JP6083249B2 - 製造プロセスの離散モデルのアップデート支援方法、装置及びプログラム - Google Patents

製造プロセスの離散モデルのアップデート支援方法、装置及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、例えば連続鋳造プロセスのように、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスを表現した離散モデルのアップデートを支援するのに好適な製造プロセスの離散モデルのアップデート支援方法、装置及びプログラムに関する。
連続鋳造の安定操業を実現するためには、操業者が常に適切なオペレーションを判断、選択する必要があり、そのためには、製品(製造物)や設備の状態を精度良く予測することが重要である。
上記予測のために、操業者、特に熟練者は、連続鋳造プロセスにおける鋼の状態に関する断片的な情報を因果関係により統合することにより、連続鋳造プロセスの認知モデルを構築している。そして、操業者は、頭の中に連続鋳造プロセスの認知モデルを知識として持つため、鋼の状態を推定し、将来状態を予測し、適切なオペレーションを実施することによってトラブルを回避してきた。
一方で、近年では、熟練者の減少による生産性低下、操業トラブル発生等が増加しており、熟練者でなくても適切なオペレーションを実施できるように支援することが求められている。
特開平07−028862号公報 特開2001−022566号公報 特開2000−339149号公報
村田 忠夫:ペトリネットの解析と応用、近代科学社(1992)
一般に、連続系プロセスには、製品の物質としての状態が温度や成分によって様々な形態をとる、その状態が時間や設備の操業次第で変化する、製品の状態が設備の状態を変化させ、それがまた製品の状態に影響を及ぼす、等複雑な相互干渉が存在する。
そこで、熟練者の頭の中の認知モデルが、上述のような製品や設備の状態の複雑な相互干渉をも考慮したものであることに注目して、これまでは熟練者の頭の中にあった連続鋳造プロセスの認知モデルを客観的にするために、製品や設備の状態遷移における因果関係を離散モデリングすることが考えられる。製品や設備の状態遷移における因果関係を離散モデリングすれば、その離散モデルを利用して、例えば操業トラブル回避や操業トラブル発生時のアクションをガイダンスする等、製造プロセスの操業を支援することが可能になる。
製造プロセスの操業では、設備の状態は刻々に変化し、上記離散モデルも、それに従って常にアップデートすることが求められる。
例えば状態遷移モデル或いは状態遷移図に関する技術として、特許文献1には、内外界からのイベントに応じて状態を遷移させる状態遷移モデル(階層化モデル)を用いた自動販売機におけるヒーター制御について記載されている。また、特許文献2には、通信制御用のプログラム設計をする場合に非常に重要な状態遷移図を、表入力を利用し効率化した方法が記載されている。さらに、特許文献3には、ソフトウェア開発における状態遷移表を記述する手段を有する開発支援システムについて記載されている。
しかしながら、いずれの技術も、状態遷移モデル或いは状態遷移図を作成する方法を提示するのみで、時々刻々変化する設備や操業の状態変化に対応して、速やか、かつ効率的にモデルをアップデートする方法については記載されていない。
ところで、実際の連続鋳造プロセスにおいてなんらかのトラブルが発生すると、トラブルの発生状況や原因等が記述されるトラブル報告書が作成される。このトラブル報告書は操業者の暗黙知が文書として表出化したものであり、トラブル報告書に記述された内容を離散モデルに反映させるようにアップデートすることは有用である。
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、トラブル報告書に記述された内容を離散モデルに反映させるようにアップデートするのを支援することを目的とする。
本発明の製造プロセスの離散モデルのアップデート支援方法は、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスについて、前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルのアップデートを支援する、製造プロセスの離散モデルのアップデート支援方法であって、前記製造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書であって、トラブルの発生状況、トラブルの原因、トラブルに対する対策、トラブル発生の際に処理されていた製造物、製造オペレータのトラブルについての所見、についての情報を少なくとも含む文章であるトラブル報告書に基づいて作成された集約命題関連図を取得する手順と、前記取得した集約命題関連図に基づいて、前記離散モデルに定義する前記製造物の属性の状態と設備の状態のみを用いて、トラブルにおける前記製造プロセスの状態遷移を表現した図である状態遷移図を作成する手順と、前記作成した状態遷移図に、前記離散モデルから、前記製造物の属性の状態についての情報と、前記設備の状態についての情報と、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係についての情報との少なくとも1つを補完して補完状態遷移図を作成する手順と、前記作成した補完状態遷移図を出力する手順と、前記作成した補完状態遷移図を用いて、前記製造プロセスの離散モデルに対して、状態及び因果関係の追加又は修正であるアップデートを行う手順とを有し、前記集約命題関連図は、前記トラブル報告書の文章を、前記離散モデルの表現に対応させた命題に区切って、命題間をつないでフローチャートで表現し、これら命題を前記離散モデルに対応させた表現として集約したものであることを特徴とする。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援方法の他の特徴とするところは、前記離散モデルは、前記製造プロセスを、前記製造物の流れ方向に複数のステージに分け、前記ステージ毎に前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記各ステージ内での前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルである点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援方法の他の特徴とするところは、前記離散モデルは、ペトリネットモデルを用いて構築されている点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援方法の他の特徴とするところは、ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、作成支援手段が、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の関係を探索して提示する手順をさらに有する点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援方法の他の特徴とするところは、ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、作成支援手段が、予め定められたルールに従って命題間の関係を制限する手順をさらに有する点に特徴を有する。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援方法の他の特徴とするところは、ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、作成支援手段が、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の経路を探索して提示する手順をさらに有する点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援方法の他の特徴とするところは、作成支援手段が、前記離散モデルに基づいて、ある命題を始点としてそれにつながる終点となる命題を、命題を補間しながら探索して提示する手順をさらに有する点にある。
本発明の離散モデルのアップデート支援装置は、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスについて、前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルのアップデートを支援する、製造プロセスの離散モデルのアップデート支援装置であって、前記製造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書であって、トラブルの発生状況、トラブルの原因、トラブルに対する対策、トラブル発生の際に処理されていた製造物、製造オペレータのトラブルについての所見、についての情報を少なくとも含む文章であるトラブル報告書に基づいて作成された集約命題関連図を取得する集約命題関連図取得手段と、前記集約命題関連図取得手段で取得した集約命題関連図に基づいて、前記離散モデルに定義する前記製造物の属性の状態と設備の状態のみを用いて、トラブルにおける前記製造プロセスの状態遷移を表現した図である状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段と、前記状態遷移図作成手段で作成した状態遷移図に、前記離散モデルから、前記製造物の属性の状態についての情報と、前記設備の状態についての情報と、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係についての情報との少なくとも1つを補完して補完状態遷移図を作成する補完状態遷移図作成手段と、前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を出力する出力手段と、前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を用いて、前記製造プロセスの離散モデルに対して、状態及び因果関係の追加又は修正であるアップデートを行うアップデート手段とを備え、前記集約命題関連図は、前記トラブル報告書の文章を、前記離散モデルの表現に対応させた命題に区切って、命題間をつないでフローチャートで表現し、これら命題を前記離散モデルに対応させた表現として集約したものであることを特徴とする。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援装置の他の特徴とするところは、前記離散モデルは、前記製造プロセスを、前記製造物の流れ方向に複数のステージに分け、前記ステージ毎に前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記各ステージ内での前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルである点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援装置の他の特徴とするところは、前記離散モデルは、ペトリネットモデルを用いて構築されている点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援装置の他の特徴とするところは、ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の関係を探索して提示する作成支援手段をさらに備えた点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援装置の他の特徴とするところは、ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、予め定められたルールに従って命題間の関係を制限する作成支援手段をさらに備えた点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援装置の他の特徴とするところは、ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の経路を探索して提示する作成支援手段をさらに備えた点にある。
また、本発明の離散モデルのアップデート支援装置の他の特徴とするところは、前記離散モデルに基づいて、ある命題を始点としてそれにつながる終点となる命題を、命題を補間しながら探索して提示する作成支援手段をさらに備えた点にある。
本発明のプログラムは、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスについて、前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルのアップデートを支援するためのプログラムであって、前記製造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書であって、トラブルの発生状況、トラブルの原因、トラブルに対する対策、トラブル発生の際に処理されていた製造物、製造オペレータのトラブルについての所見、についての情報を少なくとも含む文章であるトラブル報告書に基づいて作成された集約命題関連図を取得する集約命題関連図取得手段と、前記集約命題関連図取得手段で取得した集約命題関連図に基づいて、前記離散モデルに定義する前記製造物の属性の状態と設備の状態のみを用いて、トラブルにおける前記製造プロセスの状態遷移を表現した図である状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段と、前記状態遷移図作成手段で作成した状態遷移図に、前記離散モデルから、前記製造物の属性の状態についての情報と、前記設備の状態についての情報と、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係についての情報との少なくとも1つを補完して補完状態遷移図を作成する補完状態遷移図作成手段と、前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を出力する出力手段と、前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を用いて、前記製造プロセスの離散モデルに対して、状態及び因果関係の追加又は修正であるアップデートを行うアップデート手段としてコンピュータを機能させ、前記集約命題関連図は、前記トラブル報告書の文章を、前記離散モデルの表現に対応させた命題に区切って、命題間をつないでフローチャートで表現し、これら命題を前記離散モデルに対応させた表現として集約したものであることを特徴とする。
