JP6073728B2 - 腐蝕抑制剤の簡易検知方法、並びに腐蝕抑制剤の簡易検知組成物及び簡易検知キット - Google Patents

腐蝕抑制剤の簡易検知方法、並びに腐蝕抑制剤の簡易検知組成物及び簡易検知キット Download PDF

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Description

本発明は、抗菌材等の腐蝕抑制剤が混入したコンクリート等の材料中における当該腐蝕抑制剤を簡易に検出する方法、並びにこの方法に用いられる腐蝕抑制剤の簡易検知組成物及び簡易検知キットに関する。
最近、コンクリートの腐食が下水に繁殖する硫黄酸化細菌が生産する硫酸によるものであることが判明し、この硫酸の発生を防止するため、抗菌剤等の腐蝕抑制剤としてコンクリート中にニッケルやタングステン等の金属粉を混入させる技術が開発されている。
しかしながら、この種の腐蝕抑制剤がコンクリート組成中に混入されているか否かは、肉眼で判別することはできない。また、その判別のために、コンクリート混練時の水に染料や顔料等の着色料を混入させ、コンクリートを着色することが考えられるが、この場合、着色料が水に均一に溶解或いは分散して混入されるため、肉眼で着色を判別できるようにするには多量の着色料が必要となり、コンクリートの物性に影響を及ぼすとともに、着色料がコンクリート製品の表面に一面に広がるため、これに接触した物体に対して色移り等が生じるとの問題があった。
特許文献1には、少量の判別材料の混入によって、その材料(添加剤)の混入が、肉眼にて容易に判別することのできる添加剤判別可能コンクリートの製造方法が開示されている。即ち、セメントその他のコンクリート組成物と共に混合する粉状添加剤に、蛍光染料入りの添加剤(腐蝕抑制剤)を前記コンクリート組成物と共に混練し、コンクリート中の該蛍光染料の混入の判別を、例えばブラックライト等の不可視光線を照射することにより、添加剤の位置から発する蛍光により、添加材が混入されていないコンクリートと肉眼で識別するものである。
特開平11−1354号公報
特許文献1に記載の検出方法では、腐蝕抑制剤を含むコンクリートの中で、蛍光染料と腐蝕抑制剤とを含むものについては、腐蝕抑制剤の存在を検出することができるが、蛍光染料が入っていない腐蝕抑制剤を含むコンクリートについては腐蝕抑制剤の検出は不可能である。また、相当前に構築されたコンクリート、或いは自然の岩石等においても、腐蝕抑制剤自体が入っているかどうかは不明であり、このようなものには前記検出方法を使用することができない。
従って、本発明は、上記課題を解決した腐蝕抑制剤の簡易検出方法を提供することを目的とする。
即ち、下水道コンクリートの構造物、ヒューム管或いは組み立てマンホールの、微生物に起因する硫酸劣化を防止するための腐蝕抑制剤の混入を簡易に検出することができる方法を提供することを目的とする。
特に、腐蝕抑制剤の混入を、施工現場等の現場で簡易に検出することができる方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法に有利に使用することができる腐蝕抑制剤の簡易検出組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法に有利に使用することができる腐蝕抑制剤の簡易検出キットを提供することを目的とする。
上記目的は、
鉄酸化能力を有する硫黄細菌に、該硫黄細菌の栄養塩及び鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液を加えた液Aと、該液Aに腐蝕抑制剤を含むと予想される試料とを加えた液Bとの2種類の液を作製し、液Aと液Bのそれぞれに酸化還元指示薬を加えて放置した後各液の色の変化を検知するか、或いは液Aと液Bを放置した後各液に酸化還元指示薬を加えて各液の色の変化を検知することにより、腐蝕抑制剤の有無を検出することを特徴とする腐蝕抑制剤の簡易検出方法によって達成される。本発明において、酸化還元指示薬の添加時期はいつでも良いが、一般に、液Aと液Bと作成後、放置が終了するまでの間ならいつでも良い。
本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法の好適態様は以下の通りである。
(1)酸化還元指示薬が、鉄の酸化に伴う酸化還元の変化を検知する指示薬である。特に、クロムアズロールS、o−フェナントロリン及び、チオシアン酸カリウム及びキシレノールオレンジから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(2)栄養塩が2価の鉄イオンを含んでいる。
(3)鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分が、当該タンパク質を構成するアミノ酸として、下記の一般式:
NH−(CH−COOH
(但し、nが1〜4の整数である)
で表される化合物(一般にアミノ酸)を含んでいる。例えば、グリシン、β−アラニン、5−アミノバレイン酸、4−アミノ−n−酪酸を挙げることができる。
