JP6083593B2 - 堆積パターンアレイおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は堆積パターンアレイおよびその製造方法に関する。さらに詳細には本発明は、大面積で作製可能な堆積パターンアレイおよびその製造方法に関する。
金属のナノメートルサイズの構造物に光を照射することにより、金属表面に局所表面プラズモンが生じることが知られている。その実体は、電磁波との相互作用により共鳴的に励起された金属自由電子集団の固有振動であり、金属表面に強い電場の局在集中と増強をもたらす。局所表面プラズモン共鳴(Localized surface plasmon resonances:LSPR)は、表面増強分光法およびナノイメージング技術、超微量バイオケミカル検出、サブ波長光導波路および光マニピュレーション、ならびに、発光体の高効率化等、ナノフォトニクスに関連した広汎な研究や技術の基盤をなしてきた。上記用途における技術的発展は、長きにわたり、可視および近赤外の波長域に焦点を当ててきたものが圧倒的である。
近年は上記技術を紫外波長域へと進展させることにも興味が持たれている。紫外線(UV)は、多くの有機分子および固体の電子遷移エネルギーに一致する高いフォトンエネルギーを有している。UVの波長域で表面プラズモンを活用する潜在的優位性は、物質の電子共鳴励起をUVプラズモンによって高い効率で生じさせることができる点にあり、ラマンおよび蛍光分光をはじめとする種々の分光学的手法と効果的に組み合わせることで、DNAやタンパク質の超高感度検出、UVによる物質特性分析、そしてUVナノイメージングなどへの応用が期待される。これは、LSPRの分光学および実用応用上の用途を広範囲に拡大するものである。
UVにおけるプラズモン共鳴を実現するためには、UV波長において、負の誘電定数と小さい消衰係数をもつ金属が必要である。この基準を満たす最良の、そしておそらく唯一選択可能な金属が、アルミニウム(Al)である。プラズモニックナノ構造を作製するために金や銀に代えAlを利用することはLanghammerら(非特許文献1)およびChanら(非特許文献2)により最初に発見された。彼らは、それぞれ、Alのナノディスクおよびナノトライアングルを作製し、それらのサイズを変化させることにより、可視から近紫外にわたる波長におけるLSPRを報告した。また、Ekinciらは、13.4nmのシンクロトロン放射光源を利用した極端紫外線(extreme−UV;EUV)干渉リソグラフィーにより作製した40nmの幅のナノディスクから、270nmを極大とする、深紫外(DUV)波長域における明確なLSPRを最初に報告した(非特許文献3、以下「EUVリソグラフィー法」という)。
深紫外でのプラズモン共鳴を実現するためには、例えば、数十ナノメートルの大きさのアルミニウムナノ粒子を作製する必要がある。さらに、UVプラズモンのセンサーやデバイスへの応用を考慮すると、プラズモン共鳴エネルギー(すなわちLSPRの波長)を、興味対象となる材料の電子共鳴エネルギーに一致するように調節する技術が必要である。材料の電子共鳴エネルギーは例えば深紫外などの紫外光の波長領域となる場合がある。LSPRのエネルギー(すなわちLSPRの波長)を所望の値に調節するためには、LSPRを発現する金属(この場合はアルミニウム)のナノ粒子において、サイズを精密に調節する必要がある。しかし、そのようなサイズにおいて、精密なサイズの制御を簡便に行うことができる手法は現時点では知られていない。特にアルミニウムはイオン化傾向が大きな金属であるため、数10ナノメートルオーダの微粒子の作製にもっぱら用いられている還元法によりナノ粒子を化学合成することができない。そのため、アルミニウムナノ粒子の作製には微細加工技術が利用される。例えば、上記手法に加え、レーザーアブレーションを用いアルミニウムナノ粒子を作製する手法が報告されている(非特許文献4)。
C. Langhammer, M. Schwind, B. Kasemo, and I. Zoric, "LocalizedSurface Plasmon Resonances in Aluminum Nanodisks," Nano Lett. 8, 1461 (2006) G. H. Chan, J. Zhao, G. C. Schatz, and R. P. Van Duyne, "LocalizedSurface Plasmon Resonance Spectroscopy of Triangular Aluminum Nanoparticles," Phys.Chem. C 112, 13958 (2008) Y. Ekinci, H. H. Solak, and J. F. Loffler, "Plasmon resonances ofaluminum nanoparticles and nanorods," J. Appl. Phys. 104, 083107 (2007) Y. S. Kwon, A. A. Gromov, and J. I. Strokova, "Passivation ofthe surface of aluminum nanopowders by protective coatings of the differentchemical origin," Appl. Surf. Sci. 253, 5558-5564 (2007) A. Kosiorek, W. Kandulski, H. Glaczynska, and M. Giersig "Fabricationof nanoscale rings, dots, and rods by combining shadow nanosphere lithographyand annealed polystyrene nanosphere masks,"Small. 2005 Apr; 1(4):439-44
上記研究成果に続く次の挑戦は、分子や半導体の電子共鳴励起のために、UVプラズモンエネルギーを、調査対象の分子の電子的共鳴に合うように調整しうる手法を開発することである。
