JP6074771B2 - フロリゲンの導入方法 - Google Patents

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Description

本発明は膜透過ペプチドを用いて、フロリゲンを植物の茎頂組織の細胞に導入する方法及び植物の茎頂組織の細胞へのフロリゲン導入剤に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2012-024958号優先権を請求する。
食料生産、化学物質生産やバイオマス生産など農業生産上の競争力強化のためには、植物の花成を調節する技術が必要不可欠である。植物の花成を調節する技術として、環境変化や遺伝的変化を利用した技術がある。しかしながら、環境変化を利用した花成調節は、多数の作物に普遍的に適用できる訳ではなく、環境(例えば日長や温度)への反応が弱い植物種や、サイズの大きな植物種には適用することができない。また、遺伝的変化を利用した花成調節では、交配育種や遺伝子組換えにより品種が作出されているが、望ましい品種を得るために10年以上の長期間を要したり、良質な遺伝資源の不足、不良形質の連鎖が避けられない、遺伝子組換えの困難な植物種が存在するといった問題がある。
植物において、フロリゲンは普遍的な開花決定分子として提唱されており、近年、その分子実体がタンパク質であることが突き止められた。フロリゲンは葉で合成された後、植物体内を茎頂まで長距離移動し、茎頂へ到達すると花芽形成を開始させる。フロリゲンはその存在が提唱された当初は低分子化合物が想定されていたため、フロリゲンを植物に処理することで花芽形成を誘導できると考えられていた。しかしその実体は分子量約22,000の球状タンパク質であり、細胞膜を透過できないサイズであることから、そのまま植物に処理しても効果を示すことはできないと考えられている。
フロリゲンを利用して植物の花成を調節するため、フロリゲンをコードする遺伝子が単離されている(特許文献1、非特許文献1)。フロリゲンをコードする遺伝子の利用として、フロリゲンをコードする遺伝子により形質転換したイネでは、形質転換していないイネと比較して、出穂が促進されたことや(特許文献1)、フロリゲンをコードする遺伝子の1つであるHd3aに変異を導入することにより、花成時期が調節されたことが報告されている(非特許文献2)。また非特許文献3には、フロリゲンの拮抗因子と考えられるTFL1遺伝子のホモログを形質転換した植物では、花成の遅延が観察されたことが開示されている。特許文献3では、シロイヌナズナFT遺伝子と相同性の高い、ウンシュウミカン由来遺伝子を用いてCiFT2タンパク質を発現させたこと、当該CiFT2タンパク質をカラタチの枝の切開した木部に注入したことが報告されている。しかしながら特許文献3の全実施例において、CiFT2タンパク質による処理が着花を促進した事実がないことが明言されている。すなわち特許文献3では、CiFT2タンパク質を処理していない植物でもCiFT2タンパク質を処理した植物と同様の着花が見られたことが明言されている(特許文献3、段落0128および0139)。また特許文献3には、CiFT2タンパク質がフロリゲンとして機能し得るものか、および、CiFT2タンパク質が適切に植物体内に導入されたかについては、確認されておらず示されていない。
蛍光タンパク質などのタンパク質を、動物細胞や植物細胞に直接導入する方法が報告されている。その1つに、膜透過ペプチドを利用した技術がある(特許文献2、非特許文献4,5)。非特許文献4では、膜透過ペプチドを用いて蛍光タンパク質を植物培養細胞に導入したことが開示されている。特許文献2では、コムギ等の各種組織に、膜透過ペプチドを用いて、蛍光タンパク質等を導入したことが開示されており、非特許文献5では、膜透過ペプチドを用いて蛍光タンパク質をタマネギの根に導入したことが開示されている。しかしながら、フロリゲン等の植物独自の機能性タンパク質を、膜透過ペプチドを利用して植物の組織に直接導入したこと、さらには当該導入されたタンパク質が植物体内において機能したという報告は未だなされていない。
国際公開公報第WO/2002/042475号 特表2010-532159号公報 国際公開公報第WO/2011/059051号
Tamaki S et al. Science 2007 May 18;316(5827):1033-1036. Taoka K.-I. et al Nature 2011 476:332-335. Nakagawa M et al. Plant J. 2002 29:743-750. Zonin et al. Plant Cell Physiol. 52:2225-2235 Wang HY et al. Biochemical and Biophysical Research Communications 346 (2006) 758-767
本発明は、フロリゲンを植物の茎頂組織の細胞に導入する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、膜透過ペプチドを用いることにより、花成の起きる茎頂組織に、普遍的な開花促進因子であるフロリゲンのタンパク質を直接導入し得、当該フロリゲンが花成を促進し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.膜透過ペプチドを用いて、フロリゲンを植物の茎頂組織の細胞に導入する方法。
2.膜透過ペプチドが、アルギニンが8〜12個連続してなるペプチド、または、RXLR配列を有するペプチドから選択される、前項1に記載の導入方法。
