)、ビオチン、ペプチドやタンパク質等の他の化合物との結合(conjugation)、または、非天然に生じるジスルフィド結合の形成を目的として、新しい反応基を導入するために他のアミノ酸配列位置をシステインに慎重に突然変異することも可能である。ヒトリポカリン2の突然変異タンパク質に関し、ヒトリポカリン2突然変異タンパク質を含むリポカリンのアミノ酸配列にシステイン残基を導入するための突然変異の典型的な可能性は、hNGALの野生型配列での配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146または158に対応する配列位置の少なくとも1つでのシステイン(Cys)残基の導入を含むことである。いくつかの実施形態では、本発明のヒトリポカリン2突然変異タンパク質は、SWISS−PROT/UniProtデータバンクのアクセッション番号P80188の配列と比較して、システインが他のアミノ酸残基で置き換えられた配列を有しており、対応するシステインがその配列に再導入されていてもよい。図面と共に示す実施例として、SWISS−PROTのアクセッション番号P80188の配列にオリジナルに存在しているように、システインに戻すことによる場合に、アミノ酸位置87でのシステイン残基が導入されてもよい。アミノ酸位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146および/または158のいずれかの側で生成したチオールのモイエティ(moiety)は、例えば、それぞれのヒトリポカリン2突然変異タンパク質の血清半減期を増大させることを目的として、突然変異タンパク質をPEG化(PEGylate)またはHES化(HESylate)するために用いられてもよい。
いくつかの実施形態では、本発明に従うタンパク質は、5μM以下、約500nM、約200nM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.5nM以下、0.3nM以下または0.2nM以下を含む100μM以下のKでGPC3を結合する。本発明のタンパク質は、GPC3の成熟し折りたたまれた生物活性な形態の連続、不連続のコンホメーションエピトープの1つまたはそれ以上を特異的に結合する。
本発明のタンパク質は、好ましくは、約10nMのKによる親和性でGPC3に結合する。結合親和性は、本発明者らにより、しばしば約1nM、いくつかのケースでは約0.3または0.2nMおよびそれ未満のKであることが見出されている。
本発明のタンパク質(例えば、リポカリンの突然変異タンパク質)の選択されたターゲット(この場合は、GPC3)に対する結合親和性は、当業者に知られた多くの方法により決定され得る(それにより突然変異タンパク質−リガンド複合体のK値が決定される)。そのような方法としては、制限されるものではないが、蛍光滴定、競合ELISA、等温滴定カロリメトリ(ITC)等の熱量測定法および表面プラズモン共鳴(BIAcore)を含む。そのような方法は、従来確立されたものであり、その実施例についても以下に詳述されている。
本発明のタンパク質のアミノ酸配列は、成熟ヒトリポカリン2または他のリポカリンに対して高い配列同一性を有している。この状況では、本発明のタンパク質は、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%の同一性を有しており、配列番号:1〜8および配列番号:27の配列で構成する群から選択されるタンパク質に対して少なくとも95%の同一性を含むものである。
本発明は、また、配列番号:1〜8の配列で構成する群から選択されたタンパク質の構造的相同性を含むものであり、それに関連して約60%以上、好ましくは65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、92%以上、最も好ましくは95%以上のアミノ酸配列相同性または配列同一性を有するものである。
用語「グリピカン−3」、「グリピカンプロテオグリカン3」、「GPC3」、「OTTHUMP00000062492」、「GTR2−2」、「SGB」、「DGSX」、「SDYS」、「SGBS」、「OCI−5」および「SGBSI」は、交換可能に用いられており、ヒトグリピカン−3の変異体、アイソフォームおよび種同族体を含む。典型的なヒトグリピカン−3の完全アミノ酸配列は、Genbank/NCBIのアクセッション番号NM_004484である。
上述したものと一致して、本発明のタンパク質は、好ましくは、GPC3のアンタゴニストとして作用する。いくつかの実施形態では、本発明のタンパク質(例えば、ヒトリポカリン2突然変異タンパク質)は、同族リガンドとの結合または別の相互作用に対するGPC3分子の能力を阻害することによりGPC3のアンタゴニストとして作用する。
さらに他の態様では、本発明は、GPC3に特異的に結合するヒトリポカリン2の突然変異タンパク質を含めた種々のリポカリン突然変異タンパク質を含む。この意味では、GPC3は、野生型ヒトリポカリン2の非天然リガンドに関連しており、「非天然リガンド」が生理学的条件下でヒトリポカリン2を含む野生型リポカリンに結合しない化合物に関する。特定位置での突然変異を有するヒトリポカリン2等の野生型リポカリンを工学設計することにより、本発明者らは、非天然リガンドに対する高親和性および高特異性が可能であることを立証した。一態様では、hLcn2の直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および/または134のいずれかについてコードする少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および/または20のヌクレオチドトリプレット、または、リポカリン上の他のパラレルサイト(parralel sites)で、ランダム突然変異生成は、ヌクレオチドトリプレットのサブセットによるこの位置での置換を許容することで行われる。
また、リポカリンは、成熟ヒトリポカリン2の直鎖状ポリペプチド配列の配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および134に対応する配列位置の少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個のいずれかでの配列位置を含む、いずれか1つまたはそれ以上で突然変異したアミノ酸残基を有する突然変異タンパク質を生成するために使用されてもよい。
配列位置36での置換は、例えば、Leu36→Ile、Val、Arg、MetまたはSerの置換としてもよい。配列位置40での置換は、例えば、Ala40→Trp、Val、His、GlyまたはTyrの置換としてもよい。配列位置41での置換は、例えば、Ile41→Met、Ala、Arg、GlnまたはSerの置換としてもよい。配列位置49での置換は、例えば、Gln49→Pro、Leu、Val、ArgまたはTrpの置換としてもよい。配列位置52での置換は、例えば、Tyr52→Arg、Thr、His、SerまたはAsnの置換としてもよい。配列位置68での置換は、例えば、Ser68→Arg、Gly、Asn、AlaまたはLysの置換としてもよい。配列位置70での置換は、例えば、Leu70→Arg、Ser、Gln、ThrまたはPheの置換としてもよい。配列位置72での置換は、例えば、Arg72→Asp、Trp、AlaまたはSerの置換としてもよい。配列位置73での置換は、例えば、Lys73→Glu、Arg、Met、LeuまたはHisの置換としてもよい。配列位置77での置換は、例えば、Asp77→Gly、His、Met、Gln、SerまたはTyrの置換としてもよい。配列位置79での置換は、例えば、Trp79→Gly、Lys、SerまたはIleの置換としてもよい。配列位置81での置換は、例えば、Arg81→Ala、Gly、Thr、TyrまたはTrpの置換としてもよい。配列位置96での置換は、例えば、Asn96→Val、Asp、Gln、Lys、GlyまたはPheの置換としてもよい。配列位置100での置換は、例えば、Tyr100→Arg、Gly、Glu、IleまたはAsnの置換としてもよい。配列位置103での置換は、例えば、Leu103→Ile、Gln、Asn、Met、AspまたはTrpの置換としてもよい。配列位置106での置換は、例えば、Tyr106→Asp、Asn、Met、Phe、AsnまたはLeuの置換としてもよい。配列位置125での置換は、例えば、Lys125→Phe、Glu、Arg、Tyr、GlyまたはTrpの置換としてもよい。配列位置127での置換は、例えば、Ser127→Lys、Arg、Tyr、His、IleまたはAspの置換としてもよい。配列位置132での置換は、例えば、Tyr132→Trp、Ile、Phe、GlnまたはValの置換としてもよい。配列位置134での置換は、例えば、Lys134→Gly、Ala、Phe、Asp、Asn、IleまたはSerの置換としてもよい。注目すべきは、参照配列における対応するアミノ酸を置換するアミノ酸は、いずれも、対応する保守的なアミノ酸により交換されうることである。特に、保守的な置換は、以下のグループのメンバ間の置き換えである:1)アラニン、セリンおよびスレオニン;2)アスパラギン酸およびグルタミン酸;3)アスパラギンおよびグルタミン;4)アルギニンおよびリジン;5)イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリン;および6)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。
一実施形態では、GPC3に結合する本発明の突然変異タンパク質は、以下のアミノ酸の置き換えを含む:
(a)Leu36→Ile;Ala40→Trp;Gln49→Pro;Tyr52→Arg;Ser68→Arg;Leu70→;Arg72→Asp;Lys73→Glu;Asp77→Gly;Trp79→Gly;Arg81→Ala;Asn96→Val;Tyr100→Arg;Leu103→Ile;Tyr106→Asp;Lys125→Phe;Ser127→Lys;Lys134→Gly;
(b)Leu36→Val;Ile41→Met;Gln49→Leu;Tyr52→Arg;Ser68→Gly;Leu70→Ser;Arg72→Trp;Lys73→Arg;Asp77→His;Trp79→Lys;Arg81→Gly;Asn96→Asp;Tyr100→Gly;Leu103→Gln;Tyr106→Asn;Lys125→Glu;Ser127→Arg;Tyr132→Trp;Lys134→Ala;
(c)Leu36→Arg;Ala40→Val;Ile41→Ala;Gln49→Pro;Tyr52→Arg;Ser68→Asn;Leu70→Arg;Arg72→Ala;Lys73→Met;Asp77→Met;Trp79→Ser;Arg81→Gly;Asn96→Gln;Tyr100→Glu;Leu103→Asn;Tyr106→Asn;Lys125→Glu;Ser127→Tyr;Tyr132→Ile;Lys134→Phe;
(d)Leu36→Met;Ile41→Arg;Gln49→Val;Tyr52→Thr;Ser68→Ala;Leu70→Gln;Lys73→Leu;Asp77→Gln;Trp79→Gly;Arg81→Thr;Asn96→Asp;Tyr100→Ile;Tyr106→Met;Lys125→Arg;Ser127→Arg;Tyr132→Phe;Lys134→Asp;
(e)Leu36→Ser;Ala40→His;Ile41→Arg;Gln49→Arg;Tyr52→His;Ser68→Asn;Leu70→Thr;Lys73→Glu;Asp77→His;Trp79→Ser;Arg81→Gly;Asn96→Lys;Tyr100→Asn;Leu103→Met;Tyr106→Phe;Ser127→His;Tyr132→Gln;Lys134→Asn;
(f)Leu36→Ile;Ala40→Gly;Ile41→Gln;Gln49→Trp;Tyr52→Ser;Leu70→Arg;Lys73→Leu;Asp77→Ser;Arg81→Tyr;Asn96→Gly;Tyr100→Asn;Leu103→Asp;Tyr106→Asn;Lys125→Tyr;Ser127→Ile;Tyr132→Trp;Lys134→Ile;
(g)Leu36→Met;Ile41→Ser;Gln49→Arg;Tyr52→Asn;Ser68→Lys;Leu70→Arg;Arg72→Trp;Lys73→His;Asp77→Tyr;Trp79→Ser;Arg81→Thr;Asn96→Asp;Leu103→Trp;Lys125→Gly;Ser127→Arg;Tyr132→Trp;Lys134→Ser;
(h)Leu36→Ile;Ala40→Tyr;Gln49→Pro;Tyr52→Arg;Ser68→Arg;Leu70→Phe;Arg72→Ser;Lys73→Arg;Trp79→Ile;Arg81→Trp;Asn96→Phe;Tyr100→Asn;Tyr106→Leu;Lys125→Trp;Ser127→Asp;Tyr132→Val;Lys134→Gly.
