JP6100336B2 - 機関及び機関の制御方法 - Google Patents

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本発明は、始動空気をシリンダ内に送り込むことによってピストンを始動させるクランキングを行ない、シリンダ内に燃料を供給して燃焼させることにより、ピストンを作動させて動力を発生させる機関の制御方法に係り、特に始動時や負荷投入時においても燃焼状態が良好であるため黒煙の発生が少なく、機関に連結した外部機器の駆動に不都合な速度変動を発生させにくい機関の制御方法に関するものである。
下記特許文献1及び下記特許文献2に例示するように、ディーゼル機関やデュアルフューエル機関のような内燃機関については多くの提案が種々の技術的観点からなされている。これらディーゼル機関やデュアルフューエル機関は圧縮着火方式の機関であるため、機関の始動に失敗する場合があり、また始動後に負荷投入を行った場合には速度変動を生じてしまい、例えば外部機器として発電機に連結している場合には周波数変動が生じる等の問題が発生することがある。このような問題を解決するため、これらの機関では自吸可能な燃焼空気量に対して過剰な量の燃料を供給するという手段をとる場合があった。
特開2011−252411号公報 特開2000−38965号公報
ところが、ディーゼル機関やデュアルフューエル機関において、始動時に自吸可能な燃焼空気量に対して過剰な量の燃料を供給すると、燃焼空気不足によって燃料が不完全燃焼を起こし、排気中の黒煙が多くなり、環境問題を発生させてしまう。また負荷投入時においても、かかる過剰な量の燃料供給により燃焼空気不足を生じ、結局は黒煙の発生と機関の速度変動が生じてしまうことが多く、問題の解決になっていなかった。
本発明は、上述した従来の問題点を解決することを目的としており、始動時や負荷投入時においても燃焼状態が良好であるため黒煙の発生が少なく、機関に連結した外部機器の駆動に不都合な速度変動を発生させにくいレシプロ式の内燃機関の制御方法と、このような制御上の特性を有する内燃機関を提供することを目的としている。
請求項1に記載された機関の制御方法は、
始動弁を介して始動空気をシリンダ内に送り込むことによってピストンを始動させるクランキングを行ない、前記シリンダ内に供給された燃料を燃焼させることにより前記ピストンを作動させて動力を発生させる機関の制御方法において、
前記機関が始動して定格回転数に達した後、負荷投入信号に基づき、前記機関の爆発行程において、前記始動弁に前記始動空気を供給することによって、前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計が前記始動空気の圧力を上回って(Pp<Ps+Pc)前記始動弁が開かない状態と、前記ピストンが下がって前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計を前記始動空気の圧力が上回り(Pp>Ps+Pc)前記始動弁が開く状態とを形成して、負荷投入の際に、前記始動弁を最初のクランキング時よりも遅れたタイミングで開かせ、前記シリンダに前記始動空気を供給することを特徴としている。
請求項に記載された機関は、
始動弁を介して始動空気をシリンダ内に送り込むことによってピストンを始動させるクランキングを行ない、前記シリンダ内に供給された燃料を燃焼させることにより前記ピストンを作動させて動力を発生させる機関において、
前記機関が始動して定格回転数に達した後、負荷投入信号に基づき、前記機関の爆発行程において、前記始動弁に前記始動空気を供給させて、前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計が前記始動空気の圧力を上回って(Pp<Ps+Pc)前記始動弁が開かない状態と、前記ピストンが下がって前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計を前記始動空気の圧力が上回り(Pp>Ps+Pc)前記始動弁が開く状態とを形成させ、負荷投入の際に、前記始動弁を最初のクランキング時よりも遅れたタイミングで開かせ、前記シリンダに前記始動空気を供給させる制御手段と、
を具備することを特徴としている。
始動空気を始動弁からシリンダ内に送り込むことによってピストンを始動させるクランキングを行ない、前記シリンダ内に供給された燃料を燃焼させることにより機関を始動させる機関始動時に、前記始動空気の供給をクランキング終了後も継続させる。着火後はシリンダ内の燃焼圧力とのバランスにより、ピストンが下方に移動したタイミングで始動弁が開いてシリンダ内に始動空気が入る断続的供給となるが、シリンダ内に供給された所定量の燃料を良好に燃焼させることができる。従って、不完全燃焼による黒煙の発生を減少することができ、機関の回転数はほぼ直線的に上昇し、要求された許容時間で確実に定格回転数に達することができる。
機関始動時における前記クランキング終了後の始動空気の供給は、長く継続させればそれなりに黒煙の発生を減少できるが、好ましくは機関が定格回転数に達するまで始動空気の供給を継続する。これにより、さらに黒煙の発生を減少することができ、機関の回転数はほぼ直線的に上昇し、要求された許容時間で確実に定格回転数に達することができる。