3.フロリゲンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列における31番目のリシン、43番目のシステイン、57番目のグルタミン酸、109番目のシステイン、136番目のチロシン、140番目のトリプトファン、および166番目のシステインに相当するアミノ酸から選択される少なくとも1個のアミノ酸が置換された変異型フロリゲンまたはその部分ペプチドである、前項1または2に記載の導入方法。
4.フロリゲンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなる、変異型Hd3aタンパク質またはその部分ペプチドである、前項1〜3のいずれか1に記載の導入方法。
5.フロリゲンが、以下の(1)〜(5)から選択される、前項1〜4のいずれか1に記載の導入方法:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、31番目のリシンおよび57番目のグルタミン酸が置換された変異型Hd3a;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、43番目のシステイン、109番目のシステイン、および166番目のシステインが置換された変異型Hd3a;
(3)上記(2)の変異型Hd3aの部分ペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列における6番目〜170番目のアミノ酸配列からなる、変異型Hd3aの部分ペプチド;
(4)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、31番目のリシン、136番目のチロシン、および140番目のトリプトファンが置換された変異型Hd3a;
(5)上記(4)の変異型Hd3aの部分ペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列における8〜170番目のアミノ酸配列からなる、変異型Hd3aの部分ペプチド。
6.フロリゲンと膜透過ペプチドを水性媒体中において混合した混合液を、植物の茎頂組織に接触させる工程を含む、前項1〜5のいずれか1に記載の導入方法。
7.前記混合液におけるフロリゲンと膜透過ペプチドのモル比が、1:1〜1:50である、前項6に記載の導入方法。
8.前記水性媒体のpHが、6.5〜8.0である、前項6または7に記載の導入方法。
9.前記水性媒体が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、前項6〜8のいずれか1に記載の導入方法。
10.前項1〜9のいずれか1に記載の方法により、植物の花成を促進する方法。
11.フロリゲンと、膜透過ペプチドを含有する、植物の茎頂組織の細胞へのフロリゲン導入剤。
12.フロリゲンと、膜透過ペプチドとを水性媒体中において混合した混合液である、前項11に記載のフロリゲン導入剤。
13.前項11または12に記載のフロリゲン導入剤を含む、植物花成促進剤。
14.フロリゲン、および、膜透過ペプチドを含む、植物の茎頂組織の細胞へのフロリゲン導入キット。
本発明によれば、フロリゲンを花成の起きる組織である茎頂組織へ直接導入することにより、茎頂組織においてフロリゲンが花成を促進する機能を発揮し得る。本発明の導入方法によれば、従来法と比較して250倍という高効率で、フロリゲンの導入が可能である。本発明の導入方法は、交配育種や遺伝子組換えの困難な植物種に適用可能であり、多数の植物種に普遍的に使用することができる。また、導入する植物種のサイズも問わず、屋外、屋内での適用が可能である。さらに本発明の導入方法は、遺伝子組換え等のように長期の技術的な訓練を必要とせず、簡便に誰にでも行うことができ、有用である。
各種膜透過ペプチドを使用してGFPのイネ幼根への導入効率を確認した結果を示す写真である。(実施例1) 各種膜透過ペプチドを使用してGFPのイネ幼根、イネプロトプラスト、タバコ葉、シロイヌナズナ葉への導入効率を確認した結果を示す図である。(実施例1) 混合液中のGFPと膜透過ペプチドとのモル比による、GFP導入効率への影響を確認した結果を示す図である。(実施例1) 混合液の緩衝液の種類およびpHによる、GFP導入効率への影響を確認した結果を示す写真である。(実施例1) 大量発現可能なmHd3a-1をSDS-PAGEで分離した結果を示す写真である。(実施例2) 大量発現可能な各種変異型Hd3aのフロリゲン機能を解析した結果を示す図である。(実施例2) 膜透過ペプチドを使用してGFPをイネ茎頂組織へ導入した場合のGFP導入効率を確認した結果を示す写真である。(比較例1) 膜透過ペプチドを使用してフロリゲンをイネ茎頂組織へ導入した場合のフロリゲンの局在を示す写真である。(実施例3) 膜透過ペプチドを使用してフロリゲンを、トウモロコシおよびシロイヌナズナ茎頂組織へ導入した結果を示す写真である。(実施例4) 野生型イネの茎頂組織にフロリゲンを導入した場合の花芽形成マーカー遺伝子の発現を確認した結果を示す図である。(実施例5) フロリゲン不活化イネの茎頂組織にフロリゲンを導入した場合の花芽形成マーカー遺伝子の発現を確認した結果を示す図である。(実施例5) フロリゲンを直接導入することにより誘導されたシロイヌナズナ花芽の写真である。(実施例6) シロイヌナズナにフロリゲンを直接導入した場合の花芽形成促進効果を表す図である。(実施例6) シロイヌナズナにフロリゲンを直接導入した場合の花成応答性遺伝子の発現誘導への影響を表す図である。(実施例7)
本発明は、膜透過ペプチドを用いて、フロリゲンを植物の茎頂組織の細胞に導入する方法を対象とする。
