JP6093757B2 - 医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、腫瘍溶解性エンテロウイルスを含有する医薬組成物に関する。
悪性腫瘍は、日本人の死因の第1番目であり、統計上は国民の3人に1人が悪性腫瘍を原因として死亡している。長年の努力により、悪性腫瘍に対する手術療法、放射線療法、分子標的薬を含む化学療法の進歩は著しく、治療成績は向上している。しかし、悪性腫瘍による死亡率は依然として高く、悪性腫瘍に有効な新たな治療方法が望まれている。
新たな治療方法として、腫瘍溶解性ウイルス療法が直接的な殺細胞効果を有する点で注目されてきている。例えば、DNAウイルスである腫瘍溶解性アデノウイルスや単純ヘルペスウイルスを用いた臨床研究が脳腫瘍や乳癌を対象として実施されており、安全性と有効性を示唆する結果が報告されている。
また、RNAウイルスであるピコルナウイルス科のエンテロウイルスは、感染後に宿主細胞のゲノムへの組み込みがなく遺伝子変異による癌化リスクが低いことに加え、癌遺伝子を有していないため安全性が高い。また、エンテロウイルスは、細胞内での増殖速度が速いため、迅速かつ高い抗腫瘍効果が期待できる。
例えば、特許文献1には、エンテロウイルスであるコクサッキーウイルス(CV)A21型、エコーウイルス(EV)6型、EV7型、EV11型、EV12型、EV13型、EV29型を用いた腫瘍溶解性ウイルス療法が開示されている。また、特許文献2には、CVA13型、CVA15型、CVA18型、CVA21型、EV1型、EV7型、EV8型、EV22型を用いた腫瘍溶解性ウイルス療法が開示されている。
特表2007−527719号公報 特開2012−46489号公報
Kelly EJ et al. Engineering microRNA responsiveness to decrease virus pathogenicity, Nat Med, 2008, 14, 1278−1283 Trallero G et al. Enteroviruses in Spai over the decade 1998−2007: virological and epidemiogical studies, J Clin Virol, 2010, 47, 170−176
しかしながら、CVA21型は、投与したマウスが重篤な筋炎を発症し、高い致死性を示すとの報告がある(非特許文献1参照)。また、EV6型、EV11型等は、無菌性髄膜炎の原因ウイルスとして報告されている(非特許文献2参照)。さらに、上記エンテロウイルスを用いた腫瘍溶解性ウイルス療法には、臨床試験において安全性が確認されたものが未だにない。これらのことから、エンテロウイルスを用いた腫瘍溶解性ウイルス療法は、確実に安全であるとは言い難い。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、より安全性の高いエンテロウイルスを含む医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、より安全性の高いエントロウイルスを同定すべく、30種類以上のエンテロウイルス及び多種類のヒト悪性腫瘍細胞株を用いたスクリーニング実験を行った結果、これまでに報告されていないEV4型及びCVA11型が高い細胞傷害性を示すことを明らかにした。両ウイルスは、無菌性髄膜炎の患者から検出されることがあるが、その頻度は検出された全ウイルスの1.0%以下であって、EV6型及びEV11型等の他のEVと比較して非常に低く、安全性が高いウイルスと考えられる。
すなわち、本発明の第1の観点に係る医薬組成物は、
癌細胞に感染するコクサッキーウイルスA11型又は癌細胞に感染するエコーウイルス4型を含む。
この場合、前記コクサッキーウイルスA11型及びエコーウイルス4型は、
カプシドが除去された、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
フォスフォイノシトール3キナーゼ阻害剤と併用される、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
MAPキナーゼキナーゼ阻害剤と併用される、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
抗癌剤と併用される、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
CDDP抵抗性の癌の治療に使用される、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
前記コクサッキーウイルスA11型を含み、
ゲフィチニブ抵抗性又はオキサリプラチン抵抗性の癌の治療に使用される、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
前記コクサッキーウイルスA11型を含み、
前記癌細胞は、癌幹細胞である、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
前記コクサッキーウイルスA11型を含み、
前記癌細胞は、
小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、悪性中皮腫、大腸癌、結腸直腸癌、食道癌、下咽頭癌、ヒトBリンパ腫、乳癌及び子宮頸癌からなる群から選択される癌の癌細胞である、
こととしてもよい。
また、上記医薬組成物は、
前記エコーウイルス4型を含み、
前記癌細胞は、
小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大腸癌、結腸直腸癌、膵癌及び食道癌からなる群から選択される癌の癌細胞である、
こととしてもよい。
本発明の第2の観点に係る医薬組成物は、
癌細胞に感染するコクサッキーウイルスA11型に由来する核酸又は癌細胞に感染するエコーウイルス4型に由来する核酸を含む。
本発明によれば、ヒトに対する病原性が低いCVA11型又はEV4型を含むため、エンテロウイルスを用いた医薬組成物の安全性をより高めることができる。