本発明によれば、製造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書に基づいて状態遷移図を作成し、その状態遷移図に離散モデルから情報を補完するようにしたので、トラブル報告書と離散モデルとを比較することができる。これにより、トラブル報告書に記述された内容を離散モデルに反映させるようにアップデートするのを支援することができる。
連続鋳造プロセスの概要を示す図である。 連続鋳造プロセスの離散モデリングの手順を示すフローチャートである。 各ステージの製造物の属性を説明する図である。 ペトリネットを説明する図である。 TDステージでの製造物の属性の状態遷移モデル及び設備の状態遷移モデルを示す図である。 鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルと、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルを示す図である。 ノズルステージでの製造物の流量の状態遷移モデルと、鋳型ステージでの製造物の湯面レベルの状態遷移モデルを示す図である。 連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成例を示す図である。 操業支援装置による操業支援の手順を示すフローチャートである。 TDステージの状態遷移モデルから作成した可到達木を示す図である。 鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルから作成した可到達木と、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルから作成した可到達木とを示す図である。 図6に対応する鋳型ステージ及び垂直領域ステージの可到達木を示す図である。 鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルと、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルを示す図である。 図13に対応する鋳型ステージ及び垂直領域ステージの可到達木を示す図である。 リスクマトリクスの例を示す図である。 リスクマトリクスの例を示す図である。 操業支援装置による操業支援の手順を示すフローチャートである。 リスクマトリクスの例を示す図である。 連鋳モデルのアップデート支援方法及びそれに用いられる装置の概要を示す図である。 トラブル報告書の例を示す図である。 トラブル報告書の文章を命題に区切った結果を示す図である。 命題関連図の例を示す図である。 集約命題関連図(状態遷移整理前)の例を示す図である。 集約命題関連図(状態遷移整理後)の例を示す図である。 命題のリストの例を示す図である。 状態遷移図の例を示す図である。 補完状態遷移図の例を示す図である。 状態遷移図で矢印で表わされる命題間の関係である因果関係と連鋳モデルとの対応関係の例を示す図である。 状態遷移図で矢印で表わされる命題間の関係である因果関係と連鋳モデルとの対応関係の例を示す図である。 状態遷移図で矢印で表わされる命題間の関係である因果関係と連鋳モデルとの対応関係の例を示す図である。 状態遷移図で矢印で表わされる命題間の関係である因果関係と連鋳モデルとの対応関係の例を示す図である。 状態遷移図で矢印で表わされる命題間の関係である因果関係と連鋳モデルとの対応関係の例を示す図である。 状態遷移図で矢印で表わされる命題間の関係である因果関係と連鋳モデルとの対応関係の例を示す図である。 集約命題関連図の例を示す図である。 状態遷移図の例を示す図である。 補完状態遷移図の例を示す図である。 アップデートされるペトリネットを示す図である。 命題関連図の作成支援装置の構成を示す図である。 トラブル報告書の例を示す図である。 命題関連図の作成支援装置の表示装置に表示される作成支援画面の例を示す図である。 命題関連図の作成支援装置の表示装置に表示される作成支援画面の例を示す図である。 命題関連図の作成支援装置の表示装置に表示される作成支援画面の例を示す図である。 命題関連図の作成支援装置の表示装置に表示される作成支援画面の例を示す図である。 命題関連図の作成支援装置の表示装置に表示される作成支援画面の例を示す図である。 命題間に複数の経路がある状態を説明するための図である。 制限される命題間の関係を説明するための図である。 制限される命題間の関係を説明するための図である。 制限される命題間の関係を説明するための図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
[連続鋳造プロセスの概要]
連続鋳造プロセスでは、図1に示すように、不図示の転炉で作られた溶鋼が二次精錬を経て取鍋100に入れられ、連続鋳造設備の最上部に運ばれる。溶鋼は、取鍋100の底部から下のタンディッシュ200へ注がれる。そして、タンディッシュ200に注がれた溶鋼は、タンディッシュ200の底部からノズル300を介して鋳型400へと注がれる。鋳型400に接触した溶鋼は精密に調整されながら冷やされて凝固して鋼片となり、不図示のロールで運ばれながら、ロール列末端にある不図示のガス切断機で適度な長さに切断される。
[連続鋳造プロセスの操業支援]
以下では、連続鋳造プロセスの離散モデルを利用した操業支援方法及びそれに用いられる装置の例について説明する。
(連続鋳造プロセスの離散モデリング)
まず、図1に示したような連続鋳造プロセスの離散モデリングについて説明する。連続鋳造プロセスでは、連続する(物理的に繋がっている)製造物(溶鋼、鋼片)が連続的に流れる(移動する)。このように「連続」という特徴を持つ連続鋳造プロセスを離散モデリングすることは、「連続」の中に認知される因果関係を抽出し、それを離散モデルとして定義することに相当する。そこで、製造物の状態をステージ毎に定義し、離散化することとしている。
図2に、連続鋳造プロセスの離散モデリングの手順を示す。最初に、連続鋳造プロセスを、製造物が流れる方向に複数のステージに分ける(ステップS101)。本実施形態では、図3に示すように、上流側からタンディッシュステージ(TDステージ)、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージでの4つに分けている。
次に、ステージ毎に、製造物の属性及びその状態を定義する(ステップS102)。本実施形態では、図3に示すように、TDステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、粘性(高・普)を定義している。また、ノズルステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、流量(適切・少)、流れ(整流・偏流)を定義している。また、鋳型ステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、温度均一性(均一・不均一)、シェル厚(適切・薄)、シェル均一性(均一・不均一)、介在物(有り・無し)、表面引張応力(強い・弱い)、湯面レベル(適切・低)を定義している。また、垂直領域ステージでの製造物の属性及びその状態として、温度(高・普・低)、シェル厚(適切・薄)、バルジング有無(有り・無し)を定義している。なお、ここで挙げた製造物の属性及びその状態は一例であり、これに限定されるものではない。
次に、ステージ毎に、製造物の属性の状態の遷移経路を定義する(ステップS103)。例えば各ステージにおいて、製造物の温度については、温度高と温度低との間の移動は、必ず温度普を経てから移動する等の遷移経路を定義する。
次に、ステージ毎に、製造物の属性の状態遷移モデルM1を作成する(ステップS104)。本実施形態では、製造物の属性の状態遷移モデルM1をペトリネットで作成する。ペトリネットは並列非同期同時進行する複数のプロセスからなる離散事象システムを表現するグラフィカルで実行可能な数学モデルであり、図4に示すように、状態をプレースP、遷移をトランジションTとして記述し、トランジションTの発火によりトークンが入力側のプレースP1、P2から出力側のプレースP3に移動することで、対象の振る舞いを表現する。なお、ペトリネットについては非特許文献1等に詳しく記述されている。
図5には、TDステージでの製造物の属性の状態遷移モデルTD−M1を示す。温度について、温度高のプレース、温度普のプレース及び温度低のプレースがトランジションT9〜T12を介して接続する。温度低のプレースにトークンがある場合、トランジションT11が発火可能であり、発火するとトークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT9が発火可能であり、発火するとトークンが温度高のプレースに移動する。また、温度高のプレースにトークンがある場合、トランジションT10が発火可能であり、発火するとトークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT12が発火可能であり、発火するとトークンが温度低のプレースに移動する。
また、粘性について、粘性高のプレース及び粘性普のプレースがトランジションT13及びT14を介して接続する。粘性高のプレースにトークンがある場合、トランジションT14が発火可能であり、発火するとトークンが粘性普のプレースに移動する。また、粘性普のプレースにトークンがある場合、トランジションT13が発火可能であり、発火するとトークンが粘性(高)のプレースに移動する。
なお、ここではTDステージでの製造物の属性の状態遷移モデルTD−M1について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれ製造物の属性の状態遷移モデルNOZ−M1、MD−M1、V−M1を作成する。
全ステージについて製造物の属性の状態遷移モデルM1を作成したならば(ステップS105)、ステージ毎に、設備及びその状態を定義する(ステップS106)。本実施形態では、TDステージでの設備及びその状態として、プラズマ加熱装置(ON・OFF・故障)、バブリング(ON・OFF・故障)を定義している。また、ノズルステージでの設備及びその状態として、ノズル(定常用(不詰)・非定常用・故障(偏詰)・故障(詰))、スライド(定常用・非定常用(広)・故障)を定義している。また、鋳型ステージでの設備及びその状態として、パウダー投入機(定常用・非定常用(別パタン)・故障)、スプリンクラー(定常用・非定常用(強)・故障)、ローラー(定常用・非定常用(引抜速度遅)・故障)を定義している。なお、ここで挙げた設備及びその状態は一例であり、これに限定されるものではない。
次に、ステージ毎に、設備の状態の遷移経路を定義する(ステップS107)。例えばTDステージにおいて、プラズマ加熱装置(ON・OFF・故障)については、プラズマ加熱装置(故障)には必ずプラズマ加熱装置(OFF)から移動する等の遷移経路を定義する。
次に、ステージ毎に、設備の状態遷移モデルM2を作成する(ステップS108)。本実施形態では、設備の状態遷移モデルM2もペトリネットで作成する。
図5には、TDステージでの設備の状態遷移モデルTD−M2を示す。プラズマ加熱装置について、ONのプレース、OFFのプレース及び故障のプレースがトランジションT1〜T3を介して接続する。OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT1が発火可能であり、発火するとトークンが故障のプレースに移動する。また、OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT3が発火可能であり、発火するとトークンがONのプレースに移動する。また、ONのプレースにトークンがある場合、トランジションT2が発火可能であり、発火するとトークンがOFFのプレースに移動する。
また、バブリングについて、ONのプレース、OFFのプレース及び故障のプレースがトランジションT5〜T7を介して接続する。OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT5が発火可能であり、発火するとトークンが故障のプレースに移動する。また、OFFのプレースにトークンがある場合、トランジションT7が発火可能であり、発火するとトークンがONのプレースに移動する。また、ONのプレースにトークンがある場合、トランジションT6が発火可能であり、発火するとトークンがOFFのプレースに移動する。
なお、ここではTDステージでの設備の状態遷移モデルTD−M2について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれ設備の状態遷移モデルNOZ−M2、MD−M2、V−M2を作成する。
全ステージについて設備の状態遷移モデルM2を作成したならば(ステップS109)、ステージ毎に、ステージ内での影響関係を定義する(ステップS110)。表1には、TDステージ内での設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係を定義した内容を示す。表1に示すように、プラズマ加熱装置がONであるとき、製造物の属性のうち温度が、温度低の状態であれば温度普に、温度普の状態であれば温度高に遷移することを定義している。また、バブリングがONであるとき、製造物の属性のうち温度が、温度高の状態であれば温度普に、温度普の状態であれば温度低に遷移することを定義している。
Figure 0006083249