本発明において植物とは、フロリゲンが花成を促進する因子として機能し得る高等植物を意味する。植物は、一般に、栄養成長期と生殖成長期とを有し、栄養成長から生殖成長へと成長相が切り換えられる際に花芽を形成する。この栄養成長から生殖成長への転換現象を「花成」と称する。例えば単子葉植物であるイネやムギ類における花成は出穂であり、出穂とは穂の下の節間(穂首)が急速に伸びることにより、止葉の葉鞘から出現することである。イネでは穂先が現れたとき、ムギ類では穂が基部まで出終わったときが出穂とされている。また、双子葉植物であるシロイヌナズナにおける花成は抽苔であり、ロゼット葉の抽出が停止し、花茎が伸びだすことを花成と称する。
本発明における植物は、単子葉植物であっても双子葉植物であってもよく、1日の日照時間が一定時間以下の場合に花芽を形成する短日植物であっても、1日の日照時間が一定時間以上の場合に花芽を形成する長日植物であっても、一日の日照時間が花成に影響を与えない中性植物でもよい。本発明における植物は、具体的にはアブラナ科に属する植物、イネ科に属する植物、ナス科に属する植物、マメ科に属する植物、バラ科に属する植物、ミカン科に属する植物、ウルシ科に属する植物が例示される。アブラナ科に属する植物としては、シロイヌナズナ、キャベツ、ハクサイが例示され、イネ科に属する植物としてはトウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ナス科に属する植物としてはタバコ、トマト、マメ科に属する植物としてはダイズ、バラ科に属する植物としては、園芸品種のバラ各種、イチゴ、リンゴ、アーモンド、ミカン科に属する植物としては、ミカン、キンカン、カラタチ、ウルシ科に属する植物としてはマンゴーが例示される。本発明における植物とは、好ましくはイネ科に属する植物もしくはアブラナ科に属する植物であり、より好ましくはイネもしくはシロイヌナズナである。
花成は、植物の茎頂(分裂)組織において起こる。茎頂組織は、植物体の頂端分裂組織であり、茎の先端部分に存在する。茎頂組織では、細胞分裂により常に新しい細胞が誕生しており、茎、葉、花芽などの組織が作られる。植物が栄養生長から生殖生長へと移行する際、茎頂組織から花序分裂組織となり、花芽形成が開始される。フロリゲンは、葉から茎頂組織へと輸送されて、茎頂組織において花成を誘導すると考えられている。
本発明においてフロリゲンは、特に限定されるものではなく、イネのHd3a(Os06g0157700)(Genbank Accession No.BAB61028:Oryza sativa Japonica group cultivar Nipponbare由来)、RFT1(Genbank Accession No.AB062676)、シロイヌナズナのFT(Genbank Accession No.AB027504)、TSF(Genbank Accession No.AB027506)、トマトのSFT(Genbank Accession No.AY186735)、コムギのVRN3(Genbank Accession No.LOC100037541)等が例示されるが、イネHd3aであることが好ましい。また本発明におけるフロリゲンは、遺伝子組換え技術により、多量に発現させて精製することができ、可溶性が高く、開花促進因子の機能を保持しているものが好ましい。かかるフロリゲンとしては、フロリゲンの外表面に露出したアミノ酸部分において、1〜10個(好ましくは1〜7個、より好ましくは1〜3個)のアミノ酸置換の変異を導入した変異型フロリゲンもしくは当該変異型フロリゲンの部分ペプチドが例示される。フロリゲンの外表面に露出したアミノ酸部分としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列における31番目のリシン、43番目のシステイン、57番目のグルタミン酸、109番目のシステイン、136番目のチロシン、140番目のトリプトファン、166番目のシステインに相当するアミノ酸が例示される。本発明において、「配列番号Xにおける、特定のアミノ酸(例えば、31番目のリシン等)に相当するタンパク質の部位」とは、配列番号Xにおける特定のアミノ酸(例えば、31番目のリシン)の部位に加えて、配列番号X以外のアミノ酸配列を有し、かつ配列番号Xのタンパク質と等価な機能を有するタンパク質における、前記特定のアミノ酸(例えば、31番目のリシン)に相当する部位を含む意味で用いられる。
フロリゲンにアミノ酸置換を導入した変異型フロリゲンまたはその部分ペプチドとしては、変異型Hd3aもしくはその部分ペプチドが好ましく、以下の(1)〜(5)ものがより好ましい。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、31番目のリシンおよび57番目のグルタミン酸に相当するアミノ酸が置換された変異型フロリゲン。
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、43番目のシステイン、109番目のシステイン、および166番目のシステインに同等するアミノ酸が置換された変異型フロリゲン。
(3)上記(2)の変異型フロリゲンの部分ペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列における6番目〜170番目のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列からなる、変異型フロリゲンの部分ペプチド。
(4)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、31番目のリシン、136番目のチロシン、および140番目のトリプトファンに相当するアミノ酸が置換された変異型フロリゲン。
