JP6084553B2 - チタン合金鍛造材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、航空機などのエンジン部品などに用いられるチタン合金鍛造材およびその製造方法に関する。
Ti−6Al−4V合金に代表されるα+β型チタン合金は、軽量、高強度、高耐食性に加え、溶接性、超塑性、拡散接合性等の諸特性に優れている。そのため、α+β型チタン合金は、エンジン部品等、航空機産業で多く使用されている。
α+β型チタン合金は、主相である稠密六方晶(hcp構造)のα相と、体心立方晶(bcc構造)のβ相とが室温で安定に共存し、β変態点(Tβ)以上の温度域でβ相単相となる。
α+β型チタン合金の鍛造材には、Tβ以上の温度に到達しないようにTβ未満の温度域(α+β二相域)に加熱してこの温度域で鍛造するα+β鍛造によるもの(α+β鍛造材)と、Tβ以上の温度域(β単相域)に加熱して鍛造するβ鍛造によるもの(β鍛造材)とがある。α+β鍛造材と、β鍛造材とでは、形成される材料組織は全く異なり、それに伴い材料特性が異なることが知られている。
チタン合金鍛造材は、前者のα+β鍛造によれば、粒状α組織となる。図5にその様子を示す。図5で白く示されているのがα相である。
一方、チタン合金鍛造材は、後者のβ鍛造によれば、針状α相組織となる。具体的には、次のように組織が形成される。まず、Tβ以上の温度域でβ相単相となり、等軸状のβ相(β粒)が形成される。形成されたβ粒は鍛造加工により扁平に潰れる。そして、Tβ未満の温度域まで冷却されてこの温度域で保持されると、β粒の結晶粒界に沿ってα相が膜状に析出する。また、これに続いてβ粒の結晶粒内にα相が針状に析出する。α相が針状に析出した様子を図6に示す。図6で白く示されているのがα相である。
なお、β鍛造には、β単相域で鍛造を完了させるもの、β単相域外(α+β二相域)に温度降下後も鍛造が継続されるもの、およびα+β二相域に温度が降下してから鍛造を開始するものがある。
β鍛造材は、鍛造条件やその後の冷却条件によって、旧β粒(前記等軸状のβ粒)の結晶粒界上のα相の形態や径、および粒内の針状α相の長さや径が変化し、さらには粒界上の膜状のα相が存在しないものもあり得る。
一般的に、α+β型チタン合金鍛造材の破壊靱性は、β鍛造材の方がα+β鍛造材よりも優れており、疲労強度特性は、α+β鍛造材の方がβ鍛造材よりも優れている。
航空機のエンジンに用いられる部品(エンジン部品)には高い疲労強度特性が要求される。かかる要求を満たすべく、エンジン部品にはα+β型チタン合金鍛造材が多く使用されている。
また、エンジン部品には高い信頼性も要求される。かかる要求を満たすべく、エンジン部品に対して超音波探傷検査を行い、欠陥の有無を検査している。超音波探傷検査は、探触子から発信(送信)された超音波を被検査体の表面から内部に入射させ、傷などの欠陥で反射する反射波を同じく探触子で受信することで内部の欠陥の有無を判定する検査である。
しかし、α+β型チタン合金鍛造材は、α+β鍛造材かβ鍛造材かに係わらず、α相とβ相が共存しているため材料組織に起因するノイズが高い。この高いノイズのため、欠陥の検出精度が低下したり、材料組織起因のノイズを欠陥と誤認したりすることがある。そのため、α+β型チタン合金で形成されるエンジン部品等には、超音波探傷時のノイズを低減して超音波探傷性を向上させることが求められている。
なお、α+β型チタン合金鍛造材においては、旧β粒界に沿って析出するα相(粒界α相)が連続的である程、疲労亀裂の発生や進展が起こり易くなることが知られている。このような疲労亀裂の発生や進展を起こり難くするには、粒界α相の連続性を断ち切るのがよいと言われている。粒界α相の連続性を断ち切るには、鍛造時の歪量を増やすことが有効であるが、それは同時に超音波探傷性の悪化を招くことになる。
超音波探傷性を向上させるという要望に応えるため、例えば、特許文献1には、加熱状態の粗鍛造あるいは分塊圧延されたα+β型チタン合金スラブをβ単相域より0.5℃/s以上の冷却速度で冷却した後、〔β変態点〕〜〔β変態点−200℃〕のα+β温度域に加熱して高さ比10%以上の熱間鍛造を施し、それからα+β温度域での熱間圧延と、α+β温度域での熱処理を順次施すことを特徴とするα+β型チタン合金板の製造方法が記載されている。
この特許文献1によれば、かかる発明は、等軸で微細なα粒組織を形成させることにより、微小な欠陥を検出することも可能な程度に超音波ノイズを低減できると記載されている。
また、前記したように、航空機のエンジン部品には高い疲労強度特性が要求されている。かかる要望に応えるため、例えば、特許文献2には、[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.5+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe]という式から求められるMo当量が5〜10%のニアβ型チタン合金であって、金属組織中に占める一次α相の平均面積率が40〜52%であるとともに、前記一次α相の平均アスペクト比が3.3〜5.0、平均最大長径が25〜40μmであることを特徴とする低サイクル疲労特性に優れたニアβ型チタン合金が記載されている(但し、上式で[ ]は、各元素の含有量(質量%)を示す。)。
この特許文献2によれば、かかる発明は、平均アスペクト比が3.3〜5.0である針状の一次α相の平均面積率を40〜52%とすることで、引張強度、伸びが優れている上に、高い低サイクル疲労寿命を有する低サイクル疲労特性に優れたニアβ型チタン合金を得ることができると記載されている。
特許第2988269号公報 特開2011−102414号公報
特許文献1に記載の発明によって超音波探傷性を向上させ、特許文献2に記載の発明によって疲労強度特性を向上させることは可能である。しかしながら、超音波探傷性と疲労強度特性はトレードオフの関係にあり、両者を高いレベルで両立させるのは極めて困難なことである。産業界からは、より信頼性の高いエンジン部品を具現するため、疲労強度特性と超音波探傷性をより高いレベルで両立させたチタン合金鍛造材の開発が熱望されている。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、超音波探傷性を悪化させることなく疲労強度特性を向上させたチタン合金鍛造材およびその製造方法を提供することを課題とする。
〔1〕前記課題を解決するため、本発明に係るチタン合金鍛造材は、α+β型チタン合金からなるチタン合金鍛造材であって、アスペクト比が3以下、鍛造方向の径が20μm以上、かつ、結晶粒界に占めるα相の割合が80%以上の旧β粒である非扁平粒の面積率が10%未満、アスペクト比が3を超え、鍛造方向の径が20μm以上700μm以下、かつ、結晶粒界に占めるα相の割合が80%以上の旧β粒である扁平粒の面積率が85%以上、および、前記扁平粒の結晶粒界に析出したα相の結晶方位の平均方位差が6°以上であることを特徴としている。