次に、ステップS110において定義した、設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む(ステップS111)。図5に示すように、プラズマ加熱装置の状態遷移モデルにおいてONのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT4が発火する。その結果、温度の状態遷移モデルにおいて温度低のプレースにトークンがある場合、トランジションT4と許可同期アークで結ばれたトランジションT11が発火して、トークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT4と許可同期アークで結ばれたトランジションT9が発火して、トークンが温度高のプレースに移動する。また、バブリングの状態遷移モデルにおいてONのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT8が発火する。その結果、温度の状態遷移モデルにおいて温度高のプレースにトークンがある場合、トランジションT8と許可同期アークで結ばれたトランジションT10が発火して、トークンが温度普のプレースに移動する。また、温度普のプレースにトークンがある場合、トランジションT8と許可同期アークで結ばれたトランジションT12が発火して、トークンが温度高のプレースに移動する。なお、許可同期アークとは、始点のトランジションが発火すると終点のトランジションが必ず発火することを表わす。また、条件アークとは、始端プレースにトークンが存在するときに発火可能であることを表わす。
なお、ここではTDステージ内での製造物の属性の状態遷移モデルTD−M1及び設備の状態遷移モデルTD−M2について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれステージ内での設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む。
また、ここではステージ内での設備の状態と製造物の属性の状態との影響関係について説明したが、例えばステージ内での製造物の属性間の影響関係を定義するようにしてもよい。例えば鋳型ステージ内で温度均一性はシェル均一性に影響するので(温度均一であればシェル均一、温度不均一であればシェル不均一)、その影響関係を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1)に組み込むようにしてもよい。
全ステージについてステージ内での影響関係を取り込んだならば(ステップS112)、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義する(ステップS113)。ステージ間での製造物の属性間の影響関係とは、略同時刻に別ステージに存在する製造物から受ける影響である。例えば垂直領域でバルジングが生じると、略同時刻に、その上流側の鋳型で湯面振動が生じ、湯面レベルに影響を与えることがわかっている。したがって、図3の破線の矢印31に示すように、垂直領域ステージでのバルジング有無は、その上流側の鋳型ステージでの湯面レベルに影響を与えると定義している。すなわち、垂直領域ステージでのバルジングが有りの場合、鋳型ステージでの湯面レベルが適切であれば低に遷移することを定義している。また、垂直領域ステージでのバルジングが無しの場合、鋳型ステージでの湯面レベルが低であれば適切に遷移することを定義している。
次に、ステップS113において定義した、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)を状態遷移モデル(製造物の属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む(ステップS114)。図6には、鋳型ステージでの製造物の属性の状態遷移モデルMD−M1の一部(温度及び湯面レベル)と、垂直領域ステージでの製造物の属性の状態遷移モデルV−M1の一部(バルジング)を示す。これら状態遷移モデルM1はステップS104において作成されたものである。鋳型ステージでの温度については、温度低のプレースにトークンがある場合、トランジションT301が発火可能であり、発火するとトークンが温度高のプレースに移動する。また、温度高のプレースにトークンがある場合、トランジションT302が発火可能であり、発火するとトークンが温度低のプレースに移動する。なお、温度の状態として(高・普・低)を定義していると説明したが、図6では説明を簡単にするために(高・低)の状態だけを図示する。鋳型ステージでの湯面レベルについては、適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT303が発火可能であり、発火するとトークンが低のプレースに移動する。また、低のプレースにトークンがある場合、トランジションT304が発火可能であり、発火するとトークンが適切のプレースに移動する。垂直領域ステージでのバルジングについては、バルジング無しのプレースにトークンがある場合、トランジションT401が発火可能であり、発火するとトークンがバルジング有りのプレースに移動する。また、有りのプレースにトークンがある場合、トランジションT402が発火可能であり、発火するとトークンが無しのプレースに移動する。
そして、図6に示すように、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて有りのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT501が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT303が発火して、トークンが低のプレースに移動する。また、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて無しのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT502が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて低のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT304が発火して、トークンが適切のプレースに移動する。
なお、本実施形態では、下流側のステージでの製造物の属性が上流側のステージでの製造物の属性に影響を与える例を説明したが、その逆、すなわち上流側のステージでの製造物の属性が下流側のステージでの製造物の属性に影響を与えることもありうる。
次に、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係を定義する(ステップS115)。図3の実線の矢印32に示すように、例えばTDステージでの温度は、その下流側のノズルステージでの温度に受け渡されると定義している。すなわち、TDステージでの温度が高くなれば、その下流側のノズルステージでの温度も高くなり、TDステージでの温度が普通になれば、その下流側のノズルステージでの温度も普通になり、TDステージでの温度が低くなれば、その下流側のノズルステージでの温度も低くなる。以下同様に、ノズルステージでの温度は鋳型ステージでの温度に受け渡され、鋳型ステージでの温度は垂直領域ステージでの温度に受け渡されると定義している。
また、ノズルステージでの流量は、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルに受け渡されると定義している。すなわち、ノズルステージでの流量が適切になれば、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルも適切になり、ノズルステージでの流量が少なくなれば、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルも低くなる。
また、ノズルステージでの流れは、その下流側の鋳型ステージでの温度均一性に受け渡されると定義している。すなわち、ノズルステージでの流れが整流になれば、その下流側の鋳型ステージでの温度均一性も均一になり、ノズルステージでの流れが偏流になれば、その下流側の鋳型ステージでの温度均一性も不均一になる。
次に、ステップS115において定義した、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を状態遷移モデル(属性の状態遷移モデルM1及び設備の状態遷移モデルM2)に組み込む(ステップS116)。図7には、ノズルステージでの製造物の属性の状態遷移モデルNOZ−M1の一部(流量)と、鋳型ステージでの製造物の属性の状態遷移モデルMD−M1の一部(湯面レベル)を示す。これら状態遷移モデルM1はステップS104において作成されたものである。ノズルステージでの流量については、適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT201が発火可能であり、発火するとトークンが少のプレースに移動する。また、少のプレースにトークンがある場合、トランジションT202が発火可能であり、発火するとトークンが適切のプレースに移動する。鋳型ステージでの湯面レベルについては、図6で説明したとおりである。
そして、図7に示すように、ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの適切のプレースと、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの適切のプレースとがトランジションT601を介して接続し、また、ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの少のプレースと、その下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの低のプレースとがトランジションT602を介して接続する。以下、ステップS116において定義するトランジションを受け渡しトランジションと称する。ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの適切のプレースにトークンがある場合、受け渡しトランジション601が発火可能であり、発火するとその下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの適切のプレースにトークンが移動する。また、ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの少のプレースにトークンがある場合、受け渡しトランジション602が発火可能であり、発火するとその下流側の鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの低のプレースにトークンが移動する。
なお、更にその下流のステージにつながるときは、対応するプレースが受け渡しトランジションを介して接続する。図7の例では、湯面レベルはその下流側のステージにつながらないので、出側にプレースが接続しない受け渡しトランジションT603、T604を定義しておく。
ステップS116において定義する受け渡しトランジション(図7の例では受け渡しトランジションT601〜T604)は、単独で発火することはなく、いずれかのステージで製造物の属性の状態が変化したとき、全てが同時に発火する。例えば図7に示す状態(ノズルステージでの流量の状態遷移モデルの適切のプレースにトークンがあり、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルの適切のプレースにトークンがある状態)で、ノズルステージの流量が少なくなると(流量の少のプレースにトークンが移動すると)、全ての受け渡しトランジションが同時に発火する。その結果、受け渡しトランジションT602の発火により流量の少のプレースのトークンが湯面レベルの低のプレースに移動するとともに、受け渡しトランジションT603の発火により湯面レベルの適切のプレースのトークンが消えることになる。再度、いずれかのステージで製造物の属性が変化したとき、全ての受け渡しトランジションが同時に発火する。
また、例えば図7に示す状態で、いずれかのステージの製造物の温度が変化すると、全ての受け渡しトランジションが同時に発火する。その結果、受け渡しトランジションT601の発火により流量の適切のプレースのトークンが湯面レベルの適切のプレースに移動するとともに、受け渡しトランジションT603の発火により湯面レベルの適切のプレースのトークンが消えることになるが、この配置では、ノズルステージの流量や鋳型ステージの湯面レベルの状態は温度の変化には影響を受けず、それまでの状態と変わることはない。
以上述べた離散モデリングは、離散モデリングのアルゴリズムを実行可能としたコンピュータ装置を利用して行うことができる。すなわち、オペレータが、ステージの分け方、ステージ毎の製造物の属性及びその状態、製造物の属性の状態の遷移経路を介して入力すると(ステップS101〜ステップS103)、コンピュータ装置が自動的にステージ毎の製造物の属性の状態遷移モデルを作成する(ステップS104)。同様に、オペレータが、ステージ毎の設備及びその状態、設備の状態の遷移経路を入力すると(ステップS106〜ステップS107)、コンピュータ装置が自動的にステージ毎の設備の状態遷移モデルを作成する(ステップS108)。また、オペレータが、ステージ内での影響関係を入力すると(ステップS110)、コンピュータ装置が自動的にその影響関係を状態遷移モデルに組み込む(ステップS111)。また、オペレータが、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を入力すると(ステップS113)、コンピュータ装置が自動的にその影響関係を状態遷移モデルに組み込む(ステップS114)。また、オペレータが、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係を入力すると(ステップS115)、コンピュータ装置が自動的にその関係を状態遷移モデルに組み込む(ステップS116)。
