JP6098269B2 - 中空糸膜モジュール、中空糸膜モジュールの製造方法、浄水器用カートリッジおよび浄水器 - Google Patents

中空糸膜モジュール、中空糸膜モジュールの製造方法、浄水器用カートリッジおよび浄水器 Download PDF

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本発明は、中空糸膜モジュール、中空糸膜モジュールの製造方法、浄水器用カートリッジおよび浄水器に関する。
従来、浄水器のカ−トリッジは、活性炭やイオン交換体などの粒状、繊維状、球状の吸着剤と中空糸膜を充填したモジュールから成るものが多く知られている。中空糸膜の素材としては、ポリエチレン、ポリスルホンなどが知られるが、これらのポリマーはいずれも疎水性であり、このままの状態ではほとんど水を通さない。浄水器用途として膜を使用する場合には、親水化処理が必要となる。親水化処理には、製膜後にアルコールなどの溶媒により親水化する方法や、製膜原液とともに、親水性高分子を含む注入液を2重環状の口金から吐出し、親水性を付与する方法などがある。このような親水化処理を施すことにより、透水性を高めているのである。
しかしながら、一方で、親水性中空糸膜のみからなるモジュールを使用すると、逆に空気の透過性が低下することになる。すなわち、親水性中空糸膜のみからなるモジュールを有する浄水器の場合、何らかの理由で浄水器の水道水入口側からモジュールに空気が混入すると、特に低水圧(例えば0.1MPa以下)では、混入した空気が親水性中空糸膜を通過しにくい。モジュールの上流側に空気が滞留して抵抗となり、水の透過が阻止され、ろ過流量が低下する場合があった。
このような問題を解決するために、特許文献1には、膜のすべてを親水化させるのではなく、膜の一部を疎水性のまま保つことにより、モジュール上流側の空気を排出する方法が開示されている。しかしながら、本方法ではアルコールなどの溶媒を大量に消費するため、換気対策や廃液処理対策が必要となって、設備費用がかかる問題点があった。
また、特許文献2には、親水性中空糸膜からなるモジュールの一部に疎水性中空糸膜を混ぜることにより、モジュール内に溜まった空気を系外へ排出する方法が開示されている。しかしながら、親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜をどのように混在させ、どのようにモジュール化するのかといった製造方法に関しては全く開示されていない。
疎水性中空糸膜を混在させる方法については特許文献3のような製造方法がある。しかしながら本発明者らの知見によれば、親水性中空糸膜をU字形状に加工する際に混在させることが不可欠であり、また混在させるための熟練した加工技術を要した。
特開平10−28852号公報 特許第2720364号公報 特許第5115532号公報
中空糸膜束が親水性中空糸膜と疎水性中空糸膜を混在させてなる場合、図1のように棒状で1本だけ差し込む方法が考えられるが、疎水性中空糸膜の片側端面を密封することが不可欠であり、また疎水性中空糸膜の剛性が弱い場合には親水性中空糸膜束の中に差し込むことも困難であった。
上記問題を解決するため、本発明は次の(1)〜(9)で構成される。
(1)中空糸膜束がU字状に筒状ケースに充填され、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部が前記筒状ケースの開口部に固定された中空糸膜モジュールであって、前記中空糸膜束は親水性中空糸膜に折れ曲がった松葉状の疎水性中空糸膜を混在させたものであることを特徴とする中空糸膜モジュール。
(2)前記疎水性中空糸膜の折れ曲がった部分の曲率半径が0.1〜2.5mmであることを特徴とする(1)に記載の中空糸膜モジュール。
(3)前記親水性中空糸膜の膜面積に対する前記疎水性中空糸膜の膜面積の割合が0.05〜5%であることを特徴とする(1)または(2)に記載の中空糸膜モジュール。
(4)前記疎水性中空糸膜の折れ曲がった方を前記中空糸膜束の開口端部から差し込んで混在させることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
