図1は本実施の形態に係る無線通信システム100の構成を示す図である。無線通信システム100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTE(Long Term Evolution)である。LTEは、「E−UTRA」とも呼ばれている。
無線通信システム100は、無線通信装置である複数の基地局2を備えている。各基地局2は、無線通信装置である複数の通信端末1と無線通信を行う。複数の通信端末1には、フィーチャーフォン及びスマートフォン等の携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ及びタブレット等が含まれる。
図1に示されるように、各基地局2のサービスエリア20は、周辺基地局2のサービスエリア20と部分的に重なっている。図1では、4つの基地局2だけしか示されていないため、1つの基地局2に対して周辺基地局2が2つあるいは3つだけしか存在していないが、実際には、1つの基地局2に対して例えば6つの周辺基地局2が存在することがある。
複数の基地局2は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置が接続されており、各基地局2は、ネットワークを通じてサーバ装置と通信可能となっている。また各通信端末1は、少なくとも一つの基地局2を通じて他の通信端末1と通信可能となっている。
図2は、複数の通信端末1に含まれるある通信端末1aの主な構成を示す図である。通信端末1aは、例えば携帯電話機である。通信端末1aは、送受信アンテナとしてアレイアンテナ110を有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナ110の指向性を制御することが可能である。
図2に示されるように、通信端末1aは、無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部12と、表示部14と、電池15とを備えている。表示部14は、例えば、液晶表示パネルあるいは有機ELパネルであって、制御部12による制御に基づいて文字及び図形等の各種情報を表示する。電池15は、通信端末1aを駆動するためのものであって、通信端末1aを構成する各電子部品に電源を供給する。電池15は、充電可能な二次電池である。
無線処理部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。本実施の形態では、アレイアンテナ110は2つのアンテナ110aで構成されているが、3つ以上のアンテナ110aで構成されても良い。
無線処理部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。また、無線処理部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12では、CPU及びDSPがメモリ内の各種プログラムを実行することによって、送信信号生成部120、受信データ取得部121、送信ウェイト処理部122、受信ウェイト処理部123、BF実行決定部124及び電池残量取得部125などの複数の機能ブロックが形成される。
本実施の形態では、無線処理部11、送信ウェイト処理部122及び受信ウェイト処理部123によって、アレイアンテナ110の指向性を適応的に制御しながら無線通信を行う通信部13が構成されている。
通信部13は、受信時にアレイアンテナ110を用いたビームフォーミングを行う。受信時のビームフォーミングでは、アレイアンテナ110の受信指向性におけるビームが制御されて、当該ビームが通信相手装置である基地局2に向けられる。
また、通信部13は、送信時にアレイアンテナ110を用いたビームフォーミングを行うことが可能である。送信時のビームフォーミングでは、アレイアンテナ110の送信指向性におけるビームが制御されて、当該ビームが基地局2に向けられる。
送信信号生成部120は、音声データ等のユーザデータと制御データとを含む送信データを生成する。そして、送信信号生成部120は、送信データを含むベースバンドの送信信号を生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。
BF実行決定部124は、通信部13での送信時におけるビームフォーミングの実行の可否を決定する。なお、BF実行決定部124の動作については後で詳細に説明する。
送信ウェイト処理部122は、BF実行決定部124において送信時のビームフォーミングの実行が許可されている場合には、ビームフォーミングを行うための複数の送信ウェイトを生成する。そして、送信ウェイト処理部122は、生成した複数の送信ウェイトを、送信信号生成部120で生成された複数の送信信号に対してそれぞれ設定する。その後、送信ウェイト処理部122は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号を無線処理部11に出力する。無線処理部11は、入力された、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号を、D/A変換処理等を行った上で、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、アレイアンテナ110の送信指向性でのビームが基地局2に向くようになる。送信ウェイト処理部122が送信ウェイトを適宜更新することによって、通信端末1aが移動する場合であっても、アレイアンテナ110の送信指向性でのビームを基地局2に向けることが可能となる。よって、基地局2は、通信端末1aが移動する場合であっても、当該通信端末1aからの信号を適切に受信することが可能となる。
一方で、送信ウェイト処理部122は、BF実行決定部124において送信時のビームフォーミングの実行が不許可とされている場合には、送信信号生成部120で生成された複数の送信信号をそのまま無線処理部11に入力する。無線処理部11は、入力された複数の送信信号を、D/A変換処理等を行った上で、複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、アレイアンテナ110から送信信号がオムニ送信される。通信部13が送信時にビームフォーミングを行う際には、アレイアンテナ110の送信指向性でのビームが基地局2に向くため、オムニ送信と比較して、基地局2に送信信号が届きやすくなり、送信時の通信性能が向上する可能性が高くなる。
