JP6060198B2 - 熱劣化試験方法 - Google Patents

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Description

本発明は、高分子成分を含む材料よりなる各種被試験体の熱劣化試験方法に関するものである。
高分子成分を含む材料よりなる各種被試験体についての耐熱性を評価するため、従来から種々の試験が行われている。
熱劣化試験の例として、熱変形温度を測定するボールプレッシャー試験、荷重たわみ温度試験、ビカット軟化温度試験等がある。
ボールプレッシャー試験は、球状端子を用いて被試験体に所定の荷重を印加した状態で、媒質内(気中又は油中)に放置し、この媒質温度を変更しつつ所定温度における被試験体の凹み量を測定するものである(非特許文献1参照)。
荷重たわみ温度試験及びビカット軟化温度試験も、端子形状はそれぞれ異なるものの、被試験体に端子を用いて所定の荷重を印加した状態でこれを媒質内に配置し、媒質温度を変化させ所定の変形量が生じる温度を求める試験である(非特許文献2及び3参照)。
しかし、熱変形温度を求める試験は、材料の軟化する温度を求める試験であるが、その温度における寸法以外の特性の変化について試験を行うことはできず、高温下における被試験体の経時劣化に関する試験として採用することはできない。
一方、材料の熱に対する様々な応答性を確認する方法として、熱重量測定、示差走査熱量測定、動的熱機械測定等の熱分析の手法がある。
熱重量測定は、温度の変化に対する重量の変化を測定することで、酸化、熱分解、反応速度等の特性を得ることができる分析方法である。
示差走査熱量測定は、温度の変化に対する熱量の変化を測定することで、融点やガラス転移点等が分かる分析方法である。
動的熱機械測定は、温度の変化に対する弾性率の変化を測定することで、熱と力学的性質の相関性を把握することができる分析方法である。
しかし、熱分析の手法を用いて行う高温下の様々な応答性の試験では、一般に上述した軟化温度よりも高い温度域における被試験体を構成する材料の分解や蒸発等に伴う特性が調査される。そのため、実際に被試験体が使用される温度下やその近傍の温度下における材料の特性について試験を行うことはできない。
そこで、被試験体の材料の使用温度域近傍であって実際の使用温度よりも高い温度域において材料の耐熱性を評価する長期熱劣化試験が行われている。
この長期熱劣化試験は、高温下で材料の各種特性を試験する方法として一般的に用いられている(非特許文献4参照)。
長期熱劣化試験の典型的な評価方法として、耐熱性の評価では、材料の電気特性や機械特性を評価項目とした評価が行われる。
電気特性としては、絶縁破壊電圧等が挙げられる。機械特性としては、静的強さ試験として、引張強さ試験や曲げ強さ試験等が挙げられる。
また、これら以外にも、衝撃強さ試験として引張衝撃試験やアイゾット衝撃試験、シャルピー衝撃試験等が行われる場合がある他、燃焼性についても評価項目となる場合もある。
こうした長期熱劣化試験は、上記試験項目に対応した被試験体を複数個準備し、これらを所定の温度に調整された複数の恒温槽にそれぞれ複数個ずつ投入し、所定温度による加熱劣化(エージング)を行いつつ、その過程で随時被試験体を取り出して、試験項目の劣化の程度を測定していくことで行われる。
また、耐熱性の評価指数としては、一般的に上述した評価試験における評価項目の初期値に対する劣化の割合等が挙げられる。
例えば、上述したように長時間の加熱を行う過程で随時被試験体を取り出し試験を行い、初期値に対する評価項目の保存の割合(保持率)を求め、保持率が50%となった時間を被試験体の寿命時間として判別することが行われる。
このとき、保持率が半減したことを正確に測定するため、被試験体は一度に複数個取り出され、そのすべてについて評価項目の測定を行い、平均値を算出することで判別が行われる。
こうして得られた各時点における保持率について、下記式(1)に基づくアレニウスグラフが作成される。
V=α・exp(−E/R/T)…(1)
