JP6062218B2 - 化学センサおよび化学センサの製造方法 - Google Patents
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そしてその中でも、検出対象となる物質などとの生体親和性や吸着性などの観点から、検出部にハイドロキシアパタイト等のリン酸塩を用いたものが特許文献1〜4においては開示されている。また、本願発明者においても特許文献5、6において検出部にハイドロキシアパタイトを用いた化学センサを開示している。
従って、検出部にハイドロキシアパタイトを使用する場合には、検出部(検出表面)をa軸面やc軸面とすることができれば、検出物質を選択的に吸着したり、検出物質をクロマトグラフィーのように分離したり、特定の検出物質のみを測定したりすることが可能となり、その結果化学センサとしての検出感度を向上させることが可能となることが予想される。
従って、これら構造が種々異なる検出対象となる物質に対応するためには、検出部(特に検出表面)のリン酸塩の配向性を容易に制御できるものであることが好ましい。
従って、従前の化学センサはリン酸塩の配向が制御されておらず、その結果、検出感度などの点において改善の余地があるものであった。
まず、本発明の化学センサに用いられる基板層は、後記する中間層を形成するための土台としての役目を担うものであり、特に酸化亜鉛を主成分とする中間層を所望する配向構造で形成するための土台としての役目を担うものである。
また、チタンが好ましい理由としては、チタンはそもそも人工歯根や人工骨の母材となっていることから、チタンを基板層に用いることで歯質表面や骨表面などを模擬した化学センサを作製することができる点が挙げられる。
次に、本発明の化学センサに用いられる中間層は、後記するリン酸塩を主成分とする薄膜層に配向性を付与するためのものであり、本発明において最も重要な構成要件となる。具体的には、中間層のうちの少なくとも1つに酸化亜鉛を主成分とする中間層を備えることが必要である。このような特定の組成を持つ中間層を、基板層と後記する薄膜層との間に形成することによって、後記するリン酸塩を主成分とする薄膜層を形成する際にリン酸塩の配向性を制御することができ、その結果従来よりも検出感度を向上させた化学センサを作製することができるのである。
最後に、本発明の化学センサに用いられる薄膜層は、化学センサの検出部(検出表面)としての役目を担うものであり、リン酸塩を主成分とするものであることが必要である。このような組成を持つ薄膜層を検出表面として形成することによって、配向性が制御されたリン酸塩の検出表面を作製することができ、従来よりも検出感度を向上させた化学センサを作製することができるのである。
そしてこれらの中でも、検出対象となる物質との生体親和性や吸着性などの観点から、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)、元素置換アパタイト、元素置換リン酸三カルシウムからなる群から選択されるいずれか一種以上を用いることが好ましい。特に、元素置換アパタイトや元素置換リン酸三カルシウムを用いた場合には、薄膜層の一部を容易に元素置換することができることから、より生体の構造に近似した構造を有する化学センサを作製することができ好適である。
本発明に係る化学センサの製造方法(製造工程)は、導電性の基板層と検出表面としてのリン酸塩を主成分とする薄膜層を形成する工程に加えて、酸化亜鉛を主成分とする中間層を形成する工程を備えることが必要である。より具体的には、以下の工程を経て本発明に係る化学センサの製造を行う。
1)検出表面(薄膜層)に配向性を持たせた化学センサを作製することができる。
2)従来よりも検出感度を向上させた化学センサを作製することができる。
3)検出表面の配向性を制御することができることから、検出対象となる物質中の正電荷を帯びた物質や負電荷を帯びた物質を選択的に検出することができる。
4)検出表面の配向性を制御することができることから、液体(特に酸性を有する試薬等)に対する溶解度を低下させることができ、耐薬品性を向上させた化学センサを作製することができる。
5)リン酸塩の結晶度合や配向度合と検出対象となる物質との吸着性の関係を定量的に評価することが可能となるため、リン酸塩を利用した製品開発への応用ができるようになる。
6)様々な結晶構造を調整できることから、製品開発において最適な材料表面の結晶性をシミュレートすることができる。