機関が定格回転数に達した後、機関に負荷を投入する前にシリンダに空気を供給することにより、負荷の増大による燃焼空気の不足が回避されて黒煙の発生が抑制され、速度変動を小さく抑えることができる。機関に外部機器、例えば発電装置が連結されていても、機関の速度変動を小さく抑えることができるので周波数の変動等の不具合を抑制することができる。
本実施形態の機関における始動弁の始動空気系統の全体構成のうち、上半部を示す図である。 本実施形態の機関における始動弁の始動空気系統の全体構成のうち、下半部を示す図である。 本実施形態の機関における始動弁の断面図である。 本実施形態の機関における機関始動開始時の状態図(状態[1])である。 本実施形態と同様の構成の機関における機関始動時の始動空気カット後の状態図(状態[3])である。 本実施形態の機関における機関始動開始直後及び始動弁開タイミング延長の状態図(状態[2])である。 始動から定格回転数に至るまでの機関回転数、燃料供給量を示す燃料ラック目盛り、排気中の黒煙の濃度を示すオパシティ値等の時間的変化と、シリンダ内への空気供給状態に対応する状態1乃至3の表示([1]〜[3]で示す)により機関の運転状態を示す実測図であり、本図は従来の状態を示す図である。 図7と同様の実測図であり、本図は従来の状態を改善して始動時の燃料供給量を下げた状態を示す図である。 図7と同様の実測図であり、本図は従来の状態をさらに改善して始動時の燃料供給量を下げるとともに、始動弁の開時期を延長した状態を示す実施形態の一例の図である。 図7と同様の実測図であり、本図は従来の状態をさらに改善して始動時の燃料供給量を下げるとともに、始動弁の開時期を定格回転数の達成まで延長した状態を示す実施形態の別例の図である。
1.本発明乃至実施形態の概要について
本発明は、シリンダ内に燃料を供給して燃焼させることにより、ピストンを作動させて動力を発生させるレシプロ式内燃機関とその制御方法に関するものである。本発明が適用される内燃機関としては、ディーゼル機関、デュアルフューエル機関、ガス機関等があり、その用途は問わないが、これらの機関は、例えば外部機関としての発電装置や推進装置に連結して駆動源として使用することができる。
これらの機関のうち、ディーゼル機関やデュアルフューエル機関においては、始動時・負荷投入時の黒煙発生や、負荷投入時の速度低下による問題(例えば外部機器である発電装置における周波数の変動等)が従来より知られている。またガス機関においても、負荷投入時には同様な速度低下の問題が知られている。
本発明とその実施形態は、これらの問題を解決する手段を提供するものであり、詳細は後述するが、上述したようなレシプロ式の内燃機関であるディーゼル機関等において、機関が着火してから定格回転数に達するまで、機関に対する要求仕様から算出される所定量の燃料をシリンダに供給するとともに、所定の圧力の空気を継続的に供給することにより、供給した燃料を良好に燃焼させ、黒煙の発生を抑制すると同時に機関の立ち上がりを要求仕様通りに達成することを特徴としている。
ここで、シリンダへ空気を供給する始動空気供給手段としては、例えば本実施形態のディーゼル機関の場合には、エアクランキング用の始動用空気源(始動空気槽)と、ここからの始動用空気を始動時に各シリンダに供給してクランキングを行なわせる始動弁を利用することができる。これは、始動弁は既設の装置であっても、使用方法が従来と全く異なり、全く新しい効果を奏するものである。また、このような、ディーゼル機関における始動弁のような始動空気供給手段として使用できる既設の装置がない機関の場合には、供給するアシスト空気の圧力に見合ったタイミングでシリンダ内に空気を供給できる手段を設ければよい。
以下、本実施形態の具体的な構成とその実際の制御方法について説明する。
2.本実施形態の機関の機構構成(図1乃至図3)
図1及び図2は、本実施形態のディーゼル機関における燃料噴射ポンプの燃料供給系統及び始動弁の始動空気系統を示す図であって、上下に接続すれば全体として1葉の図面を構成するものであり、以下の説明では両図をまとめて図1及び図2として参照するものとする。また、図3は、前記始動弁の断面図である。図1及び図2に示す機関は、対向して2列に配置された複数のシリンダを有しているが、同図では説明に必要な一部のシリンダの一部の構成と、シリンダに空気を供給する始動弁及びこれに対する空気供給系統、さらにシリンダに供給する燃料の制御のための構成を中心として図示している。
図1及び図2において、ピストン1は図示しないシリンダの内部に上下動自在に設けられている。これらのピストン1は図示しない連接棒を介してクランク軸2に連結されている。クランク軸2の軸端にはフライホイール3が取り付けられている。図示しないが、フライホイール3の端面の外周側には反射板が取り付けられており、図示しないフォトセンサ等の回転検出センサによってこの反射板を検出すれば、回転検出センサからの出力信号によって機関の回転数を検出することができる。
図1及び図2において、図示しないシリンダの頂部を閉止しているシリンダヘッド4には燃料噴射弁5が取り付けられており、この燃料噴射弁5には燃料噴射ポンプ6が接続されている。燃料噴射ポンプ6は、スリーブ内をプランジャが往復動し、燃料油主管7から供給される燃料を燃料噴射弁5を介してシリンダ内に噴射する。燃料の噴射量はプランジャの有効ストロークによって決まるが、この有効ストロークは図示しないラックがプランジャを回転させることによって調整される。ラックに連動する燃料加減軸8の先端は、リンク機構9を介してレーシャフト10に連結されており、さらにこのレーシャフト10にはガバナ11の出力軸12が取り付けられている。ガバナ11の出力に応じてレーシャフト10が回動すれば、これに連動して燃料噴射ポンプ6のラックが作動してプランジャの有効ストロークが調整され、燃料噴射量が制御される。
