JP6079439B2 - タンパク質又はペプチドの分析方法及び分析装置 - Google Patents

タンパク質又はペプチドの分析方法及び分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質やペプチドを構成するアミノ酸の組成の推定やアミノ酸の定量を行うためのタンパク質又はペプチドの分析方法及び分析装置に関する。
アミノ酸はタンパク質及びペプチドの基本構成単位であるとともに、遊離アミノ酸として生体機能の制御や食品における呈味など様々な機能を有している。そのため、生化学、医療、医薬品の研究・開発、飲食品の研究・開発などの分野において、試料中のアミノ酸の組成分析や定量分析は非常に重要である。
図9は、従来一般的であるタンパク質中のアミノ酸定量分析の手順を示すフローチャートである。
まず、第1段階として、タンパク質を適当な酵素等で分解して生成したポリペプチドに酸を加え加熱することによって、ポリペプチドをアミノ酸単体のレベルにまで分解する(ステップS51)。次に、様々なアミノ酸の混合物に対し液体クロマトグラフィなどの分離手法を適用し、同一種類のアミノ酸毎に分離する(ステップS52)。その後、各アミノ酸をラベル化し、そのラベル信号を測定する(ステップS53)。最後に、得られたラベル信号強度を例えば予め求めておいた検量線を参照して濃度に換算することで、各アミノ酸を定量する(ステップS54)。
ステップS53におけるアミノ酸のラベル化には、以前はニンヒドリン反応が利用されていたが、現在では、多くの場合、蛍光色素ラベルが用いられている。上記のようなアミノ酸定量分析手法は十分に確立された技術であり、その定量結果の信頼性は高い。例えば非特許文献1には、上記のような分析手法を利用してタンパク質の濃度を求める技術が開示されている。また非特許文献2には、ステップS53に相当する測定を質量分析計を用いて行うことで、処理時間の短縮と高精度化を図ったアミノ酸分析装置が開示されている。さらには、ステップS51における酸加水分解とは別の手法、具体的には、タンパク質消化酵素(プロテアーゼ)を数種類同時に使用することによって、タンパク質を完全に消化して単離アミノ酸にまで分解する手法も提案されている。
このように図9に示した手順によるアミノ酸分析手法には様々な改良が加えられ、それによって処理時間の短縮化や高精度化が図られているものの、いずれも、その第1段階では、タンパク質やペプチドである試料を単離アミノ酸にまで完全に分解するという前処理が行われ、殆どの場合、この前処理には酸加水分解が利用されている。
しかしながら、酸加水分解は、試料に高濃度の酸を加えてこれを加熱する(典型的な例では、6規定濃度の塩酸を用い110℃、24時間の処理)という過激な条件の下でアミノ酸の分解を行うものであるため、作業に危険を伴い、作業者には熟練や経験が要求される。また、アミノ酸の安定性はその種類によって様々であり、加熱反応時間が短いほうが回収率が高いアミノ酸と、逆に加熱反応時間が長いほうが回収率が高いアミノ酸とがある。そのため、多種類のアミノ酸をできるだけ漏れなく回収するには、試料を複数のロットに分割しロット毎に加熱反応時間を変えるなど、煩雑な作業が必要となる。さらにまた、加熱反応時間も長いものでは72時間程度とる必要がある。このようにタンパク質の酸加水分解は、非常に作業が煩雑である上に時間も掛かり、しかも作業に携われる者が限られるという問題がある。
上記のようなポリペプチドの酸加水分解にマイクロ波加熱を用いた手法も提案されており、これによれば加熱反応時間の短縮が可能である。しかしながら、こうした手法では、汎用的でない前処理専用の機器が必要になる。また、そうした特殊な機器の取扱いや操作には、やはり熟練や経験のある作業者が必要となる。
さらにまた、酸加水分解を前処理に用いたアミノ酸分析では、分析の精度等に関わるより根本的な問題がある。即ち、酸加水分解は強い化学反応であるため、アミノ酸の多くが分解反応中にその影響を受ける。例えば、システイン(Cysteine)は酸加水分解の反応によってその構造が不安定になるため、回収量が安定しない。また、アスパラギン(Asparagine)及びグルタミン(Glutamine)はそれぞれアスパラギン酸及びグルタミン酸に分解されてしまうため、もともとのアミノ酸がアスパラギンであるか或いはアスパラギン酸であるのか、またグルタミンであるか或いはグルタミン酸であるのか、を識別することができない。また、トリプトファン(Tryptophan)は酸加水分解反応によって完全に分解されてしまうため、その存在量を確認することは不可能である。このようにタンパク質の構成要素である全20種類のアミノ酸のうち、少なくともシステイン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、トリプトファンという6種類のアミノ酸の定量が不確実であるか或いは実質的に不可能である。そのため、こうしたアミノ酸が含まれない試料に対しては上記分析手法を適用可能であるものの、それらアミノ酸を含んでいる試料やアミノ酸の種類が不明である未知試料の分析には上記手法は適さない。
一方、酸加水分解の代わりに数種類のタンパク質消化酵素を同時に使用してポリペプチドの分解を行う方法は、上述したような酸加水分解に特有の欠点を持たない。しかしながら、このような方法における生化学的な処理は極めて複雑であり、ポリペプチドを完全に消化して単離アミノ酸にまで分解するにはかなり厳密な条件の調整が必要となる。そうした作業はかなり煩雑で難しく、経験や知識に富んだ作業者が必要となる。
