以下、本発明を実施するための形態について、図1乃至図7を用いて説明する。なお以下に説明する実施形態は、例えば膝疾患を持つ患者(被補助者の一例)の回復訓練等としての歩行における膝関節の動作及び股関節の動作を補助する歩行補助装置に対して本発明を適用した場合の実施形態である。また図1は実施形態に係る歩行補助装置を患者に装着した際の状態図であり、図2は実施形態に係る駆動ユニットを患者の両脚に装着した際の状態図である。また図3は当該歩行補助装置の構成を示すブロック図等であり、図4は歩行補助装置における制御パターンを生成する動作例を示すフローチャートである。更に図5は当該歩行補助装置における膝関節部及び股関節部の屈曲角度の一例を示す模式図であり、図6は当該歩行補助装置におけるセンサのデータと制御パターンの一例を示すタイミング図であり、図7は歩行補助装置における制御動作例を示すフローチャートである。
図1及び図2に示すように、実施形態に係る歩行補助装置S(動作補助装置の一例)は、患者60の下肢部(両脚)に着脱自在のテープ状固定具やバンド等の固定具6によってそれぞれ取り付けられる補助手段の一例及び第2補助手段の一例としての一対の駆動ユニット10を備えている。なお以下の説明では、左脚用の駆動ユニット10を駆動ユニット11とし、右脚用の駆動ユニット10を駆動ユニット12として説明する。また駆動ユニット11及び駆動ユニット12に共通する説明を行う場合は、一般に駆動ユニット10として説明する。
一つの(即ち、右脚と左脚のいずれか一方用の)駆動ユニット10には、図1に示すように、患者60の膝部5の関節部分に取り付けられ、膝関節を屈曲及び伸展させるリンク機構部3と、患者60の股部9の関節部分に取り付けられ、股関節を屈曲及び伸展させるリンク機構部8と、が取り付けられている。
先ずリンク機構部3は、図1に示すように、例えば患者60の大腿部に巻きつけられる上部脚当て4の側面に取り付けられる第一リンク3aと、患者60の下腿部に巻きつけられる下部脚当て7の側面に取り付けられる第二リンク3bと、を含んで構成される。第一リンク3aは、患者60の腰部側から膝部5側に延びるように取り付けられ、第二リンク3bは患者60の膝部5側から脚の先端(床面又は地面)側に延びるように取り付けられている。そして第一リンク3aと第二リンク3bとは、患者60の膝部5近傍で回動可能に連結されている。この構成において駆動ユニット10は、その動力により、第一リンク3aに対して第二リンク3bを歩行の前後方向に揺動させる。
このとき第一リンク3aと第二リンク3bの連結部には、当該第一リンク3aと第二リンク3bとの成す角度を示す膝関節角度データを出力する膝関節角度センサが内蔵されている。この膝関節角度センサは、例えばいわゆるポテンショメータ等により実現される。一方上部脚当て4及び下部脚当て7は、それぞれが図示しない一対の脚当て部材を含んで構成されており、当該脚当て部材は患者60の大腿部及び下腿部の周囲を覆うように配置され、固定具6によって着脱可能に取り付けられる。また、上部脚当て4及び下部脚当て7は、例えばポリプロピレン樹脂等を成形して形成されており、ユーザの大腿部と接する部分には、伸縮自在の図示しないスポンジ部材等が取り付けられている。
他方リンク機構部8は、図1に示すように、上記した上部脚当て4の側面に取り付けられる第一リンク8aと、患者60の腰部に巻きつけられるベルト23の側部に取り付けられる第二リンク8bと、を含んで構成される。第一リンク8aは、患者60の臀部側から膝部5側に延びるように取り付けられ、第二リンク8bは患者60の腰部側から臀部側に延びるように取り付けられている。そして第一リンク8aと第二リンク8bとは、患者60の股部9近傍で回動可能に連結されている。この連結部にも、第一リンク8aと第二リンク8bとの成す角度を示す股関節角度データを出力する股関節角度センサ(股関節角度検出手段の一例)が内蔵されている。この股関節角度センサも、例えばいわゆるポテンショメータ等により実現される。この構成においても駆動ユニット10は、その動力により、第二リンク8bに対して第一リンク8aを歩行の前後方向に揺動させる。