(5)上記(4)の変異型フロリゲンの部分ペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列における8〜170番目のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列からなる、変異型フロリゲンの部分ペプチド。
本発明において変異型Hd3aもしくはその部分ペプチドは、上記(1)、(3)、(5)に示されたものを使用することが好ましく、上記(1)に示されたものを使用することがより好ましい。
上記(1)〜(5)の変異型フロリゲンの具体例としては、後述する実施例に記載の各種変異型Hd3aであるmHd3a-1(完全長、K31AとE57Aのアミノ酸置換を有する)、mHd3a-2T(6番目〜170番目の部分ペプチド、C43LとC109SとC166Sのアミノ酸置換を有する)、もしくは当該変異型Hd3aの部分ペプチドであるmHd3a-3T(8番目〜170番目の部分ペプチド、K31AとY136AとW140Aのアミノ酸置換を有する)、mHd3a-2F(完全長、C43LとC109SとC166Sのアミノ酸置換を有する)、m-Hd3a-3F(完全長、K31AとY136AとW140Aのアミノ酸置換を有する)が挙げられる。
膜透過ペプチドとは、細胞膜透過性を有するペプチドのことで、その化学的特性により、塩基性アミノ酸(特にアルギニンやリシン)を多く含むことを特徴とするペプチド、両親媒性のペプチド、RXLR配列を有するペプチドの3つのグループに分けられる。膜透過ペプチドとしては、例えば、Tat(配列番号2)、FHVcoat(配列番号3)、Pep-1(配列番号4)、Penetratin(配列番号5)、Transportan(配列番号6)、R9(配列番号7)、KALA(配列番号8)、Avr1b(配列番号9)、gp41(配列番号11)、Rev(配列番号22)、pAntp(配列番号10)、VP22(配列番号13)、SV40NLS(配列番号12)、Integrinβ3(配列番号14)、InfluenzaHA-2(配列番号15)、R/W(配列番号18)、BMV-gag(配列番号16)、HTLV-IIRex(配列番号17)、Human cFOS(配列番号19)、Human cJUN(配列番号20)、Yeat GCN4(配列番号21)などを挙げることができる(以下の表1および表2を参照)。本発明において膜透過ペプチドは、アルギニンを多く含むペプチド(好ましくはアルギニンが8〜12個連続してなるペプチド)または、RXLR配列を有するペプチドから選択されることが好ましい。アルギニンが8〜12個連続してなるペプチドのうち、最も好ましいものは、アルギニンが9個連続してなるペプチド(R9)である。RXLR配列を有するペプチドのうち、最も好ましいものはAvr1bである。
本発明の導入方法は、フロリゲンと膜透過ペプチドが共存する状態で、フロリゲンを植物の茎頂組織に接触させる工程を含むものであればよい。フロリゲンと膜透過ペプチドが共存する状態とは、フロリゲンと膜透過ペプチドが同じ1つの溶媒中に存在する状態であればよく、フロリゲンと膜透過ペプチドが別個の分子として溶媒中に存在していてもよいし、融合タンパク質のようにフロリゲンと膜透過ペプチドが同一の分子内に含有されて溶媒中に存在してもよい。本発明の導入方法は、好ましくはフロリゲンと膜透過ペプチドが別個の分子として1つの溶媒中に存在した状態で、すなわち、フロリゲンと膜透過ペプチドを水性媒体中において混合した溶液を、植物の茎頂組織に接触させる工程を含む。なお本明細書においては、同じ1つの溶媒中にフロリゲンと膜透過ペプチドを存在させた溶液を、「フロリゲン導入用溶液」と称する。
フロリゲンと膜透過ペプチドを含有する分子としては融合タンパク質が例示される。当該融合タンパク質は、従来公知の手法により作製することができ、フロリゲンをコードする遺伝子と膜透過ペプチドをコードする遺伝子を融合させた遺伝子を酵母や大腸菌等の宿主細胞に導入して、融合タンパク質を細胞内発現させて、単離精製することができる。フロリゲンにおけるアミノ酸置換は、当業者に周知の部位特異的突然変異誘発法により導入することができ、市販のキット等を使用して導入してもよい(例えばQuikChangeTMSite-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)など)。
フロリゲンと膜透過ペプチドが別個の分子として準備する場合、膜透過ペプチドは、従来公知の手法により、化学合成して得ることもできるし、市販のものを使用してもよい。
フロリゲンは、従来公知の手法により、フロリゲンをコードする遺伝子を酵母や大腸菌等の宿主細胞に導入して、フロリゲンを細胞内発現させて、単離精製したものが好ましい。フロリゲンには、宿主細胞の発現系に応じて、フロリゲンの機能に影響しない程度のペプチド断片が付加されていてもよい。例えば大腸菌の発現系を用いる場合は、大腸菌発現プラスミド由来のペプチド断片(GPGHM)がタンパク質のN末端に付加されている。フロリゲンにおけるアミノ酸置換は、当業者に周知の部位特異的突然変異誘発法により導入することができ、市販のキット等を使用して導入してもよい(例えばQuikChangeTMSite-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社)など)。
フロリゲンと膜透過ペプチドが別個の分子として存在するフロリゲン導入用溶液は、得られたフロリゲンと膜透過ペプチドを溶媒中で混合することにより作製でき、このようにして得られた溶液を、「フロリゲンと膜透過ペプチドの混合液」と称する(単に「混合液」とも称する場合もある)。