加藤、「アミノ酸分析を用いた精確なタンパク質定量法 信頼性の高い定量法の開発と「C反応性蛋白標準液」開発への応用」、産業技術総合研究所、[平成25年3月1日検索]、インターネット<URL: http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol08_09/vol08_09_p18.pdf> 渡邊、ほか4名、「UF-Amino Station によるアミノ酸の多成分一斉高速分析―食品分析への応用―」、島津評論編集部、島津評論、第69巻、第1・2号、2012年9月30日発行、pp.47-54
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、従来の酸加水分解を用いた方法では得られないアミノ酸の情報も収集することができ、タンパク質やペプチドのアミノ酸組成やアミノ酸量を精度よく又は再現性よく求めることができるタンパク質又はペプチドの分析方法及び分析装置を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、試料の前処理の作業が簡便であり経験や熟練に乏しい作業者であってもミスや不具合を生じにくく、しかも特殊な装置や機器も不要であるタンパク質又はペプチドの分析方法及び分析装置を提供することにある。
上述したような従来の分析手法における問題の多くは、ペプチドを分解するために酸加水分解を利用していることに起因する。そこで、本願発明者は酸加水分解に置き換え得るペプチド分解手法として、プロテイナーゼK(Proteinase K)を代表とする配列非特異的エンドペプチターゼに着目した。プロテイナーゼKは、真菌(Engyodontium album)由来のセリンペプチダーゼであり、その基質特異性は極端に広く、全てのペプチド結合を切断の対象とし、しかも、その反応速度はかなり速い。こうした特性から、生化学分野においてプロテイナーゼKは、核酸調合液に混じっている不所望のタンパク質(例えば核酸を分解する核酸切断酵素であるヌクレアーゼ)を不活性化する等のために専ら用いられている。本願発明者はこのような特性に着目し、分析対象のペプチド自体を分解して分析可能な断片とするために配列非特異的エンドペプチターゼを利用できることを実験により確認し、本願発明をするに至った。
即ち、上記課題を解決するために成された本発明に係る分析方法は、タンパク質又はペプチドのアミノ酸配列を求めるタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
a)配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチド結合の切断により、分析対象であるペプチド又はタンパク質由来のペプチドを分解する断片化ステップと、
b)前記断片化ステップにより得られたペプチド断片の混合物を同一種類のペプチド断片毎に分離して収集する分離ステップと、
を有し、前記分離ステップにより分離・収集された各ペプチド断片のアミノ酸配列の端部における配列の共通性を利用して断片化前のペプチドのアミノ酸配列を推することを特徴とすることを特徴としている。
また本発明に係るタンパク質又はペプチドの分析方法の態様は、
前記断片化ステップでは分析対象であるペプチド又はタンパク質由来のペプチドをそのアミノ酸配列長が当該ペプチドよりも短いオリゴペプチドに分解し、
前記分離ステップではそのオリゴペプチドの混合物を分離して同一種類毎にオリゴペプチドを収集し、さらに、
前記分離ステップにより分離された各オリゴペプチドに対しそれぞれ質量分析を行うことでマススペクトルデータを取得し、該マススペクトルデータに基づいて各オリゴペプチドのアミノ酸組成を推定する断片組成推定ステップ、を有し、
各オリゴペプチドのアミノ酸組成推定結果に基づいて断片化前のペプチドのアミノ酸組成又はアミノ酸量を求めることを特徴としている。
また本発明に係るタンパク質又はペプチドの分析装置は、上記態様による分析方法を具現化する装置であり、質量分析を利用してタンパク質又はペプチドのアミノ酸配列を求めるタンパク質又はペプチドの分析装置において、
a)配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチド結合の切断により、ペプチド又はタンパク質由来のペプチドをそのアミノ酸配列長が当該ペプチドよりも短いオリゴペプチドに分解する断片化処理部と、
b)前記断片化処理部により得られたオリゴペプチドの混合物を分離して同一種類毎にオリゴペプチドを収集する分離部と、
c)前記分離部により分離された各オリゴペプチドに対しそれぞれ質量分析を行うことでマススペクトルデータを取得する質量分析部と、
d)前記質量分析部により得られたマススペクトルデータに基づいて各オリゴペプチドのアミノ酸組成を推定する断片組成推定部と、
を備え、前記断片組成推定部による各オリゴペプチドのアミノ酸組成から導出されるアミノ酸配列の端部における配列の共通性を利用して断片化前のタンパク質若しくはペプチドのアミノ酸組成又はアミノ酸量を求めることを特徴としている。