ここで、Vは反応速度、αは定数、Eは反応を促す活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは絶対温度を示している。絶対温度(K)は摂氏温度(℃)+273.15で規定される。
また、材料固有の特性値を維持するための許容量と反応速度との関係により材料の寿命時間が決まるため、反応速度と特性値とは反比例の関係になっている。このことから、反応時間Tは、以下の式(2)で表すことができる。
Y=B・exp(A/T)…(2)
ここで、Yは寿命時間、A及びBは材料固有の特性を示すアレニウスグラフの係数を示している。
また、上記反応時間について、両辺の自然対数を取ると、式(3)となる。
Log(Y)=Log(B)+A/T/ln10…(3)
ここで、Logは10を底とする常用対数で、lnはe(2.71828…)を底とする自然対数である。
また、式(3)について、Log(B)を定数b、A/ln10を定数aと置き換えれば、式(4)が導かれる。
Log(Y)=a/T+b…(4)
更に、絶対温度の逆数(1/T)をxとすれば、式(5)が導かれ、絶対温度逆数の一次式を得ることができる。
Log(Y)=ax+b…(5)
そして、横軸に絶対温度の逆数、縦軸を寿命の片対数としたグラフに表すと、図4のようにアレニウス則に従った直線状のグラフになる。図4は、横軸に温度(℃)、縦軸に被試験体の寿命時間を片対数で表したグラフである。
被試験体は、実際に使用される温度において十分な寿命時間が得られれば問題は無いが、当該寿命時間は数年、場合によっては数十年要求されるため、それだけの期間にわたり熱劣化試験を行うことは現実的ではない。
そこで、長期熱劣化試験では、被試験体の実際の使用温度よりも高い温度環境下で寿命の測定を行うことが一般的である。このような試験を行った場合でも、上述したアレニウス則に基づいて、数年又は数十年経過した場合の寿命時間を予測することが可能となる。
電気安全法「電気用品に用いられる熱可塑性プラスチックのボールプレッシャー温度の登録制度」に関する報告書のA法・B法 ISO 75−1、75−2 ISO 306 IEC 60216
ところで、上述したアレニウス則に基づく寿命の予測を行う方法では、1次式を得るためには複数の点(すなわち複数の温度と当該温度に対応する寿命時間)をプロットする必要があり、少なくとも数千時間(数か月)以上、場合によっては年単位の試験を行う必要がある。
1つの材料の耐熱性を調べるだけのためにこのような長い期間を要することは、材料メーカーにとっては大きな負担となり、迅速な商品投入が妨げられる結果、商機を逃すことにもなる。
また、恒温槽を長期間にわたり一定温度に保つため、試験に要するコストが高くなるという問題もあり、資金に余裕のない中小企業等による試験の利用とその結果に基づく新規事業参入が困難になるという問題もある。
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、熱劣化試験を短時間で行うとともに、試験に要するコストを削減することのできる熱劣化試験方法を提供することを目的とする。
第1発明に係る熱劣化試験方法は、複数の被試験体のうち一のグループの前記被試験体について第1温度でエージングを行い、評価対象である所定の物性の初期値に対する変化量を示す保持率について継時的に測定し、前記被試験体の寿命として設定された前記保持率である寿命値になる第1寿命時間を計測するとともに測定した各時点における前記保持率から第1劣化曲線を得る第1エージング工程と、他のグループの前記被試験体について、第1温度で前記寿命時間よりも短い第1中途時間までエージングした後、前記第1温度よりも低温の第2温度でエージングを行い前記保持率について継時的に測定し、前記保持率が第1所定値となる第2中途時間を計測する第2エージング工程と、前記第1劣化曲線において前記保持率が前記第1所定値になる対応時間を算出する対応時間算出工程と、前記第2エージング工程において前記第2温度におけるエージングを開始してから前記第2中途時間までの時間と、前記第1温度におけるエージングを開始して劣化曲線において前記第1中途時間から前記対応時間までの時間との比に基づき、前記第1劣化曲線から前記第2温度における第2劣化曲線を算出する第2劣化曲線算出工程と、前記第2劣化曲線から、前記第2温度における前記被試験体の前記保持率が前記寿命値となる第2寿命時間を算出する寿命算出工程と、を有することを特徴とする。
