JP6082488B1 - カルボキシル基により酸性になったpak1遮断剤のエステル体の調製および癌やその他のpak1依存性疾患治療への応用 - Google Patents

カルボキシル基により酸性になったpak1遮断剤のエステル体の調製および癌やその他のpak1依存性疾患治療への応用 Download PDF

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Abstract

【課題】DNA毒や微小管毒を主体とするいわゆる化学療法剤(ケモ)や放射線療法に耐性の癌など一連のPAK1依存性疾患の治療に有益な細胞透過性が高くかつ水溶性の(腸管吸収が良い)一連の新たなPAK1遮断エステル体やその用途を提供する。【解決手段】式(1)で表される1,2,3−トリアゾール環を有する化合物、或いはこの化合物の薬学的に許容される塩及びこれらを含有する医薬、PAK1遮断剤、PAK1依存性疾患の治療剤、化学療法又は放射線治療による癌細胞の耐性軽減剤、癌細胞の増殖・転移予防剤、PAK1依存性疾患の薬物療法による耐性軽減剤、化粧料。(R1はカルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤由来の脱カルボキシル体;R2は芳香族環誘導体)【選択図】なし

Description

本発明は、カルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤のエステル体の調製および癌やその他のPAK1依存性疾患治療への応用に関する。
(外科手術に加えて)従来のいわゆる化学(DNA毒や微小管毒)療法および放射線療法が今日まで、「癌」治療法の主流をなしてきたが、これらの療法には、残念ながら、不可避な一連の副作用が伴う。例えば、免疫機能の低下、脱毛、食欲の低下、生殖不能などが必ず伴う。その主要原因は、これらの薬剤や放射線が、癌細胞を含む増殖の早い細胞を標的としているため、正常な細胞でも比較的増殖の早い、骨髄などの造血細胞、頭髪細胞、腸管細胞、生殖細胞などがその犠牲(巻添え)になるからである。もう一つの障壁は、(遺伝子の変異に伴い)癌細胞が治療期間中に薬剤耐性をしばしば獲得することである。例えば、(DNAを標的とする)抗癌剤「シスプラチン」や(微小管を標的とする)抗癌剤「タキソール」などに対する耐性が、NSC肺癌や乳癌などの治療の失敗の主因に挙げられている。
その解決策として、21世紀初頭に登場したのが、癌のいわゆる「分子標的療法」である。厳密には、「シグナル伝達(遮断)療法」と呼ぶべきであろう(非特許文献1)。この療法は(従来の標的であったDNAや微小管などの「非特異的な」分子の代わりに)癌の増殖には必須であるが、正常細胞の増殖には必ずしも必須でない(発癌性の)「シグナル伝達蛋白」を特異的に標的に絞る療法である。その先駆けを果たしたのが、「グリーベック」と呼ばれる特定の発癌性チロシンキナーゼ「ABL」を標的にした阻害剤である。この薬剤により、CMLやGISTなどの稀少癌の治療が可能になった。しかしながら、この薬剤が有効な癌は、ヒトに発生する癌のわずかの0.1%にも達しない。更に、この薬剤に耐性のCMLやGISTの患者がやがて続出した。
そこで、更に研究が進められた結果、最近、PAK1 (RAC/CDC42-activated kinase 1) と呼ばれるセリン/スレオニンを燐酸化する蛋白キナーゼが、発癌性を持つばかりではなく、老化現象にも深く関与するいわゆる「悪玉酵素」であり、癌や認知症などを含む一連の難病の原因になっていることが判明した(非特許文献1、2)。しかも、PAK1は正常な細胞の増殖には必須ではないばかりか、薬剤耐性の主因がPAK1の異常な活性化であることも明らかになった(非特許文献1、2)。少なくとも大部分の固形腫瘍の増殖および転移がPAK1依存性である。こうして、「PAK1遮断剤による様々な難病の療法」という極めて魅力的な(市場価値の高い)アプローチが登場してきた。
PAK1の主な基質蛋白として、発癌性/老化促進キナーゼであるRAFやLIM キナーゼ、発癌性の転写蛋白「ベータカテニン」や長寿転写蛋白「FOXO」などが知られている。RAF、LIM キナーゼ、ベータカテニンなどはPAK1によって活性化されるのに対して、FOXOはPAK1によって抑制される。
さて、従来のPAK1遮断剤の開発は、PAK1を直接かつ選択的に阻害する物質 (PAK1特異阻害剤) を試験管内でスクリーニングする方法が主流であった。しかしながら、この方法では、PAK1だけを選択的に阻害する物質を見つけることは、殆んど不可能に近いことが次第に判明した。その理由は、PAKファミリーに属する6種類の蛋白キナーゼ(PAK1〜PAK6) の中、グループ1に属する3種のキナーゼ(PAK1〜PAK3) の「ATP結合ポケット」の立体構造が互いに極めて近似しているため、PAK1のみを選択的に阻害することは至難の術である。しかも、試験管内でスクリーニングにかかった阻害剤の大部分は、水に不溶で、しかも細胞透過性が極めて低いため、臨床には応用しにくい。
そこで、我々は逆に、PAK1のみを細胞内で選択的に活性化するシグナル伝達経路を同定し、その経路(PAK1の上流)の一つを特異的に遮断する(細胞透過性が高い)薬剤を、「細胞培養系」でスクリーニングする先見的なアプローチを過去十数年とってきた。細胞内でのPAK1の活性化には、いくつかの因子が関与している。先ず、発癌性のG蛋白(GTP依存性のシグナル蛋白)であるRACやCDC42が必須である。その他、少なくとも3種類のチロシン=キナーゼ(ETK、FYN、JAK2)およびカゼイン=キナーゼの一種(CK2)も必須である。更に、PIXやNCKなどのいわゆるアダプター蛋白も必須である(非特許文献1、2)。