受信ウェイト処理部123は、ビームフォーミングを行うための複数の受信ウェイトを生成する。そして、受信ウェイト処理部123は、生成した複数の受信ウェイトを、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対してそれぞれ設定する。その後、受信ウェイト処理部123は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して新たな受信信号(以後、「合成受信信号」と呼ぶ)を生成する。これにより、アレイアンテナ110の受信指向性でのビームが基地局2に向くようになり、合成受信信号では干渉波の影響が少なくなる。受信ウェイト処理部123が受信ウェイトを適宜更新することによって、通信端末1aが移動する場合であっても、アレイアンテナ110の受信指向性でのビームを基地局2に向けることが可能となる。よって、通信端末1aは、移動する場合であっても、基地局2からの信号を適切に受信することが可能となる。
受信データ取得部121は、受信ウェイト処理部123で生成された合成受信信号に対して復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データ及びユーザデータを取得する。
受信ウェイト処理部123は、基地局2から送信される既知信号に基づいて受信ウェイトを生成する。具体的には、受信ウェイト処理部123は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に含まれる既知信号に基づいて受信ウェイトを生成する。基地局2からは間隔を空けて既知信号が送信されてくることから、受信ウェイト処理部123は、新たな既知信号に基づいて受信ウェイトを更新することができる。そして、送信ウェイト処理部122は、受信ウェイト処理部123が生成した受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを生成する。送信ウェイト処理部122は、受信ウェイト処理部123において更新された受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを生成することによって、送信ウェイトを更新することができる。受信ウェイト処理部123は、例えば、RLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズム等の逐次更新アルゴリズムを用いて受信ウェイトを算出する。
なお、本実施の形態では、送信ウェイト処理部122は、受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを生成しているが、基地局2から送信される既知信号に基づいて直接送信ウェイトを求めても良い。また、通信部13は受信時にビームフォーミングを実行しなくても良い。
電池残量取得部125は、電池15の出力電圧に基づいて、電池15についての電池残量を求める。電池残量取得部125で求められた電池残量は、制御部12が表示部14を制御することによって、表示部14においてアイコン等で示される。
<BF実行決定部の詳細動作について>
上述のように、受信ウェイト処理部123は、基地局2から送信される既知信号に基づいて受信ウェイトを生成することから、アレイアンテナ110の受信指向性でのビームは、通信部13が既知信号を受信した時点での、通信端末1aから基地局2を見た方向に向くようになる。そして、送信ウェイト処理部122は、受信ウェイト処理部123が生成した受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを生成することから、アレイアンテナ110の送信指向性でのビームは、通信部13が既知信号を受信した時点での、通信端末1aから基地局2を見た方向に向くようになる。なお、送信ウェイトが、基地局2からの既知信号に基づいて直接生成される場合であっても、アレイアンテナ110の送信指向性でのビームは、通信部13が当該既知信号を受信した時点での、通信端末1aから基地局2を見た方向に向くようになる。
ここで、通信端末1aが低速で移動する場合には、通信部13が既知信号を受信してから通信部13が信号を送信するまでの間に通信端末1aが移動する距離はそれほど大きくならない。そのため、通信端末1aが低速で移動する場合には、通信部13が既知信号を受信した時点での、通信端末1aから基地局2を見た方向と、通信部13が信号を送信する時点での、通信端末1aから基地局2を見た方向とはあまり差異が無い。よって、アレイアンテナ110の送信指向性でのビームを適切に基地局2に向けることができる。
一方で、通信端末1aが高速に移動する場合には、通信部13が既知信号を受信してから通信部13が信号を送信するまでの間に通信端末1aは大きく移動することから、通信部13が既知信号を受信した時点での、通信端末1aから基地局2を見た方向と、通信部13が信号を送信する時点での、通信端末1aから基地局2を見た方向とが大きく異なる可能性が高くなる。そのため、アレイアンテナ110の送信指向性でのビームが適切に基地局2に向く可能性が低くなる。よって、通信部13が送信時にビームフォーミングを行ったとしても、通信品質が向上しないことがあり、場合によっては通信品質が逆に悪くなることもある。
通信部13が送信時にビームフォーミングを実行する場合には、送信ウェイトを生成したり、生成した送信ウェイトを送信信号に設定したりする処理が必要となることから、通信端末1aでの処理が増加し、その結果、通信端末1aの消費電力が増大する。通信部13が送信時にビームフォーミングを実行したにもかかわらず、送信時の通信品質が向上しない場合には、通信端末1aの消費電力が無駄に増加したことになり好ましくない。
このように、通信端末1aが高速移動する場合などにおいては、通信部13が送信時にビームフォーミングを実行したにもかかわらず、送信時の通信品質が向上せず、通信端末1aの消費電力が無駄に増加することがある。
そこで、本実施の形態では、BF実行決定部124が、通信部13がビームフォーミングを行って送信する場合の通信品質(以後、「BF実行時送信品質」と呼ぶ)と、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合の通信品質(以後、「BF不実行時送信品質」と呼ぶ)とに基づいて、通信部13での送信時におけるビームフォーミングの実行の可否を決定する。これにより、通信端末1aの消費電力が無駄に増加することを抑制することができる。よって、通信端末1aの消費電力を抑制しつつ、ビームフォーミングによる通信品質の向上を図ることができる。以下に、BF実行決定部124の動作について詳細に説明する。