このように、非扁平粒の面積率を10%未満とすることで疲労強度を低下させ難くし、扁平粒の面積率を85%以上とすることで高い破壊靱性および疲労強度を得ることができる。そして、扁平粒の結晶粒界に析出したα相の結晶方位の平均方位差を6°以上とすることで、当該α相の連続性を断ち切り、疲労亀裂の発生や進展を起こり難くしている。そして、このような手法によれば、超音波探傷性が悪化することがない。つまり、超音波ノイズを発生し難くすることができる。
〔2〕本発明に係るチタン合金鍛造材は、次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqが、2.7を超え15未満であるチタン合金からなるのが好ましい。
[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・(1)
ただし、前記式(1)の右辺における[ ]内の各元素記号は、前記チタン合金に含有される各元素の含有量(質量%)を表す。
このようにすると、旧β粒の扁平粒による破壊靱性および疲労強度の向上効果が一層得られる。
〔3〕本発明に係るチタン合金鍛造材は、厚さが、最薄部で30mm以上、平均で70mm以上あるのが好ましい。
厚さをこのようなサイズで規定しているので、大型鍛造材を提供することができる。
〔4〕本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、β鍛造を行って前記〔1〕から〔3〕のいずれか1つに記載のチタン合金鍛造材を製造するチタン合金鍛造材の製造方法であって、前記β鍛造は、β変態点をTβで表したとき、チタン合金を(Tβ+10)℃以上に加熱してβ結晶粒径が300μm以上1000μm以下の範囲になるまで保持する加熱工程と、鍛造温度T[℃]が次式(2)を満足し、かつ前記鍛造温度Tとの関係で表される次式(3)および式(4)のそれぞれの左辺の値が当該式(3)および式(4)を満足する条件にて前記チタン合金を鍛造し、チタン合金鍛造材を製造する鍛造工程と、前記鍛造したチタン合金鍛造材を(Tβ−150)℃よりも低い温度に冷却する冷却工程と、を含むことを特徴としている。
β−150≦T≦Tβ+100 ・・・(2)
Ln(S)+22800/(T+273)−18.6≦0 ・・・(3)
Ln(S)+22800/(T+273)−13.2≧0 ・・・(4)
ただし、前記式(2)〜式(4)において、Tβは、前記β変態点[℃]を表し、Tは、前記鍛造温度[℃]を表し、Sは、鍛造時のひずみ速度[s-1]を表す。
このように、鍛造温度とひずみ速度を特定の範囲に制御することで、鍛造時にサブグレイン組織を発達させることができる。これにより、前記〔1〕に記載したように、扁平粒の結晶粒界に析出するα相組織を所望の形態とすることができ、疲労強度と超音波探傷性に優れたチタン合金鍛造材を製造することができる。
〔5〕本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、チタン合金からなるインゴットを鍛造してビレットにするビレット鍛造工程を含み、前記ビレット鍛造工程と前記加熱工程の間に、前記ビレットにしたチタン合金をα+β二相域にて鍛造するα+β鍛造工程を有するのが好ましい。
このようにすると、加熱工程にてβ結晶粒径を安定的に所望の範囲に制御することができる。
〔6〕本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、前記〔5〕に記載のビレットにしたチタン合金が針状組織を有するものであってもよい。
このようにすると、針状組織を有するチタン合金であっても、前記〔5〕に記載した鍛造を行うことで、加熱工程にてβ結晶粒径を安定的に所望の範囲に制御することができる。
〔7〕本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、前記冷却工程後、前記β鍛造における圧下量の最も大きい方向と平行な方向に超音波を照射して前記チタン合金鍛造材を探傷する超音波探傷工程を含むのが好ましい。
このようにすると、欠陥等のないチタン合金鍛造材を提供することができる。
〔8〕本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、前記チタン合金鍛造材が、航空機のエンジン部品の製造に使用される材料であるのが好ましい。
このようにすると、欠陥等のないエンジン部品を用いた航空機用のエンジンを具現できる。
本発明に係るチタン合金鍛造材は、超音波探傷性を悪化させることなく疲労強度特性を向上させることができる。
本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、超音波探傷性を悪化させることなく疲労強度特性を向上させたチタン合金鍛造材を製造することができる。
本発明の一実施形態に係るチタン合金鍛造材の金属組織を説明する概略断面図である。 本発明の一実施形態に係るチタン合金鍛造材の製造方法を説明するフローチャートである。 試験体No.2のSEM/EBSD像である。図中のスケールバーは10μmを示す。 試験体No.3のSEM/EBSD像である。図中のスケールバーは10μmを示す。 一般的なα+β鍛造材の電子顕微鏡像である。図中のスケールバーは100μmを示す。 一般的なβ鍛造材の電子顕微鏡像である。図中のスケールバーは100μmを示す。
以下、適宜図面を参照して本発明に係るチタン合金鍛造材およびその製造方法を実施するための形態(実施形態)について詳細に説明する。はじめに、本発明に係るチタン合金鍛造材の一実施形態について説明する。
[チタン合金鍛造材]
本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、β鍛造をされたチタン合金鍛造材である。すなわち、本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、α+β型チタン合金(以下、単に「チタン合金」という。)からなり、従来のβ鍛造材と同様に、旧β粒の結晶粒界に析出したα相(粒界α相(図3参考))や旧β粒内に針状形状で析出したα相(図3参考)を有する。
β鍛造においては、チタン合金材がβ変態点(Tβ)以上の温度域(β単相域)に加熱されて保持されることでβ単相状態となって、アスペクト比が1に近い等軸状のβ相の結晶粒(β結晶粒、β粒)が形成され成長する。そして、図1に示すように、鍛造加工によりβ結晶粒が潰されて鍛造方向(圧下方向)に垂直に広がって扁平形状に変形し、パンケーキ形状となったβ結晶粒(旧β粒)(図1の符号2参照。以下、必要に応じて旧β粒2という。)が積み重なった多結晶構造の組織となる。鍛造後に冷却されてTβ未満の十分に低い温度域(α+β二相域)に降下すると、旧β粒2の粒界3上や粒内にα相が析出する。したがって、β鍛造材において、旧β粒2は、径が鍛造方向において最小となる場合が多い(図1の径L1参照)。また、チタン合金鍛造材1は、鍛造後に、冷却が遅くて温度がβ単相域である時間が長いと、新たに等軸状のβ粒が形成され成長する。