言い換えれば、もし、これらPAK1の上流にあるシグナル蛋白の一つか2つが「PAK1遮断剤」と総称される化合物によって、直接阻害されると、PAK1の発癌作用が完全に阻止されることになる。例えば、化合物「AG879/GL−2003」はETKを直接阻害する一方、化合物「PP1」はFYNを直接阻害する(非特許文献1〜3)。さて、ETKとFYNは独立に、然も相補的にPAK1を活性化する(非特許文献1〜3)。従って、これら2種類の遮断剤を併用すると、細胞内でのPAK1の活性化が完全に抑制される結果、(マウスに移植された)スイゾウ癌などを含む大部分のヒト由来の固形癌/腫瘍の増殖が殆んど完全にストップする(非特許文献3)。しかも、何らの副作用も示さない。しかしながら、「PP1」は水に不溶性なので、臨床には使用できないため、我々は一連の水溶性誘導体(例えば、「PP12」)を目下開発しつつあるが、これまで開発されたいくつかの「PAK1遮断剤」で、癌一般の治療へ使用がFDAによって許可されたものはまだ一例もない(非特許文献2)。
丸田 浩 (2001).「癌との闘い: "シグナル" 療法と "遺伝子" 療法」(共立出版) Maruta H (2014). Herbal therapeutics that block the oncogenic kinase PAK1: A practical approach towards PAK1-dependent diseases and longevity. Phytother Res 28: 656-72. Hirokawa Y, Levitzki A, Lessene G, Baell J, et al (2007). Signal therapy of human pancreatic cancer and NF1-deficient breast cancer xenograft in mice by a combination of PP1 and GL-2003, anti-PAK1 drugs (Tyr-kinase inhibitors). Cancer Lett. 245: 242-51. Nguyen BC, Be Tu PT, Tawata S, Maruta H (2015). Combination of immunoprecipitation (IP)-ATP_Glo kinase assay and melanogenesis for the assessment of potent and safe PAK1-blockers in cell culture. Drug Discov Ther. 9: 289-95. Nguyen BC, Taira N, Maruta H, Tawata S, (2015). Artepillin C (ARC) and several other herbal PAK1-blockers: their effects on hair cell proliferation, and a few other PAK1-dependent biological function in cell culture. Phytother. Res., 30: 120-7. Guo Y, Kenney SR Jr2, Muller CY, et al (2015). R-ketorolac Targets Cdc42 and Rac1 and Alters Ovarian Cancer Cell Behaviors Critical for Invasion and Metastasis. Mol Cancer Ther. 14; 2215-27.
多くのPAK1遮断剤、特に天然のPAK1遮断剤の中に、カルボン酸を有する酸性の化合物が多数ある。これらの酸は水には比較的溶けやすいが、(酸同志の反発により)酸性の細胞膜(燐脂質)を通過しにくいので、試験管内では、標的であるPAK1自身、あるいはその上流にあるシグナル伝達蛋白に対する親和性はたとえ強くとも、体内(あるいは細胞内)では薬理(PAK1遮断)作用が弱いという欠点がある。これらの酸性の薬剤を臨床に応用するためには、その欠点を補うために、水溶性(腸管吸収の良さ)をそのまま保ったまま、その酸性度を飛躍的に弱めるという「トリック」が必要である。
本発明者らは、このようなトリックを見出すことを本発明の課題とした。
本発明者らは上記課題の解決策として、バリー=シャープレス教授(2001年のノーベル受賞者)が世に広く普及した「クリックケミストリー(Click Chemistry)」と呼ばれる化学反応を応用することにたどり着いた。
そして、本発明者らは、カルボン酸を有するいくつかのPAK1遮断剤(プロポリスの抗癌成分あるいは鎮痛剤など)のカルボン酸基はPAK1遮断作用には不要であることを発見し、これをクリックケミストリーにより、カルボン酸を有するいくつかのPAK1遮断剤(プロポリスの抗癌成分あるいは鎮痛剤など)から、細胞透過性の極めて高い一連の1,2,3−トリアゾール環を有するエステルが得られることを見出した。
そして、これにより得られるエステルは、細胞透過性および(細胞内の)PAK1遮断作用が飛躍的(100〜500倍)に増し、しかも(経口投与に適した)水溶性の薬剤となることを見出した。
すなわち、本発明は、一般式(1)
Figure 0006082488
(ただし、式(1)中、Rはカルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤由来の脱カルボキシル体を示し、Rは芳香族環誘導体を示す。)で表される化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩である。
また、本発明は、上記化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする医薬、PAK1遮断剤、PAK1依存性疾患の治療剤、化学療法または放射線治療による癌細胞の耐性軽減剤、癌細胞の増殖・転移予防剤、PAK1依存性疾患の薬物療法による耐性軽減剤、化粧料である。