本実施形態では、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良い場合には、つまり、ビームフォーミングの実行によって上り通信品質が向上する場合には、通信部13の送信時におけるビームフォーミングの実行を許可する。一方で、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質と同じか悪い場合に、つまり、ビームフォーミングの実行によって上り通信品質が向上しない場合には、通信部13での送信時におけるビームフォーミングの実行を不許可とする。以後、BF実行決定部124が行う、通信部13での送信時におけるビームフォーミングの実行の可否を決定する処理を「BF実行決定処理」と呼ぶ。
図3はBF実行決定処理を示すフローチャートである。BF実行決定部124は、図3に示されるBF実行決定処理を定期的あるいは不定期的に間隔を空けて実行する。
BF実行決定処理では、図3に示されるように、ステップs1において、BF実行決定部124は、通信部13に対して、ビームフォーミングを実行せずに継続的に送信することを通知する。この通知を受けた通信部13はビームフォーミングを実行せずに継続的に送信する。このとき、通信部13では、送信ウェイト処理部122が、送信ウェイトを生成せずに、入力される送信信号をそのまま無線処理部11に入力する。これにより、通信部13はビームフォーミングを実行せずにオムニ送信を行う。
次にステップs2において、BF実行決定部124は、BF不実行時送信品質を取得する。
ここで、通信端末1aが送信する場合の通信品質、つまり上り通信品質を表す情報としては様々な情報が考えられる。本実施の形態では、例えば、基地局2が通信端末1aに通知するMCS(Modulation and Coding Scheme)を、通信端末1aが送信する場合の通信品質を表す情報として使用する。
MCSは、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの変調方式と誤り訂正符号の符号化率との組み合わせを示すものである。送信信号生成部120は、基地局2から通知されるMCS(変調方式及び誤り訂正符号の符号化率)を用いて送信信号を生成する。
本実施の形態に係る無線通信システム100では、変調方式及び符号化率の組み合わせが互いに異なるM個(M≧2)のMCSが規定されている。LTEにおいては、29個のMCSが規定されている。そして、M個のMCSに対しては、0段階から(M−1)段階までのMCSランク(「MCSレベル」とも呼ばれる)がそれぞれ付与されており、MCSランクが上がるほど、それに対応するMCSでの変調方式及び符号化率の組み合わせで決定される瞬時の送信スループットが大きくなっている。
本実施の形態では、基地局2は、受信した通信端末1aの送信信号に基づいて、例えば、上り通信品質を示すSINR(信号対干渉雑音電力比:Signal to Interference plus Noise power Ratio)を求める。そして、基地局2は、求めたSINRに基づいて、現在の上り通信品質に応じたMCS、つまり現在の上り通信品質において通信端末1aの送信信号を適切に受信することが可能なMCSを決定する。基地局2は、決定したMCSについてのMCSランクを通信端末1aに通知する。これにより、通信端末1aには、送信信号に適用するMCSが基地局2から通知される。
さらに、本実施の形態では、基地局2は、SINRに基づいて、現在の上り通信品質に応じた、通信端末1aに設定されるべき設定送信電力を決定する。基地局2は、現在の上り通信品質において、通信端末1aの送信信号を適切に受信するために必要な通信端末1aの送信電力をSINRに基づいて決定し、決定した送信電力を設定送信電力とする。
なお、通信端末1aは、基地局2からの設定送信電力の通知がなくとも設定送信電力を自ら求めることが可能である。この場合には、通信端末1aは、基地局2からの受信信号に基づいて当該基地局2からの電波の減衰量を算出し、算出した減衰量と当該基地局2から通知されるMCSとに基づいて設定送信電力を算出して調整する。このように、通信端末1aが自ら設定送信電力を算出する場合には、基地局2は、通信端末1aから受信信号についての受信電力が所望値から大きくずれる場合のみ当該通信端末1aに対して送信電力の増減を指示する。
基地局2は、MCSレベルとともに必要に応じて設定送信電力を通信端末1aに通知する。通信端末1aでは、通信部13の送信電力が設定送信電力となるように、無線処理部11が有する送信アンプのゲインが制御部12によって調整される。
このように、基地局2から通信端末1aに通知されるMCSは、上り通信品質に応じて決定されることから、当該MCSは、通信部13が送信する場合の通信品質を示していると言える。基地局2から通知されるMCSランクが高いほど、通信部13が送信する場合の通信品質が良いと言える。
ステップs1の後、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信することを開始すると、ステップs2において、BF実行決定部124は、基地局2からの受信信号から受信データ取得部121が取得したデータに含まれるMCSランクを取得することによって、BF不実行時送信品質を取得する。以後、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信している間に基地局2から通信端末1aに通知されるMCSランクを「BF不実行時MCSランク」と呼ぶ。
ステップs2の後、ステップs3において、BF実行決定部124は、通信部13に対して、ビームフォーミングを実行して継続的に送信することを通知する。この通知を受けた通信部13は、ビームフォーミングを実行して継続的に送信する。このとき、通信部13では、送信ウェイト処理部122が、送信ウェイトを生成し、入力される送信信号に対して送信ウェイトを設定し、送信ウェイトが設定された送信信号を無線処理部11に入力する。