第2発明に係る熱劣化試験方法は、第1発明において、前記寿命算出工程は、前記第2寿命時間をL2、前記第1寿命時間をL1、前記第1中途時間をK1、前記第2温度におけるエージングを開始してから前記第2中途時間までの時間をJ22、前記対応時間をJ12とした場合に、以下の式(1)に従い行われることを特徴とする。
L2=L1*J22/(J12−K1)…(1)
第3発明に係る熱劣化試験方法は、第1又は第2発明において、前記第2温度は、複数の異なる温度を含み、異なる前記被試験体のグループに対して、前記複数の異なる温度において前記第2エージング工程、前記対応時間算出工程、前記第2劣化曲線算出工程及び前記寿命算出工程を行い、前記複数の異なる温度のそれぞれについて前記第2寿命時間を算出することを特徴とする。
第4発明に係る熱劣化試験方法は、第1発明乃至第3発明の何れか1つにおいて、前記被試験体について算出された前記第1寿命時間及び前記第2寿命時間に基づき、前記被試験体について、縦軸に前記第1寿命時間及び前記第2寿命時間を対数表示し、横軸に各寿命時間に対応する温度を表示したアレニウス曲線である寿命曲線を得る寿命曲線取得工程を更に含むことを特徴とする。
上述した本発明に係る熱劣化試験方法によると、熱劣化試験を短時間で行うとともに、試験に要するコストを削減することが可能となる。
温度条件の異なる2つの熱劣化試験における劣化曲線を示すグラフある。 温度の異なる2つの環境下において実測値に基づき得られる劣化曲線を示し、(A)は評価項目として引張衝撃値(TI:Tensile Impact)を測定した場合の劣化曲線を、(B)は評価項目として引張伸び値(TE:Tensile Elongation)を測定した場合の劣化曲線を、(C)は評価項目として絶縁破壊値(DS:Dielectric Strength)を測定した場合の劣化曲線を、(D)は評価項目として曲げ強さ(FS:Flexural Strength)を測定した場合の劣化曲線である。 2つの異なる試験条件における劣化曲線を示すグラフであり、(A)は温度T1で保持率100から劣化を開始した劣化曲線を示すグラフ、(B)は温度T2で保持率R1から劣化を開始した劣化曲線を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る熱劣化試験方法の概要を表す模式図である。 横軸に温度(℃)、縦軸に被試験体の寿命時間を片対数で表したグラフである。
以下、本発明の実施形態に係る熱劣化試験方法について詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る熱劣化試験方法の背景となる原理について説明する。
その原理は、端的に表現すると、「同一の被試験体についての熱劣化試験により得られる劣化曲線は試験温度により異なるが、時間方向にこれを伸縮することにより、互いに極めて近似した形状になる」ということである。
ここで、劣化曲線とは、所定の温度環境下で行わる熱劣化試験の結果を示すグラフであり、横軸にエージング時間、縦軸に素材の劣化の判断材料となる所定の評価項目についての保持率をとることで、保持率の経時変化を曲線化したものである。
所定の評価項目とは、電気特性や機械特性に関する任意の評価項目である。
保持率とは、所定の評価項目に関する保存の程度を示す値であり、エージングをしていない被試験体の保持率を100%(初期値)とすると、その時点以降、エージング時間を経るごとに劣化が進行し保持率が低下していくことになる。
図1は、温度条件の異なる2つの熱劣化試験における劣化曲線を示すグラフである。図1において、温度T1は温度T2よりも高い温度であるため、より早く熱劣化が進行する状態となっている。
ここで、熱劣化試験では、一般的に被試験体は図1に示すような性質、すなわち、環境温度が高くなるほど劣化(保持率の低下)は早く進行し、低くなるにつれ劣化は遅く進行する性質を有している。