食道癌の細胞株に対するEV4型の細胞傷害性を示す図である。 各種阻害剤存在下での食道癌の細胞株に対するEV4型の細胞傷害性を示す図である。 MEK阻害剤存在下での食道癌の細胞株に対するEV4型の細胞傷害性を示す図である。 ヒト食道癌担癌マウスの腫瘍体積に対するEV4型の効果を示す図である。 図4のヒト食道癌担癌マウスの体重を示す図である。 EV4型を投与したヒト食道癌担癌マウスの腫瘍体積の経時変化を示す図(その1)である。 図6のヒト食道癌担癌マウスの体重の経時変化を示す図である。 EV4型を投与したヒト食道癌担癌マウスの腫瘍体積の経時変化を示す図(その2)である。 図8のヒト食道癌担癌マウスの体重の経時変化を示す図である。 CDDPと併用してEV4型を投与したヒト食道癌担癌マウスの腫瘍体積の経時変化を示す図である。 ヒト食道癌担癌マウスの体重の経時変化を示す図である。 大腸癌の細胞株に対するCAV11型の細胞傷害性を示す図である。 非小細胞肺癌の細胞株に対するCAV11型の細胞傷害性を示す図である。 悪性中皮腫の細胞株に対するCAV11型の細胞傷害性を示す図である。 抗ICAM−1中和抗体存在下での大腸癌の細胞株に対するCVA11型の細胞傷害性を示す図である。 RD細胞及びICAM−1を強制発現させたRD細胞に対するCVA11型の細胞傷害性を示す図である。 オキサリプラチンで処理したWiDr及びHT29の細胞生存率、並びにWiDr及びHT29に対するCVA11型の細胞傷害性を示す図である。 大腸癌の細胞株に対するフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。 CVA11型を投与したヒト大腸癌担癌マウスの腫瘍体積の経時変化を示す図である。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1について詳細に説明する。本実施の形態に係る医薬組成物は、癌細胞に感染するCVA11型又は癌細胞に感染するEV4型を含む。CVA11型及びEV4型は、細胞表面のウイルス受容体に結合することによって、当該細胞に感染することができる。ウイルス受容体として、例えば、崩壊促進因子(DAF又はCD55)、細胞間接着分子‐1(ICAM‐1又はCD54)、インテグリンαβ(CD49b)が知られている。CVA11型及びEV4型がウイルス受容体と相互作用することで、CVA11型及びEV4型のカプシドが脱安定化される。これにより、CVA11型及びEV4型の脱外皮が誘導される。
CVA11型及びEV4型は、検体等から既知のウイルス単離方法によって単離できる。ウイルス単離方法は、例えば、遠心分離法や培養細胞によるウイルスの増殖等である。
CVA11型及びEV4型は、癌細胞への高い感染性を獲得するよう、天然に存在しているウイルスを、多数回の継代にわたって細胞株において培養することによって生物選抜してもよい。生物選抜に好適な細胞株は、DAF、ICAM‐1、インテグリンαβ等を発現する癌細胞株等である。
CVA11型及びEV4型は、天然に存在するものであってもよく、改変されたものであってもよい。例えば、CVA11型及びEV4型の改変として、CVA11型及びEV4型は、カプシドが除去されてもよい。カプシドは、例えば、キモトリプシン又はトリプシン等のプロテアーゼによる処理によって除去できる。具体的には、例えば、CVA11型又はEV4型を、アルキル硫酸塩等の界面活性剤の存在下においてキモトリプシンで処理することで、カプシドを除去できる。CVA11型及びEV4型のカプシドを除去することで、ウイルスの癌細胞への感染性を増大させることができる。また、カプシドに存在するタンパク質は宿主の体液性応答及び細胞性応答の主要な因子であるので、CVA11型及びEV4型のカプシドを除去することで、宿主の免疫応答を低下させることができる。
CVA11型又はEV4型を含む医薬組成物が対象とする癌種は、特に限定されず、固形癌及び液性癌を含む。CVA11型及びEV4型は、固形癌及び液性癌の癌細胞に対する細胞傷害性を有する。CVA11型及びEV4型による癌細胞に対する細胞傷害性は、ウイルスが癌細胞に感染し、癌細胞の細胞質で複製することによる癌細胞の溶解によるか、ウイルスの感染に起因する癌細胞内のカスパーゼの活性化によるアポトーシスによる。
CVA11型及びEV4型の癌細胞に対する細胞傷害性は、CVA11型又はEV4型に暴露された癌細胞の細胞株の生存を試験することで確認することができる。細胞株の生存を試験する方法には、例えば、固定した細胞を染色液で染色して、染色された生細胞の数を定量する方法、クリスタルバイオレット法、アポトーシス特異的なマーカーを定量する方法等がある。これらの方法を用いて、CVA11型又はEV4型とインキュベーションされた癌細胞の細胞株について、所定時間後に生存している癌細胞を定量することで、結果的に、CVA11型又はEV4型の感染による細胞傷害性によって、死滅した癌細胞を定量することができる。
CVA11型及びEV4型は、固形癌及び液性癌の癌細胞に対する細胞傷害性を有するが、固形癌において特に強い細胞傷害性が誘導される癌細胞は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大腸癌、結腸直腸癌及び食道癌からなる群から選択される癌の細胞である。上記医薬組成物がCVA11型を含む場合、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、悪性中皮腫、大腸癌、結腸直腸癌、食道癌、下咽頭癌、ヒトBリンパ腫、乳癌及び子宮頸癌からなる群から選択される癌の癌細胞を対象に用いられるのが好ましい。一方、上記医薬組成物がEV4型を含む場合、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大腸癌、結腸直腸癌、膵癌及び食道癌からなる群から選択される癌の癌細胞を対象に用いられるのが好ましい。
本実施の形態に係る医薬組成物は、CVA11型又はEV4型に加えて、キャリア、希釈剤又は補助剤等を含むようにしてもよい。キャリアとしては、例えば、リポソーム、ミセル等が好ましい。リポソームは、脂質と膜安定性に寄与するステロイド又はステロイド前駆体との組み合わせを含む。この場合、脂質としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシド、ガングリオシド等のホスファチジル化合物が挙げられる。リポソーム又はミセルで覆われたCVA11型及びEV4型は、宿主の免疫応答を低下させることができる。
希釈剤としては、例えば、脱塩水、蒸留水及び生理的食塩水等が挙げられる、また、補助剤としては、植物系オイル、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール及び脂肪酸エステル等が挙げられる。
本実施の形態に係る医薬組成物は、種々の方法で投与することができる。例えば、癌種に応じて腫瘍内投与、静脈投与、腹腔内投与等で当該医薬組成物を投与することが好ましい。特に、食道癌、大腸癌等の消化器癌の多くは、内視鏡等で腫瘍組織を視認しながら、医薬組成物を腫瘍組織に直接注射できる。この場合、内視鏡等で注射した部位を確認できるため、出血しても対処しやすいという利点もある。なお、当該医薬組成物は、経口投与でもよいし、筋肉、皮下、直腸、膣 、鼻腔等を介して投与してもよい。経口投与の場合、当該医薬組成物は、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、コーティング剤、保存剤等を含有してもよい。
本実施の形態に係る医薬組成物は、CVA11型又はEV4型が、癌を治療するのに十分な量となるように投与される。投与量は、患者の体重、年齢、性別、腫瘍組織の大きさ等に基づいて決定される。例えば、当該医薬組成物を液剤とする場合、CVA11型又はEV4型が液剤1mlに1×10〜1×1010プラーク形成ユニット含まれていればよい。好ましくは、CVA11型又はEV4型が液剤1mlに1×10プラーク形成ユニット以上含まれていればよい。当該医薬組成物は、単回で投与してもよいし、複数回で投与してもよい。また、当該医薬組成物は、徐放製剤として持続的に投与してもよい。