次にステップs4において、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質を取得する。具体的には、ステップs3の後、通信部13がビームフォーミングを実行して送信を開始すると、BF実行決定部124は、基地局2からの受信信号から受信データ取得部121が取得したデータに含まれるMCSランクを取得する。このMCSランクは、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合の通信品質を示していることから、BF実行決定部124は、当該MCSランクを取得することによって、BF実行時送信品質を取得する。以後、通信部13がビームフォーミングを実行して送信している間に基地局2から通信端末1aに通知されるMCSランクを「BF実行時MCSランク」と呼ぶ。
次にステップs5において、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良いかを判断する。具体的には、BF実行決定部124は、ステップs4で取得したBF実行時MCSランクと、ステップs2で取得したBF不実行時MCSランクとを比較し、BF実行時MCSランクがBF不実行時MCSランクよりも高い場合には、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良いと判断する。一方で、BF実行決定部124は、BF実行時MCSランクがBF不実行時MCSランク以下の場合には、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質以下であると判断する。
ステップs5において、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良いと判断すると、ステップs6において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を許可する。これにより、BF実行決定処理が終了する。BF実行決定部124において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可されると、以後、通信部13は送信時にビームフォーミングを実行する。
一方で、ステップs5において、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質以下であると判断すると、ステップs7において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を不許可にする。これにより、BF実行決定処理が終了する。BF実行決定部124において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が不許可にされると、以後、通信部13は、ビームフォーミングを実行せずに送信を行う。
BF実行決定部124は、BF実行決定処理が終了し、次のBF実行決定処理の実行タイミングになると、ステップs1を実行し、以後同様に動作する。
なお、BF実行決定処理では、ステップs3,s4を実行した後に、ステップs1,s2を実行しても良い。
また上記の例では、BF実行決定部124、基地局2からMCSレベルを取得することによってBF実行時送信品質及びBF不実行時送信品質を取得していたが、上り通信品質を示す他の種類の情報を取得することによって、BF実行時送信品質及びBF不実行時送信品質を取得しても良い。例えば、BF実行決定部124は、通信端末1aの送信信号についての基地局2での受信エラーレートを取得することによって、BF実行時送信品質及びBF不実行時送信品質を取得しても良い。以下にこの場合の通信端末1aの動作について説明する。
基地局2は、通信端末1aの送信信号を受信すると、当該送信信号を適切に受信できたかどうかを示す応答信号を通信端末1aに送信する。基地局2は、通信端末1aの送信信号を適切に受信すると、応答信号としてACK信号を通信端末1aに送信する。一方で、基地局2は、通信端末1aの送信信号を適切に受信できなかった場合には、応答信号としてNACK信号を通信端末1aに送信する。BF実行決定部124は、ステップs1の後、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信を開始すると、ステップs2において、通信部13が送信信号を所定回数A1、ビームフォーミングを実行せずに送信した場合における、通信部13でのNACK信号の受信回数A2を取得する。BF実行決定部124は、受信データ取得部121が受信信号から取得したデータにNACK信号が含まれているかを確認することによって、通信部13がNACK信号を受信したかを知ることができる。そして、BF実行決定部124は、受信回数A2を所定回数A1で除算して得られる値を、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合の基地局2での受信エラーレートとする。当該受信エラーレートは、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合の通信品質を示していることから、BF実行決定部124は、当該受信エラーレートを求めることによって、BF不実行時送信品質を取得できる。
また、BF実行決定部124は、ステップs3の後、通信部13がビームフォーミングを実行して送信を開始すると、ステップs4において、通信部13が通信部13が送信信号を所定回数B1、ビームフォーミングを実行して送信した場合における、通信部13でのNACK信号の受信回数B2を取得する。そして、BF実行決定部124は、受信回数B2を所定回数B1で除算して得られる値を、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合の基地局2での受信エラーレートとする。当該受信エラーレートは、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合の通信品質を示していることから、BF実行決定部124は、当該受信エラーレートを求めることによって、BF実行時送信品質を取得できる。BF実行決定部124は、ステップs5において、ステップs2で求めた受信エラーレートとステップs4で求めた受信エラーレートとを比較して、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良いかを判断する。
