以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図6は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1、図2および図4〜図6は、光学デバイスおよびパネル部材を示す縦断面図である。図3は、パネル部材の光学シートを示す斜視図である。なお、図1、図2および図4〜図6の断面図は、図3におけるX−X線に沿った断面を示している。
なお、以下に説明する本実施の形態による光学デバイス10およびパネル部材20は、例えば照明装置として用いられる。パネル部材20は、壁材として用いられ、光源15からの光の進行方向を変更するようになっている。
とりわけ、このパネル部材20は、後述するように、二以上の方向に沿って入射する光の少なくとも一部分を、それぞれ、所望の方向に反射することができる。そして、照明装置としての光学デバイス10は、光源15からパネル部材20の種々の位置に投射された光の一部分を、パネル部材20での反射により、所定の位置に向けて進むようにする。例えば、光源光の一部分が、パネル部材20の各位置での反射によって、特定の領域または位置に向けて進むようになれば、光源15から投射される全光量を増加させることなく、所望された配光での照明を実現することができる。すなわち、光学デバイス10およびパネル部材20によれば、光源15からの光を有効に利用することによって、省エネルギを実現することも可能となる。
しかしながら、以下の説明は一例に過ぎず、光学デバイス10およびパネル部材20を、照明装置以外の用途、例えば、発光可能な天井材、床材や、情報を表示するための表示装置等の用途に用いることも可能である。とりわけ、光学デバイス10が表示装置として用いられる場合には、パネル部材20の各位置に異なる入射方向から入射する光源光を、パネル部材20によって、当該表示装置の観察者の位置に向けることができれば、非常に好ましい。この場合、光源の出力を増大させることなく、言い換えると、光源光の有効利用を図ることにより、観察者に感知される映像の明るさを効果的に向上させることができる。
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。一具体例として、「光制御シート」には、「光制御フィルム」や「光制御板」等と呼ばれる部材も含まれ、「光反射シート」には、「光反射フィルム」や「光反射板」等と呼ばれる部材も含まれる。
また、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。以下に説明する実施の形態においては、パネル部材20のパネル面、後述する光反射シート30のシート面、後述する光制御シート40のシート面、光制御シート40の第1面41、本体部50のシート面、本体部50の第1面51および本体部50の第2面52は、互いに並行となっている。
さらに、本明細書において、「パネル部材の法線方向」とは、パネル部材20のパネル面への法線方向のことを指す。したがって、以下に説明する実施の形態においては、パネル部材20の法線方向は、光反射シート30の法線方向(光反射シート30のシート面への法線方向)、光制御シート40の法線方向(光制御シート40のシート面への法線方向)、光制御シート40の第1面41の法線方向、本体部50の法線方向、本体部50の第1面51の法線方向および本体部50の第2面52の法線方向と平行となる。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「四角形」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差を含めて解釈することとする。
以下、本実施の形態による光学デバイス10およびパネル部材20の構成および作用効果について詳述していく。図1および図2に示すように、光学デバイス10は、パネル部材(パネル部材)20と、パネル部材20に光を投射する光源15と、を有している。パネル部材20は、互いに対向して配置された第1面41および第2面42を有する光制御シート40と、光制御シート40の第2面42に対向して配置された光反射シート30と、を有している。
図1に示す例において、パネル部材20は、建物の室内における壁材として設けられ、パネル部材20のパネル面が鉛直方向に延びるように配置されている。一方、光源15は、建物の室内における天井に取り付けられている。このため、図1に示すように、光源15から投射される光は、パネル部材20の各位置に対して、パネル部材20の法線方向に対して一方の側に傾斜した方向から入射するようになる。ただし、パネル部材20の各位置に入射する光の進行方向は、光源15からの距離に応じて変化し、一定ではない。光学デバイス10の光源15として、種々の光源、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯、点状のLED(発光ダイオード)、白熱電球等を用いることができる。
次に、パネル部材20について説明する。上述したように、パネル部材20は、対向して配置された第1面41および第2面42を有する光制御シート40と、光制御シート40の第2面42に対向して配置された光反射シート30と、を有している。図2に示すように、光反射シート30は、パネル部材20の法線方向ndにおいて、光制御シート40を中心として光源15および観察者がいる室内空間とは逆側に配置されている。したがって、図2に示すように、光源15からの光L24,L25は、光制御シート40を透過して光反射シート30へ入射するようになる。
図示された例において、光反射シート30は、光制御シート40に接続している。なお、ここでいう接続とは、光反射シート30が光制御シート40に接合されている必要はなく、光反射シート30が光制御シート40に接触しているだけでもよい。光反射シート30は、入射光を反射する反射機能を有したシート状の部材である。光反射シート30の反射特性は、拡散反射でもよく鏡面反射でもよい。また、光反射シート30の反射特性が拡散反射である場合には、拡散特性は、等方拡散でもよいし指向性拡散でもよい。したがって、光反射シート30として、種々の反射シートを用いることができるが、本実施の形態では、等方拡散反射機能を有した白色樹脂シートを用いた例とする。
