JP6081118B2 - 圧縮機、圧縮機の運転制御方法 - Google Patents
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Description
軸流圧縮機における失速は、いわゆる旋回失速であり、圧縮機を構成する動翼や静翼の翼列の周方向の一部で発生した失速域が、翼列内を周方向に伝搬して旋回する現象である。また、サージは、翼列の周方向全体で一斉に失速が生じ、圧力が急激に低下する現象である。
ところが、圧縮機の経年変化による、圧縮機内の汚れやエロージョン等により、実際の圧縮機におけるサージラインは、解析で得られたサージラインよりも低くなる可能性がある。また、安全のため、実機ではサージラインの確認試験が行われないことも多い。したがって、安全率を大きく取らざるを得ず、圧縮機を高い効率を発揮する条件で運転するのが難しい。
このような手法として、圧縮機の圧力変化、温度上昇、異音の発生等を検出することによって、サージの発生を検出するものがある(例えば、特許文献1〜3参照。)。
しかし、このような手法は、サージが発生したことを検出してから、圧縮機の運転を制御するものである。したがって、圧縮機側に何らかのダメージを与えてしまう可能性がある。
また、ファンやブロワ等の送風機用の圧縮機においては、圧力変動レベルが低く、擾乱波が明確に増加する現象は検出が困難であり、カルマンフィルタを用いた上記手法は、適用対象が限られてしまう。
本発明の圧縮機は、圧縮機の圧縮流路における流体の流動状態を示すパラメータ値を検出するセンサと、前記センサで検出された前記パラメータ値に基づき、前記圧縮機における失速またはサージの予兆の発生を検出するサージ予兆発生検出部と、前記サージ予兆発生検出部で前記予兆の発生を検出したときに、前記圧縮機の運転条件を変化させる制御装置と、を備え、前記サージ予兆発生検出部は、前記センサで検出された前記パラメータ値の時系列変化を表す波形信号を取得する波形取得ステップと、取得された波形信号において、一定のサンプリング時間中に予め定めたしきい値を超える回数または時間をカウントし、前記サンプリング時間を基準とした前記回数または前記時間の発生頻度または発生確率を算出する発生度合い算出ステップと、算出された前記発生頻度または前記発生確率が予め定めた基準レベルを超えたときに、前記予兆の発生を検出したことを示す信号を前記制御装置に出力する信号出力ステップと、を実行することを特徴とする。
これにより、翼通過によって生じるノイズを除去できる。
この場合、前記動翼の近傍に設置された前記センサは、前記動翼の外周側に配置するのが好ましい。
また、前記静翼の近傍に設置された前記センサは、前記静翼の前記翼の内周側に配置されているのが好ましい。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、軸流圧縮機(圧縮機)10は、ケーシング11と、ケーシング11内に設けられた主軸12と、主軸12の軸線方向に沿って複数枚が配置された動翼13と、主軸12の軸線方向において互いに前後する動翼13と動翼13の間に配置された静翼14と、を備えている。
また、軸流圧縮機10には、圧力センサ20で検出するケーシング11の圧縮室(圧縮流路)11a内の流体の圧力(流体の流動状態を示すパラメータ値)に基づき、失速やサージ(以下、単にサージと称する)の予兆現象を検出するサージ予兆発生検出部30が備えられている。サージ予兆発生検出部30は、この軸流圧縮機10の制御装置50において機能的に構成されたものである。
軸流圧縮機10は、運転条件を、流量を絞る方向、圧力を高める方向に移行していくと、圧力の時系列変化を表す波形に、擾乱波が発生するようになる。図3に示すように、この擾乱波は、サージレベルに近づくにつれ、その発生頻度が増大し、発生が周期的・持続的になる。そこで、本実施形態のサージ予兆発生検出部30では、図4に示すような流れで擾乱波の発生をモニタリングすることで、サージ予兆を検出する。
サージ予兆発生検出部30は、微小時間間隔で圧力センサ20から出力されるケーシング11内の圧縮室11a内の圧力検出値を逐次記憶し、図5に示すような波形信号S1を取得する(ステップS101)。
得られた波形信号S1には、動翼13の回転によって複数枚の翼13aが圧力センサ20の近傍を通過するたびに生じる圧力変動によるノイズが含まれている(ノイズ成分;動翼13の回転速度V×翼枚数Z)。そこで、得られた波形信号S1をローパスフィルタやバンドパスフィルタに通すことによって、ノイズを除去するのが好ましい(ステップS102)。ここで、サージが発生するときに生じる擾乱波は、翼13aが通過する周波数fよりも低周波帯域に現れる。そこで、波形信号S1から、翼13aが通過する周波数f以上の周波数帯域の信号を除去するのが好ましい。さらに好ましくは、波形信号S1から、翼13aが通過する周波数fの50%以上の周波数帯域の信号を、波形信号S1から除去するのが好ましい。