また、このレーシャフト10には複数の燃料制御弁20が取り付けられている。これらの燃料制御弁20は、前記ガバナ11の指令に逆らって燃料噴射量の制御を行なうための燃料調整手段であり、図示しない電磁弁のON/OFFによって作動又は非作動を選択できるエアシリンダで構成されている。燃料制御弁20が作動した場合には、前記ガバナ11が回動操作する前記レーシャフト10の回動位置を固定し、燃料噴射ポンプ6のラックを所定位置に固定して、燃料噴射量を所定の値に設定するようになっている。後述するように、本実施形態では、燃料制御弁20として、機関始動時の燃料噴射量を所定の値に設定する始動制御弁20Aと、機関が立ち上がった後などに燃料噴射量を極力絞り込むための緩始動弁20Kが設けられている他、燃料を完全に遮断する停止弁も設けられている。
また、このレーシャフト10の他端には、燃料ハンドル13が取り付けられており、運転又は停止の2位置を選択してロックできるようになっている。遠隔運転時には燃料ハンドル13は運転位置としておくが、緊急時等には機関側で燃料ハンドル13を停止位置にすれば機関の運転を停止することができる。
図1及び図2に示す機関は、始動時にシリンダ内に空気を送り込むことによりピストン1を強制的に往復動させ、クランキングを行なうための始動空気供給手段を備えている。始動空気供給手段は、始動空気槽15(タンク)と、ここから供給される空気をシリンダ内に供給する始動弁16を備えている。すなわち、始動空気槽15から供給される空気は、電磁弁によって開閉される元弁である主始動弁17を介して始動空気主管18に供給され、この始動空気主管18に接続された枝管21から始動弁16を介してシリンダ内に供給される。
図3にシリンダ14の上部を拡大して示すように、始動弁16はシリンダヘッド4に設けられており、始動空気の枝管21をシリンダ14内に連通させる開口22を備えた弁箱23と、この開口22を開閉するために弁箱23内で移動可能とされた弁体24を備えている。この弁体24は、付勢手段25の付勢力Psによって開口22を閉止する向きに付勢されている。また、弁体24のシリンダ14内に露出した一端側には、弁体24が開口22を閉止する向きにシリンダ内圧Pcが加わるようになっている。さらにまた、弁体24の他端側には、弁体24を付勢手段25の付勢方向と逆の方向に押圧して弁体24が開口22を開くことができるように、図示しないパイロット空気配管から供給されるパイロット空気のパイロット空気圧Ppが加わるようになっている。従って、パイロット空気によって始動弁16の弁体24が開口22を開くための条件は、Pp>Ps+Pcである。
図1及び図2に示すように、始動空気主管18からはパイロット空気配管26が分岐しており、このパイロット空気配管26は始動空気分配弁27(パイロット弁)に接続されている。この始動空気分配弁27からは、各シリンダごと(各始動弁16ごと)にパイロット空気配管26が延設され、それぞれ各始動弁16に接続されている。この始動空気分配弁27は、ギア列28を介してカム軸29に連動連結されており、各シリンダの作動サイクルに合わせて駆動される。すなわち、始動空気分配弁27は各シリンダの始動弁16にそれぞれパイロット空気を送り、各シリンダの作動行程に合わせたタイミングで始動弁16を作動させ、各シリンダに対して必要なタイミングで始動空気を供給するようになっている。
なお、この機関の始動弁16は、本来始動時のクランキングのために設けられているものであるが、後述するように、本実施形態では、この始動弁16を特有の制御方法乃至使用方法をとることにより、始動後に定格回転数まで立ち上げる際の燃焼改善のために使用する。また、燃料噴射ポンプ6や燃料制御弁20を用いた燃料の供給量も従来の機関とは異なっている。すなわち、図1及び図2には示していないが、この機関が有する制御手段としての演算器は、回転検出センサにより機関の回転数を検出し、始動弁16を動作させるための電磁弁を本実施形態に特有のタイミングで入切する。また、演算器は、ガバナ11による燃料噴射ポンプ6のラックの動作を制限するための燃料制御弁20であるエアシリンダを電磁弁の入切で操作するが、この場合には、燃料制御弁20の制限によりシリンダに供給される燃料量は、本実施形態に特有の手法で算出した結果を元に、燃料制御弁20のストローク値を燃料噴射ポンプ6のラック目盛りに合わせて予め設定しておくことで達成できる。
3.本実施形態の機関を従来の制御方法で始動した場合の問題点(図4及び図5)
排ガス駆動の過給機付き機関であっても、機関始動時の燃焼空気吸込みは大気圧力状態である。このような状態でも良好な燃焼が可能な燃料量としては、機関の大きさや回転数にはあまり影響を受けることはなく、一般に正味平均有効圧力(Pme) で約0.5 〜0.55MPa 程度である。従って機関始動時、その機関に要求される許容時間内に定格回転数まで立上げるのに必要な正味平均有効圧力が0.5 〜0.55MPa 以上である場合には、空気に対して燃料が過剰であり、良好な燃焼ができず、不完全燃焼を起こしてしまい、黒煙が発生してしまう。