なお、本実施の形態のように、パネル部材20を壁材として用いる場合、光反射シート30の光制御シート40に対面する側の表面に、絵柄が形成されていてもよい。光反射シート30に形成される絵柄として、パネル部材20が設けられている部屋の他の壁部と同様の絵柄、一具体例として、木目調の絵柄を採用することができる。また、意匠性を有した絵柄、一具体例として、絵画調の絵柄を採用することもできる。なお、本明細書で用いる絵柄とは、特定の情報を示す又は特定の情報を意味するものに限られることなく、図形、文字、模様、パターン、記号、柄、マーク、色彩等、特に限定されることなく広く含む。
次に、光制御シート40について説明する。図1〜図6に示すように、シート状の本体部50と、光制御シート40のシート面と平行に本体部50上を延びる第1方向d1に沿って本体部50上に配列された複数の単位要素60と、を有している。
本体部50は、単位要素60を支持する層であり、適度な強度および適度な透明性を有するように、適宜構成される。本体部50は、互いに平行な一対の主面として、第1面51および第2面52を有している。単位要素60は、本体部50の第2面52上に設けられている。一方、本体部50の第1面51は、光制御シート40の第1面41を形成する。光制御シート40の第1面41(本体部50の第1面51)は、観察者がいる室内の側を向く面であり、光源15から投射された光がパネル部材20へ入射する入射面を形成する。また、光制御シート40の第1面41(本体部50の第1面51)は、光源15からの光の進行方向を変更して当該光をパネル部材20から出射させる際の出射面としても機能する。本実施の形態のように、パネル部材20が壁材として用いられる場合には、つや消し処理として、本体部50の第1面51(光制御シート40の第1面41)が、光拡散機能を発現する凹凸を含んだ粗面またはマット面として構成されていてもよい。
一例として、本体部50の厚さを20μm〜200μmとすることができ、このような本体部50は、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを含んで構成され得る。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、適度な透明性と、紫外線照射処理や加熱処理等に対する耐久性と、を有している点で、本体部50としての適用に好適である。
次に、本体部50の第2面52上に設けられた複数の単位要素60について説明する。図3によく示されているように、各単位要素60は、第1方向d1と非平行な方向に線状に延びている。とりわけ本実施の形態では、複数の単位要素60は、第1方向d1に一定のピッチで隙間をあけることなく配列されている。また、図3によく示されているように、各単位要素60は、第1方向d1に直交してパネル部材20のパネル面(光制御シート40のシート面)と平行に延びる第2方向d2に沿って、直線状に延びている。加えて、各単位要素60は、柱状に形成され、その長手方向に沿って同一の断面形状を有するようになっている。さらに、本実施の形態において、複数の単位要素60は、互いに同一に構成されている。
第1方向d1に配列された各単位要素60は、第1方向d1における一側に配置された第1傾斜面61と、第1方向d1における他側に配置された第2傾斜面62と、を有している。図2によく示されているように、各単位要素60の第1傾斜面61および第2傾斜面62は、光制御シート40の第2面42を形成している。したがって、光制御シート40の第2面42は、第1方向d1に交互に配列された第1傾斜面61および第2傾斜面62を有している。そして、複数の第1傾斜面61は、互いに平行となるように配置され、複数の第2傾斜面62は、互いに平行となるように配置されている。
光制御シート40のシート面への法線方向ndと第1方向d1との両方に平行な断面(以下において、光制御シートの主切断面とも呼ぶ)において、すなわち図2および図4〜図6に示す断面において、第1傾斜面61および第2傾斜面62は、光制御シート40のシート面への法線方向ndに関して逆方向に傾斜している。より具体的には、光制御シートの主切断面において、第1傾斜面61は、本体部50の側から光反射シート30の側へ向けて第1方向d1における一側から他側へと傾斜し、第2傾斜面62は、本体部50の側から光反射シート30の側へ向けて第1方向d1における他側から一側へと傾斜している。
光制御シートの主切断面において、一つの単位要素60の第1傾斜面61および第2傾斜面62は、本体部50の側から光反射シート30の側へ向けて、接近していく。なお、ここでいう「接近していく」とは、第1方向d1における一側に位置する第1傾斜面61と、第1方向d1における他側に位置する第2傾斜面62とが、パネル部材20の法線方向ndに沿って光反射シート30の側へ向け、絶えず接近し続けていく必要はなく、一部において、その間隔が一定となっていてもよい。すなわち、「接近していく」とは、一側に位置する第1傾斜面61と、他側に位置する第2傾斜面62とが、光反射シート30の側へ向けて離間することがないことを意味している。
図示された例において、第1傾斜面61は、平坦面ではなく、折れ面として形成されている。したがって、第1傾斜面61が、光制御シートの主切断面において、光制御シート40のシート面に対してなす傾斜角度θa(すなわち、光制御シート40のシート面に対する第1傾斜面61の傾斜角度θa)は、当該一つの第1傾斜面61内において、一定ではなく、変化する。図5によく示されているように、第1傾斜面61の傾斜角度θaは、本体部50の側よりも光反射シート30の側において、小さくなるように変化することが、後述する作用効果を奏する上で好ましい。言い換えると、図示された例においては、第1傾斜面61の傾斜角度θaが、第1方向d1における一側よりも他側において、小さくなるように変化することが好ましい。