番号付けは、好ましくはNGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)に関するものである。従って、上述したように本発明の教示が与えられれば、当業者は、リポプロテインにおけるいずれのアミノ酸が、そのリポプロテインでのそのアミノ酸を突然変異させるために、NGALの好適な参照配列(配列番号:27)における上述した(a)〜(h)に記載されたアミノ酸に対応するかを容易に決定することができる。
また、それぞれの突然変異タンパク質およびそのリガンド間の複合体形成は、それぞれの結合パートナの濃度、競合相手の存在、用いるバッファ系のpHおよびイオン強度、並びに、解離定数Kの決定用に用いられる実験法(例えば、ほんの少しの例を挙げれば、蛍光滴定、競合ELISAや表面プラズモン共鳴)や実験データの評価用に用いられる数学的アルゴリズム等の多くの因子により影響されることに注意する。
それゆえ、K値(それぞれの突然変異タンパク質およびそのターゲット/リガンド間に形成された複合体の解離定数)が、所与のリガンドに対する特有のリポカリン突然変異タンパク質の親和性を決定するために用いられる方法および実験的設定に依存して、特定の実験的範囲内で変化しうることも、当業者にとって明確である。このことは、例えば、K値が表面プラズモン共鳴(Biacore)、競合ELISAまたは「直接ELISA」で決定されたかに依存して、測定されたK値や許容範囲にわずかな偏差のあり得ることを意味している。
一実施形態では、ここに開示された突然変異タンパク質は、N−末端またはC−末端のいずれかが融合パートナ、好ましくはタンパク質、タンパク質ドメインまたはペプチドに結合されていてもよい。融合パートナの例としては、ペンタヒスチジンタグ、ヘキサヒスチジンタグやストレプトアビジンタグ(例えば、Streptag(登録商標))等のアフィニティタグがある。このため、本願は、そのようなタグの付けられた、明瞭におよび総称的に記載された突然変異タンパク質のすべてを包含する。
リポカリン突然変異タンパク質フラグメントの特徴に関連して本発明で用いられる用語「フラグメント」は、N−末端および/またはC−末端が短くされた、すなわち、N−末端および/またはC−末端アミノ酸の少なくとも1つが欠落した完全長の成熟Lcn2から誘導されたタンパク質またはペプチドに関する。そのようなフラグメントは、好ましくは、成熟Lcn2の一次配列における少なくとも10、より好ましくは20、最も好ましくは30またはそれ以上の連続したアミノ酸を含み、通常、成熟Lcn2のイムノアッセイにおいて検出可能である。ここで用いられる単語「検出する」または「検出している」は、定量的および定性的レベル、同様にそれらの組合せと理解される。このため、それは、重要な分子の定量的、半定量的および定性的な測定を含む。従って、例えば、サンプル中における、GPC3等の分子の存在または不存在、同様にその濃度やレベルが決定されてもよい。
また、上述した突然変異タンパク質、そのタンパク質が当業者に知られた方法を用いることにより検出されたいずれの免疫原性も低減するために、その免疫原性に関して変化させられている突然変異タンパク質は、本発明の範囲に含まれる。
細胞障害性T細胞は、クラスIの主要組織適合性複合体(MHC)分子に関連して、抗原存在細胞の細胞表面上でペプチド抗原を認識する。ペプチドのMHC分子に対して結合する能力は、対立遺伝子特異的であり、その免疫原性と相互に関連する。所与のタンパク質の免疫原性を低減するために、タンパク質におけるいずれのペプチドが所与のMHC分子に結合するポテンシャルを有しているかを予測する能力が重要な価値である。T細胞エピトープのポテンシャルを同定するためにコンピュータ的スレッディングアプローチ(a computational threading approach)を用いるアプローチは、所与のペプチド配列のMHCクラスI分子に対する結合性を予測するために既に開示されている(Altuvia
et al. (1995) J. Mol. Biol. 249: 244-250)。そのようなアプローチは、本発明の突然変異タンパク質におけるT細胞エピトープのポテンシャルを同定し、その意図的な使用に依存して、予測される免疫原性に基づく特異的な突然変異タンパク質の選択を行うために利用されてもよい。さらに、T細胞エピトープを含むことが予測されたペプチド領域に、これらのT細胞エピトープを減少または消失させ、これにより免疫原性を最少化するために追加の突然変異原性を受けさせることも可能である。遺伝的に工学設計された抗体からの両側のエピトープの除去は、既に開示されており(Mateo
et al. (2000) Hybridoma 19(6): 463-471)、本発明の突然変異タンパク質に対して適応されてもよい。これにより得られた突然変異タンパク質は、最少化された免疫原性を有するものであり、以下に示すような、治療的、診断的応用におけるそれらの使用について魅力的である。
いくつかの応用について、本発明の突然変異タンパク質を結合された形態で用いることも有効である。結合は、本技術分野で知られた従来のいずれかのカップリング法を用いて行うことができる。
非天然のターゲットについてここで用いられる用語「有機分子」または「小有機分子」は、少なくとも2つの炭素原子を含み、好ましくは回転可能な炭素結合が7または12を超えないものであり、100および2000ダルトンの間、好ましくは100および1000ダルトンの範囲の分子量を有しており、選択的に1または2の金属原子を含む有機分子を示している。
一般に、ここに記載されたリポカリン突然変異タンパク質を、化学的、物理的、光学的または酵素的反応において検出可能な化合物やシグナルを直接的または間接的に生成する適切な化学物質や酵素でラベルすることが可能である。物理的反応と同時に光学的反応/マーカについての例は、光照射に伴う蛍光の放出である。アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼやβ−ガラクトシダーゼは酵素ラベル(同時に光学的ラベル)の例であり、発色性反応生成物の形成を触媒する。一般に、抗体(免疫グロブリンのFc部位における糖モイエティと排他的に用いられるものを除く)について通常用いられるすべてのラベルは、本発明の突然変異タンパク質との結合にも用いられ得る。本発明の突然変異タンパク質は、例えば、所与の細胞、組織または器官に対するその薬剤のターゲットデリバリ(targeted delivery)用、または、例えば、周囲の正常細胞に影響を及ぼさない腫瘍細胞等の細胞に対する選択的ターゲティング用として、適切な治療学的に活性ないずれかの薬剤と結合されてもよい。そのような治療学的に活性な薬剤の例は、放射性核種、毒素、小有機分子および治療上のペプチド(細胞表面レセプタのアゴニスト/アンタゴニストとして作用するペプチド、または、所与の細胞ターゲットでのタンパク質結合サイトに競合するペプチド等)を含む。適切な毒素の例は、制限されるものではないが、百日咳毒素、ジフテリア毒素、リシン、サポリン、緑膿菌外毒素、カリケアマイシン(calicheamicin)またはその誘導体、タキソイド類(a taxoid)、メイタンシノイド(a maytansinoid)、ツブリシン(a
tubulysin)、および、ドラスタチン類似物(a dolastatin analogue)を含む。ドラスタチン類似物は、オーリスタチンE(auristatin
E)、モノメチルオーリスタチンE、オーリスタチンPYEおよびオーリスタチンPHEとしてもよい。細胞増殖抑制剤の例は、制限されるものではないが、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、5−フルオロウラシル、タキソテレ(Taxotere)(ドセタキセル(Docetaxel))、パクリタキセル(Paclitaxel)、アントラサイクリン(ドキソルビシン(Doxorubicin))、メソトレキセート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ダカルバジン(Dacarbazine)、シクロホスファミド、エトポシド(Etoposide)、アドリアマイシン、カンプトテシン、コンブレタスタチン(Combretatastin)A−4関連化合物,スルホンアミド、オキサジアゾリン、ベンゾ[b]チオフェンシンセチック スピロケタール ピラン、モノテトラヒドロフラン化合物、クラシンおよびクラシン誘導体、メトキシエストラジオール誘導体、並びに、ロイコボリン(Leucovorin)を含む。本発明のリポカリン突然変異タンパク質は、アンチセンス核酸分子、小型妨害性RNA(small
interfering RNAs)、マイクロRNAやリボザイム等の治療学的に活性な核酸と結合されていてもよい。そのような結合体は、本技術分野でよく知られた方法により生成することができる。
一実施形態では、本発明の突然変異タンパク質は、本発明である突然変異タンパク質を生体内の望ましい領域または範囲に輸送するために、特異的な身体領域(body region)をターゲットとするターゲティングモイエティと結合していてもよい。そのような改変が望ましい一実施例は、脳血液関門の横断である。脳血液関門を横断するために、本発明の突然変異タンパク質は、この関門を横切る能動輸送を促進するモイエティと結合していてもよい(Gaillard PJ, et
al. (2005) International Congress Series. 1277, 185-198、または、Gaillard PJ, et al.
(2005) Expert Opin Drug Deliv. 2(2), 299-309参照)。そのような化合物は、例えば、商品名2B−TransTMとして入手可能である(to-BBB
technologies BV, Leiden, NL)。本発明の突然変異タンパク質が結合することができる他の典型的なターゲティング分子は、所望のターゲット分子に親和性を有する抗体、抗体フラグメントやリポカリン突然変異タンパク質を含む。ターゲティングモイエティのターゲット分子は、例えば、細胞表面抗原である。細胞表面抗原は、例えば、がん細胞等の細胞や組織タイプに特異的である。そのような細胞表面タンパク質の説明的な例は、HER−2、または、NEU−2等のプロテオグリカンである。
上述したように、本発明の突然変異タンパク質は、いくつかの実施形態において、突然変異タンパク質の血清半減期を延長する化合物に結合していてもよい(この点について、そのような結合のストラテジィがCTLA−4に対して結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンの突然変異タンパク質に関連して記載されているPCT公報WO2006/56464号も参照されたい)。血清半減期を延長する化合物は、ほんの少しの例を挙げれば、ポリエチレン(PEG)等のポリアルキレングリコール分子若しくはその活性化された誘導体;ヒドロキシエチルでんぷん、パルミチン酸(Vajo & Duckworth
(2000) Pharmacol. Rev. 52, 1-9)等の脂肪酸分子、免疫グロブリンのFc部位、免疫グロブリンのC3ドメイン、免疫グロブリンのC4ドメイン、アルブミン若しくはそのフラグメント、アルブミン結合ペプチド、アルブミン結合タンパク質、トランスフェリン、または、タグPro−Ala−Serとしてもよい。アルブミン結合タンパク質は、細菌性アルブミン結合タンパク質、抗体、ドメイン抗体を含む抗体フラグメント(例えば、米国特許6,696,245号参照)、または、アルブミンに対して結合活性を有するリポカリン突然変異タンパク質としてもよい。従って、本発明のリポカリン突然変異タンパク質の半減期を延長するための適正な結合化合物は、アルブミン(Osborn et al.
(2002) J. Pharmacol. Exp. Ther. 303, 540-548)、または、アルブミン結合タンパク質、例えば、連鎖球菌プロテインG(Konig,
T.
and Skerra, A. (1998) J. Immunol. Methods 218, 73-83)等の細菌性アルブミン結合ドメインを含む。結合パートナとして用いられ得るアルブミン結合ペプチドの他の例は、例えば、Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cysのコンセンサス(共通)配列を有するものであり、米国特許出願2003/0069395号やデニスら(Dennis et al, (2002) J. Biol. Chem. 277, 35035-35043)により開示されたように、XaaがAsp、Asn、Ser、ThrまたはTrp;XaaがAsn、Gln、His、Ile、LeuまたはLys;XaaがAla、Asp、Phe、TrpまたはTyr;およびXaaがAsp、Gly、Leu、Phe、SerまたはThrである。
他の実施形態では、アルブミンそれ自体やアルブミンの生物学的活性フラグメントは、突然変異タンパク質の血清半減期を延長する本発明のリポカリン突然変異タンパク質の化合物として用いられてもよい。用語「アルブミン」は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンやラットアルブミン等の全哺乳動物のアルブミンを含む。アルブミンやそのフラグメントは、米国特許5,728,553号や欧州特許出願EP 0330451号およびEP 0361991号に記載されたように組み替えで生成される。タンパク質安定化剤としての使用のための組み換えヒトアルブミン(Recombumin(登録商標))は、例えば、ノボザイム デルタ社(Novozymes Delta Ltd., Nottingham, UK)から入手可能である。
アルブミン結合タンパク質が抗体フラグメントであれば、それはドメイン抗体としてもよい。ドメイン抗体(dAbs)は、最適な安全性および有効性の生成物プロファイルを創り出すための生物物理学的な特性およびインビボ(in vivo)(生体内)半減期における正確なコントロールを許容するために工学設計されるものである。ドメイン抗体は、例えば、ドマンティス社(Domantis
Ltd., Cambridge, UK and MA, USA)から商業的に入手可能である。
本発明の突然変異タンパク質の血清半減期を延長するためのモイエティとしてトランスフェリンを用いることで、突然変異タンパク質は、非グリコシル化トランスフェリンのN末端若しくはC末端またはその両者と遺伝的に融合され得る。非グリコシル化トランスフェリンは14〜17日の半減期を有しており、トランスフェリン融合タンパク質は同様に延長された半減期を有すると考えられる。また、トランスフェリンキャリアは、高い生物学的利用能(bioavailability)、生体分布および循環安定性を備えている。この技術は、バイオレクシス社(BioRexis Pharmaceutical
Corporation, PA, USA)から商業的に入手可能である。また、タンパク質安定化剤としての使用のための組み換えヒトトランスフェリン(DeltaFerrinTM)も、ノボザイム デルタ社(Nottingham, UK)から商業的に入手可能である。
本発明の突然変異タンパク質の血清半減期を延長することを目的として免疫グロブリンのFc部位が用いられるとすれば、シントニックス ファーマシューティカルズ社(Syntonix Pharmaceuticals, Inc, MA, USA)から商業的に入手可能なSynFusionTM技術が用いられてもよい。このFc−融合技術の使用は、長期作用性の生物薬剤(longer-acting biopharmaceuticals)の創作を許容し、例えば、薬物動態学、溶解性および生成効率を向上させるために抗体のFc部位に結合した突然変異タンパク質の2つの複製物を含んでもよい。
本発明の突然変異タンパク質の半減期を延長するための他の代替策は、本発明の突然変異タンパク質のN−末端またはC−末端を長い、組織化されていない、フレキシブルなグリシンリッチ配列(例えば、約20から80までの連続したグリシン残基を有するポリグリシン)に融合させることである。WO2007/038619号に開示されたこのアプローチは、例えば、用語「rPEG」(組み換えPEG)でもある。
突然変異タンパク質の半減期を延長する化合物としてポリアルキレングリコールが用いられるとすれば、ポリアルキレングリコールが置換されてもよく、未置換とすることもできる。また、それは、活性化されたポリアルキレン誘導体としてもよい。適切な化合物の例は、WO99/64016号、米国特許6,177,074号、米国特許6,403,564号にインターフェロンと関連して記載されたポリエチレングリコール(PEG)分子、または、PEG改変アスパラギナーゼ、PEG−アデノシンデアミナーゼ(PEG−ADA)やPEGスーパーオキサイドディスムターゼ等の他のタンパク質用に記載されたポリエチレングリコール分子(例えば、Fuertges et
al. (1990) “The Clinical Efficacy of Poly(Ethylene
Glycol)-Modified Proteins” J. Control. Release 11, 139-148を参照)である。そのようなポリマ、好適にはポリエチレングリコールの分子量は、例えば、約10,000、約20,000、約30,000、約40,000ダルトンの分子量を有するポリエチレングリコールを含む、約300から約70,000ダルトンの範囲としてもよい。さらに、例えば、米国特許6,500,930号や6,620,413号に記載されたように、でんぷんやヒドロキシエチルでんぷん(HES)等の炭水化物オリゴマやポリマは、血清半減期延長の目的のために、本発明の突然変異タンパク質に結合されてもよい。
他の実施形態では、上述した化合物の1つを本発明の突然変異タンパク質に結合するための適切なアミノ酸側鎖を提供するために、人工アミノ酸が突然変異生成により導入されてもよい。通常、そのような人工アミノ酸は、より反応性であり、これにより、所望のモイエティとの結合を促進するために設計される。人工的なtRNAを介して導入されるそのような人工アミノ酸の一実施例は、パラ−アセチル−フェニルアラニンである。
ここに開示された突然変異タンパク質のいくつかの応用について、それらを融合タンパク質の形態で使用することが有利である。いくつかの実施形態では、本発明である突然変異タンパク質は、そのN−末端および/またはC−末端で、シグナル配列および/またはアフィニティタグ等のタンパク質、タンパク質ドメインやペプチドに融合されている。
薬学的応用について、本発明の突然変異タンパク質は、その突然変異タンパク質のインビボ血清半減期を延長する融合パートナと融合していてもよい(CTLA−4に対して結合親和性を有するヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンの突然変異タンパク質に関連して、適切な融合パートナが記載されているPCT公報WO2006/56464号をもう一度参照されたい)。上述の結合した化合物と同様に、融合パートナは、ほんの少しの例を挙げれば、免疫グロブリンのFc部位、免疫グロブリンのC3ドメイン、免疫グロブリンのC4ドメイン、アルブミン、アルブミン結合ペプチドまたはアルブミン結合タンパク質としてもよい。また、アルブミン結合タンパク質は、細菌性アルブミン結合タンパク質またはアルブミンに対して結合活性を有するリポカリン突然変異タンパク質としてもよい。従って、本発明のリポカリン突然変異タンパク質の半減期を延長するための適切な融合パートナは、アルブミン(Osborn, B.L.
