JP6085882B2 - カロテノイド生合成遺伝子発現による乳酸菌の環境ストレス耐性向上技術 - Google Patents

カロテノイド生合成遺伝子発現による乳酸菌の環境ストレス耐性向上技術 Download PDF

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Description

本発明は、乳酸菌の環境ストレス耐性を向上させる活性を有するカロテノイド生合成遺伝子、および当該遺伝子を発現させることにより、環境ストレス耐性が向上した乳酸菌に関する。
乳酸菌はヨーグルトやチーズなどの乳製品や、漬物、味噌、醤油などの発酵食品の製造に用いられており、プロバイオティクスとして消化管内の細菌叢の改善による整腸効果、免疫力向上効果、抗腫瘍効果などの種々の健康保持効果を有することから、人類にとって重要な微生物資源である。そのため、乳酸菌の効率的な利用を目的とし、乳製品の製造過程や宿主共存下(消化管内環境など)での環境ストレス低減技術の検討が行われている。通性嫌気性細菌である乳酸菌は大腸菌や枯草菌などの好気性細菌に比べて酸素に対する耐性が低いため、乳酸菌の環境ストレス低減技術の検討は主に酸素耐性の付与や向上を中心に行われてきた。
これまで乳酸菌の環境ストレス低減技術に関しては、乳酸菌に酸素耐性を付与または増強する鉄結合タンパク質をコードする遺伝子を導入する方法(特許文献1)、リボフラビン・トランスポーター遺伝子を不活化して酸素耐性が増強された乳酸菌変異株を得る方法(特許文献2)、酵母や枯草菌由来のカタラーゼをコードする核酸などの活性酸素除去遺伝子を乳酸菌に導入する方法(特許文献3;非特許文献1)、胆汁酸や浸透圧耐性能を有する変異株を取得する方法(特許文献4)などが報告されている。
一方、カロテノイドは、その化学構造上に二重結合を多く含むために抗酸化作用が大きく、酸化ストレスや紫外線ストレスのような環境ストレスへの防御機構に関与している。
乳酸菌の一部にはカロテノイドを生産するものがあることが知られている。例えば、C30カロテノイドを著量生産する乳酸菌(Lactobacillus plantarum)が報告されているが(非特許文献2)、カロテノイドの環境ストレス低減作用については何ら検討されていない。乳酸菌以外のカロテノイドを微生物のストレス耐性向上に用いた例としては、枯草菌においてスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のカロテノイド生合成遺伝子を発現させることにより抗酸化性が付与されたという報告がある(特許文献5;非特許文献3)。また、乳酸菌についても、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のカロテノイドをカロテノイド非生産乳酸菌であるストレプトコッカス・ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)で発現させることにより抗酸化性が向上したことが報告される(非特許文献4)。しかしながら、この例では、病原菌由来のカロテノイド遺伝子を病原性連鎖球菌である乳酸菌で発現させた病原菌同士の特殊な例であることから、属を超えて利用できる汎用性の高い乳酸菌の環境ストレス耐性付与技術を確立するには至っていない。
特開2001-327292 特開2011-135804 特開2009-39032 特開2002-335953 特開2011-135856
Rochat, T., Miyoshi, A., Gratadoux, J. J., Duwat, P., Sourice, S., Azevedo, V. & Langella, P. (2005) High-level resistance to oxidative stress in Lactococcus lactis conferred by Bacillus subtilis catalase KatE. Microbiology, 151, 3011-3018. Garrido-Fernandez J, Maldonado-Barragan A, Caballero-Guerrero B, Hornero-Mendez D, Ruiz-Barba JL. (2010) Carotenoid production in Lactobacillus plantarum. Int J Food Microbiol, 30; 140(1): 34-9. Yoshida K, Ueda S, Maeda I. (2009) Carotenoid production in Bacillus subtilis achieved by metabolic engineering. Biotechnol Lett., 31; (11):1789-93. Liu GY, Essex A, Buchanan JT, Datta V, Hoffman HM, Bastian JF, Fierer J, Nizet V.(2005) Staphylococcus aureus golden pigment impairs neutrophil killing and promotes virulence through its antioxidant activity. J Exp Med. 18; 202(2):209-15.