図示された例において、第1傾斜面61は、二つの平坦面からなる折れ面として形成されている。図5に示すように、第1傾斜面61は、第1方向d1における一側に位置し且つ法線方向において本体部50の側に位置する基端側第1傾斜面61aと、第1方向d1における他側に位置し且つ法線方向において光反射シート30の側に位置する先端側第1傾斜面61bと、を含んでいる。そして、基端側第1傾斜面61aでの傾斜角度θa1は、先端側第1傾斜面61bでの傾斜角度θa2よりも大きくなっている。
ただし、第1傾斜面61は、図5に示された例に限られず、曲面として形成されていてもよいし、平坦面と曲面との組み合わせとして形成されていてもよいし、曲面と折れ面との組み合わせとして形成されていてもよい。すなわち、傾斜角度θaは、図5に示すように段階的に変化するようにしてもよいし、一例として図7に示すように、少なくとも一部分において連続的に変化するようにしてもよい。なお、光制御シートの主切断面において、第1傾斜面61の曲線状に形成された部分における傾斜角度は、図7に示すように、第1傾斜面61の当該部分への接線TLが、光制御シート40のシート面に対してなす角度とする。
同様に、図示された例において、第2傾斜面62は、平坦面ではなく、折れ面として形成されている。したがって、第2傾斜面62が、光制御シートの主切断面において、光制御シート40のシート面に対してなす傾斜角度θb(すなわち、光制御シート40のシート面に対する第2傾斜面62の傾斜角度θb)は、当該一つの第2傾斜面62内において、一定ではなく、変化する。図6によく示されているように、第2傾斜面62の傾斜角度θbは、本体部50の側よりも光反射シート30の側において、小さくなるように変化することが、後述する作用効果を奏する上で好ましい。言い換えると、図示された例においては、第2傾斜面62の傾斜角度θbが、第1方向d1における他側よりも一側において、小さくなるように変化することが好ましい。
図示された例において、第2傾斜面62は、二つの平坦面からなる折れ面として形成されている。図5に示すように、第2傾斜面62は、第1方向d1における他側に位置し且つ法線方向において本体部50の側に位置する基端側第2傾斜面62aと、第1方向d1における一側に位置し且つ法線方向において光反射シート30の側に位置する先端側第2傾斜面62bと、を含んでいる。そして、基端側第2傾斜面62bでの傾斜角度θb1は、先端側第2傾斜面62bでの傾斜角度θb2よりも大きくなっている。
ただし、第2傾斜面62は、第1傾斜面61と同様に、曲面として形成されていてもよいし、平坦面と曲面との組み合わせとして形成されていてもよいし、曲面と折れ面との組み合わせとして形成されていてもよい。すなわち、傾斜角度θbは、図5に示すように段階的に変化するようにしてもよいし、一例として図7に示すように、少なくとも一部分において連続的に変化するようにしてもよい。なお、光制御シートの主切断面において、第2傾斜面62の曲線状に形成された部分における傾斜角度は、第1傾斜面61と同様に、第2傾斜面62の当該部分への接線TLが、光制御シート40のシート面に対してなす角度とする。
加えて、光制御シートの主切断面において、光制御シート40のシート面に対する第1傾斜面61の傾斜角度θaの値の大きさ(すなわち、光制御シートのシート面に対する第1傾斜面61の傾斜角度θaの値の絶対値)は、光制御シートのシート面に対する第2傾斜面62の傾斜角度θbの値の大きさ(すなわち、光制御シートのシート面に対する第2傾斜面62の傾斜角度θbの値の絶対値)と、異なっている。図2によく示されているように、光制御シート40のシート面に対する第1傾斜面61の傾斜角度θaの値の大きさは、光制御シートのシート面に対する第2傾斜面62の傾斜角度θbの値の大きさよりも、小さくなっている。
図示された例では、上述したように一つの第1傾斜面61内において傾斜角度θaの値の大きさが変化し、また、一つの第2傾斜面62内における傾斜角度θbの値の大きさが変化する。そして、図示された例では、第1傾斜面61内のすべての位置における傾斜角度θaが、第2傾斜面62内のいずれの位置についての傾斜角度θbの値の大きさよりも、小さくなっている。
なお、後述する作用効果を確保する観点からは、光制御シートの主切断面での第1傾斜面61が光制御シートのシート面に対してなす角度θaが、一つの第1傾斜面61の少なくとも一部分において、次の条件(a)を満たし、且つ、光制御シートの主切断面での第2傾斜面62が光制御シートのシート面に対してなす角度θbが、一つの第2傾斜面62の少なくとも一部分において、次の条件(b)を満たす、ことが好ましい。また、光制御シートの主切断面において、第1傾斜面61の両端部を結ぶ線分66が、光制御シートのシート面に対してなす角度θaxが、条件(a)を満たし、且つ、光制御シートの主切断面において、第2傾斜面62の両端部を結ぶ線分67が、光制御シートのシート面に対してなす角度θbxが、条件(b)を満たすことが、より好ましい。すなわち、光制御シートの主切断面において線分66が光制御シートのシート面に対してなす角度θaxを条件(a)におけるθaの値として、条件(a)が満たされ、且つ、光制御シートの主切断面において線分67が光制御シートのシート面に対してなす角度θbxを条件(b)におけるθbの値として、条件(b)が満たされることが、より好ましい。さらに、第1傾斜面61内のすべての位置における傾斜角度θaが条件(a)を満たし、且つ、第2傾斜面62内のすべての位置における傾斜角度θbが条件(b)を満たすことが、さらにより好ましい。
(cos−1(1/n))/2 ≦ θa ≦ 45° ・・・(a)
(cos−1(1/n))/2 ≦ θb ≦ cos−1(1/n) ・・・(b)
なおここでいう、第1傾斜面61、第2傾斜面62、線分67及び線分67が、光制御シートのシート面に対してなす角度θa,θb,θax,θbxとは、光制御シートの主切断面において、第1傾斜面61、第2傾斜面62、線分67又は線分67と光制御シートのシート面とによってなされる二つの角のうちの小さい方の角の角度の大きさのことを指す。したがって、角度θa,θbは、0°以上90°以下の値をとる。また、条件(a)および条件(b)において、「n」は、単位要素60の屈折率である。