et al. (2002) J. Pharmacol. Exp. Ther. 303, 540-548、前掲)、または、アルブミン結合タンパク質、例えば、連鎖球菌プロテインG(Konig,
T.
and Skerra ,A. (1998) J. Immunol. Methods 218, 73-83、前掲)等の細菌性アルブミン結合ドメインを含む。デニスらの前掲の文献(2002)または米国特許出願2003/0069395号に記載され、Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cysのコンセンサス配列を有し、XaaがAsp、Asn、Ser、ThrまたはTrp;XaaがAsn、Gln、His、Ile、LeuまたはLys;XaaがAla、Asp、Phe、TrpまたはTyr;およびXaaがAsp、Gly、Leu、Phe、SerまたはThrであるアルブミン結合ペプチドは、融合パートナとしても用いられ得る。また、アルブミン自体またはアルブミンの生物学的活性フラグメントを本発明のリポカリン突然変異タンパク質の融合パートナとして用いることも可能である。用語「アルブミン」は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミンやラット血清アルブミン等の全哺乳動物のアルブミンを含む。アルブミンの組み換え生成物またはそのフラグメントは、本技術分野においてよく知られており、例えば、米国特許5,728,553号、欧州特許出願EP 0330451号やEP 0361991号に記載されている。
融合パートナは、本発明であるリポカリン突然変異タンパク質に対して、酵素的活性や他の分子に対する結合親和性等の新たな性質を授けることがある。適切な融合タンパク質の例は、アルカリンホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、プロテインGのアルブミン結合ドメイン、プロテインA、抗体フラグメント、オリゴマ化ドメイン、同じ若しくは異なる結合特異性のリポカリン突然変異タンパク質(「デュオカリン(duocalins)」の形成の結果となる、Schlehuber, S., and
Skerra, A. (2001), Duocalins, engineered ligand-binding proteins with dual
specificity derived from the lipocalin fold (Biol. Chem. 382, 1335-1342)、または、毒素である。
特に、本発明のリポカリン突然変異タンパク質を別の酵素活性サイトと融合させることが可能であり、得られた融合タンパク質の両「成分」は、所与の治療上のターゲットで共に作用する。リポカリン突然変異タンパク質の結合ドメインは、酵素ドメインにターゲットの生物学的機能を消失させることを許容する疾患原因(disease-causing)ターゲットに結合する。
組み換えタンパク質の容易な検出および/または精製をも許容する、Strep−tag(登録商標)やStrep−tag(登録商標)II(Schmidt, T. G. M. et al. (1996) J. Mol. Biol. 255, 753-766)、myc−tag、FLAG−tag、His−tag若しくはHA−tag、または、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ等のタンパク質、等のアフィニティタグは、好適な融合タンパク質のさらなる例である。そして、緑色蛍光タンパク質(GFP)や黄色蛍光タンパク質(YFP)等の発色性や蛍光性の特性を有するタンパク質は、同様に、本発明のリポカリン突然変異タンパク質に対する適切な融合パートナである。
また、ここで用いられる用語「融合タンパク質」は、シグナル配列を含む本発明によるリポカリン突然変異タンパク質も含む。ポリペプチドのN−末端でのシグナル配列は、特異的な細胞の区画、例えば、大腸菌のペリプラズマ(periplasm)(周辺質)や真核細胞の内質網状組織(the endoplasmatic reticulum)にこのポリペプチドを向けさせる。シグナル配列の多くは、本技術分野で知られている。大腸菌のペリプラズマにポリペプチドを分泌させるための好適なシグナル配列は、OmpA−シグナル配列である。
また、本発明は、ここに記載された突然変異タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(DNAおよびRNA)に関する。遺伝コードの変質が同じアミノ酸を指定する他のコドンによる特定のコドンの置換を許可するため、本発明は、本発明の突然変異タンパク質をコードする特異的な核酸分子に制限されないが、機能的な突然変異タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むすべての核酸分子を含む。
本願において開示される核酸分子は、この核酸分子の発現を許容するために、制御配列(または複数の制御配列)に対して「作動可能に結合する(operably linked)」ようにすることができる。
DNA等の核酸分子は、それが転写および/または翻訳の制御に関する情報を含む配列要素を含んでおり、その配列がポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に結合している」とすれば、「核酸分子を発現する能力を有するもの」または「ヌクレオチド配列の発現を許容するための」能力を有するものに関する。作動可能な結合は、制御配列要素および発現されるべき配列が遺伝子発現を可能とするように結合された結合である。遺伝子発現に必要な制御部位の正確な特徴は、種の間で変わるが、一般には、これらの領域が、原核生物において、本来の両方のプロモータ、すなわち、転写の開始を示すDNA要素、同様に、RNAに転写されたときに翻訳の開始のシグナルとなるDNA要素を含むプロモータを含んでいる。そのプロモータ領域は、通常、転写および翻訳の開始に含まれる、原核生物における−35/−10ボックスおよびシャイン−ダルガルノ要素(Shine-Dalgarno element)、または、真核生物におけるTATAボックス、CAAT配列および5’−キャッピング要素等の5’非コード配列を含んでいる。これらの領域は、エンハンサまたはリプレッサ要素を含むこともでき、同様に、ホスト細胞の特異的な区画に天然のポリペプチドをターゲットするための翻訳されたシグナルおよびリーダ配列を含むこともできる。
さらに、3’非コード配列は、転写の停止、ポリアデニル化等に含まれる制御要素を含んでいてもよい。しかしながら、これらの停止配列が特定のホスト細胞において機能的に十分でなければ、それらがその細胞における機能的なシグナルで置換されていてもよい。
それゆえ、本発明の核酸分子は、制御配列、好ましくはプロモータ配列を含むことができる。他の好適な実施形態では、本発明の核酸分子は、プロモータ配列および転写停止配列を含む。適切な原核細胞のプロモータは、例えば、tetプロモータ、lacUV5プロモータやT7プロモータである。真核細胞における発現のために有効なプロモータの例は、SV40プロモータやCMVプロモータである。
本発明の核酸分子は、ベクタ、または、プラスミド、ファージミド、ファージ、バキュロウィルス、コスミド若しくはYACやBAC等の人工クロモソーム(artificial chromosome)等のいずれか他種のクローニングビークル(cloning vehicle)の部分とすることもできる。
本発明のリポカリン突然変異タンパク質をコードするDNA分子、特に、そのようなリポカリン突然変異タンパク質のコード配列を含むクローニングベクタは、遺伝子を発現する能力を有するホスト細胞に形質転換されてもよい。形質転換は、標準的な技術を用いて行うことができる(Sambrook, J. et al. (2001)、前掲)。
このため、本発明は、ここに開示された核酸分子を含むホスト細胞をも指向している。
また、本発明は、本発明の突然変異タンパク質の生成のための方法に関し、突然変異タンパク質、突然変異タンパク質のフラグメントや突然変異タンパク質および他のポリペプチドの融合タンパク質が突然変異タンパク質をコードする核酸から開始し、遺伝学的な工学設計法によって生成される。この方法はインビボで行われうるものであり、突然変異タンパク質は、例えば、細菌性または真核性ホスト生物で生成され、このホスト生物またはその培養から濃縮され、精製され、分離される。また、例えば、インビトロ(in vitro)(生体外)翻訳システムの使用により、インビトロでタンパク質を生成することも可能である。用語「濃縮(enriched)」は、突然変異タンパク質またはその機能的フラグメントが、それが得られたサンプルまたは溶液におけるものと比べて、対象のサンプルまたは溶液に存在する全タンパク質における著しく高い分画を構成することを意味する。濃縮は、例えば、細胞抽出物からの特定の分画の分離を含んでいてもよい。これは、遠心分離等の標準的な技術により得られるものである。濃縮の他の手法の例は、例えば、特定の分子量以下の望ましくない分子の除去で示される濾過や透析、または、有機溶媒や硫酸アンモニウムを用いる沈殿がある。精製は、例えば、クロマトグラフ技術、例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティ精製、疎水性相互作用クロマトグラフィまたは疎水性電荷誘導クロマトグラフィを含む。精製のための他の例は、分取(preparative)キャピラリ電気泳動等の電気泳動技術である。分離は、同様の方法の組合せを含んでもよい。ここで用いられる「実質的に純粋」または「実質的に精製された」は、主な種が存在している(例えばモルベースで、組成物における他の個別の種と比べてより豊富である)化合物または種を意味する。いくつかの実施形態では、実質的に精製された組成物は、存在する全分子または適用可能な全高分子種の少なくとも約50%(モルベースで)を含む種の組成物である。特定の実施形態では、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在する全分子または適用可能な全高分子種の約80%以上、約85%、約90%、約95%または約99%を有している。
突然変異タンパク質をインビトロで生成するときは、本発明の突然変異タンパク質をコードする核酸が適切な細菌性または真核性ホスト生物に、組み換えDNA技術の手法により導入される(既に概要を上述したように)。この目的のために、ホスト細胞は、まず、確立された標準的な方法を用いて、本発明の突然変異タンパク質をコードする核酸分子を含むクローニングベクタで形質転換される(Sambrook, J. et al. (1989)、前掲)。そして、ホスト細胞は、異種起源のDNAの発現、これにより対応するポリペプチドの合成を許容する条件下で培養される。続いて、ポリペプチドは、細胞または培養培地のいずれかから回収される。
一態様では、本発明は、GPC3に結合する突然変異タンパク質の生成用の方法に関し、以下のステップを含む:
リポカリンをコードする核酸分子に突然変異生成を受けさせ、1またはそれ以上の突然変異核酸分子を生じさせる。
この方法は、さらに以下のステップを含んでもよい:
(a)で得られた1以上の突然変異タンパク質核酸分子を適切な発現系で発現させ、
複数の突然変異タンパク質を少なくともGPC3のフラグメントまたは成熟形態と接触させ、
所与のターゲットに対して検出可能な結合親和性を有する1またはそれ以上の突然変異タンパク質を選択および/または分離により濃縮する。
ここで用いられる用語「突然変異生成」は、Lcn2(hNGAL;Swiss−ProtデータバンクのエントリP80188)を含むリポカリンの所与の配列位置で天然に生じるアミノ酸がそれぞれの天然ポリペプチド配列におけるこの特異的な位置に存在しない少なくとも1つのアミノ酸で置換されるように、実験条件が選択されることを意味している。また、用語「突然変異生成」は、1またはそれ以上のアミノ酸の欠失または挿入により配列セグメントの長さの(追加の)改変を含む。このため、例えば、選択された配列位置での1つのアミノ酸が3つのランダム突然変異の長さで置き換えられ、野生型タンパク質のそれぞれのセグメントの長さと比べて2つのアミノ酸残基の挿入となることも本発明の範囲内である。そのような挿入や欠失は、本発明の突然変異生成を受け得るペプチドセグメントのいずれかにおいて互いに独立して導入されてもよい。本発明の典型的な一実施形態では、いくつかの突然変異の挿入が選択されたリポカリンスカフォールドのループABに導入されてもよい(その全体の参照によりここに組み込まれる国際特許出願WO2005/019256号参照)。用語「ランダム突然変異生成」は、所定の単一のアミノ酸(突然変異)が特定の配列位置に存在しないものの、突然変異生成の間に、少なくとも2つのアミノ酸が所定の配列位置で特定の確率で組み込まれ得ることを意味する。