(5)前記疎水性中空糸膜の前記筒状ケースの長さ方向における有効長さが、前記親水性中空糸膜の有効長さの15%〜100%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジ。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器。
(8)(6)に記載の浄水器用カートリッジを装着した浄水器。
(9)親水性中空糸膜をU字状にした中空糸膜束を筒状ケースに充填後、前記中空糸膜束の開口端部から松葉状に加工した疎水性中空糸膜を折れ曲がった方から差し込み、ポッティング材で中空糸膜束の開口端部を筒状ケースの開口部に固定することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
本発明において、「中空糸膜束の開口端部」とは、中空糸膜束がU字状になっていない方の端部をいう。
本発明において、「松葉状」とは図2のようにマツ科の植物の葉のような形状であることを意味する。1本の棒状では剛性不足によって曲がりやすいものを松葉状に加工することによって曲がりにくくすると共に、中空糸膜束の開口端部内に挿入しやすい形状としている。疎水性中空糸膜を松葉状へ加工する手段としては、疎水性中空糸膜をカセ枠に巻き取って、カセ間の中央で切断する。この際、断面が潰されるため松葉状に加工された疎水性中空糸膜は改めて端部を塞ぐ工程が不要である。
中空糸膜モジュールの構造上、製造工程中において中空糸膜束の開口部端を塞ぐことは必要不可欠であるが、疎水性中空糸膜を松葉状に加工することによって疎水性中空糸膜の開口部端を塞ぐことができるとともに、中空糸膜束の開口部端から差し込みやすい形状にすることができる。そのためポッティング材で中空糸膜束を筒状ケースに固定させる前の工程においては、あらゆる工程において疎水性中空糸膜を混在させることができ、モジュール上流側に滞留する空気を系外に排出することが可能な中空糸膜モジュールおよび中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジを提供することができる。
疎水性中空糸膜が棒状に1本だけ存在する場合の概略図である。 親水性中空糸膜に混ぜる前の状態の、折れ曲がった松葉状の疎水性中空糸膜の概略図である。 親水性中空糸膜に折れ曲がった松葉状で疎水性中空糸膜を混在させた中空糸膜モジュールの概略図である。 中空糸膜モジュールを組み込んだ浄水器カートリッジ概略図である。 親水性中空糸膜に折れ曲がった松葉状で疎水性中空糸膜を混在させた中空糸膜モジュールの概略図である。 親水性中空糸膜に折れ曲がった松葉状で疎水性中空糸膜を混在させた中空糸膜モジュールの概略図である。 折れ曲がった松葉状の疎水性中空糸膜の曲率半径の概略図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態の中空糸膜モジュールは図3に示すような、親水性中空糸膜束1と松葉状に加工した疎水性中空糸膜2を筒状ケース3にポッティング材4で固定したものである。
本発明の中空糸膜モジュールを製造する方法を説明する。親水性中空糸膜をU字状にした中空糸膜束1をシートにて覆い、筒状ケース3に充填後、シートのみを取り除き、親水性中空糸膜束1の開口部端を潰して塞ぐ。親水性中空糸膜束1は筒状ケースから少しはみ出した状態であり、親水性中空糸膜束1の開口端部から松葉状に加工した疎水性中空糸膜2を折れ曲がった方から差し込むことができ挿入しやすい。そしてポッティング材4で中空糸膜束1の開口端部を筒状ケース3の開口部に固定し、ポッティング材4、親水性中空糸膜束1および疎水性中空糸膜2を含む端部を切断する。
親水性中空糸膜1としては、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンを原料ポリマーとすることが好ましく、更に好ましくは生物学的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れており、浄水器用として好適であるポリスルホンが良い。
親水性中空糸膜1の孔径は、10μm以下であると好ましく、さらに好ましくは2μm以下である。さらに微小な固体を除去する場合には、孔径0.1μm以下のものを用いると、より微小な濁り成分を除去できるという点で好ましい。
疎水性中空糸膜2としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンなどを原料ポリマーとすることが好ましく、更に好ましくは極性が最も低く最も疎水性であるポリエチレンが好ましい。