そこで、本発明は、あらゆる種類の乳酸菌に広く利用できる乳酸菌の環境ストレス耐性付与技術を開発し、乳酸菌利用の効率化・拡大を図ることを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、乳酸菌の新規ストレス耐性機構としてカロテノイドに着目し、鋭意研究を重ねた結果、菌体が黄色を呈するエンテロコッカス・ギルバス(Enterococcus gilvus)から新規なカロテノイド生合成遺伝子を単離するとともに、該遺伝子を属の異なる乳酸菌であるラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)で発現させたところ、その菌体は黄色になり、環境ストレス耐性が上昇することを確認した。本発明をかかる知見により完成されたものである。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) エンテロコッカス・ギルバス(Enterococcus gilvus)由来のcrtN遺伝子とcrtM遺伝子を含み、かつ乳酸菌の環境ストレス耐性を向上させる活性を有するカロテノイド生合成遺伝子。
(2) 以下の(a)〜(d)のいずれかに示すDNAを含む、(1)に記載のカロテノイド生合成遺伝子。
(a) 配列番号1に示す塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号1に示す塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ乳酸菌の環境ストレス耐性向上活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c) 配列番号1に示す塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ乳酸菌の環境ストレス耐性向上活性を有するタンパク質をコードするDNA
(d) 配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ乳酸菌の環境ストレス耐性向上活性を有するタンパク質をコードするDNA
(3)乳酸菌において機能しうるプロモーター領域に連結された(1)または(2)に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
(4) (3)に記載の組換えベクターを導入し、環境ストレス耐性が向上した乳酸菌。
(5) (3)に記載の組換えベクターを乳酸菌に導入することを特徴とする、環境ストレス耐性が向上した乳酸菌の製造方法。
(6) (1)または(2)に記載の遺伝子を乳酸菌菌体内で発現させることにより、乳酸菌に環境ストレス耐性を付与する方法。
本発明は、Enterococcus gilvusから分離したカロテノイド生合成遺伝子を乳酸菌に導入することによりその環境ストレス耐性を向上させることができる。よって、本発明は、乳酸菌を用いる食品や医薬品の効率的製造や製品の安定的供給を図るのに有用である。また、上記遺伝子が導入された本発明の乳酸菌は、カロテノイドを生産・供給できるので、カロテノイドが有する抗酸化作用や抗ガン作用等の生理作用と、ブロバイオティクスとして乳酸菌自体が有する整腸作用や免疫力向上作用等の生理作用との相乗効果により、宿主に健康上有益な効果をもたらす。
Enterococcus gilvus CR1株よりクローニングしたカロテノイド生合成遺伝子(crtNおよびcrtM)の塩基配列および該塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を示す。 Enterococcus gilvus CR1株よりクローニングしたカロテノイド生合成遺伝子のプロモーター領域の制御下にあるオペロンに存在するcrtN、crtM遺伝子クラスターの模式図を示す。 野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株MGpRH100、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRCの菌体懸濁液の外観を示す。 野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株MGpRH100、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRCの過酸化水素耐性試験結果(128mM H2O2に90分間暴露後の生存率)を示す。 野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株MGpRH100、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRCの胆汁酸耐性試験結果(2.5% Oxgallに90分間暴露後の生存率)を示す。 野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株MGpRH100、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRCの耐性試験結果(生理食塩水(HClでpH2.0)に90分間暴露後の生存率)を示す。 野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株MGpRH100、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRCのリゾチーム耐性試験結果(12mg/mLリゾチーム溶液に180分間暴露後の生存率)を示す。