ここで、通常のナノ粒子リソグラフィー法(Nanosphere Lighography:NSL法)では、例えばポリスチレン(PS)粒子を自己集積化により六方最密(hexagonal closed packing:hcp)に配置したものをテンプレートすなわちマスクとして用い、そのマスクを通して、つまりPS粒子の並びにおける各PS粒子の隙間を通しアルミニウムを蒸着することにより、アルミニウムのナノ構造のパターンを形成している。PS粒子マスクは、構造の作製後(すなわちアルミニウム蒸着後)に除去される。最終的に作製される各パターンのサイズは、マスクとなるPS粒子のサイズにより幾何学的に決定される。しかし、各パターンのサイズを縮小するべくPS粒子のサイズを小さくすると、PS粒子の直径が300nmを下回るような場合、PS粒子のサイズのばらつきが相対的に増大する。このため、PS粒子のサイズをあるサイズより小さくするとhcpの配置となるように自己集積化することが極端に難しくなる。安定して配置することができるPS粒子の直径の下限がおよそ300nmであることに対応し、通常のNSL法により作製されるパターンのサイズは、100nm程度が最小となる。このサイズでは、LSPRピークの波長を、例えば深紫外などの短波長とすることはできない。
また、EUVリソグラフィー法では、大がかりな放射光施設を必要とし、実用化には適さない。
さらにレーザーアブレーション法では、均一の大きさの微粒子を作製することが困難である。また、レーザーアブレーション法で作製される微粒子は物理的に破壊されたナノ粒子となるため、熱や応力の影響が残留してしまう。これらの評価技術は確立されておらず、レーザーアブレーション法はプラズモニクスへ応用されていない。
ここで、非特許文献5には、熱アニールを利用することにより、サイズ可変のナノ粒子リソグラフィーNSL法により蒸着される金属パターンのサイズを制御する手法が報告されている。この非特許文献5のNSL法の改良手法によれば、パターンを形成するための各PS粒子の隙間を縮小することが可能となる。
本発明は、従来に比べより短波長においてLSPRを誘起するためのパターンを作製する手法を提供する。また、LSPR波長のより柔軟な調節を可能にする手段を提供する。これらの少なくともいずれかにより、本発明は、短波長のLSPRを利用する技術の確立に貢献するものである。
本願の発明者らはLSPRのためにNSL法を採用する場合に、非特許文献5の熱アニールを利用するNSL法を企図した。NSL法に熱アニールを併用すれば、これまでに試みられてこなかった短波長のLSPRのためのパターンが実現可能であると考えた。つまり、上述したとおりに通常のNSR法において、ある大きさより小径のPS粒子は自己集積化を利用して安定して配置することが難しい。そこで、良好なhcpの配置が得られる範囲の直径のPS粒子を採用し、その際の各PS粒子の中心の配置を維持したままに各PS粒子を熱アニールにより融着させることができれば、各PS粒子の隙間部分を縮小することができる。この熱アニールを利用するNSL法におけるパターン縮小の原理は、LSPRのためのこれまでのにない小さなパターンの作製に大きく貢献するはずである。
そこで、本願発明者らは、非特許文献5の報告に従った熱アニールを利用するNSL法により、アルミニウムの微小なパターンを形成する手法を試行した。より具体的には、hcpに配置されているPS粒子において、互いに接しているPS粒子同士を熱により融着させることを試行した。その手法は、基板にhcpに並べたPS粒子を基板ごと液体に浸漬し、液体ごとマイクロウエーブによって加熱する、というものである。その結果、PS粒子の配置を部分的にみた場合には、加熱を進めるに応じてPS粒子の配置が維持されたままPS粒子の隙間が縮小すること、および、隙間の縮小に応じて堆積物であるアルミニウムのパターンを縮小させられることを確認した。そして、本願発明者らは、熱アニールを利用するNSL法により、短波長のLSPRを実際に誘起することができることを確認した。
すなわち、本発明のある態様においては、複数の球形粒子を、基板のいずれかの面である第1面の上または上方(on or over)に自己集積作用により互いに並べて仮配置する粒子仮配置工程と、該球形粒子を加熱することにより、各球形粒子の前記基板に対する配置を保って仮配置されている各球形粒子の互いに隣接しているもの同士を互いの近接する位置の付近にて融着させ、該球形粒子の相互の隙間を縮小させる加熱工程と、堆積される物質を、互いに融着した前記球形粒子をマスクとし、前記隙間を通して前記基板の前記第1面の上または上方に堆積する工程と、互いに融着した前記球形粒子を除去する工程とを含む堆積パターンアレイの製造方法が提供される。
さらに上記態様を実施する際に、最終的に形成されるアルミニウムのパターンに、パターンの乱れが生じる場合があることを確認した。パターンの乱れはLSPRに悪影響を及ぼすため、十分に抑制するべきといえる。その原因について調査するため、上記態様の途中の段階において、融着したPS粒子の配置をより広い視野で観察したところ、マイクロウエーブ加熱の途中でPS粒子の配置が乱れたり、基板から脱落するPS粒子が観察されることがあった。また、融着し一体となっているべきPS粒子のマスクに多数のクラックが観察されることもあった。そして、本願発明者らは、上記PS粒子の乱れ、脱落、またはクラックが生じる場合には、PS粒子の基板に対する付着性が不足しているのではないかと考えた。自己集積化によるPS粒子のマスクにおける個々のPS粒子は、時として表面の性質の影響を特に大きく受けるためである。この観点から、そのような事態への対処として、バッファー層または樹脂被覆層と呼ぶ層を採用することにより、基板と各PS粒子との付着性を高めることとした。
ただし、樹脂被覆層を採用することのみでは、作製条件によっては、PS粒子の良好な配置は得られなかった。具体的には、PS粒子を水分散液の形態により基板の樹脂被覆層の面に配置される際に、かえって樹脂被覆層が水分散液を弾いてしまい、広い面積で均一なPS粒子の自己集積化による配置が得られないことがあった。
そこで、本願発明者らは、上記態様の好ましい改良として、樹脂被覆層を採用することに加え、当該樹脂被覆層の表面を改質することを検討した。具体的には、樹脂被覆層の表面を、上記水分散液が弾かないように改質することにより、PS粒子を付着させる樹脂被覆層の機能を維持しつつ、PS粒子のhcpの配置を広い面積で形成することができることを見出した。