更に図2に示すように、両脚にそれぞれ取り付けられる駆動ユニット11及び駆動ユニット12には、当該駆動ユニット11及び駆動ユニット12間でデータ通信するための通信ユニット20が着脱可能に取り付けられる。この通信ユニット20は、ケーブル21と、そのケーブル21の途中に配置される通信用基板及び制御用基板並びに電池等が収容された中継ボックス22と、を備え、上記ベルト23によって患者60の腰部に取り付けられる。また通信ユニット20は、ケーブル21の両端に非接触でデータを通信可能な通信端子を備えた通信ヘッド25を備えている。一方、駆動ユニット10の筐体10aには、当該通信ヘッド25を挿入可能な孔部10bが設けられており、孔部10bに対して当該通信ヘッド25が着脱可能になっている。なお、上記中継ボックス22内の制御用基板には、実施形態に係る歩行補助装置Sとしての動作を制御する後述のCPU等が装着されている。更に駆動ユニット10は、電力を受電又は所定のデータを通信可能な図示しない通信ヘッドを筐体10aの内部に備えている。そして、駆動ユニット10の筐体10aに有する孔部10bには、通信ヘッド25が挿入されて、非接触で上記図示しない通信ヘッドに電気的に接続され、データ通信可能となっている。
次に、実施形態の歩行補助装置Sの構成について、より具体的に図3を用いて説明する。
実施形態の歩行補助装置Sは、図3(A)に示すように、右足駆動系Rと、左足駆動系Lと、中継ボックス22内の上記制御用基板に備えられた記憶手段の一例及び制御手段の一例としてのCPU(Central Processing Unit)42と、患者60又は理学療法士等が操作可能な位置に備えられ且つCPU42に対する指令操作を行うための操作ボタン等を備える操作部41と、CPU42に接続され且つ患者60又は理学療法士等が視認可能な位置に備えられた液晶ディスプレイ等からなる表示部40と、を備えている。なおCPU42は、オペレーティングシステムや歩行補助装置Sを制御する制御プログラム、制御パターンを生成するための制御パターン生成プログラム等のソフトウェア、検出したデータ、或いは、生成した制御パターン等のデータを記憶する記憶部(図示せず)を有している。この記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク又はシリコンディスク等により構成されている。
また各脚の駆動系(右足駆動系R及び左足駆動系L)には、それぞれ、上記駆動ユニット10と、上記固定具6並びに上部脚当て4及び下部脚当て7と、膝関節角度センサ16を含むリンク機構部3と、股関節角度センサ15を含むリンク機構部8と、踵状態検出手段の一例としての中敷センサ17と、が含まれている。駆動ユニット10には、DCモータ50と、各リンクに接続されているギア部52と、DCモータ50からの駆動力を、ギア部52を介して各リンクに伝達するクラッチ部51と、が含まれている。
以上の構成において、DCモータ50の回転方向及び回転速度の制御及びクラッチ部51における開放/接続の制御は、それぞれCPU42により行われる。更に中敷センサ17は、図3(B)に断面図により例示するように、例えば靴下64を履いた右足(及び左足)63の足裏と、履いている靴の中底61との間に挟まれて用いられる中敷62内にそれぞれ備えられており、各脚が床面又は地面(以下、単に「床面」と称する)から離れたこと及びそれらに接地したことをそれぞれ示すアナログ信号をCPU42に出力する。なお本願の中敷センサ17は、上記中敷62を用いない場合であっても、例えば図3(C)に断面図により例示するように、靴下64の裏と中底61との間に備えられていてもよいし、或いは図3(D)に断面図により例示するように、中底61上と靴下64との間に備えられていてもよい。また膝関節角度センサ16は上記膝関節角度データを生成してCPU42に出力し、更に股関節角度センサ15は上記股関節角度データを生成してCPU42に出力する。