なお、本実施形態ではペトリネットを説明したが、離散事象システムをモデル化するものであればそれに限定されるものではなく、その他のグラフモデル、例えば有向グラフや無向グラフに本発明を適用することも可能である。例えば有向グラフでは、ペトリネットモデルにおけるプレースは点で表現され、トランジションは矢印付きの線で表現される。矢印付きの線は、点から点へ製品すなわちトークンを移動させる移動操作端であり、移動路の役目をする。また、矢印は、線から点、或いは点から線へトークンが移動する方向を示すものである。このような特徴を有するグラフモデルに本発明を適用する場合も、一連の動作は上述したペトリネットモデルにおける動作と同様であり、詳細な説明は省略する。
(離散モデリングにより作成した離散モデルを利用した操業支援1)
図8は、連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成例を示す図である。1は離散モデリング部であり、上述したように連続鋳造プロセスを製造物の流れ方向に複数のステージに分け、ステージ毎に製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、各ステージ内での影響関係を定義して作成した離散モデルを作成する。また、必要に応じて、同時刻に別ステージに存在する製造物から受ける影響である、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)、上流側のステージでの前記製造物の属性の状態が、前記製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を定義する。
2は第1の状態遷移図作成手段である可到達木作成部であり、離散モデリング部1で作成した離散モデルを用いて、ステージ毎に初期状態を設定し、当該初期状態から到達可能な状態を示す各ステージの状態遷移図である可到達木を作成する。3は第2の状態遷移図作成手段である全体可到達木作成部であり、可到達木作成部2により作成した全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の状態遷移図である可到達木を作成する。
4はリスクマトリクス作成部であり、全体可到達木作成部3により作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いて、発生確度と危険度との関係を表わすリスクアセスメントマトリクス(本願では単にリスクマトリクスと称する)を作成する。5は入力装置であり、例えば離散モデリング部1が離散モデルを作成する際の各種定義を入力、設定したり、可到達木作成部2が可到達木を作成する際の初期状態を入力、設定したりする。6は出力装置であり、例えばリスクマトリクス作成部4により作成したリスクマトリクスを画面表示する表示装置が該当する。
なお、図8では1台の装置として図示したが、例えば離散モデリングは別の装置で実行する等、複数台の装置が協働して図8に示す機能構成が実現されるようにしてもよい。
図9に、操業支援装置による操業支援の手順を示す。まず、上述した離散モデリングにより離散モデルを作成する(ステップS201)。本例の場合、近い将来に起こり得るリスクを、起こりうる可能性の低いリスクも含めてオペレータに詳細に提示することを目的としているため、遠い将来すなわち製造物の移動に伴って発生するリスクは考えない。つまり、図2のステップS101〜S114にて離散モデルを作成し、図2のステップS115、S116は行わず、すなわち上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を組み込まないで離散モデルを作成する。
次に、ステップS201において作成した離散モデルを用いて、ステージ毎に初期状態、例えば各ステージの現在の状態を設定し、その初期状態から遷移可能(到達可能)な可到達木を作成する(ステップS202)。可到達木は、図10に示すように、「状態」(状態を記述した楕円)を、「遷移(オペレーションの内容に相当する)」(ドットを付した楕円)を介して接続したものである。図10には、TDステージの状態遷移モデル(図5を参照)から作成した可到達木を示す。ここでは、初期状態が「温度低、粘性高、プラズマ加熱装置OFF、バブリング故障」であり、その次に到達できる「状態」は、トランジションT1が発火したときの「温度低、粘性高、プラズマ加熱装置故障、バブリング故障」か、トランジションT3が発火(それに伴ってトランジションT4、T11も発火)したときの「温度普、粘性高、プラズマ加熱装置ON、バブリング故障」である。このようにして、次に到達できる「状態」を順次求めていき、可到達木を作成する。
なお、ここではTDステージでの可到達木について詳述したが、ノズルステージ、鋳型ステージ、及び垂直領域ステージについても、それぞれ初期状態を設定し、可到達木を作成する。図11には、鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデル(図6を参照)から作成した可到達木と、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデル(図6を参照)から作成した可到達木とを示す。鋳型ステージにおいて、初期状態が「温度低、湯面レベル適切」である場合、その次に到達できる「状態」は、トランジションT301が発火したときの「温度高、湯面レベル適切」か、トランジションT303が発火したときの「温度低、湯面レベル低」である。また、垂直領域ステージにおいて、初期状態が「バルジング無し」である場合、その次に到達できる「状態」は、トランジションT401が発火したときの「バルジング有り」である。このようにして、次に到達できる「状態」を順次求めていき、可到達木を作成する。
ところで、図10のTDステージの可到達木では、一方向のみに状態が遷移する(元の状態に戻れない)状態遷移図となっているのに対して、図11の鋳型ステージや垂直領域ステージの可到達木では、自由に元に状態に戻れる状態遷移図となっている。これは、TDステージでは「バブリング故障」を初期状態としているので、トランジションT11の発火によって状態が遷移してもトランジションT12が発火できず、一方向のみに遷移する状態遷移図となったものである。このように、可到達木は初期状態の与え方によって異なるものとなる。
次に、ステップS202において作成した全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の可到達木(一つの可到達木)を作成する(ステップS203)。
ここで、ステージ間によっては、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)を定義している場合と、定義していない場合とがある。まず、図11を参照して、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義している場合の、両ステージの可到達木の作成の仕方について説明する。図11は、鋳型ステージでの製造物の温度及び湯面レベルの状態遷移モデルから作成した可到達木と、垂直領域ステージでの製造物のバルジングの状態遷移モデルから作成した可到達木とを用いて、両ステージの可到達木を作成する様子を示す。
図6を参照して既述したが、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて有りのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT501が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて適切のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT303が発火して、トークンが低のプレースに移動する。また、垂直領域ステージでのバルジングの状態遷移モデルにおいて無しのプレースにトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT502が発火する。その結果、鋳型ステージでの湯面レベルの状態遷移モデルにおいて低のプレースにトークンがある場合、トランジションT501と許可同期アークで結ばれたトランジションT304が発火して、トークンが適切のプレースに移動する。
この場合、図11に示すように、鋳型ステージ及び垂直領域ステージの「状態」をプレース、「遷移」をトランジションに見立てるとともに、ステージ間をつなげるトランジションT501、T502を、トランジションT700〜T703に見立てた「遷移」と、プレースP701、P702で表わす。バルジング「有り」のときのみ湯面レベルが「適切」から「低」に遷移し、バルジング「無し」のときのみ湯面レベルが「低」から「適切」に遷移する『切り替え』をモデル化している。この例では存在しないが、例えばバルジングが「有り」から「無し」以外の他の状態(例えば「やや有り」等)に遷移しただけでは、湯面レベルは「低」から「適切」には遷移しない。湯面レベル「適切」に遷移させるためには、必ずバルジングの状態が「無し」に遷移しなければならない。このようなことを表現するために図11のようなモデル化を行う。トランジションT501はバルジング有りにトークンが存在するときは常に発火するトランジションであり、トランジションT502はバルジング無しにトークンが存在するときは常に発火するトランジションである。プレースP701はトランジションT700を発火するための条件となるプレース、プレースP702はトランジションT701を発火するための条件となるプレースである。また、トランジションT700はプレースP701にトークンが存在するときに常に発火するトランジション、トランジションT701はプレースP702にトークンが存在するときに常に発火するトランジションである。また、プレースP701にトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT702が発火して、その結果、トランジションT702と許可同期アークで結ばれたトランジションT304が発火する。また、プレースP702にトークンがあるとき、条件アークを介してトランジションT703が発火して、その結果、トランジションT703と許可同期アークで結ばれたトランジションT303が発火する。
これにより、図12に示すように、初期状態を「温度低、湯面レベル適切、バルジング無し」とした両ステージの可到達木が作成される。
次に、図13、図14を参照して、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義していない場合の、両ステージの可到達木の作成の仕方について説明する。ここでは、対比の意味も含めて、図13に示すように、鋳型ステージと垂直領域ステージとの間で製造物の属性間の影響関係を定義していないものとして、両ステージの可到達木を作成する場合を説明する。この場合、鋳型ステージの「状態」と垂直領域ステージの「状態」との全組み合わせをそれぞれ「状態」として可到達木を作成する。すなわち、図14の例の場合、鋳型ステージの4つの「状態」と垂直領域ステージの2つの「状態」の全組み合わせである8つの「状態」を有する可到達木が作成される。これにより、図14に示すように、初期状態を「温度低、湯面レベル適切、バルジング無し」とした両ステージの可到達木が作成される。
図12に示したようにステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義している場合、鋳型ステージの「状態」と垂直領域ステージの「状態」との全組み合わせのうち、遷移可能な「状態」だけが選ばれることになる。すなわち、「状態」の組み合わせに制限がかかり、図14に示したようにステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義しない場合に比べて、「状態」の数は減ることになる。
以上のアルゴリズムに従って、全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成する。この一つの可到達木は、連続鋳造プロセス全体の製造物と装置が、ある初期状態から遷移しうる状態の集合を意味する。
次に、ステップS203において作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いて、発生確度と危険度との関係を表わすリスクマトリクスを作成する(ステップS204)。図15に、リスクマトリクスの例を示す。なお、図示例では、説明の簡略化のため、鋳型ステージと垂直領域ステージの可到達木を用いてリスクマトリクスを作成した例を示すが、実際は、連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いてリスクマトリクスを作成する。
リスクマトリクスの横軸は発生確度を、縦軸は危険度を表わし、連続鋳造プロセス全体の可到達木(図15の例は鋳型ステージと垂直領域ステージの可到達木)の「状態」を並び替えたものである。横軸方向では、まず初期状態が位置し、次に初期状態から到達しうる「状態」が位置する。初期状態から各「状態」まで到達するのに必要な最小の遷移の実行回数を「初期状態」から各「状態」までの「距離」と定義し、この「距離」が小さいほど発生確度が低くなるように位置する。なお、ここでは初期状態からの遷移の実行回数を「距離」と定義したが、各「遷移」が実行される確率(発火する確率)等を考慮して初期状態からの各「状態」までの距離を規定するようにしてもよい。
図12の初期状態と各「状態」を繋ぐ遷移のうち、最小の距離の遷移以外の遷移を除去し、初期状態からの「距離」が小さいほど「状態」を発生確度が低くなるように位置する。
また、製造物の属性毎に予め危険度が定められており、その組み合わせに応じて危険度が定められる。ここでは、「温度高、湯面レベル適切、バルジング無し」という「状態」は操業上最も安全な状態であるのに対して、「温度低、湯面レベル低、バルジング有り」という「状態」は操業上最も危険度の高い状態となる。
このようなリスクマトリクスを画面表示して提示することにより、トラブル発生の推定等、操業者の意思決定において有効な情報を提示することができる。リスクマトリクスにマップされた可到達木においては、「発生確度が高く、かつ、危険度も低い状態」や「発生確度が低く、かつ、危険度も低い状態」等が示され、任意の「状態」に到達するための経路が網羅的に可視化されるので、トラブル要因を俯瞰することが容易となっている。例えばリスクマトリクスの左下に位置する「状態」ほど、「発生確度が高く、かつ、危険度も高い状態」であり、そこに至る経路と合わせて注意すべきと認識することができる。逆にいえば、初期状態「温度低、湯面レベル適切、バルジング無し」から危険度が低くなる「遷移」が実施すべきオペレーションを意味している。