すなわち、本発明の上記態様においては、前記粒子仮配置工程より前に、前記基板の前記第1面の上に樹脂被覆層を形成する工程と、該樹脂被覆層の表面を親水性に改質する表面改質工程とをさらに含み、前記粒子仮配置工程は、前記複数の球形粒子の水分散液を、改質された前記樹脂被覆層の前記表面に接して塗布することにより、改質された前記表面に接して該球形粒子を互いに並べて仮配置する工程、とされると好ましい。
また、本発明は堆積パターンアレイとしても実施される。すなわち、本発明のある態様においては、基板と、自己集積された並びを保って該基板に対し仮配置された球形粒子のマスクにおいて該球形粒子の相互の隙間を通して前記基板のいずれかの面である第1面の上または上方に堆積された、該隙間に応じてパターニングして該第1面の上に形成された堆積物の膜とを含み、該隙間は、前記球形粒子それぞれを加熱し、前記仮配置の並びにおいて隣接している球形粒子同士を各球形粒子の前記基板に対する配置を保って互いの近接する位置にて融着することにより、融着される前より縮小されたものである、堆積パターンアレイが提供される。
本発明の各態様において、球形粒子とは、通常の意味で幾何学的に球体である粒子を一般に含む。本発明の各態様の典型例としては、単分散の粒径分布を持つように作製された粒子、または作製後に分級して選別された粒子を採用することができる。本発明の各態様において、樹脂被覆層とは、樹脂による任意の厚みの層であり、切れ目や途切れの全くない連続層であることは要さない。ここでの樹脂は、実施上は球形粒子の材質と組合せ決定することができる。本発明の各態様において、球形粒子が基板に対し並べて仮配置するとは、基板の表面またはその表面に形成されている任意の層(樹脂被覆層を含む)に対して、接着、固着、吸着(化学吸着、静電吸着を含む)、接合、融着などを含む、任意の現象により、球形粒子が基板に対する相対位置を定めている状況を指す。自己集積作用、または自己集積した、とは、典型的には、物理的または化学的な作用が発現した結果、互いに引力が働く基板の表面に接している球形粒子が単層で最密に2次元的な配置をとる場合に見られる、繰り返しの配置が実現している状況を指している。本出願の各態様における自己集積とは、必ずしも完全な周期性を有していることは要さない。
本発明のいずれかの態様においては、熱アニールを利用するNSL法を採用することにより、Alナノ構造物の配列などの堆積パターンアレイにおける各パターンのサイズの制御が可能となり、例えばUV波長領域における局所表面プラズモン共鳴(LSPR)の直接的な制御を提供することが可能となる。
本発明のある実施形態において採用される熱アニールを利用するNSL法により金属の微小パターンを形成する各段階の構成を概略断面図により示す説明図である。 本発明のある実施形態における堆積パターンアレイの製造方法の各段階における構造を概略断面図により示す模式図である。 本発明のある実施形態における堆積パターンアレイの製造方法の各段階における構造を概略断面図により示す模式図である。 本発明のある実施形態の実施例におけるPSマスクの各サンプルの走査型電子顕微鏡写真である。図4(a)〜(d)は、それぞれ、加熱時間を、それぞれ0秒、90秒、100秒、および110秒とした場合のPSマスクである。 本発明のある実施形態の実施例におけるAlナノ構造物の走査型電子顕微鏡写真である。図5(a)〜(d)は、それぞれ、0秒、90秒、100秒、および110秒の加熱時間のマスクにより得られたAlナノ構造物のものである。 本発明のある実施形態の実施例におけるAlナノ構造物の消光比スペクトルを示すグラフである。測定値とFDTD法による計算値との結果を示している。 本発明のある実施形態の実施例における各Alナノ構造物のLSPRピークの変化を横方向サイズに対して示すグラフである。測定値とFDTD法による計算値との結果を示している。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明する。当該説明に際し特に言及がない限り、全図にわたり共通する部分または要素には共通する参照符号が付されている。
[1 原理]
本実施形態の手法は、極微小なAlナノ構造物を作製するために、ナノ粒子リソグラフィー法(Nanosphere lithography法:NSL法)と、ナノ粒子としてのマスクの形状を変更するためのマスク加熱法と併せて採用する手法(以下、「熱アニールを利用するNSL法」という)を基礎としている。このため、まず熱アニールを利用するNSL法を、それ以前の通常のNSL法と対比しながら説明する(1−1)。その後に、そのさらなる改良を説明する(1−2)。
[1−1 本実施形態における熱アニールを利用するNSL法]
本実施形態における熱アニールを利用するNSL法においては、それ以前の通常のNSL法と同様に、水晶などの基板の上に、PS粒子であるコロイドの球形粒子が自己集積化されてhcpの単層の配列をなすようにされ、その後にその配列が、金属の成膜のためのマスクにされて、金属のナノ構造物を三角格子に配置した配列が形成される。熱アニールを利用するNSL法ではそれに加え、金属の成膜の前に、整列したナノ粒子を、hcp単層内での配置を維持しながら部分的に融着させる。この融着は、Kosiorekらにより発見されたようにマイクロウエーブ加熱のみで行ないうる(非特許文献5)。PS粒子を適切に加熱すれば、PS粒子は互いに接している部分において熱により融着し、隣接する3つのPS粒子により囲まれたマスクの開口部を漸次的に縮小させることが可能である。その際、加熱時間を調整することにより、無限小となるまで連続的に開口のサイズを縮小することができる。その結果、形成された金属のナノ構造物のサイズを、段階なく縮小させることが可能となる。