図1〜図6に示された例では、各単位要素60は、第1傾斜面61と第2傾斜面62との間に配置された平坦面63をさらに有している。平坦面63は、第1傾斜面61と第2傾斜面62とを連結している。図2〜図6によく示されているように、光制御シート40の第2面42は、本体部50の第2面52上に隙間無く配列された単位要素60の第1傾斜面61、第2傾斜面62及び平坦面63によって形成されている。
また、図2によく示されているように、平坦面63は、光反射シート30の光制御シート40側の表面と平行になっている。そして、本実施の形態において、光制御シート40は、平坦面63を介して、反射シート30と接続している。
図2によく示されているように、第1方向d1に隣り合う二つの単位要素60と光反射シート30との間には、空隙70が形成されている。すなわち、第1傾斜面61は、光制御シート40と空隙70との界面を形成しており、また、第2傾斜面62は、光制御シート40と空隙70との界面を形成している。第1傾斜面61および第2傾斜面62は、後述するように、少なくとも一部の入射光に対して反射面として機能する。
以上のような構成を有した光制御シート40の寸法は、一例として、以下のように設定され得る。まず、単位要素60の具体例として、光制御シート40のシート面に沿った第1傾斜面61の長さW1(図2参照)を0.1mm以上1.0mm以下とし、光制御シート40のシート面に沿った第2傾斜面62の長さW2(図2参照)を0.002mm以上0.3mm以下とし、光制御シート40のシート面に沿った平坦面63の長さW3(図2参照)を0.02mm以上0.5mm以下とすることができる。また、光制御シートのシート面に対する第1傾斜面61の傾斜角度θa(図2参照)の値の大きさを23°以上30°以下の角度とすることができる。光制御シートのシート面に対する第2傾斜面62の傾斜角度θb(図2参照)の値の大きさを35°以上50°以下の角度とすることができ、より好ましくは、光制御シートのシート面に対する第2傾斜面62の傾斜角度θb(図2参照)の値の大きさを40°以上45°以下の角度とすることができる。さらに、本体部50の厚みを、0.02mm以上1.0mm以下とすることができる。
また、以上のような光制御シート40は、基材上に単位要素60を賦型することにより、作製することができる。基材として、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂からなるフィルムを用いることができる。基材上に賦型される材料として、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。この製造方法の一例において、本体部50が、基材のみから形成されるようにしてもよいし、基材と、基材上にシート状に賦型された樹脂部分と、から形成されるようにしてもよい。ただし、反応性樹脂を用いた賦型によって光制御シート40を作製することに限られず、押し出し成型や射出成型等のその他の製造方法によって光制御シート40を作製してもよい。
次に、以上のような構成からなる光学デバイス10およびパネル部材20の作用について説明する。ここでは、光学デバイス10を照明装置として用いた際における光学デバイス10およびパネル部材20の作用について説明する。
図1および図2に示す例において、パネル部材20は、単位要素60の配列方向となる第1方向d1が鉛直方向と平行となるようにして、配置され、第1方向d1における一側が鉛直方向の上側に位置し、第1方向d1における他側が鉛直方向の下側に位置している。したがって、光源15から投射される光L11〜L13、L21〜L25は、パネル部材20に向けて第1方向d1における一側から他側へ傾斜した方向から、パネル部材20の各位置へ入射する。
図2に示すように、パネル部材20に入射した光L21〜L25は、パネル部材20の最表面をなす本体部50へ第1面51の側から入射する。なお、図示は省略しているが、本体部50へ第1面51からなる光制御シート40の第1面41が凹凸を含んでいるため、パネル部材20への入射光は、或る程度、拡散する。同様に、パネル部材20からの出射光も、或る程度、拡散する。ただし、光制御シート40の第1面41(本体部50の第1面51)の凹凸はつや消しを目的としており、且つ、拡散が透過拡散であることから、拡散の程度は低い。
パネル部材20の光制御シート40へ入射した光L21〜L25は、本体部50から単位要素60へと進む。図2に示すように、単位要素60内を進む光L21〜L25は、その後、光制御シート40の第2面42へ入射する。第2面42は、互いに対して傾斜した第1傾斜面61、第2傾斜面62および平坦面63を含んでいる。そして、光源15からの光は、第2面42のうちのどの面61,62,63に入射するかに依存して、その後に第2面42から及ぼされる光学作用、並びに、その結果としての進行方向が異なるようになる。
まず、平坦面63に入射した光L25は、平坦面63に接続する光反射シート30において拡散反射することになる。この結果、平坦面63に入射した光L25は、光反射シート30の拡散能の程度に応じた角度域に拡散されて、パネル部材20が設置された室内に向けて進み出る。
なお、光反射シート30の拡散能が強い場合、光反射シート30で広角に拡散された光L25aは、第1傾斜面61および第2傾斜面62へ入射する。平坦面63の両側方に位置する第1傾斜面61および第2傾斜面62は、光反射シート30の側から本体部50の側へ向けて、第1方向d1においてしだいに広がっていく。このため、光反射シート30で広角に拡散された光L25aは、進行方向がパネル部材20の法線方向ndに対してなす角度が小さくなるように、第1傾斜面61または第2傾斜面62で反射、とりわけ空隙70と単位要素60との屈折率差に起因して全反射する。
この例によれば、光反射シート30の拡散能が、入射光の入射方向に起因した指向性を十分に消失させる程度に強く設定されていたとしても、平坦面63に入射した光L25が、パネル部材20の法線方向ndに対して大きく傾斜した方向に進みでることが効果的に防止することができる。すなわち、光源15からの光が有効に利用され得ない方向に出射することを抑制し、これにより、光源15からの光の有効利用を図り、省エネルギを実現することができる。