7)配向性の制御が可能となることから、歯質表面や骨表面などを模擬したセンサ表面を得ることができ、生体外において治療器具、治療法、検査用機器、検査法等の開発用の試験を行うことができる。
8)特に、検査表面をc軸配向とした場合には歯質表面を模擬したセンサ表面を得ることができるため、口腔ケア用製品(歯磨き粉、マウスウォッシュ剤等)の開発用の試験材料を作製することができる、
9)外科用骨補填材料(人工物)として用いられているリン酸塩と同様な結晶構造を有するセンサを作製することが可能となり、生体材料開発用の試験に用いることができる。
まず、土台層となる石英板上に真空蒸着法によって基板層となる金の薄膜を形成した。
次に、酸化亜鉛の焼結体をターゲットとしてKrFエキシマレーザー(λ=248nm)を用いたパルスレーザ堆積(以下PLD)法により、2×10−4Pa以下にした真空容器内へO2を8×10−4Pa導入し、繰返し周波数10Hz、基板温度210℃、膜厚200nmの条件で中間層となる酸化亜鉛薄膜を上記基板層上に形成した。
次に、ハイドロキシアパタイトの粉末をターゲットとしてKrFエキシマレーザー(λ=248nm)を用いたパルスレーザ堆積(以下PLD)法により、2×10−4Pa以下にした真空容器内へ水蒸気を含有したO2を2Pa導入し、繰返し周波数10Hz、基板温度450℃、膜厚500〜600nmの条件で薄膜層となるハイドロキシアパタイト薄膜を上記中間層上に形成した。
最後に、上記によって作製した複合体を、水蒸気を含有したO2雰囲気中において500℃の条件で10時間加熱処理することによって、実施例の化学センサを作製した。
中間層を形成しなかった以外は、実施例と同様にして比較例の化学センサを作製した。
次に、上記によって得た実施例および比較例の化学センサについてX線回折による解析を行った。結果を図2〜図4に示す。
これに対して、中間層を設けない比較例の化学センサのX線回折データは、図4に示す通りハイドロキシアパタイトのピークが至る所に存在しており、薄膜層が配向性を有していないことが分かった。
2 基板層
3 中間層
4 薄膜層
5 土台層
Claims (8)
- 導電性の基板層と、
検出表面としてのリン酸塩を主成分とする薄膜結晶層と、
前記基板層と前記薄膜結晶層との間に設けた中間層を備える化学センサであって、
前記中間層のうちの少なくとも1つに酸化亜鉛を主成分とする中間層を備えることを特徴とする化学センサ。
- 前記薄膜結晶層が、
前記酸化亜鉛を主成分とする中間層の上層に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の化学センサ。
- 前記薄膜結晶層が、
前記検査表面の略全面に形成されており、
かつ前記酸化亜鉛を主成分とする中間層の面積が、
前記薄膜結晶層の面積と略同一またはそれ以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化学センサ。
- 前記薄膜結晶層が、
ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)、元素置換アパタイト、元素置換リン酸三カルシウムからなる群から選択されるいずれか一種以上のものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の化学センサ。
- 前記基板層が、
金、白金、チタンからなる群から選択されるいずれか一種以上の金属であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の化学センサ。
- 導電性の基板層上に酸化亜鉛を主成分とする中間層を形成する工程と、
前記中間層上にリン酸カルシウム化合物を主成分とする薄膜層を形成する工程と、
前記薄膜層が形成された複合体を熱処理または焼結処理して薄膜結晶層を形成する工程とを有することを特徴とする化学センサの製造方法。
- 前記薄膜層が、
気相法によって形成されるものであることを特徴とする請求項6に記載の化学センサの製造方法。
- 前記薄膜結晶層は、
形成中または/および形成後に、
熱処理または焼結処理を行ったものであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の化学センサの製造方法。
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