リスクマトリクスを画面表示するに際して、例えば最も「発生確度が高く、かつ、危険度も高い状態」を目立つように表示するようにしてもよい。また、図15の囲み1501に示すように、危険な状態に至る経路(シナリオ)(或いは、逆に安全な状態に至る経路(シナリオ))を囲んで表示するようにしてもよい。
なお、上述したように「状態」の数は多くなるものの、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)を定義しなくても、連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成することができる。すなわち、図2のステップS101〜S112だけで作成した離散モデルに基づいて、各ステージの可到達木を作成し、それらを用いて連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成して、リスクマトリクスを作成するようにしてもよい。参考として、図16には、ステージ間での製造物の属性間の影響関係を定義していない場合の、鋳型ステージと垂直領域ステージの可到達木を用いてリスクマトリクスを作成した例を示す。
(離散モデリングにより作成した離散モデルを利用した操業支援2)
上述した操業支援1では、初期状態から到達可能な状態遷移を示す可到達木を作成し、リスクマトリクスとして提示する例を説明した。すなわち、操業支援1は、近い将来の危険を把握したい場合に活用するものであり、鋼が同じステージに留まっている条件下でリスクマトリクスを作成して、近い将来のリスクを、起こりうる可能性の低いリスクも含めてオペレータに詳細に提示することを目的としていた。一方、操業支援2では、連続鋳造プロセスの進行に伴う状態遷移をリスクマトリクスとして提示する例を説明する。この操業支援2は、遠い将来の危険を把握したい場合に活用するものであり、鋼が後続するステージに移動することも考慮して、より遠い将来も含めたリスクマトリクスを作成することができる。すなわち、操業支援2では、近い将来起こりうる可能性の低いリスクは提示しないものの、遠い将来すなわち製造物が後続するステージに移動することにより発生するリスクをオペレータに提示することができる。
連続鋳造プロセスの操業支援装置の構成例は図8と同様であるが、本例の場合、離散モデリング部1で、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を必ず定義する。
そして、初期状態を与えて、全体可到達木作成部3により連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成した後、全体可到達木作成部3により作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木から「状態」及びそれに至る「遷移」を抽出するステップと、可到達木作成部2が、前記抽出した「状態」及びそれに至る「遷移」を離散モデルに反映させた状態を初期状態として各ステージの可到達木を作成するステップと、全体可到達木作成部3が、可到達木作成部2により作成した全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の可到達木を作成するステップとを繰り返す。
図17に、操業支援装置による操業支援の手順を示す。まず、上述した離散モデリングにより離散モデルを作成する(ステップS301)。本例の場合、図のステップS115、S116も行い、上流側のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージに受け渡される関係(図3の矢印32)を組み込んで離散モデルを作成する。なお、操業支援2でも、操業支援1と同様に、ステージ間での製造物の属性間の影響関係(図3の矢印31)を定義した方が好ましいが、必ずしも定義しなくてもよい。
次に、ステップS301において作成した離散モデルを用いて、ステージ毎に初期状態、例えば各ステージの現在の状態を設定し、各ステージの可到達木を作成する(ステップS302)。次に、ステップS302において作成した全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の可到達木(一つの可到達木)を作成する(ステップS303)。そして、ステップS303において作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いて、リスクマトリクスを作成する(ステップS304)。なお、ステップS302〜S304の処理は、操業支援1のステップS202〜S204と同様であり、ここではその詳細な説明は省略する。
次に、必要な回数(必要な操業時間分)が終了したか否かを判定する(ステップS305)。必要な回数が終了していなければ、ステップS304において作成したリスクマトリクス上で、発生確度や危険度を基準に(例えば発生確度と危険度を数値化し、それらの積が最も高い)「状態」、或いはオペレータが人為的に選んだ「状態」を抽出し、さらに抽出した「状態」に至る「遷移」も抽出する(ステップS306)。なお、ここで抽出されなかった「遷移」及び「状態」はオペレータに提示しない。ここで抽出する「状態」及びそれに至る「遷移」は一つである必要はなく、複数抽出してもよい。
そして、ステップS306において抽出した「状態」及びそれに至る「遷移」に基づきステップS301において作成した離散モデルの状態を変化させる。状態に変化が生じることで、上流のステージでの製造物の属性の状態が、製造物の移動に伴って下流側のステージへ受け渡され(図3の矢印32)、このときの状態を初期状態として各ステージの可到達木を作成する(ステップS307)。
その後、ステップS303に戻って、ステップS307において作成した全ステージの可到達木を用いて、連続鋳造プロセス全体の可到達木(一つの可到達木)を作成する(ステップS303)。そして、ステップS303において作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木を用いて、リスクマトリクスを作成する(ステップS304)。ステップS306において複数の「状態」及びそれに至る「遷移」を抽出した場合は、それぞれについてステップS307、S303、S304の処理を実行する。なお、ステップS304においてリスクマトリクスを作成すると説明したが、必ずしもリスクマトリクスを作成する必要はなく、ステップS303において作成した連続鋳造プロセス全体の可到達木から「状態」及びそれに至る「遷移」を抽出するようにしてもよい。
このようにして必要な回数が終了するまで、各ステージの可到達木の作成、連続鋳造プロセス全体の可到達木の作成及びリスクマトリクスの作成を繰り返し、その後、製造時間と発生確度及び危険度の指標との関係を表わすリスクマトリクスを作成する(ステップS308)。図18に、リスクマトリクスの例を示す。リスクマトリクスの横軸は鋳造時間を、縦軸は発生確度及び危険度を表わす。縦軸においてAは危険度高、Bは危険度中、Cは危険度低を意味し、aは発生確度高、bは発生確度中、cは発生確度低を意味する。図18において、状態1801はステップS302において設定した初期状態、状態1802はステップS306において抽出した「状態」である。また、状態1803、1804は、ステップS307、S303、S304の一回のループを経てステップS306において抽出した「状態」である。
以上述べたように、原因毎に取るべきアクションとその結果起こる現象を予測したり、アクションを取らなかった場合に起こる現象を予測したりすることが可能になり、操業トラブル回避や操業トラブル発生時のアクションをガイダンスする等、連続鋳造プロセスの操業を支援することができる。
[連続鋳造プロセスの離散モデルのアップデート支援]
以下では、上述した連続鋳造プロセスの離散モデル(以下、連鋳モデルと称する)のアップデート支援方法及びそれに用いられる装置の例について説明する。
図19は、連鋳モデルのアップデート支援方法及びそれに用いられる装置の概要を示す図である。10は連鋳モデルのアップデート支援装置であり、以下に述べるように、トラブル報告書191に基づいて作成された状態遷移図194に、連鋳モデル16とのつながりがわかるように連鋳モデル16から情報を補完して、補完状態遷移図195を作成する。これにより、連鋳モデル16のアップデートに必要な情報を提示して、連鋳モデル16のアップデートを支援することができる。なお、アップデート支援装置10は、上述した連続鋳造プロセスの操業支援装置と一体的に構成される形態でもよいし、操業支援装置とは別体として構成されて操業支援装置に接続する形態でもよい。
(トラブル報告書)
191はトラブル報告書であり、連続鋳造プロセスにおいてトラブルが発生したときに人手(オペレータ)により作成される。図20Aにトラブル報告書の例を示す。トラブル報告書191には、トラブルの発生状況、トラブルの原因、トラブルに対する対策、トラブル発生の際に処理されていた製造物、製造オペレータのトラブルについての所見等についての情報を含む文章が記述される。例えば発生状況の欄には「キャストスタートしてすぐ、ノズルクロスが発生した。3ch目スタート後、ノズルツツキを実施した結果、Vc=1.1m/minまで増速できた。5ch目スタート後、再びINクロスが発生。ツツキを実施するもVc=0.73までしか回復しない為、鍋残湯50tを残してキャストカットした。」というような記述がなされる。また、原因の欄には「鋼の温度低かった(Δt=+3℃)ためにノズルが詰まった。」というような記述がなされる。なお、ノズルツツキとは、ノズルが溶鋼の凝固で詰まった状態を解消するために、文字通りノズルをつつく作業のことである。
トラブル報告書191は操業者の暗黙知が文書として表出化したものであり、トラブル報告書191と連鋳モデル16とを比較して、トラブル報告書191に記述された内容を連鋳モデル16に反映させるようにアップデートすることは有用である。
ここで、トラブル報告書191は主に自然文で記述された文章であるのに対して、連鋳モデル16はペトリネット形式で表現されている。したがって、トラブル報告書191と連鋳モデル16とを単純に比較することはできず、両者を比較する上で、下記のような解消すべきギャップがある。
1.因果関係・状態遷移の記述形式の違い
トラブル報告書191では、例えば「加熱しすぎたのでこげた」というように言葉、文章で表現される。それに対して、連鋳モデル16では、例えば「加熱する→こげる」というように状態と状態の関係として表現される。
2.状態の詳細度の違い
トラブル報告書191では、例えば「温度が高い・上限値オーバー」というように詳細に状態が表現可能である。それに対して、連鋳モデル16では、例えば「温度(高・普・低)」のように離散的で決められた状態が表現される。
3.表現の粒度の違い
ここで、表現の粒度とは命題が包含する状態の数が多いとき粒度が大きいと考えることとする。トラブル報告書191では、例えば「風邪をひいている」というように複数の状態をまとめた表現がある。これは、表現の粒度が大きいと考える。それに対して、連鋳モデル16では、例えば「頭が痛い+喉が痛い+発熱」のように個別の状態に分解して状態が表現される。この個別の状態は、表現の粒度が小さいと考える。
4.定義可能な区分の違い
トラブル報告書191では、例えば「3時頃、トイレに行った後に・・・」というように人の行動+時刻・判断等も記述される。それに対して、連鋳モデル16では、例えば「温度が高い、設備故障」のように製造物(鋼)と設備の状態のみが表現される。
5・記述されている状態の違い
トラブル報告書191では、例えば「こげ、加熱」というようにそのトラブルに関する状態のみ記述される。それに対して、連鋳モデル16では、連鋳モデルの全ての状態が定義されている。
トラブル報告書191と連鋳モデル16とを同じ次元で比較するためには、上述したギャップを解消する必要がある。そこで、図19に示すように、トラブル報告書191を元にして、連鋳モデル16との間に3つの中間プロセス、すなわち命題関連図192、集約命題関連図193、及び状態遷移図194を挟み込むようにしている。
(命題関連図)
命題関連図192は、トラブル報告書191の文章を命題に区切って矢印でつないでフローチャートで表現したものであり、人手により例えば手書きや後述するように作成支援装置を利用して作成される。命題関連図192では、上述した「1.因果関係・状態遷移の記述形式の違い」を解消するために、トラブル報告書191に記述されている文章を、意味を表わすまとまり(1つの意味を表わす単位)である命題に区切り、どの命題とどの命題をつなぐかを決め、その関係を決定する。例えば「加熱しすぎたのでこげた」という文章であれば、「加熱しすぎたので/こげた」というように命題に区切り、「加熱しすぎたので」→(因果関係)「こげた」というようにその命題間の関係を定義する。
トラブル報告書191の発生状況の欄に「キャストスタートしてすぐ、ノズルクロスが発生した。3ch目スタート後、ノズルツツキを実施した結果、Vc=1.1m/minまで増速できた。5ch目スタート後、再びINクロスが発生。ツツキを実施するもVc=0.73までしか回復しない為、鍋残湯50tを残してキャストカットした。」との記述が、原因の欄に「鋼の温度低かった(Δt=+3℃)ためにノズルが詰まった。」との記述があった場合、図20Bに示すように命題に区切られる。
過去のトラブル報告書を分析した結果、トラブル報告書に記述されている文章を命題に区切ると、略全ての命題が「状態」、「作業工程」、「作業判断」、「製品仕様」、「設備の不備」、「その他(時間帯)」という6種類に分類されることがわかった。したがって、文章を命題に区切る際には、これら6種類の分類に当てはまるような単位で区切るようにする。