本実施の形態に係る医薬組成物は、フォスフォイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤と併用されてもよい。PI3K阻害剤は、イノシトールリン脂質のイノシトール環3位のヒドロキシル基をリン酸化する酵素の活性を阻害する。下記実施例に示すように、CVA11型及びEV4型は、PI3K阻害剤と併用されることで、癌細胞に対する細胞傷害性が増強される。PI3K阻害剤として、複数の化合物が開発されており、市販されているものを用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
また、本実施の形態に係る医薬組成物は、MAPキナーゼキナーゼ阻害剤と併用されてもよい。MAPキナーゼキナーゼ阻害剤は、細胞内シグナル伝達系でGタンパク質の下流にあるMAPキナーゼをリン酸化する酵素の活性を阻害する。下記実施例に示すように、CVA11型及びEV4型は、MEK阻害剤(MAPキナーゼキナーゼ阻害剤)と併用されることで、癌細胞に対する細胞傷害性が増強される。MAPキナーゼキナーゼ阻害剤として、複数の化合物が開発されており、市販されているものを用いてもよいし、合成したものを用いてもよい。
併用されるPI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤は、種々の方法で投与することができる。例えば、癌種に応じて腫瘍内投与、静脈投与、腹腔内投与等で当該医薬組成物を投与することが好ましい。併用されるPI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤の投与量は、患者の体重、年齢、性別、腫瘍組織の大きさ等に基づいて決定される。例えば、PI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤のそれぞれ投与量は、患者の性別、年齢、体重、症状等によって適宜決定される。静脈注射の場合、投与量は、成人一日あたり0.0001mg/kg乃至100mg/kgである。この場合、PI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤は、それぞれ1回、あるいは複数回に分けて投与されてもよく、複数回の投与においては、連続して投与されてもよい。また、経口投与の場合、PI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤それぞれの投与量は、成人一日あたり0.001mg/kg乃至1000mg/kgである。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもできる。
本実施の形態に係る上記医薬組成物は、抗癌剤と併用されてもよい。抗癌剤は、特に限定されないが、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、悪性中皮腫、大腸癌、結腸直腸癌、食道癌、下咽頭癌、ヒトBリンパ腫、子宮頸癌及び膵癌等の治療に用いられるものが望ましい。具体的には、抗癌剤は、CDDP(シスプラチン)、ゲフィチニブ、オキサリプラチンなどである。
また、本実施の形態に係る上記医薬組成物は、CDDP抵抗性の癌の治療に使用されてもよい。CDDP抵抗性の癌は、例えば、臨床上効果が得られる用量のCDDPを投与しても、腫瘍体積の減少、増大の抑制又は当該癌に関連する状態の改善等が見られない癌である。CDDP抵抗性の癌の種類は特に限定されないが、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、悪性中皮腫、大腸癌、結腸直腸癌、下咽頭癌、ヒトBリンパ腫、子宮頸癌及び膵癌等である。特に、CDDP抵抗性の癌の種類として食道癌が好ましい。
本実施の形態に係る上記医薬組成物は、CVA11型を含む場合、ゲフィチニブ抵抗性又はオキサリプラチン抵抗性の癌の治療に使用されてもよい。ゲフィチニブ抵抗性又はオキサリプラチン抵抗性の癌の種類は、特に限定されないが、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、悪性中皮腫、大腸癌、結腸直腸癌、食道癌、下咽頭癌、ヒトBリンパ腫、乳癌及び子宮頸癌等である。
また、下記実施例に示すように、CVA11型は、癌幹細胞に対して強い細胞傷害性を示す。このため、本実施の形態に係る上記医薬組成物は、CVA11型を含む場合、特に癌幹細胞を対象にして用いられてもよい。癌幹細胞は、癌幹細胞マーカー、例えばCD133の発現を調べることで識別できる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る医薬組成物によれば、ヒトに対する病原性が低いCVA11型又はEV4型を用いるため、エンテロウイルスを用いた医薬組成物の安全性をより高めることができる。
また、本実施の形態におけるCVA11型及びEV4型は、カプシドが除去されてもよいこととした。こうすることで、ウイルスの癌細胞への感染性を増大させることができ、宿主の免疫応答を低下させることができる。この結果、CVA11型及びEV4型の癌細胞に対する感染性、ひいては医薬組成物の癌細胞に対する細胞傷害性を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る医薬組成物は、臓器や組織に形成される固形癌に対して医薬組成物を腫瘍組織に直接投与できる。このため、CVA11型又はEV4型の癌細胞への感染性が高まり、より強力な治療効果が期待できる。
また、本実施の形態に係る医薬生成物によって強い細胞傷害性が誘導される癌細胞は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大腸癌、結腸直腸癌及び食道癌からなる群から選択される癌の細胞である。肺癌は、罹患者数が上位の癌種であるため、本実施の形態に係る医薬組成物によってより多くの肺癌患者の治療に貢献できる。大腸癌、結腸直腸癌は、欧米型食生活の定着した日本において罹患率が増加しており、死亡率も増加している。このため、本実施の形態に係る医薬組成物により、大腸癌、結腸直腸癌に対する治療薬の選択肢が増えることは患者にとって有益である。食道癌は、手術切除後の再発率が30〜50%と高く、既存の薬剤に対する感受性が低いため、本実施の形態に係る医薬組成物によって食道癌の治療成績を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る医薬組成物は、PI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤の少なくとも一方と併用してもよいこととした。当該医薬組成物は、PI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤の少なくとも一方と併用することにより、癌細胞に対する殺細胞活性が増強される。このため、癌治療において、PI3K阻害剤、MAPキナーゼキナーゼ阻害剤等の分子標的薬の導入が進められている状況において、当該医薬組成物は、分子標的薬の治療成績を高めることができる。
本実施の形態に係る医薬組成物は、抗癌剤と併用されてもよいこととした。当該医薬組成物と異なる作用機序を有する抗癌剤を併用することで、抗腫瘍効果の向上が期待できる。