ポッティング材4は、筒状ケース3と中空糸膜束1との間並びに中空糸膜間を封止することが出来ればよく、流動性を有する主剤と硬化剤とを混合して反応、硬化させる二液混合型のエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などが中空糸膜モジュールを製造する上で取り扱いやすく好ましい。
U字状とした中空糸膜束1を覆い、その後の工程で引き抜くシートとしては、中空糸膜を損傷させないよう、摩擦抵抗の少ない不織布が好ましい。
疎水性中空糸膜2の加工方法としてはカセ枠に疎水性中空糸膜を巻き取り、カセ間の中央部を刃物で切断する。使用する刃物は切断面を潰すことができるため一般工作用のハサミが好ましい。このとき疎水性中空糸膜の剛性を高くするためには、図7に示す曲率半径5が0.1〜2.5mmであることが好ましい。
疎水性中空糸膜2の差し込み位置は、図5、図6のようにモジュール内のどの位置でも効果は発現するが、モジュールの外観上および作業性から中空糸膜束1の開口部端の中央が好ましい。
疎水性中空糸膜2の膜面積の割合は、親水性中空糸膜1に対して0.05%〜5%であることが好ましい。疎水性中空糸膜2の割合を0.05%以上とすることで、滞留空気を排出する能力を発揮することができる。また5%以下とすることで、親水性中空糸膜の膜面積を十分に有することができ、ろ過能力を維持することができる。疎水性中空糸膜2の割合が0.05〜0.5%であるとさらに好ましい。
ここで膜面積とは、中空糸膜の接水部分の外表面の面積を算出したものであり、ポッティング材4で接着固定された部分は含まない。
疎水性中空糸膜2の筒状ケース3の長さ方向における有効長さは親水性中空糸膜1の有効長さに対して短すぎると滞留空気を排出する能力を十分発揮することができず、長すぎると親水性中空糸膜1のU字部からはみ出すことになり外観を損ねることになる。そのため疎水性中空糸膜2の筒状ケース3の長さ方向における有効長さは親水性中空糸膜1の有効長さの15〜100%が好ましい。
本発明の中空糸膜モジュールは蛇口直結型、据置型、ポット型、アンダーシンク型など種々形態の浄水器用カートリッジに適用することが可能である。活性炭やゼオライト、無機イオン交換体、イオン交換樹脂、キレート樹脂等の吸着剤と併用して用いることが好ましく、トリハロメタンや鉛などの有害物を除去するもの、細菌の増殖抑制のために銀や銅などの抗菌剤を添着したもの、水道水中の塩素を除去するものなどが好ましく用いられる。
上記形態の浄水器用カートリッジを装着した浄水器として用いることも可能であり、上記のような吸着剤と併用せずに、本発明の中空糸膜モジュールのみを搭載した浄水器として用いることも可能である。
以下に実施例を記載して本発明をより具体的に説明する。
[実施例1]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を用い、親水性中空糸膜456本をU字状に折り曲げ、形状を保持するために不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=19.8mm、長さ=71.5mm)内に挿入した。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、長さ60mmの松葉状に加工した疎水性中空糸膜(ポリエチレン、平均外径=0.65mm)を中空糸膜束の開口端部から中央部に差し込み、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。開口部内径が46.5mm、高さが83.0mmの円筒形の本体容器に、本中空糸膜モジュールを挿入し、粒径が48メッシュ〜100メッシュの範囲である活性炭32.0gを充填し、図4に示す形状の浄水器用カートリッジとした。図4中、符号11は中空糸膜モジュールを、12は活性炭充填部を、13はカートリッジ本体容器を示している。本カートリッジでJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」に基づき、表示ろ過流量を2.0L/minとして10分間通水したのち、カートリッジ内の水を抜いた状態から0.1MPaで通水し、表示ろ過流量が2.0L/minに回復するまでの時間は4.7秒であった。