本実施形態に係るチタン合金鍛造材における非扁平粒の面積率は10%未満であり、扁平粒の面積率が85%以上であり、かつ、扁平粒の結晶粒界に析出したα相(以下では、「扁平粒の粒界α相」ということもある。)の結晶方位の平均方位差が6°以上である。
なお、本発明における「非扁平粒」とは、アスペクト比が3以下、鍛造方向の径が20μm以上、かつ、結晶粒界に占めるα相の割合が80%以上の旧β粒をいう。
また、本発明における「扁平粒」とは、アスペクト比が3を超え、鍛造方向の径が20μm以上700μm以下、かつ、結晶粒界に占めるα相の割合が80%以上の旧β粒をいう。
非扁平粒と扁平粒の定義において、結晶粒界に占めるα相の割合を80%以上と規定した。その理由は、サブグレインを除外し、再結晶β粒のみに着目した面積率を規定するためである。なお、再結晶β粒は、その粒界が直線状の粒界α相で占有される。
また、非扁平粒と扁平粒ともに、あまり細かい結晶粒が含まれてくると測定が困難になるため、最低寸法を規定した。
扁平粒について径の上限を規定している理由は、これより大きな扁平粒がたくさん含まれるものを除外するためである。つまり、後述する結晶方位の平均方位差の測定は、ある程度の大きさの扁平粒に限定する必要がある。これは、大きな扁平粒が大部分を占めるようになると、粒界も少なくなり、ごく僅かしかない粒界α相の結晶方位の平均方位差を規定しても所望の効果を得ることができなくなってしまうからである。したがって、そのようなチタン合金を除外するため、扁平粒の径の上限を規定した。また、扁平粒の径に上限を設けたのは、上限を超えると疲労強度が低下することも理由に挙げられる。
アスペクト比とは、旧β粒2における、鍛造方向の結晶粒の径L1と、鍛造方向に対して垂直な方向の結晶粒の径L2の比をいう。図1を参照して説明すると、上下方向の径L1に対する左右方向の径L2の比となる。
(非扁平粒の面積率が10%未満)
非扁平粒の粒界には連続的な粒界α相が形成され易いため、疲労強度が低下する。非扁平粒の面積率を10%未満とすれば、連続的な粒界α相の形成量が少なくなるため、疲労強度が低下し難くなる。一方、非扁平粒の面積率が10%以上になると、連続的な粒界α相の形成量が多くなるため、疲労強度が低下する。
好ましい非扁平粒の面積率は8%未満であり、より好ましくは6%未満である。
(扁平粒の面積率が85%以上)
本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、従来のβ鍛造材と同様、扁平形状のβ結晶粒(旧β粒)の多結晶構造によって高い破壊靱性および疲労強度を得ている。チタン合金鍛造材は、鍛造前はアスペクト比の小さい(1に近い)等軸状であった旧β粒が、鍛造時に加えられたひずみ量が多くなるにしたがってアスペクト比が大きくなり(扁平になり)、疲労強度向上に対する寄与度が高くなる。扁平粒の面積率を85%以上とすることによって、疲労強度を確実に向上させることができる。一方、扁平粒の面積率が85%未満になると、十分な疲労強度が得られない。なお、扁平粒の面積率は90%以上とするのが好ましい。
(扁平粒の粒界α相の結晶方位の平均方位差が6°以上)
扁平粒の粒界α相の結晶方位の平均方位差が小さいということは、ほぼ同じ結晶方位を有する粒界α相が長い距離に渡って旧β粒界に沿って存在していること、すなわち連続的であることを意味する。したがって、平均方位差が小さいと疲労強度の低下を引き起こすおそれがある。平均方位差が6°以上あれば疲労強度は低下し難いが、平均方位差が6°未満になると疲労強度が大きく低下するおそれがある。なお、かかる平均方位差は10°以上とするのが好ましく、15°以上とするのがより好ましく、25°以上とするのが更に好ましい。平均方位差の上限は特に規定しないが、結晶学的に90°を超えることは無く、70°が現実的な上限となる。
(測定方法等について)
本発明に係るチタン合金鍛造材の旧β粒のアスペクト比、径および非扁平β粒(非扁平粒)の面積率および扁平β粒(扁平粒)の面積率は、当該チタン合金鍛造材の鍛造方向と平行な断面における1ないし複数視野から求めることができる。すなわち、チタン合金鍛造材を鍛造方向と平行な面で切断し(図1参照)、断面を研磨(機械研磨、電解研磨)仕上げした後に腐食させる。そして、この断面から例えば1ないし数mm角程度の視野を1ないし複数選択し、光学顕微鏡により断面組織を観察し、平均値を算出することで、前記した旧β粒のアスペクト比等を求めることができる。
また、断面の鍛造方向とこれに直交する方向とのそれぞれにおける旧β粒の長さ(径)を測定してアスペクト比を算出し、径およびアスペクト比に基づいて非扁平粒を特定することができる。
さらに、本実施形態に係るチタン合金鍛造材の扁平粒の粒界α相の結晶方位の平均方位差は、当該チタン合金鍛造材の鍛造方向と平行な断面における複数視野における測定結果から求めることができる。
すなわち、チタン合金鍛造材を鍛造方向と平行な面で切断し(図1参照)、断面を機械研磨し、電解研磨によって仕上げた後に、この断面から扁平粒の粒界α相が中心付近となるように、例えば100μm角程度の視野を選択し、SEM/EBSD(Scanning Electron Microscope/Electron Back Scatter Diffraction)法により断面組織の結晶方位を測定する。
得られた測定結果に対して、鍛造方向と平行に直線を10μm間隔で引き(図1中の一点鎖線)、これらの直線と粒界α相が交差する(交点P1、P2・・・P10)各粒界α相について、隣り合う粒界α相間の結晶方位差を測定する。全ての隣り合う交点間の方位差について平均をとることで平均方位差を求めることができる。
なお、扁平粒の粒界α相の結晶方位の平均方位差を求めるにあたって、測定視野内で旧β粒界が枝分かれしていない(鍛造方向に垂直な方向に複数の旧β粒が存在しない)視野を選択することが望ましいが、複数の旧β粒を含む場合は以下のように取り扱う。すなわち、一方が非扁平粒である場合は、扁平粒の粒界に沿って結晶方位差の算出を行う。旧β粒の粒界を挟んで両側とも扁平粒である場合は、枝分かれ先のどちらの粒界α相も対象にそれぞれ結晶方位差を算出する。
また、扁平粒の粒界に析出する粒界α相の厚さおよび非扁平粒の粒界に析出する粒界α相の厚さはいずれもβ鍛造材全体の平均で3μm以下であるのが好ましい。β鍛造後の冷却条件が適切でない場合、粒界α相の厚さは3μmを超え、疲労強度が劣化する虞がある。粒界α相の厚さは、ある視野内の平均が3μm以下であればβ鍛造材全体の平均が3μm以下であると類推できる。