また、本実施の形態に係る医薬組成物は、CDDP抵抗性、ゲフィチニブ抵抗性又はオキサリプラチン抵抗性の癌の細胞に対して強い細胞傷害性を有する。このため、これらの抗癌剤に抵抗性を示す、いわゆる難治性癌に対する有効な治療を提供することができる。
また、本実施の形態に係る医薬組成物は、CVA11型を含む場合、癌幹細胞に対しても強い細胞傷害性を示す。癌幹細胞は、癌再発の原因の1つと考えられており、癌の転移及び再発の防止に有用である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について詳細に説明する。本実施の形態に係る医薬組成物は、癌細胞に感染するCVA11型に由来する核酸又は癌細胞に感染するEV4型に由来する核酸を含む。
CVA11型に由来する核酸及びEV4型に由来する核酸は、それぞれCVA11型及びEV4型から直接単離されたウイルスRNA、合成RNA、単離されたウイルスRNAの塩基配列に対応するcDNAであってもよい。ウイルスRNAを単離するには、任意の方法を使用することができる。ウイルスRNAを単離する方法は、例えば、フェノール/クロロホルム抽出の使用に基づく方法、磁気ビーズに基づく単離を利用する方法等である。また、当該核酸は、ウイルスを生じさせるための核酸を組み込んだウイルスプラスミドや発現ベクターであってもよい。発現ベクターには、例えば、ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするDNAを発現することができるプラスミドが含まれる。発現ベクターには、挿入された核酸が機能的に連結された転写調節制御配列が含まれてもよい。ここでの転写調節制御配列は、例えば、転写を開始させるためのプロモーター、転写されたmRNAに対するリボソームの結合を可能にするための発現制御エレメント等である。
発現ベクターとしては、例えば、pSV2neo、pEF−PGk.puro 、pTk2、非複製アデノウイルスシャトルベクター、サイトメガロウイルスプロモータ等を用いることができる。ウイルスを生じさせるために必要なウイルスタンパク質をコードするcDNAは、ウイルスRNA又はそのフラグメントを逆転写することによって調製することができる。
本実施の形態に係る医薬組成物は、癌細胞に感染するCVA11型に由来する核酸又は癌細胞に感染するEV4型に由来する核酸に加えて、例えば、リポソーム等のキャリアを含むようにしてもよい。CVA11型に由来する核酸は、例えば配列番号1に示す配列を有する核酸である。EV4型に由来する核酸は、例えば配列番号2に示す配列を有する核酸である。
本実施の形態に係る医薬組成物は、種々の方法で投与することができる。例えば、癌種に応じて腫瘍内投与、静脈投与、腹腔内投与等で当該医薬組成物を投与することが好ましい。なお、当該医薬組成物は、経口投与でもよいし、筋肉、皮下、直腸、膣 、鼻腔等を介して投与してもよい。経口投与の場合、当該医薬組成物は、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、コーティング剤、保存剤等を含有してもよい。
本実施の形態にかかる医薬組成物は、癌細胞に感染するCVA11型に由来する核酸又は癌細胞に感染するEV4型に由来する核酸が、癌を治療するのに十分な量となるように投与される。投与量は、患者の体重、年齢、性別、腫瘍組織の大きさ等に基づいて決定される。例えば、当該医薬組成物を液剤とする場合、CVA11型又はEV4型の1×10〜1×1010プラーク形成ユニットに相当する核酸が液剤1mlに含まれていればよい。好ましくは、CVA11型又はEV4型の1×10プラーク形成ユニット相当以上の核酸が液剤1mlに含まれていればよい。当該医薬組成物は、単回で投与してもよいし、複数回で投与してもよい。また、徐放製剤として持続的に投与してもよい。
なお、本実施の形態に係る医薬組成物は、上記実施の形態1と同様に、PI3K阻害剤及びMAPキナーゼキナーゼ阻害剤の少なくとも一方と併用されてもよい。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る医薬組成物は、癌細胞に感染するCVA11型に由来する核酸又は癌細胞に感染するEV4型に由来する核酸を含むようにした。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)
EV4型(Du toit)の調製
EV4型は、RD細胞を用いて増殖させた。Dulbecco’s modified Eagle medium(DMEM)を用いて継代培養したRD細胞にEV4型を1時間孵置した後、培地をDMEMに置換し、細胞変性効果が始まるまで静置した。培地を除去後、培養用シャーレにOPTI-MEM Iを添加し、セルスクレーパーを用いて細胞を剥離回収した。なお、EV4型及びRD細胞は、インキュベーター内で37℃、5%CO2下で培養した。液体窒素を用いて、回収したRD細胞の凍結、融解を3回繰り返した後、4℃、3000rpmで15分間遠心を行い、上清を回収した。回収した上清(ウイルス溶液)は、−80℃で保存した。
ウイルスの感染力価(MOI)の算出
以下で用いるMOIは、以下の方法で算出した。
細胞を96穴のプレートに5×10cells/100μl/ウェルで播種し、37℃、5%Co下で5時間維持した。ウイルスは、OPTI-MEM Iで100倍又は1000倍希釈して、これをMOI測定用のウイルス原液とした(ここでの希釈倍率の常用対数をLとする)。ウイルス原液を10倍ずつ段階希釈し(ここでの希釈倍率の常用対数をdとする)、希釈系列液を調製した。次に、各ウェルに希釈系列液を0.05mlずつ添加した(添加した希釈系列液の体積をvとする)。120時間後に50%以上の細胞変性効果が認められたウェル数の合計を8で除算した値Sを算出し、MOIを以下の式で算出した。
log10(MOI)=L+d(S−0.5)+log10(1/v)
EV4型のクリスタルバイオレット法を用いたスクリーニング
クリスタルバイオレット法により、EV4型による殺癌細胞効果としての細胞傷害性を評価した。試験対象の各細胞を72時間後にコンフルエントになる密度(3×10cells/ウェル)で24穴のプレートに播種した。適切な感染力価(MOI=0.001、0.01、0.1)になるように、OPTI-MEM IでEV4型を希釈し、EV4型の希釈液を調製した。約6時間後、プレートから培地を除去し、EV4型の希釈液を各ウェルに200μl添加し、37℃、5%CO2下にプレートを1時間維持した。次に、EV4型の希釈液を除去し、各細胞用培地を各ウェルに1ml加え、72時間培養した。72時間後、リン酸緩衝食塩水(PBS)で緩やかに洗浄し、0.5%グルタルアルデヒド含有PBSを各ウェルに300μl添加した後、15分間室温に静置することで生存接着細胞を固定した。その後、グルタルアルデヒド含有PBSを除去し、PBSで洗浄後、2%エタノール及び0.1%クリスタルバイオレットを含有する滅菌水を、各ウェルに300μl添加し、室温で10分間静置することで生細胞を染色した。