また、BF実行決定部124は、基地局2が通信端末1aの送信信号について求めたSINRが当該基地局2から当該通信端末1aに通知される場合には、当該SINRを上り通信品質を示す情報として使用しても良い。この場合には、BF実行決定部124は、ステップs1の後、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信を開始すると、ステップs2において、基地局2から通知されるSINRを、受信データ取得部121が取得したデータから取得する。また、BF実行決定部124は、ステップs3の後、通信部13がビームフォーミングを実行して送信を開始すると、ステップs4において、基地局2から通知されるSINRを、受信データ取得部121が取得したデータから取得する。そして、BF実行決定部124は、ステップs5において、ステップs2で取得したSINRとステップs4で取得したSINRとを比較して、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良いかを判断する。
以上のように、本実施の形態では、BF実行決定部124が、BF実行時送信品質及びBF不実行時送信品質に基づいて、通信部13での送信時におけるビームフォーミングの実行の可否を決定するため、通信端末1aの消費電力が無駄に増加することを抑制することができる。よって、通信端末1aの消費電力を抑制しつつ、ビームフォーミングによる通信品質の向上を図ることができる。本実施の形態のように、通信端末1aが電池駆動する場合には、通信端末1aの消費電力が無駄に増加することを抑制することは特に有効である。
<各種変形例>
次に本実施の形態の各種変形例について説明する。
<第1変形例>
上記の例において、通信部13が送信時にビームフォーミングを実行することによって、上り通信品質が向上したとしても、通信端末1aの消費電力が大幅に増大する場合には、通信端末1aの消費電力の増大に見合った以上の上り通信品質の向上が得られず、消費電力をできるだけ抑制したいという観点からは、通信部13では送信時にビームフォーミングが実行されない方が良いと考えることができる。
そこで、本変形例では、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質及びBF不実行時送信品質だけではなく、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合及びビームフォーミングを実行せずに送信する場合の通信端末1aの消費電力にも基づいて、通信部13での送信時におけるビームフォーミングの実行の可否を決定する。これにより、消費電力をさらに抑制しつつ、ビームフォーミングによる通信品質の向上を図ることができる。以下に本変形例について詳細に説明する。以後、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合の通信端末1aの消費電力を「BF実行時消費電力」と呼ぶ。また、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合の通信端末1aの消費電力を「BF不実行時消費電力」と呼ぶ。
図4は、本変形例に係る通信端末1aが備える制御部12のメモリに記憶されている送信データ量テーブル200を示す図である。また図5は、制御部12のメモリに記憶されている消費電力テーブル300を示す図である。送信データ量テーブル200及び消費電力テーブル300はBF実行決定処理で使用される。
図4に示されるように、送信データ量テーブル200では、M種類のMCSランク0〜(M−1)のそれぞれに対して、通信端末1aが送信時に当該MCSランクのMCS(変調方式及び符号化率の組み合わせ)を使用した際の単位無線リソースあたりの送信データ量が対応付けられている。ここで、単位無線リソースあたりの送信データ量SD_x(0≦x≦M−1)は、通信端末1aが送信時にMCSランクxのMCSを使用した際の単位無線リソースあたりの送信データ量を意味している。単位無線リソースあたりの送信データ量SD_xは、例えばビット数で表される。本例では、無線通信システム100はLTEであるため、ここでの単位無線リソースとしては、例えばリソースブロック(RB)が使用できる。リソースブロックは、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースであって、周波数方向に180kHzの周波数帯域幅を含み、時間方向に0.5msの時間幅を含んでいる。LTEでは、1つのTDDフレームは10個のサブフレームで構成されており、各サブフレームの時間長は1msとなっている。以後、単位無線リソースあたりの送信データ量SD_xを単に「送信データ量SD_x」と呼ぶことがある。送信データ量テーブル200は、制御部12のメモリに予め記憶されている。
また図5に示されるように、消費電力テーブル300には、複数種類の送信電力のそれぞれに対して、通信端末1aが当該送信電力で送信する際の単位時間あたりの消費電力が対応付けられている。ここで、単位時間あたりの消費電力C_y(y=1,2,3・・・)は、通信端末1aが送信電力P_yで送信する際の単位時間あたりの消費電力を意味している。また、単位時間あたりの消費電力C_yは、通信部13が送信時にビームフォーミングを実行しない場合での単位時間あたりの消費電力である。ここでの単位時間は、例えば、サブフレームの時間長、つまり1msとする。以後、単位時間あたりの消費電力C_yを単に「消費電力C_y」と呼ぶことがある。消費電力テーブル300は、制御部12のメモリに予め記憶されている。
図6は本変形例に係るBF実行決定部124でのBF実行決定処理を示すフローチャートである。本変形例に係るBF実行決定処理では、BF実行決定部124が、BF実行時送信品質と、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合における通信端末1aの消費電力との関係を示すBF実行時評価値と、BF不実行時送信品質と、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合における通信端末1aの消費電力との関係を示すBF不実行時評価値とを求める。そして、BF実行決定部124は、BF実行時評価値とBF不実行時評価値との比較結果に基づいて、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行の可否を決定する。