この熱アニールを利用するNSL法は、それ以前の通常のNSL法において生じる二つの主要な欠点を克服するものである。第1に、それ以前の通常のNSL法においては、用いるPS粒子の直径によって作製されたナノ構造物のサイズが自発的に決定されていた。これは、深紫外(DUV)におけるLSPRを達成するために必要である極微小な構造物を作製することが、技術的により挑戦的となることを意味している。というのも、200nm以下の直径のPS粒子を単層状に一様に配置することが困難なためである。これに対し、熱アニールを利用するNSL法においては、たとえ相対的に大きなPS粒子を使ったとしても、無限に小さな構造物を作製することが可能である。より大きなPS粒子を使うことはまた、hcpへの配置を形成する途中に生じうる望ましくない格子欠陥を削減することに役立つ。第2に、それ以前の通常のNSLでは、PS粒子が限られたサイズの物しか入手できない結果、構造物のサイズの連続的な調整が不可能である。熱アニールを利用するNSL法は、それ以前の通常のNSL法に対し、サイズの制御についての柔軟性の観点について際だった利点がある。本願の発明者らは、この熱アニールを利用するNSL法を、短波長でのLSPRを誘起するのに適した金属の材質、例えばアルミニウムとすることを試みた。そして、これまでにない短波長において実現できることを実際に確認し、本願の発明を創出するに至った。
図1は、本実施形態において採用される熱アニールを利用するNSL法により金属の微小パターンを形成する各段階の構成を概略断面図により示す説明図である。必要に応じ各図の右側には縮小した平面図も併記している。熱アニールを利用するNSL法においては、まず、複数の球形粒子であるPS粒子110を、基板80のいずれかの面である第1面80Aの上に自己集積作用により互いに並べて仮配置する粒子仮配置工程を行う。具体的には、図1(a)に示すように、基板80にPS粒子110(PS粒子110A〜E)を配置してビーズ配列100を形成する。基板80は例えば水晶(石英)基板などである。このビーズ配列100は、PS粒子110の水分散液であるPS粒子懸濁液(ラテックス)を基板に塗布し、乾燥させることによって自己集積作用により実現される。ビーズ配列100には、PS粒子110相互の間に隙間120が多数形成されている。後の工程において、基板80の表面80Aに向かって垂直方向に、紙面の上方から膜を堆積させる場合、表面80AからPS粒子110の半径だけ高い位置の平面である平面PLにおける隙間120の形状がビーズ配列100の開口APの形状となる。開口APの形状は、図1(a)の段階では、各PS粒子110の相互の近接点112を3つの頂点とし3つの円弧で囲まれた、三角形に類似した形状となる。また、開口APの中心の配置は、グラフェンにおける炭素原子配置と同様となる。各PS粒子110の相互の近接点112は、平面図における矢視切断面の概略断面図である図1(a)においては、PS粒子110AとPS粒子110Bとの接点、および、PS粒子110DとPS粒子110Eの接点として紙面に含まれる面に位置する。なお、PS粒子110は、必要に応じてPS粒子110A〜Eを区別する場合がある。
次に、熱アニールを利用するNSL法では、加熱工程を行う。加熱工程は、球形粒子であるPS粒子110を加熱する。すると、各PS粒子110は、基板80に対する配置を保って仮配置されている各球形粒子110の互いに隣接しているもの同士、例えばPS粒子110AとPS粒子110B同士は、互いの近接する位置である接点112付近で相互に融着する。この融着は、各PS粒子110が完全に溶解する温度ではなく、PS粒子110の材質のガラス転移点付近の温度において、相互の近接点112の付近で接しているPS粒子110の材質が相互に熱拡散することにより生じるようである。この際、PS粒子110は基板80に対する配置、つまり、PS粒子110の中心の基板80に対する位置は変化しない。この加熱およびその後の冷却の結果、ビーズ配列100がマスク配列100Mとなる(図1(b))。
図1(b)には、相互の近接点112の位置において、その近接点112の両側のPS粒子110の材質の融着により生じたブリッジ部114が描かれている。ブリッジ部114は、PS粒子110AとPS粒子110Bとの間のものでは、途中にくびれが生じつつPS粒子110AとPS粒子110Bを一体化している様子が図示されている。また、ブリッジ部114は、PS粒子110DとPS粒子110Eとの間にも形成される。ブリッジ部114のために隙間120(図1(a))が狭まるため、ビーズ配列100から得られるマスク配列100Mでは、隙間120を狭めた開口APの配列が得られる。つまり、上記加熱工程により、ビーズ配列100がマスク配列100Mへ変化し、相互の隙間120が縮小して開口APが得られる。
次に、図1(c)に示すように、マスク配列100Mをテンプレートすなわちマスクとして、表面80Aにむけて金属などの成膜材料Mを堆積させると、隙間120の開口APに対応した表面80Aの一部にのみ、堆積パターン30が形成される。最後に、マスク配列100Mを除去する(図1(e))。
ここで、図1(b)に示した開口APの形状、特に基板面方向の広がり(横方向広がり)には、ブリッジ部114の形状が大きく影響する。そしてこのブリッジ部114の形状は加熱の条件によって調整することができる。一般に、加熱を長時間行なえばブリッジ部114がより大きくなり、隙間120による開口APの広がりが小さくなる。
以上の工程により、例えば成膜材料Mをアルミニウムとし、また、ビーズ配列100からマスク配列100Mを得るための加熱条件を調整して各堆積パターン30のサイズを調整することにより、これまでにない短波長でのLSPRを誘起させる堆積パターン30の配列である堆積パターンアレイ300を製造することが可能となる。
[1−2 本実施形態における熱アニールを利用するNSL法のさらなる改良]
ここで、本願発明者らが図1に関連して上述した通りの工程を実施したところ、作製条件によっては、目的とするサイズの堆積パターンを広い面積において安定して形成することができない場合もあった。例えば、熱アニールを利用するNSL法においては、マスク配列100MのためのPS粒子110が基板80に付着したまま位置を乱したり、基板80からPS粒子が脱落してPS粒子が存在しない領域が多く生じてしまったり、また、融着して一体となっているべきPS粒子のマスク配列100Mに多数のクラックが生じてしまうことがあった。これらのようなマスクの欠陥は堆積パターン30のパターンにそのまま影響するため、熱アニールを利用するNSL法において堆積パターン30を広い面積で形成することは、作製条件によっては困難な場合もあった。さらに、PS粒子のマスク配列100Mを基板80から除去する段階で、球形粒子110が基板80に固着して残るという不具合も散見された。