(4)硫黄細菌が、アシッディチオバチルスチオオキシダンス(Acidithiobactillus thiooxidans)及びアシッディチオバチルスフェロオキシダンス(Acidithiobactillus ferrooxidans)から選択される少なくとも1種である。
(5)鉄酸化能力を有する硫黄細菌は、予め培養された後、培地が除去されたものである。特に、鉄酸化能力を有する硫黄細菌は、予め培養された後、培地が除去され、その後湿潤状態で保存、或いは自然乾燥した後又は凍結乾燥した後保存されたものであることが好ましい。
(6)鉄酸化活性を促進するタンパク質を含む酸性の液のpHが1〜6、特に2〜4である。
(7)酸性の液の酸性にするための酸が、硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、チオシアン酸、炭酸及びホウ酸の少なくとも1種である。特に、硫酸が好ましい。
(8)色の変化の検知を、目視及び吸光光度計の少なくとも1つの手段を用いて行う。
(9)放置の期間は、2時間〜10日、特に6時間〜2日が好ましい。
上記目的は、 鉄酸化能力を有する硫黄細菌、該硫黄細菌の栄養塩、鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液、及び酸化還元指示薬を含むことを特徴とする腐蝕抑制剤の簡易検出組成物;及び
鉄酸化能力を有する硫黄細菌、該硫黄細菌の栄養塩、鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液、及び酸化還元指示薬を含むことを特徴とする腐蝕抑制剤の簡易検出のためのキットによっても達成される。
前記本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法における好適態様は、上記本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出組成物及び簡易検出キットに適用することができる。
本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法では、鉄酸化能力を有する硫黄細菌に、硫黄細菌の栄養塩及び鉄酸化活性を促進するタンパク質を含む酸性の液を加えた液Aと、この液Aに液腐蝕抑制剤を含むと予想される試料とを加えた液Bとの2種類の液を、それぞれの液に酸化還元指示薬を加えて放置した(或いは放置後添加)後、2種類の液の色の相違を検知し、これにより腐蝕抑制剤の有無を検出している。このため、簡単な作業で、数時間から数日の短い期間で腐蝕抑制剤の有無を確認することができる。従って、施工現場等の実際に作業が行われている現場でも検出試験が実施可能であり、且つ迅速に行うことができる。
図1は、本発明の実施例1における時間に対するFe2+培地(pH=3)セル(菌)数の変化を示すグラフである。 図2は、本発明の実施例1における時間に対するFe2+の変化を示すグラフである。
本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法は、基本的に下記の工程に従って行われる。
i)鉄酸化能力を有する硫黄細菌に、この硫黄細菌の栄養塩及び鉄酸化活性を促進するタンパク質を含む酸性の液(一般に酸性、特にpH=2〜4)を加えて液A(一般に酸性、特にpH=2〜4)を作製する。この液Aを少なくとも2つ作製する。例えば、2個のフラスコに作製する。
ii)この液Aを少なくとも1つ残し、他の少なくとも1つの液Aに、腐蝕抑制剤を含むと予想される試料を加えて液Bを作製する。腐蝕抑制剤を含むと予想される試料は、コンクリート資材の削り粉、建築物のコンクリートの削り粉、天然岩石の削り粉等である。
iii)液A及び液Bに、酸化還元指示薬を加えて放置する。放置後、液A及び液Bの色変化を検知することにより、腐蝕抑制剤の有無を検出する。一般に、2時間〜10日、特に6時間〜2日の期間放置して、上記硫黄細菌を培養する。放置温度は20〜40℃が一般的で25〜35℃が好ましい。このような条件は微生物の活動が最も活発になるので好ましい。
上記iii)の代わりに、下記のiv)を行っても良い。
iv)液A及び液Bを放置する。一般に、2時間〜10日、特に6時間〜2日の期間放置して、上記硫黄細菌を培養する。放置温度は20〜40℃が一般的で25〜35℃が好ましい。その後液A及び液Bに、酸化還元指示薬を加えて液の色の変化を検知することにより、腐蝕抑制剤の有無を検出する。放置途中に酸化還元指示薬を加えてもよい。
上記色の変化の検知は、目視で行うことが最も簡便である。吸光光度計を用いると機械的に行うことができ、また吸光光度計を用いることにより、腐蝕抑制剤の濃度或いは量を検出することも可能となる。
本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法の各工程にについて詳細に説明する。
工程i)で使用される鉄酸化能力を有する硫黄細菌は、一般に、予め培養された後、培地が除去されたものである。特に、鉄酸化能力を有する硫黄細菌は、予め培養された後、培地が除去され、その後湿潤状態で保存、或いは自然乾燥した後又は凍結乾燥した後保存されたものであることが好ましい。