制限されない1つのアプローチとして、ヒトリポカリン2のコード配列は、本発明で選択されたペプチドセグメントの突然変異生成のための開始ポイントとして用いられてもよい。列挙されたアミノ酸位置の突然変異生成について、当業者は、部位特異的突然変異生成のための種々の確立された標準的な方法を自由に用いることができる(Sambrook, J. et al. (2001)、前掲)。一般的に用いられる技術は、合成オリゴヌクレオチドの混合物を用いるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による突然変異の導入であり、所望の配列位置で変質した塩基組成を生み出す。他の同様な技術は当業者によく知られている。
上で定義された核酸分子は、リポカリンポリペプチドをコードする核酸および/またはベクタの5’−配列および3’−配列の欠損とライゲーションにより結合されてもよく、公知のホスト生物でクローン化されてもよい。多くの確立された手順がライゲーションおよびクローニングに有効である(Sambrook, J. et al. (2001)、前掲)。例えば、クローニングベクタの配列にも存在する制限エンドヌクレアーゼのための識別配列は、合成オリゴヌクレオチドの配列に工学設計されてもよい。このため、それぞれのPCR生成物の増幅および酵素切断の後、得られたフラグメントは、対応する識別配列を用いて容易にクローン化され得る。
突然変異生成用に選択されたタンパク質をコードする遺伝子におけるより長い配列セグメントは、公知の方法、例えば、エラー率を増加させた条件下でのポリメラーゼ連鎖反応の使用により、化学的突然変異生成により、または、細菌性ミューテータ株を用いることにより、ランダム突然変異生成を受けさせることもできる。そのような方法は、リポカリン突然変異タンパク質のターゲット親和性や特異性のさらなる最適化のために用いられてもよい。実験的突然変異生成のセグメントの外側で生じる可能性のある突然変異は、例えば、それらがリポカリン突然変異タンパク質の向上した折りたたみ効率や折りたたみ安定性の一因となるのであれば、しばしば容認され、有利であることを証明することができる。
他の実施形態では、この方法は、リポカリンの直鎖状ポリペプチド配列、特に、NGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および134に対応する配列位置の少なくともいずれか1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20をコードするヌクレオチドトリプレットで核酸分子に突然変異生成を受けさせることを含む。そのような核酸は、組み換えDNA技術を用いることで突然変異生成を受け、適切な細菌性または真核性ホスト生物に導入されてもよい。得られるリポカリンの核酸ライブラリは、抗体様特性を有するリポカリン突然変異タンパク質、すなわち、所与のターゲットに対する親和性を有する突然変異タンパク質を生成するために、本技術分野で公知の適切な技術のいずれかを用いることで行われる。そのような組合せ法の例としては、例えば、国際特許出願WO99/16873号、WO00/75308号、WO03/029471号、WO03/029462号、WO03/029463号、WO2005/019254号、WO2005/019255号、WO2005/019256号やWO2006/56464号に詳細に記載されている。これら特許出願のそれぞれの内容は、その全体における参照によりここに組み込まれる。適切なホストで突然変異生成を受けた核酸配列の発現の後、所与のターゲットに結合する複数のそれぞれのリポカリン突然変異タンパク質についての遺伝情報を運ぶクローンは、得られたライブラリから選択され得る。ファージディスプレイ(Kay, B.K.et
al.(1996)、前掲;Lowman, H. B. (1997)、前掲やRodi, D. J. and Makowski, L. (1999)、前掲に報告されている)、コロニースクリーニング(Pini, A. et al. (2002) Comb.
Chem. High Throughput Screen. 5, 503-510に報告されている)、リボソームディスプレイ(Amstutz, P. et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12,
400-405に報告されている)、ウィルソン、D.S.ら(Wilson,
D. S. et al.)のProc.Natl.Acad.Sci.USA 98、3750−3755(2001)に報告されたmRNAディスプレイ、または、WO99/16873号、WO00/75308号、WO03/029471号、WO03/029462号、WO03/029463号、WO2005/019254号、WO2005/019255号、WO2005/019256号やWO2006/56464号に特に記載された方法等のよく知られた技術がこれらクローンの選択のために使用されてもよい。
この開示によれば、上述した方法の他の実施形態は、以下のステップを含む:
(i)少なくともGPC3のフラグメントを例えば所与のターゲット/リガンドとして供給し、
前記リガンドおよび突然変異タンパク質間の前記ターゲット/リガンドに対する結合親和性を有する複合体の形成を許容するために、複数の突然変異タンパク質を前記ターゲット/リガンドと接触させ、および
結合親和性を有していない、または、結合親和性を実質的に有していない突然変異タンパク質を除去する。
本発明の方法の一実施形態では、結合親和性の選択は競合的条件下で行われる。ここで用いられる競合的条件は、突然変異タンパク質の選択が、ターゲット(GPC3)に対する突然変異タンパク質の結合と競合する追加のリガンドの存在下で突然変異タンパク質およびGPC3のフラグメントを接触させる少なくとも1つのステップを包含することを意味する。代わりに、追加のリガンドは、アロステリック効果によりターゲットに対する突然変異タンパク質の結合サイトと異なるエピトープを複合化することにより、突然変異タンパク質の結合と競合する。従って、GPC3のいずれかのフラグメント、前駆体または成熟形態は、本発明の突然変異タンパク質の生成に用いられてもよい。
本発明の方法の他の実施形態は、所与のリガンドの結合用の少なくとも1つの突然変異タンパク質を選択するために、本発明の複数の突然変異タンパク質をコードし3’端での突然変異生成から得られる核酸を、M13ファミリの糸状バクテリオファージのコートプロテインpIIIまたはこのコートプロテインのフラグメントをコードする遺伝子と作動可能に融合させることを含む。
融合タンパク質は、その融合タンパク質またはその一部の固定化、検出および/または精製を許容するアフィニティタグ等の追加の成分を含んでいてもよい。さらに、停止コドンは、リポカリンまたはその突然変異タンパク質をコードする配列領域およびファージキャプシド遺伝子またはそのフラグメントの間に位置付けられるものであり、停止コドン、好ましくはアンバー停止コドンは、適切なサプレッサ種での翻訳の間に、少なくとも部分的にアミノ酸に翻訳される。
例えば、ここに記載され、またpTlc27とも称されるファズミドベクタ(phasmid vector)pTLPC27は、本発明の突然変異タンパク質をコードするファージミドライブラリの調製用に使用されてもよい。本発明の突然変異タンパク質をコードする本発明である核酸分子は、2つのBstXI制限サイトを使用するベクタに挿入されてもよい。ライゲーションの後、大腸菌XL1−Blue等の適切なホスト株は、多くの独立したクローンを得るために得られた核酸混合物で形質転換される。それぞれのベクタは、望まれるなら、ハイパーファージミドライブラリの調製のために生成されてもよい。
所与のターゲットに対する親和性を有する突然変異タンパク質が選択されれば、一層高い親和性の変異体や、より高い熱安定性、向上した血清安定性、熱力学安定性、向上した溶解性、向上した単量体挙動(monomeric behavior)、熱変性、化学変性、タンパク質加水分解や界面活性剤等に対する向上した抵抗性、等の向上した特性を有する変異体を続いて選択するために、その突然変異タンパク質に他の突然変異生成をさらに受けさせることも可能である。この更なる突然変異生成は、インビトロの「アフィニティ成熟」と考えられるより高い親和性を目指す場合は、合理的設計またはランダム突然変異に基づくサイト特異的突然変異により達成されてもよい。より高い親和性または向上した特性を得るための他の可能なアプローチは、リポカリン突然変異タンパク質の配列位置の選択された範囲で点突然変異生成(point
mutagenesis)の結果となるエラープローンPCRの使用である。エラープローンPCRは、一例としてザッコロら(Zaccolo et
al. (1996) J. Mol. Biol. 255, 589-603)により開示されたような、いずれかの公知の手法により行われ得る。そのような目的に適したランダム突然変異生成の他の方法は、ムラカミら(Murakami et
al. (2002) Nat. Biotechnol. 20, 76-81)により開示されたランダム挿入/欠失(RID)突然変異生成、ビッカーら(Bittker et
al. (2002) Nat. Biotechnol. 20, 1024-1029)により開示された非相同的ランダム組み換え(NRR)を含む。望むのであれば、アフィニティ成熟は、WO00/75308号やシュレフーバーら(Schlehuber et
al. (2000) J. Mol. Biol. 297, 1105-1120)の手法により行われてもよく、ジゴキシゲニンに対して高い親和性を有するビリン結合タンパク質の突然変異タンパク質が得られている。親和性を向上させるための他のアプローチは、位置飽和突然変異生成(positional saturation mutagenesis)を行うことである。このアプローチでは、アミノ酸交換/突然変異が4つのループセグメントのいずれかにおける単一の位置に導入されただけである「小(small)」核酸ライブラリが創作される。そして、これらのライブラリは、更なるラウンドのパニング(panning)を行うことなく直接選択ステップ(親和性スクリーニング)を受けさせる。このアプローチは、所望のターゲットの向上した結合に貢献する残基の同定を許容し、結合に重要である「ホットスポット(hot
spots)」の同定を許容する。
一実施形態では、突然変異タンパク質を改変するための上述した方法は、ヒトリポカリン2の野生型配列の配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146または158に対応するいずれかの配列位置の少なくとも1つでCysを導入し、hNGALの野生型配列の配列位置14、21、60、84、88、116、141、145、143、146または158に対応するいずれかの配列位置の少なくとも1つで導入されたCys残基のチオール基を介してその突然変異タンパク質の血清半減期を改変することができるモイエティを結合することをさらに含む。その突然変異タンパク質の血清半減期を改変することができるモイエティは、ポリアルキレングリコール分子およびヒドロキシエチルでんぷんで構成するグループから選択されてもよい。
本発明のタンパク質が本発明のヒトリポカリン2突然変異タンパク質である場合、Cys76およびCys175間の自然に生じるジスルフィド結合は、除去されていてもよい。従って、そのような突然変異タンパク質(または、分子内ジスルフィド結合を含んでいないいずれか他のヒトリポカリン2突然変異タンパク質)は、減少した酸化還元環境(redox milieu)を有する細胞分画、例えば、グラム陰性細菌の細胞質で生成され得る。
本発明のリポカリン突然変異タンパク質が分子内ジスルフィド結合を含む場合は、新生(nascent)ポリペプチドを、適切なシグナル配列を用いて酸化還元環境を酸化する細胞分画に向けることが好適である。そのような酸化する環境は、大腸菌等のグラム陰性細菌の周辺質により、グラム陽性細菌の細胞内環境や真核細胞の内質網状組織の内腔(lumen)で提供され、通常、構造的ジスルフィド結合の形成を支持する。
しかしながら、ホスト細胞、好ましくは大腸菌のサイトソル(cytosol)で本発明の突然変異タンパク質を生成することも可能である。この場合、ポリペプチドは、可溶性で折りたたまれた状態で直接得られるか、封入体(inclusion
bodies)の形態で回収されるかのいずれかであり、インビトロで復元される。更なる選択肢は細胞内環境を酸化することを有する特異的なホスト種の使用であり、それによりサイトソルにおけるジスルフィド結合の形成を許容する(Venturi et
al. (2002) J. Mol. Biol. 315, 1-8)。
しかしながら、本発明の突然変異タンパク質は、遺伝学的工学技術によってのみ必然的に生成され産生されるものではない。むしろ、リポカリン突然変異タンパク質は、メリフィールド固相ポリペプチド合成等の化学合成やインビトロの転写および翻訳により得られてもよい。例えば、有望な突然変異が分子モデル化により分離されることも可能であり、望まれる(設計される)ポリペプチドをインビトロで合成し、所与のターゲットに対する結合活性を調査することも可能である。タンパク質の固相および/または液相合成のための方法は、本技術分野でよく知られている(例えば、Lloyd-Williams
et al. (1997) Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins.