ここで、実施形態に係る歩行補助装置Sにおいて、各脚が床面から離れたこと及びそれに接地したことを図3に例示する中敷センサ17により検出することとしたのは、中敷62を用いている場合の患者60の歩行において、一般に、足裏(踵)が中敷62から離れるタイミングが、当該脚に履かれている靴の靴裏(床面に接する靴の裏側の面)が床面から離れるタイミングよりも早いという、本願の発明者らによる知見によるものである。このようなタイミング差、即ち足裏が中敷62から離れるタイミングと靴裏が床面から離れるタイミングとの差があることにより、歩行補助装置Sに係る制御動作に余裕が生まれると共に、患者60の歩行時の感覚により近い制御動作が実現できるのである。
次に、図1乃至図3を用いて説明した構成を備える歩行補助装置Sにおける制御パターン生成について、具体的に図4乃至図6を用いて説明する。
まず、歩行補助装置Sが患者60に装着され、制御パターン生成の処理が行われる。
図4に示すように歩行補助装置Sは、先ずクラッチ部51を開放する(ステップS1)。具体的に歩行補助装置SのCPU42は、クラッチ部51を開放し、DCモータ50からリンク機構部3及びリンク機構部8への駆動力の伝達をそれぞれ遮断する。これによりリンク機構部3及びリンク機構部8が、DCモータ50の永久磁石等による抵抗力の影響を受けずにフリーに動き、患者60が脚を動かし易くなる。
次に歩行補助装置Sは、それを装着した患者60が立ち止まった状態から3、4歩程歩いた状態まで移動する間に、股関節角度センサ15、膝関節角度センサ16、及び中敷センサ17からのアナログ信号を取得する(ステップS2)。具体的にCPU42は先ず、歩行補助装置Sを装着した患者60が立ち止まった状態のとき、股関節角度センサ15から、第一リンク8aと第二リンク8bとの成す屈曲角度θH(股関節部の屈曲角度の一例。その変化の一例を、図6において上から三段目に示す。)を示す股関節角度データを取得する。次に、それを装着した患者60が3、4歩程歩く状態で、歩行補助装置Sは、股関節角度センサ15、膝関節角度センサ16、及び、中敷センサ17からのアナログ信号を取得する。具体的にCPU42は、股関節角度センサ15から上記角度θHを示す股関節角度データを取得し、膝関節角度センサ16から、第一リンク3aと第二リンク3bとの成す屈曲角度θk(膝関節部の屈曲角度の一例。その変化の一例を、図6において上から二段目に示す。)を示す膝関節角度データを取得する。またCPU42は、中敷センサ17から、脚が床面65から離れたこと及びそれらに接地したことを示すアナログ信号(その変化の一例を、図6において最上段に示す。)を取得する。その後CPU42は、取得した膝関節角度データ、股関節角度データ及び中敷センサ17からのアナログ信号をCPU42内の図示しない記憶部に記憶する。なお、患者60に動きがあり、データに変動がある場合、CPU42は、各データの平均値を算出して記憶部に記憶する。
ここで、上記屈曲角度θH及び上記屈曲角度θkについて、図5を用いてより具体的に説明する。先ず患者60の膝部5の関節部分における上記屈曲角度θkは、患者60の大腿部(第一リンク3aに対応)を基準に測定される。即ち図5に示すように、上記屈曲角度θkは、第一リンク3aと第二リンク3bとの連結部を中心として、大腿部の中心線を下腿部方向に延長した線と、後方に折り曲げた下腿部の中心線と、の成す角度であり、下腿部を後方に折り曲げた場合に正となる角度である。一方、患者60の股部9の関節部分における上記屈曲角度θHは、患者60の体幹部(第二リンク8bに対応)を基準に測定される。即ち図5に示すように上記屈曲角度θHは、第一リンク8aと第二リンク8bとの連結部を中心として、大腿部の中心線と鉛直線との成す角度であり、基準であるその体幹部より患者60の大腿部が歩行方向の前方にある場合が正であり、歩行方向の後方にある場合が負となる角度である。