更に、本発明は、以下の工程(a)および(b)
(a)カルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤と、アルコールとを反応させる工程
(b)上記(a)で得られた反応物と、水溶性の1,2,3−トリアゾール誘導体とを反応させる工程を含むことを特徴とする上記化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩の製造方法である。
「クリックケミストリー」自体は2001年頃に、バリー=シャープレス教授(ノーベル受賞者)により、銅触媒を利用した効率良いカップリング反応として、初めて紹介された。問題は、何と何をカップリングさせると飛躍的な効果をもたらすかである。最高に近いパートナーの選択が、本発明(特許)の主な「目玉賞品」である。更に、動物実験を除いては、PAK1遮断剤を、癌やその他一連の「PAK1依存性疾患」の治療に(臨床的に)広く応用した前例は皆無に等しい。従って、本発明は、臨床に応用しうる(副作用のない)新しい治療法を提供するという意味でも、極めてユニークである。
また、本発明は数種のカルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤、例えば、化学的全合成が容易なARC(artepillin C)、コーヒー酸(caffeic acid)、ケトロラック(Ketorolac)、カプトプリル((2S)-1-[(2S)-2-methyl-3-sulfanylpropanoyl]pyrrolidine-2-carboxylic acid)、MFF(Mimosine-Phe-Phe)、クロセチンモノエステル、CX−4945(5-(3-Chloroanilino)benzo[c][2,6]naphthyridine-8-carboxylic acid:Silmitasertib)、CDDO(TP151)(2-cyano-3,12-dioxooleana-l,9(ll)-dien-28-oic acid)等を原料とする1,2,3−トリアゾール環を有する水溶性かつ細胞透過性の極めて高いエステルである。具体的には、原料のPAK1遮断剤の癌細胞の増殖に対するIC50は1〜100μMであるが、簡単な(収率の高い)トリアゾール環カップリング反応によって、その細胞透過性が(原料化合物や標的細胞の種類によって)100〜1000倍に飛躍した。
更に、本発明者らの研究によれば、PAK1は老化現象にも深く関与しており、PAK1遺伝子を欠如した健康なセンチュウは野生株にくらべて50%以上長生きする(非特許文献2)。その上、PAK1はメラニン色素の合成や脱毛現象にも必須である(非特許文献4、5)。従って、これら細胞透過性の高いアゾエステル化合物は(医薬品ばかりではなく)美白作用や育毛作用を持つ化粧品にも使用しうる。
また更に、本発明では、「クリックケミストリー」と呼ばれる銅触媒を使用した収率の高いカップリング反応を利用して、わずか2ステップで、水溶性の1,2,3−メチレン−トリアゾール環を有するアルコールによるエステル化ができる。
本発明の化合物は、下記一般式(1)で示されるものである。
Figure 0006082488
上記式(1)中、Rはカルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤由来の脱カルボキシル体を示す。酸性のPAK1遮断剤は、特に限定されないが、例えば、アルテピリンC、コーヒー酸、(R)−ケトロラック、カプトプリル、クロセチンモノエステル、CDDO(TP151)、CX−4945、MFF、ロズマリン酸、ニコチン酸等が挙げられる。これらの酸性のPAK1遮断剤の中でも(R)−ケトロラックが最も好ましい。
また、上記式(1)中、Rは芳香族環誘導体を示し、好ましくはo−フェノール、o−メトキシベンゼン、o−アニリン、o−アルギニンフェニルエステル、o−アミノヘキシルベンゼン等の化合物の脱水素体を示す。これらの芳香族環誘導体の中でもo−メトキシベンゼンの脱水素体が最も好ましい。
更に、上記式(1)の化合物の薬学的に許容される塩とは、例えば、塩酸塩等である。
上記式(1)の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、以下の工程(a)および(b)を含むことにより製造することができる。
(a)カルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤と、アルコールとを反応させる工程
(b)上記(a)で得られた反応物と、水溶性の1,2,3−トリアゾール誘導体とを反応させる工程
上記工程(a)に用いられるカルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤は、特に限定されないが、例えば、アルテピリンC、コーヒー酸、(R)−ケトロラック、カプトプリル、クロセチンモノエステル、CDDO(TP151)、CX−4945、MFF、ロズマリン酸、ニコチン酸等が挙げられる。
また、工程(a)に用いられるアルコールも特に限定されないが、例えば、プロパルギルアルコール等が挙げられる。
この工程(a)において、カルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤と、アルコールとの反応は特に限定されず、例えば、酸性のPAK1遮断剤と、アルコールとを適量で混合し、EDC、DMAP等の溶媒の存在下、室温程度で反応させればよい。この反応により、酸性のPAK1遮断剤のカルボキシル基をエステル化した化合物が得られる。反応後は、公知の精製方法で精製を行ってもよい。