CRC Press, Boca Raton, Fields, GB, and, Colowick (1997) Solid-Phase Peptide
Synthesis. Academic Press, San Diego, or Bruckdorfer et al. (2004) Curr. Pharm.
Biotechnol. 5, 29-43に報告されている)。
他の実施形態では、本発明の突然変異タンパク質は、当業者に知られた十分に確立された方法を用いて、インビトロの転写/翻訳により生成されてもよい。
また、本発明は、特許請求の範囲に関する本発明である突然変異タンパク質、融合タンパク質またはそれらの結合体の少なくとも1つおよび選択的に薬学的に許容可能な賦形剤を含む薬学的組成物に関する。
本発明によるリポカリン突然変異タンパク質は、タンパク質性医薬について治療上効果的な非経口的または非−非経口的(non-parenteral)(例えば、経腸的)ルートのいずれかを介して投与され得る。非経口的適用法は、例えば、注射液、点滴液やチンキ剤の形態での皮内、皮下、筋肉内や静脈内の注射や点滴技術、同様に、例えば、エアロゾル混合物、スプレー剤や粉末剤の形態でのエアロゾルの導入(installation)や吸入(inhalation)、を含む。非−非経口的デリバリモードは、例えば、丸薬(pills)、錠剤(tablets)、カプセル剤、溶液や懸濁液の形態での経口的、座薬の形態での直腸的なものである。本発明の突然変異タンパク質は、従来の無毒性で薬学的に受容可能な賦形剤やキャリア、添加物および媒体(vehicles)を含む望みどおりの形態で、全身的または局所的に投与されてもよい。
本発明の一実施形態では、薬剤は、哺乳動物を含む脊椎動物、特に、ヒトに非経口的に投与される。対応する投与法は、制限されるものではないが、例えば、注射液、点滴液やチンキ剤の形態での皮内、皮下、筋肉内または静脈内への注射や点滴技術、同様に、例えば、エアロゾル混合物、スプレー剤や粉末剤の形態でのエアロゾルの導入や吸入を含む。静脈内および皮下の点滴および/または注射の組合せは、比較的に短い血清半減期を有する化合物の場合に、最も好都合である。薬学的組成物は、水溶液、水中油滴型(オイルインウォーター)エマルジョンまたは油中水滴型(ウォーターインオイル)エマルジョンとしてもよい。
この点に関し、メイダンおよびミクニアクに開示されたように(Meidan and
Michniak (2004) Am. J. Ther. 11(4), 312-316)、イオン導入法(iontophoresis)、超音波導入法(sonophoresis)やマイクロニードル増強デリバリ(microneedle-enhanced
delivery)等の経皮的デリバリ技術は、ここに記載された突然変異タンパク質の経皮的デリバリのために使用されてもよい。非−非経口的デリバリモードは、例えば、丸薬、錠剤、カプセル剤、溶液または懸濁液の形態での経口的、または、例えば、座薬の形態での直腸的投与である。本発明の突然変異タンパク質は、種々の従来の無毒性で薬学的に受容可能な賦形剤やキャリア、添加物および媒体を含む剤型で全身的または局所的に投与されてもよい。
適用された突然変異タンパク質の投与量は、所望の予防効果や治療上の応答を達成するために広範囲で適度に変えてもよい。例えば、それは、選択されたリガンドに対する化合物の親和性に依存し、同様に、インビボにおける突然変異タンパク質およびリガンド間の複合体の半減期に依存する。また、最適な投与量は、突然変異タンパク質、その融合タンパク質やその結合体の体内分布、投与モード、治療されるべき疾患/障害の重症度、同様に、患者の医療上の状態に依存する。例えば、局所的な適用について軟膏剤を用いるときは、高濃度の本発明のタンパク質を用いてもよい。しかしながら、望むのであれば、そのタンパク質が、徐放性の形態、例えば、リポソームの分散液、または、PolyActiveTMやOctoDEXTMのようなハイドロゲルをベースとする高分子マイクロスフェア(Bos et al., Business
Briefing: Pharmatech 2003: 1-6)で投与されるようにしてもよい。
従って、本発明の突然変異タンパク質は、薬学的に受容可能な成分、同様に、確立された調製方法を用いて、組成物に組み合わされてもよい(Gennaro and Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of
Pharmacy, 20th Ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)。薬学的組成物を調製するために、薬学的に不活性な無機または有機の賦形剤を用いてもよい。例えば、丸薬、粉末剤、ゼラチンカプセル剤や座薬を調製するために、例えば、ラクトース、タルク、ステアリン酸およびその塩、脂質、ワックス、固体または液体ポリオール、天然油および硬化油を用いてもよい。溶液、懸濁液、エマルジョン、エアロゾル混合物、または、使用前に溶液やエアロゾル混合物への再構成用粉末の調製のための適切な賦形剤は、水、アルコール、グリセロール、ポリオールおよびこれらの適切な混合物、同様に、植物油脂を含む。
薬学的組成物は、例えば、充填剤、結合剤、湿潤剤、グリダント(glidants)、安定化剤、防腐剤、乳化剤、および、さらなる溶媒や可溶化剤、デポット(depot)効果を達成するための薬剤等の添加剤を含むようにしてもよい。後者は、融合タンパク質が緩効性や徐放性、リポソームやマイクロカプセル等のターゲットデリバリシステムに組み込まれてもよい。
剤型は、細菌保持性フィルタを通じた濾過を含む多くの手法、または、使用直前に滅菌水や他の滅菌媒体に溶解ないし分散される滅菌した固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことにより滅菌され得る。
本発明の突然変異タンパク質、それらの融合タンパク質や結合体は、多くの応用に使用されてもよい。一般に、そのような突然変異タンパク質は、Fc部位のグリコシル化に特異的に依存するものを除く抗体が用いられるすべての応用に使用されてもよい。
ここに記載されたリポカリン突然変異タンパク質は、ヒトの患者自体を含む生物に投与されてもよく、薬学的に活性な成分、適切なキャリアや賦形剤を含むかこれらと混合される薬学的組成物で投与されてもよい。それぞれのリポカリン突然変異タンパク質組成物の剤型および投与のための技術は、本技術分野においてよく確立された低分子量化合物のものと類似しているか、同一のものである。典型的なルートは、制限されるものではないが、経口、経皮および非経口デリバリを含む。リポカリン突然変異タンパク質やそれぞれの組成物は、カプセルやチューブを満たして用いられてもよく、顆粒剤(pellet)のような圧縮された形態で供給されてもよい。また、リポカリン突然変異タンパク質やそれぞれの組成物は、注入可能またはスプレー可能な形態、例えば、それぞれのリポカリン突然変異タンパク質の懸濁液として用いられてもよい。
本発明のリポカリン突然変異タンパク質を含む組成物は、例えば、皮膚上や創傷上に適用するようにしてもよい。また、投与の適切なルートは、例えば、デポット、経口、直腸、経粘膜、腸の投与を含んでもよく;筋肉内、皮下、静脈内、骨髄内の注射を含む非経口デリバリ、同様に、硬膜内、直接的な脳室内、腹腔内、鼻腔内や眼内の注入を含んでもよい。いくつかの実施形態では、リポカリン突然変異タンパク質やそれぞれの組成物を、例えば、注射を介する全身的な方法よりは局所的に投与してもよい。
本発明のリポカリン突然変異タンパク質を含む薬学的組成物は、それ自体が公知の方法、例えば、従来の混合する、溶解する、顆粒化する、糖剤化する、糊状化する、乳化する、カプセル化する、エントラップする、凍結乾燥するプロセスの手段により、製造されてもよい。このため、本発明による使用のための薬学的組成物は、薬学的に用いられ得る調製物におけるハイドロゲルおよび/またはペプチド/ペプトイドの処理を容易にする賦形剤および補助剤を含む1またはそれ以上の生理学的に受容可能なキャリアを使用する従来の方法で剤型化されてもよい。適切な剤型は選択された投与のルートに依存する。
注射用として、リポカリン突然変異タンパク質またはそれぞれの組成物は、水溶液、例えば、ハンクス液、リンゲル液や生理的食塩水等の生理学的適合性のバッファで剤型化されてもよい。経粘膜投与用として、浸透すべきバリアに適する浸透剤が剤型に用いられる。そのような浸透剤は、本技術分野で一般に知られている。
経口投与用として、リポカリン突然変異タンパク質またはそれぞれの組成物は、本技術分野においてよく知られた薬学的に受容可能なキャリアとそれらを組み合わせることにより容易に剤型化され得る。そのようなキャリアは、リポカリン突然変異タンパク質またはそれぞれの組成物、同様に、存在すれば薬学的に活性な化合物を、治療されるべき患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、リキッド剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリ剤、懸濁液等として剤型化することができるようにする。経口使用のための薬学的調製物は、固体賦形剤を添加し、選択的に得られた混合物を粉砕し、錠剤や糖剤の核を得るために、望むのであれば、適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工することにより得ることができる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールやソルビトールを含む糖等の充填剤;例えば、トウモロコシでんぷん、小麦でんぷん、ライスでんぷん、ポテトでんぷん、ゼラチン、トラガカントゴム(tragacanth)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、および/または、ポリビニルピロリドン(PVP)等のセルロース調製物である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、または、アルギン酸やアルギン酸ナトリウム塩のようなアルギン酸塩等の崩壊剤が添加されてもよい。
糖剤の核は適切なコーティングで供給される。この目的のために、濃縮された糖溶液が用いられるようにしてもよく、選択的に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、および/または、二酸化チタン、ラッカー溶液、および、適切な有機溶媒や溶媒混合物を含むようにしてもよい。染料や顔料は、活性化合物投与量の異なる組合せの同定用または特徴付けるために、錠剤や糖剤コーティングに添加されるようにしてもよい。
経口的に用いられうる薬学的調製物は、ゼラチン製のプッシュフィット(push−fit)カプセル、同様に、ゼラチン製のソフトで密閉されたカプセルおよびグリセロールやソルビトール等の可塑剤を含む。プッシュフィットカプセルは、ラクトース等の充填剤、でんぷん等の結合剤、および/または、タルクやステアリン酸マグネシウム塩等の潤滑剤および選択的に安定化剤との混合物に活性成分を含むことができる。ソフトカプセルには、ペプチド/ペプトイドが、脂肪油、流動パラフィンや液体ポリエチレングリコール等の適切な液体に分散されていてもよい。さらに、安定化剤が添加されてもよい。経口投与用の全ての剤型は、その投与に適する投与量とすべきである。バッカル錠(buccal)の投与では、組成物が従来の方法で形成された錠剤やロゼンジ(lozenges)(トローチ剤)の形態をとるようにしてもよい。
本発明のリポカリン突然変異タンパク質は、注射、例えば、筋肉内注射、ボーラス(bolus)注入(急速投与)または連続注入による非経口投与用として形成されるようにしてもよい。注入用の剤型は、単位投与量の形態、例えば、アンプル、または、防腐剤が添加されたマルチ投与量コンテナで存在していてもよい。それぞれの組成物は、懸濁液、溶液または油性や水性媒体でのエマルジョンの形態をとることもでき、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤等の製剤化剤を含むこともできる。
本発明のリポカリン突然変異タンパク質は、予め選択されたサイトに対する化合物をターゲットとするために使用されてもよい。そのような一実施形態では、本発明のリポカリン突然変異タンパク質は、生体や組織において予め選択されたサイトに対する薬学的に活性な化合物のターゲッティングのために使用され、ステップを含む:
a)リポカリン突然変異タンパク質をその化合物と結合させ、そして、
b)リポカリン突然変異タンパク質/化合物複合体を予め選択されたサイトにデリバリする。
そのような目的のために、突然変異タンパク質は、複合体形成を許容するために対象の化合物と接触させられる。そして、突然変異タンパク質および対象の化合物を含む複合体は、あらかじめ選択されたサイトにデリバリされる。このことは、例えば、突然変異タンパク質を、選択されたターゲットに対して結合親和性を有する抗体、抗体フラグメントまたはリポカリン突然変異タンパク質やリポカリン突然変異タンパク質フラグメント等のターゲットとするモイエティと結合させる(coupling)ことにより達成される。