特に、非常用機関の場合には、用途上から、機関始動指令を受けてからの許容立ち上がり時間の制約が厳しい。例えば、緊急用の発電設備を駆動する機関の場合は、消防法の規定により、機関の始動から定格回転数に達するまでに要する許容時間は40秒に定められており、さらに原子力発電所の緊急用発電機を駆動する機関の場合には同許容時間は10〜13秒程度とされている。このように、非常用機関の場合は立ち上がりの許容時間が短く定められているため、上記のように燃焼が不完全となって黒煙が発生する状態となりやすい。
従って、図1及び図2に示した本実施形態の機関において、従来の始動方式、すなわち[背景技術]の項で説明したように、始動指令で始動空気を供給してクランキングを行い、その後に燃料を大量に噴射して着火加速後に燃料供給量を減少させる方式をとった場合には、始動時に燃料過多となり黒煙が発生する状態となってしまう。
この状態について、図4及び図5を参照して説明する。図中、30は排気弁、31は吸気弁である。
図4(a)〜(d)は機関の始動開始、すなわちクランク軸2が動き始める状態を示している(この状態を以後「状態1」と呼ぶ。)。なお、これらの各行程図中、それぞれ右に示したタイミング図の中の太線Pは各図のクランク角度を示している。
図4(a)に示すように、機関始動時は、始動空気のシリンダ内への流入遅れを考慮して、クランク軸2上死点前約5 °から上死点後約130°まで始動弁16が開いてパイロット空気が始動弁のシリンダ内に供給される。この場合、Pc<大気圧、Pp>Pc+Psなので、始動弁16はパイロット空気の供給タイミングで開き、シリンダ内に圧縮空気である始動空気が供給される。なお、これはクランキングの1回目のサイクルであり、次サイクルではシリンダ内圧力は吸込み空気が圧縮されているので、始動弁16はクランク角度45°付近で開くこととなる。
図4(b)はクランク角度が約15°の状態であり、上死点前5°より開いている始動弁16から供給される始動空気により機関のクランキングは継続される。
図4(c)はクランク角度が約130°の状態であり、ここで始動弁16が閉じる。
図4(d)はクランク角度が約180°の状態であり、排気弁30が開いて空気が排気される。以後、このような始動空気によるクランキングを数回繰り返し、回転数が定格回転数の例えば30%程度まで上昇した時点で始動弁のパイロット空気がカットされ、始動弁の作動が停止するが、この時点では既に燃焼が確立しており自力で回転上昇し機関の始動に至ることになる。
図5(a)〜(d)は、このような機関の始動中の状態を示している(この状態を以後「状態3」と呼ぶ。)。
図5(a)に示すように、クランク角度が上死点前約5°では燃料噴射弁5から燃料噴射が開始されており燃焼が始まる。図5(b)に示すように、クランク角度が約45°付近でも後燃えが継続しているが、燃料が空気量に対して過剰に供給された場合には図5(c)に示すように空気不足によりクランク角度45°以降も燃料は完全燃焼しきれずに、図5(d)に示されるように、下死点近傍で排気弁30が開き燃えきらない燃料が排出されて黒煙となってしまう。
始動時には回転速度が低く、燃料噴射ポンプ6のプランジャの速度が遅いため、プランジャからの漏れが多く効率が低下するため、従来は燃料制御弁20で設定する始動時の燃料噴射量を、後述する必要なトルクから算出される量に比べて多めに設定していた。このため、機関を始動して回転が上昇するところでシリンダ内に供給される燃料に対して空気が不足し、不完全燃焼が発生してしまうと本発明者等は考えた。
4.本実施形態の機関の制御方法(図4及び図6)
本発明者等は、前項で説明した空気不足による燃料の不完全燃焼を解消して黒煙の発生を防止するために、燃料の供給量に一定の制限を加えるとともに、クランキング用の始動空気を燃焼用の空気として使用すべく、始動弁16を従来とは異なる態様で使用することを発案した。
(1) 基本
機関立上げに必要なトルク(T)、機関装置系全体の慣性モーメントI(kg・m2 )、定格回転角速度(ω)、立上げ許容時間Δt の関係は下式(1)で示される。このため、機関を許容時間Δt で定格回転数まで立上げるのに必要なトルク(T)は、下式(2)のように算出される。なお、慣性モーメントIは、機関装置系全体としての数値であり、機関とこれに連結された外部装置(例えば発電装置等)の全体の慣性モーメントを意味する。
T×Δt =I ×ω …(1)
T=( I ×ω) ÷Δt …(2)
また、上のように算出されたトルク(T)は機関の正味平均有効圧力(Pme)に比例し、T∝Pmeであることから、必要トルクを得るための正味平均有効圧力が算出できる。その正味平均有効圧力が算出されれば、この正味平均有効圧力を発生させるために必要な燃料供給量を実現する燃料噴射量が求まるので、このような燃料噴射量で燃料噴射ポンプ6を駆動するためのラック目盛りが決定できる。始動時に、この目盛りで燃料噴射ポンプ6を駆動すれば、この機関に要求されている立上げ許容時間内に定格回転数まで立ち上げる機関始動に必要な燃料量を噴射することができる。