以上に説明した本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、α+β型チタン合金であれば適用することができるが、次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqが2.7を超え15未満であるのが好ましい。
(Mo当量[Mo]eq:2.7を超え15未満)
チタン合金は、Mo当量が大きくなるにしたがってα相の体積含有率が減少し、旧β粒界の形状の影響が強くなる。そのため、前記した旧β粒の扁平粒による破壊靱性および疲労強度の向上効果をいっそう得ることができる。次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqは4.5以上がより好ましく、6.5以上がさらに好ましい。一方、チタン合金は、次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqが大きくなるに連れて合金元素が偏析し易くなり、組織がばらつく虞がある。そのため、次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqは15未満とする。なお、次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqは12以下とするのがより好ましい。
[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・(1)
ただし、式(1)の右辺における[ ]内の各元素記号は、チタン合金に含有される各元素の含有量(質量%)を表す。
このようなチタン合金としては、具体的にはAMS4981やAMS4995で規定されるチタン合金が挙げられる。
AMS4981で規定されるチタン合金(Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金、Ti−6246合金)は、Al:5.50〜6.50質量%、Sn:1.75〜2.25質量%、Zr:3.50〜4.50質量%、Mo:5.50〜6.50質量%を含有し、残部はTiおよび不可避的不純物である。各元素の平均値から計算されるMo当量は6.0である。前記した不可避的不純物としては、概ね、N:0.04質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、Fe:0.15質量%、O:0.15質量%を含有する。
また、AMS4995で規定されるチタン合金(Ti−5Al−2Sn−2Zr−4Cr−4Mo合金、Ti−17合金)は、Al:4.5〜5.5質量%、Sn:1.5〜2.5質量%、Zr:1.5〜2.5質量%、Cr:3.5〜4.5質量%、Mo:3.5〜4.5質量%、O:0.08〜0.12質量%であって、残部はTiおよび不可避的不純物である。各元素の平均値から計算されるMo当量は9.5である。前記した不可避的不純物としては、概ね、Fe:0.03質量%、C:0.05質量%、N:0.04質量%、H:0.0125質量%を含有する。
本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、航空機のエンジン部品の製造に使用される材料として好適である。特に、超音波探傷検査にて内部の欠陥を検査することを必要とするものに好適である。例えば、航空機のエンジン部品に用いられるディスクやシャフトなどの大型のチタン合金鍛造材(大型鍛造材)に適用することができる。大型鍛造材とは、厚さが最薄部で30mm以上、平均で70mm以上あるものをいう。なお、大型鍛造材の厚さの上限は特に限定されるものではないが、例えば350mmなどである。
(非扁平粒や扁平粒の面積率、扁平粒の粒界α相の結晶方位の平均方位差の制御について)
前記した非扁平粒の面積率、扁平粒の面積率、扁平粒の粒界α相の結晶方位の平均方位差の制御は、後記するチタン合金鍛造材の製造方法により行うことができる。詳しくは後述する。
以上に説明したように、本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、超音波探傷性を悪化させることなく疲労強度特性を向上させることができる。そのため、本実施形態に係るチタン合金鍛造材によれば、超音波探傷検査にて欠陥を高精度で検出可能となり、航空機のエンジン部品等の製品の信頼性が向上する。また、疲労強度に優れるので、エンジン部品を薄肉化することができ、軽量化することもできる。そして、軽量化により、燃費向上を図ることもできる。さらに、疲労強度に優れるので、より厳しい条件でエンジンを運転できるようになる。
[チタン合金鍛造材の製造方法]
次に、図2を参照して、本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、α+β型チタン合金からなるインゴット、より好適には、AMS4981やAMS4995で規定されるチタン合金からなるインゴットを公知の条件でビレットに鍛造し(ビレット鍛造工程S11)、必要に応じて機械加工を行ってから、後に詳述する特定の条件のβ鍛造を行って所望の形状のチタン合金鍛造材(製品)を製造する。
(ビレット鍛造工程)
ビレット鍛造工程S11は、例えば、β鍛造→α+β鍛造→β熱処理→応力除去焼鈍→α+β鍛造→焼鈍の順序で行われる。
α+β鍛造はβ変態点(適宜、Tβと表す)よりも10〜200℃程度低い温度域に、β鍛造はTβよりも10〜150℃程度高い温度域にそれぞれ加熱し、所定の鍛錬比(鍛伸方向に垂直な断面における、鍛造前に対する鍛造後の面積比、例えば1.5)の鍛造を行い、室温に冷却する。
ビレット鍛造工程S11における鍛造をα+β鍛造とするかβ鍛造とするかは製品に要求される特性に応じて設定すればよく、鍛造の回数も所望するビレットの径等に応じて行えばよい。また、2回の焼鈍はそれぞれ必要に応じて行えばよく、例えば2回目の焼鈍はその後の機械加工を行い易くするため、および超音波探傷検査を行い易くするために行われる。
さらに、ビレット鍛造工程S11で製造したビレットを機械加工することで、表面の酸化皮膜やシワやバリが除去され、表面粗度を整えることができる。これにより、その後の鍛造(チタン合金鍛造材の製造におけるβ鍛造)が行い易くなる。
そして、本発明に係るチタン合金鍛造材を製造するために、チタン合金ビレットを以下の方法でβ鍛造する。なお、β鍛造前にチタン合金ビレットに対してα+β二相域にて荒地鍛造を行い、所望の形状に仕上げてもよい。
なお、従来は前記したように、α+β鍛造で仕上げられたビレット(α+βビレット)が使用されていた。α+βビレットは、荒地鍛造の実施に特別な注意を払う必要は無かった。