この使用は、制限されるものではないが、とりわけ、その薬品で治療されるべきことが要求されている感染した生体部分、組織または器官等の生体において予め選択されたサイトに薬品を(選択的に)デリバリするために好適である。突然変異タンパク質および対象のある化合物間の複合体形成の他に、突然変異タンパク質は、突然変異タンパク質および化合物の結合体を得るために所与の化合物と反応されるようにしてもよい。上述した複合体と同様に、そのような結合体は、予め選択されたターゲットサイトに化合物をデリバリするために好適である。そのような突然変異タンパク質および化合物の結合体は、突然変異タンパク質および化合物を互いに共有結合させるリンカーを含むようにしてもよい。選択的に、そのようなリンカーは、血流中で安定であるものの、細胞環境において切り離されるものである。
このように、ここに開示された突然変異タンパク質およびその誘導体は、それらの抗体やフラグメントと同様に、多くの分野で使用され得るものである。所与の突然変異タンパク質のターゲット、または、固定されるべき若しくは分離されるべきこのターゲットの結合体や融合タンパク質を許容する支持体に結合するためのこれらの使用に加えて、突然変異タンパク質は、酵素、抗体、放射性物質、または、生化学的活性や定義された結合特性を有する他のいずれかのグループでラベルするために使用されてもよい。そうすることにより、それらのそれぞれのターゲットまたはそれらの結合体や融合タンパク質は、検出されうるものであり、それらとの接触を導入されうるものである。例えば、本発明の突然変異タンパク質は、確立された分析法(例えば、ELISAやウェスタンブロット)により、または、顕微鏡検査法や免役検出法(immunosensorics)により化学構造を検出することに役立つ。ここで、検出シグナルは、適切な突然変異タンパク質結合体や融合タンパク質の使用により直接的に生成されるか、または、抗体を介して結合した突然変異タンパク質の免疫化学的検出により間接的に生成されるか、のいずれかである。
本発明である突然変異タンパク質についての多くの可能な応用は、医学に存在している。診断およびドラッグデリバリにおけるそれらの使用に加えて、例えば、組織特異的または腫瘍特異的な細胞表面分子を結合する本発明の突然変異ポリペプチドが生成される。そのような突然変異タンパク質は、例えば、結合された形態で、または、「腫瘍イメージング(tumor imaging)」用若しくは直接的な癌治療用の融合タンパク質として使用されてもよい。
他の態様では、本発明は、薬学的組成物の製造のために、本発明による突然変異タンパク質の使用も包含する。これにより得られた薬学的組成物は、貧血症(an anaemia)の治療に適している。薬学的組成物は、単独治療または複合治療として使用されてもよい。従って、本発明は、GPC3の変化したレベル、例えば、増加したレベルまたは低減したレベルに関連する貧血症等の疾患や障害の治療のための、上述したように定義された突然変異タンパク質にも関する。
また他の態様では、本発明は、本発明による突然変異タンパク質の診断における使用に関する。本発明による突然変異タンパク質の使用は、一般的に、GPC3の変化したレベルに関連する疾患や障害の診断、同様にそれぞれの診断法のためのものである。
従って、本発明は、GPC3の変化したレベル、例えば、増加したレベルまたは低減したレベルに関連する疾患や障害の診断のための、上述したように定義された突然変異タンパク質にも関する。いくつかの実施形態では、疾患は、制限されるものではないが、肝臓癌やメラノーマを含む癌である。診断されるべき癌は、特に制限されるものではなく、特異的な例として、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、肺癌、腸癌、悪性結腸癌、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、乳癌、胸部眼、卵巣癌、前立腺癌、白血病やリンパ腫、ウィルムス腫瘍を含んでもよく、好ましくは、肝臓癌または(原発性/初期)肝細胞癌である(Sinnett D. GPC3 (glypican3). Atlas Genet Cytogenet Oncol Haematol. May 2002参照)。
また、本発明は、腫瘍や癌を治療するための方法に関し、その方法が、ここに記載され、本発明の突然変異タンパク質を含む薬学的組成物をそれらを必要とする対象に投与することを含む。同様に、本発明は、腫瘍や癌を治療することに使用するための本発明の突然変異タンパク質に関する。同様に、本発明は、腫瘍や癌を治療するための薬学的組成物の調製における本発明の突然変異タンパク質の使用に関与する。治療されるべき腫瘍や癌は、特に制限されるものではなく、特異的な例として、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、肺癌、腸癌、悪性結腸癌、神経線維肉腫、神経芽細胞腫、乳癌、胸部眼、卵巣癌、前立腺癌、白血病やリンパ腫、ウィルムス腫瘍を含んでもよく、好ましくは、肝臓癌または(原発性/初期)肝細胞癌である(Sinnett D.
GPC3 (glypican3). Atlas Genet Cytogenet Oncol Haematol. May 2002参照)。
さらに他の態様では、本発明は、本発明による突然変異タンパク質を含む診断用キットまたは分析用キットを特徴とする。
そのような治療を必要とする対象は、ほんのわずかな例を挙げるとすれば、ヒト、イヌ、マウス、ラット、ブタ、カニクイザル等の類人猿である。
また他の態様では、本発明は、対象におけるインビボイメージングのための方法を特徴とし、本発明の突然変異タンパク質または本発明の突然変異タンパク質を含む薬学的組成物をその対象に投与することを含む。対象は、上述したように定義されたものである。
ここで用いられる、単数型「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、前後関係が明確に他の状態であることを示していない限り、複数の参照を含むことに注意すべきである。このため、例えば、「1つの薬品(a
reagent)」については、1つまたはそれ以上の異なる薬品を含んでおり、「その方法(the method)」については、当業者に知られ、ここに記載された方法のために改変され、置換され得る同等のステップや方法に対する参照を含んでいる。
この開示に示された全ての刊行物および特許は、その全体における参照により取り込まれる。参照により取り込まれた物質が本明細書と矛盾するか、または、一致しない限りは、本明細書はそのようないずれの物質に変えてもよい。
他に示されていない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、その一連の要素の全てを参照することを理解されるべきである。当業者は、慣例の実験法を越えるものを使用せず、ここに記載された本発明の特徴的な実施形態に対する多くの相当物を承認し、または、確認することができる。そのような相当物は、本発明に包含されるものであることが意図されるものである。
本明細書およびそれに続く請求の範囲を通じて、前後関係が他のことを要求しない限り、用語「含む(comprise)」および「含む(comprises)」や「含む(comprising)」等の変形は、示された整数(integer)やステップ、整数やステップのグループの包含を意味するものであり、他の整数やステップ、整数やステップのグループの排除を意味しないことが理解されるべきである。ここで用語「含む(comprising)」が用いられるときは、用語「包含する(containing)」に置換されてもよく、しばしば、ここで用いられる用語「有する(having)」に置換されてもよい。
ここで用語「構成する(cosisting of)」が用いられるときは、請求の範囲の要素に特定されていない要素、ステップまたは成分はいずれも排除される。ここで用いられるときは、「基本的に構成する(consisting
essentially of)」が、請求の範囲の基本的および新奇な特性に物質的に影響を及ぼさない物質やステップを排除するものではない。
ここでのそれぞれの事例では、用語「含む(comprising)」、「基本的に構成する(consisting
essentially of)」および「構成する(cosisting of)」は、いずれも、他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。
本明細書のテキストを通じていくつかの文献が示されている。ここで示されたそれぞれの文献(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造者の規格、指図、等を含む。)は、前でも後でも、これによって、その全体における参照により取り込まれる。本発明が従来の発明によるそのような開示により既になされていたものと解釈することは妥当でない。
本発明は、以下の非制限的な実施例および添付した図面によりさらに例証される。しかしながら、これらの実施例は、本発明を制限するものとして解釈されるべきものではない。むしろ、単に代表的な実施形態にすぎないものである。
他の観点が示されていない限り、組み換え遺伝子技術の確立された方法は、例えば、サムブルックら(Sambrook
et al. (2001)、前掲)に開示されたものとして用いたものである。
実施例1:突然変異体Lcn2ファージディスプレイライブラリの構造
単一の対になっていないチオール側鎖を除去するためのアミノ酸置換Cys87Ser(Goetz et al. (2000)
Biochemistry 39, 1935-1941)、同様に、セカンドBstXI制限サイトを導入するためのアミノ酸置換Gln28Hisを含むクローン化されたcDNA(Breustedt et
al. (2006) Biochim. Biophys. Acta 1764, 161-173)に基づいて、Lcn2変異体の組合せのライブラリを生成した。基本的に、報告されたストラテジィ(Beste et al. (1999)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96. 1898-1903; Skerra (2001) J. Biotechnol. 74, 257-275)により、この領域の突然変異生成およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アセンブリを行い、このとき、図1に示すように、オリゴデオキシヌクレオチド(配列番号:16から配列番号:25までの配列)での1ポット増幅反応を用いた。配列番号:16から配列番号:19までの配列を有するプライマがコードするストランドに対応し、アミノ酸位置36、40、41、49、52または68、70、72、73、77、79、81または96、100、103、106または125、127、132、134のそれぞれでの縮重コドンを含むとともに、配列番号:20から配列番号:23までの配列を有するプライマがコードしないストランドに対応し、縮重コドンやアンチコドンを含まないように、オリゴデオキシヌクレオチドを設計した。配列番号:24および配列番号:25を有する2つのフランキングプライマを過剰に用い、アセンブルされランダム化された遺伝子フラグメントの増幅のために供給した。既に報告されたように(Schlehuber et
al. (2000) J. Mol. Biol. 297, 1105-1120)、Go−Taq Hot Start DNAポリメラーゼ(Promega, Mannheim,
Germany)を用いて、すべてのPCRステップを行った。
縮重コドンを含まないオリゴデオキシヌクレオチドをメタビオン社(Metabion,
Munich, Germany)からHPLCグレードのものを入手した。NNK含有オリゴデオキシヌクレオチドを、同社から入手し、脱塩し、さらに、尿素PAGEにより精製した。得られたDNAライブラリをBstXI(Promega, Mannheim,
Germany)で切断し、属性発現ベクタpASK111(Vogt and
Skerra (2001) J. Mol. Recognit. 14(1), 79-86)に基づくとともに、OmpAシグナルペプチド、改変された成熟Lcn2、続いてアンバーコドンおよび糸状バクテリオファージM13の遺伝子IIIコートタンパク質のC−末端フラグメントで構成される、つまり、ビリン結合タンパク質について以前開示されたもの(Beste et al.、前掲;Skerra、前掲)と同様の融合タンパク質をコードするファージミドベクタphNGAL102(配列番号:10)でクローン化した。分解されたPCR生成物の8.4μgおよび分解されたプラスミドDNAの94μgのライゲーション混合物での大腸菌XL1−Blueのエレクトロポレーションの後(Bullock et
al. (1987) Biotechniques 5, 376-378)、1×1010の形質転換体を得た。
これに代えて、図2に示したクローン化された合成Lcn2ランダムライブラリをスローニング バイオテクノロジィ社(Sloning