そして、温度T1における劣化曲線と、温度T2における劣化曲線は異なる曲線であるものの、温度T2の劣化曲線は温度T1の劣化曲線を時間方向にα倍伸ばしたものとほぼ同一の形状になっている。以下、このαを劣化倍率という。
このように本願発明者は、見出したそれぞれの温度における劣化曲線はその傾きが異なるだけであり、時間方向の比を調節し横軸方向に伸縮することにより、ほぼ同一の形状となることを見出した。
図2は、温度の異なる2つの環境下において実測値に基づき得られる劣化曲線を示し、(A)は評価項目として引張衝撃値(TI:Tensile Impact)を測定した場合の劣化曲線を、(B)は評価項目として引張伸び値(TE:Tensile Elongation)を測定した場合の劣化曲線を、(C)は評価項目として絶縁破壊値(DS:Dielectric Strength)を測定した場合の劣化曲線を、(D)は評価項目として曲げ強さ(FS:Flexural Strength)を測定した場合の劣化曲線である。
図2に示すように、高温環境下と低温環境下の2つの条件において実際に測定を行った結果得られる劣化曲線からも、何れの評価項目に関しても時間方向の比を調節し横軸方向に伸縮することによりほぼ同一の形状となることが確かめられる。
本願発明は、本願発明者により得られたこうした知見を利用して劣化試験を迅速かつ低コストに行うことを可能とするものである。
図3は、2つの異なる試験条件における劣化曲線を示すグラフであり、(A)は温度T1で保持率100%から劣化を開始した劣化曲線を示すグラフ、(B)は温度T2で保持率R1から劣化を開始した劣化曲線を示すグラフである。
図3に示すように、温度T1(温度T2よりも高温)における劣化曲線について、保持率がR1に至った後R2に低下するまでのエージング時間、すなわち時間K1〜J12までの時間(J12−K1)を時間Aとする。
また、温度T2における劣化時間について、保持率がR1から劣化試験を開始し、R2に低下するまでのエージング時間、すなわち時刻0〜J22までの時間を時間Bとする。
ここで温度T2についての劣化試験を保持率R1から開始しているのは、後述するように、本実施形態に係る劣化試験方法では、先に温度T1において保持率R1に至るまで迅速に劣化を行った後、これより低温である温度T2において劣化試験を行うことで試験時間を短縮することを想定しているためである。
時間Aに対する時間Bの比、すなわちJ22/(J12−K1)は、劣化倍率と同じαとなっている。
そこで、各劣化曲線において所定の保持率から別の所定の保持率まで低下するのに要する時間をそれぞれ求めることで、劣化倍率αを算出することが可能となる。そして、この劣化倍率αが求まれば、ある温度における劣化曲線に基づき他の温度における劣化曲線や被試験体の寿命時間を算出することができる。
図4は、本発明の実施形態に係る熱劣化試験方法の概要を表す模式図である。
本実施形態に係る熱劣化試験では、4つの恒温槽1〜4を用いて熱劣化試験が行われる。各恒温槽の温度は、それぞれT1〜T4で表され、本実施形態においてT1は190℃、T2は180℃、T3は170℃、T4は160℃に設定されている。
そして、迅速に劣化が進む、すなわち試験時間が短いT1については実測値に基づき寿命時間(詳細は後述)と劣化曲線が得られる。
一方、劣化が遅く、実測値に基づき寿命時間と劣化曲線を得る場合には長期間を要する低温環境T2〜T4の試験については、当初に高温であるT1でエージングが行われ、ある程度まで迅速に劣化が進められる。
そしてその後、後述する数学的な処理に用いられる数値を得るのに必要な時間だけ低温環境T2〜T4で試験が行われ、T1における劣化曲線と寿命時間に基づき、数学的処理により各温度における劣化曲線と寿命時間が得られる。
以下、こうした熱劣化試験方法を実施する手順について具体的に説明する。
まず、190℃の恒温槽1に110個の被試験体が入れられ、エージングが開始される。また、10個の被試験体についてはエージングを行わないグループとして別途用意し、以下これをグループAと称する。
