JP6088303B2 - アクスルケースの亀裂検知構造 - Google Patents

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本発明は、アクスルケースに繰り返しかかる応力集中によってアクスルケースが亀裂により破断される前に予め交換時期を判別することができる亀裂検知構造に関する。
アクスルケース10は、図6及び図7に示すように、溝形断面を有し、長手方向の中央部がそれぞれのウェブ面側に膨らんだ上下一対の側板11、12を突き合わせて溶接し、前記中央の膨らみ部に開放された中央開口部13の前方にギヤケースを取り付けるためのリング状の補強材14を溶接し、後方にはギヤの潤滑油等を密閉するための半球殻形状のカバー15を溶接している。
このようなアクスルケース10には、主要荷重となる上下方向の荷重が図示しないスプリング等を介して入力され、タイヤ16の接地点からこれらの反力を受けると、アクスルケース10は中央開口部13を囲むハウジング部17を下側に撓ませるような曲げモーメントが作用する。
このとき、アクスルケース全体は図8の点線で示すように変形し、ハウジング部17のカバー側内径部に部分的に応力が発生する。
そして、過大な上下方向の荷重を繰り返し受けることで、アクスルケースは、荷重を受けた個所、例えば、アクスルケース10の正面側では、図9(a)で図示したように、リング溶接個所、中央開口部の内径切欠き部、三角板を溶接する場合には三角板裏溶接個所、カバー裏溶接個所、ブラケット溶接個所などに大きい荷重がかかり、アクスルケース10の背面側では、図9(b)で図示したように、三角板溶接個所、カバー溶接個所、ブレーキフランジ溶接個所、チューブ部溶接個所などに大きい荷重がかかるので、これらの個所のいずれか1個所または、複数の個所から亀裂が生じ、亀裂の進行でアクスルケースが破断し、ひいては車両として走行不能となる重大な故障に繋がるおそれもある。
本出願人は、特開2005−132249号や特開2009−1252号の発明を提案しているが、アクスルケースの亀裂の発生を予測することはできなかった。
一般に、亀裂による被害を抑えるために、第1の対策として、亀裂が発生しない強固な仕様とする方法が考えられる。
この場合、アクスルケースを構成する部材の板厚を厚く設定し、または、形状変化を緩やかなものとして応力集中を減らすことになるが、その結果、アクスルケースの構成部材が厚く大きくなることで質量が増大し、材料費のコストアップが避けられない。また、車両の車両質量も増えてしまうことから、燃料費が悪化することになる。
次に、第2の対策として、過酷な使用による亀裂の発生箇所が、車両外観から容易に発見できる部位になるよう設計する方法が考えられる。
この場合、故障のあらわれ方に問題がある。
故障はアクスルケース内部の潤滑油の漏れ出しにより判別され、誰の目にも容易に判別できる。
しかし、ユーザーは、上記アクスルケースに対して信頼性を失うおそれがあり、風評などで、当該製品を使用している車両の信頼をも損ねてしまうおそれがある。 また、車両の走行中、また停車中にも潤滑油をまき散らし、路面を汚染する問題もある。
更には、ユーザーが亀裂を放置し、使用を続けた場合は、亀裂は進展しアクスルケースの破断、車両走行不能となる重大な故障に繋がるおそれもある。
特開2005−132249号公報 特開2009−1252号公報
この発明は上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、アクスルケースの故障につながる亀裂の発生を事前に検知して故障を防止することにある。
この発明は、上記課題を達成するために、請求項1の発明では、
長手方向の中央部がウェブ面側に膨らんだ上下一対の断面溝形状の側板を突き合わせて溶接し、前記中央部に開放された中央開口部の一方を覆う半球殻形状のカバーを溶接してなるアクスルケースの亀裂検出構造において、
中央開口部の口縁部の周縁に切欠もしくは貫通し又は肉厚を薄くしてアクスルケースのなかで最初に亀裂の起点となる第1脆弱部と、