BioTechnology GmbH, Puchheim, Germany)から得た。2つのBstXI制限サイトにより側面に位置される中央遺伝子カセットを、適切なプライマ(配列番号:15および配列番号:26)を用いて20サイクルのPCRを介して増幅し、属性発現ベクタpASK75(Skerra (1994)
Gene 151, 131-135)に基づくとともに、phNGAL102(配列番号:10)と同じ特徴を基本的に含むものの、クロラムフェニコール抵抗性の代わりにアンピシリン抵抗性を媒介し、突然変異タンパク質およびファージpIIIプロテイン間のstrep−tag Iを含み、同様に1.7×1010の独立した形質転換体に対応する複雑性を有するライブラリをもたらすphNGAL108(配列番号:11)でサブクローン化した。
ライブラリ生成において、以下のステップを、両方のLcn2ライブラリに対して同様に行った。ファージpIII融合タンパク質としてリポカリン突然変異タンパク質のライブラリをそれぞれコードするphNGAL102またはphNGAL108に基づきファズミドベクタで形質転換させた細胞を含む培養の100mlを、滅菌済エーレンマイヤフラスコに移し、抗生物質の選択圧を伴わない2YT培地中で、37℃、160rpmで1時間インキュベートした。VCS−M13ヘルパーファージでの感染前に、培養を、対応する抗生物質の添加された2YT培地でOD550が0.1となるまで希釈し、さらに同じ条件下でOD550が0.6に達するまで生長させた。約10回の感染多重度でVCS−M13ヘルパーファージ(Agilent
Technologies, La Jolla, USA)での感染の後、培養をさらに30分間、37℃、100rpmで振盪した。そして、インキュベータ温度を26℃まで低下させ、振盪スピードを再び160rpmに上昇させ、10分後、カナマイシン(70μg/ml)を添加し、アンヒドロテトラサイクリン(ACROS
Organics, Geel, Belgium)の25μg/l(培養1リットルあたり、ジメチルホルムアミド、DMF中200μg/mlのストック溶液の125μl)での添加を介して遺伝子発現を誘導した。インキュベーションを26℃、160rpmでさらに12−15時間続けた。
全体の培養から細胞を遠心分離(30分間、18000g、4℃)により沈殿させた。ファージミド粒子を含む上清を滅菌濾過し(0.45μm)、1/4容の20%w/vPEG8000、15%w/v塩化ナトリウムと混合し、氷上で少なくとも2時間インキュベートした。遠心分離(30分間、18000g、4℃)の後、培養の1リットルから沈殿したファージミド粒子を、50mMのベンズアミジン(Sigma)および1μg/mlのPefabloc(Roth, Karlsruhe, Germany)を含む冷却BBS/E(200mMのホウ酸ナトリウム塩、160mMの塩化ナトリウム、1mMのEDTA、pH8.0)の30mlに溶解させた。溶液を氷上で1時間インキュベートした。未溶解成分を遠心分離(10分間、43000g、4℃)した後、それぞれの上清を新しい反応容器に移した。
ファージミド粒子を再沈殿させるために、1/4容の20%w/vPEG8000、15%w/v塩化ナトリウムの添加、氷上での60分間のインキュベーションを行い、保存のためにファージミドを等分し、−80℃で凍結させた。第1の選択サイクル用に、ファージミドを解凍し遠心分離(30分間、34000g、4℃)し、上清を除去し、沈殿したファージミド粒子を50mMのベンズアミジンを含む全体で400μlのPBSに溶解させ組み合わせた。氷上で30分間のインキュベーションの後、凝集残渣を除去するために溶液を遠心分離(5分間、18500g、4℃)し、上清をファージディスプレイ選択に直接使用した。
実施例2:可溶性組み換えヒトグリピカン−3の獲得
NS0細胞で発現させた組み換えヒトグリピカン−3をR&D systemsから入手し、選択実験のために、EZ−Link Sulfo−NHS−LC−LC−Biotin(Pierce)を4倍モル過剰で用いることでリジン残基を介してランダムにビオチン化した。
実施例3:ファージミド発現およびヒトグリピカン−3(GPC3)に対する親和性を有するNGAL突然変異タンパク質の選択
国際特許出願WO/2005/019256号に本質的に開示されたように、実施例1から得られたファージミドを用いて、ファージミドディスプレイおよび選択を行った。ライブラリには、組み換えビオチン化ヒトGPC3に対して4サイクルのファージディスプレイ選択を受けさせた。
実施例1で得られたライブラリの2×1012から1×1013のファージミドを用いた。要するに、ファージミドを遠心分離(21460×g、4℃、20分間)し、50mMのベンズアミジンを含む1mlのPBS(4mMのKHPO、16mMのNaBPO、115mMのNaCl、pH7.4)に再懸濁させた。1%w/vカゼイン(Sigma)および0.1%ツイン(Tween)20(登録商標)を含むPBSをブロッキングバッファとして用いた。ターゲットタンパク質とのインキュベーションの前に、ニュートラビジンに対して特異的な多重反応性若しくはミスフォールドされたリポカリン突然変異タンパク質、または、ストレプトアビジンビーズ特異的な突然変異タンパク質を発現するファージミドの減少のために、カゼインブロックしたニュートラビジンをコートしたマイクロタイタープレート上で、または、カゼインブロックしたストレプトアビジンビーズおよびニュートラビジンとともに、60分間、ライブラリからのファージミドをインキュベートした。
異なるパニングアプローチ(Panning approaches)では、ニュートラビジンコートしたマイクロタイタープレート、1%カゼインブロックしたマイクロタイタープレートのいずれかでターゲットの1μg/ml溶液を獲得し(固相アプローチ)、または、1%カゼインでブロックされたNGALライブラリからの1×1013ファージミドを有する溶液中でビオチン化GPC3の200nM溶液をインキュベートした(溶液アプローチ)。溶液アプローチでは、ストレプトアビジンTMコートした磁気ビーズ(Invitrogen/Dynal)またはニュートラビジンコートした磁気ビーズ(Distrilab)を介し、続いて、8サイクルの洗浄、および、300μLの70mMトリエチルアミンで10分間、1MTris/HCl、pH7.4の適切量での中性化(塩基性溶出)、続いて0.1Mグリシン/HCl、pH2.2で10分間、0.5MTris−Baseの適切量での中性化(酸性溶出)での溶出の20分内の交互法、または、細菌性溶出でファージミド結合されたターゲットを獲得した。
固相アプローチでは、ブロックされたファージミドをビオチン化ターゲットとインキュベートし、続いて8サイクルの洗浄および上述した溶出を行った。第2濃縮サイクルでの始まりでは、結合したファージミド溶液の半分のみをファージミド増幅に用いた。
それぞれのパニングサイクルの間のファージミド増幅では、シュレフーバーらに開示された方法で行った(Schlehuber, S.
et al., J. Mol. Biol. (2000), 297, 1105-1120)。
グリピカン−3に対するさらに3回の選択ラウンドを、この方法で、第2濃縮サイクルでの始まりで約1×1011ファージミドを用いたものを除いて、それぞれの前の濃縮サイクルからの増幅されたファージミドの調製物を用いて行った。
実施例4:ハイスループットELISAスクリーニングを用いたhGPC−3特異的突然変異タンパク質の同定
実施例3に従い選択された突然変異タンパク質のスクリーニングを、国際特許出願WO2006/56464号の実施例3に本質的に記載されたように行った。
上述したパニングプロセスのラウンド3および4からのリポカリン突然変異タンパク質をHTスクリーニングELISAで選択した。ここでは、大腸菌TG1/F−株をphNGAL101と共に用いた96ウェルのマイクロタイタープレートで、T7検出タグ(Novagen)同様にStrep−tag IIアフィニティタグ(IBA)を付けたNGAL変異体を可溶化させた。このベクタは、11アミノ酸(MASMTGGQQMG)(配列番号:12、図4Bも参照)で構成するN−末端T7タグを有するphNGAL98(配列番号:9)に対応する。OD550が0.6でのアンヒドロテトラサイクリン(0.2μg/ml)とともに、22℃、700rpmで、一晩かけて、リポカリン突然変異タンパク質発現を誘導した。その後、振動下で1時間で細胞を溶解させた(100mMのホウ酸ナトリウム塩、pH8.0、80mMのNaCl、1mMのEDTA、0.025%w/vリゾチーム)。続くELISAスクリーンでの非特異的結合を最少化するために、クルードな細胞溶解物に2%w/vBSAおよび0.1%v/vツイン20を加え、ヒトグリピカン−3に対する結合をELISAでテストした。これにより、black Fluotrac 600 ELISAプレート(Greiner、384ウェル)のウェルに固定化されたニュートラビジン(5μg/ml、Thermo Scientific)を介して1μg/mlでのビオチン化ヒトGPC−3を獲得した。ニュートラビジン、ストレプトアビジンのそれぞれ5μg/mlおよび3%ミルクをネガティブコントロールとして用いた。プレートを2%w/vBSAを含むPBST/0.1でブロックし、続いて、細菌性細胞抽出物とともに室温で1時間インキュベートし、プレートを5回洗浄し、結合したリポカリン突然変異タンパク質を、PBST/0.1で1:10000希釈した抗T7モノクローナル抗体−HRP結合体を介して検出した。このため、QuantaBluTM(Pierce;PBS/T0.1%で1:2希釈)を蛍光発生HRP基質として用いた。室温でシグナル発生の45分後、GENiosPlus plate reader(Tecan)で、波長320nm(±12.5nm)で励起し、430nm(±17.5nm)で蛍光測定した。
リバースELISAアプローチでは、突然変異タンパク質をその親和性で区別するためにターゲットを限定する条件に達するまで、ビオチン化ヒトグリピカン−3の量を変えた(10、5および1nM)インキュベーションにより、ラビットポリクローナルNGAL特異的抗体を介してELISAプレートで、クルードな細胞溶解物からの可溶化された突然変異タンパク質を獲得した。ニュートラビジン−HRP結合体(Pierce)を介して、ターゲットの結合を検出した。非ビオチン化ヒトグリピカン−3の100nMの添加により結合する突然変異タンパク質と競合することができれば、その突然変異タンパク質は非改変ヒトグリピカン−3に同様に結合することを示す。ターゲット特異性を例証するために、100nMの非改変グリピカン−5(R&D
Systems)で競合することに対して、同一性アッセイアプローチを用いることもできる。
実施例3に記載されたように選択された1440クローンのスクリーニングは、ターゲット特異的突然変異タンパク質の十分な分離を示す700以上の一時的ヒットの同定をもたらした。ターゲット制限条件下でのリバースELISAアプローチおよび競合ELISAは、それらのターゲット親和性や特異性の点から、GPC3特異的突然変異タンパク質の区別を許容する。これらのELISAアプローチを用いることで、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8を有するクローンを同定した。これらの突然変異タンパク質の配列を図3に示した。
実施例5:グリピカン3結合性突然変異タンパク質(NGAL)の生成
組み換えLcn2およびヒトグリピカン−3特異的Lcn2変異体を、大腸菌K12のJM83株(Yanisch-Perron
et al. (1985) Gene 33, 103-119)、大腸菌supEのTG1−F−株(アクリジニウムオレンジを用いてそのエピソームから保存処理された大腸菌K12 TG1[Kim et al. (2009) J. Am. Chem. Soc. 131, 3565-3576]の派生株)、または、大腸菌W3110(Bachmann (1990) Microbiol.
Rev. 54, 130-197)におけるペリプラズム分泌により生成した。
小スケールの可溶性タンパク質発現のために、OmpAシグナルペプチドのそれぞれの突然変異タンパク質およびC−末端ストレプ−タグIIとの融合をコードし、それにより、プラスミドが突然変異した遺伝子カセットの一方向性のサブクローニングのための2つの非適合性BstXI制限サイトを運ぶプラスミドphNGAL98(配列番号:9)を用いた。シュレフーバーら(Schlehuber, S.
et al., J. Mol. Biol. (2000), 297, 1105-1120)に開示されたプロトコルにより、LB−アンピシリン培地の存在下において2L振盪フラスコ培養で成長させた。より大量のタンパク質のために、シベックら(Schiweck, W.
and Skerra, A., Proteins (1995) 23, 561-565)に開示されたプロトコルに基づき、1つ(または10)の培養器(vessel)でのベンチトップ発酵培養により大腸菌W3110株で発現させた同じベクタで、ペリプラズム生産を行った。
スケラら(Skerra, A. & Schmidt, T. G.