しかし、昨今、チタン合金鍛造材に求められる特性の高度化に伴い、ビレットにも高い特性が求められる傾向にある。特に超音波探傷検査にて、従来に増して小さな欠陥を検出することが求められる等の理由から、最終仕上げのα+β鍛造の後、β域にて焼鈍する、もしくは、最終仕上げの温度域を従来のα+β域からβ域に引き上げることにより、最終組織をβ組織とするビレット(βビレット)の適用が検討されている。β組織は、α+β組織と異なり、組織が粗く、α相の形態が針状形状であることから、βビレットを用いる場合、従来と同じ方法で製造すると所望の特性を発現できない虞がある。
そのため、βビレットを用いる場合は、β鍛造の前工程、具体的にはビレット鍛造工程S11と後記する加熱工程S1の間に、βビレット(チタン合金)をα+β二相域にて鍛造するα+β鍛造工程S12(図2参照)を有するのが好ましい。かかる鍛造を行う際は、ビレット内の製品となる箇所に、0.05以上の歪、より好ましくは0.10以上の歪を加える。このようにすると、次工程の加熱工程S1にて、β結晶粒径を安定的に所望の範囲に制御することが可能となる。
本実施形態に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、前記したように公知のビレット鍛造工程S11によって製造されたビレットを用いて、以下に説明する条件のβ鍛造を行う。β鍛造は、図2に示すように、加熱工程S1と、鍛造工程S2と、冷却工程S3を含む。これらの工程はこの順に行うが、加熱工程S1の前、これらの工程の間、および冷却工程S3の後に他の工程を含んでいてもよい。なお、加熱工程S1、鍛造工程S2および冷却工程S3は連続して行うのが好ましい。
加熱工程S1の前に行う他の工程としては、例えば、前記した荒地鍛造を行う荒地鍛造工程(図示せず)が挙げられる。
加熱工程S1と鍛造工程S2の間に行う工程としては、例えば、加熱工程S1でビレットの温度が高くなり過ぎた場合に、これを所定の温度に下げるために放冷する放冷工程(図示せず)や、鍛造するにあたり、必要に応じてビレット表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布工程(図示せず)などが挙げられる。
鍛造工程S2と冷却工程S3の間に行う工程としては、例えば、鍛造したチタン合金鍛造材の調質等を目的として所定の条件で保持する保持工程(図示せず)などが挙げられる。
また、冷却工程S3の後に行う他の工程としては、後述するように、調質熱処理工程(図示せず)や機械加工工程(図示せず)が挙げられる。また、後記する超音波探傷工程S4が挙げられる。
なお、以下の説明ではチタン合金鍛造材のβ鍛造前をチタン合金素材と称し、チタン合金素材として前記ビレット鍛造工程S11で製造したビレットを適用した場合を例に説明する。また、加熱工程S1、鍛造工程S2および冷却工程S3を連続して行う場合を例に説明する。
(加熱工程)
加熱工程S1は、ビレットを(Tβ+10)℃以上に加熱してβ結晶粒径(平均粒径)が300μm以上1000μm以下の範囲になるまで保持する工程である。なお、特許請求の範囲では本工程において当該ビレットを「チタン合金」と記載している。
鍛造前に行われるビレットの(Tβ+10)℃以上への加熱は、一般的なβ鍛造と同様、ビレットをβ単相域まで加熱してβ相単相にするために行われる。
β単相域とは、β変態点(Tβ)以上の温度域をいい、Tβとは、チタン合金素材の全体(100%)がβ相となる最低温度をいう。Tβは、チタン合金素材を形成するチタン合金の組成によって変化する。例えば、AMS4981で規定されるチタン合金(Ti−6246合金)のTβは960℃程度であり、AMS4995で規定されるチタン合金(Ti−17合金)のTβは890℃程度である。
一方、ビレットはβ単相域において高温になるほどβ相の結晶粒の成長速度が速くなるため、結晶粒径の制御が難しくなる。また、ビレットの温度が(Tβ+250)℃を超えると、表面に厚い酸化スケールが形成され易く、鍛造後に除去する必要が生じる。そのため、加熱工程S1でのビレットの加熱温度は(Tβ+250)℃以下が好ましい。
ビレットを加熱してβ単相域に到達させた後、鍛造開始前に前記温度範囲で一定時間保持し、β結晶粒を適度な大きさに成長させる。具体的にはβ結晶粒を径300μm以上1000μm以下の範囲に成長させる。保持時間は、チタン合金の種類やビレットの保持温度によって異なるが、例えば960℃で30〜600分間程度保持すればよい。なお、いったん所望のβ結晶粒組織が形成された後は、ビレットの温度は、鍛造前に(Tβ+10)℃未満に降下してもよいが、後記するように、鍛造完了まで(Tβ−150)℃以上の温度域で保持するのが好ましい。
このとき、β結晶粒の粒径が前記した範囲にあると、所望の疲労強度特性が得られ、製造が容易である。これに対し、β結晶粒の粒径が300μm未満であると製造が困難となり、β結晶粒の粒径が1000μmを超えると疲労強度特性が低下し易い。なお、β結晶粒の粒径は800μm以下とするのが好ましい。
(鍛造工程)
鍛造工程S2は、鍛造温度T[℃]が次式(2)を満足し、かつ前記鍛造温度Tとの関係で表される次式(3)および式(4)のそれぞれの左辺の値が当該式(3)および式(4)を満足する条件にてビレットを鍛造し、チタン合金鍛造材を製造する工程である。
β−150≦T≦Tβ+100 ・・・(2)
Ln(S)+22800/(T+273)−18.6≦0・・・(3)
Ln(S)+22800/(T+273)−13.2≧0・・・(4)
ただし、式(2)〜式(4)において、Tβは、β変態点[℃]を表し、Tは、鍛造温度[℃]を表し、Sは、鍛造時のひずみ速度[s-1]を表す。なお、本明細書におけるLnとは自然対数である。
なお、式(3)の好ましい条件は、
Ln(S)+22800/(T+273)−17.1≦0
である。
鍛造工程S2では、式(2)のTβ−150≦T≦Tβ+100℃という温度範囲で鍛造を行うことでβ結晶粒の粒界上および粒内にα相を析出し難くしている。これにより、破壊靱性および疲労強度が低下し難くしている。
鍛造温度Tが(Tβ−150)℃未満になると、β結晶粒の粒界上および粒内にα相が析出し始める。鍛造を完了する前にこれらのα相が形成されると破壊靭性が劣化する虞がある。したがって、鍛造温度T(より具体的には、ビレットの鍛造の完了時における温度)は、(Tβ−150)℃以上とする。鍛造温度Tは(Tβ−110)℃以上が好ましい。このとき、鍛造に使用される金型は、400℃以上に加熱されていることが好ましく、鍛造温度T(ビレットの温度)に加熱されていることがさらに好ましい。このように加熱された金型を使用することで、鍛造されるビレットの表面が内部に対して早期に冷却され過ぎることがなく、表面近傍も(Tβ−150)℃以上に保持して鍛造を完了することができる。なお、鍛造完了まで(Tβ−150)℃以上の温度域に保持する必要があるのは、チタン合金鍛造材の製品部分であり、鍛造後(冷却後)に除去される表層等の余肉(製品部分以外)における温度は、これに限定されない。