次に、第2傾斜面62に入射した光L24について検討する。図2によく示されているように、光源15から光制御シート40の本体部50へ入射した光L24の進行方向は、パネル部材20の法線方向ndに関して第2傾斜面62と逆側に傾斜している。すなわち、光源15から光制御シート40へ入射して本体部50内を進む光L24の進行方向は、本体部50の側から光反射シート30の側へ向けて第1方向d1における一側から他側へ傾斜する。その一方で、光制御シート40の主切断面において、第2傾斜面62は、本体部50の側から光反射シート30の側へ向けて第1方向d1における他側から一側へ傾斜している。したがって、本体部50内を進む光L24の第2傾斜面62への入射角度が小さくなる傾向が生じる。
このため、光源15から光制御シート40へ入射して本体部50内を進む光L24は、第2傾斜面62で全反射することなく、高い透過率で第2傾斜面62を透過する。この結果、第2傾斜面62に入射する光L24は、光反射シート30で拡散反射し、光反射シート30の拡散能の程度に応じた角度域に拡散されて、パネル部材20が設置された室内に向けて進み出る。
最後に、第1斜面61に入射した光L21〜L23について検討する。図2によく示されているように、光源15から光制御シート40の本体部50へ入射した光L21〜L23の進行方向は、パネル部材20の法線方向ndに関して第1傾斜面61と同じ側に傾斜している。すなわち、光制御シート40の主切断面において、第1傾斜面61は、光源15から光制御シート40へ入射して本体部50内を進む光L21〜L23の進行方向と同様に、本体部50の側から光反射シート30の側へ向けて第1方向d1における一側から他側へ傾斜している。したがって、光源15から光制御シート40へ入射して本体部50内を進む光L21〜23の、第1傾斜面61への入射角度は、非常に大きくなり、第1傾斜面61で全反射する。図2によく示されているように、第1傾斜面61で全反射した光は、その後に第2傾斜面62に向かい、第2傾斜面62でさらに全反射して、パネル部材20が設置された室内に向けて進み出る。
このようにして、光源15から光制御シート40の本体部50へ入射して第1傾斜面61へ向かう光L21〜L23は、第1傾斜面61及び第2傾斜面62での反射後にパネル部材20から出射して、室内を照明するようになる。第1傾斜面61および第2傾斜面62の傾斜角度θa,θbは、光源15から光制御シート40へ入射して第1傾斜面61で全反射した光L21〜23が、その後に第2傾斜面62へ入射して当該第2傾斜面62で全反射し、パネル部材20から室内へと進みでるように設計される。一例として、上述したように、好ましくは第1傾斜面61の少なくとも一部における傾斜角度θaが、より好ましくは第1傾斜面61の両端部を結ぶ線分66の傾斜角度θaxが、さらにより好ましくは第1傾斜面61のすべての部分における傾斜角度θaが条件(a)を満たし、且つ、好ましくは第2傾斜面62の少なくとも一部における傾斜角度θbが、より好ましくは第2傾斜面62の両端部を結ぶ線分67の傾斜角度θbxが、さらにより好ましくは第2傾斜面62のすべての部分における傾斜角度θbが条件(b)を満たすように、光制御シート40が設計されていることが好ましい。
(cos−1(1/n))/2 ≦ θa(またはθax) ≦ 45° ・・・(a)
(cos−1(1/n))/2 ≦ θb(またはθbx) ≦ cos−1(1/n)
・・・(b)
条件(a)および(b)が満たされる場合、光制御シート40の第1面41での拡散を無視すると、次に説明するように、光源15からパネル部材20に入射しその後に第1傾斜面61へと進む光の少なくとも一部が、当該第1傾斜面61で反射して第2傾斜面62に進み、第2傾斜面62で全反射した後、本体部50の第1面51(光制御シート40の第1面41)を通過して、パネル部材20が設置された室内に向けて進み出ることが可能となる。
まず、図1および図2に示すように、光源15から投射される光は、パネル部材20に向けて第1方向d1における一側から他側へ傾斜した方向から、パネル部材20の各位置へ入射する。したがって、パネル部材20へ入射する光の光制御シート40に対する入射する光の入射角度は、0°より大きく90°より小さくなる。このため、第1傾斜面61の光制御シート40のシート面への傾斜角度θaは、次の式(a1)を満たすように設計され得る。式(a1)は、0°以上90°以下のいずれかの入射角度で光制御シート40へ入射した光が、その後に第1傾斜面61で反射して、光制御シート40のシート面と平行な方向へ進むようになる条件である。なお、式(a1)中の「θr」は、図4に示すように、第1傾斜面61で反射して光制御シート40のシート面と平行な方向へ進むようになる光についての、光制御シート40へ入射時の屈折角である。
1×sin0°≦n×sin(θr)=n×cos(2×θa)≦1×sin90°
・・・(a1)
上述の条件(a)は、式(a1)を角度θaについてまとめると得られる。すなわち、条件(a)が満たされる場合、第1方向d1における一側から他側へ傾斜した方向から光源15からパネル部材20に向けて入射する光のいずれかの光が、第1傾斜面61で反射して、光制御シート40のシート面と平行な方向へ進み、これにより、第2傾斜面62に入射することが可能となる。
なお、光制御シートの主切断面において、第1傾斜面61の両端部を結ぶ線分66が光制御シートのシート面に対してなす角度θaxは、当該第1傾斜面61内における傾斜角度θaの大きさを表す代表値となる。したがって、この線分66の傾斜角度θaxが条件(a)におけるθaとして当該条件(a)が満たされる場合には、第1方向d1における一側から他側へ傾斜した方向に進んで光源15からパネル部材20に向けて入射する光が第2傾斜面62に入射する傾向が生じることになる。
なお、図2によく示されているように、光源15から光制御シート40の本体部50へ入射した光L21〜L23の進行方向は、パネル部材20の法線方向ndに関して第1傾斜面61と同じ側に傾斜している。そして、光学用途や建材用途において通常用いられている樹脂材料を用いて光制御シート40を作製した場合、式(a1)が満たされると、光源15から光制御シート40へ入射した光の第1傾斜面61での反射は、全反射となる。