M. (2000) Use of the Strep-tag and streptavidin for detection and purification
of recombinant proteins. Methods Enzymol. 326A, 271-304)により開示された手法に従い、適切なベッドボリュームのカラムを用いたストレプトアビジンアフィニティクロマトグラフィ(Strep-TactinTM Superflow, IBA)によるシングルステップで、ペリプラズム分画からLcn2変異体を精製した。高純度を達成し、凝集した組み換えタンパク質を除去するために、PBSバッファの存在下において、スーパーデックス75HR10/30カラム(Superdex 75 HR 10/30 column, 24-ml bed volume, Amersham Pharmacia
Biotech, Freiburg, Germany)で、最終的に突然変異タンパク質のゲル濾過を行った。単量体タンパク質分画をプールし、SDS−PAGE(Fling
and Gregerson (1986) Anal. Biochem. 155, 83-88)により純度を分析し、さらなる生化学的特徴付けに使用した。
実施例6:ELISA技術を用いたアフィニティ測定
選択されたLcn2突然変異タンパク質の結合親和性および特異性を確認するために、「直接」ELISAを行った。これにより、BSAブロックしたニュートラビジン(Thermo
Scientific、5μg/ml)によるポリスチロールプレート(Greiner, GE)の表面で、1μg/mlの一定濃度のビオチン化ヒトグリピカン3(R&D
Systems)を獲得した。精製したLcn2突然変異タンパク質の2段階希釈系を、獲得したGPC−3とともに室温で1時間インキュベートし、ラビット抗ストレプ−タグIIポリクローナル抗体を用いたStrep−tag IIを介するか、または、スカフォールド特異的ポリクローナルラビット抗体を用いることのいずれかにより検出した。いずれの場合でも、抗ラビットIgG−HRP結合体(Abcam、UK)を二次検出抗体として用いた。
320nmでの吸光度ΔAをELISAリーダ(Tecan, GE)で測定し、グラフパッド プリズム ソフトウェア(Graphpad Prism software,
Statcom, USA)にデータを適合させた。
配列番号:1から配列番号:8までの配列の突然変異タンパク質を用いた測定からの結果、同様に、ネガティブコントロールとしての配列番号:9の結果を下表1にまとめた。
表1:突然変異タンパク質のターゲットであるヒトグリピカン−3に対する親和性定数
選択されたLcn2突然変異タンパク質のK値は200pMから7.6nMまで変化しているのに、ネガティブコントロールは全く結合性を示さなかった。これらのデータを図4にグラフとして示す。
競合ELISAアプローチで、溶液中での非改変グリピカン−3に対するLcn2突然変異タンパク質の結合親和性を評価した。これにより、ニュートラビジン(Thermo
Scientific、5μg/ml、GE)を介したポリスチロールプレート(Greiner、GE)の表面で、1μg/mlの一定濃度のビオチン化ヒトグリピカン−3(R&D Systems)を獲得した。同時に、1.5μMから始まる非ビオチン化ヒトグリピカン−3の2段階希釈系を、タンパク質が結合していない96ウェルのポリプロピレンプレート(Nunc,
GE)中で、一定濃度のGPC3特異的突然変異タンパク質とともに室温で1時間インキュベートした。リポカリン突然変異タンパク質の一定濃度は、本実施例で上述したように、直接ELISAで決定されたそれぞれの突然変異タンパク質のEC50に対応している。次に、非改変ヒトGPC3およびリポカリン突然変異タンパク質の混合物を、GPC3を獲得したニュートラビジンプレート上に移した。ビオチン化GPC3を、室温で1時間、アンチカリン結合用の非改変GPC3と競合させた。この1時間の間に、フリーなリポカリン突然変異タンパク質を、獲得したGPC3に結合させ、ラビット抗ストレプ−タグIIポリクローナル抗体(GenScript,
USA)により検出した。ヤギ抗ラビットIgG−HRP結合体(Abcam, UK)を、二次検出抗体として用いた。競合アッセイと同時に、RFU値とアンチカリン濃度を関連させる標準曲線を得るために、「直接」ELISAにおける同じプレートでアンチカリン結合性を決定した。そして、この曲線を、プレートに結合しグラフパッド ソフトウェア(Graphpad
software)に適合させたアンチカリンのレベルに対する競合データを正規化するために用いた。IC50値は、プレートに結合したリポカリン突然変異タンパク質の最大量の半分に対応する。
配列番号:1から配列番号:8までの配列の突然変異タンパク質を用いる測定からの結果を図5にまとめる。
選択されたLcn2突然変異タンパク質のIC50値は、70pMから1nMまで変化する。
実施例7:BiacoreT100装置での表面プラズモン共鳴によるグリピカン−3に対する結合親和性の測定
ここに開示されたリポカリン突然変異タンパク質の結合動力学および親和性を測定するために、表面プラズモン共鳴を用いた。
グリピカン−3に対するLcn2突然変異タンパク質の結合性のリアルタイム分析を、ランニングバッファとしてHBS−EP+(BR-1006-69, GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)を用いるBiacore T100システム(GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, Sweden)で行った。10mM酢酸ナトリウム中のグリピカン−3の10μg/ml溶液、pH4.5を、標準アミンの結合する化学的作用を用いてCM5チップに固定し、467RUのリガンド密度となった。精製したLcn2突然変異タンパク質を40nMおよび120nMの濃度で30μL/minの流速で供給した。希釈液を、kaおよびkdの情報を得るために、会合時間120秒、解離時間420秒で注入した。グアニジニウム−塩酸の6M(120秒/300秒)か、塩化マグネシウムの3M(900秒)のいずれかを流速10μL/minで注入することにより、リガンドの再生を行った。再生溶液の注入に続いて、ランニングバッファでの特別な洗浄ステップおよび180秒間の安定化を行った。
エタノールアミンで活性化されブロックされたコントロールチャネルについて測定された対応するシグナルの減算により、および、結合する応答からのバッファ注入の削減によりデータを二重参照した。データ処理および動力学的適合のためのBiacore T100 Evaluation Software V2.0.1を用いて、結合反応のkaおよびkdを決定した。データを包括的に1:1結合モデルに適合させた。
配列番号:1から配列番号:8までの配列の突然変異タンパク質に対するkaおよびkdの決定された数値を図6にまとめる。
実施例8:SK−Hep1感染体でのグリピカン3突然変異タンパク質の種−交差反応性
フローサイトメトリィにより評価されたときに検出可能なレベルの内因性GPC3を発現しない、DSMZセルバンクからのSK−HEP1を、ヒト、カニクイザルまたはマウスGPC3をコードする発現ベクタで安定的に感染させた。ベクタを欠くコントロールの細胞についても、同時に入手し分析した。マウス抗グリピカン3クローン1G12モノクローナル抗体(DCS)を用いて、GPC3の検出を行った。
細胞表面でのGPC3に対する突然変異タンパク質の結合性を評価するために、PBS/2%FCS中の200,000セルをそれぞれの結合反応に用いた。氷上で30μlにおいて2時間、反応を行った。続いてPBS/2%FCSでの2回の洗浄ステップを行い、二次ラビット抗hNGALスカフォールド抗血清を30分間用い、さらに2回の洗浄ステップを行った。抗ラビットIgG−PE(30分間)で検出を行った。各サンプルについて10,000の結果を取得するFACSCaliburフローサイトメータで測定を行った。相乗平均値をFlowJo(Treestar
software)に集め、EC50値を得るために、プリズム5プログラム(Prism5 program, GraphPad)でのシグモイダル投与量応答モデルに適合させた。
ヒト、カニクイザルおよびマウスGPC3を感染させたSK−Hep1細胞に対する結合親和性を図7に示す。

Claims (15)

  1. hNGALの突然変異タンパク質において、前記突然変異タンパク質は、hNGALの直鎖状ポリペプチド配列(配列番号:27)の配列位置36、40、41、49、52、68、70、72、73、77、79、81、96、100、103、106、125、127、132および134に対応する配列位置のいずれかの9またはそれ以上のアミノ酸置換を含むことで特徴づけられるとともに、グリピカン−3(GPC3)を、表面プラズモン共鳴により測定された親和性であって約10nMまたはそれ未満のKによる親和性で結合することが可能であり、前記hNGALの直鎖状ポリペプチド配列に関し、Leu36→Ile、Val、Arg、MetまたはSer;Ala40→Trp、Val、His、GlyまたはTyr;Ile41→Met、Ala、Arg、GlnまたはSer;Gln49→Pro、Leu、Val、ArgまたはTrp;Tyr52→Arg、Thr、His、SerまたはAsn;Ser68→Arg、Gly、Asn、AlaまたはLys;Leu70→Arg、Ser、Gln、ThrまたはPhe;Arg72→Asp、Trp、AlaまたはSer;Lys73→Glu、Arg、Met、LeuまたはHis;Asp77→Gly、His、Met、Gln、SerまたはTyr;Trp79→Gly、Lys、SerまたはIle;Arg81→Ala、Gly、Thr、TyrまたはTrp;Asn96→Val、Asp、Gln、Lys、GlyまたはPhe;Tyr100→Arg、Gly、Glu、IleまたはAsn;Leu103→Ile、Gln、Asn、Met、AspまたはTrp;Tyr106→Asp、Asn、Met、PheまたはLeu;Lys125→Phe、Glu、Arg、Tyr、GlyまたはTrp;Ser127→Lys、Arg、Tyr、His、IleまたはAsp;Tyr132→Trp、Ile、Phe、GlnまたはVal;Lys134→Gly、Ala、Phe、Asp、Asn、IleまたはSer:で構成する群から選択された1またはそれ以上のアミノ酸置換を含むことを特徴とする突然変異タンパク質。
  2. 前記突然変異タンパク質のアミノ酸配列は、前記hNGALの直鎖状ポリペプチド配列に関し、
    (a)Leu36→Ile;Ala40→Trp;Gln49→Pro;Tyr52→Arg;Ser68→Arg;Leu70→Arg;Arg72→Asp;Lys73→Glu;Asp77→Gly;Trp79→Gly;Arg81→Ala;Asn96→Val;Tyr100→Arg;Leu103→Ile;Tyr106→Asp;Lys125→Phe;Ser127→Lys;Lys134→Gly;

    (b)Leu36→Val;Ile41→Met;Gln49→Leu;Tyr52→Arg;Ser68→Gly;Leu70→Ser;Arg72→Trp;Lys73→Arg;Asp77→His;Trp79→Lys;Arg81→Gly;Asn96→Asp;Tyr100→Gly;Leu103→Gln;Tyr106→Asn;Lys125→Glu;Ser127→Arg;Tyr132→Trp;Lys134→Ala;

    (c)Leu36→Arg;Ala40→Val;Ile41→Ala;Gln49→Pro;Tyr52→Arg;Ser68→Asn;Leu70→Arg;Arg72→Ala;Lys73→Met;Asp77→Met;Trp79→Ser;Arg81→Gly;Asn96→Gln;Tyr100→Glu;Leu103→Asn;Tyr106→Asn;Lys125→Glu;Ser127→Tyr;Tyr132→Ile;Lys134→Phe;

    (d)Leu36→Met;Ile41→Arg;Gln49→Val;Tyr52→Thr;Ser68→Ala;Leu70→Gln;Lys73→Leu;Asp77→Gln;Trp79→Gly;Arg81→Thr;Asn96→Asp;Tyr100→Ile;Tyr106→Met;Lys125→Arg;Ser127→Arg;Tyr132→Phe;Lys134→Asp;

    (e)Leu36→Ser;Ala40→His;Ile41→Arg;Gln49→Arg;Tyr52→His;Ser68→Asn;Leu70→Thr;Lys73→Glu;Asp77→His;Trp79→Ser;Arg81→Gly;Asn96→Lys;Tyr100→Asn;Leu103→Met;Tyr106→Phe;Ser127→His;Tyr132→Gln;Lys134→Asn;

    (f)Leu36→Ile;Ala40→Gly;Ile41→Gln;Gln49→Trp;Tyr52→Ser;Leu70→Arg;Lys73→Leu;Asp77→Ser;Arg81→Tyr;Asn96→Gly;Tyr100→Asn;Leu103→Asp;Tyr106→Asn;Lys125→Tyr;Ser127→Ile;Tyr132→Trp;Lys134→Ile;

    (g)Leu36→Met;Ile41→Ser;Gln49→Arg;Tyr52→Asn;Ser68→Lys;Leu70→Arg;Arg72→Trp;Lys73→His;Asp77→Tyr;Trp79→Ser;Arg81→Thr;Asn96→Asp;Leu103→Trp;Lys125→Gly;Ser127→Arg;Tyr132→Trp;Lys134→Ser;

    (h)Leu36→Ile;Ala40→Tyr;Gln49→Pro;Tyr52→Arg;Ser68→Arg;Leu70→Phe;Arg72→Ser;Lys73→Arg;Trp79→Ile;Arg81→Trp;Asn96→Phe;Tyr100→Asn;Tyr106→Leu;Lys125→Trp;Ser127→Asp;Tyr132→Val;Lys134→Gly;

    で構成する群から選択されたアミノ酸置換の1セットを含むことを特徴とする請求項1に記載の突然変異タンパク質。
  3. 配列番号:1〜配列番号:8で構成する群から選択されたアミノ酸配列を含む請求項1に記載の突然変異タンパク質。
  4. 前記突然変異タンパク質は、有機分子、酵素ラベル、放射性ラベル、着色ラベル、蛍光ラベル、発色ラベル、発光ラベル、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、細胞増殖抑制剤、毒素、金属複合体、金属およびコロイド金で構成する群から選択された化合物と結合していることを特徴とする請求項1に記載の突然変異タンパク質。
  5. 前記突然変異タンパク質は、そのN末端および/またはC末端で、タンパク質、タンパク質ドメインまたはペプチドである融合パートナと融合していることを特徴とする請求項1に記載の突然変異タンパク質。
  6. 前記突然変異タンパク質は、該突然変異タンパク質の血清半減期を延長する化合物と結合していることを特徴とする請求項1に記載の突然変異タンパク質。
  7. 前記血清半減期を延長する化合物は、ポリアルキレングリコール分子、ヒドロエチルでんぷん、免疫グロブリンのFc部位、免疫グロブリンのCH3ドメイン、免疫グロブリンのCH4ドメイン、アルブミン結合ペプチドおよびアルブミン結合タンパク質で構成する群から選択されることを特徴とする請求項に記載の突然変異タンパク質。
  8. 請求項1に記載の突然変異タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子。
  9. 前記核酸分子は、前記核酸分子の発現を許容するために、制御配列と作動可能に結合されていることを特徴とする請求項に記載の核酸分子。
  10. 前記核酸分子は、ベクタまたはファージミドベクタに含まれることを特徴とする請求項に記載の核酸分子。
  11. 請求項に記載の核酸分子を含むホスト細胞。
  12. 請求項1に記載の突然変異タンパク質を生成する方法であって、前記突然変異タンパク質は、前記突然変異タンパク質をコードする核酸から開始し、遺伝子工学的手法を用いて生成されることを特徴とする方法。
  13. 前記突然変異タンパク質は、細菌性または真核性のホスト有機体に生成され、前記ホスト有機体またはその培養から分離されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. GPC3の存在を検出するための分析用キットにおいて、請求項1に記載の突然変異タンパク質を含むことを特徴とする分析用キット
  15. GPC3の存在を検出する方法であって、
    (a)請求項1に記載の突然変異タンパク質を、GPC3を含むと思われるテストサンプルと接触させ、それにより該突然変異タンパク質およびGPC3間の複合体の形成を許容し、
    (b)前記突然変異タンパク質およびGPC3間の複合体を適切なシグナルにより検出する、
    ステップを含むことを特徴とする方法。
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