この分析装置により実施される上記態様による分析方法では、従来行われているように被検ペプチドを酸加水分解などによって単離アミノ酸にまで完全に分解するのではなく、配列非特異的エンドペプチダーゼを用いた消化によって、アミノ酸長さが数個程度から長くても十程度であるオリゴペプチドの状態までの分解に敢えてとどめる。配列非特異的エンドペプチダーゼはペプチド結合を切断する作用を有するが、その特徴は非選択的にペプチド結合を切断することにある。そのため、配列非特異的エンドペプチダーゼの作用により被検ペプチドは様々な結合部位で切断されることになる。このように、配列非特異的エンドペプチダーゼの作用により被検ペプチドは様々な結合部位で切断されるため、多様なアミノ酸配列のオリゴペプチドが生成される。
分離ステップでは例えば、液体クロマトグラフィ(通常は逆相クロマトグラフィ)により時間方向に分離した試料をフラクションコレクタを用いて分画し、マルチウェルプレートなどへ分取する。それによって、断片化ステップにより得られた様々なオリゴペプチドの混合物を分離し、同一種類毎にオリゴペプチドを収集する。断片組成推定ステップでは、こうして分離されたオリゴペプチドを質量分析装置に供し、オリゴペプチド毎にマススペクトルデータを取得する。そのマススペクトルからオリゴペプチドの実測の質量が判明するから、その質量に基づいて、該オリゴペプチドを構成するアミノ酸の種類と個数、つまりは組成が推定される。元のペプチド由来の全てのオリゴペプチドのアミノ酸組成が求まれば、それを集約することで元のペプチドのアミノ酸組成を推定することができる。
また上述したように、断片化によって生成された全てのオリゴペプチドについてアミノ酸組成が判明すれば、それら個々のオリゴペプチドのアミノ酸配列は元のペプチドのアミノ酸配列の一部であるので、それらを適切に組み合わせることで元のペプチドのアミノ酸配列を推定できる場合がある。
そこで上記態様のタンパク質又はペプチドの分析方法では、
前記断片組成推定ステップにより推定された各オリゴペプチドのアミノ酸配列に基づき、複数のアミノ酸配列の端部における配列の共通性を利用して異なるオリゴペプチドを連結することにより、被検ペプチドのアミノ酸配列を推定する配列推定ステップを、さらに有するものとしてもよい。
この場合、断片化ステップにおいて用いた酵素が持つ、ペプチド結合を非選択的に切断するという特性が活きる。即ち、或る一種のペプチドに由来する多様なアミノ酸配列のオリゴペプチドが得られれば、元のペプチド中の一部のアミノ酸配列をそれぞれ端部に持ち且つ全体のアミノ酸配列は異なるオリゴペプチドが存在する可能性がある。また、或る一種のオリゴペプチドの一方の端部に位置するアミノ酸配列と別種のオリゴペプチドの他方の端部に位置するアミノ酸配列とが共通していれば、その共通の配列部分をオーバーラップさせてそれら二種のオリゴペプチドを結合したものが元のペプチドの一部である可能性が高い。そこで、配列推定ステップでは、推定された各オリゴペプチドのアミノ酸配列から上記のようなオーバーラップ部分を探索し、連結可能なオリゴペプチドを連結するという作業を繰り返すことにより、元のペプチドのアミノ酸配列の候補を推定する。
なお、複数のオリゴペプチドを連結させることで元のペプチドのアミノ酸配列候補が多数求まる可能性が高いから、その中から確実性の高い配列を選び出すためには、元のペプチドを質量分析した結果から求まる該ペプチドの質量を利用するとよい。
即ち、上記態様のタンパク質又はペプチドの分析方法では、
前記断片化ステップで断片化される前のペプチドに対し質量分析を行うことでマススペクトルデータを取得し、該マススペクトルデータに基づいて該ペプチドの質量を求めるペプチド情報収集ステップをさらに有し、
前記配列推定ステップでは、推定されたペプチドのアミノ酸配列から求まる該ペプチドの質量と前記ペプチド情報収集ステップにより求まるペプチドの質量とを照合して、アミノ酸配列の推定の適否を判定するとよい。
これにより、断片化前の元のペプチド全長のアミノ酸配列を推定できる可能性が高まる。
ただし、断片化前の元のペプチド全長が長すぎる場合、例えばタンパク質の全長程度であるような場合には、可能性のあるアミノ酸配列候補の数が多くなりすぎて実質的に解が得られないおそれが高い。こうした事態を避けるには、断片化するペプチドの全長を予め適宜の長さに制限しておくとよい。
そこで、本発明に係るタンパク質又はペプチドの分析方法では、
前記断片化ステップの前に、分析対象であるペプチド又はタンパク質の結合を切断してアミノ酸配列長を制限したポリペプチドを得る事前切断ステップと、
該事前切断ステップにより得られたポリペプチドの混合物を分離して同一種類毎にポリペプチドを収集する事前分離ステップと、
を実行し、該事前分離ステップにより分離されたポリペプチド毎に、前記断片化ステップ以降の処理を実行するようにしてもよい。
これにより、断片化によって得られるオリゴペプチドの数も或る程度制限され、オリゴペプチドのアミノ酸組成から推定されるアミノ酸配列候補同士を連結させる際に、一方又は両方のアミノ酸配列が正しい推定でなかった場合に、偶然にオーバーラップ部分が存在して連結されてしまう可能性が低くなる。それによって、元のペプチドに対するアミノ酸配列候補の数も絞られ、解が得られる可能性を高めることができる。
また上述したように、配列非特異的エンドペプチダーゼとしては例えばプロテイナーゼKを用いるとよい。プロテイナーゼKは基質特異性が極端に低いため、ペプチド結合を非選択的に切断するのに優れ、またその反応も速い。また、生化学分野において核酸調合液から汚染物を除去するために広く利用されているので、入手が容易であるとともに扱い易い。
さらにまた、上記断片化ステップの反応時間をできるだけ短縮するべく、配列非特異的エンドペプチダーゼによるペプチドの断片化を促進するために、例えば、常温よりも高い所定の加温条件(例えば50〜60℃程度)の下で配列非特異的エンドペプチダーゼを被検ペプチドに作用させるようにするとよい。