染色後のプレートの各ウェルを滅菌水500μlで2回洗浄し、スキャナを用いて染色の程度を数値化した。数値化においては、青紫色に染色された細胞を生細胞として処理した。細胞の生存率(%)は、Image Gauge Software Ver. 4.1を用いて定量した生細胞の面積から算出した。細胞傷害性は、死滅した細胞、すなわち100%から生存率を減じた値で評価した。
ここでの試験対象の細胞は、小細胞肺癌(SBC−5、SBC−3)、非小細胞肺癌(H1299、H460、LK87、A549)、肺扁平上皮癌(QG95)、大腸癌(DLD−1、SW620、HT29、Lovo、Caco−2)、膵癌(BxPC3、Panc−1、MiaPaCa−2、Aspc−1)、悪性中皮腫(MSTO、H2052、H2452)、食道癌扁平上皮癌(T.Tn、TE6、TE8)、舌扁平上皮癌(HSC3、HSC4)、下咽頭癌(FaDu)及びヒト正常皮膚角質細胞(HaCaT)である。
フローサイトメトリー法によるウイルス受容体の発現量の定量
上記試験対象の細胞表面におけるCD49b、CD55の発現量を定量するため、蛍光標識した抗体と反応させた各細胞を、フローサイトメトリー法で解析した。培養された細胞を回収し、2×106cells/mlになるようにPBSに懸濁した。96穴のプレートの各ウェルに、得られた細胞懸濁液を100μlずつ分注した(2×105cells/ウェル)。4℃、2000rpmで5分間遠心後、ペレットにフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)標識抗ヒトCD49b抗体、又はフィコエリシン(PE)標識抗DAF(CD55)抗体を含む1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBSを100μlずつ添加した。暗所条件下、プレートを氷中に1時間静置し、抗体を反応させた。コントロールの細胞は、アイソタイプIgG抗体で標識した。
抗体標識後、1%BSA含有PBSで2回洗浄し、洗浄した細胞をFACS Calibur(登録商標)を使用して、CD49bとCD55の発現量を、コントロールの細胞における発現量に対する割合(%)として数値化した。データ解析には、FlowJo Software Ver 7.6を用いた。
(結果)
表1は、EV4型の癌細胞に対する細胞傷害性、CD49b及びCD55の発現量を示す。癌細胞に対する細胞傷害性は、クリスタルバイオレット法で評価した細胞傷害性が66%以上の場合を「3+」、33%以上66%未満の場合を「2+」、0%より高く33%未満の場合を「+」、0%の場合を「−」で示した。この結果、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大腸癌、膵癌のいくつかの細胞株で高い細胞傷害性を認めた。また、食道癌扁平上皮癌における全ての細胞株で、極めて低いMOI=0.001でも高い細胞傷害性を認めた。食道癌扁平上皮癌における全ての細胞株は、いずれもCD49b及びCD55の90%以上の高い発現を認めた。このことから、EV4型は、CD49b及びCD55をウイルス受容体として癌細胞に感染することが示唆された。
ヒト正常皮膚角質細胞(HaCaT)に対しては、いずれのMOIにおいても細胞傷害性が0%であった。
図1は、食道癌扁平上皮癌の細胞株(T.Tn、TE8、TE6)のクリスタルバイオレット染色後の顕微鏡像を示す。未分化型の細胞株であるT.Tn、中分化型扁平上皮癌の細胞株であるTE8、高分化扁平上皮癌の細胞株であるTE6それぞれに対して、EV4型は、MOI依存的に細胞傷害性を示した。EV4型の細胞傷害性が予後不良(難治性)とされるT.Tnに対しても示されたことから、EV4型を含む医薬組成物は、難治性の食道癌の治療に有効であることが示唆された。また、EV4型は、ヒトの正常細胞に対しては細胞傷害性を示さず、癌細胞特異的に細胞傷害性を示した。
(実施例2)
EV4型の細胞傷害性に対する各種阻害剤の影響(1)
EV4型の細胞傷害性に対する影響を検討した阻害剤は、汎カスパーゼ阻害剤としてのZ−VADfmk(R&D Systems社)、PI3K阻害剤としてのLY294002(Santa Cruz Biotechnology社)、MEK阻害剤としてのPD0325901(Wako社)、PTEN阻害剤としてのbpV(Merck社)である。
T.Tnを1×10cells/ウェルで96穴のプレートに播種し、37℃、5%CO2下にプレートを約7時間静置した。ウェル内の培地を、100μl/ウェルとなるように各阻害剤を添加した培地に置換した。各阻害剤の濃度は、Z−VADfmkが100μM、LY294002が25μM、PD0325901が0.1μM、bpVが1.0μMとした。培地を置換後、1時間37℃、5%CO下に静置した。培地を除去後、EV4型をMOI=0.1になるようOPTI-MEM Iで希釈したEV4型の希釈液100μlを各ウェルに添加し、1時間37℃、5%CO下に静置した。次に、EV4型の希釈液を除去し、各阻害剤入りのRPMI培地をそれぞれ各ウェルに添加し、共培養した。共培養開始から4日後、光学顕微鏡にて各ウェルを撮影した。なお、各阻害剤の濃度は、T.Tnに対する細胞傷害性を示さないと考えられる濃度とした。
(結果)
図2は、T.Tnに対するEV4型(DMSO、MOI=0.1)のみ、EV4型とアポトーシス阻害剤としての汎カスパーゼ阻害剤(Z−VADfmk)の併用、EV4型とPI3K阻害剤(LY294002)の併用、EV4型とMEK阻害剤(PD0325901)の併用、EV4型とPI3Kを阻害することが知られるPTEN阻害剤(bpV)の併用において、感染4日後の細胞傷害性に対する影響を顕微鏡像により示した図である。EV4型による細胞傷害性は、アポトーシス阻害剤及びPI3Kを阻害することが知られるPTEN阻害剤により減弱された。また、EV4型による細胞傷害性は、PI3K阻害剤及びMEK阻害剤により増強された。
したがって、カスパーゼ依存性アポトーシス及びPI3K/Akt、MEK/ERK細胞増殖シグナル伝達系はEV4型による細胞傷害性(EV4の食道癌細胞内増殖機構)に関与することが示唆された。これにより、EV4型を含む医薬組成物は、近年固形癌治療の臨床試験で使用されている新規分子標的薬PI3K(Akt)あるいはMEK阻害剤(MAPキナーゼキナーゼ阻害剤)との併用によって、その抗腫瘍効果が増強されることが強く示唆された。
(実施例3)
EV4型の細胞傷害性に対する各種阻害剤の影響(2)
EV4型の細胞傷害性に対するMEK阻害剤PD0325901の影響をより定量的に検討した。
TE8を1×10cells/ウェルで96穴のプレートに播種し、37℃、5%CO2下にプレートを6時間静置した。ウェル内の培地を、50nMのPD0325901のDMSO溶液を含む培地に置換した。培地を置換後、1時間37℃、5%CO下に静置した。培地を除去後、EV4型をMOI=1.0になるようOPTI-MEM Iで希釈したEV4型の希釈液100μlを各ウェルに添加し、1時間37℃、5%CO下に静置した。なお、対照には、EV4型を含まない希釈液100μlを加えた。次に、希釈液を除去し、PD0325901を含む培地をそれぞれ各ウェルに添加し、共培養した。共培養開始から48時間後、プロメガ社のCellTiter−Glo(商標)キットを用いて生細胞を定量した。
(結果)