上記工程(b)に用いられる水溶性の1,2,3−トリアゾール誘導体は、特に限定されないが、例えば、2−アジドアニソール等が挙げられる。
上記(a)で得られた反応物(カルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤のカルボキシル基をエステル化したもの)と、水溶性の1,2,3−トリアゾール誘導体とを適量で混合し、L−アスコルビン酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸銅無水物等の銅触媒の存在下、室温程度で反応させればよい。この反応により、工程(a)で得られた化合物のエステル部分が1,2,3−トリアゾール誘導体となったエステルが得られる(式(1)の化合物)。反応後は、公知の精製方法で精製を行ってもよい。
また、上記で得られた式(1)の化合物は、公知の方法により、例えば、塩酸塩等の薬学的に許容される塩とすることができる。
上記で製造される式(1)の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩は、NMR等の公知の測定方法により、容易にその生成を確認することができる。
上記した本発明の式(1)の化合物およびこの化合物の薬学的に許容される塩は、原料となるPAK1遮断剤と同様の用途に用いることができる。具体的には、PAK1遮断剤、PAK1依存性疾患の治療剤、化学療法または放射線治療による癌細胞の耐性軽減剤、癌細胞の増殖・転移予防剤、PAK1依存性疾患の薬物療法による耐性軽減剤等に用いることができる。なお、式(1)の化合物およびこの化合物の薬学的に許容される塩は癌細胞の増殖を50%阻害する濃度(IC50)が25〜250nMと極めて低いため、癌等の腫瘍と関連する疾患の治療に用いることが好ましい。
上記PAK1依存性疾患としては、例えば、固形腫瘍、認知症、パーキンソン氏病、癲癇、炎症、感染症、糖尿病(2型)、高血圧、肥満症、鬱病、統合失調症、自閉症、頭痛、骨粗しょう症、過度の色素沈着、脱毛症等が挙げられる。
上記固形腫瘍としては、例えば、膵臓癌、大腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、悪性脳腫瘍、良性脳腫瘍、多発性骨髄腫等が挙げられる。
上記の各種治療剤等には、更に「相乗効果」を狙って、他の既に市販(あるいは開発途上)のPAK1遮断剤(例えば、CTCL治療薬「FK228」、MS治療薬「FTY720」、認知症薬「E2020」、胃潰瘍薬「セルベックス」、プロポリス「Bio 30」、FYN阻害剤「PP12」など)を適量添加してもよい。
上記治療剤等の剤形は、特に限定されないが、例えば、錠剤、カプセル、粉薬等の経口投与用の剤形や、軟膏、クリーム等の皮膚投与用の剤形等が挙げられる。経口投与用の剤形の場合、本発明の式(1)の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を、例えば、1日分として、1〜10mg含有させればよい。また、皮膚投与用の剤形の場合、本発明の式(1)の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を、例えば、1日分として、0.1〜1mg/mlで含有させればよい。特に、局所の炎症や痛みを抑えたり、NF1患者の皮膚に多発する良性腫瘍(いわゆる「ブク」)の増殖を抑えたりする目的の場合には、皮膚投与用の剤形が好ましい。
また、上記治療剤等は、臨床用ばかりではなく、犬や猫などのペット、あるいは馬や牛などの家畜の治療にも用いることができる。
更に、本発明の式(1)の化合物およびこの化合物の薬学的に許容される塩は、化粧料等にも用いることができる。具体的な化粧料の用途としては、特に限定されないが、例えば、美白用、育毛促進用等である。
化粧料の剤形は、特に限定されないが、例えば、クリーム、ローション、化粧水等の外用の剤形が挙げられる。これらの剤形の場合、本発明の式(1)の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を、例えば、0.1〜1mg/mlで含有させればよい。
以下、本発明を製造例および実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら製造例および実施例に何ら限定されるものではない。
[製造例1]
アルテピリンC(ARC)の1,2,3-methylene-Triazolylエステル(AzoARCあるいはPRC-15A)の調製:
<ステップa>
化合物1(アルテピリンC 161mg(536μmol))のプロパルギルアルコール(6ml)溶液に0℃でEDC(100μl(567μmol))とDMAP(17mg(139μmol))を加えた。室温で反応液をTLCで追跡しながら約1日かけて原料が消えるまで撹拌した。撹拌を止め、反応液を減圧留去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)して化合物2(100mg(295μmol))を収率55%、淡黄色固体の状態で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.66 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 7.17 (s, 2H), 6.29 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 5.30 (t, J = 7.30 Hz, 2H), 4.79 (d, J = 2.27 Hz, 2H), 3.33 (d, J = 7.14 Hz, 4H), 2.49 (t, J = 2.44 Hz, 1H), 1.77 (d, J = 8.76 Hz, 12H).