図21に、本例の場合の命題関連図192を示す。命題関連図192では、命題間を矢印でつなぎ、その関係を定義する。これにより、トラブル発生のいわばシナリオを表現することができる。命題間の関係として「因果関係」、「作業判断」、「時間経過・作業進行」、「タイミング」、「詳細説明」といった関係を用いることにより、トラブルの内容を表現可能である。「因果関係」の矢印は、矢印の後ろの命題が矢印の先の命題の原因となっている場合に用いる。「作業判断」の矢印は、矢印の後ろの命題が表わす状態に対して、操業者が状況判断を下した結果又は操業者が行ったオペレーションが矢印の先の命題である場合に用いる。「時間経過・作業進行」の矢印は、通常の流れで進行する作業、時間的な前後関係はあるが因果関係のない命題間をつなぐ場合に用いる。「タイミング」の矢印は、ある命題と、その命題がいつ起きたかを説明する命題をつなぐ場合に用いる。「詳細説明」の矢印は、ある命題と、その命題の内容の詳細を説明する命題をつなぐ場合に用いる。
さらに、「因果関係」については、「(1)ある状態遷移が起きる条件(図21では「条件」と記す)」、「(2)鋼の流れによって伝わる状態遷移」、「(3)オペレーションと期待される状態遷移(図21では「オペレーション効果」と記す)」、「(4)オペレーションの効果がなかった場合(図では「オペレーション効果なし」と記す)」、「(5)状態変化を抑止する条件」、「(6)同時発生する状態遷移」という6種類の関係に分類される。「(1)ある状態遷移が起きる条件」は、矢印の後ろの命題が矢印の先の命題の状態となる条件を表わしている場合に用いる。「(2)鋼の流れによって伝わる状態遷移」は、矢印の後ろの命題が表わす状態が、鋼の流れによって次のステージに伝わると矢印の先の命題が表わす状態となる場合に用いる。「(3)オペレーションと期待される状態遷移」は、矢印の後ろの命題がオペレーションを表わし、矢印の先の命題がそのオペレーションによって期待されていた状態変化を表わす場合に用いる。「(4)オペレーションの効果がなかった場合」は、矢印の後ろの命題がオペレーションを表わし、矢印の先の命題がそのオペレーションによって期待されていた状態変化を表わしていない(すなわち、状態が変化していない)場合に用いる。「(5)状態変化を抑止する条件」は、矢印の後ろの命題が表わす状態となり、矢印の先の命題が表わす状態を抑止している場合に用いる。この場合、矢印の先の命題には「温度が上がらなかった」等のように状態変化が起きなかったことを明記する。「(6)同時発生する状態遷移」は、矢印の後ろの命題が表わす状態遷移と、矢印の先の命題が表わす状態遷移が同時発生する場合に用いる。
図21の例でいえば、例えば命題「キャストスタートしてすぐ」と、命題「ノズルクロスが発生した」とは「タイミング」で関係付けられる。また、命題「ノズルクロスが発生した」と、命題「ノズルツツキを実施した結果」とは「作業判断」で関係付けられる。また、命題「ノズルツツキを実施した結果」と、命題「Vc=1.1m/minまで増速できた」とは「因果関係(オペレーション効果)」で関係付けられる。
なお、命題関連図192を作成する際には、表現を統一するようにする。例えばトラブル報告書191に記述された「INクロス」とはノズルクロスのこと(INはノズルと同じ意味)であり、その表現を「ノズルクロス」に統一している。
(集約命題関連図)
集約命題関連図193は、命題関連図192にある命題を集約し、トラブルの発生を命題の連結によって表現したものであり、人手により作成される。集約命題関連図193は、トラブル報告書191の内容を人が理解可能なかたちで計算機上に表現することを意図して、命題関連図192を変換することで作成する。集約命題関連図193を作成する際には、同じ内容を表わす命題を一つの表現に集約する。このとき、集約する表現を連鋳モデルに対応させた表現とすることにより、計算機が理解できる形式でトラブル報告書191に記述された内容を表現する。すなわち、連鋳モデル16において状態遷移はプレースの間をトークンが移動する現象として表現され、一つ一つの命題をプレースやトークンと対応させることにより、計算機が理解できる形式でトラブル報告書191に記述された内容を表現することができる。
アップデート支援装置10の集約命題関連図取得部11では、集約命題関連図193を取得する。集約命題関連図193がアップデート支援装置10上で作成される形態でもよいし、他の計算機上で作成された集約命題関連図193がアップデート支援装置10に入力される形態でもよい。
図22に集約命題関連図(状態遷移整理前)を示す。図21の命題関連図192において、原因に記述されている命題「ノズルが詰まった」と、発生状況の一番上に記述されている命題「ノズルクロスが発生した」とは同じ命題であり、集約することができる。
また、上述した「2.状態の詳細度の違い」を解消するために、「詳細説明」で関係付けられる命題をまとめる。「詳細説明」で関係付けられる命題は、一方が抽象的に、他方が具体的に表現されているが、同じ事象を違う言葉で表現するに過ぎないからである。図21の命題関連図192では、命題「鋼の温度低かったために」と、命題「Δt=+3℃」は「詳細説明」で関係付けられているので、離散的で決められた状態が表現された「鋼の温度が低い」との命題にまとめる。
また、詳細に状態が表現された命題を、離散的で決められた状態が表現された命題に集約する。図21の命題関連図192に記述された命題「ノズルクロスが発生した」や命題「再びノズルクロスが発生」は「ノズルクロス」との命題に集約する。同様に、例えば図21の命題関連図192における命題「Vc=1.1m/minまで増速できた」は「鋳造速度普通」との命題、命題「Vc=0.73までしか回復しない為」は「鋳造速度上がらず」との命題に、命題「鍋残湯50tを残してキャストカットした」は「キャストカットした」との命題にそれぞれ集約する。
ここまでに作成した集約命題関連図(状態遷移整理前)について状態遷移を整理して、図23に示すように集約命題関連図(状態遷移整理後)193を完成させる。図22の集約命題関連図(状態遷移整理前)では、命題「鋼の温度が低い」は、1回目のノズルクロスを意味する命題「ノズルクロス」にしか関係付けられていないが、鋼の温度が低いことが2回目のノズルクロスの原因になっていると考えられる。そこで、図23に示すように、命題「鋼の温度が低い」を2回目のノズルクロスを意味する命題「ノズルクロス」にも関係付ける。
また、上述した「3.表現の粒度の違い」を解消するために、トラブル報告書191に記述されていない中間状態を補完し、命題間の関係を整理する。ノズルツツキの結果、ノズルの詰まりが解消され、鋼の流量が増えたので、鋳造速度が増速されたものと考えられる。そこで、図23に示すように、命題「ノズルツツキを実施」と命題「鋳造速度普通」の間に、中間状態を意味する「ノズル正常」との命題と「鋼の流量普通」との命題を補完する。同様に、ノズルツツキの結果、ノズルクロスが解消されなかったので、鋳造速度が上がらなかったものと考えられる。そこで、図23に示すように、命題「ノズルツツキを実施」と命題「鋳造速度上がらず」の間に、中間状態を意味する「ノズルクロス回復せず」との命題を補完する。このとき、補完した命題と他の命題との関係を定義することはいうまでもない。
ここで、トラブル報告書191や命題関連図192から自然文に存在する表現のゆらぎを除去し、集約命題関連図193でトラブルの内容を計算機理解可能とするために、アップデート支援装置10上に命題のリストを用意する。命題のリストとしては、
[a]連鋳モデルに定義されている、或いは現段階で定義されていないが定義する必要があると操業者が判断した状態を表わす命題のリスト(図24(a)を参照)
例えば、1行目の命題「バブリングon」は、鋼(液体)の温度を下げるためにアルゴンガスを吹き込む操作を「バブリング」といい、命題「バブリングon」はこのアルゴンガスを吹き込む操作を開始することを意味する。
[b]連鋳モデルに定義されていない、かつ定義しないがトラブルの内容を表現する上で必要な状態を表わす命題のリスト(図24(b)を参照)が作成される。集約命題関連図193を記述する際に、これら命題のリスト[a]、[b]から命題を選択することにより、連鋳モデル16に定義されている状態に対応するかたちでトラブル発生の内容を記述することができる。
命題関連図192に記述された命題がこれら命題リスト[a]、[b]に存在しない場合、新しい命題として命題のリスト[a]、[b]に記載した上で、集約命題関連図193に記述する。これにより、集約命題関連図193を作成するたびに命題のリスト[a]、[b]がアップデートされていくことになる。そして、命題のリスト[a]の「現段階で定義されていないが定義する必要があると操業者が判断した状態を表わす命題」が新しく設定された場合、その命題が連鋳モデル16にアップデートする内容となる。
このようにして作成される集約命題関連図193は、次に述べるように状態遷移図194への変換に利用されるが、トラブルを図で表現したものであり、人にも理解可能である。したがって、そのままアップデート支援装置10に蓄えておくことにより、必要なときに過去のトラブルの情報を操業者が取得する目的としても利用可能となる。
(状態遷移図)
状態遷移図194は、集約命題関連図193に基づいて、連鋳モデルに定義する製造物や設備の状態のみを用いてトラブルにおける状態遷移を表現したものであり、アップデート支援装置10の状態遷移図作成部12により作成される。状態遷移図194は、トラブル報告書191と連鋳モデル16とを比較できるようにするために作成され、トラブル報告書191に記述された内容を、連鋳モデル16に定義する製造物や設備の状態に対応させて計算機上で表現したものである。したがって、状態遷移図194は、連鋳モデル16に存在する、或いはこれからアップデートしようとする状態を表わす命題のみで記述する。
状態遷移図194には、上述した「4.定義可能な区分の違い」を解消するために、製造物や設備の状態のみを記述する。図25は、本例の場合の状態遷移図194を示す。図23の集約命題関連図193に記述された命題「キャストスタートしてすぐ」、命題「3ch目スタート後」、命題「5ch目スタート後」は、状態変化のタイミングを表わす命題であって、製造物や設備の状態を表わす命題ではない。そこで、図25に示すように、これらの命題「キャストスタートしてすぐ」、命題「3ch目スタート後」、命題「5ch目スタート後」を除く。
また、図23の集約命題関連図193に記述された命題「キャストカットした」は、連鋳モデルに定義されていない、かつ定義しない状態を表わす命題である。そこで、図25に示すように、この命題「キャストカットした」を除く。連鋳モデルに定義されていない、かつ定義しない状態を表わす命題であるかどうかは、図24(b)に示した命題のリスト[b]を参照することで判定することができる。
(補完状態遷移図)
状態遷移図194は、トラブル報告書191と連鋳モデル16とを比較することを目的として作成するものである。そこで、アップデート支援装置10の補完状態遷移図作成部13は、状態遷移図194に、連鋳モデル16とのつながりがわかるように連鋳モデル16から情報を補完して補完状態遷移図195を作成する。アップデート支援装置10の出力部14は、その補完状態遷移図195を出力して、例えば不図示の表示装置を介して提示する。図26に、本例の場合の補完状態遷移図195を示す。
状態遷移図194に連鋳モデル16から情報を補完する際には、状態遷移図194で矢印で表わされる命題間の関係と、連鋳モデル16との対応関係を利用する。上述したように命題間を5種類の関係を意味する矢印でつなぐが、そのうち状態遷移図194で使用するのは「因果関係」、「作業判断」、「時間経過・作業進行」の3種類である。以下、これらの関係と連鋳モデル16との対応関係について説明する。
「作業判断」の矢印で表現されるのは、状況を判断して行ったオペレーションであり、矢印の後ろは状態、矢印の先はオペレーションを表わす。
「時間経過・作業進行」の矢印で表現されるのは、直接的な因果関係はないが、時間的に前後関係にある状態遷移である。そのため、この矢印の前後にある命題が表現している状態は連鋳モデル16上では関係していない。
「因果関係」の矢印で表現されるのは、上述したように「(1)ある状態遷移が起きる条件」、「(2)鋼の流れによって伝わる状態遷移」、「(3)オペレーションと期待される状態遷移」「(4)オペレーションの効果がなかった場合」、「(5)状態変化を抑止する条件」、「(6)同時発生する状態遷移」という6種類の関係に分類される。
(1)ある状態遷移が起きる条件
矢印の後ろの命題が矢印の先の命題で表現される状態遷移が起きる条件を表わしている。この対応関係の例を図27に示す。連鋳モデル16においては条件アークと許可同期アークの組み合わせで表現される。
(2)鋼の流れによって伝わる状態遷移
矢印の後ろの状態が、鋼の流れによって次のステージに伝わると矢印の先の状態となることを表わしている。この対応関係の例を図28に示す。連鋳モデル16においてはノーマルアークを用いて表現される。この場合、トランジションが発火すると、鋳型ステージの「鋼の粘性が高い」状態が下のノズルステージに直接伝わり「鋼の流量が少ない」状態になることを示す。
(3)オペレーションと期待される状態遷移
矢印の後ろがオペレーション、矢印の先がそれによって期待される状態変化を表わしている。この対応関係の例を図29に示す。連鋳モデル16においてはプレースが静的な状態、トランジションがその間の状態遷移を表わしている。オペレータが設備に対して行うアクションは状態と状態をつなぐトランジションとして表現する。ノズルツツキを行った結果、ノズルの詰まりが解消されたことを表わしている。
(4)オペレーションの効果がなかった場合
矢印の後ろがオペレーション、矢印の先がそれによって期待された状態遷移が起きなかったことを表わしている。この対応関係の例を図30に示す。オペレーションによって期待する状態変化が得られない可能性がある場合、プレースから2つの同じオペレーションを表わすトランジションをつなぎ、そのうち片方は期待するオペレーションを表わすプレースにつなぐ。この例の場合、「ノズルが偏詰」の状態からオペレーション「ノズルツツキ」を実施することによってノズルが正常になる場合とならない場合とがあるので、偏詰を表わすプレースから「ノズルツツキ」を表わすとトランジションを2つつないでおく。そして、片方は「ノズルが正常」な状態を表わすプレースにつなぐ。「ノズル偏詰」にトークンがある場合、上下2つの「ノズルツツキ」のうち片方が発火する。上のトランジションが発火した場合はノズルが正常になり、下のトランジションが発火した場合はノズルの状態は変わらない。どちらのトランジションが発火するかの確立を設定することによって、オペレーションの効果が出る確率をペトリネット上に表現することが可能である。