図3は、対照及びEV4型を感染させたTE8の細胞生存率を示す。PD0325901を作用させることで、EV4型によるTE8の殺細胞効果が有意に増強された。
このことからも、EV4型を含む医薬組成物は、MEK阻害剤との併用によって、その抗腫瘍効果が増強されることが強く示唆された。
(実施例4)
EV4型のin vivo抗腫瘍効果の評価(1)
実施例1で確認したEV4型の癌細胞に対する細胞傷害性による腫瘍退縮能を、ヒト食道癌扁平上皮癌の細胞株TE8による担癌ヌードマウスを用いて検討した。TE8をPBSで洗浄し、1.0×10cells/mlになるようにOPTI−MEM Iに懸濁した。 6−8週齢のBALB/cヌードマウスの右側腹部にTE8を含む懸濁液を、100μlずつ27G針を用いて皮下注射した。マウスは非投与群と3つのEV4型投与群に無作為に分配した。腫瘍の長径及び短径は、ノギスを用いて測定した。腫瘍長径が4mm前後になって腫瘍がマウスに定着したのを確認して、50μlのOPTI−MEM Iに懸濁したEV4型溶液を腫瘍内に1回投与した。各EV4型投与群に対して投与したEV4型の感染価は、1.0×10、1.0×10、1.0×10TCID50とした。TCID50は、ヒト横紋筋肉腫の細胞であるRD細胞を用いて、ウイルス感染の5日後に評価した。非投与群に対しては、右側腹部にEV4型を含まないOPTI−MEM Iを、EV4型投与群と同量投与した。EV4型投与4日後、各EV4型投与群の腫瘍体積及び体重を測定した。なお、腫瘍体積は、長径×短径×短径×0.5で算出した。
(結果)
図4は、非投与群の腫瘍体積に対する各EV4型投与群の腫瘍体積の相対値を示す。EV4型を投与したマウスでは、非投与群と比較して、EV4型の用量依存的に腫瘍体積の増加が有意に抑制された。また、図5は、非投与群及び各EV4型投与群の体重を示す。この結果、EV4型投与群において有意な体重減少を認めなかった。この時点での体重減少は、有害事象を示唆するため、体重減少を認めないことは、EV4型投与による明らかな有害事象を認めなかったといえる。この点は、致死性の重篤な有害事象が認められたエンテロウイルスCVA21型と異なっており、EV4型の安全性を裏付けるものである。
(実施例5)
EV4型のin vivo抗腫瘍効果の評価(2)
EV4型の癌細胞に対する細胞傷害性による腫瘍退縮能を、TE8による担癌ヌードマウスを用いてさらに検討した。TE8をPBSで洗浄し、OPTI−MEM Iに懸濁した。ヌードマウスの右側腹部に、2.0×10cells/投与になるようにTE8を、27G針を用いて皮下接種した。ノギスで測定した腫瘍長径が4mm以上になったのを確認して(0日目)、50μlのOPTI−MEM Iに懸濁したEV4型溶液を、1×10TCID50/投与となるように1日1回、計10回腫瘍内に投与した。なお、対照には、同量のOPTI−MEM Iを投与した。腫瘍退縮能の感染価に対する依存性を検討するため、同様の実験に5×10TCID50/投与群を加えて行った。評価項目は、上記実施例4と同様に腫瘍体積と体重とした。また、有害事象の有無を確認した。
(結果)
図6は、腫瘍体積の経時変化を示す。対照と比較して、EV4型を投与したマウスでは、腫瘍体積の増大の抑制が見られた。EV4型を投与したマウスの腫瘍体積は、最初のEV4型投与後18日目において対照の50%程度にしかならず、有意な腫瘍退縮能を示した。この実験におけるマウスの体重の経時変化を図7に示す。対照と同じように体重が維持され、重篤な有害事象は見られなかった。
2種類の感染価のEV4型を投与したときの腫瘍体積の経時変化を図8に示す。EV4型投与群は、EV4型による腫瘍体積の増大の抑制には、感染価依存性が見られた。この実験におけるマウスの体重の経時変化を図9に示す。感染価を高めてEV4型を投与しても、対照と同じように体重が維持され、重篤な有害事象は見られなかった。
以上のことから、EV4型は、複数回投与しても比較的長期間に渡って安全性が高く、抗腫瘍効果を発揮することが示された。
(実施例6)
CDDP抵抗性腫瘍に対するEV4型のin vivo抗腫瘍効果の評価
食道癌の化学療法で用いられるCDDP(シスプラチンともいう)に抵抗性を示すTE8担癌ヌードマウスに対するEV4型の腫瘍退縮能を検討した。TE8を実施例5と同様にヌードマウスに接種し(0日目)、腫瘍長径が4mm以上になったのを確認して、生理食塩水に溶解したCDDPを125μg/投与で腹腔内に投与した(2日目)。なお、未治療群には、同量の生理食塩水を投与した。TE8の接種後8日目から、さらに50μlのOPTI−MEM Iに懸濁したEV4型溶液を1×10TCID50/投与又は5×10TCID50/投与で1日1回、計5回腫瘍内に投与した。なお、未治療群及びCDDP投与群には、同量のOPTI−MEM Iを投与した。評価項目は、上記実施例4と同様に腫瘍体積と体重とした。
(結果)
図10は、腫瘍体積の経時変化を示す。CDDP投与群は、8日間、腫瘍体積の増大を抑制したものの、その後腫瘍体積の増大が見られた。このようにCDDPに抵抗性を示すTE8担癌ヌードマウスに対して、1×10TCID50及び5×10TCID50のEV4型を投与したマウスは、対照及びCDDP投与群それぞれと比較して、どちらも有意に腫瘍体積の増加を抑制し、CDDP抵抗性腫瘍に対して抗腫瘍効果を示した。
図11は、TE8担癌ヌードマウスの体重の経時変化を示す。EV4を投与しても体重は維持され、重篤な有害事象は見られなかった。
以上のことから、EV4型は、抗癌剤抵抗性の腫瘍に対して、高い安全性のもとで、抗腫瘍効果を発揮することが示された。また、EV4型は、CDDPなどの抗癌剤と併用することで抗癌剤抵抗性の腫瘍に対して強力な抗腫瘍効果を発揮することが示された。
(実施例7)
CVA11型のクリスタルバイオレット法を用いたスクリーニング(1)
実施例1と同様にCVA11型による殺癌細胞効果としての細胞傷害性を評価した。試験対象の細胞は、小細胞肺癌(SBC−5、SBC−3)、非小細胞肺癌(H1299、H460、LK87、A549)、肺扁平上皮癌(QG95)、大腸癌(DLD−1、SW620、Lovo、Caco−2)、悪性中皮腫(MSTO、H2052、H2452、H28)、食道癌扁平上皮癌(T.Tn、TE6、TE8)、舌扁平上皮癌(HSC3、HSC4)、下咽頭癌(FaDu)、喉頭癌(Hep2)、ヒトBリンパ腫(Daudi)である。
フローサイトメトリー法によるウイルス受容体の定量
上記試験対象とした細胞表面におけるCD54、CD55の発現量を定量するため、蛍光標識した抗体と反応させた各細胞を、上記実施例1と同様にフローサイトメトリー法で解析した。CD54の検出には、アロフィコシアニン(APC)標識抗ヒトICAM−1(CD54)抗体を用いた。なお、Daudiに関しては、ウイルス受容体の定量の対象外とした。
(結果)
表2は、CVA11型の細胞傷害性、CD54及びCD55の発現量を示す。非小細胞肺癌の細胞株H1299、H460に対してMOI=0.001以上で強い細胞傷害性を認めた。A549に対しては、MOI=0.1で強い細胞傷害性を認めた。一方、大腸癌の全ての細胞株に対してMOI=0.1において強い細胞傷害性を認め、SW620に対しては、MOI=0.001でも強い細胞傷害性を認めた。また、LoVoに対しては、MOI=0.01でも強い細胞傷害性を認めた。食道癌扁平上皮癌の細胞株TE6、TE8に対しては、MOI=0.01で強い細胞傷害性を認めた。その他、小細胞肺癌の細胞株SBC−3、悪性中皮腫の細胞株MSTO及びH2052、下咽頭癌の細胞株FaDu、ヒトBリンパ腫の細胞株Daudiに対しても細胞傷害性を認めた。