<ステップb>
化合物2(52mg(154μmol))のt−BuOH:水(2:1)の混合溶液4mlに対して、L−アスコルビン酸ナトリウム(6mg(30.3μmol))と硫酸銅無水物(4mg(25.1μmol))を室温で加えた。この反応液に0.5Mの2−アジドアニソール(310μl(155μmol))を加え、42℃で超音波を照射しながら原料が消えるまで7時間撹拌した。これを酢酸エチル20mlで3回抽出し、抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄し芒硝で脱水後にエバポレーターで減圧留去して残渣を得た。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)して化合物3(52mg(107μmol))を収率69%、淡黄色固体の状態で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 8.20 (s, 1H), 7.77 (d, J = 7.79 Hz, 1H), 7.63 ( d, J = 16.1, 1H), 7.42 (t, J = 7.78Hz, 1H), 7.15 (s, 2H), 7.12-7.07 (m, 2H), 6.30 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 5.42 (s, 2H), 5.28 (t, J = 6.49 Hz, 2H), 3.89(s, 3H), 3.32 (d, J = 7.27 Hz, 4H), 1.76 (d, J = 7.27, 12H). HRMS calcd for C29H34N3O4 (M+H)+ m/z 488.2549, found m/z 488.2586.
上記反応式は以下で示される。
Figure 0006082488
[製造例2]
コーヒー酸(CA)の1,2,3-methylene-Triazolylエステル(AzoCAあるいはPRC-15C)の調製:
<ステップc>
化合物4(コーヒー酸 382mg(2.12mmol))のDMF(3ml)溶液に対して、0℃でEDC塩酸塩(423mg(2.21mmol))とDMAP(72mg(589μmol))を加えた。この反応液にプロパルギルアルコール(400μl(6.87mmol))を滴下し、室温で17時間撹拌した。0.5Mの塩酸20mlでクエンチした後、n−ヘキサン−酢酸エチル(1:1)の混合溶媒で抽出を行い、抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄し芒硝で脱水後にエバポレーターで減圧留去して残渣を得た。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)して化合物5(143mg(655μmol))を収率31%、乳白色固体の状態で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.62 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 2.08 Hz, 1H), 7.00 (d, J = 8.00 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 8.30 Hz, 1H), 6.27 (d, J = 16.1 Hz, 1H), 4.80 (d, J = 2.60 Hz, 2H), 2.50 (t, J = 2.60 Hz, 1H).
<ステップd>
化合物5(130mg(595μmol))のTHF:水(1:1)の混合溶液4mlに対して、L−アスコルビン酸ナトリウム(61mg(308μmol))と硫酸銅無水物(17mg(107μmol))を室温で加えた.この反応液に0.5Mの2−アジドアニソール(1.20ml(600μmol))を加え、原料が消えるまで5時間撹拌した。これを酢酸エチル20mlで3回抽出し、抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄し芒硝で脱水後にエバポレーターで減圧留去して、化合物6(185mg(504μmol))を収率85%、乳白色固体の状態で得た。
1H-NMR (400 MHz, CD3OD) δ = 8.37 (s, 1H), 7.64 (d, J = 8.04 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.50 (t, J = 7.92 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 8.30 Hz, 1H), 7.12 (t, J = 7.79 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 2.08 Hz, 1H), 6.93 (d, J = 8.04 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 8.30 Hz, 1H), 6.28 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 5.35 (s, 2H), 3.89 (s, 3H). HRMS calcd for C19H18N3O5 (M+H)+ m/z 368.1246, found m/z 368.1250.
上記反応式は以下で示される。
Figure 0006082488
[製造例3]
ケトロラックの1,2,3-methylene-Triazolyl エステル(AzoKetoあるいはPRC-15 K)の調製:
<ステップe>
化合物7((R,S)−ケトロラック(ラセミ体:50/50)、202mg(794μmol))のDMF(3ml)溶液に対して、0℃でEDC塩酸塩(156mg(813μmol))とDMAP(60mg(491μmol))を加えた。この反応液にプロパルギルアルコール(200μl(3.43mmol))を滴下し、室温で5時間撹拌した。0.5Mの塩酸20mlでクエンチした後、n−ヘキサン−酢酸エチル(1:1)の混合溶媒で抽出を行い、抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄し芒硝で脱水後にエバポレーターで減圧留去して残渣を得た。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)して化合物8(147mg(501μmol))を収率63%、淡黄色オイル状で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.81 (d, J = 7.79 Hz, 2H), 7.52 (d, J = 7.26 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 7.26 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 3.63 Hz, 1H), 6.13 (d, J = 4.67 Hz, 1H), 4.76 (d, J = 2.60 Hz, 2H), 4.61-4.55 (m, 1H), 4.48-4.41 (m, 1H), 4.14-4.09 (q, 1H), 2.99-2.90 (m, 1H), 2.86-2.77 (m, 1H) 2.50 (t, J = 2.20 Hz, 1H).