前記フロリゲン導入用溶液中においてフロリゲンと膜透過ペプチドの量は、フロリゲン導入効率の観点から、フロリゲンのモル量を1とした場合に、膜透過ペプチドのモル量が1以上であることが必要である。混合液中のフロリゲンと膜透過ペプチドのモル比は1:1〜1:50であることが好ましく、1:1〜1:10であることがより好ましい。
フロリゲン導入用溶液中におけるフロリゲンの終濃度は、好ましくは5〜500 μMであり、より好ましくは10〜100 μMである。混合液中における膜透過ペプチドの終濃度は、好ましくは5〜5000 μMであり、より好ましくは10〜1000 μMである。フロリゲン導入用溶液中におけるフロリゲンと膜透過ペプチドの濃度が高すぎる場合は、浸透圧ストレスが生じ、植物細胞を損傷する可能性があるため好ましくない。
フロリゲン導入用溶液の溶媒は、水性媒体であることが好ましい。水性媒体とは、水、または緩衝液等の水溶液を意味し、本発明における水性媒体としては、緩衝液を用いることが好ましい。緩衝液には、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等が含まれ、さらに一般的に細胞培養において使用される培地、ムラシゲ・スクーグ培地(MS培地)等も含まれる。本発明の水性媒体としては、フロリゲンの導入効率の観点から、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)もしくはこれの1/10の濃度までのすべての濃度に希釈したPBSを用いることが好ましい。さらに好ましくは137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 10 mM Na2HPO4, 1.76 mM KH2PO4の組成のPBSもしくはこれの1/10の濃度までのすべての濃度に希釈したPBSが用いられる。希釈の程度は植物の生育に適したものであればよいが、前記組成のPBSを1/5から1/10の濃度に希釈することが好ましい。また水性媒体のpHは、フロリゲンの導入効率の観点から、5.8〜9.0が好ましく、より好ましくは6.5〜8.0である。
フロリゲン導入用溶液中には、フロリゲンと膜透過ペプチドの組織への導入効率を低下させないものであれば、いかなる物質が添加されていてもよい。
本発明の導入方法は、茎頂組織にフロリゲン導入用溶液を接触させるために、茎頂組織を露出させる工程を含んでいてもよい。茎頂組織を露出させて、フロリゲン導入用溶液を滴下すること等により、茎頂組織にフロリゲン導入用溶液を直接接触させることができる。あるいは、茎頂組織を露出させずに、充分量のフロリゲン導入用溶液を茎頂組織付近に振りかけたり、注射器等により茎頂組織付近にフロリゲン導入用溶液を注入して、茎頂組織とフロリゲン導入用溶液を接触させることもできる。あるいは、植物の茎、葉柄、葉、節、根等の切り口からフロリゲン導入用溶液を吸わせる、茎や茎頂組織付近へ糸を通してフロリゲン導入用溶液を毛管現象で導入する、植物体ごとフロリゲン導入用溶液中に水没させる等により、植物の師管を通じてフロリゲン導入用溶液を茎頂組織に到達させてもよい。
本発明は、本発明のフロリゲンを植物の茎頂組織の細胞に導入する方法を含む、植物の花成を促進する方法にも及ぶ。茎頂組織の細胞においてフロリゲンは、14-3-3タンパク質、bZIP型転写因子と結合してフロリゲン活性化複合体を形成し、核内にとどまると考えられる。このプロセスが開始すると、フロリゲン活性化複合体が核内に蓄積し、その後、フロリゲン活性化複合体は、花成誘導を引き起こす花芽形成マーカー遺伝子(例えばOsMADS15遺伝子)の転写を活性化し、植物の花成を促進すると考えられている。本発明の植物の花成を促進する方法においては、フロリゲンが茎頂組織に導入されることにより、花芽形成マーカー遺伝子(例えばOsMADS15遺伝子)の転写の活性化を引き起こし、花成を促進するものと考えられる。また、花芽形成においては、APETALA1(AP1)遺伝子、FRUITFULL(FUL)遺伝子、およびSQUAMOSA PROMOTER BINDING-LIKE3(SPL3)遺伝子といった花成応答性遺伝子の発現も誘導される。FUL遺伝子は、栄養生長相から生殖生長相へ生長相転換した際に茎頂組織において発現が誘導される遺伝子であり、AP1遺伝子は生殖生長相の茎頂組織が花芽を分化した直後に花芽で発現が誘導される遺伝子である。SPL3遺伝子はAP1遺伝子およびFUL遺伝子の遺伝的上流に位置し、花成の初期に誘導される遺伝子の1つである。本発明の植物の花成を促進する方法においては、フロリゲンが茎頂組織に導入されることにより、SPL3遺伝子、AP1遺伝子、FUL遺伝子の発現が誘導される。本発明の植物の花成を促進する方法によれば、フロリゲンを導入していない場合に比べて、上記花成マーカー遺伝子や花成応答性遺伝子の転写を活性化することにより、茎頂組織において花芽原基が形成され、花成が促進される。
本発明は、フロリゲンと、膜透過ペプチドを含有する、植物の茎頂組織の細胞へのフロリゲン導入剤にも及ぶ。当該フロリゲン導入剤は、フロリゲンと膜透過ペプチドが同一の水性媒体中に存在するフロリゲン導入用溶液からなることが好ましく、フロリゲンと膜透過ペプチドを混合した混合液からなることがより好ましい。また本発明は、当該フロリゲン導入剤を含む、植物花成促進剤にも及ぶ。