[比較例1]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を用い、親水性中空糸膜456本をU字状に折り曲げ、形状を保持するために不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=19.8mm、長さ=71.5mm)内に挿入した。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。開口部内径が46.5mm、高さが83.0mmの円筒形の本体容器に、本中空糸膜モジュールを挿入し、粒径が48メッシュ〜100メッシュの範囲である活性炭32.0gを充填し、浄水器用カートリッジとした。本カートリッジでJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」に基づき、表示ろ過流量を2.0L/minとして10分間通水したのち、カートリッジ内の水を抜いた状態から0.1MPaで通水し、表示ろ過流量が2.0L/minに回復するまでの時間は180秒であった。
[実施例2]
親水性中空糸膜としてポリスルホン中空糸膜(平均外径=0.46mm)を用い、親水性中空糸膜456本をU字状に折り曲げ、形状を保持するために不織布で中空糸膜束を包み、円筒状の筒状ケース(内径=19.8mm、長さ=71.5mm)内に挿入した。挿入後、中空糸膜束の開口端部を把持し、中空糸膜束を包む不織布を取り除き、長さ40mmの松葉状に加工した疎水性中空糸膜(ポリエチレン製、平均外径=0.65mm)を中空糸膜束の開口端部から中央部に差し込み、ポリウレタン樹脂にて開口端部を固定し、中空糸膜モジュールとした。開口部内径が46.5mm、高さが83.0mmの円筒形の本体容器に、本中空糸膜モジュールを挿入し、粒径が48メッシュ〜100メッシュの範囲である活性炭32.0gを充填し、浄水器用カートリッジとした。本カートリッジでJIS S 3201「家庭用浄水器試験方法」に基づき、表示ろ過流量を2.0L/minとして10分間通水したのち、カートリッジ内の水を抜いた状態から0.1MPaで通水し、表示ろ過流量が2.0L/minに回復するまでの時間は7.8秒であった。
本発明は、蛇口直結型、据置型、ポット型、アンダーシンク型など浄水器全般に応用することができるが、これらに限定されるものではない。
1 親水性中空糸膜束
2 疎水性中空糸膜
3 筒状ケース
4 ポッティング材
5 曲率半径
11 中空糸膜モジュール
12 活性炭充填部
13 カートリッジ本体容器

Claims (8)

  1. 中空糸膜束がU字状に筒状ケースに充填され、ポッティング材で前記中空糸膜束の開口端部が前記筒状ケースの開口部に固定された中空糸膜モジュールであって、
    前記中空糸膜束は、U字状に曲げられた親水性中空糸膜に折れ曲がった松葉状の疎水性中空糸膜を混在させたものであり、
    前記疎水性中空糸膜は、それぞれが前記親水性中空糸膜束のU字状に曲げられた部分よりもいずれか片方の側に混在していることを特徴とする中空糸膜モジュール。
  2. 前記疎水性中空糸膜の折れ曲がった部分の曲率半径が0.1〜2.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  3. 前記親水性中空糸膜の膜面積に対する前記疎水性中空糸膜の膜面積の割合が0.05〜5%であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜モジュール。
  4. 前記疎水性中空糸膜の前記筒状ケースの長さ方向における有効長さが、前記親水性中空糸膜の有効長さの15%〜100%であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器用カートリッジ。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを搭載した浄水器。
  7. 請求項に記載の浄水器用カートリッジを装着した浄水器。
  8. 親水性中空糸膜をU字状にした中空糸膜束を筒状ケースに充填後、前記中空糸膜束の開口端部から松葉状に加工した疎水性中空糸膜を折れ曲がった方から差し込み、ポッティング材で中空糸膜束の開口端部を筒状ケースの開口部に固定することを特徴とする中空糸膜モジュールの製造方法。
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