コンクリートを腐蝕する微生物の中で、最も酸性域に存在し、硫酸を生成する硫黄細菌の中に鉄酸化細菌と呼ばれるものがあり、この菌は硫黄だけでなく鉄を酸化することでも生育することができることを本発明者は見出した。本発明で使用されるのは、このような鉄酸化能力を有する硫黄細菌である。本発明では、硫黄細菌(硫黄酸化細菌)が持っている酸化酵素(例、チトクロムcオキシダーゼ)の作用を主として利用している。即ち、この酸化酵素の、第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化する作用を利用して腐蝕抑制剤の有無を検出するものであり、腐蝕抑制剤が混入している場合は、第一鉄イオンは第二鉄イオンにほとんど酸化されず、混入してないものは第二鉄イオンに酸化される。この差異を、酸化還元指示薬の添加により、目視可能とするものである。硫黄細菌としては、アシッディチオバチルスチオオキシダンス(Acidithiobactillus thiooxidans)、アシッディチオバチルスフェロオキシダンス(Acidithiobactillus ferrooxidans)を挙げることができる。
本発明の鉄酸化能力を有する硫黄細菌は、例えば以下ようにして得ることができる。即ち、アシッディチオバチルスフェロオキシダンス(Licanantay DSM 17318株)を、シルバーマン等の9K液体培地(M. P. Silverman and D.G. Lundgren (1959) J. Bacteriol. 77, 642-647)に接種し、例えば、30℃において1日間振とう培養する。
次いで、3価の鉄を完全に除去するために、ろ液に硫酸でpH=3.0程度に調整したβ−アラニン緩衝液を加え、遠心分離機で数回洗浄し(培地を除去)、洗浄後得られた菌体懸濁液を吸引ろ過し、硫黄細菌を得る。
或いは、培養した菌を、この培地を低速で遠心分離してジャロサイトを主体とする無機塩の沈殿(培地)を除いた後、遠心分離を行い菌体を集める。
次に、集めた菌体をグリシン又はβ−アラニン硫酸緩衝液で数回洗浄(懸濁および遠心)を行う。次いで、洗浄後得られた菌体懸濁液を吸引ろ過し、硫黄細菌を得る。
本発明の硫黄細菌を活性化するために、栄養塩及び鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液(一般に酸性、特にpH=2〜4)を上記硫黄細菌に加える。
上記栄養塩としては、2価の鉄イオンを含む化合物であり、例えば、FeCl、FeSOを挙げることができる。これらは水への溶解性が高いので好ましい。
鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分としては、下記の一般式:
NH−(CH−COOH
(但し、nが1〜4の整数である)
で表される化合物を含んでいる。例えば、グリシン、β−アラニン5−アミノバレイン酸、4−アミノ−n−酪酸を挙げることができる。グリシン、β−アラニンが特に好ましい。これらは水への溶解性が高いので好ましい。
栄養塩及び鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液のpHは、一般に1〜6、特に2〜4が好ましい。この酸性の液の酸性にするための酸としては、例えば、硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、チオシアン酸、炭酸及びホウ酸を挙げることができる。特に、硫酸が好ましい(特に細菌が活性化しやすい)。硫酸は 少量で所定のpHにすることができ、コスト的に有利なため好ましい。
例えば、本発明で用いられているアシッディチオバチルスフェロオキシダンスは、塩化第一鉄を含む緩衝液(例えばグリシン−塩酸またはβ−アラニン−塩酸緩衝液等)中において硫酸イオンが存在すると、特異的に第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化する作用を示す。
すなわち、本発明では、硫酸イオンが含まれる上記緩衝液と接触させると、硫酸イオンに依存したアシッディチオバチルスフェロオキシダンスによる第一鉄イオンを第二鉄イオンに酸化する反応が進行する。本発明では、この変化を酸化還元指示薬を用いて検出する。
工程ii)では、工程i)で得られた液Aを1つ残し(液Aが2つの場合))、他の1つの液Aに、腐蝕抑制剤を含むと予想される試料を加えて液Bを作製する。液のAは、試料の数及び種類に応じて必要な数だけ作製し、また酸化還元指示薬の種類に応じて必要な数だけ作製する。試料は、一般に紛状、顆粒状、シート状等、どの様な形状でも良いが、腐蝕抑制剤を抽出する必要があるので紛状等の微細な形状が好ましい。
腐蝕抑制剤としては、例えば、ニッケル粉末、タングステン、銀、コバルト、銅、これらの合金等の金属、これらの金属の酸化物、これらの金属含有オキソ酸の金属塩、又はシュウ酸金属塩、ギ酸金属塩等の有機化合物、或いはこれらのゼオライト担持物を挙げることができる(但し、この金属塩の金属は一般にアルカリ金属又はアルカリ土類金属である)。本発明においては、特に、NaWO、シュウ酸マグネシウムが好ましい。これらは、特に、鉄の酸化の抑制に効果的である。