図6に示されるように、上述のステップs1と同様に、ステップs11において、BF実行決定部124は、通信部13に対して、ビームフォーミングを実行せずに継続的に送信することを通知する。この通知を受けた通信部13は、ビームフォーミングを実行せずに継続的に送信を行う。
ステップs11の後、ステップs12において、BF実行決定部124は、上述のステップs2と同様に、受信データ取得部121が受信信号から取得したデータに含まれるBF不実行時MCSランクを取得することによって、BF不実行時送信品質を取得する。さらにステップs12において、BF実行決定部124は、受信データ取得部121が受信信号から取得したデータに含まれる、BF不実行時MCSレベルとともに基地局2から送信される設定送信電力を取得する。あるいは、BF実行決定部124は、BF不実行時MCSレベルを用いて、上述のようにして設定送信電力を算出して取得する。
次にステップs13において、BF実行決定部124は、ステップs12で取得したBF実行時送信品質(BF不実行時MCSランク)及び設定送信電力と、制御部12が記憶する送信データ量テーブル200及び消費電力テーブル300とを用いて、BF不実行時評価値を求める。以下にBF不実行時評価値の算出方法について説明する。
BF実行決定部124は、送信データ量テーブル200から、ステップs12で取得したBF不実行時MCSランクxに対応する送信データ量SD_xを取得する。この送信データ量SD_xを「第1送信データ量SD1」と呼ぶ。
第1送信データ量SD1は、通信端末1aが送信時にBF不実行時MCSランクxのMCSを使用する際の単位無線リソースあたりの送信データ量を意味していることから、BF不実行時MCSランクxに応じて変化する。BF不実行時MCSランクxはBF不実行時送信品質に応じて変化することから、第1送信データ量SD1もBF不実行時送信品質に応じて変化する。よって、第1送信データ量SD1は、BF不実行時MCSランクxと同様に、BF不実行時送信品質を示していると言える。
またBF実行決定部124は、消費電力テーブル300に登録されている、ステップs12で取得した設定送信電力に最も近い送信電力P_yを特定する。そして、BF実行決定部124は、消費電力テーブル300から、特定した送信電力P_yに対応する消費電力C_yを取得する。以後、この消費電力C_yを「第1消費電力C1」と呼ぶ。第1消費電力C1は、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合における通信端末1aの消費電力、つまりBF不実行時消費電力に相当する。
BF実行決定部124は、第1送信データ量SD1及び第1消費電力C1を取得すると、以下の式(1)を用いてBF不実行時評価値EV1を求める。
EV1=C1/SD1 ・・・(1)
式(1)から理解できるように、BF不実行時評価値EV1は、BF不実行時消費電力を、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合における単位無線リソースあたりの送信データ量で除算した値である。したがって、BF不実行時評価値EV1は、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合での単位送信データ量(本例では1ビット)あたりの消費電力を示している。単位送信データ量あたりの消費電力は、消費電力の観点から見た送信効率を表していると見ることもできることから、BF不実行時評価値EV1は、ビームフォーミング不実行時の送信効率を表していると言える。
ステップs13においてBF不実行時評価値EV1が求められると、ステップs14において、BF実行決定部124は、上述のステップs3と同様に、通信部13に対して、ビームフォーミングを実行して継続的に送信することを通知する。この通知を受けた通信部13はビームフォーミングを実行して継続的に送信を行う。
次にステップs15において、BF実行決定部124は、上述のステップs4と同様に、受信データ取得部121が受信信号から取得したデータに含まれるBF実行時MCSランクを取得することによって、BF実行時送信品質を取得する。さらにステップs15において、BF実行決定部124は、受信データ取得部121が受信信号から取得したデータに含まれる、BF実行時MCSレベルとともに基地局2から送信される設定送信電力を取得する。あるいは、BF実行決定部124は、BF実行時MCSレベルを用いて、上述のようにして設定送信電力を算出して取得する。
次にステップs16において、BF実行決定部124は、ステップs15で取得したBF実行時送信品質(BF実行時MCSランク)及び設定送信電力と、制御部12が記憶する送信データ量テーブル200及び消費電力テーブル300とを用いて、BF実行時評価値を求める。以下にBF実行時評価値の算出方法について説明する。
BF実行決定部124は、送信データ量テーブル200から、ステップs15で取得したBF実行時MCSランクxに対応する送信データ量SD_xを取得する。この送信データ量SD_xを「第2送信データ量SD2」と呼ぶ。第2送信データ量SD2は、BF実行時送信品質に応じて変化することから、BF実行時MCSランクxと同様にBF実行時送信品質を示していると言える。
またBF実行決定部124は、消費電力テーブル300に登録されている、ステップs15で取得した設定送信電力に最も近い送信電力P_yを特定する。そして、BF実行決定部124は、消費電力テーブル300から、特定した送信電力P_yに対応する消費電力C_yを取得する。この消費電力C_yを「第2消費電力C2」と呼ぶ。
BF実行決定部124は、第2送信データ量SD2及び第2消費電力C2を取得すると、以下の式(2)を用いてBF実行時評価値EV2を求める。
EV2=(C2+C_bf)/SD2 ・・・(2)
ここで、式(2)中のC_bfは、通信部13での送信時のビームフォーミングに関する処理(送信ウェイトを生成する処理等)で必要となる単位時間あたりの消費電力を示している。この単位時間は、例えばサブフレームの時間長(1ms)とする。したがって、(C2+C_bf)は、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合における通信端末1aの消費電力、つまりBF実行時消費電力に相当する。