機関装置系の全体慣性モーメントが大きい場合や立上り許容時間が短い場合には、機関立上げに必要な正味平均有効圧力が0.5〜0.55MPa以上となるため、大気圧状態での燃焼空気吸込みでは空気不足となり、良好な燃焼を得るためには燃焼空気の補給(アシストエア)が必要になる。そこで、本発明では、従来、機関始動用として使用され、機関のクランキング時に始動弁16からシリンダ内に供給されている始動空気を、機関の立上げ途中の一定期間にも供給することにより、燃焼空気を補給して、機関立上時の燃焼を改善することとした。
このような本発明による機関始動方式を採用することにより、燃料の燃焼状態が改善され、黒煙の発生は改善され、機関始動時の回転数はほぼ直線的に上昇する。
但し、従来一般的に使用されているディーゼル機関における始動用圧縮空気の圧力は一般的に3.0MPaであり、正味平均有効圧力約0.8〜1.0MPaが上限であるため、それ以上の正味平均有効圧力が要求される機関を立ち上げる場合には、ディーゼル機関に備えつけられている始動空気槽15の始動空気圧力を必要燃料量に合わせて上昇させるものとする。例えば、始動空気槽15内の空気の圧力が、前述した必要なトルクから算出した機関始動に必要な燃料噴射量を良好に燃焼するために必要な圧力に足りない場合は、必要な圧力となるように、必要に応じて始動空気槽15内に図示しない圧縮機で空気を供給するものとする。
これにより、前記始動空気供給手段において、必要に応じて作動する圧縮機から始動空気槽15に空気が供給されて空気圧が調節されるので、許容時間で定格回転数に立ち上がるために必要なトルクから算出した所定量の燃料が良好に燃焼するのに必要な始動空気の圧力を維持することができ、このため要求される立ち上がりの許容時間が短縮化されたような場合であっても、黒煙発生が抑制され安定した燃焼による定格回転数までの立ち上がりを確実に達成することができる。
(2) 始動時(機関始動時の黒煙発生低減の運用方法)
外部装置を含めた機関の全体としての慣性モーメント(Ikg・m2 )より、機関を許容時間内に立ち上げるのに必要なトルク(T)を計算する。例えば、ディーゼル発電装置、デュアルフューエル発電装置、ディーゼル推進装置等であれば、機関だけでなく、発電装置や推進装置も含めた全体の慣性モーメント(Ikg・m2 )からトルク(T)を計算する。
次に、そのトルク(T)を発生させるに必要な正味平均有効圧(Pme)を計算し、その正味平均有効圧(Pme)を発生させるに必要な燃料噴射量を求め、燃料噴射ポンプ6のラックをこの燃料噴射量に相当する目盛に設定して機関を始動させる。
圧縮空気始動用の始動弁16を利用し、機関始動時に定格回転数に達する迄、始動弁16を開いてシリンダに圧縮空気を供給することにより、燃焼用空気(アシストエア)を供給することが可能になる。また機関始動時の燃料供給量は前述の計算により求め、これを季節変動要素および燃料噴射ポンプの特性に対する安全率を考慮した値に修正して決定する。
前項で図4及び図5を参照して説明したように、従来は圧縮空気始動方式の機関は機関の始動時のクランキングとして始動空気分配弁27(パイロット弁)を経由して始動弁16に制御空気を送り、圧縮上死点前5°から上死点後130°程度まで始動弁16を開いて燃焼室に空気を送り込み、機関回転数が定格回転数の30%程度に達した時点で始動弁16を閉めていた。
本発明乃至本実施形態では、実際の始動弁16の開タイミングは機関が動き出す時点では始動空気分配弁27(パイロット弁)による制御空気の供給タイミングで空気が供給されるが、図6(a)〜(c)に示すように、始動空気によるクランキングでクランク軸2が180°以上回転したあとは、シリンダ内圧が上昇しているため、上死点後45°〜90°(機関の負荷状態によって変化する)までは、シリンダ内圧力と始動弁16バネによる付勢力の合計が機関の負荷状態(シリンダ内の燃焼圧力)により制御空気の圧力を上回る(Pp<Ps+Pc)場合があり、始動弁16が開かず、過剰燃料が完全燃焼出来ずにシリンダ内に滞留する状態となる。その後、図6(d)に示すように、制御空気の圧力が、シリンダ内圧力と始動弁16のバネによる付勢力の合計を上回り(Pp>Ps+Pc)、始動弁16は最初のクランキング時よりも遅れたタイミングで開き、この時点から燃焼室に空気が供給されて未燃焼の燃料が良好に燃焼する。そして、図6(e)に示すように、クランク軸2が約180°になると、排気弁30は十分な開度となり排気が始まるが、燃料は十分な空気で良好に燃焼したため、黒煙はほとんど発生しない。このような始動弁16からの空気供給(エアアシスト)を着火後も継続し、機関の回転数が定格回転数に至るまで続けることにより、機関始動時の回転数はほぼ直線的に上昇し、所定の許容時間で定格回転数まで立ち上げることができる。
また、この燃焼改善により機関の排ガス量が増大するため過給機の回転上昇率が改善されて過給機から機関に供給される燃焼空気量が増加する効果も得られるため、相乗的に燃焼が改善されて黒煙の発生および速度変動がさらに一層改善される。
なお、制御空気の圧力が、シリンダ内圧力と始動弁16の付勢手段25による付勢力の合計を上回り(Pp>Ps+Pc)、始動弁16が最初のクランキング時よりも遅れたタイミングで開く際のクランク軸2の角度はシリンダ内の燃焼圧力(機関の負荷状態)によって異なってくる。
(3) 負荷投入時(負荷投入時の燃焼改善の運用方法)