さらに本発明は、フロリゲン、および、膜透過ペプチドを含む、植物の茎頂組織の細胞へのフロリゲン導入キットにも及ぶ。当該キットにおいてフロリゲンと膜透過ペプチドは別個の分子として含まれていてもよいし、融合タンパク質のような同一の分子として含まれていてもよい。当該キットには、フロリゲンと膜透過ペプチドを混合するための、水性媒体が含まれていてもよいし、他の添加物が含まれていてもよい。本キットにおいて、フロリゲンと膜透過ペプチドが別個の分子として存在する場合は、植物にフロリゲンを導入する直前に、フロリゲンと膜透過ペプチドを混合して混合液を作製し、使用することができる。
以下に、本発明について実施例および比較例により説明するが、本発明は実施例の記載に限定されないことはいうまでもない。
(実施例1)植物組織細胞へのタンパク質導入方法の検討
(1)膜透過ペプチドとタンパク質を個別に調製して混合して、植物組織に処理した。
上記の表1に示す膜透過ペプチド8種類とGFPを、PBS(137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 10 mM Na2HPO4, 1.76 mM KH2PO4)(pH7.4)中にそれぞれ50μMの終濃度に調製して混合し、イネ幼根を浸漬した。膜透過ペプチド8種類は、アルギニンを多く含むことを特徴とするペプチド、両親媒性のペプチド、RXLR配列を有するペプチドから選択された代表的なペプチドであり、化学合成することにより調製した。
浸漬処理は16時間室温で行い、次いで4℃で4時間低温処理した。GFP単独のネガティブコントロール区で蛍光が観察されなくなるまで洗浄し、蛍光実体顕微鏡下で細胞をカウントすることで蛍光を発する細胞の比率を算出した。結果、本方法により、効率よく植物細胞にGFPを直接導入できることが分かった(図1)。
(2)上記8種類の膜透過ペプチドによるGFP導入効率を上記(1)と同様の方法により、定量的に試験した。試験対象とした組織は、イネ幼根(図2a)、イネ培養細胞(イネプロトプラスト)(図2b)、タバコ葉(図2c)、シロイヌナズナ葉(図2d)である。合計32処理区について評価した結果、総合的にはAvr1bによる導入効率が最も良好であり、次いでR9及びTatによる導入効率が良好であった。
(3)タンパク質と膜透過ペプチドとのモル比による、タンパク質導入効率への影響について確認した。Avr1bとR9について、タンパク質に対する膜透過ペプチドのモル比を0.01、0.1、1、10と変化させ、イネ根表皮細胞へのGFP導入効率を評価した。
その結果を図3に示す。図3aはAvr1bとGFPの混合液による試験結果であり、図3bはR9とGFPの混合液による試験結果である。R9は、0.01、0.1、1、10とモル比が大きくなる程導入効率が上昇した。R9をフロリゲンの10倍のモル比で使用した場合は、R9を1倍のモル比で使用したに比較して、GFP導入効率が、2.5倍上昇していた。Avr1bは、R9に比較すると緩やかであったが、0.01、0.1、1、10とモル比が大きくなる程導入効率が上昇した。
(4)タンパク質と膜透過ペプチドを混合する媒体の種類、pH等の条件による、タンパク質導入効率への影響について確認した。膜透過ペプチドとタンパク質を処理する際の媒体として、MS培地(pH5.8, 6.5, 7.4の3種類)及びPBS(pH5.8, 6.5, 7.4, 8.0, 9.0の5種)を用いて、イネ幼根へのGFPの直接導入効率を試験した。MS培地は、「植物組織培地シリーズ ムラシゲ・スクーグ培地用混合塩類」(日本製薬株式会社製)を使用して調製した。MS培地のpHの調整は塩酸もしくは水酸化ナトリウム水溶液により行った。また、PBSは、実施例1と同様の組成のものを使用し、pHの調整は塩酸もしくは水酸化ナトリウム水溶液により行った。
結果を図4に示す。MS培地(pH5.8)を使用した場合に比べて、PBS(pH5.8)を使用した場合は、GFPの導入効率が10倍上昇していた。また、pH5.8のPBSを使用した場合に比べて、pH7.4のPBSを使用した場合は、GFPの導入効率が10倍上昇していた。総合的に、pH7.4のPBSを使用した場合に、最高の導入効率が得られた。
(実施例2)大量発現が可能なフロリゲンの探索
(1)野生型Hd3a(配列番号1)は通常の条件では大量合成できないため、Hd3aが安定化し、収量が高くなるような変異をHd3aに導入して、発現をさせた(非特許文献2を参照)。
その結果、mHd3a-1(完全長、K31AとE57Aのアミノ酸置換を有する)、mHd3a-2T(6番目〜170番目の部分ペプチド、C43LとC109SとC166Sのアミノ酸置換を有する)、mHd3a-3T(8番目〜170番目の部分ペプチド、K31AとY136AとW140Aのアミノ酸置換を有する)の3種類が大量発現可能であり、可溶性画分の取得が可能であることがわかった。mHd3a-1を、常法によりSDS-PAGEで分離して確認した写真を図5に示す。
(2)上記(1)で確認したmHd3a-1、mHd3a-2T、mHd3a-3Tの変異型Hd3aに加えて、mHd3a-2F(完全長、C43LとC109SとC166Sのアミノ酸置換を有する)とm-Hd3a-3F(完全長、K31AとY136AとW140Aのアミノ酸置換を有する)の変異型Hd3a部分ペプチドに関して、フロリゲン機能の確認を行った。使用したアッセイ系はプロトプラストの一過的発現系である。この系では、変異型Hd3aと転写因子OsFD1をプロトプラストで一過的に発現させた場合、Hd3aが機能的であれば花芽形成マーカー遺伝子OsMADS15が転写活性化される。プロトプラストの一過的発現系は非特許文献2に記載の方法に準じて構築した。また、OsMADS15遺伝子の発現確認は非特許文献2に記載の方法に準じてRT-PCR法を用いて行った。
上記変異型Hd3aおよびその部分ペプチドを用いた結果、mHd3a-1が最も良好にOsMADS15遺伝子の転写を活性化することがわかった(図6)。