また、CD54の発現の低い細胞(SBC−5、LK87、QG95、H28、Hep2)では細胞傷害性を認めず、ICAM−1がCVA11型のウイルス受容体のひとつであることが示唆された。
図12は、大腸癌の細胞株(Caco−2、DLD−1及びSW620)の染色後の顕微鏡像を示す。これらの細胞株全てにおいて、MOI依存的に細胞傷害性を認めた。注目すべきは、p53やk−RASの変異があり、標準治療抵抗性株として知られるSW620に対して、最も高い細胞傷害性を示したことである。このことから、CVA11型を含む医薬組成物は、治療抵抗性の大腸癌に有効であることが示唆された。
図13は、非小細胞肺癌(H1299、H460、LK87、A549)及び肺扁平上皮癌(QG95)の染色後の顕微鏡像を示す。CVA11型による細胞傷害性を認めたH1299、H460及びA549において、MOI依存的に細胞傷害性を認めた。
図14は、悪性中皮腫(MSTO、H2052、H2452、H28)の染色後の顕微鏡像を示す。CVA11型による細胞傷害性を認めたMSTO及びH2052において、MOI依存的に細胞傷害性を認めた。
(実施例8)
CVA11型の感染機序の検討
(大腸癌の細胞株に対するCVA11型による細胞傷害性への抗ICAM−1中和抗体の影響)
大腸癌細胞株(DLD−1及びSW620)を3×10cells/ウェルで48穴のプレートに播種した。プレートから培地を除去後、各細胞用の培地で希釈した抗ヒトICAM−1抗体(R&D Systems社)溶液10μg/mlを添加した。1時間後、培地を除去後、MOI=0.001となるようにOPTI-MEM Iで希釈したCVA11型希釈液を、各ウェルに100μl添加し、37℃、5%Co下で1時間維持した。感染後、CVA11型希釈液を除去し、各細胞用の培地を対応するウェルに1ml添加し、37℃、5%CO2下で12時間培養した。培養後、光学顕微鏡にて各ウェルを撮影した。なお、DLD−1及びSW620に対する培地は、それぞれRPMI+10%FBS、DMEM+10%FBSとした。
(ICAM−1強制発現実験)
ICMA−1を発現していないRD細胞又はプラスミドを用いた遺伝子導入法によりICAM−1遺伝子を導入した細胞RD−ICAM−1を、24穴プレートに3×10cells/ウェルで播種した。10%FBSを含むDMEM培地で6時間培養後、OPTI-MEM Iに希釈したCVA11型を各MOIで1時間、感染培養した。3日後にクリスタルバイオレット法により細胞傷害性を評価した。なお、フローサイトメトリー法を用いて、RD−ICAM−1におけるICAM−1の発現を確認した。
(結果)
図15は、培養後に撮影した大腸癌の細胞株(SW620及びDLD-1)の光学顕微鏡画像を示す。CVA11型のみでは、両細胞株ともにMockと比較して、細胞数が減少しており、明らかなCPE(Cytopathic Effect)を伴う細胞傷害性を認めた。一方、抗ICAM−1中和抗体の存在下では、CVA11型による細胞傷害性が消失した。
図16は、ICAM−1強制発現実験におけるRD細胞及びRD−ICAM−1のクリスタルバイオレット染色後の顕微鏡像を示す。ICAM−1を発現していないRD細胞では、細胞傷害性を示さなかったのに対して、ICAM−1を発現させたRD−ICAM−1では、強い細胞傷害性が見られた。
以上により、ICAM−1は、CVA11型の感染に関与するウイルス受容体の1つであることが示された。
従って、ICAM−1が、CVA11型のウイルス受容体であることが証明され、ICAM−1はCVA11型による細胞傷害性に重要である。このため、CVA11型は、癌細胞の中でも特にICAM−1を発現する細胞に対して強い細胞傷害性を発揮することが示唆された。
(実施例9)
CVA11型のクリスタルバイオレット法を用いたスクリーニング(2)
実施例7と同様にクリスタルバイオレット法を用いて、CVA11型による殺癌細胞効果としての細胞傷害性を評価した。ただし、本実施例では、試験対象の各細胞を、当該細胞の大きさ及び増殖速度を勘案して、2×10〜2×10cells/ウェルで播種した。約6時間後、プレートから培地を除去し、EV4型の希釈液を各ウェルに200μl添加し、37℃、5%CO2下にプレートを1時間維持した。次に、EV4型の希釈液を除去し、各細胞用培地を各ウェルに1ml加え、72時間培養した。EV4型の希釈液は、MOI=0.001、0.01、0.1又は1.0に調製した。
試験対象の細胞は、HSC3、HSC4及びDaudiを除く実施例7で用いた細胞に加えて、非小細胞肺癌(H1975、H2009)、悪性中皮腫(MESO1、MESO4)、食道癌扁平上皮癌(TE1、TE4、TE5、TE9、KYSE170)、大腸癌(WiDr、HT29)、トリプルネガティブ乳癌(MDA−MB−468、MDA−MB−231)、乳癌(MCF7)、子宮頸癌(HeLa)である。なお、A549、H1975及びTE4は、それぞれゲフィチニブ一次抵抗性、ゲフィチニブ二次抵抗性及びCDDP抵抗性である。
また、上記試験対象の細胞の内、WiDr及びHT29のオキサリプラチン抵抗性を調べるために、所定濃度のオキサリプラチンを含有する培地で、48時間培養した後のWiDr及びHT29それぞれの細胞生存率をMTS法で評価した。
実施例7及び実施例8に示すように、ICAM−1がCVA11型の受容体であるため、各細胞におけるICMA−1(CD54)の発現量を実施例7と同様にして定量した。
(結果)
表3は、呼吸器癌の細胞に対するCVA11型の細胞傷害性及びCD54の発現量を示す。SBC−5、H28及びMESO4を除くすべての細胞で、少なくともMOI=0.1で細胞傷害性を認めた。CVA11型は、ゲフィチニブ一次抵抗性であるA549及びゲフィチニブ二次抵抗性であるH1975に対してもMOI=0.1で強い細胞傷害性を示した。また、細胞傷害性とCD54の発現量には相関性が見られ、MOI=0.1で細胞傷害性を認めなかった細胞のうち、SBC−5及びH28におけるCD54の発現量が低かった。
図17にオキサリプラチンで処理したWiDr(上段)及びHT29(下段)の細胞生存率を示す。WiDr及びHT29は、それぞれ200μM及び100μMという高濃度のオキサリプラチンであっても、オキサリプラチンで処理していない対照群と同程度の細胞生存率を維持した。よって、WiDr及びHT29は、オキサリプラチン抵抗性であることが示された。WiDr及びHT29にCVA11型を感染させると、図17のクリスタルバイオレット染色後の顕微鏡像に示すように、WiDr及びHT29のいずれもMOI=0.01以上で細胞傷害性が得られた。