本実施形態の機関で発電機を駆動する場合、無負荷で機関を始動した後、機関が定格回転数に達して安定すると、発電機から出力される電圧が確立する。その後に、操作者が負荷のスイッチをONにする等して機関に負荷を投入する場合には、負荷が実際に投入される前にシリンダ内に空気が供給されるようにする。実際には、スイッチのON信号等の負荷投入信号をトリガとし、負荷投入信号の入力と同時に機関の始動弁16を一定期間開き、シリンダに圧縮空気を供給する。このようにすれば、シリンダに実際に空気が供給された後で負荷が加わることになるので、負荷投入による黒煙の発生および機関の速度変動を改善することができる。
(4) ラックの設定(燃料噴射ポンプ6のラックの設定について)
機関系全体の慣性モーメントが小さい機関の場合(主に小型機関)は、立ち上げに必要とされるトルクが小さくなるので燃料噴射量も小さくなる。各シリンダの燃料噴射ポンプ6は低噴射領域でのバラツキの影響が大きいため、このような場合には燃料噴射量を適切に制御することが困難になる。また厳冬期の場合には、潤滑油粘度の上昇等による要因などでクランキングトルクが増大することがあるので、それらの影響を考慮し、燃料噴射量は上述した量に余裕をつけて設定することが好ましい。
(5) 圧縮空気圧力の調整(圧縮空気圧力の調整について)
機関系全体の慣性モーメントが大きい機関の場合(主に大型機関)は、必要トルクを得るための燃料噴射量が増大するため、従来多くのディーゼル機関に付設されていた空気槽の3.0MPaの始動空気圧では、燃焼空気圧が不足となる場合がある。そのような場合には、前述した通り、必要に応じて始動空気槽15内に図示しない圧縮機で空気を供給し、空気槽の圧力を必要な圧力まで高め、前述した必要なトルクから噴射量を算出した燃料を燃焼させるだけの空気量を確保するものとする。
5.実測結果(図7〜図10)
図7から図10は、始動から定格回転数に至るまでの機関回転数、燃料供給量を示す燃料ラック目盛り、排気中の黒煙の濃度を示すオパシティ値等の時間的変化を示すとともに、空気供給状態に対応する状態1乃至3の表示([1]〜[3]で示す)により機関の運転状態を表わした実測図である。これらは、いずれも前述した本実施形態の機関における運転実験結果を示すものである。この中で、図7は従来の運転方法による状態を示し、図8乃至図9は本発明に至る過程で本願発明者が従来の制御方法を改善した方法による状態を示しており、図10はその結果到達した本発明の実施形態の方法による状態を示している。
これらの図において、グラフKは燃料制御弁20K(緩始動弁:クランキングによる着火後に燃料噴射量を絞る目的の弁)の電磁弁信号(ON/OFF)を示し、グラフAは燃料制御弁20A(始動制御弁:クランキングによる着火時の燃料噴射量を設定する目的の弁)の電磁弁信号(ON/OFF)を示し、グラフR1と縦軸r1(min-1)は機関回転数を示し、グラフR2と縦軸r2(min-1)は過給機回転数を示し、グラフFと縦軸f(mm)は燃料噴射ポンプ6のラック目盛りを示し、グラフPと縦軸p(%)はオパシティ値を示し、グラフCはクランク軸回転信号(1回転/パルス)を示している。また、右端の縦軸は縦軸のフルスケールを100%とした場合の割合を示している。
なお、この機関の諸元及び実験における運転条件は次の通りである。
機関形式 4 サイクル
シリンダ数 6 シリンダ
シリンダ径 260mm
ストローク 275mm
定格回転速度 900min-1
発電機出力 1000kW
発電機効率 0.963
正味平均有効圧力 1.55MPa
図7に示す従来の制御方法では、一般的に、始動空気によるクランキングを行うことにより回転数が定格回転数の例えば30%程度まで上昇していき、回転数の上昇に伴い燃料が噴射されて着火し、機関が安定した始動に至ることが予定されていた。ところが、本発明者が実験から得た知見によれば、始動時から回転数が定格回転数の30%程度になるまでは前述した状態1の状態であり、その後に図6に示す状態2の状態になることが判明したが、この状態2は非常に短いことが分かった。その後、始動弁が閉じ(50%程度になるのは、応答遅れによるものであり、OFF信号は30%のため)、前記状態3になり、黒煙が発生していた。黒煙の発生を示すオパシティ値(グラフP)は85%を越え、高い値を示した。この状態1から2にかけては、ラック目盛りが17mmに設定された燃料制御弁20Aが機能しており(グラフAがON)、始動弁16が閉じて状態3に移行したところで燃料制御弁20Aが機能停止し(グラフAがOFF)、代わりにラック目盛りが11.5mmに設定された燃料制御弁20Kが機能するようになる(グラフKがON)。この状態1から2に至る期間に機能していた燃料制御弁20Aのラック目盛りの17mmは、この機関が定格回転数まで許容時間内で立ち上がるのに必要なトルク(T)から算出した燃料よりも多い燃料噴射量を意味している。その後は燃料噴射弁5のラック目盛りが11.5mmに設定された燃料制御弁20Kが機能し、ラック目盛が下がって燃料供給量が低下するが、始動弁16はすでに閉じており、本発明者の知見によれば、燃焼後期の新気供給がないため燃料の供給量が過剰となって前述した状態3となり、不完全燃焼を起こしていたと考えられる。