一方、鍛造時の温度が過剰に高いと、鍛造完了後、後記する冷却工程S3で(Tβ−150)℃よりも低い温度まで冷却するのに時間がかかってしまう。そのため、新たなβ粒が成長したり、旧β粒の粒界上にα相が太く(厚く)析出したりして、チタン合金鍛造材の疲労強度が低下する虞がある。したがって、鍛造温度T(より具体的には鍛造の開始から完了までの温度)は、(Tβ+100)℃以下とする。なお、鍛造温度Tは、(Tβ+50)℃以下とするのがより好ましい。
また、鍛造工程S2では、鍛造時のひずみ速度を精緻に制御することで鍛造時にサブグレイン組織を発達させる。鍛造時のひずみ速度は、鍛造金型の移動速度、つまり、鍛造金型が鍛造材と接触してこれを加工している間の速度で制御することができる。このようにしてサブグレイン組織を発達させることで所望の粒界α相組織を形成させることができ、超音波探傷性を悪化させることなく疲労強度特性を向上させたチタン合金鍛造材を製造することができる。
また、鍛造工程S2では、式(3)の左辺の値が当該式(3)を満足する条件で鍛造を行うことで、粒界α相の平均方位差を大きくし、所望の疲労強度が得られるようにしている。式(3)の左辺の値が当該式(3)を満足しない場合、加工後のβ粒界が直線的で粒界α相の平均方位差が小さく所望の疲労強度が得られない。
さらに、鍛造工程S2では、式(4)の左辺の値が当該式(4)を満足する条件で鍛造を行うことで、加工中の非扁平粒の形成を抑制し、疲労強度を低下し難くしている。式(4)の左辺の値が当該式(4)を満足しない場合、加工中に非扁平粒が形成され易く、そのため疲労強度が低下し易くなる。
ここで、式(3)および式(4)の導出について説明する。熱間鍛造組織形成に関して、鍛造温度とひずみ速度の間には、一般的に次の相関関係があることが知られている。
Ln(S)=A−B/T
この式において、Tは、鍛造温度[℃]を表し、Sは、ひずみ速度[s-1]を表し、A、Bは、所望の熱間鍛造組織が形成される鍛造温度とひずみ速度の範囲を規定するための実験によって求められる係数である。つまり、係数Aおよび係数Bは、実験にて鍛造温度とひずみ速度の条件を変えた複数のβ鍛造材を試作し、組織を評価し、所定の組織が形成される鍛造温度とひずみ速度の領域を明らかにし、その境界を表すように決定したものである。
この式に、実験によって求められた係数を代入し、右辺を左辺に移項させ、それぞれ所定の条件を規定する不等式とすることにより、前記式(3)と式(4)をそれぞれ導出することができる。
(冷却工程)
冷却工程S3は、前記鍛造したチタン合金鍛造材を(Tβ−150)℃よりも低い温度に冷却する工程である。ビレットの鍛造完了後、冷却工程S3で(Tβ−150)℃よりも低い温度に冷却することでβ単相域外(α+β二相域)として新たなβ粒の成長を停止させる。また、旧β粒の粒界上にα相が太く(厚く)析出することを抑制して、得られたチタン合金鍛造材の疲労強度の劣化を防止する。したがって、鍛造完了後はできるだけ時間を空けずに冷却を開始するのが好ましい。具体的には、鍛造完了時から1200秒間以内に(Tβ−150)℃よりも低い温度に到達させることが好ましい。そのため、鍛造完了後の冷却速度は10℃/min以上が好ましく、20℃/min以上がより好ましい。一方、冷却速度の上限は特に規定しないが、500℃/min以下が実用的である。また、粒内の針状α相を長くして破壊靭性を向上させるため、冷却速度の上限は500℃/min以下とするのが好ましい。冷却方法は、空冷、送風、水冷、湯冷、油冷等の公知の方法を適用すればよい。なお、チタン合金鍛造材は冷却工程S3で室温まで冷却されるが、(Tβ−150)℃よりも低い温度域における冷却速度は特に規定せず、その他の要求される特性に応じて設定すればよい。
以上のようにして製造されたチタン合金鍛造材は、必要に応じて調質熱処理工程および/または機械加工工程を行った後に、後述する超音波探傷工程S4を行うことで、製品としてのチタン合金鍛造材を製造することができる。
なお、調質熱処理工程は、溶体化処理および時効処理にて調質熱処理を行う工程である。調質熱処理工程は公知の方法で行うことができる。
また、機械加工工程は、機械加工により酸化皮膜や余肉などを除去する工程である。機械加工工程も公知の方法で行うことができる。
これらの工程を行う例として、鍛造完了後のチタン合金鍛造材の表面を1mm以上除去し、表面粗度6.3S以上に平滑化してから、超音波探傷検査を行うことなどを挙げることができる。チタン合金鍛造材は、その後、必要に応じて再度機械加工されてディスクやシャフトのようなエンジン部品等の製品とすることができる。
(超音波探傷工程)
図2に示す超音波探傷工程S4は、冷却工程S3後、必要に応じて調質熱処理工程および/または機械加工工程(いずれも図2において図示せず)を行ったチタン合金鍛造材に対して超音波探傷検査を行う工程である。超音波探傷工程S4では、β鍛造における圧下量の最も大きい方向、すなわち鍛造方向(図1参照)と平行な方向に超音波を照射してチタン合金鍛造材を探傷する。
なお、鍛造における圧下量の最も大きい方向とは、鍛造の前後(チタン合金素材とチタン合金鍛造材)で、寸法の減少率が最大の方向であり、図1に示す鍛造方向である。鍛造方向は、鍛造後(チタン合金鍛造材)の組織における旧β粒の形状からも推定することができる。また、超音波探傷検査の方向とは、送信波の進行方向(チタン合金鍛造材の内部を透過する方向)をいう。チタン合金鍛造材は、鍛造圧下量の最も大きい方向が最もノイズが大きい傾向があるが、本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、かかる方向に探傷しても十分にノイズが少なく、高精度な検査を行うことができる。また、本実施形態に係るチタン合金鍛造材は、探触子を走査するこの方向に垂直な表面の面積が広い場合が多いので検査し易い。
超音波探傷検査は公知の方法で行うことができるが、確実な超音波探傷を行うため、次のような態様とするとよい。例えば、探触子はプローブ径が5〜30mmの範囲のものから選択し、超音波(送信波)は周波数1〜20MHzの範囲を使用することが好ましい。プローブ径は10mm以上、超音波の周波数は15MHz以下が好ましい。また、欠陥の鍛造品表層近傍での検出分解能が高い水浸探傷法にて検査を行うのが好ましい。本実施形態に係るチタン合金鍛造材の形状に応じて、1方向での探傷だけではなく、方向を変化させて合計2回以上検査することが好ましい。さらに、チタン合金鍛造材の厚さ(送信波の進行方向長さ)によっては、通常行う方向とは逆の方向から送信波を入射してもよい。