該第1脆弱部と離間した近傍位置で、前記口縁部を貫通し又は肉厚を薄くして前記第1脆弱部と結ぶ経路に最も高い応力を発生させて最初に亀裂を発生させる第2脆弱部と、
前記第1脆弱部と第2脆弱部との間に設けられて、第1脆弱部と第2脆弱部の間に発生する亀裂を検知する検知センサーとを設けており、
前記第1脆弱部と第2脆弱部と検知センサーとが、中央開口部の口縁部でカバーの溶接箇所の内側に配置されており、
前記検知センサーは、アクスルケースの外側に設けられて亀裂の有無の判定およびまたはアクスルケースにかかる荷重の計測を行う歪み検出装置と接続されていることを特徴とする。
請求項2の発明では、
前記検知手段は、歪みゲージからなっており、リード線を介して歪み検出装置に接続されていることを特徴とする。
アクスルケースが疲労による製品寿命で亀裂を生じる前に、第1脆弱部と第2脆弱部との間に最初に小さな亀裂を生じさせ、これを検知手段で検知することで、アクスルケースの製品寿命が尽きる前に、アクスルケースを補修又は交換することができる。
これにより、以下の効果を奏することができる。
(1)アクスルケースの重大な故障を回避する。
(2)故障しない状態でアクスルケースを交換できるので、ユーザーの製品に対する信頼感を損なわない。
(3)故障前に交換できるので、予め交換用のアクスルケースの準備ができ、車両の走行停止の時間を最短にすることができる。
また、前記検知手段に歪みゲージを用いることで、データをリアルタイムに処理することができ、以下の効果がある。
(4)アクスルへの入力を知ることができ、使用において過大な入力の有無が分かり、入力の大きさによった最適な製品設計ができる。
(5)歪みゲージを用いることで軸重計として使用できる。
(6)ユーザーにより過積載や過酷走行等の誤った使用法の有無が分かる。
第1脆弱部と第2脆弱部を設けた部分説明図である。 (a)は第1脆弱部と第2脆弱部とを貫通した線条とした場合の説明図、(b)は第1脆弱部を薄肉部にした場合の説明図である。 (a)は、第1脆弱部を、開口部の口縁から僅かに離間した位置に配置した場合の説明図、(b)は第1脆弱部を略紡錘形状とした場合の説明図である。 検知手段を設けた部分説明図である。 第11脆弱部と第2脆弱部との好ましい配置エリアを例示した説明図である。 アクスルケースの組立状態を示す分解斜視図である。 アクスルケースの背面図である。 アクスルケースに上下方向の荷重を受けた場合の変形を点線で示す正面図である。 (a)は正面から見たアクスルケースの亀裂が発生しやすい個所、(b)は背面から見たアクスルケースの亀裂が発生しやすい個所を示す説明図である。
この発明は、亀裂のきっかけとなる第1脆弱部と、亀裂を進展させる第2脆弱部とを設け、両者の間に亀裂の有無を検出する検知手段を設けることで、事前に所定個所に小さな亀裂を発生させ、これを検知することでアクスルケースの重大な故障回避を実現した。
以下に、アクスルケースの亀裂検知構造について図面を参照しながら説明する。
本実施例のアクスルケース10は、図7に示したように、溝形断面を有し、長手方向の中央部がそれぞれのウェブ面側に膨らんだ上下一対の側板11、12を突き合わせて溶接し、前記中央の膨らみ部に開放された中央開口部13の前方に図示しないギヤケースを取り付けるためのリング状の補強材14を溶接し、後方にはギヤの潤滑油等を密閉するための半球殻形状のカバー15を溶接した公知の構造からなっている。
この発明では、アクスルケース10の構造は図示例に限定されず一対の三角板を中央開口部13の左右に溶接する構造や、その他の構造であってもよい。
図示のアクスルケース10のハウジング17では、上下荷重により、カバー15の内径部分において、図中真下の部分や斜め上側の部分に高い応力が発生しており、従来はハウジング内径部分で亀裂が入る個所は上記部位であった。
そこで、図1に示すように、上記亀裂が発生する前に、第1脆弱部1と第2脆弱部2を設けて小さい亀裂を発生させる。
[第1脆弱部]
第1脆弱部1は、アクスルケース10の他の個所よりも最も早く亀裂のきっかけ(亀裂の起点)を発生させるものであり、本実施例では、中央開口部13の口縁部13aの周縁で開口部13と一連につながる切欠からなっている。