本発明のカロテノイド生合成遺伝子は、後記実施例に示すように、黄色コロニーの形成を指標としてコロニーダイレクトPCRにより16S rDNA を増幅して同定を行った結果、Enterococcus gilvusに近縁な種と分類された乳酸菌から単離精製された遺伝子であり、乳酸菌の環境ストレス耐性を向上させる機能を有する。
本発明のカロテノイド生合成遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列を有し、該塩基配列の第1から1488位までの領域にデヒドロスクアレンデサチュラーゼ(ジアポフィトエンデサチュラーゼ)をコードするCrtN遺伝子と第1478位から2632位までの領域にデヒドロスクアレンシンターゼ(ジアポフィトエンシンターゼ)をコードするCrtM遺伝子がオペロン構造を形成している。
本発明の遺伝子は、好ましくは、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAを含む遺伝子であるが、当該遺伝子には限定はされず、乳酸菌の環境ストレス耐性向上活性を有する限り、そのホモログ遺伝子であってもよい。ここで、「環境ストレス耐性向上活性を有する」とは、該活性が、配列番号1に記載の遺伝子が有する活性と実質的に同等であることをいう。
ホモログ遺伝子には、配列番号1に示す塩基配列に対して80%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAを含む遺伝子、配列番号1に示す塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなるDNAを含む遺伝子、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含む遺伝子が包含される。
上記の「80%以上の相同性」は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性をいう。「配列同一性」とは、2つのDNAの配列類似性をいい、比較対象のDNAの塩基配列の領域にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの塩基配列を比較することにより決定される。配列同一性(%)は、両方の配列に存在する同一の塩基を決定して、適合部位の数を決定し、次いで、この適合部位の数を比較対象の配列領域内の塩基の総数で割り、得られた数値に100をかけることにより算出され得る。最適なアラインメントおよびホモロジーを得るためのアルゴリズムは、当業者が通常利用可能な種々のアルゴリズム(例えば、BLASTアルゴリズム、FASTAアルゴリズムなど)が挙げられる。DNAの配列同一性は、例えば、配列解析ソフトウエア(例えば、BLASTN、FASTAなど)を用いて測定される。
上記の欠失、置換若しくは付加されてもよい「1若しくは数個」の範囲は、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異導入法により欠失、置換、若しくは付加できる程度の数の塩基をいい、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個程度を意味する。また、ここにいう「変異」は、主には部位特異的突然変異誘発法等により人為的に導入された変異を意味するが、天然に存在する同様の変異であってもよい。
また、上記の「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高いDNA、すなわち配列番号1で表わされる塩基配列と90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNAの相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。当業者であれば、Molecular Cloning(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning :a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 10 Skyline Drive Plainview, NY (1989))等を参照することにより、こうしたホモログ遺伝子を容易に取得することができ、また、配列番号1に示す塩基配列との相同性は、BLAST検索やFASTA検索により決定することができる。
上記のホモログ遺伝子は、配列番号1に示す塩基配列からなるDNAを含む遺伝子を当該技術分野で公知の手法によって改変することによって得ることができる。遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法またはGapped duplex法等の公知手法またはこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA-BIO社)やMutant-G(TAKARA-BIO社))、TAKARA-BIO社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットなどが使用できる。