110個の試験体のうち80個の被試験体は、10個ずつ、8つのグループB〜Iに分けられる。各グループに含まれる被試験体には、それぞれB1〜B10、C1〜C10、D1〜D10、E1〜E10、F1〜F10、G1〜G10、H1〜H10、I1〜I10とマーキングされている。
また、残る30個の被試験体は、10個ずつ、3つのグループX〜Zに分けられる。各グループに含まれる被試験体には、それぞれX1〜X10、Y1〜Y10、Z1〜Z10とマーキングされている。
まず、エージングを行わないグループAに含まれる被試験体A1〜A10について、所定の評価項目の測定が行われる。所定の評価項目として、本実施形態においては引張強さの測定(引張強さ試験)が行われるが、本発明においてはこれに限らず、電気特性や機械特性に関する任意の評価項目についての測定を行うことができる。
次に、被試験体A1〜A10についてそれぞれ引張強さ試験を行った結果得られた数値の平均値が算出される。算出された引張強さの平均値は熱劣化試験の初期値となり、所定の評価項目に関する保存の程度を示す保持率について、保持率100%と規定される。
次に、所定の時間が経過する度に、恒温槽1からグループB〜Iの被試験体が順次取り出され、それぞれのグループに含まれる10個の被試験体の引張強さの平均値が算出される。
また、寿命時間L1よりも短い任意の時間K1において、恒温槽1からグループX〜Zの被試験体が取り出され、それぞれ恒温槽2〜4へと移される。この恒温槽2〜4において、恒温槽1と異なる温度環境下で引き続きエージングと劣化曲線の取得が行われるが、この詳細については後述する。
グループX〜Zについてある程度劣化が進行した状態からエージングを行うのは、エージングの初期の段階では劣化が見られない場合もあるため、こうした劣化の見られない状態をサンプリングの結果から除くためである。
次に、グループB〜Iの保持率として、グループB〜Iにそれぞれ含まれる被試験体の引張強さの平均値の、グループAの引張強さの平均値に対する割合が算出される。
こうしてグループB〜Iについての保持率が算出される。
次に、保持率を縦軸、横軸をエージング時間としてグループA〜Iのエージング時間と保持率をプロットし(グループAは保持率100%、エージング時間0とする)、劣化曲線が描かれる。
次に、得られた劣化曲線を3次式で表すことが行われる。
次に、劣化曲線から得られた3次式から、保持率が50%となるエージング時間を導出する。この保持率50%となるエージング時間を、恒温槽1の試験温度である190℃における被試験体の寿命時間L1であるとする。
また、この3次式から、上述した時間K1における保持率R1が算出される。
一方、上記時間K1において恒温槽1から取り出されそれぞれ恒温槽2〜4へと移されたグループX〜Zの被試験体については、各恒温槽2〜4の温度環境下でエージングが行われる。
具体的には、グループXの被試験体X1〜X10については、恒温槽2において180℃でエージングが行われる。グループYの被試験体Y1〜Y10については、恒温槽3において170℃でエージングが行われる。グループZの被試験体Z1〜Z10については、恒温槽4において160℃でエージングが行われる。
次に、グループXの被試験体X1〜X10については任意のエージング時間J22、グループYの被試験体Y1〜Y10については任意のエージング時間J32、グループZの被試験体Z1〜Z10については任意のエージング時間J42で各恒温槽2、3、4から取り出し、グループA〜Iと同様に保持率が算出される。
こうして得られたグループXの保持率(180℃、エージング時間J22)はR2、グループYの保持率(170℃、エージング時間J32)はR3、グループZの保持率(160℃、エージング時間J32)はR4とされる。
なお、上述したように高温環境下ではその分劣化の進行が早くなるため、高温環境下ではエージング時間が短く設定されるとともに、低温環境下ではエージング時間が長く設定される傾向がある。
本実施形態においても、恒温槽2の内部温度は180℃、恒温槽3の内部温度は170℃、恒温槽4の内部温度は160℃であるため、恒温槽2〜4のエージング時間J22〜J42について、例えばそれぞれJ22=336時間、J32=672時間、J42=1008時間と順次長時間になるように設定される。