第1脆弱部1は、もともと亀裂が生じやすく高い応力がかかる個所では故障につながる亀裂を誘発するおそれがあり、逆に応力が殆どかからない個所では、亀裂を最初に発生させることが困難となる。
そこで、上記両方の個所を避けて、適度に応力がかかる範囲であれば第1脆弱部1の配置は特に限定されない。
本実施例では、中央開口部13の上半分の口縁部13aの周縁としたが、図5に示すように、中央開口部13の中心を通る縦の中心線L1に対して左右に略40°乃至80°の範囲内に第1脆弱部1およびまたは第2脆弱部2を配置することがより好ましい。
第1脆弱部1の形状は、図示例の場合、矩形の切欠としたが、その形状は特に限定されない。
しかし、後述の第2脆弱部2との間に確実に亀裂を生じさせる必要があるので、例えば、外側に複数の角部を有する形状の場合は、最初に破断する角部を特定するために、他の角部よりも常に先に破断するような形状とする必要がある。
本実施例では、矩形の切欠からなっているので、外側の上方の角部1aを小さな円弧状としており、この角部1aを起点として第2脆弱部2に向かって亀裂が進展するように形成されている。
また、第1脆弱部1は製品に新たに形成する場合に限らず、中央開口部13の口縁部13aに形成されて内部に内蔵されるギヤケース等の部品との間隙のために形成された既存の切欠部を兼用してもよい。
前記第1脆弱部1は、前述のように、最初に亀裂を誘発させるものであり、第2脆弱部2に向かって亀裂を進展させうる形状であればよく、矩形に限らず、円弧状や任意の幾何形状など、形状は特に限定されない。
また、第1脆弱部1は、本実施例では中央開口部13に連なる切欠形状としたが、図2(a)に示すようにミシン目のように切欠が線条に形成されたものであってもよいし、図2(b)に示すように他より肉厚を薄肉にした薄肉部であってもよい。
更に、第1脆弱部1は、中央開口部13の開口に連ならなくても最初に亀裂を誘発できればよく、図3に示すように、中央開口部13の口縁部13aから僅かに離間した位置に配置してもよい。
図3(a)は、中央開口部13の口縁部13aとの間に僅かな隙間を設けたものであり、また角部1aを1つにして尖らせたもの、同(b)は更に、口縁部13a側も尖らせた略紡錘形状としたものを例示した。
[第2脆弱部]
第2脆弱部2は、第1脆弱部1の近傍周縁で最も脆弱な部分であり、本実施例では、第1脆弱部1の亀裂の起点となる角部1aの近傍周縁で亀裂が進展する予定経路R上に第2脆弱部2を設けている。
第2脆弱部2は、第1脆弱部1の前記亀裂の起点から確実に亀裂を誘導しうるように、第1脆弱部1の等間隔の領域のなかで最も脆弱な構造であればよい。
これにより、前記第1脆弱部1と第2脆弱部2とを結ぶ経路に最も高い応力を発生させて、第1脆弱部1と第2脆弱部2間に前記経路Rにほぼ沿って最初に亀裂を発生させることができる。
第2脆弱部2は、本実施では貫通孔とし、この貫通孔は、図示例では円孔からなっているが、孔の形状は、円形に限定されず、また径の長さも特に限定されない。
更に、第2脆弱部2は孔ではなく、第1脆弱部1と同様に、貫通した線条であってもよいし、また肉厚を薄くした薄肉部であってもよい。
本実施例では、第2脆弱部2は第1脆弱部1と共に、中央開口部13の口縁部13aの周縁でカバー15の円形の溶接部分L2の範囲内に設定される。
上記位置に配置すれば、亀裂が発生してもカバー15に覆われた内部のため潤滑油が外部へ漏れ出すことがない。
これにより、上下方向の荷重を繰り返し受けた場合に、第1脆弱部1と第2脆弱部2を結ぶ経路上に高い応力が発生し、アクスルケース内の限られた範囲で最初に小さな亀裂を発生させることができる。
この発明では、図示しないが、第1脆弱部1と第2脆弱部2との間に想定される亀裂進展の予定経路を薄肉部とし、あるいはミシン目や半切り状の罫線とするなどにより、亀裂の進展方向をガイドしてもよい。
[検知手段]
第1脆弱部1と第2脆弱部2との間に発生する亀裂を検知することで、アクスルケースの交換時期を事前に判別することができ、亀裂による潤滑油漏れ等の故障を未然に防止することができる。