本実施形態においては、このような困難を回避するさらに好ましい実施形態も提供する。具体的には、基板80の表面80Aに、樹脂被覆層102を形成することにより、球形粒子110を表面80Aまたはその表面80Aに形成されている樹脂被覆層102に対しより強固に付着または固着させる。さらに、樹脂被覆層102の表面102Aを上記水分散液が弾かないように改質して改質表面102Bとすることにより、球形粒子110を付着させる樹脂被覆層102の機能を維持しつつ、球形粒子110のhcpの配置を広い面積で形成することができることを見出し、本願の発明を改良するに至った。
図2および図3は、本実施形態における堆積パターンアレイの製造方法の各段階における構造を概略断面図により示す模式図である。各図には必要に応じ平面図も併記している。本実施形態における堆積パターンアレイの製造方法においては、まず、図2(a)に示すように、基板80のいずれかの面である面80(第1面)の上に樹脂被覆層102を形成する。次いで、図2(b)に示すように、樹脂被覆層102の表面102Aを親水性に改質し改質表面102Bにする(表面改質工程)。この表面改質工程は、例えばUV光を照射することにより行なわれる。そして、図2(c)に示すように、樹脂被覆層102の改質された改質表面102Bに接するように、樹脂を材質とする複数の球形粒子110を配置する。この工程は、球形粒子110の水分散液(懸濁液すなわちラテックス)を塗布することにより行なわれる。この塗布の条件を適切に設定すれば、球形粒子110は自己集積作用により、例えば三角格子状すなわちhcpに配置される。改質していない表面102Aのままである場合、表面102AはPS樹脂などの樹脂被覆層102と親和性のある性質であるため疎水性であることが多く、その結果、水分散液が弾かれてしまっていた。これに対し、樹脂被覆層102の表面102Aを親水性に改質した改質表面102Bではこのようなことはなくなり、球形粒子110は、改質表面102Bの表面に、広い面積でhcpに配置され、ビーズ配列100を構成する。このhcpの配置をとる球形粒子110においては近接点112が定まる。近接点112は、隣り合う球形粒子110が実際に接触しているか、または、球形粒子110の直径のばらつきによっては、実際には接触していないものの球形粒子110が互いに接近しているような、近接点112の表面上の位置である。
次に球形粒子110を加熱する加熱工程を実施する。本加熱工程では、仮配置された球形粒子110を加熱することにより、各球形粒子110の基板80に対する配置を保って、各球形粒子110を配置において隣接している球形粒子110同士を近接点112の付近にて融着させる(図3(d))。近接点112には、ブリッジ部114が形成されて、ビーズ配列100から、球形粒子110が単層の球形粒子110のビーズ配列100のまま一体化して、マスク配列100Mが完成する。なお、この時点までのいずれかのタイミングで、各球形粒子110は樹脂被覆層102に対し、その後に意図的に除去するまで、位置を乱したり、脱落したり、クラックを生じたりすることが防止できる程度の付着力により固定され、仮配置されている。確実ではないものの、本願発明者らは、この付着力は、自己集積化により配置した段階で、球形粒子110と基板80の表面または樹脂被覆層102の表面との間において得られている可能性が高いと考えている。また、球形粒子110同士が融着されてブリッジ部114が形成される結果、球形粒子110の相互の隙間120が縮小する。こうして隙間120が狭まった開口APを有するマスク配列100Mが得られる。その後、球形粒子110が互いに融着したマスク配列100Mをテンプレートすなわちマスクとし、目的のサイズにまで縮小した隙間120である開口APを通し、堆積される物質Mを基板80の第1面(表面80A)の上または上方に堆積させる(図3(e))。この堆積は、マスク蒸着を行いうる任意の蒸着工程により実施することができ、例えば、抵抗加熱や、EB(電子ビーム)蒸着、スパッタリング法が採用される。最後に、互いに融着した球形粒子110つまりマスク配列100Mを除去することにより、基板80の表面80Aに配置され、縮小した隙間120である開口APの形状に対応した堆積物のパターンである堆積パターンアレイ300が得られる(図3(f))。しかも、改質表面102Bを有する樹脂被覆層102を配置することにより、マスク配列100Mを除去する際に球形粒子110が改質表面102Bに残留する、という不具合が抑制される。樹脂被覆層102により球形粒子110の残留を防止できるというこの効果は、PS粒子などの球形粒子110を融着させて堆積パターンアレイ300を形成するというNSL法における球形粒子110にまつわる不具合が防止できるという点において、NSL法の実用性を大きく向上させるものである。この堆積パターンアレイ300は、図3(f)のように樹脂被覆層102が残っている場合には表面80Aの上方の改質表面102Bの上に、また、図3(f)とは異なり樹脂被覆層102が何らかの理由により除去されていれば、表面80Aの面の上に配置される。
本実施形態においてマスク配列100Mを完成させるための典型的な上記加熱工程では、球形粒子110を仮配置した基板80は液体中に浸漬され、その液体とともにマイクロウエーブによって加熱される。その液体は、例えばその沸点が球形粒子110の材質のガラス転移点に近い温度となる物質から選ばれている。これにより、液体の沸騰中に温度が一定に維持される性質を利用して、球形粒子110の融着を生じさせやすい温度に維持する。また、隙間120のサイズは、その加熱工程の加熱時間により調整される。その結果、堆積された物質の各堆積パターン30のサイズを加熱時間によって調整することができる。なお、加熱工程のためにマイクロウエーブを利用する際には、加熱時間を精密に、例えば秒単位で再現性よく制御することができる。例えば、マイクロウエーブの出力と停止を制御したり、基板80を液体から取り出して放冷したり、取出した後に加熱されていない熱浴となる液体に再度浸漬するなどの手法を採用することができる。