また、微小振動を加えるべく超音波を補助的に利用して被検ペプチドの断片化を促進させるようにしてもよい。さらにまた、これら手法を組み合わせることでペプチドの断片化を一層促進することができる。
こうした手法によって、ペプチドを単離アミノ酸又はオリゴペプチドの状態にまで分解するのに要する時間を短縮して、タンパク質又はペプチドの分析のスループットを向上させることができる。
本発明に係るタンパク質又はペプチドの分析方法及び分析装置によれば、ペプチドを分析可能な断片にまで分解するために酸加水分解による前処理を用いないので、酸加水分解により壊れたり変成したりするシステイン等のアミノ酸も確実に把握することができる。より具体的に言えば、質量が同一であるロイシン(Leucine)とイソロイシン(Isoleucine)とは区別不可能であるものの、それ以外のアミノ酸については全て同定することができるので、精度の高いアミノ酸組成やアミノ酸量を求めることができる。
また、プロテイナーゼKなどの配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチドの分解は酸加水分解や複数の消化酵素を併用した分解などの手法に比べてかなり簡便であり、その作業に特段の経験や熟練を要しない。そのため、そうした作業の経験や熟練に乏しい者でも作業にあたることができ、しかも作業のミスや不具合も生じにくい。また、ペプチドの分解に特殊な装置や機器も不要であるので、分析コストの点でも有利である。
また特に本発明の上記態様による分析方法によれば、ペプチドを単離アミノ酸にまで完全に分解する必要がないので、前処理に要する時間を短縮することができ、分析のスループットを改善することができる。また、従来方法では、アミノ酸の量を反映したラベル信号強度をアミノ酸の個数を反映した濃度に換算するために検量線を使用しており、検量線を作成するために内部標準試料を目的試料と同時に測定する必要があった。これに対し、第2の態様による分析方法によれば、元のペプチドやオリゴペプチドのアミノ酸配列中のアミノ酸個数は質量分析結果に基づいて決定されるため、内部標準試料の測定は不要であって、この点においても分析作業は簡便になる。
本発明の一実施例であるアミノ酸配列解析方法の作業及び処理の手順を示すフローチャート。 図1に示したアミノ酸配列解析方法に用いられるアミノ酸配列解析装置のブロック構成図。 本実施例のアミノ酸配列解析方法におけるアミノ酸配列候補の結合方法の説明図。 インスリンを消化酵素で分解して得られるペプチドの例(a)及びその中の一つをプロテイナーゼKを用いて断片化して得られるオリゴペプチドのアミノ酸配列とアミノ酸組成の例(b)を示す図。 図4(b)中のアミノ酸組成から導出されるアミノ酸配列候補の例を示す図。 図4(b)に示したペプチド断片化の一例を示す図。 図6に示したペプチド断片の結合処理の説明図。 図4(b)に示したアミノ酸配列候補を結合して得られるアミノ酸配列候補の例を示す図。 従来一般的であるタンパク質中のアミノ酸定量分析の手順を示すフローチャート。
まず、本発明の一実施例であるアミノ酸配列解析方法及び該方法を実施するためのアミノ酸配列解析システムについて、添付図面を参照して説明する。
図1は本実施例によるアミノ酸配列解析方法の作業及び処理の手順を示すフローチャー、図2は本実施例によるアミノ酸配列解析システムの概略構成図である。
図2に示すように、本実施例によるアミノ酸配列解析システムは、タンパク質消化処理部1、ペプチド分離部2、ペプチド断片化処理部3、断片分離部4、質量分析計5、解析処理部6、及び、解析処理部6に付設された入力部7及び表示部8、を備える。
タンパク質消化処理部1は、分析対象のタンパク質(又はアミノ酸全長が長いペプチド)である試料に消化酵素が加えられた溶液を保温するインキュベータなどを含む構成とすることができる。
ペプチド分離部2は例えば、逆相カラムを有する液体クロマトグラフ、該逆相カラムで分離された各種ペプチドをマルチウェルプレートなどに分取するフラクションコレクタ、などを含む構成とすることができる。
ペプチド断片化処理部3は例えば、配列非特異的エンドペプチターゼが固定化されたビーズ等の担体が充填されたカラム、該カラムにペプチド溶液を繰り返し(循環的に)通過させる流路系、などを含む構成とすることができる。
断片分離部4はペプチド分離部2と同様に、例えば逆相カラムを有する液体クロマトグラフ、フラクションコレクタなどを含む構成とすることができる。
質量分析計5は例えばマトリクス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOFMS)である。もちろん、質量分析計5はこれに限らない。
解析処理部6は質量分析計5により得られるデータを解析処理するもので、マススペクトルデータ記憶部61、質量情報取得部62、アミノ酸組成推定部63、アミノ酸配列推定部64、配列結合処理部65、配列結果検証部66、表示処理部67などの機能ブロックを含む。この解析処理部6の実体はパーソナルコンピュータやワークステーションであって、専用の解析用プログラムを記録した、例えばCD−ROM(CD−R、CD−RW)、MO、DVD−RAM、メモリカードなどの着脱自在の記録媒体、HDDなどの一般的に着脱自在ではない記録媒体など、様々な記録媒体をコンピュータで読み取らせることで取得したプログラム、又は通信回線等を通して外部から取り込んだプログラムを当該コンピュータ上で実行することにより具現化されるものとすることができる。