<ステップf>
化合物8(190mg(648μmol))のTHF:水(1:1)の混合溶液4mlに対して、L−アスコルビン酸ナトリウム(65mg(328μmol))と硫酸銅無水物(21mg(131μmol))を室温で加えた。この反応液に0.5Mの2−アジドアニソール(1.20ml(600μmol))を加え、原料が消えるまで5時間撹拌した。これを酢酸エチル20mlで3回抽出し、抽出液を水、飽和食塩水で順次洗浄し硫酸マグネシウムで脱水後にエバポレーターで減圧留去して、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)して化合物9(191mg(432μmol))を収率85%、うすい褐色のオイル状で得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 8.15 (s, 1H), 7.80-7.76 (m, 3H), 7.51 (t, J = 7.42 Hz, 1H), 7.45-7.40 (m, 3H), 7.12-7.06 (m, 2H), 6.78 (d, J = 3.60 Hz, 1H), 6.07 (d, J = 4.11 Hz, 1H), 5.40 (s, 2H), 4.60-4.53 (m, 1H), 4.46-4.40 (m, 1H), 4.14-4.08 (m, 1H), 3.87 (s, 3H), 2.98-2.09 (m, 1H), 2.85-2.75 (m, 1H). HRMS calcd for C25H23N4O4 (M+H)+ m/z 443.1719, found m/z 443.1737.
上記反応式は以下で示される。
Figure 0006082488
(特記)FDAによって販売許可されている抗炎症剤/鎮痛剤7(ketorolac、商標「トラドール」)は光学異性体(R体とS体のラセミ混合物)である。そのうち、R体のみがRAC−PAK1経路を直接阻害し、S体のみがCOX−2を直接阻害する(非特許文献6)。しかし、幸いにも、S体はR体のPAK1遮断作用を邪魔しない。市販のトラドールは、R体とS体の1:1混合物でヒト由来肺癌細胞の増殖を50%抑える濃度(IC50)=13μM(表1を参照)。当然の成り行きとして、化合物8も化合物9も1:1ラセミ混合物になる。化合物9のIC50=24nM(抗癌作用は原料である化合物7の500倍以上)。従って、化合物9は、血管脳関門を通過しうる化合物中で史上最強のPAK1遮断剤である。その上、PAK1が(癌の増殖やメラニン合成にも必須である)COX−2遺伝子の発現に必須であることがわかっている。従って、化合物9は発癌性のRAC−PAK1−COX−2シグナル経路を2種類の独立した経路を介して遮断することになる。言い換えれば、(「一石二鳥」のラセミ体である)化合物9の薬理作用が(遺伝子変異による)薬剤耐性によって、邪魔されるという可能性は殆んどない。
[製造例4]
CDDO(TP151)(オレアノール酸の2-cyano誘導体)の1,2,3-Triazolyl エステルの調製:
上記製造例において、最初のステップ(a、cおよびe)で、原料(CDDO(TP151))をプロパルギルアルコールで処理し、次に生成物であるプロパギルエステルを2−アジドアニソールと無水硫酸銅(II)で処理し(b、dおよびf)、CDDO(TP151)のトリアゾリルエステルを得る。
[製造例5]
Mimosine-Phe-Pheの1,2,3-Triazolylエステル(AzoMFFあるいはPRC-15M)の調製:
上記製造例において、最初のステップ(a、cおよびe)で、原料(Mimosine-Phe-Phe)をプロパルギルアルコールで処理し、次に生成物であるプロパギルエステルを2−アジドアニソールと無水硫酸銅(II)で処理し(b、dおよびf)、Mimosine-Phe-Pheのトリアゾリルエステルを得る。
[製造例6]
Crocetin monoesterの1,2,3-Triazolylエステル(AzoCroあるいはPRC-15R) の調製:
上記製造例において、最初のステップ(a、cおよびe)で、原料(Crocetin monoester)をプロパルギルアルコールで処理し、次に生成物であるプロパギルエステルを2−アジドアニソールと無水硫酸銅(II)で処理し(b、dおよびf)、Crocetin monoesterのトリアゾリルエステルを得る。
[製造例7]
CX-4945の1,2,3-Triazolyl エステル(AzoCXあるいはPRC-15X)の調製:
上記製造例において、最初のステップ(a、cおよびe)で、原料(CX-4945)をプロパルギルアルコールで処理し、次に生成物であるプロパギルエステルを2−アジドアニソールと無水硫酸銅(II)で処理し(b、dおよびf)、CX-4945のトリアゾリルエステルを得る。
[製造例8]
カプトプリルの1,2,3-Triazolyl エステル(AzoCapあるいはPRC-15CP)の調製:
上記製造例において、最初のステップ(a、cおよびe)で、原料(カプトプリル)をプロパルギルアルコールで処理し、次に生成物であるプロパギルエステルを2−アジドアニソールと無水硫酸銅(II)で処理し(b、dおよびf)、カプトプリルのトリアゾリルエステルを得る。
[実施例1]
薬理/生理作用測定:
<抗癌作用の測定>
A.細胞株:ヒト由来のNSC(Non-Small Cell)肺癌 細胞(A549株)、K−RAS遺伝子に発癌性の変異を有し、その増殖や転移にPAK1及びCOX−2を必須とする。