次に歩行補助装置Sは、取得した中敷センサ17からのアナログ信号に基づき中敷センサ17のON/OFFを決めるための中敷センサ閾値を決定する(ステップS3)。具体的にCPU42は、図6に示すように、中敷センサ17からの出力としてのデータLHがLOWからHIGHになったとするための上記アナログ信号(中敷センサ17から直接出力されるアナログ信号)に対する閾値(以下、当該閾値を「ON閾値」と称する)、及び当該データLHがHIGHからLOWになるとする上記アナログ信号に対する閾値(以下、当該閾値を「OFF閾値」と称する)を、取得した上記アナログ信号から中敷センサ閾値としてそれぞれ設定する。なお、いわゆるチャタリング防止のため、中敷センサ閾値としての上記ON閾値と上記OFF閾値とは、相互に異なってもよい。
次に歩行補助装置Sは、中敷センサ17からのアナログ信号等に基づき、歩行周期、遊脚期、及び立脚期を特定する(ステップS4)。具体的にCPU42は、中敷センサ17のデータLHがHIGH(脚が床面65から離れた状態)になった時点から、当該データLHがLOW(脚が床面65に接地した状態)になった時点を経て、再び当該データLHがHIGHになった時点までの期間(踵の離床時から、次の踵の離床時までの期間)を、歩行周期として特定する。そしてCPU42は、当該データLHがHIGHになった時点から、当該データLHがLOWになった時点までを遊脚期の期間(踵の離床時から踵の着床時までの時間。図6において、タイミングT1からタイミングT7までの間として例示する。)として特定し、更に当該データLHがLOWになった時点から、再び当該データLHがHIGHになった時点までを立脚期の期間(踵の着床時から踵の次の離床時までの時間。図6において、タイミングT7からタイミングT8までの間として例示する。)として特定する。
ここで一般に「立脚期」とは、歩行において左右いずれか一方の脚に患者60の体重がかかっている期間を示す。また同様に「遊脚期」とは、歩行において当該いずれか一方の脚に患者60の体重がかかっていない期間(換言すれば、次の立脚期に移行するためにその脚を床面65から離して(浮かせて)前に移動させている期間)を示す。
次に歩行補助装置Sは、膝関節角度のデータのピーク箇所を特定する(ステップS5)。具体的にCPU42は、取得した膝関節角度センサ16からの屈曲角度θkを示す膝関節角度データが、遊脚期において最大となるピーク箇所θkp(図6参照)及び膝関節部の屈曲角度が最大値になるタイミングT4(図6参照)を特定する。この膝関節部の屈曲角度θkの最大値は、図5に示すように、患者60の大腿部を基準とした値であり、膝は最も屈曲した状態となる。なお実施形態に係る歩行補助装置Sでは、上記タイミングT4から膝関節部の伸展動作を開始する。そして歩行補助装置Sでは、立脚期におけるいわゆる膝折れ(即ち、立脚期において意図せずに患者60の膝が曲がってしまい、例えば転倒等の危険性が出ること)を防止すべく、当該タイミングT4から図6に例示するタイミングT6を経て立脚期の終了まで(即ち、図6においてタイミングT8として例示するタイミングまで)、膝関節部の伸展動作を継続する。ここでタイミングT6は、膝関節部の伸展動作により、膝関節部が屈曲動作を開始する後述のタイミングT2に相当する第1閾値角度θk1にまでその屈曲角度θkが再び到達するタイミングである。これに加えてCPU42は、タイミングT4における股関節部の屈曲角度θHを示す股関節角度データを特定する。
次に歩行補助装置Sは、上記ステップS2からステップS5までの処理により取得したデータ等を用いて、本願に係る各閾値角度を設定する(ステップS6)。