酸化還元指示薬としては、1,10−フェナントロリン、クロムアズロールS、キシレノールオレンジ、チオシアン酸カリウム、フェロシアン化カリウムを挙げることができ、色の変化が明瞭な点から、1,10−フェナントロリン、クロムアズロールS、キシレノールオレンジ、チオシアン酸カリウム、特にクロムアズロールS、キシレノールオレンジが好ましい。
本発明は、上記本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出方法に有利に使用することができる腐蝕抑制剤の簡易検出組成物及び腐蝕抑制剤の簡易検出のためのキットも提供する。
本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出組成物は、前記の鉄酸化能力を有する硫黄細菌、該硫黄細菌の栄養塩、鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液、及び酸化還元指示薬を含んでいる。これらの混合物を用いて検出方法を実施する場合は、混合物に試料を加える必要がある。
本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出キットは、前記鉄酸化能力を有する硫黄細菌、前記硫黄細菌の栄養塩、前記鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液、及び前記酸化還元指示薬を、4種をそれぞれ別個に有している。或いは、前記鉄酸化能力を有する硫黄細菌、前記硫黄細菌の栄養塩と前記鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分とを含む酸性の液、及び前記酸化還元指示薬の3種をそれぞれ別個に有していても良い。前記鉄酸化能力を有する硫黄細菌、前記硫黄細菌の栄養塩、前記鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液、及び前記酸化還元指示薬との間の量比は、硫黄細菌の量に応じて適宜設定することができる。各成分のモル濃度比(前記硫黄細菌の栄養塩:前記鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液:前記酸化還元指示薬)は、2:1:1〜10:5:2の範囲が好ましい。本発明の腐蝕抑制剤の簡易検出キットは、前記本発明の検出方法において、前述のように使用される。各成分の濃度は試料中の腐蝕抑制剤の量を確認した後、一般に設定される。
[実施例1]
(1)硫黄細菌(鉄酸化細菌)の作製
アシッディチオバチルスフェロオキシダンス(Licanantay DSM 17318株)を、培養液(9K液体培地)に接種し、30℃において1日間振とう培養した。次いで、No.2ろ紙でろ過後、3価の鉄を完全に除去するために、ろ液に硫酸でpH=3.0に調整した0.1Mのβ−アラニン緩衝液を加え、15000Gの遠心分離機で3回洗浄した。洗浄後得られた菌体懸濁液を吸引ろ過し、得られた洗浄細胞を硫黄細菌として用いた。
(2)腐蝕抑制剤の検出
5個の50mL三角フラスコに、(1)で得られた硫黄細菌を0.1g入れ、次いで硫酸でpH=3.0に調整した0.1Mのβ−アラニン緩衝液20mLを加え、そして栄養塩として硫酸第1鉄を0.1質量%となるように加えた。さらに腐蝕抑制剤であるタングステン酸ナトリウムとして、0.01mM、0.02mM、0.05mM、0.1mMのものを、4個の三角フラスコのそれぞれに1mL加えた。また、残りの1個の三角フラスコは、腐蝕抑制剤であるタングステン酸ナトリウムは添加しなかった。
これらを30℃で15日間培養させ、各三角フラスコ内のFe2+培地(pH=3)セル(菌)数(セル増殖(×106 cell/ml))の変化(A)及びFe2+ (Fe2+濃度(mM))の変化(B)を測定した。それぞれ図1の図(A)及び図2の図(B)に示す。
セル(菌)数の変化(A)は菌体計測により測定した。即ち、菌体計測は、サンプルを顕微鏡で識別可能な程度まで希釈し、顕微鏡下で菌数を数えることにより行った。Fe2+の変化(B)はトリアジン法により測定した。
図(A)、図(B)より、腐蝕抑制剤の存在しない場合(○)は、菌が増殖して、2価鉄が急速に減少するが、腐蝕抑制剤の存在する場合は菌が増殖し難く、2価鉄が減少し難い。詳細には、×:0.2mM;(1):0.1mM;▲:0.05mM;●:0.02mM;■:0.01mM;の順に、即ち、腐蝕抑制剤の濃度の減少の順に、菌が増殖の程度が増大し、一方2価鉄の減少は遅くなった。
[実施例2]
(1)硫黄細菌(鉄酸化細菌)の作製
実施例1と同様に行った。
(2)腐蝕抑制剤の検出
8個の50mL三角フラスコのそれぞれに、(1)で得られた硫黄細菌を0.1g入れ、次いで硫酸でpH=3.0に調整した0.1Mのβ−アラニン緩衝液20mLを加え、そして栄養塩として硫酸第1鉄を0.1質量%となるように加えた。
さらに、三角フラスコ2個ずつに下記の4種の酸化還元指示薬を1mL加えた。
a:1,10−フェナントロリン 0.1質量%水溶液
b:クロムアズロールS 0.1質量%水溶液
c:キシレノールオレンジ 0.1質量%水溶液
d:チオシアン酸カリウム 0.1質量%水溶液