次に、光制御シート40のシート面と平行な方向に進む光が、第2傾斜面62で全反射するための条件は、式(b1)で表される。また、光制御シート40のシート面と平行な方向に進んで第2傾斜面62へ入射し、その後に第2傾斜面62で全反射した光が、本体部50の第1面51で全反射しない条件は、式(b2)で示される。なお、式(b2)の検討において、本体部50の第1面51は、平滑面として仮定している。また、式(b2)中の「θi」は、図4に示すように、光制御シート40のシート面と平行な方向に進んで第2傾斜面62へ入射し、その後に第2傾斜面62で全反射した光が、本体部50の第1面51(光制御シート40の第1面41)へ入射する際の入射角度である。
n×cos(θb)≧1×sin90° ・・・(b1)
1×sin90°≧n×sin(θi)=n×cos(2×θb) ・・・(b2)
上述の条件(b)は、式(b1)および式(b2)を角度θbについてまとめると得られる。すなわち、条件(b)が満たされる場合、光制御シート40のシート面と平行な方向に進んで第2傾斜面62へ入射する光が、第2傾斜面62で全反射し、且つ、その後に本体部50の第1面51(光制御シート40の第1面41)で全反射することなく本体部50の第1面51を通過して、パネル部材20が設置された室内に向けて進み出ることが可能となる。
なお、光制御シートの主切断面において、第2傾斜面62の両端部を結ぶ線分67が光制御シートのシート面に対してなす角度θbxは、当該第2傾斜面62内における傾斜角度θbの大きさを表す代表値となる。したがって、この線分67の傾斜角度θbxが条件(b)におけるθbとして当該条件(b)が満たされる場合には、全体的な傾向として、光制御シート40のシート面と平行な方向に進んで第2傾斜面62へ入射する光が、第2傾斜面62で全反射し、且つ、その後に本体部50の第1面51で全反射することなく本体部50の第1面51を通過して、パネル部材20が設置された室内に向けて進み出る傾向が生じる。
ところで、図1によく示されているように、パネル部材20に入射する光源15からの光の入射方向は、パネル部材20上における入射位置に応じて、変化する。すなわち、パネル部材40の各位置へ入射する光L11〜L13の入射方向がパネル部材20の法線方向ndに対してなす角度θx、いわゆる入射角度θxは、光源15とパネル部材20上における入射位置との間の第1方向d1に沿った距離に応じて変化する。具体的には、図1に示すように、パネル部材20への入射位置が第1方向d1に沿って光源15から離間するに連れて、光源15から投射された光のパネル部材20への入射角度θxは、大きくなっていく。
ただし、光源15からの光の入射方向が変化したとしても、光制御シート40の本体部50内を第2傾斜面62および平坦面63に向けて進む光L24,L25は、光反射シート30で拡散反射される。このため、パネル部材20の各位置に入射する光の入射方向の相違は、光反射シート30での拡散反射によって、キャンセルされる。したがって、このような光のパネル部材20から室内に向けた出射方向は、パネル部材20上における各位置において概ね同様となる。
その一方で、光制御シート40の本体部50内を第1傾斜面61に向けて進む光L11〜L13、L21〜L23は、第1傾斜面61での反射、および、第1傾斜面61での反射後の第2傾斜面62での反射によって、室内に向けて出射するようになる。このため、これらの光L11〜L13、L21〜L23は、入射方向の相違に応じて、出射方向も相違する。具体的には、パネル部材20の法線方向ndに対して第1方向d1における一側に傾斜する角度を正の値とするとともに、パネル部材20の法線方向ndに対して第1方向における他側に傾斜する角度を負の値とすると、入射角度θxの値が大きければ、出射角度(パネル部材40の各位置から出射する光L11〜L13、L21〜L23の出射方向がパネル部材20の法線方向ndに対してなす角度)θyの値も大きくなる。
図1に示す例では、パネル部材20の第1方向d1における一側の位置にてパネル部材20に入射し、その後に第1傾斜面61および第2傾斜面62で反射する光L11は、すなわち、図2における比較的小さな値の入射角度θxでパネル部材20に入射し、その後に第1傾斜面61および第2傾斜面62で反射する光L21は、第1方向d1における他側に傾斜して室内に進み出る。その一方で、パネル部材20の第1方向d1における他側の位置にてパネル部材20に入射し、その後に第1傾斜面61および第2傾斜面62で反射する光L13は、すなわち、図2における比較的大きな値の入射角度θxでパネル部材20に入射し、その後に第1傾斜面61および第2傾斜面62で反射する光L23は、第1方向d1における一側に傾斜して室内に進み出る。
とりわけ図示された例では、第1傾斜面61および第2傾斜面62で反射する光L11〜L13、L21〜L23は、パネル部材20の第1方向d1における位置によらず、室内の特定の領域または位置に向けて、例えば、室内の中央となる領域に向けて出射するようになっている。このような光L11〜L13、L21〜L23を用いた照明によれば、光源15からの光が室内の照明に有効に利用されにくい方向へ出射することを効果的に防止することができる。すなわち、本実施の形態によれば、種々の方向に沿ってパネル部材20の各位置に入射した光源15からの光のうち、その後に第1傾斜面61へ向かう光を、それぞれ、第1傾斜面61および第2傾斜面62で所望の方向に反射することができる。具体的には、第1傾斜面61および第2傾斜面62での反射によって、室内の明るさ上昇に有効に寄与し得る方向へ向けて、光源15からの光を出射させることができる。これにより、光源15からの光の有効利用を図り、省エネルギを実現することができる。