具体的にCPU42は、実施形態に係る膝関節部の屈曲角度θkについての第1閾値角度θk1(図6参照)を設定し、その値を上記記憶部に記憶させる。この第1閾値角度θk1は、膝関節角度センサ16から出力される膝関節角度データにより示される膝関節部の屈曲角度θkであって、後述する膝関節部の屈曲動作の開始を示す膝屈曲開始信号を出力するための閾値角度である。より具体的に第1閾値角度θk1として例えば、膝関節部が、歩き始めの膝が伸びた状態である屈曲角度0°から少し曲がった状態(例えば屈曲角度8°となった状態)の時の当該屈曲角度が、第1閾値角度θk1として設定される。なお図6では、屈曲角度θkが第1閾値角度θk1となるタイミングをタイミングT2として示している。一方実施形態に係る歩行補助装置Sでは、膝関節部の屈曲角度θkが上記第1閾値角度θk1となったことをトリガとして、股関節部の屈曲動作の開始を示す股屈曲開始信号を出力する。
次にCPU42は、実施形態に係る膝関節部の屈曲角度θkについての第2閾値角度θk2(図6参照)を設定し、その値を上記記憶部に記憶させる。この第2閾値角度θk2は、膝関節角度センサ16から出力される膝関節角度データにより示される膝関節部の屈曲角度θkであって、後述する膝関節部の屈曲動作の終了を示す膝屈曲終了信号を出力するための閾値角度である。より具体的に第2閾値角度θk2として例えば、膝関節角度データの値が上記ピーク箇所θkpとなる上記タイミングT4の直前のタイミングT3における膝関節部の屈曲角度θkが、第2閾値角度θk2として設定される。また実施形態に係る歩行補助装置Sでは、膝関節部の屈曲角度θkが上記第2閾値角度θk2となったことをトリガとして、股関節部の屈曲動作の終了を示す股屈曲終了信号を出力する。
次にCPU42は、実施形態に係る股関節部の伸展動作の開始を示す股伸展開始信号を出力するためのタイミングT5を設定する。このタイミングT5は、上記タイミングT4から時間t4だけ遅延させたタイミングである。
なお上記第1閾値角度θk1及び第2閾値角度θk2並びに上記時間t4それぞれの具体的な値は、患者60の個癖等により異なってくるため、患者60本人又は理学療法士等により、その患者60に合わせて経験的に設定されるのが望ましい。この場合、各閾値角度及び時間t4は操作部41を介して設定/変更が可能とされている。
次に歩行補助装置Sは、上記ステップS6において設定された各閾値角度及び時間t4に基づき、駆動信号を用いたDCモータ50の制御パターンにおいて、実施形態に係る上記膝屈曲開始信号、上記膝屈曲終了信号、上記膝伸展開始信号及び上記膝伸展終了信号を、それぞれ設定する(ステップS7)。なおこの場合の膝伸展終了信号は、実施形態に係る膝関節部の(継続中の)伸展動作を終了させるための信号であって、図6に例示するタイミングT8において出力される信号である。
次に歩行補助装置Sは、膝関節制御用の駆動信号の制御パターンを生成する(ステップS8)。具体的にCPU42は、膝関節部を動作させるDCモータ50におけるPWM(Pulse Width Modulation)のデューティ比Np及びその駆動電流Nvが、それぞれ図6に示すように時間軸に沿って変化するように当該DCモータ50を駆動するための上記駆動信号を生成する。そしてCPU42は、生成された制御パターン(駆動信号)を、上記図示しない記憶部に記憶する。
次に歩行補助装置Sは、上記ステップS6乃至ステップS8の処理に基づき、駆動信号を用いたDCモータ50の制御パターンにおいて、実施形態に係る上記股屈曲開始信号、上記股屈曲終了信号、上記股伸展開始信号及び上記股伸展終了信号を、それぞれ設定する(ステップS9)。より具体的にCPU42は、股屈曲開始信号については上述したように、膝関節部の屈曲角度θkが上記第1閾値角度θk1となったことをトリガとして出力されるように当該股屈曲開始信号を設定する。またCPU42は、股屈曲終了信号については上述したように、膝関節部の屈曲角度θkが上記第2閾値角度θk2となったことをトリガとして出力されるように当該股屈曲終了信号を設定する。更にCPU42は、股伸展開始信号については上述したように、上記タイミングT4から時間t4だけ遅延させたタイミングT5において出力されるように、股関節部の屈曲角度θHに基づいて当該股伸展開始信号を設定する。最後にCPU42は、股伸展終了信号については、踵の着床時であるタイミングT7において出力されるように当該股伸展終了信号を設定する(図6参照)。