図8は、図7の制御方法を改善した状態を示すものである。すなわち、本発明者は、図7における制御方法を分析し、燃焼状態を改善するために、始動時の燃料供給量を下げる手法を発案し、試みたところ、図8に示す結果を得た。ここでは、燃料制御弁20Aのラック目盛りを17mmから11.5mmに下げている。燃料制御弁20Aのラック目盛りの11.5mmとは、この機関が定格回転数まで許容時間内で立ち上がるのに必要なトルク(T)から算出した燃料噴射量に対応するものである。なお、燃料制御弁20Kは使用しない。図8に示すように、燃料制御弁20Aにより、燃料噴射ポンプ6による燃料の供給量を前述した必要なトルク(T)から算出した燃料噴射量に制限して機関を始動すると、機関回転数の立ち上がりはより円滑になり、黒煙の発生は減少した。オパシティ値(グラフP)は図7の場合よりも減少している。
図9は、図8の制御方法を改善した本実施形態の一例の状態を示すものである。すなわち、本発明者は、図8における制御方法を分析し、燃焼状態を改善するために、図8の場合と同様に燃料制御弁20Aで始動時の燃料供給量を制限するとともに、始動弁16が開状態にある期間を、機関の回転数で図7の350(min-1)から650(min-1)程度まで延長したところ、図9に示す結果を得た。ここで、燃料制御弁20Aのラック目盛りは、図8の場合と同様、この機関が定格回転数まで許容時間内で立ち上がるのに必要なトルク(T)から算出した燃料噴射量に対応するラック目盛りは11.5mmである。なお、燃料制御弁20Kは使用しない。図9に示すように、燃料制御弁20Aにより、燃料噴射ポンプ6による燃料の供給量を前述した必要なトルク(T)から算出した燃料噴射量に制限して機関を始動するとともに、始動弁16の開時期を650(min-1)程度まで延長したところ、機関回転数の立ち上がりはより一層円滑になり、黒煙の発生はさらに減少した。オパシティ値(グラフP)は図8の場合よりもさらに減少している。また、過給機の回転数(グラフR2)も、図8の場合に比べてより円滑に、より高い数値まで上昇している。
図10は、図9の制御方法をさらに改善した本実施形態の別の状態を示すものである。すなわち、本発明者は、図9における制御方法を分析し、燃焼状態を改善するために、図9の場合と同様に燃料制御弁20Aで始動時の燃料供給量を制限するとともに、始動弁16が開状態にある期間を機関が定格回転数の900(min-1)に達するまでに延長したところ、図10に示す結果を得た。ここで、燃料制御弁20Aのラック目盛りは、図8及び図9の場合と同様、この機関が定格回転数まで許容時間内で立ち上がるのに必要なトルク(T)から算出した燃料噴射量に対応するラック目盛りは11.5mmである。なお、燃料制御弁20Kは使用しない。図10に示すように、燃料制御弁20Aにより、燃料噴射ポンプ6による燃料の供給量を前述した必要なトルク(T)から算出した燃料噴射量に制限して機関を始動するとともに、始動弁16の開時期を定格回転数の900(min-1)まで延長したところ、機関回転数の立ち上がりはさらにより一層円滑になり、黒煙の発生はさらに一層減少した。オパシティ値(グラフP)は図9の場合よりもさらに減少している。また、過給機の回転数(グラフR2)も、図9の場合に比べてより一層円滑に、より一層高い数値まであ昇している。
図10に示した本実施形態における実測図に関し、機関起動時の必要トルクから、必要ラック目盛を算定すると次のようになる。
発電機系の慣性モーメント I = 1801.8 (kg ・cm・sec2)
機関定格回転速度でのω2 ω2 = 2 ×π×(900/60) = 94.2 rad/sec
図10の立上げ時間 Δt = 5 sec
であるから、必要加速トルクT は、
T = I ×ω2 /Δt = 1801.8× 94.2 /5 =339.5kg ・m
となる。
なお、前述した式(1)及び(2)の説明では、慣性モーメントIはSI単位でkg・m2としたが、上記説明では、単位をkgf ・cm・sec2としている。この関係は、
Kg・m2 =10.2× kgf・cm・sec2
で表される。この式における10.2は、kgf をkgに変換するため、9.8m/sec2 においてm をcmに変換するため、100 を9.8 で除した値、すなわち100/9.8=10.2である。
機関定格出力時のトルクは、Tr= 716.2× 1.36 × kW / n (kg ・m)であり、
機関定格出力kW 1000kW
機関定格回転数n 900min-1
であるから、
機関定格出力時のトルクTr= 716.2× 1.36 × 1000 / 900 = 1082.3 kg・m
となる。
従って、必要加速トルクの定格出力トルクに対する比率(トルク比TR)は、
トルク比TR = ( T/ Tr ) = ( 339.5 / 1082.3 ) × 100 = 31.4 %
となる。
定格出力時のラック目盛 21.8
無噴射ラック目盛 6
であるとすると、
必要ラック目盛Rmは、
Rm =6+ ( 21.8 − 6) × 31.4 / 100 = 11
となる。
このように、燃料噴射量を、機関が定格回転数まで許容時間内で立ち上がるのに必要なトルク(T)から算出した量に制限するとともに、機関回転数が定格回転数に到達するまで始動弁16から空気がシリンダ内に供給される状態2の状態(すなわちエアアシスト状態)を維持することにより、最も効果的に機関始動時の黒煙発生を抑制することができた。また、機関の回転数はほぼ直線的に上昇し、要求された許容時間で確実に定格回転数に達することができた。