図1に示したフローチャートに従って、上記構成を有するアミノ酸配列解析システムを用いて行われるアミノ酸配列解析方法の手順を説明する。
まずタンパク質消化処理部1において、試料であるタンパク質のペプチド結合を適宜の消化酵素によって切断し、或る程度の長さのペプチド(ポリペプチド)の混合物を生成する(ステップS1)。例えば消化酵素としてトリプシン(Trypsin)を用い、ペプチドホルモンの一種であるインスリン(Insulin)を切断した場合には、図4(a)に示すようなアミノ酸配列を有するペプチドが得られる。この例では、ペプチドの全長は最大のものでアミノ酸個数が40程度であるが、一般的には、数十個程度の長さの範囲になるようにすればよい。このようなペプチド結合の切断を後述のペプチド断片化に先立って行うのは、非常に長いタンパク質全体をそのままステップS2以降の処理に供した場合、最終的に求まるアミノ酸組成候補の数が多くなりすぎるおそれが高いからである。ステップS1におけるペプチド結合の切断によって、ポリペプチドの長さの上限を或る程度制限することにより、そうした問題が起こる可能性をかなり下げることができる。
上述のように酵素消化によって得られたペプチド混合物には様々なペプチドが含まれるから、次にペプチド分離部2により、ペプチドを種類毎に分離して分取する(ステップS2)。ここで使用される逆相クロマトグラフィやマルチウェルプレートなどへの分取を行うフラクションコレクタは、通常の生化学計測で繁用される手法であり特殊なものではない。ステップS3以降の処理は、単離された個々のペプチド種毎に実施される。
次にペプチド断片化処理部3において、一つのペプチド種の様々な結合部位を配列非特異的エンドペプチターゼを用いて切断することで断片化し、アミノ酸数個〜十個程度の長さのペプチド断片(オリゴペプチド)の混合物を生成する(ステップS3)。この例では、配列非特異的エンドペプチターゼとして、最も好ましい酵素であるプロテイナーゼKを用いる。プロテイナーゼKが好ましい理由は、上述したように、その基質特異性が極端に広く、全てのペプチド結合を切断の対象とし、その反応速度はかなり速いためである。
ステップS3の断片化処理によって生成される様々なオリゴペプチドの長さは、後述する質量分析結果に基づいて当該オリゴペプチドを構成するアミノ酸組成が精度よく推定できる程度の長さでありさえすれば、揃っている必要はない。ただし、後述するアミノ酸配列のオーバーラップ部分を利用した結合処理を行うためには、長すぎるアミノ酸配列や極端に短すぎるアミノ酸配列は適切ではなく、特に、従来行われているような単離アミノ酸(つまり1個のアミノ酸)にまで完全に分解してしまうことは避ける必要がある。そこで、例えば事前に複数種類のペプチドについてプロテイナーゼKを用いた断片化の予備実験を行い、適切な長さのアミノ酸配列にまで分解するのに要する時間を計測し、これを参考にして反応処理時間を定めるようにするとよい。
ペプチド断片化処理部3として、上述したようにプロテイナーゼKを固定化した担体を充填したカラムを用いる場合には、1本乃至複数本のカラムをペプチド溶液が循環するように流路系を形成し又はカラム自体を環状とし、ペプチド溶液が循環流路又は環状カラムを周回する回数で以て反応処理時間を調整することができる。なお、こうしたカラムを用いた構成を採ることで、プロテイナーゼKと基質つまりペプチドとが混在するのを回避し、さらにプロテイナーゼK同士の自己消化を抑えることができる。
また、上述したように事前に反応処理時間を決めておくのではなく、リアルタイム計測によって反応処理の終点を決めるようにしてもよい。具体的には例えば、プロテイナーゼKによる反応消化溶液を光散乱法などにより測定し、その測定結果に基づいて溶液中のペプチドのおおよその分子量をリアルタイムで推測する。そして、推定分子量からペプチドのアミノ酸配列長を推定し、その推定値が予め定めたアミノ酸配列長以下になった時点で反応を停止させる、という制御を行う構成としてもよい。
なお、配列非特異的エンドペプチターゼを用いたペプチドの断片化処理を促進するために、適度な温度(50〜60℃程度)に加温したり、超音波による微細振動を与えたりしてもよい。こうした手法を適宜組み合わせることで、ペプチド断片化処理の所要時間を1時間程度、場合によってはそれよりも短く抑えることができる。これは、従来の酸加水分解によりポリペプチドを単離アミノ酸にまで分解するのに要する反応時間に比べると格段に短い。
図4(b)は、図4(a)に示したインスリンのトリプシン消化産物の中の一つのペプチド[GFFYTPK]に対しペプチド断片化処理を実行して得られるペプチド断片の一例である。もちろん、実際には、断片化前のペプチドのアミノ酸配列はおろかアミノ酸組成も不明であり、分かっているのは、断片化対象が或る一種類のペプチドであるということだけである。
ペプチド断片混合物には一種類のペプチドに由来する様々なペプチド断片が含まれる。そこで次に、断片分離部4において、ペプチド断片を種類毎に分離して分取する(ステップS4)。例えば図4(b)の例では、4種のペプチド断片がそれぞれ別々のサンプルとして調製される。