本実施例では、第1脆弱部1と第2脆弱部2とが、カバーで覆われる範囲内に設定されるので、亀裂を目視することができず、第1脆弱部1と第2脆弱部2の間に検知センサとして歪みゲージ3を設けて、亀裂の発生を検出している。
即ち、歪みゲージ3は、前記亀裂が進展する予定経路Rと交差するように貼り付けることが好ましい。
上記歪みゲージ3は、リード線4を介してアクスルケース10の外部に設けられる歪み検出装置5と接続される。
亀裂が進展して前記歪みゲージ3まで到達すると、歪みゲージ3は亀裂と共に断線する。
そこで、歪み検出装置5から歪みゲージ3に通電しても歪み量が出力されない状態となるので、アクスルケース10を分解点検しなくても、亀裂の発生が検出できる。
そこで、定期的、たとえば定期点検時や車検時に歪み検出装置5を歪みゲージ3のリード線4と接続し、歪みゲージ3へ通電して出力を確認することで前記亀裂発生の有無を判定することができる。
歪み検出装置5を歪みゲージ3のリード線4に常時接続しておけば、上記検出は、連続的に行うことができる。
この場合、歪みゲージ3からの出力を、連続的に歪み検出装置5に入力すれば、歪みゲージ3の検出した歪みデータを歪み検出装置5のメモリ6に時系列で記録することができ、または外部表示装置に外部表示することができる。
これによりアクスルケース10に掛かる荷重を知ることができ、使用において過大な入力の有無が分かる。
また、歪みゲージ3を軸重計として兼用することができる。
更に、前記メモリ6の記録を処理することで、使用に際してのアクスルケース10への入力の大きさを知ることができるので、ユーザーの過積載、過酷走行などの誤った使用法の有無の情報が得られ、また入力の大きさによった最適な製品設計を行うための参考情報も得られる。
この発明では、亀裂の検知センサとして歪みゲージを用いた場合を例示したが、亀裂により信号を発するセンサ、その他公知のセンサを用いて亀裂の有無を判定してもよい。
その他この発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
1 第1脆弱部
1a 角部
2 第2脆弱部
3 歪みゲージ
5 歪み検出装置
10 アクスルケース
11、12 側板
13 中央開口部
13a 口縁部
14 補強材
15 カバー
16 タイヤ
17 ハウジング部
L1 中央開口部の中心線
L2 カバーの溶接部分
R 亀裂が進展する予定経路

Claims (2)

  1. 長手方向の中央部がウェブ面側に膨らんだ上下一対の断面溝形状の側板を突き合わせて溶接し、前記中央部に開放された中央開口部の一方を覆う半球殻形状のカバーを溶接してなるアクスルケースの亀裂検出構造において、
    中央開口部の口縁部の周縁に切欠もしくは貫通し又は肉厚を薄くしてアクスルケースのなかで最初に亀裂の起点となると共に、中央開口部の中心を通る縦の中心線に対して左右に略40°乃至80°の範囲内に配置された第1脆弱部と、
    該第1脆弱部と離間した近傍位置で、前記口縁部を貫通し又は肉厚を薄くして前記第1脆弱部と結ぶ経路に最も高い応力を発生させて最初に亀裂を発生させる第2脆弱部と、
    前記第1脆弱部と第2脆弱部との間に設けられて、第1脆弱部と第2脆弱部の間に発生する亀裂を検知する検知センサーとを設けており、
    前記第1脆弱部と第2脆弱部と検知センサーとが、中央開口部の口縁部でカバーの溶接箇所の内側に配置されており、
    前記検知センサーは、アクスルケースの外側に設けられて亀裂の有無の判定およびまたはアクスルケースにかかる荷重の計測を行う歪み検出装置と接続されていることを特徴とするアクスルケースの亀裂検出構造。
  2. 前記検知手段は、歪みゲージからなっており、リード線を介して歪み検出装置に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のアクスルケースの亀裂検出構造。
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