上記の「環境ストレス」には、例えば、活性酸素(過酸化水素など)、酸(胃酸)、ステロイド誘導体(胆汁酸)、溶菌酵素(リゾチーム)、高塩、熱、低温、乾燥等の乳酸菌を利用する食品製造過程や宿主共存下(消化管内環境など)で乳酸菌の生育の阻害要因となるあらゆるストレスが含まれる。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに上記カロテノイド生合成遺伝子を挿入することにより得ることができる。本発明のカロテノイド生合成遺伝子を挿入するためのベクターは、乳酸菌に導入された場合に、上記カロテノイド生合成遺伝子の発現に適した発現ベクターであれば特に制限されず、乳酸菌において自立複製可能なベクター、または、乳酸菌の染色体中へ組込み可能であるベクターのいずれでもよい。乳酸菌で自立複製可能なベクターとしては、例えば、pWVO1、pAMβ1、pSH71等のプラスミドベクターまたはこれらを改変したプラスミドベクター、φFSVなどのファージベクターが挙げられる。ベクターは入手可能な市販品を使用することができ、例えば、NICEタンパク質発現システム(Funakoshi・モビテック)に含まれるpZ8148、pZ8149、pZ8150等が挙げられる。
ベクターに本発明のカロテノイド生合成遺伝子を挿入するには、まず、精製された本発明のカロテノイド生合成遺伝子断片を適当な制限酵素で切断し、上記ベクターの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などの周知の方法(例えば、Molecular Cloning, Third Edition, 1.84, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkを参照)により行うことができる。
本発明の組換えベクターは、乳酸菌の複製起点、プロモーター、選択マーカーを含み、必要に応じてエンハンサー、ターミネーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル等を含んでいてもよい。
プロモーターは、その下流に制御可能に連結した本発明のカロテノイド合成遺伝子を乳酸菌内で発現させることのできるプロモーターであれば特に限定はされないが、乳酸菌由来のプロモーターを用いることが好ましく、そのようなプロモーター配列は、通常、乳酸菌の遺伝子の転写開始点(+1)から20〜30塩基対上流にあって、正確な位置からRNAポリメラーゼに転写を開始させる機能を担っているTATAボックスまたはTATAボックス類似の領域の配列をいう。乳酸菌由来のプロモーターとしては、ラクトコッカス・ラクチスMG1614、ラクトコッカス・クレモリスWg2、ストレプトコッカス・サーモフィラスA054のゲノム由来の構成的発現プロモーター、ラクトコッカス・ラクチス NIZO R5由来nisA誘導発現プロモーターなどが挙げられる。また、選択マーカーとしては、エリスロマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子などを用いることができる。
本発明の環境ストレス耐性が向上した乳酸菌は、上記のカロテノイド生合成遺伝子を挿入した組換えベクターを乳酸菌に導入することにより得られる。組換えベクターを乳酸菌に導入する方法としては、公知の方法、例えば、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、コンピテンス法、接合伝達(コンジュゲーション)法等により行うことができるが、エレクトロポレーション法が好ましい。
組換えベクターが導入された乳酸菌は、適切な培地中で培養して選択マーカーで選択することができる。また、発現された色素(カロテノイド)を測定することによっても選択できる。乳酸菌を培養するには、乳酸菌が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、乳酸菌の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、トレハロース、スクロース、マンノース、セロビオース等の炭素源、肉エキス、ペプトン、イーストエキストラクト、カゼイン、ホエータンパク質等の窒素源、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン等の無機栄養素を含む培地を用いることができる。培養条件は、乳酸菌が生育し得る条件であれば特に制限はないが、例えば、pHが5.0〜8.0、温度が20〜45℃であり、より好ましくは、pHが5.0〜7.0、温度が30〜40℃である。
本発明において、環境ストレス耐性向上を目的とし、上記の組換えベクターを導入する乳酸菌の種類は、特に限定されず、乳製品や発酵食品などの食品において一般的に用いられる公知の乳酸菌であればよく、例えば、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属等の乳酸菌が挙げられる。ラクトコッカス属の乳酸菌としては、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)等の乳酸菌、ラクトバチルス属の乳酸菌としては、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・デルブルキ(Lactobacillus delbruekii)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)等の乳酸菌、エンテロコッカス(Enterococcus)属の乳酸菌としては、エンテロコッカス・ギルバス(Enterococcus gilvus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)等の乳酸菌、ペディオコッカス属の乳酸菌としては、ペディオコッカス・アシディラクティシィ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・ソジェー(Pediococcus sojae)、ペディオコッカス・ハロフィラス(Pediococcus halophilus)等の乳酸菌、ロイコノストック(Leuconostoc)属の乳酸菌としては、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)等の乳酸菌、ストレプトコッカス属の乳酸菌としては、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等の乳酸菌がそれぞれ挙げられるが、これらはあくまで例示であって限定はされない。