本実施形態において採用する典型的な球形粒子110の材質は樹脂であり、例えばポリスチレン(PS)を採用することができる。球形粒子110の種類は、球形粒子110の径が可能な限り小径にできること、その際に直径が均一であること、球形粒子110の表面が扱いやすい性質のものであること、といったマスク配列100Mを作製する上での選択基準により、決定することができる。例えば、PSは、300nm径またはそれ以下の小径の粒子であっても、直径の分散すなわちCV値が5%程度またはそれ以下と小さく高い均一性のものが、様々に表面修飾されたタイプのものについて容易に入手することができる。このため、本実施形態の確認のための実験もPS粒子を利用する。ただし、本実施形態がこのような特定の材質の球形粒子110のみに限定されるものではない。
樹脂被覆層102の材質も、例えば、球形粒子110の材質との組合せを考慮して選択される。例えば、球形粒子110がPSであれば、樹脂被覆層102の材質としてPSの前駆体、例えはモノマーであるスチレン(スチレンモノマー)や、スチレンのダイマー、トリマー等が選択される。なお、図2(a)の樹脂被覆層102の形成は、その樹脂被覆層102の材質の溶液を表面80Aに直接塗布する手法以外としても良い。例えば、樹脂被覆層102を何らかの溶剤に溶解させて表面80Aに塗布し溶剤を揮発させたり、樹脂被覆層102を分散液にして分散媒を揮発させる、といった任意の手法を採用することができる。
本実施形態においては、表面プラズモン共鳴を示す堆積パターン30が作製される。この場合、基板80がある波長の電磁波を透過させるものであり、堆積パターン30のために堆積される物質を金属(例えば、金、銀、アルミニウム)とする。この場合、パターニングされた堆積物(堆積パターン30)にその波長の電磁波が照射されると、堆積パターン30には表面プラズモンが生成されて共鳴するように、堆積パターン30のサイズを形成することができる。
さらに、後述する実施例において得た知見から、本実施形態の上記表面プラズモン共鳴を示す態様において、堆積物のパターンの平均径を60nm以下とすると好適である。また、その態様において、堆積物のパターンの円形度を1.15以下とすることも好適である。これらにより、表面プラズモン共鳴の共鳴周波数を、例えば300nm以下、といった短い波長域とすることができる。
特に、上記堆積物の膜の金属がアルミニウムであり、堆積パターン30のサイズが適切である場合、波長をDUV領域の波長、すなわち、300nm以下の波長とすることも可能となる。このようなDUV領域の波長において、表面プラズモンを共鳴的にする手法は従来知られておらず、本実施形態の堆積パターンアレイの製造方法の先進性を示すものと本願発明者らは考えている。
[2 実施例]
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順、要素または部材の向きや具体的配置等は本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することかできる。したがって、本発明の範囲は以下の具体例に限定されるものではない。これまで説明に用いた図面への参照を適宜記載する。
本実施形態の実施例として上述した本実施形態の手法を実証する実験を以下のようにして行なった。直径336±8nmのカルボキシル官能基にて表面修飾されたPSビーズ(Microparticles GmbH、球形粒子110)が、水晶基板(基板80)の上にhcpの単層をなすようにスピンコートによって配置された。PS粒子をhcpに配置するのに先立って、上記基板の表面上に、バッファー層(樹脂被覆層102)として、スチレンモノマーの均一な層(厚み2nm未満)が事前形成され、配置したPS粒子が強固に付着するようにした。このバッファー層が無い場合、hcpに配置したPS粒子がマイクロウエーブ加熱工程の途中にバラバラになることを本願発明者らは確認している。バッファー層は次のようにして準備した。ます、水に対して0.05重量%のスチレンモノマーを溶解し、その溶液を上記基板にスピンコートにより塗布し、水を乾燥させてスチレンモノマー層を得た。
塗布したスチレンモノマー層には、光化学的に表面を改質するため、低圧水銀ランプを利用し大気中にて20分間UV照射を行なった。これにより、上記表面(表面102A)が、疎水性から親水性に改質された(改質表面102B)。この変化は、当該表面へのPS粒子の付着に寄与した。ここで、PS粒子を目的通りに配置させるのにはUV照射の時間が重要であった。というのも、UV照射が短すぎると上記表面が疎水性のままとなってPS粒子のスピンコートを妨げる一方、過度に長いUV照射はPSポリマーを完全に分解してしまい、置かれたPS粒子のために付着力を生じさせなくなるためである。表面の状態は、水の接触角の測定によって決定し、43°に対応して最適な条件が得られることを見出した。水に分散させたPS粒子(7重量パーセント)を上記バッファーの上にスピンコートにより塗布することにより、PSマスク(ビーズ配列100)となる自己集積化した構造物を形成する。最適化したスピンコートの条件を利用することにより、20mm×20mmの範囲において一様なPS粒子のhcp単層を作製した。
次いで、hcpに配置したPSマスクを、沸点(78.4℃)付近に熱したエタノール液を利用して加熱処理を行ない、マスク配列100Mを得た。具体的には、まず沸点付近までプリヒートした50mLのエタノール液にPSマスクが形成された基板ごと浸漬し、電子レンジ(Elabitax ERD−2s, 700W, 2450MHz)にて、それぞれのサンプルの加熱時間の間、加熱し続けた。加熱の間、エタノール液は沸騰し続けていた。また、加熱の停止のために、マイクロウエーブの停止およびエタノールのバスからの引き上げを行って、余熱の影響を排除した。マイクロウエーブ加熱の効果を確認するため、不要な電荷蓄積を防止するための3nmオスミウムコートをし、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL SM31010、5keV、12μA)により表面を撮影した。