(5)状態変化を抑止する条件
矢印の後ろの状態が、矢印の先で表現される状態変化を抑止していることを表わしている。この対応関係の例を図31に示す。状態変化を抑止する条件を表わす矢印は、連鋳モデル16においては抑止アークで表現される。
(6)同時発生する状態遷移
矢印の後ろの状態になる状態遷移と矢印の先の状態になる状態遷移とが同時に発生することを表わしている。この対応関係の例を図32に示す。連鋳モデル16においては1つのトランジションが同時に発火することを表現する同期アークで表現される。ただし、同時に状態遷移が起きるが、因果関係が一方通行のときは同期アークでなく許可同期アークで表現される。因果関係が一歩通行であるとは、矢印の後ろの命題で表現される状態遷移が起きるときは矢印の先の命題で表現される状態遷移が起きるが、逆に矢印の先の命題で表現される状態遷移が起きるからといって矢印の後ろの命題で表現される状態遷移が起きるとは限らないことを意味する。
本例の場合は、連鋳モデル16から、図26に示すように製造物の属性の状態と設備の状態との間の影響関係についての情報、すなわち因果関係情報を補完して補完状態遷移図を作成している。また、前記状態遷移図に、連鋳モデル16から、製造物の属性の状態についての情報、すなわち属性の状態の情報を補完して補完状態遷移図を作成してもよい。また、前記状態遷移図に、連鋳モデル16から、設備の状態についての情報、すなわち設備の状態の情報を補完して補完状態遷移図を作成してもよい。
このように、状態遷移図194で矢印で表わされる命題間の関係と、連鋳モデル16の対応関係を利用して、状態遷移図194に連鋳モデル16から情報を補完して補完状態遷移図195を作成することができ、これにより、トラブル発生に関連する状態間の関係が連鋳モデル16上でどのように定義されているかについての情報を操業者にわかりやすく提示することができる。
また、アップデート支援装置10のアップデート部15は、補完状態遷移図作成部13で作成した補完状態遷移図195に基づいて、連鋳モデル16に対して、プレースによって定義される状態、アーク及びトランジションによって表現される因果関係を追加又は修正することにより、連鋳モデル16をアップデートする。
図33は、あるトラブル報告書から命題関連図192を作成し、その命題関連図192から作成した集約命題関連図193を示す図である。この集約命題関連図193から、状態変化のタイミングを表わす命題である「7:20」、「ノズルセット」、「キャストスタート」を除く。また、連鋳モデル16に定義されていない、かつ定義しない状態を表わす命題である「IN余熱開始」、「IN余熱終了」、「キャスト編成変更」、「2次トラブルを懸念」を除く。この結果、図34に示すように状態遷移図194が作成される。
そして、図34の状態遷移図194に連鋳モデル16から情報を補完して、図35に示すように補完状態遷移図195が作成される。図35の点線の左側及び下側の領域が連鋳モデル16から補完した情報である。この補完状態遷移図195において、命題「ノズル正常」、「ノズル偏詰」、「流れ偏流」は元々連鋳モデル16に存在しているのに対して、一点鎖線で囲んだ命題「パウダー溶融層が肥大」、「溶融層汲み出し」が現段階で定義されていないが定義する必要があると操業者が判断した状態を表わす命題である。アップデート支援装置10のアップデート部15は、命題「パウダー溶融層が肥大」、「溶融層汲み出し」及びその関係をペトリネット形式で表現して、連鋳モデル16にアップデートする。具体的には、図36に示すように、連鋳モデル16の鋳型ステージに、パウダー溶融層について、溶融層肥大のプレース及び溶融層正常のプレースがトランジションを介して接続するペトリネットが追加される。
以上述べたように、連続鋳造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書191に基づいて状態遷移図194を作成し、その状態遷移図194に連鋳モデル16から情報を補完するようにしたので、トラブル報告書191と連鋳モデル16とを比較することができる。これにより、トラブル報告書191に記述された内容を連鋳モデル16に反映させるようにアップデートするのを支援することができる。
(命題関連図の作成支援)
上述したように、トラブル報告書191の文章を区切った命題間をつなげることにより命題関連図192を作成するが、以下、この命題関連図192の作成を支援することについて説明する。
図37は、命題関連図の作成支援装置370の構成を示す図である。命題関連図の作成支援装置370は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータにより構成される。この作成支援装置370上で、ユーザは、トラブル報告書191の文章を区切った命題間をつなげていき、命題関連図192を作成することができる。
371は関係探索部であり、ユーザが作成支援装置370上で命題間をつなげる際に、連鋳モデル16に記述された関係、及び連鋳モデル16に記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の関係を探索して提示する。
372は経路探索部であり、ユーザが作成支援装置370上で命題間をつなげる際に、連鋳モデル16に記述された関係、及び連鋳モデル16に記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の経路を探索して提示する。
373は制限部であり、ユーザが作成支援装置370上で命題間をつなげる際に、予め定められたルールに従って命題間の関係を制限する。
374は命題探索部であり、連鋳モデル16に基づいて、ある命題を始点としてそれにつながる終点となる命題を、命題を補間しながら探索して提示する。
375はキーボードやマウス等の入力装置、376は表示装置である。
図38、図39A〜図39Eを参照して、作成支援装置370を利用して命題関連図192を作成する手順の例を説明する。
図38にトラブル報告書の例を示す。このトラブル報告書191では、発生状況の欄に「薄板キャスト2連鋳をスタートする。温度高め(ΔT+○)のためVc×にて鋳造する。上ノズルAr流量が□□と少なめ、背圧が◇◇と低めであった(Arリークなし)。鍋注入中期〜末期より徐々にTD−SN開度が開き始めたが、2ch目処理後温度が+△℃で高めであり、2連は鋳造できると判断し連々鋳を続行した。しかし、2ch目注入後、TD−SN開度が開き出したのでツツキを実施するも回復せず、TD救済のため鍋残湯を残して鍋注入を中止しキャストカットとする。」という記述がなされている。また、原因の欄に「TD再予熱再酸化による絞り、1ch目ΔT高めによる低速鋳造にて絞り助長」という記述がなされている。
図39A〜図39Eに示す作成支援画面は、作成支援装置370の表示装置376に表示される。ユーザは、この作成支援画面上で、トラブル報告書191から命題関連図192を作成する。
図39Aに示すように、作成支援画面は、命題関連図作成画面391を有する。また、作成支援画面は、命題を一覧表示する一覧表示欄392と、一覧表示欄392から選択された命題をリストアップするリストアップ欄393とを有する。一覧表示欄392には、過去に入力済みの命題が一覧表示される。命題関連図192を作成しようとしているトラブル報告書191に、過去に入力済みの命題がない場合、ユーザは一覧表示欄392で新たに命題を定義する必要がある。
一覧表示欄392からユーザが命題を選択すると、その命題がリストアップ欄393にリストアップされるとともに、命題関連図作成画面391に表示される。
図38のトラブル報告書191を例にすれば、「薄板キャスト2連鋳をスタートする」という命題に対応する命題「キャストスタート」を一覧表示欄392から選択する。これにより、図39Aに示すように、命題関連図作成画面391に命題「キャストスタート」394aが表示される。
次に、「温度高め(ΔT+○)のため」という命題に対応する命題「連続鋳造部の鋼の温度高い」を一覧表示欄392から選択することにより、命題関連図作成画面391に命題「連続鋳造部の鋼の温度高い」394bが表示される。
以下同様に、トラブル報告書191に現れる順番で、命題394c〜394oを一覧表示欄392から選択し、命題関連図作成画面391に表示させていく。すなわち、「Vc×にて鋳造する」という命題に対応する命題「引き抜き速度遅い」394c、「上ノズルAr流量が□□と少なめ」という命題に対応する命題「上ノズルAr量少ない」394d、「背圧が◇◇と低めであった」という命題に対応する命題「上ノズルAr背圧が低い」394e、「鍋注入中期〜末期」という命題に対応する命題「鍋注入中期」394f、「鍋注入末期」394g、「TD−SN開度が開き始めた」という命題に対応する命題「スライドノズル開度大」394h、「2ch目処理後」という命題に対応する命題「2ch目処理後」394i、「温度が+△℃で高めであり」という命題に対応する命題「連続鋳造部の鋼の温度高い」394j、「TD−SN開度が開き出したので」という命題に対応する命題「スライドノズル開度大」394k、「ツツキを実施するも」という命題に対応する命題「ノズルつつき」394l、「回復せず」という命題に対応する命題「スライドノズル開度大」394m、「TD救済のため鍋残湯を残して鍋注入を中止しキャストカットとする。」という命題に対応する命題「キャストカット」394nを順に一覧表示欄392から選択し、命題関連図作成画面391に表示させる。また、原因の欄にある「TD再予熱再酸化による絞り、1ch目ΔT高めによる低速鋳造にて絞り助長」という命題に対応する命題「ノズル狭い」394oを一覧表示欄392から選択し、命題関連図作成画面391に表示させる。
なお、図示例では命題関連図作成画面391に○印を共に表示する例を示すが、その表示の仕方は限定されるものではなく、例えば図21のように命題が四角で囲まれるように表示される形態でもかまわない。
命題関連図作成画面391において、各命題394a〜394oは、ユーザが一覧表示欄392から選択した順番で下方に向かって配置されていくが、ユーザが入力装置375を介して配置を変更することが可能である。例えば「作業工程」に分類される命題は左側に、トラブル報告書191の対策欄にある命題は右側に配置する等のルールを定めておき、それに従ってユーザが配置変更する。図39Aの例でいえば、作業工程に分類される命題「キャストスタート」394a、命題「鍋注入中期」394f、「鍋注入末期」394g、「2ch目処理後」394iが左側に配置変更されている。また、トラブル報告書191の原因欄にある命題「ノズル狭い」394oが右側に配置変更されている。
図39Aに示すように命題関連図作成画面391に命題394a〜394oを配置したならば、図39Bに示すように、ユーザは入力装置375を介して命題間を矢印でつないでいく。
このとき、関係探索部371は、連鋳モデル16に記述された関係、及び連鋳モデル16に記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の関係を提示する。連鋳モデル16に記述された関係と、命題間の関係とは、例えば図27〜図32、及び図41A〜図41Cに示したような対応関係がある。
図41Aに示すように、命題間の関係「因果関係(条件、状態変化を抑止する条件、同時発生する状態遷移)」においては、始点となる命題が「鋼の状態」であれば、終点となる命題は「鋼の状態」か「設備の状態」となる。また、始点となる命題が「設備の状態」であれば、終点となる命題は「鋼の状態」となる。また、始点となる命題が「操作変数」であれば、終点となる命題は「鋼の状態」か「設備の状態」となる。また、図41Bに示すように、命題間の関係「作業判断」においては、始点となる命題が「鋼の状態」であれば、終点となる命題は「操作変数」か「オペレーション変更」となる。また、始点となる命題が「設備の状態」であれば、終点となる命題は「操作変数」となる。また、始点となる命題が「操作変数」であれば、終点となる命題は「操作変数」か「オペレーション変更」となる。また、始点となる命題が「オペレーション変更」であれば、終点となる命題は「操作変数」か「オペレーション変更」となる。また、図41Cに示すように、命題間の関係「タイミング」においては、始点となる命題が「時刻or作業工程」であれば、終点となる命題は「時刻以外」となる。このように命題間の関係について予めルールが定められている。なお、図41A〜図41Cには、命題間の関係「因果関係」、「作業判断」、「タイミング」といった命題間の関係について示したが、「時間経過・作業進行」、「詳細説明」についても、その説明は省略するが同様に予めルールを定めておく。
これにより、図39Bに示すように、例えば命題「キャストスタート」394aと命題「連続鋳造部の鋼の温度高い」394bとを矢印でつないだときに、その命題間は、図41Cから分かるように「タイミング」の関係にあることが自動的に提示されることになる。
また、経路探索部372は、連鋳モデル16に記述された関係、及び連鋳モデル16に記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、ユーザによりつなげられた命題間の経路を探索し、複数の経路が存在する場合、これら複数の経路を提示する。図40に示すように、トラブル報告書191では状態Cから状態Bへの状態変化が記述されているとする。この場合に、連鋳モデル16に記述された関係、及び連鋳モデル16に記述されていないが予め定義された命題間の関係を参照すると、状態Cから、状態E、状態Dを経て状態Bに状態変化する経路が存在した場合、その経路も提示する。また、トラブル報告書191では記述されていないが、状態Cから、状態A、オペレーションDを経て状態Bに状態変化する経路が存在した場合、その経路も提示する。トラブル報告書191にはないが、オペレーションDが実際に行われた可能性もありえるからである。
このように命題間に複数の経路が存在する場合、その一覧を表示し、そこからユーザに選択させるようにすればよい。
このようにした結果、図39Bに示すように、命題関連図作成画面391に表示された命題間の関係を簡単かつ確実に定義することができる。