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1)カロテノイド生合成遺伝子のクローニングと乳酸菌への導入
乳酸菌の分離源として牛乳を用いた。1%スキムミルクを含む標準プレートカウント寒天培地培地(OXOID コード:CM0463)に牛乳希釈液を添加し、37℃で48時間静置培養した。培養終了後、形成されたコロニーの中から、黄色のコロニーを形成した乳酸菌の1菌株を分離した。本菌株について、16S rDNA 配列解析を行なったところ、Enterococcus gilvusに近縁な種と分類された。本菌株をCR1株と命名した。
カロテノイドを生産する細菌(Lactobacillus plantarum, Enterococcus casseliflavus, Enterococcus gallinarum, Carnobacterium sp. AT7, Bacillus sp. NRRL B-14911, Eubacterium limosum)のカロテノイド生合成遺伝子をNCBIデータベースより取得し、保存配列を参考に、下記の縮合プライマーcrtN-FおよびcrtN-Rを作成した。
crtN-F:HTNDSNTTYCARACVYTVTAYATHGG (配列番号2)
crtN-R:ATNGGNACNGGNGCNCCNGGRT (配列番号3)
CR1株からTotal DNAを抽出し、上記縮合プライマーを用いてPCRを行い、増幅断片を得た。この増幅断片をpGEM T-easy vector (Promega)に挿入して塩基配列解析したところ、カロテノイド生合成遺伝子の内部配列を得ることができた。
次に、内部配列を基に、Inverse PCRを行った。具体的には、CR1株のTotal DNAをEcoRIで制限酵素処理し、T4リガーゼでセルフライゲーションさせた。このセルフライゲーションさせたDNA産物を鋳型にし、内部配列をもとに作製した下記のInverse PCR用プライマー(crtN SEQ1およびcrtN inv-nest2)を用いてPCRを行い、得られたPCR産物をpGEM T-easy vector (Promega)に挿入し、挿入断片の塩基配列を決定した。
crtN SEQ1:GAATCGAATGCAACGCCTCTAC (配列番号4)
crtN inv-nest2:GATTGGAATGAAGAGACCATTC (配列番号5)
その結果、既存のcrtN, crtMと相同性の高い領域が断片に含まれていることがわかった(図1)。この断片は、crtNの上流にプロモーターと推測される部分(配列番号6)があり、crtNとcrtM遺伝子を含むオペロンから成り立っていると示唆された(図2)。crtNとcrtM遺伝子を含むオペロン領域の塩基配列を配列番号1に示す。
次に、プロモーター領域を含むオペロンを下記のプライマー(crtMNproBamHI-FおよびcrtMNproEcoRI-R)を用いてPCRで増幅した。
crtMNproBamHI-F:ATA ggatcc AATGATTTACAATTATTAATTTCT(配列番号7)
crtMNproEcoRI-R:ATA gaattc TATTCAGTGTTGTTTGAACA(配列番号8)
さらに、この増幅断片と大腸菌・乳酸菌シャトルベクターであるpRH100 (Kawamoto S, Shima J, Sato R, Eguchi T, Ohmomo S, Shibato J, Horikoshi N, Takeshita K, Sameshima T. (2002) Biochemical and genetic characterization of mundticin KS, an antilisterial peptide produced by Enterococcus mundtii NFRI 7393. Appl Environ Microbiol. 2002 Aug;68(8):3830-3840)をBamHI, EcoRI処理し、ライゲーションを行い、大腸菌 (Escherichia coli DH5α:TOYOBO)に形質転換した。プロモーター領域とオペロンを含むベクター(pRCと命名)を回収し、Lactococcus lactis MG1363(Gasson, M. J. (1983). Plasmid complements of Streptococcus lactis NCDO 712 and other lactic streptococci after protoplast-induced curing. J Bacterioll54, 1-9.)にエレクトロポレーション法で導入したところ、黄色のLactococcus lactis(MGpRC)が得られた(図3)。