次に歩行補助装置Sは、股関節制御用の駆動信号の制御パターンを生成する(ステップS9A)。具体的にCPU42は、股関節部を動作させるDCモータ50におけるPWMのデューティ比Cp及びその駆動電流Cvが、それぞれ図6に示すように時間軸に沿って変化するように当該DCモータ50を駆動するための上記駆動信号を生成する。そしてCPU42は、生成された制御パターン(駆動信号)を、上記図示しない記憶部に記憶する。
次に、歩行補助装置Sにおける制御時の動作について、図7を用いて説明する。
歩行補助装置Sにおける制御時の動作においてCPU42は、駆動信号の制御パターンを上記記憶部から読み出し(ステップS10)、その制御パターンに従い、歩行補助装置Sを装着した患者60の動作を補助する。
即ちCPU42は、動作の補助が開始されると、例えば、患者60の片方の脚(例えば、右脚)の中敷センサ17のデータLHが上記ON閾値以上となったか否かを監視している(ステップS11)。ステップS11の監視において当該データLHがON閾値以上となっていない場合(ステップS11;NO)、CPU42はそのまま監視を継続し、患者が右脚を上げることで右足駆動系Rの中敷センサ17のデータLHがON閾値以上になったとき(ステップS11;YES)、CPU42は、駆動信号の制御パターンに従い、PWMのデューティ比を一定値(例えば+30%)として右足駆動系RのDCモータ50を正転のアイドリング(空転)状態とする(ステップS12)。これと並行してCPU42は、膝関節角度センサ16からの屈曲角度θkを示す膝関節角度データ及び股関節角度センサ15からの屈曲角度θHを示す股関節角度データのモニタを開始する(ステップS12)。
次にCPU42は、上記膝関節角度データの値が上記第1閾値角度θk1となったか否かを監視する(ステップS13)。ステップS13の監視において膝関節角度データの値が第1閾値角度θk1となっていない間(ステップS13;NO)、CPU42は引き続き当該監視を継続する。一方ステップS13の監視において膝関節角度データの値が第1閾値角度θk1となった場合、即ち上記タイミングT2が到来した場合(ステップS13;YES)、CPU42は、上記駆動信号に対応する膝屈曲開始信号及び股屈曲開始信号をそれぞれDCモータ50に出力し、これにより当該駆動信号に従ってDCモータ50が正転し始める(ステップS14)。そして、ギア部52及びクラッチ部51を介して、リンク機構部3に駆動力が伝達し、患者60の右脚の膝及び股が屈曲され始める。
次にCPU42は、駆動信号に従ったDCモータ50の駆動中において、上記膝関節角度データの値が上記第2閾値角度θk2となったか否かを監視する(ステップS15)。ステップS15の監視において膝関節角度データの値が第2閾値角度θk2となっていない間(ステップS15;NO)、CPU42は引き続きDCモータ50の駆動を継続する。一方ステップS15の監視において膝関節角度データの値が第2閾値角度θk2となった場合、即ち上記タイミングT3が到来した場合(ステップS15;YES)、CPU42は上記駆動信号に対応する膝屈曲終了信号及び股屈曲終了信号をそれぞれDCモータ50に出力し、これにより当該駆動信号に従ってDCモータ50の回転数が正転のまま落ち始める(ステップS16)。そして、患者60の右脚の膝にかかる駆動力が減少し始める。その後CPU42は、例えば膝関節角度データの値が上記ピーク箇所θkpとなる上記タイミングT 4 においてPWMのデューティ比を0として膝関節部及び股関節部の屈曲動作を完全に終了させる。