なお、種々の方向に沿ってパネル部材20の各位置に入射する光源15からの光のうち、その後に第1傾斜面61へ向かう光の割合は、光制御シート40のシート面に沿った第1傾斜面61の幅W1、第2傾斜面62の幅W2および平坦面63の幅W3を調節することにより、増減させることができる。一例として、光制御シート40のシート面に沿った第1傾斜面61の幅W1の割合を増加させることによって、及び/又は、光制御シート40のシート面に沿った平坦面63の幅W3の割合を減少させることによって、パネル部材20への入射後に第1傾斜面61へ向かう光の割合を増加させることができる。また、光制御シート40のシート面に沿った第1傾斜面61の幅W1の割合を減少させることによって、及び/又は、光制御シート40のシート面に沿った平坦面63の幅W3の割合を増加させることによって、パネル部材20への入射後に第1傾斜面61へ向かう光の割合を減少させることができる。
ところで、上述したように、図示された例において、第1傾斜面61が、光制御シートの主切断面において、光制御シート40のシート面に対してなす角度θaは、当該一つの第1傾斜面61内において、一定ではない。図5によく示されているように、第1傾斜面61の傾斜角度θaは、本体部50の側よりも光反射シート30の側において、小さくなるように変化している。
図5では、同一の方向に進んで、その後に、第1傾斜面61のうちの異なる傾斜角度θaの部分に入射した光L51,L52の光路が、示されている。図5に示すように、同一の方向から第1傾斜面61へ入射する場合、より大きな傾斜角度θa1の基端側第1傾斜面61aへ入射した光L51は、より小さな傾斜角度θa2の先端側第1傾斜面61bへ入射した光L52と比較して、その進路を大きく変化させない。言い換えると、より小さな傾斜角度θa2の先端側第1傾斜面61bへ入射した光L52は、比較的大きく進路を変更されて、本体部50側へ、すなわち、パネル部材20の出光面となる本体部50の第1面51(光制御シート40の第1面41)へと向かいやすくなる。
したがって、より小さな傾斜角度θa2の先端側第1傾斜面61bが、光制御シート40の法線方向ndにおける光反射シート30の側に位置し、より大きな傾斜角度θa1の基端側第1傾斜面61aが、光制御シート40の法線方向ndにおける本体部50の側に位置するようにしておけば、第1傾斜面61で反射した光が、その後に、第2傾斜面62に入射しやすくなる。言い換えると、第1傾斜面61の傾斜角度θaは、第1方向d1における一側よりも他側において、小さくなるように変化する場合、第1傾斜面61で反射した光が、その後に、第2傾斜面62に入射することなく、パネル部材20の出光面となる本体部50の第1面51(光制御シート40の第1面41)へ進むことを効果的に防止することができる。
この結果、第1傾斜面61の傾斜角度θaが、光制御シート40の法線方向ndにおける本体部50側よりも光反射シート30側において、小さくなるように変化する場合、光源15からパネル部材20の光制御シート40へ入射する光のより多くが、まず第1傾斜面61で反射し、次に第2傾斜面62で反射し、その後、パネル部材20から出射するようになる。これにより、二以上の方向に沿って入射する光の少なくとも一部分を、それぞれ、所望の方向に向ける、より具体的には、光源15からパネル部材20の各位置に入射する光を、所望の位置に向けるという上述した作用効果がより安定して発揮されることになる。
次に、第2傾斜面62の傾斜角度θbの変化について説明する。上述したように、パネル部材20の第1方向d1における一側となる領域に入射する光源15からの光の入射角度θxは小さくなり、その一方で、パネル部材20の第1方向d1における他側となる領域に入射する15からの光の入射角度θxは大きくなるといった傾向が生じる。光源15の発光面が或る程度の面積を有して平面的に広がっている場合、さらには光源15の発光面が複数存在する場合には、第1方向d1に沿った入射位置と入射角度θxの大小との関係についての上述した傾向は全体的には維持されるが、一つ単位要素60内に入射するようになる光源15からの光の入射角度は、一定とならず、或る程度の範囲内でばらつく。このバラツキが大きくなると、一つの第1傾斜面61から出射する光を所望の方向に向けるといった上述の作用効果が弱まってしまう。すなわち、光源15からパネル部材20の各位置に入射する光を、所望の位置に向けるという上述した作用が弱くなってしまう。
この点について、図示された例において、第2傾斜面62が、光制御シートの主切断面において、光制御シート40のシート面に対してなす角度θbは、当該一つの第2傾斜面62内において、一定ではない。とりわけ図6によく示されているように、第2傾斜面62の傾斜角度θbは、本体部50の側よりも光反射シート30の側において、小さくなるように変化している。このような構成によれば、光源15からパネル部材20の各位置に入射する光を、所望の位置に向けるといったパネル部材20の機能が、より効果的に発揮されるようになる。
図6には、異なる入射角度で光制御シート40の第1面41に入射した光L61,L62が、第1傾斜面61上の同一の位置に進んでいる。この場合、図6に示すように、より小さな入射角度θx1で入射した光L61が、第1傾斜面61での反射によって、より大きく進行方向を変化させることになり、より大きな入射角度θx2で入射した光L62が、第1傾斜面61での反射によって、より小さく進行方向を変化させることになる。この結果、より小さな入射角度θx1の光L61が、第2傾斜面62内の本体部50側に入射し、より大きな入射角度θx2の光L62が、第2傾斜面62内の光反射シート30側に入射する傾向が生じる。
上述したように、パネル部材20の法線方向ndに対して第1方向d1における一側に傾斜する角度を正の値とするとともに、パネル部材20の法線方向ndに対して第1方向における他側に傾斜する角度を負の値とすると、入射角度θxの値が大きければ、出射角度θyの値も大きくなる。このため、一つの単位要素60内に或る程度の範囲内で入射角度θxがばらついた光が入射する場合に、当該単位要素60からの出射光の出射方向を絞る機能(偏向機能、集光機能)をより効果的に発揮させるためには、第2傾斜面62での反射によって、出射角度が大きくなる傾向のある入射角度θx2が大きい光L62の光路を大きく変更させることなく、出射角度θyが小さくなる傾向のある入射角度θx2が小さい光L61の光路を大きく変更した方がよい。すなわち、入射角度θx2が大きい光L62が入射しやすくなる第2傾斜面62の光反射シート30側の領域における光路変更機能を弱め、入射角度θx1が小さい光L61が入射しやすい第2傾斜面62の本体部50側の領域における光路変更機能を強めることが好ましい。