式(2)から理解できるように、BF実行時評価値EV2は、BF実行時消費電力を、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合における単位無線リソースあたりの送信データ量で除算した値である。したがって、BF実行時評価値EV2は、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合での単位送信データ量あたりの消費電力を示している。単位送信データ量あたりの消費電力は、消費電力の観点から見た送信効率を表していると見ることもできることから、BF実行時評価値EV2は、ビームフォーミング実行時の送信効率を表していると言える。
ステップs16の後、ステップs17において、BF実行決定部124は、BF実行時評価値EV2とBF不実行時評価値EV1とを比較して、BF実行時評価値EV2がBF不実行時評価値EV1よりも小さいかを判断する。つまり、BF実行決定部124は、通信部13がビームフォーミングを実行して送信する場合での単位送信データ量あたりの消費電力が、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信する場合での単位送信データ量あたりの消費電力よりも小さいかを判断する。
BF実行決定部124は、ステップs17において、BF実行時評価値EV2がBF不実行時評価値EV1よりも小さいと判断すると、ビームフォーミングの実行によって送信効率が向上すると判断して、ステップs18において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を許可する。言い換えれば、BF実行決定部124は、BF実行時評価値EV2がBF不実行時評価値EV1よりも小さい場合には、ビームフォーミングの実行により、消費電力の増加に見合った分以上の通信品質の向上が得られると判断して、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を許可する。
ステップs18が実行されると、BF実行決定処理が終了する。BF実行決定部124において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可されると、以後、通信部13は送信時にビームフォーミングを実行する。
一方で、BF実行決定部124は、ステップs17において、BF実行時評価値EV2がBF不実行時評価値EV1以上であると判断すると、ビームフォーミングの実行によって送信効率が向上しないと判断して、ステップs19において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を許可しない。言い換えれば、BF実行決定部124は、BF実行時評価値EV2がBF不実行時評価値EV1以上である場合には、ビームフォーミングを実行したとしても、消費電力の増加に見合った分以上の通信品質の向上が得られていないと判断して、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を許可しない。
ステップs19が実行されると、BF実行決定処理が終了する。BF実行決定部124において、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可されない場合には、以後、通信部13は送信時にビームフォーミングを実行しない。
以上のように、本変形例では、BF実行決定部124が、BF実行時送信品質とBF実行時消費電力との関係を示すBF実行時評価値と、BF不実行時送信品質とBF不実行時消費電力との関係を示すBF不実行時評価値との比較結果に基づいて、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行の可否を決定するため、通信端末1aの消費電力をさらに抑制しつつ、ビームフォーミングの実行による送信時の通信品質の向上を図ることができる。
なお、BF実行時評価値及びBF不実行時評価値が求められる際に使用される、上り通信品質を示す指標値として、単位無線リソースあたりの送信データ量が採用されているが、当該指標値として他の種類の値が採用されても良い。例えば、上り通信品質を示す指標値として、通信端末1aの送信信号についての基地局2での受信エラーレートが採用されても良い。この場合には、式(1)において、第1送信データ量SD1の代わりに、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信した際の基地局2での受信エラーレートが代入される。また、式(2)において、第2送信データ量SD2の代わりに、通信部13がビームフォーミングを実行して送信した際の基地局2での受信エラーレートが代入される。
また、上り通信品質を示す指標値として、基地局2が通信端末1aの送信信号について求めたSINRが採用されても良い。この場合には、式(1)において、第1送信データ量SD1の代わりに、基地局2で求められた、通信部13がビームフォーミングを実行せずに送信した送信信号についてのSINRが代入される。また、式(2)において、第2送信データ量SD2の代わりに、基地局2で求められた、通信部13がビームフォーミングを実行して送信した送信信号についてのSINRが代入される。
また、上記の例では、通信端末1aの消費電力を、上り通信品質を示す指標値で除算した値をBF実行時評価値及びBF不実行時評価値としているが、上り通信品質を示す指標値を、通信端末1aの消費電力で除算した値をBF実行時評価値及びBF不実行時評価値としても良い。この場合には、BF実行時評価値及びBF不実行時評価値が大きいほど送信効率は良くなることから、ステップs17において、BF実行時評価値はBF不実行時評価値よりも大きいか判断される。そして、BF実行時評価値がBF不実行時評価値よりも大きい場合にはステップs18が実行されて、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可される。一方で、BF実行時評価値がBF不実行時評価値以下の場合にはステップs19が実行されて、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が不許可とされる。
<第2変形例>