次にCPU42は、上記膝関節角度データの値が上記ピーク箇所θkpとなったか否かを監視する(ステップS17)。ステップS17の監視において膝関節角度データの値がピーク箇所θkpとなっていない間(ステップS17;NO)、CPU42は引き続き当該監視を継続する。一方ステップS17の監視において膝関節角度データの値がピーク箇所θkpとなった場合、即ち上記タイミングT4が到来した場合(ステップS17;YES)、CPU42は、上記駆動信号に対応する膝伸展開始信号をDCモータ50に出力し、これにより当該駆動信号に従ってDCモータ50が逆転し始める(ステップS18)。そして、ギア部52及びクラッチ部51を介して、リンク機構部3に駆動力が伝達し、患者60の右脚の膝が伸展され始める。
次にCPU42は、駆動信号に従ったDCモータ50の駆動中において、股関節部の屈曲角度θHがタイミングT4に対応する当該股関節部の屈曲角度に至ったのち上記時間t4が経過したか否か、即ち上記タイミングT5が到来したか否かを監視する(ステップS19)。ステップS19の監視においてタイミングT5が到来していない間(ステップS19;NO)、CPU42は引き続き当該監視を継続する。一方ステップS19の監視においてタイミングT5が到来した場合(ステップS19;YES)、CPU42は、上記駆動信号に対応する股伸展開始信号をDCモータ50に出力し、これにより当該駆動信号に従ってDCモータ50が回転し始める(ステップS20)。そして、ギア部52及びクラッチ部51を介して、リンク機構部3に駆動力が伝達し、患者60の右脚の股が伸展され始める。
次にCPU42は、駆動信号に従ったDCモータ50の駆動中において、中敷センサ17のデータLHが上記OFF閾値以下となったか否か(即ち、上記タイミングT7が到来したか否か)を監視している(ステップS21)。ステップS21の監視において当該データLHがOFF閾値以下となっていない場合(ステップS21;NO)、CPU42はそのまま監視を継続し、患者60が右脚を床面65に着けることで右足駆動系Rの中敷センサ17のデータLHがOFF閾値以下になったとき(ステップS21;YES)、CPU42は、上記駆動信号に対応する股伸展終了信号をDCモータ50に出力し、これにより当該駆動信号に従ってDCモータ50の回転数が逆転のまま落ち始める(ステップS22)。そして、患者60の右脚の股にかかる駆動力が減少し始め、股関節部の伸展動作が終了する。なおこの間でも、膝関節部に対する伸展動作は継続されている。
次にCPU42は、駆動信号に従ったDCモータ50の駆動により膝関節部の伸展動作の継続中において、中敷センサ17のデータLHが再度上記ON閾値以上となったか否か(即ち、上記タイミングT8が到来したか否か)を監視している(ステップS23)。ステップS23の監視において当該データLHがON閾値以上となっていない場合(ステップS23;NO)、CPU42はそのまま監視を継続し、患者60が右脚を上げることで右足駆動系Rの中敷センサ17のデータLHが再度ON閾値以上になったとき(ステップS23;YES)、CPU42は、上記駆動信号に対応する膝伸展終了信号をDCモータ50に出力し、これにより当該駆動信号に従ってDCモータ50の回転数が逆転のまま落ち始め(ステップS24)、膝関節部の伸展動作が終了する。
その後CPU42は、例えば操作部41における操作等を確認することにより右脚についての補助を終了するか否かを判定し(ステップS25)、継続する場合は(ステップS25;NO)上記ステップS13の処理に移行し、終了する場合は(ステップS25;YES)そのまま当該補助を終了させる。
なお、左足駆動系Lが装着されている場合には、歩行補助装置Sは、左足駆動系Lに関しても同様の制御を行う。