B.継代培養 (あるいは前培養): 96wellプレート上で行う。
C.細胞培養液:10%fetal bovine serum(FBS)を含むD−MEM
D.阻害剤(検体)のストック液:通常、DMSO溶液を使用する。細胞培養中の検体の最終DMSO濃度は、細胞増殖に影響を与えないよう1%あるいはそれ以下に調整する。
(トリパンブルー染色による細胞の生存率および増殖の測定(非特許文献4))
A.検体の抗癌作用(厳密には、癌細胞の生存率や増殖を阻害する効果)を測定するために、一般に広く使用されているMTT法は、トリアゾール環を含む化合物の抗癌作用を正確に測定するには不向きである。その主な理由は、検体であるトリアゾール環誘導体が(トリアゾール環誘導体である)MTT試薬と同様、細胞内でミトコンドリアの還元酵素により、紫色の色素を形成するため、MTT法による色素測定を著しく妨害するからである。従って、MTT法の代わりに、より古典的な「トリパンブルー染色」法を使用して、染色されない(生きた)細胞の数を直接、ヘモサイトメーターで測定しなければならない。この染色法では死んだ細胞のみが染色される。
B.具体的には、A549細胞(2x10cells/well)を上記の培地で24時間前培養したのち、細胞を適当な濃度の検体を含む培地で、更に72〜96時間培養する。次に細胞を「アクターゼ」と呼ばれるプロテアーゼでプレートから引き剥し、トリパンブルーで染色し、染色されない細胞の数を顕微鏡下、hemocytometer上で数える。
<美白作用の測定>
A.細胞株:マウス由来のメラノーマ(B16F10)
B.細胞培養液:10%fetal bovine serum(FBS)および1%penicillin/streptomycin(10,000 U/mL and 100μg/mL)を含むD−MEM
C.継代培養 (あるいは前培養): 96wellプレート上で行う。
D.細胞培養液:10%fetal bovine serum(FBS)を含むD−MEM
E.阻害剤(検体)のストック液:通常、DMSO溶液を使用する。細胞培養中の検体の最終DMSO濃度は、細胞増殖に影響を与えないよう1%あるいはそれ以下に調整する。
F.細胞の生存率および増殖の測定:トリパンブルー染色による(非特許文献4)。
(メラニン含量の測定(非特許文献4))
B16F10細胞(5x10cells/well)を上記の培地で24時間前培養したのち、メラニン合成刺激ホルモンα−MSH(100nM)と(適当に希釈した)検体を含む培地で、更に48−72時間培養する。次に、培地を除き、細胞を1N NaOH(100μl)で溶かし、90℃で一時間加熱した後、メラニン含量をフォトメーター(波長405nmの吸収)で、測定する。
(チロシナーゼ活性の測定(非特許文献4))
B16F10細胞(2x10cells/well)を上記の培地で24時間前培養したのち、メラニン合成刺激ホルモンα−MSH(100nM)と(適当に希釈した)検体を含む培地で、更に72時間培養する。細胞を冷たい燐酸緩衝液で洗浄したのち、1%Triton−X(500μl/well)を含む燐酸緩衝液(pH6.8)で溶解する。次にプレートを−80℃で30分間冷凍した後、解凍した細胞溶液に(チロシナーゼの基質である)1% L−DOPA(100μl)を加え、37℃で2時間反応させたのち、フォトメーターで490nmの吸収を測定して、チロシナーゼ活性を算出する。
<育毛促進作用の測定(非特許文献5)>
A.細胞株:ヒト毛乳頭細胞(HFDPCs)
B.継代培養 (あるいは前培養): 96wellプレート上で行う。
C.継代培養液:1%fetal calf serum(FSC)、1%BPE、0.5% Cyp、0.5%ITTを含むpapilla cell growth medium (PCGM)。
(トリパンブルー染色による細胞の生存率および増殖の測定(非特許文献4、5))
HFDPCs(1x10cell/mL)を、10%FBS含むD−MEMで懸濁後、その200μl(2,000cells/well)をコラーゲンでコーチングした96wellプレート上に移し、37℃で、72時間培養する。次に、培地を除き、適当な濃度に希釈した検体を含むDMEM(200μl)で、細胞を更に96時間培養する。次に細胞を「アクターゼ」と呼ばれるプロテアーゼでプレートから引き剥し、トリパンブルーで染色し、染色されない細胞の数を顕微鏡下、hemocytometer上で数える。
<(細胞培養系)PAK1遮断作用の測定(非特許文献4)>
A.細胞株:ヒト由来のNSC(Non-Small Cell)肺癌細胞(A549株)
B.継代培養 (あるいは前培養):96wellプレート上で行う。
C.細胞培養液:10%fetal bovine serum(FBS)を含むD−MEM
D.阻害剤 (検体) のストック液:通常、DMSO溶液を使用する。細胞培養中の検体の最終DMSO濃度は、細胞増殖に影響を与えないよう1%あるいはそれ以下に調整する。
(”Macaroni−Western”(IP)ATP−Gloキナーゼ活性の測定(非特許文献4))