(比較例1)イネ茎頂組織細胞へのGFPの導入
イネ茎頂組織を実体顕微鏡下で露出させて、実施例1と同様にして、膜透過ペプチドとGFPを個別に調製して混合して、植物組織に処理した。PBS(pH7.4)中にGFPを終濃度で50μMと、膜透過ペプチドR9を終濃度で500μMで添加して混合液を作製した。混合液を露出した茎頂組織に滴下して接触させた。16時間室温で処理を行った。
その結果、GFPの茎頂分裂組織への導入効率はそれほど高くなかった(図7)。
(実施例3)イネ茎頂組織細胞へのフロリゲンの導入
実施例2において大量発現させて調製したmHd3a-1を蛍光色素FITCによってラベルした。次にイネの茎頂組織を実体顕微鏡下で露出させ、実施例1と同様にして、膜透過ペプチドとフロリゲンを混合して、植物組織に処理した。PBS(pH7.4)中にフロリゲンを終濃度で50μMと、膜透過ペプチドR9を終濃度で500μMで添加して混合液を作製した。混合液を露出した茎頂組織に滴下して接触させた。16時間室温で処理を行った。
その結果、mHd3a-1はイネ茎頂組織に効率よく導入されることが分かった(図8)。さらにmHd3a-1は、茎頂組織の細胞内ではフロリゲンの機能部位である核へと正確に局在することが分かった。
(実施例4)トウモロコシ及びシロイヌナズナの茎頂組織細胞へのフロリゲンの導入
実施例3の方法と同様にして、トウモロコシ及びシロイヌナズナの茎頂組織に、膜透過ペプチドとフロリゲンの混合液を滴下して処理した。
その結果、mHd3a-1はトウモロコシ及びシロイヌナズナの茎頂組織に効率よく導入されることが分かった(図9)。さらにmHd3a-1は茎頂組織の細胞内ではフロリゲンの機能部位である核へと正確に局在することが分かった。
(実施例5)フロリゲン直接導入による花芽形成マーカー遺伝子発現への影響の確認
(1)実施例3と同様の手法により、フロリゲンを導入したイネ茎頂組織を単離した。常法により、イネ茎頂組織からRNAを抽出し、リアルタイム定量RT-PCRによって花芽形成マーカー遺伝子(OsMADS15遺伝子)の発現を確認した(手法については非特許文献2を参照)。
その結果、茎頂組織へのフロリゲンの直接導入によって花芽形成マーカー遺伝子(OsMADS15遺伝子)の発現を活性化できることが明らかとなった(図10)。
(2)さらに、フロリゲンをすべて不活化したイネ(Hd3a-RFT1 double RNAi)(Komiya et al. (2008) Development 135:767-774)において、(1)と同様の実験を実施した。イネのフロリゲン遺伝子は2つ(Hd3aとRFT1)存在し、両方を同時に発現抑制したイネ(Hd3a-RFT1 double RNAi)では、花芽形成能が完全に喪失するため、通常であれば、花芽形成マーカー遺伝子の発現もほとんど見られない。
フロリゲンをすべて不活化したイネ(Hd3a-RFT1 double RNAi)にフロリゲンを直接導入した場合であっても、花芽形成マーカー遺伝子の発現を活性化できることが明らかとなった(図11)。
(実施例6)フロリゲン直接導入の植物体における花成の促進効果の確認
実施例3と同様の方法を用いて、PBSを1/10濃度に希釈し、フロリゲンmHd3a-1と膜透過ペプチドR9を混合して調製した混合液を、播種後3日目前後で子葉展開時のシロイヌナズナ芽生えに対して処理した。なお、子葉展開時のシロイヌナズナ芽生えは茎頂が露出している。処理条件は室温、2日間とした。その後、混合液を洗浄し、MS培地上にて短日条件(日長10時間)で30〜40日間栽培し、花成のタイミングを調査した。花成開始の確認条件は、抽苔の開始もしくは目視において花芽分化が確認できた状態とし、上記の状態に至った時点におけるロゼット葉数にて花成の早晩を評価した。シロイヌナズナは通常ロゼット葉を抽出するが、花成が開始されるとロゼット葉の抽出を停止する。早く花成開始したものは少数のロゼット葉しか抽出できないため葉数が少なく、花成に時間がかかった場合は多数のロゼット葉を抽出することができるため葉数が多くなる。
結果を図12および図13に示す。図12は、短日条件下で栽培を開始した日を0日として、14日後と、21日後に撮影した写真である。拡大図は、mHd3a-1とR9の混合溶液で処理した個体の21日後の花芽の写真において、点線で囲まれた部分を拡大したものである。また、図13のグラフ中の数字は各葉数で花成に至った個体数を示す。図13中、「HR」はmHd3a-1とR9の混合溶液で処理したもの、「mHR」は受容体と結合できない変異型Hd3a(具体的には、Hd3a R64D F103A R132D)とR9の混合液で処理したもの、「GR」はGFPとR9の混合溶液で処理したもの、「R9」はR9のみを含む溶液で処理したもの、「Buffer」はPBSのみで処理したもの、「DW」は蒸留水で処理したもの、「NT」は無処理のものの結果を示す。
無処理の植物は本実施例の条件下では、ほとんど花成を開始できないが、mHd3a-1とR9を処理した場合には約30%の植物において葉数14枚以内で花成を開始させることができた。mHd3a-1の代わりに受容体と結合できない変異型Hd3a(mHR)もしくはGFPを処理しても、花成開始を促進させるような効果は見られなかった。R9のみ、PBSのみ、蒸留水のみをそれぞれ処理したものでは葉数14枚以内で花成開始することは殆ど無かった。これらの実験の結果、シロイヌナズナにフロリゲンを直接導入することで花成を促進できることが明らかとなった。
(実施例7)フロリゲン直接導入のシロイヌナズナにおける花成応答性遺伝子の発現誘導への影響の確認