こうして調製された一種のペプチド断片を含むサンプルに対しそれぞれ質量分析計5により質量分析を実行する。そうして得られたマススペクトルデータは解析処理部6に送られ、マススペクトルデータ記憶部61に格納される。質量情報取得部62はペプチド断片毎にマススペクトルデータ記憶部61からデータを読み出し、マススペクトルを作成してピーク検出を実行する。そして、検出されたピークの中の分子イオンピークを抽出し、その質量電荷比に基づいてペプチド断片の質量を取得する(ステップS5)。一種のポリペプチド由来の多数のペプチド断片について、同様に質量分析結果に基づいて質量を取得する。
一方、ペプチド断片化処理を行う前のポリペプチドについても質量分析計5により質量分析を実行する。そして、それによって得られたマススペクトルデータに基づいて、やはりポリペプチドの質量を取得する(ステップS6)。もちろん、このステップS6はステップ3以降ステップS8直前までの間のいずれのタイミングで実行してもよい。
各ペプチド断片の質量情報はアミノ酸組成推定部63へ送られ、アミノ酸組成推定部63はペプチド断片毎に、既知のアミノ酸の正確な質量情報を用いて、与えられた質量に対応するアミノ酸の種類と各アミノ酸の個数、つまりアミノ酸組成を推定する。ここでアミノ酸組成推定の精度を上げるには、質量分析計5の質量精度が高いほうがよく、そうした点で、質量分析計5は一般に高い質量精度が得られる飛行時間型質量分析装置であることが望ましい。なお、タンパク質の構成要素である20種類のアミノ酸のうち、ロイシンとイソロイシンとは質量電荷比が全く同一であるため、質量からは区別がつかない。そこで、これら二種のアミノ酸の質量に相当する物質が存在することが推定される場合には、ロイシン又はイソロイシンのいずれかであるとしてアミノ酸を同定すればよい。
図4(b)中に示したペプチド断片のアミノ酸配列の右方に、そのペプチド断片の質量から求まるアミノ酸組成を示している。例えば、アミノ酸配列が[GFFY]であるペプチド断片については、「アミノ酸F:2個、アミノ酸G:1個、アミノ酸Y:1個」というアミノ酸組成が求まり、アミノ酸配列が[FYTP]であるペプチド断片については、「アミノ酸F:1個、アミノ酸Y:1個、アミノ酸T:1個、アミノ酸P:1個」というアミノ酸組成が求まる。質量分析の結果から高い信頼性で以て求まるのは、このアミノ酸組成である。アミノ酸組成のみを求めれば十分である場合には、ペプチド断片毎に推定されたアミノ酸組成の情報を集約すればよい。アミノ酸配列の推定を試みる場合には、さらに以下の処理を実行する。
即ち、各ペプチド断片のアミノ酸組成が求まったならば、アミノ酸配列推定部64はそれぞれのアミノ酸組成から得られる全てのアミノ酸配列を導出する。図5(a)は図4(b)中のアミノ酸組成「F2G1Y1」から求まる全てのアミノ酸配列、図5(b)は図4(b)中のアミノ酸組成「F1Y1T1P1」から求まる一部のアミノ酸配列を示す図である。このように、一つアミノ酸組成から求まるアミノ酸配列候補の数はかなり多くなる。
上述したようにステップS3のペプチド断片化処理では、一つのポリペプチドに存在する結合が非選択的に、つまりは差別なく切断される。図6は図4(b)に示したペプチド断片化の一例を示す図である。アミノ酸配列が[GFFYTPK]であるポリペプチドの図中aの位置の結合が切断されると、アミノ酸配列が[GFFY]であるペプチド断片が生成される。同じアミノ酸配列が[GFFYTPK]であるペプチドの図中b及びcの位置の結合が切断されると、アミノ酸配列が[FYTP]であるペプチド断片が生成される。これら二つのペプチド断片において、アミノ酸配列[FY]は元のポリペプチドの同じ部位である。このように切断部位が非選択的である場合、或る一つのペプチド断片の一方の端部のアミノ酸配列(アミノ酸1個の場合も含む)と別の一つのペプチド断片の他方の端部のアミノ酸配列とが共通となり得る。ここでは、これを利用して、ペプチド断片に対するアミノ酸配列候補を結合させる。
図3はアミノ酸配列候補の結合方法の説明図である。即ち、アミノ酸配列候補を結合するには、一つのペプチド断片から推定されたアミノ酸配列候補の一方の端部のアミノ酸配列と一致する、つまりオーバーラップ部が存在するアミノ酸配列候補を、別のペプチド断片から推定されたアミノ酸配列候補の中で探索する。そして、オーバーラップ部が存在したならば、そのオーバーラップ部をいわば「糊代」として二つの部分アミノ酸配列候補を結合し、それらよりも長い配列を有する新たなアミノ酸配列候補を生成する。原理的には、このような結合を繰り返すことでアミノ酸配列を延ばしてゆく。
図7は図6に示したペプチド断片の結合処理の説明図である。一つのペプチド断片に対応するアミノ酸配列候補の一つである[GFFY]と別のペプチド断片に対応するアミノ酸配列候補の一つである[FYTP]とを照合したとき、前者の右端部と後者の左端部にある配列FYが共通していることが分かるから、これを糊代として両者を結合し、新たな[GFFYTP]というアミノ酸配列の候補を得ることができる。もちろん、こうした結合の段階ではこれが正しい解であるか否かは分からない。
図8は、図5(a)に示したアミノ酸組成「F2G1Y1」に対応する最初の三個のアミノ酸配列候補と、図5(b)に示したアミノ酸組成「F1P1T1Y1」に対応する全てのアミノ酸配列候補との組み合わせを試み、オーバーラップ部を介した結合により生成されたアミノ酸配列を示す図である。原理的には、こうした結合を繰り返してアミノ酸配列を延ばしてゆくことで、最終的に元のペプチドに対する正解つまり正しいアミノ酸配列を含む複数のアミノ酸配列候補を得ることができる可能性がある。