次いで、波形信号S1から、圧力が予め定めたしきい値Lを越える度合いを表す評価値を算出する(ステップS103)。
これには、波形信号S1が、予め定めたサンプリング時間Tsの間に、規定のしきい値Lを超える回数Nをカウントする(図5中、矢印箇所が、波形信号S1がしきい値Lを越えた部分であり、矢印の数が回数N。)。
発生頻度=回数N[−]/サンプリング時間Ts[s]
として算出し、これを、圧力が予め定めたしきい値L以上となる度合いを表す評価値とする。
発生確率:回数N[−]/サンプリング時間中に発生する全波数N0[−]
として算出し、これを、圧力が予め定めたしきい値L以上となる度合いを表す評価値とすることもできる。
この場合、得られた持続時間の長さT1から、しきい値L以上の圧力となる発生確率を、
発生確率:しきい値Lを超えた持続時間の長さT1[s]/サンプリング時間Ts[s]
として算出し、これを、圧力が予め定めたしきい値L以上となる度合いを表す評価値とすることもできる。
一方、評価値が基準値を上回っていた場合、サージ予兆発生信号を、軸流圧縮機10の制御装置50に出力する(ステップS105)。
サージ防止処理としては、例えば、軸流圧縮機10の運転を緊急停止させる処理がある。
他のサージ防止処理としては、例えば、軸流圧縮機10の運転を継続したまま、圧力を低下させる処理、流量を増加させる処理等、運転条件をサージが生じにくい側に移行させるものがある。また、このように軸流圧縮機10の運転条件を移行させて運転を継続する場合、運転条件の変更後、再び前記ステップS101に戻って前記の処理を繰り返し、サージの発生を防止する。
また、サージ防止処理としては、単に、アラームを発するものでも良い。
また、これらのサージ防止処理を、評価値のレベルに応じて選択して実行しても良い。
次に、本発明の圧縮機、圧縮機の運転制御方法の第2実施形態について説明する。
ここで、以下に説明する第2実施形態においては、サージ予兆発生検出部30におけるサージ予兆発生検出処理の内容が異なるのみで、ハードウェア構成については上記第1実施形態と共通する。したがって、以下においては、第2実施形態に特有のサージ予兆発生検出部30におけるサージ予兆発生検出処理について説明し、上記第1実施形態と共通する構成については、その説明を省略する。
したがって、例えば、図8(a)に示すような、圧力センサ20から得られる生の波形信号S3Lや、図8(b)に示すような、波形信号S3Lを上記のステップS102で示したようにローパスフィルタによるフィルタリング処理を施して波形信号S3Fを取得しても、他の変動要因の影響が排除できず、正確な評価が行えないことがある。
次に、本発明の圧縮機、圧縮機の運転制御方法の第3実施形態について説明する。
ここで、以下に説明する第3実施形態においては、上記第2実施形態で示した構成をベースとしたものであり、上記第1、第2実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、上記第1、第2実施形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略する。
ここで、得られた波形信号S3を周波数解析し、予め定めた特定周波数帯における波形信号S4を抽出するときには、サージ予兆発生検出部30は、その時点での動翼13の翼13a、静翼14の翼14aの翼角の情報を軸流圧縮機10の制御装置50から取得する。
しかる後は、抽出した波形信号S4をもとに、上記第2実施形態と同様にして、サージ予兆発生検出処理を行う。
ところで、上記第3実施形態で示した、動翼13の翼13aや静翼14の翼14aの翼角が可変である場合であるが、動翼13で失速が発生した場合には高周波数の擾乱波が発生し、静翼14で失速が発生した場合には低周波数の擾乱波が発生することを、本発明者らは見出した。
これは、動翼13の翼13aが閉じている状態にあるときには、反動度が増加し、動翼13の負荷が上昇するため、動翼13で先に失速が起こり、動翼13の翼13aが開いている状態にあるときには、反動度が低下し、動翼13に負荷が低下するため、静翼14で先に失速が起こると考えられる。
ここで、低エネルギー流体は遠心力によって外周側に集積するため、動翼13における失速は、翼13aの先端側で起こりやすい。そこで、動翼13の監視は、圧力センサ20Aを、動翼13の翼13aの上流であって、ケーシング11側に設置して行うのが好ましい。
また、静翼14の監視は、圧力センサ20Bを、静翼14の翼13aの上流であって、ケーシング11側に設置して行っても良い(図10中、符号20B−1の位置)。しかし、低エネルギー流体は、動翼13で発生した圧力勾配によってハブ15側に集積しやすく、翼13aの根元側で失速が生じやすい。そこで、静翼14の監視は、圧力センサ20Bを、静翼14の翼13aの上流であって、ハブ15に設置して行うのが好ましい(図10中、符号20B−2の位置)。