図4に撮影した走査型電子顕微鏡写真を示す。図4(a)〜(d)は、加熱時間が、それぞれ0秒、90秒、100秒、および110秒の場合のマスク配列100Mの各サンプルのものである。各写真のスケールはすべて同一とし、図4(a)に明示したスケールバーは、300nm長を示している。これらの写真に示されるように、PS粒子の間の隙間(隙間120)の大きさが、マイクロウエーブ加熱時間の増大と共に小さくなることが観察された。90秒の初期の加熱時間の間に、隣接するPS粒子が相互に熱融着により連結し、それらの間にブリッジ(ブリッジ部114)が形成された(図4(b))。なお、この初期の90秒までの段階のサンプル(図示しない)も同様に作製したものの、それら隙間のサイズは、それ以降の後の加熱期間の場合に比べて相対的には不変といえるものであった。加熱時間をさらに増大すると、PS粒子に急速な融着を生じ、結果として、隙間サイズの縮小が生じた(図4(c)および(d))。130秒以上の加熱の後(図示しない)には、隙間が完全に閉じること、そして、最後にPS粒子の継ぎ目のない層が得られることを観察した。これらの結果が示しているのは、とある直径のPS粒子に対して、マイクロウエーブ加熱時間を調整するだけで、隙間のサイズを、自然に定まる当初のサイズから、無限小のサイズにまで連続的に調整することができる、ということである。
次に、準備したPSマスク(マスク配列100M)を通し、アルミニウム(純度99.99%)を真空環境(約2×10−4Pa)にて上記基板の上に堆積し、Alナノ構造物(堆積パターン30)を形成した。堆積の条件は、0.1オングストローム/秒の速度、堆積厚さを30nmと設定した。堆積の後、水中で超音波洗浄を30秒間実施することにより、PSマスクを除去した。この際、PS粒子が残留することはなかった。堆積厚は、原子間力顕微鏡(AFM、SII−NT、SPA400)により別途確認した。0秒、90秒、100秒、そして110秒加熱したマスクにより得られた作製後のAlナノ構造物のSEM画像を、それぞれ、図5(a)〜(d)に示す。図5(a)〜(d)もすべて同一のスケールであり、図5(a)に明示したスケールバーは、300nm長を示している。加熱された時間をより長くしたPS粒子において、構造物の横方向のサイズがより小さくなることを確認した。作製したナノ構造物の平均幅は、0秒、90秒、100秒、そして110秒加熱したマスクに対して、それぞれ、79.9±7.4nm、71.4±4.6nm、59.1±5.4nm、50.1±4.0nmであった(表1参照)。これらの結果は、数十ナノメーターもの小ささの金属ナノ構造物が、NSL法とマスク加熱法とを組み合わせることによって容易に作製しうることを示している。本手法は、現在、装置が大がかりで精巧なEUVリソグラフィー法に依拠している極微小なアルミニウムの作製を簡便にするものである。
本願発明者らがSEM画像から気づいた別の点は、Alナノ構造物の形状が鋭い三角形からより円形へと漸次に変化することである。そのような形状の変化は、加熱したマスクの隙間の形状(図5(b)〜(d))においても観察され、PS粒子の融着の進行に応じた現象である。本願発明者らは、4πAに対する外周縁の二乗値の比率(ここで、Aは、対象のナノ構造の面積)として定義される「円形度」をナノ構造別に評価することにより、形状変化の効果を数量化した。円形度は、正三角形については1.654となり、真円では1に近付くべき値である。各加熱時間について構造物30個以上を評価した結果得られた値を表1に示している。これらの値から、作製したナノ構造物は、鋭い三角形状に形成されたのではなく、むしろ円形状のディスクに形成されたといえる。マスクの加熱時間がより長くなるほど、形成された構造物の形状は一層円形に近付いていた。LSPRは、金属ナノ構造物のサイズばかりでなく形状からも影響を受けるため、これらの形状の変化もLSPRにおいて観察される変化に寄与している可能性がある。
最後に、作製したナノ構造物の消光比スペクトルを、紫外可視分光光度計(島津、UV3600)により測定した。その結果を、0秒、90秒、100秒、そして110秒で加熱したマスクに対し、それぞれ、図6の曲線C1〜C4により示す。作製したサンプルのすべてについて明確なLSPRピークを観察した。消光比スペクトルは、0秒、90秒、100秒、そして110秒で加熱したマスクに対して得られたアルミ構造物について、それぞれ、342nm、314nm、295nm、そして270nmにピークを有していた。これらの結果も表1にまとめている。図7には、消光比として観察されるLSPRピーク波長が構造物の横方向サイズの関数としてプロットしている。より長い加熱時間のサンプル、すなわち、より小さいAlナノ構造物に対しては、LSPR波長がより短波長のUV波長へと移動した。ナノ構造物の横方向サイズに関するLSPRピークの変化はほぼ直線的であった。本願発明者らが観察した最短の波長は270nmであった。本願発明者らは、小出力の電子レンジを利用して加熱期間をより正確に制御すること、および、アルミニウム堆積の厚みの最適化をすること、の少なくともいずれかまたはその両方により、LSPR波長のさらなる短波長化が可能となると推測している。
[3 理論計算による確認]
観察されたプラズモンスペクトルへのより詳細な知見を求め、本願発明者らは、50nm、59nm、71nm、そして80nmとサイズが異なっているAlナノ構造物単体の消光比スペクトルの理論計算を実施した。この際、50nmおよび59nmの広がりの構造物についての形状を円形ディスクによりモデル化し、71nmおよび80nmの広がりの構造物についての形状は、コーナーを丸めた三角ディスクとした。なお、三角ディスクの各コーナーの曲率は半径30nmに設定した。高さは、AFMの測定に合わせすべて30nmとした。すべてのモデルにおいて、最表面が2nm厚のAlの層により覆われていると仮定した。計算は、メッシュサイズ1nmの有限差分時間領域法(FDTD法)を利用して実行した。計算によるスペクトルが図6に丸いドットDT1〜DT4により、0秒、90秒、100秒、そして110秒で加熱したマスクに対し示されており、図7には抽出したピーク波長が白抜き円(計算)と黒四角(実験)により対比しプロットされている。測定と計算のスペクトルの間においてLSPRピーク波長は極めて良好に一致した。理論計算におけるLSPRピーク波長における電磁界分布は、すべての構造物について基本波であるダイポールモード的な分布を示した(図示しない)。