エージング時間J22〜J42は、初期段階で恒温槽1の190℃におけるエージングが行われている分、従来の熱劣化試験のように当初からこの温度よりも低温である各温度において継続してエージングする場合と比べて短く設定することが可能となる。
次に、190℃の恒温槽1においてグループA〜Iの被試験体を用いて得られた劣化曲線に基づき、この劣化曲線において保持率R2、R3、R4に対応するエージング時間J12、J13、J14がそれぞれ求められる。
次に、190℃における被試験体の劣化曲線における保持率R2となるエージング時間J12と、180℃における被試験体の保持率R2となるエージング時間J22との比を利用して、すでに判明している190℃における被試験体の寿命時間L1から、180℃における被試験体の寿命時間L2が算出される。
具体的には、寿命時間L2は、以下の(6)式を用いて算出される。
L2=L1*J22/(J12−K1)…(6)
同様に、190℃における被試験体の劣化曲線における保持率R3となるエージング時間J13と、170℃における被試験体の保持率R3となるエージング時間J32との比を利用して、すでに判明している190℃における被試験体の寿命時間L1から、170℃における被試験体の寿命時間L3が算出される。
具体的には、寿命時間L3は、以下の(7)式を用いて算出される。
L3=L1*J32/(J13−K1)…(7)
更に、190℃における被試験体の劣化曲線における保持率R4となるエージング時間J14と、160℃における被試験体の保持率R4となるエージング時間J42との比を利用して、すでに判明している190℃における被試験体の寿命時間L1から、160℃における被試験体の寿命時間L4が算出される。
具体的には、寿命時間L4は、以下の(8)式を用いて算出される。
L4=L1*J42/(J14−K1)…(8)
このように、本実施形態に係る熱劣化試験方法によると、複数の温度環境下における被試験体の寿命時間を求めたい場合に、最も短時間で寿命時間の測定を行うことのできる最高温環境下においてのみ実際の寿命時間を測定すればよい。そして、その他の低温の環境下における寿命時間については実際に寿命時間に至るまでのエージングを省略することができる。
具体的には、途中まで高温環境下でエージングを行い短時間で迅速に劣化を進めるとともに、途中から低温環境下で試験を行い、低温環境下における寿命時間は高温環境下の寿命時間に基づき算出することができる。そのため、熱劣化試験を迅速かつ短時間に行うことができる。
また、長い期間を要する低温環境下におけるエージング時間を短縮することができるため、試験に要するコストを削減することができる。
また、低温環境下におけるエージングも含む工程であるため、高温環境下における劣化曲線に基づき算出される寿命時間は実際の環境下におけるものに極めて近いものとなり、信頼性の高い試験結果を得ることができる。
なお、こうして得られた各温度についての寿命時間に基づき、更に寿命曲線を算出し、実際にエージングが行われた温度以外の温度における被試験体の寿命を算出できるようにしてもよい。
具体的には、縦軸に各温度における寿命時間が対数表示され、横軸に各寿命時間に対応する温度が表示されたアレニウス曲線である寿命曲線が算出される。この寿命曲線に基づき、実際にエージングが行われた温度以外の温度における被試験体の寿命を算出することができる。
なお、上述した実施形態においては4つの恒温槽1〜4を用いて試験が行われたが、本発明においてはこれに限らず、任意の数の恒温槽を用いて同様の試験を行うことができる。
また、本実施形態においては全サンプルについて最初に最も高い温度におけるエージングが行われたが、本発明においてはこれに限らず、最初に2番目以降の温度におけるエージングを行ってもよい。
具体的には、最高温度では熱による変形が大きく熱劣化試験の試験環境として採用できない場合等に、最高温度ではない温度(中間温度)におけるエージングを行った後、中間温度よりも低い温度でエージングを行ってもよい。