表4は、頭頚部癌、消化器癌、乳癌の細胞に対するCVA11型の細胞傷害性及びCD54の発現量を示す。Hep2を除くすべての細胞で、少なくともMOI=0.1で強い細胞傷害性が示された。CVA11型は、CDDP抵抗性の細胞であるTE4及びオキサリプラチン抵抗性であるWiDr及びHT29に対して、少なくともMOI=0.001〜0.01で強い細胞傷害性を示した。また、CVA11型は、乳癌の細胞、特に難治性乳癌であるトリプルネガティブ乳癌の細胞株MDA−MB−468及びMDA−MB−231に対して強い細胞傷害性を示した。ここでも細胞傷害性とCD54の発現量には相関性が見られ、MOI=0.1で細胞傷害性を認めなかったHep2におけるCD54の発現量が低かった。
表5は、呼吸器癌の細胞に対するMOI=1.0までのCVA11型の細胞傷害性及びCD54の発現量を示す。MOI=1.0で評価すると、H28を除くすべての細胞で細胞傷害性が示された。
以上の結果より、CVA11型を含む医薬組成物は、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫、食道癌扁平上皮癌、下咽頭癌、大腸癌、乳癌、子宮頸癌、Bリンパ腫等の治療に有効であることが示唆された。しかも、当該医薬組成物は、ゲフィチニブ一次抵抗性又はゲフィチニブ二次抵抗性の非小細胞肺癌、CDDP抵抗性の食道癌扁平上皮癌、オキサリプラチン抵抗性の大腸癌及びトリプルネガティブ乳癌にも抗腫瘍効果を有することが示唆された。
(実施例10)
癌幹細胞マーカーの検出
上記試験対象に含まれる大腸癌の細胞(DLD−1、HT29及びWiDr)の表面における癌幹細胞マーカーCD133の発現量を定量するため、PE標識抗ヒトCD46抗体で標識した各細胞を、上記実施例1と同様にフローサイトメトリー法で解析した。CD133の検出には、APC標識抗ヒトCD133抗体を用いた。
(結果)
フローサイトメトリー法で解析結果を図18に示す。CD133を発現する細胞の割合は、DLD−1(1.8%)に対して、オキサリプラチン抵抗性のHT29及びWiDrでより大きかった(それぞれ30.9%及び63.6%)。
このように、大腸癌由来のオキサリプラチン抵抗性細胞株において、CD133の発現量が高いことが示された。また、実施例9に示したように、CVA11型は、オキサリプラチン抵抗性のHT29及びWiDrに強い細胞傷害性を示すため、CVA11型は、癌幹細胞に対しても細胞傷害性を有することが示唆された。
(実施例11)
オキサリプラチン抵抗性腫瘍に対するCVA11型のin vivo抗腫瘍効果の評価
100μlのPBSに懸濁したオキサリプラチン抵抗性癌細胞WiDrを5×10をヌードマウスの右側腹部に接種した。播種から1日目より腫瘍長径が4mm以上になったのを確認して、50μlのOPTI−MEM Iに懸濁したCVA11型溶液を、2日おきに合計4回腫瘍内に投与した。1回の投与におけるCVA11型の感染価は、3×10TCID50とした。TCID50は、ヒト子宮頚癌の細胞であるHeLaを用いて、ウイルス感染の5日後に評価した。腫瘍体積を上記実施例4と同様にして評価した。対照には、50μlのOPTI−MEM Iを腫瘍内に投与した。
(結果)
図19は、腫瘍体積の経時変化を示す。CVA11型を投与したマウスは、対照と比較して腫瘍体積の増加を抑制し、有害事象も見られなかった。
このように、CVA11型は、生体におけるWiDrに対して抗腫瘍効果を示したため、CVA11型を含む医薬組成物は、オキサリプラチン抵抗性腫瘍に対する抗腫瘍効果を有することが示唆された。
以上の各実施例により、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、大腸癌、膵癌及び食道癌扁平上皮癌の細胞株に対するEV4型による殺癌細胞効果を確認した。CAV11型については、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、大腸癌、悪性中皮腫、食道癌扁平上皮癌、下咽頭癌、ヒトBリンパ腫、乳癌及び子宮頸癌の細胞株に対する殺癌細胞効果を確認した。EV4型は、CDDP抵抗性のヒト食道癌モデルマウスにおいて明らかな腫瘍退縮能を示した。一方、CVA11型は、オキサリプラチン抵抗性のヒト大腸癌モデルマウスにおいて明らかな腫瘍退縮能を示した。
また、担癌マウスによる実験において重篤な有害事象が観察されず、体重減少の所見がなかったことから、EV4型及びCVA11型の高い安全性が示唆された。上述のように、EV4型及びCVA11型は、エンテロウイルスが検出される傾向にある無菌性髄膜炎でほとんど検出されない。これらのことから、EV4型及びCVA11型は、安全性に問題があるとされるCVA21型、EV6型、EV11型等と同じエンテロウイルスでありながら、その強い抗腫瘍効果と高い安全性によって、腫瘍溶解性ウイルス療法のための医薬組成物への利用に好適であると考えられる。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本出願は、2012年4月19日に出願された日本国特許出願2012−096088号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2012−096088号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
本発明は、医薬組成物に好適である。本発明を適用することにより、臨床現場における癌患者の予後が大きく改善することが期待される。

Claims (9)

  1. 癌細胞に感染するコクサッキーウイルスA11型を含む、
    小細胞肺癌、非小細胞肺癌、悪性中皮腫、大腸癌、食道癌、頭頸部癌、悪性リンパ腫、乳癌及び子宮頸癌からなる群から選択される癌を治療するための医薬組成物。
  2. 前記コクサッキーウイルスA11型は、
    カプシドが除去されたことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
  3. フォスフォイノシトール3キナーゼ阻害剤と併用される、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. MAPキナーゼキナーゼ阻害剤と併用される、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  5. 抗癌剤と併用される、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  6. CDDP抵抗性の癌の治療に使用される、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  7. ゲフィチニブ抵抗性又はオキサリプラチン抵抗性の癌の治療に使用される、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 前記癌細胞は、癌幹細胞である、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  9. 癌細胞に感染するコクサッキーウイルスA11型に由来する核酸を含む、
    小細胞肺癌、非小細胞肺癌、悪性中皮腫、大腸癌、食道癌、頭頸部癌、悪性リンパ腫、乳癌及び子宮頸癌からなる群から選択される癌を治療するための医薬組成物。
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