なお、ここまでの理論計算が単一のAlナノ構造物を対象としている点による実験との相違点についても本願発明者らは知見を得ている。具体的には、まず0秒加熱サンプルについての測定されたスペクトル(図6、曲線C1)において、342nmの主要なピークにオーバーラップして、290nmと400nmの二つの弱いピークが観察されている。これら二つのピークは、他のスペクトルにおいてもスペクトル上の同じ位置に見いだすことができる。これらのスペクトル上の位置が構造物のサイズとは独立であることから、本願発明者らは、これら二つのピークが作製したナノ構造物の、直径336nmのPS粒子により決定される周期性に由来するものであると推測した。そしてこの推測を確かめるため、周期的なグラフェンパターンに配置した80nmの構造物について消光比スペクトルを計算した。上記周期性を計算に組み入れることにより、図7の破線DLにより示したように、上記二つのピークが良好に再現された。これらのピークとは別に、基本的ダイポールプラズモンモードについての上記LSPRピーク幅も、単一分散のサイズ分布を仮定する理論計算によって良好に再現された。これらの計算による確認の結果は、作製されたAlナノ構造物において構造上の良好な一様性が広い面積にわたり得られたということを示唆している。
[4 本実施形態のまとめ]
本願発明者らは、極微小Alナノ構造物を作製することにより、DUV領域におけるLSPR波長が制御しうることを着想し、また実証した。配置したナノ球体マスクのマイクロウエーブ加熱は、作製したナノ構造のサイズの制御のための単純かつコスト効率の良い手法を提供するものである。50nmもの小ささのAl構造物が容易に得られ、本願発明者らは、例えば、出力の弱いマイクロウエーブを利用するといった、マイクロウエーブ加熱の時間を制御する一層精確な手法を開発することにより、さらなるサイズの縮小が可能であると確信している。Alナノ構造物のサイズを80nmから50nmへと変化させることにより、LSPRピークを340nmから270nmにまで変化させた。LSPRエネルギーについて実証した可変性のもつ重要性は、作製したナノ構造物を、分子の共鳴励起のためのフォトン源として活用することを考慮すれば、明らかである。サイズ制御における柔軟性と大規模な製造を実現する能力とを提供することにより、作製されたAlナノ構造物アレイは、UV表面増強分光の用途のプラズモニック基板として利用するために有望なものといえる。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。上述の各実施形態および実施例は、発明を説明するために記載されたものであり、本出願の発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきものである。また、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明の堆積パターンアレイは、表面プラズモンを利用する任意の機器に利用可能である。
300 堆積パターンアレイ
30 堆積パターン
100 ビーズ配列
100M マスク配列
102 樹脂被覆層
102A 表面
102B 改質表面
110 球形粒子
112 近接点
114 ブリッジ部
120 隙間
80 基板
80A 表面

Claims (7)

  1. 複数の球形粒子を、基板のいずれかの面である第1面の上または上方に自己集積作用により互いに並べて仮配置する粒子仮配置工程と、
    該球形粒子をある加熱時間だけ加熱する加熱工程であって、該加熱時間は、仮配置されている各球形粒子のうち互いに隣接しているもの同士を互いの近接する位置の付近にて融着させ、該球形粒子の相互の隙間をあるサイズに縮小させるよう調整されている、加熱工程と、
    いに融着した前記球形粒子をマスクとし、前記隙間を通して前記基板の前記第1面の上または上方に金属を堆積する工程であって、該金属は、前記隙間に対応した60nm以下の平均径のパターンをもつアルミニウムである、堆積する工程と、
    互いに融着した前記球形粒子を除去する工程と
    を含んでおり、300nm以下の深紫外波長域に含まれるある波長の電磁波の照射に応じ表面プラズモン共鳴が引き起こされる堆積パターンアレイの製造方法。
  2. 前記基板がある波長の電磁波を透過させるものであ、請求項1に記載の堆積パターンアレイの製造方法。
  3. 前記加熱工程が、前記球形粒子を仮配置した前記基板を液体中に浸漬し該液体を沸騰させながらマイクロウエーブによって加熱する工程である、請求項1に記載の堆積パターンアレイの製造方法。
  4. 前記堆積物の前記パターンの円形度が1.15以下である、請求項1に記載の堆積パターンアレイの製造方法。
  5. 前記粒子仮配置工程より前に、
    前記基板の前記第1面の上に樹脂被覆層を形成する工程と、
    該樹脂被覆層の表面を親水性に改質する表面改質工程と
    をさらに含み、
    前記粒子仮配置工程は、前記複数の球形粒子の水分散液を、改質された前記樹脂被覆層の前記表面に接して塗布することにより、改質された前記表面に接して該球形粒子を互いに並べて仮配置する工程である、請求項1に記載の堆積パターンアレイの製造方法。
  6. 前記表面改質工程が、前記樹脂被覆層に紫外線を照射することにより、該樹脂被覆層の前記表面を親水性にする工程である、請求項に記載の堆積パターンアレイの製造方法。
  7. 前記球形粒子の前記材質がポリスチレンであり、
    前記樹脂被覆層の材質がポリスチレンの前駆体である、請求項に記載の堆積パターンアレイの製造方法。
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