各指示薬の入った三角フラスコ2個の一方に、腐蝕抑制剤が混入したコンクリート粉を 1g加え、他方は加えずに、30℃で1日間培養した。
1日培養後の、各指示薬の入った三角フラスコ毎の、腐蝕抑制剤の有無による色の変化を観察した。その結果を以下に示す。
Figure 0006073728
上記結果より、腐蝕抑制剤が存在している液は比較的薄い色を示したが、存在していない液は比較的濃い色を示した。腐蝕抑制剤が存在しているものといないものとの差が顕著な指示薬は、クロムアズロールSとキシレノールオレンジであった。
上記の本発明の方法を用いることにより、コンクリート等の材料或いは構築物中において腐蝕抑制剤が存在しているか否かを迅速に知ることができることが分かる。従って、この方法を用いることにより、既に建設された構築物のコンクリート等の中に腐蝕抑制剤が存在しているか否かを、迅速に検知することができる。このため、腐蝕抑制剤の有無を作業現場で知ることができる。また、腐蝕抑制剤が混入するように設計されたコンクリート等の材料について、実際に混入しているか否かを検査する品質管理にも本発明の方法を利用することができる。

Claims (14)

  1. 鉄酸化能力を有する硫黄細菌に、該硫黄細菌の栄養塩及び鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液を加えた液Aと、該液Aに腐蝕抑制剤を含むと予想される試料とを加えた液Bとの2種類の液を作製し、液Aと液Bのそれぞれに酸化還元指示薬を加えて放置した後各液の色の変化を検知するか、或いは液Aと液Bを放置した後各液に酸化還元指示薬を加えて各液の色の変化を検知することにより、腐蝕抑制剤の有無を検出することを特徴とする腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  2. 酸化還元指示薬が、鉄の酸化に伴う酸化還元の変化を検知する指示薬である請求項1に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  3. 栄養塩が2価の鉄イオンを含んでいる請求項1又は2に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  4. 鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分が、下記の一般式:
    NH−(CH−COOH
    (但し、nが1〜4の整数である)
    で表される化合物を含んでいる請求項1〜3のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  5. 酸化還元指示薬が、クロムアズロールS、o−フェナントロリン、チオシアン酸カリウム及びキシレノールオレンジから選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  6. 硫黄細菌が、アシッディチオバチルスチオオキシダンス及びアシッディチオバチルスフェロオキシダンスから選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  7. 鉄酸化能力を有する硫黄細菌は、予め培養された後、培地が除去されたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  8. 鉄酸化能力を有する硫黄細菌は、予め培養された後、培地が除去され、その後湿潤状態で保存、或いは自然乾燥した後又は凍結乾燥した後保存されたものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  9. 酸性の液のpHが2〜4である請求項1〜8のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  10. 酸性の液の酸性にするための酸が、硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、チオシアン酸、炭酸及びホウ酸の少なくとも1種である請求項1〜9のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  11. 色の変化の検知を、目視及び吸光光度計の少なくとも1つの手段を用いて行う請求項1〜10のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  12. 色の変化を、吸光光度計で検知して、腐蝕抑制剤の濃度を測定する請求項1〜11のいずれか1項に記載の腐蝕抑制剤の簡易検出方法。
  13. 鉄酸化能力を有する硫黄細菌、該硫黄細菌の栄養塩、鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液、及び酸化還元指示薬を含むことを特徴とする腐蝕抑制剤の簡易検出組成物。
  14. 鉄酸化能力を有する硫黄細菌、該硫黄細菌の栄養塩、鉄酸化活性を促進するタンパク質構成成分を含む酸性の液、及び酸化還元指示薬を含むことを特徴とする腐蝕抑制剤の簡易検出のためのキット。
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