最近はキナーゼ活性を、自己燐酸化されたキナーゼに対する抗体を使用して、免疫沈降ブロット(ウエスタン)で測定することが流行しているが、(厳密に言えば)PAK1の場合は、この方法を使っても、細胞内のキナーゼ活性を正確に測定できないし、全く信頼性がない。その理由は、細胞内で、PAK1を活性化する経路が幾多もあり、必ずしも自己燐酸化を経由するわけではないからである。そこで、癌細胞(A549株)内のPAK1キナーゼ活性は、最近我々が開発した“Macaroni−Western”(IP)ATP−Gloキナーゼ活性測定法と呼ばれる方法によって、定量される(非特許文献4)。概略すれば、肺癌細胞(2x10cells/mL)を6−wellプレート上で24時間前培養した後、(適当な濃度に希釈した)検体を含む培養液で、更に24時間処理する。次に細胞を破壊するために、50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM食塩および1% Triton−Xを含む緩衝液で処理する。PAK1を免液沈降(IP)するために、細胞上清をanti−PAK1 IgG(1:50希釈)およびprotein A−agaroseビーズと共に1〜2時間、氷室でロータリーミキサー(日進理化:東京都杉並区)を使用して間断なく撹拌する。遠心器で沈殿させたIP(PAK1)をATP−Gloキナーゼ活性測定法kit(Promega)、ATPおよびMBP(myelin basic protein)と共に37℃で1時間反応させた後、残ったATPレベルを定量するために、ATP−依存性のLuciferin−Luciferase反応で発生する蛍光を測定する(非特許文献4)。懸濁液を遠心後、上清を96−wellプレート上に移し、MTP−880Lab microplate reader(コロナ電気:茨城県ひたちなか市)にて蛍光を測定する。
<結果>
(1)製造例1で調製したアルテピリンC(ARC)の1,2,3-methylene-Triazolylエステル
抗癌作用(IC50)=250nM(100倍ほど強化、詳しくは、表1を参照)。
抗メラニン合成作用(IC50)=250nM
育毛促進作用(ED)=20nM(ARCの活性を1000倍強化)
濃度1μMでPAK1活性を45%抑制
(2)製造例2で調製したコーヒー酸(CA)の1,2,3-methylene-Triazolylエステル
抗癌作用(IC50)=225nM(400倍以上強化、詳しくは、表1を参照)。
抗メラニン合成作用(IC50)=225nM
濃度1μMでPAK1活性を35%抑制
(3)製造例3で調製したケトロラックの1,2,3-methylene-Triazolyl エステル
抗癌作用(IC50)=24nM(500倍以上強化、詳しくは、表1を参照)。
抗メラニン合成作用(IC50)=24nM
濃度70nMでPAK1活性を50%抑制
Figure 0006082488
以上の通り、カルボキシル基により酸性になったPAK1遮断剤をTriazolyl エステル化することにより、細胞透過性が飛躍的に強化されることが示された。
本発明は、PAK1が関連する疾患の治療剤に用いることができる。
以 上

Claims (12)

  1. 一般式(1)
    Figure 0006082488
    (ただし、式(1)中、R(R)−ケトロラック、アルテピリンCまたはコーヒー酸の脱カルボキシル体を示し、Ro−フェノール、o−メトキシベンゼン、o−アニリン、o−アルギニンフェニルエステルおよびo−アミノヘキシルベンゼンからなる群から選ばれる化合物の脱水素体を示す。)で表される化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩。
  2. 請求項1記載の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする医薬。
  3. 請求項1記載の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とするPAK1遮断剤。
  4. 請求項1記載の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とするPAK1依存性疾患の治療剤。
  5. PAK1依存性疾患が、固形腫瘍、認知症、パーキンソン氏病、癲癇、炎症、感染症、糖尿病(2型)、高血圧、肥満症、鬱病、統合失調症、自閉症、頭痛、骨粗しょう症、過度の色素沈着および脱毛症から選ばれるものである請求項記載のPAK1依存性疾患の治療剤。
  6. 固形腫瘍が、膵臓癌、大腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、悪性脳腫瘍、良性脳腫瘍および多発性骨髄腫から選ばれるものである請求項記載のPAK1依存性疾患の治療剤。
  7. 請求項1記載の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする化学療法または放射線治療による癌細胞の耐性軽減剤。
  8. 請求項1記載の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする癌細胞の増殖・転移予防剤。
  9. 請求項1記載の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とするPAK1依存性疾患の薬物療法による耐性軽減剤。
  10. 請求項1記載の化合物、あるいはこの化合物の薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする化粧料。
  11. 美白用である請求項10記載の化粧料。
  12. 育毛用である請求項10記載の化粧料。
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