以上に説明したチタン合金鍛造材の製造方法によれば、前記した本実施形態に係るチタン合金鍛造材を容易に製造することができる。また、本実施形態に係るチタン合金鍛造材の製造方法によれば、前記したチタン合金鍛造材に対して高精度な超音波探傷検査を行ったチタン合金鍛造材、すなわち製品を製造することができる。
次に、本発明の効果を確認した実施例について説明する。
〔実施例1:α+βビレットを用いた試験体作製〕
チタン合金素材として、AMS4995で規定されるTi−17合金(Tβ:890℃、Mo当量:含有される元素の平均値から計算されるMo当量は9.5)からなるα+βビレットを用いた。鍛造時の圧下率は67%とし、鍛造(β鍛造)後のチタン合金鍛造材における鍛造方向の厚さは45mmとした。
(β鍛造)
ビレットの内部の温度分布が一定となるように、炉内にて850℃で2時間保持した後、980℃に加熱して、鍛造前のβ粒が平均粒径で400〜600μmになるまで保持した。その後、炉から出して表1のNo.1〜9に示す鍛造温度まで空冷させ、予め低周波加熱装置で鍛造温度に加熱した金型を用いて鍛造した。鍛造は、平坦な面形状の一対の金型を用い、表1に記載する(平均)ひずみ速度となる速度で金型を移動させ、変形方向(圧下方向)をビレット軸方向とした。なお、表1中の下線は本発明の要件を満たさないことを示している。
鍛造完了後、直ちに(15秒以内に)金型から取り出し、室温まで冷却して、チタン合金鍛造材を得た。なお、ビレットは、加熱、保持および鍛造時に、1/2H、1/4D位置(H:鍛造材の厚み、D:鍛造材の直径)、すなわち鍛造材の厚み方向と半径方向のそれぞれの中間位置の温度を熱電対で測定して鍛造温度等を管理した。なお、鍛造温度等の管理において、鍛造後の冷却速度(28℃/min)は予備実験により測定した。すなわち、チタン合金鍛造材と同形状のチタン合金素材を用意し、その1/2H、1/4D位置に熱電対を挿入し、1000℃に加熱保持した後、前記鍛造と同じ方法にて冷却を行い、冷却曲線を取得した。その後、900℃に到達した時から750℃に到達した時までの冷却速度が一定であるとして冷却速度を算出した。
(調質)
室温に冷却したチタン合金鍛造材をTβ未満(α+β二相域)である805℃に加熱して4時間保持し、150℃/minで冷却する溶体化処理を行った後、610℃で8時間保持して60℃/minで室温まで冷却する時効処理を行い、No.1〜9に係る試験体を製造した。このようにして製造したNo.1〜9に係る試験体について、材料組織の観察、扁平粒の結晶粒界に析出したα相(粒界α相)の結晶方位の平均方位差、機械的特性として疲労特性、および超音波探傷性を調べた。これらの結果をそれぞれ、扁平粒の面積率(%)、粒界α相の平均方位差(°)、非扁平粒の面積率(%)、疲労特性および超音波探傷性として表1に示す。なお、これらは以下のようにして調べた。
〔材料組織の観察〕
(旧β粒のアスペクト比および径、旧β粒界の角度、非扁平β粒の面積率)
各試験体における1/2H、1/4D位置を含む15mm角の立方体の小片試料を試験体から切り出した。そして、この小片試料から試験体の鍛造方向と半径方向とに平行な面となる断面を切り出した。さらにこの断面をエメリー紙で機械研磨し、ダイヤモンド砥粒による仕上げ研磨を実施した後、フッ硝酸溶液で腐食を行い、組織観察に供した。
組織観察は光学顕微鏡にて行い、倍率100倍で3200μm×2000μmの視野をパノラマ状に観察した。旧β粒について、鍛造方向(軸方向)の径とアスペクト比を求め、視野における旧β粒のすべてについて平均値を算出し、また、アスペクト比および径に基づき非扁平β粒(非扁平粒)と扁平β粒(扁平粒)を検出して、その視野における面積率(%)を求めた。なお、非扁平粒のアスペクト比は3以下、非扁平粒の径は鍛造方向の径で20μm以上とした。また、扁平粒のアスペクト比は3を超え、扁平粒の径は鍛造方向の径で20μm以上700μm以下とした。
(平均方位差)
試験体を電解研磨仕上げし、SEM/EBSD法により断面組織の結晶方位を測定した(試験体の採取位置や観察面は前記光学顕微鏡観察と同じ。)。測定した視野のサイズは鍛造方向に60μm、それに垂直な方向に100μmであり、5視野に対して測定を行った。その結果の例を図3および図4に示す。なお、図3は、試験体No.2の断面組織の結晶方位を測定したものであり、図4は、試験体No.3の断面組織の結晶方位を測定したものである。
これらの測定結果に対して、鍛造方向に平行に直線を10μm間隔で引き、これらの直線と粒界α相が交差する各粒界α相について、隣り合う粒界α相間の結晶方位差を測定した。全ての交点について結晶方位差の算出を行い、その平均をとることで平均方位差を求めた。その結果を表1に示す。平均方位差は6°以上を合格とした。
(機械的特性)
チタン合金鍛造材の機械的特性の評価として、疲労強度(疲労特性)の評価を実施した。試験体の1/2H、1/4D位置から、試験体の周(接線)方向が荷重軸と平行になる試験片を切り出し、機械的特性と、後記する超音波探傷性とを評価するため別々に用意した。
機械的特性は、室温にてASTM規格のE466に準拠した低サイクル疲労試験を行った。低サイクル疲労試験は、ひずみ制御にて、最大ひずみ0.9、ひずみ比1.0、三角波の条件で試験片が破断するまで行った。破断サイクル数について、試験体No.1を基準(1.0)として規格化した値を算出し、破断サイクル数比として表1に示した。なお、破断サイクル数比が1.0以上を合格とした。
(超音波探傷性)
試験体から厚み41mmの立方体の試験片を切り出し、水浸探傷法にて超音波探傷検査を行った。プローブ径19.05mm、焦点距離152.4mmの探触子を使用し、周波数5MHzの超音波を送信波とし、水距離(探触子から試験片表面までの距離)は140mmとした。標準化試験片を用いて直径0.79mmの平底穴からの反射強度が80%となるように感度調整を行った後、試験片表面(鍛造方向に垂直な面)における中央の50mm×50mmを検査領域として探触子を移動走査させながら、鍛造方向(試験体の軸方向)と平行な方向に超音波探傷試験を行って、Cスコープを取得した。
なお、Cスコープとは、水距離を一定として被検査体の表面に沿って探触子を移動走査させ、探触子が検出した探傷深さ範囲における最大ノイズ強度値を表面走査点毎に抽出し、二次元表示した探傷結果である。各試験片において移動走査させた探触子が検出した最大ノイズを参考として表1に示す。
表1に示すように、試験体No.1、2、4、6、7、8は本発明の要件を満足するため、優れた疲労強度特性を示した。なお、これらは比較例に対応する試験体No.3に比べていずれも疲労強度特性に優れていたにも関わらず、最大ノイズも増大しておらず、超音波探傷性は悪化していなかった(いずれも実施例)。
一方、試験体No.3は、鍛造温度が低いわりにひずみ速度が速かった。すなわち、鍛造温度とひずみ速度が式(3)を満足しなかった。そのため、試験体No.3は扁平粒の粒界の湾曲が小さくなり、直線的な粒界α相が形成され、疲労強度が低下した(比較例)。