以上説明したように、実施形態に係る歩行補助装置Sの制御動作によれば、膝関節部のピーク箇所θkpに対応した股関節部の屈曲角度に対応したタイミングから股関節部における伸展動作の補助を開始するので、補助すべき患者60の運動に対応した状態で股関節の伸展動作を補助することができる。
また、駆動ユニット10等が装着されている脚の踵が床面65に着いたことが検出されたタイミングに対応したタイミングT7において股関節部における伸展動作の補助を終了するので、患者60の運動により対応した状態で股関節の伸展動作を補助することができる。このとき、当該踵が床面65についたことが検出されたタイミングにおいて股関節部における伸展動作の補助を終了する場合は、患者60の運動により対応した状態で股関節の伸展動作を補助することができる。
更に、当該脚の膝関節部における屈曲動作の補助が開始されるタイミングに対応するタイミングにおいて股関節部における屈曲動作の補助が開始されるので、患者60の運動により対応した状態で股関節の屈曲動作を補助することができる。このとき、当該膝関節部における屈曲動作の補助が開始されるタイミングにおいて股関節部における屈曲動作の補助が開始する場合は、患者60の運動により対応した状態で股関節の屈曲動作を補助することができる。
更にまた、当該脚の膝関節部における屈曲動作の補助が終了されるタイミングに対応するタイミングにおいて股関節部における屈曲動作の補助が終了されるので、患者60の運動により対応した状態で股関節の屈曲動作を補助することができる。このとき、当該膝関節部における屈曲動作の補助が終了されるタイミングにおいて股関節部における屈曲動作の補助が終了される場合は、患者60の運動により対応した状態で、股関節の屈曲動作を補助することができる。
また、当該脚の踵が床面60に着いていることが検出されている期間に対応した期間において膝関節部の伸展動作の補助を継続するので、いわゆる膝折れを防止して安全に患者60の運動を補助することができる。
なお上述した実施形態では、図6に示すタイミングT7において股関節部の伸展動作を終了させることとしたが、これ以外に、股関節角度センサ15からの屈曲角度θHを示す股関節角度データの変化率が所定の閾値以上である期間については股関節部の伸展動作の補助を継続し、当該変化率が下がった以降、漸次、当該補助を終了させるように構成することもできる。
また上述した実施形態では、膝疾患を有する患者60の回復訓練等としての歩行を補助する歩行補助装置Sに対して本発明を適用した場合について説明したが、これ以外に、回復訓練等との一環としての駆け足等の移動を補助する移動補助装置に対して本発明を適用することもできる。
また、患者60のいずれか一方の脚に装着されている駆動ユニット10(11)による一歩分の補助動作の終了後に、患者60のいずれか他方の脚に装着されている駆動ユニット10(12)による次の一歩分の補助動作を開始するように、各駆動ユニット10を制御するようにしてもよい。この場合には、患者60のいずれか一方の脚に装着されている駆動ユニット10による一歩分の補助動作の終了後に、いずれか他方の脚に装着されている駆動ユニット10による次の一歩分の補助動作を開始するので、両脚の駆動ユニット10が同時に補助動作を開始することに起因して患者60に発生する危険性を回避することができる。
更に、図4及び図7に示すフローチャートに対応するプログラムをフレキシブルディスク、コンパクトディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、又はインターネット等のネットワークを介して取得して記憶しておき、それを汎用のマイクロコンピュータで読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータを実施形態に係るCPU42として動作させることも可能である。