なお、この実施形態の機関で使用されている始動用圧縮空気の圧力は3.0MPa/cm2 であり、この空気圧力でのエアアシストでは正味平均有効圧力約0.8〜1.0MPa/cm2 が上限である。なお、この始動空気槽15の圧縮空気の3.0MPa/cm2 という圧力は、従来の一般的なディーゼル機関に付設されている始動空気槽15において広く採用されている値であり、その範囲で本実施形態の制御方法を実施する場合には、正味平均有効圧力約0.8〜1.0MPa/cm2 に対応する燃料量で図10に示すような立ち上げを実行することができる。
これ以上の正味平均有効圧力が要求される機関を立ち上げる場合は、始動空気槽15の始動空気圧力を、その正味平均有効圧力に対応する必要燃料量に合わせて上昇させる必要がある。その場合には、図10と同様に始動時に黒煙の発生がない円滑な立ち上がりを実現することができる。この場合、シリンダ内に供給される新気空気量は、供給空気の絶対圧力に比例することになるので、絶対圧力の比で正味平均有効圧力が上昇すると考えられる。例えば、供給空気圧力を3.0MPa(G)から4.0MPa(G)とした場合は、(4+1)/(3+1)×(0.8〜1.0)=1.0〜1.25MPa/cm2
となる。
従って、正味平均有効圧力が約1.0MPaから1.2MPaの場合であれば、始動空気圧力を4.0MPa程度とすることが好ましい。
以上説明したように、本実施形態によれば、機関の慣性モーメントと定格回転角速度と立ち上がりに要する許容時間から必要なトルクを算出し、このトルクに比例する正味平均有効圧力を算出し、さらに算出された正味平均有効圧力を得るために必要な所定量の燃料供給量を設定し、機関の始動時には、着火から定格回転数に達するまでの間、この所定量の燃料をシリンダに供給するとともに、この所定量の燃料が良好に燃焼するために必要な圧力の空気をシリンダへ継続して供給するエアアシストを行う。このため、供給された立ち上がりに必要な所定量の燃料を良好に燃焼させることができる。従って、不完全燃焼による黒煙の発生を抑制でき、機関の回転数はほぼ直線的に上昇し、要求された許容時間で確実に定格回転数に達することができるという効果が得られる。
また以上説明した機関によれば、エアクランキング用の始動空気の供給源である始動空気槽15及び始動弁16をエアアシスト用の始動空気供給手段として用いることができ、また、ガバナ11の制御を抑えて燃料供給量を制限する燃料制御弁20を必要トルクに基づく燃料を供給するための燃料調整手段として用いることができるので、専用の始動空気供給手段や燃料調整手段を新たに設けることなく本発明を実施することが可能となる。また、従来の一般的な機関では、始動空気の供給源は機関の定格回転数等の仕様に関わらず一定の空気圧力(例えば前述した3.0MPa)に設定されている場合があるが、本実施形態によれば、前記所定量の燃料が良好に燃焼するために必要な圧力を維持するため、必要に応じて始動空気槽15に空気を供給できるように構成されているので、機関をより高いトルクで駆動する場合にも対応することができる。
1…ピストン
11…ガバナ
14…シリンダ
15…始動空気供給手段としての始動空気槽
16…始動空気供給手段としての始動弁
20…燃料調整手段としての燃料制御弁
20A…燃料制御弁である始動制御弁
20K…燃料制御弁である緩始動弁

Claims (2)

  1. 始動弁を介して始動空気をシリンダ内に送り込むことによってピストンを始動させるクランキングを行ない、前記シリンダ内に供給された燃料を燃焼させることにより前記ピストンを作動させて動力を発生させる機関の制御方法において、
    前記機関が始動して定格回転数に達した後、負荷投入信号に基づき、前記機関の爆発行程において、前記始動弁に前記始動空気を供給することによって、前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計が前記始動空気の圧力を上回って(Pp<Ps+Pc)前記始動弁が開かない状態と、前記ピストンが下がって前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計を前記始動空気の圧力が上回り(Pp>Ps+Pc)前記始動弁が開く状態とを形成して、負荷投入の際に、前記始動弁を最初のクランキング時よりも遅れたタイミングで開かせ、前記シリンダに前記始動空気を供給することを特徴とする機関の制御方法。
  2. 始動弁を介して始動空気をシリンダ内に送り込むことによってピストンを始動させるクランキングを行ない、前記シリンダ内に供給された燃料を燃焼させることにより前記ピストンを作動させて動力を発生させる機関において、
    前記機関が始動して定格回転数に達した後、負荷投入信号に基づき、前記機関の爆発行程において、前記始動弁に前記始動空気を供給させて、前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計が前記始動空気の圧力を上回って(Pp<Ps+Pc)前記始動弁が開かない状態と、前記ピストンが下がって前記シリンダの内圧力と前記始動弁のバネによる付勢力の合計を前記始動空気の圧力が上回り(Pp>Ps+Pc)前記始動弁が開く状態とを形成させ、負荷投入の際に、前記始動弁を最初のクランキング時よりも遅れたタイミングで開かせ、前記シリンダに前記始動空気を供給させる制御手段と、
    を具備することを特徴とする機関。
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