ここで、図39Bにおいて、命題「スライドノズル開度大」394kと命題「ノズルつつき」394lとの関係は、関係探索部371及び経路探索部372により自動的に提示されておらず、ユーザがその関係を定義する必要がある。
このとき、制限部373は、予め定められたルールに従って命題間の関係を制限する。図41A〜図41Cに示したように、命題間の関係について予めルールが定められている。
図39Bに説明を戻すと、命題「スライドノズル開度大」394kと命題「ノズルつつき」394lとの関係は、「設備の状態」→「操作変数」であるので、その関係は「作業判断」だけとなる。したがって、制限部373は、命題「スライドノズル開度大」394kと命題「ノズルつつき」394lとの関係を「作業判断」に制限する。
制限の仕方は特に限定されるものではないが、例えばルールに従う関係をユーザに提示する等すればよい。或いは、ユーザがルールに従わない関係を定義しようとすると、その関係がルールに従わない旨を通知する等してもよい。例えばユーザが命題「スライドノズル開度大」394kと命題「ノズルつつき」394lとの関係を「因果関係」として定義しようとすると、その関係はルールに従っていない旨を通知する。
このようにした結果、図39Cに示すように、命題「スライドノズル開度大」394kと命題「ノズルつつき」394lとの関係が「作業判断」であると簡単かつ確実に定義することができる。
ここで、図39Cにおいて、命題「ノズル狭い」394oをどの命題に矢印でつなげばよいかユーザがわからない状態となっている。
このとき、命題探索部374は、連鋳モデル16に基づいて、ある命題(図39Cの例でいえば命題「ノズル狭い」394o)を始点としてそれにつながる終点となる命題を、命題を補間しながら探索する。経路が複数存在する場合、その一覧を表示し、そこからユーザに選択させるようにすればよい。
図39Dでは、命題「ノズル狭い」394oが、補間された命題「ノズル流量少ない」39pを経て命題「スライドノズル開度大」394kにつながる経路をユーザが選択した状態となっている。
以上のようにして命題関連図192が作成されるが、例えば図39Dに示す状態となった後に、ユーザが新たな命題間の関係に気付くようなこともありえる。この場合、ユーザが新たに関係を定義することもできる。図39Eでは、ユーザが、命題「引き抜き速度遅い」394cを命題「ノズル狭い」394oに矢印でつなぎ、その関係「因果関係」を定義した状態を示す。
以上述べたようにトラブル報告書191から命題関連図192を作成するときに、その作成を支援することができる。
本発明は、本発明の連続鋳造プロセスの離散モデルのアップデート支援方法又は装置の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
上記実施形態では連続鋳造プロセスを例に説明したが、本発明は、連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスであれば適用可能で、例えば熱間圧延(鋼板が連続して流れる)や石油プラント(液体が連続して流れる)にも適用可能である。
10:連鋳モデルのアップデート支援装置、11:集約命題関連図取得部、12:状態遷移図作成部、13:補完状態遷移図作成部、14:出力部、15:アップデート部、16:連鋳モデル、191:トラブル報告書、192:命題関連図、193:集約命題関連図、194:状態遷移図、195:補完状態遷移図、370:作成支援装置、371:関係探索部、372:経路探索部、373:制限部、374:命題探索部、375:入力装置、376:表示装置

Claims (15)

  1. 連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスについて、前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルのアップデートを支援する、製造プロセスの離散モデルのアップデート支援方法であって、
    前記製造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書であって、トラブルの発生状況、トラブルの原因、トラブルに対する対策、トラブル発生の際に処理されていた製造物、製造オペレータのトラブルについての所見、についての情報を少なくとも含む文章であるトラブル報告書に基づいて作成された集約命題関連図を取得する手順と、
    前記取得した集約命題関連図に基づいて、前記離散モデルに定義する前記製造物の属性の状態と設備の状態のみを用いて、トラブルにおける前記製造プロセスの状態遷移を表現した図である状態遷移図を作成する手順と、
    前記作成した状態遷移図に、前記離散モデルから、前記製造物の属性の状態についての情報と、前記設備の状態についての情報と、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係についての情報との少なくとも1つを補完して補完状態遷移図を作成する手順と、
    前記作成した補完状態遷移図を出力する手順と、
    前記作成した補完状態遷移図を用いて、前記製造プロセスの離散モデルに対して、状態及び因果関係の追加又は修正であるアップデートを行う手順とを有し、
    前記集約命題関連図は、前記トラブル報告書の文章を、前記離散モデルの表現に対応させた命題に区切って、命題間をつないでフローチャートで表現し、これら命題を前記離散モデルに対応させた表現として集約したものであることを特徴とする離散モデルのアップデート支援方法。
  2. 前記離散モデルは、前記製造プロセスを、前記製造物の流れ方向に複数のステージに分け、前記ステージ毎に前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記各ステージ内での前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルであることを特徴とする請求項1に記載の離散モデルのアップデート支援方法。
  3. 前記離散モデルは、ペトリネットモデルを用いて構築されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の離散モデルのアップデート支援方法。
  4. ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、作成支援手段が、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の関係を探索して提示する手順をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援方法。
  5. ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、作成支援手段が、予め定められたルールに従って命題間の関係を制限する手順をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援方法。
  6. ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、作成支援手段が、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の経路を探索して提示する手順をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援方法。
  7. 作成支援手段が、前記離散モデルに基づいて、ある命題を始点としてそれにつながる終点となる命題を、命題を補間しながら探索して提示する手順をさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援方法。
  8. 連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスについて、前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルのアップデートを支援する、製造プロセスの離散モデルのアップデート支援装置であって、
    前記製造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書であって、トラブルの発生状況、トラブルの原因、トラブルに対する対策、トラブル発生の際に処理されていた製造物、製造オペレータのトラブルについての所見、についての情報を少なくとも含む文章であるトラブル報告書に基づいて作成された集約命題関連図を取得する集約命題関連図取得手段と、
    前記集約命題関連図取得手段で取得した集約命題関連図に基づいて、前記離散モデルに定義する前記製造物の属性の状態と設備の状態のみを用いて、トラブルにおける前記製造プロセスの状態遷移を表現した図である状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段と、
    前記状態遷移図作成手段で作成した状態遷移図に、前記離散モデルから、前記製造物の属性の状態についての情報と、前記設備の状態についての情報と、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係についての情報との少なくとも1つを補完して補完状態遷移図を作成する補完状態遷移図作成手段と、
    前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を出力する出力手段と、
    前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を用いて、前記製造プロセスの離散モデルに対して、状態及び因果関係の追加又は修正であるアップデートを行うアップデート手段とを備え、
    前記集約命題関連図は、前記トラブル報告書の文章を、前記離散モデルの表現に対応させた命題に区切って、命題間をつないでフローチャートで表現し、これら命題を前記離散モデルに対応させた表現として集約したものであることを特徴とする離散モデルのアップデート支援装置。
  9. 前記離散モデルは、前記製造プロセスを、前記製造物の流れ方向に複数のステージに分け、前記ステージ毎に前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記各ステージ内での前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルであることを特徴とする請求項8に記載の離散モデルのアップデート支援装置。
  10. 前記離散モデルは、ペトリネットモデルを用いて構築されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の離散モデルのアップデート支援装置。
  11. ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の関係を探索して提示する作成支援手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援装置。
  12. ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、予め定められたルールに従って命題間の関係を制限する作成支援手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援装置。
  13. ユーザが前記トラブル報告書の文章を区切った命題間をつなげる際に、前記離散モデルに記述された関係、及び前記離散モデルに記述されていないが予め定義された命題間の関係に基づいて、命題間の経路を探索して提示する作成支援手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援装置。
  14. 前記離散モデルに基づいて、ある命題を始点としてそれにつながる終点となる命題を、命題を補間しながら探索して提示する作成支援手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の離散モデルのアップデート支援装置。
  15. 連続する製造物が連続的に流れる製造プロセスについて、前記製造物の属性の状態遷移モデルと設備の状態遷移モデルとを作成し、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係を定義して作成した離散モデルのアップデートを支援するためのプログラムであって、
    前記製造プロセスにおいてトラブルが発生したときに作成されるトラブル報告書であって、トラブルの発生状況、トラブルの原因、トラブルに対する対策、トラブル発生の際に処理されていた製造物、製造オペレータのトラブルについての所見、についての情報を少なくとも含む文章であるトラブル報告書に基づいて作成された集約命題関連図を取得する集約命題関連図取得手段と、
    前記集約命題関連図取得手段で取得した集約命題関連図に基づいて、前記離散モデルに定義する前記製造物の属性の状態と設備の状態のみを用いて、トラブルにおける前記製造プロセスの状態遷移を表現した図である状態遷移図を作成する状態遷移図作成手段と、
    前記状態遷移図作成手段で作成した状態遷移図に、前記離散モデルから、前記製造物の属性の状態についての情報と、前記設備の状態についての情報と、前記製造物の属性の状態と前記設備の状態との間の影響関係についての情報との少なくとも1つを補完して補完状態遷移図を作成する補完状態遷移図作成手段と、
    前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を出力する出力手段と、
    前記補完状態遷移図作成手段で作成した補完状態遷移図を用いて、前記製造プロセスの離散モデルに対して、状態及び因果関係の追加又は修正であるアップデートを行うアップデート手段としてコンピュータを機能させ、
    前記集約命題関連図は、前記トラブル報告書の文章を、前記離散モデルの表現に対応させた命題に区切って、命題間をつないでフローチャートで表現し、これら命題を前記離散モデルに対応させた表現として集約したものであることを特徴とするプログラム。
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