ただし、上記のようにオーバーラップ部を見つけて単に配列を結合するだけでは、配列候補の数が膨大になる。例えばペプチド断片の長さがアミノ酸5個分でアミノ酸が全て異なる種類であるとすると、アミノ酸配列候補の数は5!=120である。このようなペプチド断片を例えば5個結合させるとすると、アミノ酸配列候補の数は最大1205となってしまい、これは明らかに処理可能な範囲を超えている。そこで、候補の数を絞るように又はあまり増やさないように、枝刈り作業を行いつつ結合処理を行うようにするとよい。
枝刈り作業の具体例を説明する。いま、アミノ酸組成が「F2G1Y1」であるアミノ酸配列候補とアミノ酸組成が「F1P1T1Y1」であるアミノ酸配列とを結合する場合、両者に共通するのはF1個とY1個である。したがって、両者の糊代となり得るのは、たかだかこの2個のアミノ酸のみである。したがって、実際に糊代となる可能性があるのは、F1個のみ、Y1個のみ、又はFとYが1個ずつ、三つのケースのいずれかである。例えば、いまF1個のみが糊代であるとすると、両ペプチド断片に含まれるY1個はそれぞれオーバーラップ部でない別々のYであるということになる。これが結合により得られるアミノ酸配列の制約条件となる。こうした制約条件を課して結合後のアミノ酸配列候補を絞ると、それら三つの場合に結合によって生成されるアミノ酸配列に対応するアミノ酸組成はそれぞれ「F2G1P1T1Y2」、「F3G1P1T1Y1」、「F2G1P1T1Y1」であることが判明する。実際に、図8に示した例では全てのアミノ酸配列は、これらいずれかのアミノ酸組成である。
こうした制約条件を課した枝切り作業によって、配列結合処理部65での計算量を大幅に減らすことができ、最終的に、全てのペプチド断片を結合した又は全てのペプチド断片が矛盾なく含まれるいくつかのアミノ酸配列候補を得ることができる(ステップS7)。こうして得られたアミノ酸配列候補が配列結果検証部66に送られる。
配列結果検証部66には、ステップS6の処理で得られたポリペプチドの実測質量も質量情報取得部62から入力される。配列結果検証部66は上記のように入力された複数のアミノ酸配列候補のそれぞれについて、含まれるアミノ酸の種類と個数とに基づいて質量を計算する。そして、この計算された質量とポリペプチドの実測質量とを比較する。アミノ酸配列候補が正解であれば実測質量との差は理想的にはゼロとなる(実際には質量分析計5の質量精度等に起因する誤差の範囲内となる)筈である。そこで、例えば多数のアミノ酸配列候補の中で実測質量との差が最も小さくなるものを探索し、これが正解のアミノ酸配列であると判断して選択する(ステップS8)。或いは、唯一のアミノ酸配列に絞るのではなく、実測質量との差が所定値以内に収まるものを全て抽出して、可能性の高いアミノ酸配列としてもよい。
ステップS2で分取されたポリペプチド毎に、ステップS3〜S8の処理を実行することで、各ポリペプチドに対する1又は複数のアミノ酸配列を求める。それが得られたならば、表示処理部67はその結果を表示部8を通して出力する。なお、アミノ酸配列の推定を試みても例えば計算量が膨大になりすぎる等の理由によって結果が出ない又は適切な結果が得られない場合には、ペプチドのアミノ酸組成のみを出力すればよい。
以上のようにして、図2に示したアミノ酸配列解析システムで実施されるアミノ酸配列解析方法によれば、従来一般に行われている酸加水分解などの煩雑で面倒であり、さらに時間を要する前処理ではなく、簡便で時間も掛からない断片化処理を行うことで、分析対象の試料に由来するポリペプチドのアミノ酸組成を的確に求めることができ、さらにはそのアミノ酸配列も推定することが可能となる。
なお、上記実施例のアミノ酸配列解析システムにおいて配列結合処理部65で実行される処理は、本願出願人が先行して出願した特願2012−198301号に記載の技術の一部を利用したものである。
なお、上記実施例は、本発明に係る分析方法の最大の特徴である配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチドの分解の特性を活かしてアミノ酸組成の推定だけでなくアミノ酸配列の推定まで行うようにしたものであるが、一般的には、アミノ酸組成を精度良く推定すれば十分であることも多い。また、上述したように、従来の酸加水分解によるペプチドの分解に代えて配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチドの分解を採用することで、検出可能なアミノ酸の種類の増加(つまりはアミノ酸組成推定精度の向上)、作業者の負担軽減などを実現することができるから、例えば図9で説明したような分析手順においてステップS51の処理を配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチド分解に置き換えても従来手法に比べて大きな利点がある。
即ち、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加等を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…タンパク質消化処理部
2…ペプチド分離部
3…ペプチド断片化処理部
4…断片分離部
5…質量分析計
6…解析処理部
61…マススペクトルデータ記憶部
62…質量情報取得部
63…アミノ酸組成推定部
64…アミノ酸配列推定部
65…配列結合処理部
66…配列結果検証部
67…表示処理部
7…入力部
8…表示部

Claims (9)