また、試験体No.5は、鍛造温度が高いわりにひずみ速度が遅かった。すなわち、ひずみ速度が式(4)を満足しなかった。そのため、試験体No.5は鍛造中または鍛造直後に非扁平粒が形成され、非扁平粒の面積率が高くなり、疲労強度が低下した(比較例)。
また、試験体No.9は鍛造温度が高く式(2)を満足しなかった。そのため、鍛造直後に再結晶が起こり、非扁平粒の面積率が高くなり、疲労強度が低下した(比較例)。
なお、試験体No.1、5、8、9には、前記した非扁平粒および扁平粒の定義に当てはまらない結晶粒がそれぞれ2%、2%、3%および5%近く形成されていた。
〔実施例2:βビレットを用いた試験体作製〕
実施例1と同様、チタン合金素材として、AMS4995で規定されるTi−17合金(Tβ:890℃、Mo当量:含有される元素の平均値から計算されるMo当量は9.5)からなるβビレットを用いた。
そして、かかるビレットをβ単相域に加熱した後に空冷する熱処理を施してβビレット(以下、「前者のβビレット」という。)を得た。
また、かかるビレットをα+β二相域にて所望の形状に荒地鍛造(α+β鍛造)してチタン合金素材を作製し、鍛造温度を表2のNo.10〜15に示す条件とする以外は実施例1と同様の条件でβ鍛造を行い、βビレットを得た(以下、「後者のβビレット」という。)。また、荒地鍛造で加えた歪(荒地歪)は表2のNo.10〜15に示すとおりである。
このようにして得た後者のβビレットに対して、実施例1で述べたのと同様の条件にて調質を行い、材料組織の観察を行った。なお、α+β二相域での荒地鍛造を行っていない前者のβビレットは、980℃で加熱した際、鍛造前のβ結晶粒径が粗大となり所望のサイズとならなったため、その後の材料組織の観察は行わなかった。
表2に後者のβビレットのβ鍛造の条件と材料組織の観察の結果を示す。
表2に示すように、試験体No.10、11、13、14は本発明の要件を満足するため、優れた疲労強度特性を示した(いずれも実施例)。
一方、試験体No.12は、鍛造温度が低いわりにひずみ速度が速かった。すなわち、鍛造温度とひずみ速度が式(3)を満足しなかった。そのため、試験体No.12は扁平粒の粒界の湾曲が小さくなり、直線的な粒界α相が形成され、疲労強度が低下した(比較例)。
また、試験体No.15は、鍛造温度が高いわりにひずみ速度が遅かった。すなわち、ひずみ速度が式(4)を満足しなかった。そのため、試験体No.15は鍛造中または鍛造直後に非扁平粒が形成され、非扁平粒の面積率が高くなり、疲労強度が低下した(比較例)。
以上、本発明のチタン合金鍛造材およびその製造方法について、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の技術的範囲に包含される。
1 チタン合金鍛造材
2 旧β粒
3 粒界
S1 加熱工程
S2 鍛造工程
S3 冷却工程
S4 超音波探傷工程
S11 ビレット鍛造工程
S12 α+β鍛造工程

Claims (8)

  1. α+β型チタン合金からなるチタン合金鍛造材であって、
    アスペクト比が3以下、鍛造方向の径が20μm以上、かつ、結晶粒界に占めるα相の割合が80%以上の旧β粒である非扁平粒の面積率が10%未満、
    アスペクト比が3を超え、鍛造方向の径が20μm以上700μm以下、かつ、結晶粒界に占めるα相の割合が80%以上の旧β粒である扁平粒の面積率が85%以上、および、
    前記扁平粒の結晶粒界に析出したα相の結晶方位の平均方位差が6°以上
    であることを特徴とするチタン合金鍛造材。
  2. 次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqが、2.7を超え15未満であるチタン合金からなることを特徴とする請求項1に記載のチタン合金鍛造材。
    [Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・(1)
    (ただし、前記式(1)の右辺における[ ]内の各元素記号は、前記チタン合金に含有される各元素の含有量[質量%]を表す。)
  3. 厚さが、最薄部で30mm以上、平均で70mm以上あることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン合金鍛造材。
  4. β鍛造を行って請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のチタン合金鍛造材を製造するチタン合金鍛造材の製造方法であって、
    前記β鍛造は、
    β変態点をTβで表したとき、チタン合金を(Tβ+10)℃以上に加熱してβ結晶粒径が300μm以上1000μm以下の範囲になるまで保持する加熱工程と、
    鍛造温度T[℃]が次式(2)を満足し、かつ前記鍛造温度Tとの関係で表される次式(3)および式(4)のそれぞれの左辺の値が当該式(3)および式(4)を満足する条件にて前記チタン合金を鍛造し、チタン合金鍛造材を製造する鍛造工程と、
    前記鍛造したチタン合金鍛造材を(Tβ−150)℃よりも低い温度に冷却する冷却工程と、を含む
    ことを特徴とするチタン合金鍛造材の製造方法。
    β−150≦T≦Tβ+100 ・・・(2)
    Ln(S)+22800/(T+273)−18.6≦0 ・・・(3)
    Ln(S)+22800/(T+273)−13.2≧0 ・・・(4)
    (ただし、前記式(2)〜式(4)において、Tβは、前記β変態点[℃]を表し、Tは、前記鍛造温度[℃]を表し、Sは、鍛造時のひずみ速度[s-1]を表す。)
  5. チタン合金からなるインゴットを鍛造してビレットにするビレット鍛造工程を含み、
    前記ビレット鍛造工程と前記加熱工程の間に、前記ビレットにしたチタン合金をα+β二相域にて鍛造するα+β鍛造工程を有することを特徴とする請求項4に記載のチタン合金鍛造材の製造方法。
  6. 前記ビレットにしたチタン合金が針状組織を有することを特徴とする請求項5に記載のチタン合金鍛造材の製造方法。
  7. 前記冷却工程後、前記β鍛造における圧下量の最も大きい方向と平行な方向に超音波を照射して前記チタン合金鍛造材を探傷する超音波探傷工程を含むことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のチタン合金鍛造材の製造方法。
  8. 前記チタン合金鍛造材が、航空機のエンジン部品の製造に使用される材料であることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか1項に記載のチタン合金鍛造材の製造方法。
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