したがって、傾斜角度θbが本体部50の側よりも光反射シート30の側において、小さくなるように変化する第2傾斜面62によれば、一つの単位要素60内に入射する光の入射角度θxが或る程度ばらつく場合においても、当該一つの単位要素60からの出射光の出射方向を狭い角度範囲に絞る機能(偏向機能、集光機能)が効果的に発揮され、当該単位要素60の第1傾斜面61に入射した光源光の出射方向を効果的に揃えることができる。すなわち、光源15からパネル部材20の各位置に入射する光を所望の位置に向けるといったパネル部材20の機能が、より効果的に発揮されるようになる。
加えて、本実施の形態の用途では、第1方向d1上の或る位置に配置された単位要素60で反射された光が、室内にいる観察者の目の位置へ向けて進むことも考えられる。このような場合、観察者には、パネル部材20における第1方向d1における或る一部分だけが、光って眩しく観察される可能性がある。一方、図示された例のように、第1傾斜面61及び第2傾斜面62の少なくとも一方が曲面や折れ面で形成されている場合には、このような眩しさを効果的に解消することも可能となる。また、光制御シート40で光路を制御される光が、或る程度拡散され、パネル部材20上での輝度の第1方向d1に沿った分布、並びに、パネル部材上の各位置での輝度の角度分布がなだらかに変化するようになる。
また、本実施の形態によれば、光反射シート30の光制御シート40に対面する側の面に絵柄が形成されている。種々の方向に沿ってパネル部材20の各位置に入射する光源15からの光のうち、その後に第2傾斜面62または平坦面63へ向かう光L24,L25は、光反射シート30へ入射し、この絵柄を照明することになる。これにより、仮にパネル部材20を照明する光が光源15から投射される光のみである場合においても、室内にいる人間は、光反射シート30に形成された絵柄を観察することができる。
さらに、本実施の形態によれば、光反射シート30のシート面にそって延びる単位要素60の平坦面63を介して、光制御シート40と光反射シート30とが接続されている。このため、光制御シート40と光反射シート30とを安定して接合することができ、パネル部材20が期待された作用効果を安定して奏することが可能となる。
以上のように本実施の形態によれば、二以上の方向に沿って入射する光の少なくとも一部分を、それぞれ、所望の方向に反射させることが可能となる。これにより、パネル部材20および光学デバイス10を種々の用途に好適に適用することが可能となる。一例として、光学デバイス10およびパネル部材20が照明装置として用いられ、光源15から投射された光の一部分がパネル部材20で反射され、種々の方向から、特定の場所、一例として床の間を照明するようにしてもよい。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形例の一例について説明する。
例えば、上述した実施の形態において、第1傾斜面61が折れ面として形成されている例を示したが、これに限られない。第1傾斜面61は、単一の平坦面として形成されていてもよい。
また、上述した実施の形態において、第1傾斜面61と第2傾斜面62との間に平坦面63が設けられている例を示したが、これに限られず、平坦面63が省略されてもよい。すなわち、光制御シート40の第2面42が、単位要素60の第1傾斜面61および第2傾斜面62によって構成されるようにしてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、本体部50の第2面52上に単位要素60が隙間なく配列される例を示したが、これに限られず、本体部50の第2面52上に単位要素60が隙間をあけて配列されるようにしてもよい。この例によれば、光制御シート40の第2面42の一部が、本体部50の第2面52によって構成されるようになる。
さらに、上述した実施の形態において、複数の単位要素60が互いに同一に構成されている例を示したが、これに限られない。また、複数の第1傾斜面61が互いに同一に構成されている例を示したが、これに限られない。さらに、複数の第2傾斜面62が互いに同一に構成されている例を示したが、これに限られない。さらに、複数の平坦面63が互いに同一に構成されている例を示したが、これに限られない。また、複数の単位要素60が一定のピッチで第1方向d1に配列されている例を示したが、これに限られない。光源15からの第1方向d1に沿った距離に応じて、単位要素60の形状、パネル部材の法線方向ndに対する第1傾斜面61の傾斜角度θa、パネル部材の法線方向ndに対する第2傾斜面62の傾斜角度θb、光制御シートのシート面に沿った単位要素60の配列ピッチ、光制御シートのシート面に沿った第1傾斜面61の幅W1、光制御シートのシート面に沿った第2傾斜面62の幅W2、光制御シートのシート面に沿った63の幅W3、を変化させてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、各単位要素60が線状に延び、複数の単位要素60が一次元配列(リニアアレイ配列)で配列されている例を示したが、これに限られない。各単位要素60が点状に形成され、各単位要素60が二次元配列で配列されていてもよい。
さらに、上述した実施の形態において、光反射シート30に絵柄が形成されている例について説明したが、光反射シート30以外に絵柄が形成されていてもよいし、光反射シート30の絵柄に加えて、パネル部材20の他の部分に絵柄が形成されていてもよい。一例として、本体部50の第1面51(光制御シート40の第1面41)に絵柄が形成されていてもよいし、光制御シート40の本体部50の第2面52に絵柄が形成されていてもよい。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。