  1. タンパク質又はペプチドのアミノ酸配列を求めるタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    a)配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチド結合の切断により、分析対象であるペプチド又はタンパク質由来のペプチドを分解する断片化ステップと、
    b)前記断片化ステップにより得られたペプチド断片の混合物を同一種類のペプチド断片毎に分離して収集する分離ステップと、
    を有し、前記分離ステップにより分離・収集された各ペプチド断片のアミノ酸配列の端部における配列の共通性を利用して断片化前のペプチドのアミノ酸配列を推することを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  2. 請求項1に記載のタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    前記断片化ステップでは分析対象であるペプチド又はタンパク質由来のペプチドをそのアミノ酸配列長が当該ペプチドよりも短いオリゴペプチドに分解し、
    前記分離ステップではそのオリゴペプチドの混合物を分離して同一種類毎にオリゴペプチドを収集し、さらに、
    前記分離ステップにより分離された各オリゴペプチドに対しそれぞれ質量分析を行うことでマススペクトルデータを取得し、該マススペクトルデータに基づいて各オリゴペプチドのアミノ酸組成を推定する断片組成推定ステップ、を有し、
    各オリゴペプチドのアミノ酸組成推定結果に基づいて断片化前のペプチドのアミノ酸組成又はアミノ酸量を求めることを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  3. 請求項に記載のタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    前記断片組成推定ステップにより推定された各オリゴペプチドのアミノ酸配列に基づき、複数のアミノ酸配列の端部における配列の共通性を利用して異なるオリゴペプチドを連結することにより、被検ペプチドのアミノ酸配列を推定する配列推定ステップを、さらに有することを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  4. 請求項に記載のタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    前記断片化ステップで断片化される前のペプチドに対し質量分析を行うことでマススペクトルデータを取得し、該マススペクトルデータに基づいて該ペプチドの質量を求めるペプチド情報収集ステップをさらに有し、
    前記配列推定ステップでは、推定されたペプチドのアミノ酸配列から求まる該ペプチドの質量と前記ペプチド情報収集ステップにより求まるペプチドの質量とを照合して、アミノ酸配列の推定の適否を判定することを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    前記配列非特異的エンドペプチダーゼとしてプロテイナーゼKを用いることを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    前記断片化ステップでは、常温よりも高い所定の加温条件の下で配列非特異的エンドペプチダーゼを被検ペプチドに作用させることを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    前記断片化ステップでは、超音波を補助的に利用して被検ペプチドの断片化を促進させることを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質又はペプチドの分析方法であって、
    前記断片化ステップの前に、分析対象であるペプチド又はタンパク質の結合を切断してアミノ酸配列長を制限したポリペプチドを得る事前切断ステップと、
    該事前切断ステップにより得られたポリペプチドの混合物を分離して同一種類毎にポリペプチドを収集する事前分離ステップと、
    を実行し、該事前分離ステップにより分離されたポリペプチド毎に、前記断片化ステップ以降の処理を実行することを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析方法。
  9. 質量分析を利用してタンパク質又はペプチドのアミノ酸配列を求めるタンパク質又はペプチドの分析装置であって、
    a)配列非特異的エンドペプチダーゼを用いたペプチド結合の切断により、ペプチド又はタンパク質由来のペプチドをそのアミノ酸配列長が当該ペプチドよりも短いオリゴペプチドに分解する断片化処理部と、
    b)前記断片化処理部により得られたオリゴペプチドの混合物を分離して同一種類毎にオリゴペプチドを収集する分離部と、
    c)前記分離部により分離された各オリゴペプチドに対しそれぞれ質量分析を行うことでマススペクトルデータを取得する質量分析部と、
    d)前記質量分析部により得られたマススペクトルデータに基づいて各オリゴペプチドのアミノ酸組成を推定する断片組成推定部と、
    を備え、前記断片組成推定部による各オリゴペプチドのアミノ酸組成から導出されるアミノ酸配列の端部における配列の共通性を利用して断片化前のペプチドのアミノ酸配列を求めることを特徴とするタンパク質又はペプチドの分析装置。
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