実施例6と同様の方法でシロイヌナズナにフロリゲンを直接導入し、その後2週間、栽培をし、一個体ずつ茎頂組織を採取した。採取した各個体の茎頂組織よりRNAを抽出し、逆転写反応によるcDNA合成後リアルタイム定量RT-PCRによって、APETALA1(AP1)遺伝子、FRUITFULL(FUL)遺伝子、およびSQUAMOSA PROMOTER BINDING-LIKE3(SPL3)遺伝子の発現量を調査した(Yamaguchi et al. Dev. Cell 17:268-278(2009)参照)。
その結果、フロリゲンの直接導入によって上記3遺伝子の発現が活性化していることが確認された(図14)。処理した個体の約30%において発現誘導が確認され、この結果は実施例6において花成が促進された割合と合致していた。なお、内部標準としてはeIF4aを用いた。また図14中の横線は、平均値を表している。
本発明によれば、フロリゲン導入用溶液を用いることにより植物の開花時期を改変することができる。植物の開花時期の改変は、植物の栽培管理および品種改良などの分野において極めて有用である。本発明は簡便に実施することができ、また多数の植物種に対して適用可能であるため、植物育種、園芸、バイオマス等の分野においての実用化が期待される。

Claims (10)

  1. 膜透過ペプチドを用いて、フロリゲンを植物の茎頂組織の細胞に導入する方法であって、フロリゲンと膜透過ペプチドを水性媒体中において混合した混合液を、植物の茎頂組織に接触させる工程を含み、膜透過ペプチドがアルギニンが8〜12個連続してなるペプチドから選択され、前記水性媒体のpHが6.5〜8.0である、導入方法。
  2. フロリゲンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列における31番目のリシン、43番目のシステイン、57番目のグルタミン酸、109番目のシステイン、136番目のチロシン、140番目のトリプトファン、および166番目のシステインに相当するアミノ酸から選択される少なくとも1個のアミノ酸が置換された変異型フロリゲン、または、前記変異型フロリゲンの部分ペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列における6番目〜170番目若しくは8〜170番目のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列からなる部分ペプチドである、請求項1に記載の導入方法。
  3. フロリゲンが、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなる、変異型Hd3aタンパク質、または、前記変異型Hd3aタンパク質の部分ペプチドであって、 配列番号1に記載のアミノ酸配列における6番目〜170番目若しくは8〜170番目のアミノ酸配列からなる部分ペプチドである、請求項1または2に記載の導入方法。
  4. フロリゲンが、以下の(1)〜(5)から選択される、請求項1〜のいずれか1に記載の導入方法:
    (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、31番目のリシンおよび57番目のグルタミン酸が置換された変異型Hd3a;
    (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、43番目のシステイン、109番目のシステイン、および166番目のシステインが置換された変異型Hd3a;
    (3)上記(2)の変異型Hd3aの部分ペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列における6番目〜170番目のアミノ酸配列からなる、変異型Hd3aの部分ペプチド;
    (4)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、31番目のリシン、136番目のチロシン、および140番目のトリプトファンが置換された変異型Hd3a;
    (5)上記(4)の変異型Hd3aの部分ペプチドであって、配列番号1に記載のアミノ酸配列における8〜170番目のアミノ酸配列からなる、変異型Hd3aの部分ペプチド。
  5. 前記混合液におけるフロリゲンと膜透過ペプチドのモル比が、1:1〜1:50である、請求項1〜4のいずれか1に記載の導入方法。
  6. 前記水性媒体が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である、請求項1〜5のいずれか1に記載の導入方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1に記載の方法により、植物の花成を促進する方法。
  8. フロリゲンと、膜透過ペプチドを水性媒体中において混合した、植物の茎頂組織の細胞へのフロリゲン導入剤であって、植物の茎頂組織に接触させて用いるためのものであり、膜透過ペプチドがアルギニンが8〜12個連続してなるペプチドから選択され、前記水性媒体のpHが6.5〜8.0である、フロリゲン導入剤
  9. 請求項に記載のフロリゲン導入剤を含む、植物花成促進剤。
  10. フロリゲン、および、膜透過ペプチドを含む、植物の茎頂組織の細胞へのフロリゲン導入キットであって、フロリゲンと膜透過ペプチドを水性媒体中において混合した混合液を、植物の茎頂組織に接触させるために用いられるものであり、膜透過ペプチドがアルギニンが8〜12個連続してなるペプチドから選択され、前記水性媒体のpHが6.5〜8.0である、フロリゲン導入キット。
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