このように、最初に最も高い温度でエージングが行われなくとも、中間温度におけるエージングを行った後これよりも低い温度でエージングを行うという工程さえ含めば、当該低い温度における寿命の算出に用いるために必要なエージング時間を短縮することができ、試験時間の短縮と試験の低コスト化という上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、上述した実施形態においては高温であればあるほど劣化が早く進行する被試験体について想定していたが、本発明においてはこれに限らず、低温であればあるほど劣化が早く進行する被試験体についても同様の考え方で劣化試験の時間短縮と試験の低コスト化を実現することが可能となる。
すなわち、上述した実施形態において先に高温環境下でエージングを行った後これより低い温度でエージングを行ったのは、高温環境であればあるほど早く劣化が進行するという性質を利用したためである。
そのため、低温であればあるほど劣化が早く進行する場合には、上述した温度設定を逆にした試験、すなわち先に低温で迅速にエージングを行った後、これよりも高い温度に移し替えてエージングを行う試験とすれば、高温環境下におけるエージング時間を短縮することができ、試験時間の短縮と試験の低コスト化という上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
1〜4 恒温槽
T1〜T4 温度

Claims (4)

  1. 複数の被試験体のうち一のグループの前記被試験体について第1温度でエージングを行い、評価対象である所定の物性の初期値に対する変化量を示す保持率について継時的に測定し、前記被試験体の寿命として設定された前記保持率である寿命値になる第1寿命時間を計測するとともに測定した各時点における前記保持率から第1劣化曲線を得る第1エージング工程と、
    他のグループの前記被試験体について、第1温度で前記寿命時間よりも短い第1中途時間までエージングした後、前記第1温度よりも低温の第2温度でエージングを行い前記保持率について継時的に測定し、前記保持率が第1所定値となる第2中途時間を計測する第2エージング工程と、
    前記第1劣化曲線において前記保持率が前記第1所定値になる対応時間を算出する対応時間算出工程と、
    前記第2エージング工程において前記第2温度におけるエージングを開始してから前記第2中途時間までの時間と、前記第1劣化曲線において前記第1中途時間から前記対応時間までの時間との比に基づき、前記第1劣化曲線から前記第2温度における第2劣化曲線を算出する第2劣化曲線算出工程と、
    前記第2劣化曲線から、前記第2温度における前記被試験体の前記保持率が前記寿命値となる第2寿命時間を算出する寿命算出工程と、
    を有することを特徴とする熱劣化試験方法。
  2. 前記寿命算出工程は、前記第2寿命時間をL2、前記第1寿命時間をL1、前記第1中途時間をK1、前記第2温度におけるエージングを開始してから前記第2中途時間までの時間をJ22、前記対応時間をJ12とした場合に、以下の式(1)に従い行われることを特徴とする請求項1記載の熱劣化試験方法。
    L2=L1*J22/(J12−K1)…(1)
  3. 前記第2温度は、複数の異なる温度を含み、異なる前記被試験体のグループに対して、前記複数の異なる温度において前記第2エージング工程、前記対応時間算出工程、前記第2劣化曲線算出工程及び前記寿命算出工程を行い、前記複数の異なる温度のそれぞれについて前記第2寿命時間を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の熱劣化試験方法。
  4. 前記被試験体について算出された前記第1寿命時間及び前記第2寿命時間に基づき、前記被試験体について、縦軸に前記第1寿命時間及び前記第2寿命時間を対数表示し、横軸に各寿命時間に対応する温度を表示したアレニウス曲線である寿命曲線を得る寿命曲線取得工程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の熱劣化試験方法。
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