上記の第1変形例では、ビームフォーミングの実行による上り通信品質の向上が期待できない場合であっても、状況によっては、ステップs17において、BF実行時評価値がBF不実行時評価値よりも小さくなって、ビームフォーミングの実行によって送信効率が向上すると判断されることがある。この場合には、ビームフォーミングの実行による上り通信品質の向上が期待できないにもかかわらず、通信部13が送信時にビームフォーミングを実行するようなる。
そこで、本変形例では、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質以下である場合に、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可されないようにすることによって、ビームフォーミングの実行による上り通信品質の向上が期待できない場合に、通信部13が送信時にビームフォーミングを実行することを確実に抑制する。
具体的には、図7に示されるように、BF実行決定部124は、ステップs17の前に、ステップs25を実行する。ステップs25では、上述の図3のステップs5と同様に、BF実行決定部124は、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良いかを判断する。
BF実行決定部124は、ステップs25において、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質以下であると判断した場合には、ステップs19を実行して、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を許可しない。これにより、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質以下である場合には、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可されない。よって、ビームフォーミングの実行による上り通信品質の向上が期待できない場合に、通信部13が送信時にビームフォーミングを実行することを確実に抑制することができる。
一方で、BF実行決定部124は、ステップs25において、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良いと判断すると、ステップs17を実行して、BF実行時評価値がBF不実行時評価値よりも小さいかを判断する。その後、BF実行決定部124は、第1変形例と同様に動作する。
なお、BF実行決定部124は、ステップs25の後に実行されるステップs17において、BF実行時評価値とBF不実行時評価値とを比較する場合には、BF実行時評価値が、BF不実行時評価値よりも所定量だけ大きい値よりも小さいかを判断しても良い。例えば、BF実行決定部124は、BF実行時評価値が、BF不実行時評価値の100%よりも大きくBF不実行時評価値の120%以下である値(例えばBF不実行時評価値の110%の値)よりも小さいかを判断しても良い。
このような場合には、BF実行決定部124は、BF実行時評価値が、BF不実行評価値よりも所定量だけ大きい値よりも小さい場合にはステップs18を実行し、そうではない場合にはステップs19を実行する。これにより、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良く、ビームフォーミングの実行による上り通信品質の向上が期待できる場合には、BF実行時評価値がBF不実行時評価値よりも多少大きい場合であっても、つまりビームフォーミングの実行により送信効率が多少悪化する場合であっても、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可されるようになる。
また、BF実行決定部124は、ステップs25の後に実行されるステップs17において、BF実行時評価値が、BF不実行時評価値よりも所定量だけ小さい値よりも小さいかを判断しても良い。例えば、BF実行決定部124は、BF実行時評価値が、BF不実行時評価値の100%未満であってBF不実行時評価値の80%以上である値(例えばBF不実行時評価値の90%の値)よりも小さいかを判断しても良い。
このような場合には、BF実行決定部124は、BF実行時評価値が、BF不実行評価値よりも所定量だけ小さい値よりも小さい場合にはステップs18を実行し、そうではない場合にはステップs19を実行する。これにより、BF実行時送信品質がBF不実行時送信品質よりも良く、ビームフォーミングの実行による上り通信品質の向上が期待できる場合であって、BF実行時評価値がBF不実行時評価値よりもある程度小さい場合には、つまりビームフォーミングの実行により送信効率がある程度向上する場合には、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行が許可されるようになる。
<第3変形例>
上記の例のように、通信端末1aが電池15から供給される電力で動作する場合には、BF実行決定部124は、電池残量取得部125で取得される電池15についての電池残量が所定値よりも大きい場合には、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を常に許可しても良い。この場合には、BF実行決定部124は、電池残量取得部125で取得される電池15の電池残量が所定値よりも小さい場合に、上記のBF実行決定処理を実行する。これにより、電池15の電池残量がある程度少なくなった時点で、図3,6,7等に示されるBF実行決定処理が実行されるようになる。
なお、電池15の電池残量と比較される所定値については、電池残量をパーセンテージで表示したとすると、例えば10%以上50%以下の値が採用される。
また、電池15の電池残量が所定値と一致する場合には、BF実行決定部124は、通信部13での送信時のビームフォーミングの実行を常に許可しても良いし、BF実行決定処理を行っても良い。
<その他の変形例>
上記の例では、本願発明をLTEに適用する場合について説明したが、本願発明は他の無線通信システムにも適用することができる。また上記の例では、本発明を基地局と通信する通信端末に適用する場合については説明したが、本発明は他の無線通信装置にも適用することができる。例えば、本発明は、基地局が送信時にビームフォーミングを実行する場合にも適用することができる。
本発明の実施の形態は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。