また、上記第1〜第3実施形態で示した構成は、適宜組み合わせることもできる。
これに限らず、本発明の主旨の範囲内であれば、構成の適宜の変更、追加を許容する。
11 ケーシング
11a 圧縮室(圧縮流路)
12 主軸
13 動翼
13a 翼
14 静翼
14a 翼
15 コア
20,20A,20B 圧力センサ
30 サージ予兆発生検出部
50 制御装置
Claims (7)
- 動翼と静翼とを備えて前記動翼および前記静翼の少なくとも一方の翼角度が可変とされた圧縮機の圧縮流路における流体の流動状態を示すパラメータ値を検出するセンサと、
前記センサで検出された前記パラメータ値に基づき、前記圧縮機における失速またはサージの予兆の発生を検出するサージ予兆発生検出部と、
前記サージ予兆発生検出部で前記予兆の発生を検出したときに、前記圧縮機の運転条件を変化させる制御装置と、
を備え、
前記サージ予兆発生検出部は、前記センサで検出された前記パラメータ値の時系列変化を表す波形信号を取得する波形取得ステップと、
取得された前記波形信号について、予め定めた特定の周波数域における特定周波数域波形信号を抽出する波形抽出ステップと、
取得された前記波形信号において、一定のサンプリング時間中に予め定めたしきい値を超える回数または時間をカウントし、前記サンプリング時間を基準とした前記回数または前記時間の発生頻度または発生確率を算出する発生度合い算出ステップと、
算出された前記発生頻度または前記発生確率が予め定めた基準レベルを超えたときに、前記予兆の発生を検出したことを示す信号を前記制御装置に出力する信号出力ステップと、
を実行し、
前記波形抽出ステップでは、前記翼角度に応じて、前記波形取得ステップで取得した前記波形信号から特定周波数域波形信号を抽出する周波数域を変更することを特徴とする圧縮機。 - 前記サージ予兆発生検出部は、前記動翼の近傍に配置された前記センサと前記静翼の近傍に設置された前記センサのそれぞれで同時に検出した前記パラメータ値に基づいて、前記動翼の近傍と前記静翼の近傍とで、失速またはサージの前記予兆の発生を検出することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 前記動翼の近傍に設置された前記センサは、前記動翼の外周側に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
- 前記静翼の近傍に設置された前記センサは、前記静翼の前記翼の内周側に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の圧縮機。
- 前記発生度合い算出ステップに先立ち、前記波形取得ステップで取得した前記波形信号から、前記圧縮機の翼が通過することで生じるノイズ成分をフィルタリングにより除去するフィルタ処理ステップを、さらに実行することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の圧縮機。
- 動翼と静翼とを備えて前記動翼および前記静翼の少なくとも一方の翼角度が可変とされた圧縮機の圧縮流路における流体の流動状態を示すパラメータ値を検出するパラメータ値検出ステップと、
検出された前記パラメータ値の時系列変化を表す波形信号を取得する波形取得ステップと、
取得された前記波形信号について、予め定めた特定の周波数域における特定周波数域波形信号を抽出する波形抽出ステップと、
取得された前記波形信号において、一定のサンプリング時間中に予め定めたしきい値を超える回数または時間をカウントし、前記サンプリング時間を基準とした前記回数または前記時間の発生頻度または発生確率を算出する発生度合い算出ステップと、
算出された前記発生頻度または前記発生確率が予め定めた基準レベルを超えたときに、前記圧縮機の運転条件を変化させるステップと、
を備え、
前記波形抽出ステップでは、前記翼角度に応じて、前記波形取得ステップで取得した前記波形信号から特定周波数域波形信号を抽出する周波数域を変更することを特徴とする圧縮機の運転制御方法。 - 前記パラメータ値検出ステップは、動翼と静翼とを備えた圧縮機の圧縮流路における流体の流動状態を示すパラメータ値を、前記動翼の近傍と前記静翼の近傍とにそれぞれ設置されたセンサによって検出し、
前記波形取得ステップは、前記動翼の近傍に配置された前記センサと前記静翼の近傍に設置された前記センサのそれぞれで同時に検出した前記パラメータ値の時系列変化を表す波形信号を取得することを特徴とする請求項6に記載の圧縮機の運転制御方法。
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