(実施例2)環境ストレス耐性試験
(1) 過酸化水素耐性
野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株MGpRH100(pRH100を導入したMG1363株)、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC(pRCを導入したMG1363株)を用いて、過酸化水素耐性を調べた。
上記3株をGM17液体培地で24時間培養後、菌体を遠心(8000 rpm, 10 min)により回収し、生理食塩水で2回洗浄した。洗浄した菌体に500μLの128 mM H2O2溶液を加えて懸濁し、氷上で90分間静置した。コントロールとして、生理食塩水に懸濁した菌体を氷上で90分間静置した。90分後、菌体を遠心して生理食塩水で洗浄した後、GM17寒天培地に接種して、菌数を測定し、生存率(ストレス負荷後の菌数/生理食塩水中で90分放置後の菌数)を決定した。その結果、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC は、過酸化水素耐性が向上することが確認できた(図4)。
(2) 胆汁酸耐性
128 mM H2O2溶液の代わりに2.5% Oxgallを用いる以外は、(1)と同様にして野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株 MGpRH100(pRH100を導入したMG1363株)、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC(pRCを導入したMG1363株)を用いて、胆汁酸耐性を調べた。
その結果、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC は、胆汁酸耐性が向上することが確認できた(図5)。
(3) 酸耐性
128 mM H2O2溶液の代わりに生理食塩水(HClで生理食塩水のpHを2.0にしたもの)を用いる以外は(1)と同様にして野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株 MGpRH100(pRH100を導入したMG1363株)、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC(pRCを導入したMG1363株)を用いて、酸耐性を調べた。その結果、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC は、酸耐性が向上することが確認できた(図6)。
(4) リゾチーム耐性
前記野生株MG1363(WT)、空ベクター導入株MGpRH100(pRH100を導入したMG1363株)、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC(pRCを導入したMG1363株)をGM17液体培地で24時間培養後、菌体を遠心(8000 rpm, 10 min)により回収し、生理食塩水で2回洗浄した。洗浄した菌体に500μLのリゾチーム溶液(12 mg/mL)を加えて懸濁し、37℃で180分間静置した。コントロールとして、生理食塩水に懸濁した菌体を37℃で180分間静置した。180分後、菌体を遠心して生理食塩水で洗浄した後、GM17寒天培地に接種して、菌数を測定し、生存率(ストレス負荷後の菌数/生理食塩水中で180分放置後の菌数)を決定した。その結果、カロテノイド生合成遺伝子導入株MGpRC は、約4倍生存率が高くなり、リゾチーム耐性が向上することが確認できた(図4)。リゾチームは溶菌作用があることから細菌等による品質劣化防止を目的としてチーズ等の食品に使用されるが、本発明のカロテノイド生合成遺伝子導入株はリゾチーム耐性があるのでそのような食品にも使用できる。
プロバイオティクスとして乳酸菌を用いる食品や医薬品の製造分野において利用できる。

Claims (5)

  1. 以下の(a)〜(d)のいずれかに示すDNAを含む、カロテノイド生合成遺伝子。
    (a) 配列番号1に示す塩基配列からなるDNA
    (b) 配列番号1に示す塩基配列に対して95%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつ乳酸菌の環境ストレス耐性向上活性を有するタンパク質をコードするDNA
    (c) 配列番号1に示す塩基配列において1から20個の塩基が欠失、置換、若しくは付加された塩基配列からなり、かつ乳酸菌の環境ストレス耐性向上活性を有するタンパク質をコードするDNA
    (d) 配列番号1に示す塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ乳酸菌の環境ストレス耐性向上活性を有するタンパク質をコードするDNA
  2. 乳酸菌において機能しうるプロモーター領域に連結された請求項に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
  3. 請求項に記載の組換えベクターを導入し、環境ストレス耐性が向上した乳酸菌。
  4. 請求項に記載の組換えベクターを乳酸菌に導入することを特徴とする、環境ストレス耐性が向上した乳酸菌の製造方法。
  5. 請求項に記載の遺伝子を乳酸菌菌体内で発現させることにより、乳酸菌に環境ストレス耐性を付与する方法。
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