JP3580216B2 - ケーブルの加速試験方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ケーブルの加速試験方法に係り、特に原子力発電所に用いられるケーブルの健全性を確認するケーブルの加速試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ケーブルを新規に開発,製造する際には認定試験を実施し、この認定試験を合格したケーブルを原子力発電所にて使用している。初期に建設された原子力発電所では、JISに規定されているケーブルの認定試験を実施していた。その後、IEEE−323及びIEEE−383に準拠した電気学会技術報告(II部)第139号「原子力発電所用電線・ケーブルの環境試験方法ならびに耐延焼性試験方法に関する推奨案」(以後電気学会推奨案と略す)が昭和57年に報告され、それ以降では本推奨案に基づいてケーブルの環境試験が行われている。この環境試験に合格したケーブルが原子力発電所内で布設されている。
【0003】
ケーブルの寿命判断は、一般的に、ケーブルの絶縁体材料の伸びの値の低下度合に基づいて行われている。環境試験では、アレニウス則により実機環境条件相当分の加速試験を実施する。この加速試験において運転年数と同等の環境条件の健全性を満足できたケーブルが原子力発電所内に布設される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
現在、上記のように電気学会推奨案にて環境試験を実施している。環境試験の実施には、ケーブルの寿命となる際の活性化エネルギーを用いて加速条件を求める必要がある。この加速条件を求めるには活性化エネルギーが必要である。活性化エネルギーを求めるには、少なくとも加速温度の異なる3条件でケーブルを熱劣化させることにより、ケーブルの寿命となる値(一般的に絶縁体の伸び50%)までケーブルを劣化させ、その伸びの値における加速温度と試験期間との関係式であるアレニウスプロットを作成する。
【0005】
アレニウスプロットの直線の傾きが活性化エネルギーと呼ばれるものである。ケーブルの環境試験を実施する際には、運転期間(40年又は60年)に対してアレニウス則及び上記活性化エネルギーを用いて加速条件を求めている。この加速条件にて環境試験を実施し、この環境試験に合格したケーブルを使用している。
【0006】
従来、活性化エネルギーを求める際には、試験期間が短期間で終了するようにかなり高温(100℃以上)にてケーブルを熱劣化させる。高温の加熱によりケーブルの劣化が加速される。この劣化の加速により寿命となるケーブルの伸びの値におけるアレニウスプロットを作成し、活性化エネルギーを求めてきた。
【0007】
ただし、最近の知見によると熱・放射線環境下においては、アレニウスプロットによる活性化エネルギーが加速温度条件により異なるとの報告もあり、より実機に即した環境試験とするには、できるだけ実機に近い環境条件(100℃未満)での加速温度が望ましいとされている。しかしながら、低温度条件での加速試験を実施する場合には、なかなか劣化しなく、ケーブルが寿命となる伸びの値まで低下するのに5年以上もの年数が必要となってしまう。このため、新たなケーブルの開発、及び既存のケーブルの再試験において、膨大な試験期間が必要となってしまっていた。
【0008】
原子力発電所に布設されているケーブルは熱及び放射線に晒された特殊環境にあり、特に実機環境を模擬した環境試験の実施が重要であり、また、原子力という点で安全上の観点から特に健全性の評価が重要とされている。
【0009】
本発明の目的は、試験期間を短縮できるケーブルの加速試験方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の特徴は、高温雰囲気においてケーブルの試験体による一次加速試験を行い、一次加速試験にて得られたデータを用いて第1活性化エネルギーを求め、100℃未満の雰囲気においてケーブルの試験体を用い、この試験体の寿命期間よりも短い設定期間で二次加速試験を行い、二次加速試験で得られたデータを用いて第2活性化エネルギーを求め、一次加速試験での試験体の伸びと第1活性化エネルギーの相関関係、及び第2活性化エネルギーに基づいて、100℃未満の雰囲気における試験体の寿命時点付近での第3活性化エネルギーを求め、この第3活性化エネルギーを用いて環境試験での試験条件を求め、この試験条件で環境試験を実施することにある。
【0011】
一次加速試験での試験体の伸びと第1活性化エネルギーの相関関係、及び第2活性化エネルギーに基づいて、求められた、100℃未満の雰囲気における試験体の寿命時点付近での第3活性化エネルギーを用い、環境試験の試験条件を求めているので、二次加速試験の試験期間を著しく短縮できる。このため、ケーブルの加速試験の期間を短縮できる。更に、実機における使用雰囲気でのケーブルの健全性を適切に評価できる。
【0012】
具体的には、以下の活性化エネルギーの導出による方法を実施する。最初に該当する線種のケーブルの試験体に対して100℃以上の高温度条件に対する熱劣化試験(一次加速試験)を実施する。時間の経過と共に試験体(ケーブル絶縁材料)の伸びが低下する。ここで、任意の伸びの値(300%,200%,100%等)となる経過時間を各温度条件に対し求め、各温度条件下でのアレニウスプロットを作成し、その傾きである活性化エネルギーを計算する。ここで各試験体の伸びとその伸びでの活性化エネルギーとによる相関式を作成する。再び、実機環境に近い低温度条件での加速試験(二次加速試験)を実施する。試験体の伸びが300%程度まで低下した時点でその加速試験を終了し、その伸びの時点での活性化エネルギーを求める。この活性化エネルギーの値を先に高温度条件により作成した相関式に代入し、試験体の伸び300%の活性化エネルギーに基づいて試験体の伸びが50%になるときの活性化エネルギーを計算する。この活性化エネルギーから導出した供用期間中に相当する試験条件(加速条件)を求め、その求めた試験条件により環境試験を実施する。この方法により環境試験に満足したケーブルを製造する。
【0013】
これにより、実際には実機環境に近い条件下で5年以上掛かる加速試験を実施する必要があったが、上記の具体例により1年程度での加速試験を実施することで、加速期間を短縮できしかも環境試験を満足したケーブルを製造することが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の好適な一実施例であるケーブル加速試験方法を、図1を用いて以下に説明する。本実施例の加速試験方法は、電気学会推奨案の環境試験を行う際の試験条件を得るためのものである。
【0015】
加速試験の実施に際して、絶縁体を予め加速試験後における伸び試験を実施しやすいように伸び試験の形状に合わせて試験体である試験用ケーブルが製作される。約15cmの長さに加工されたその試験体が恒温槽内の回転テーブル上に設置される。試験用ケーブルは、実際に原子力発電所内に布設される実際に原子力発電所内に布設される新品のケーブルと同じものである。恒温槽は一辺が1m程度の大きさであり、ヒータが恒温槽内の側面に設置されている。そのヒータは恒温槽内を均一の温度に加熱できる。恒温槽は試験体に放射線を照射するために放射線照射設備内に設置する。放射線照射設備の放射線源と恒温槽との間に放射線遮蔽板を配置し、恒温槽内の試験体への放射線照射量を調節する。例えば、その放射線遮蔽板の枚数を調節することによって、原子力発電所内での各ケーブル布設場所でケーブルに照射される放射線量に対応した放射線量を、加速試験においても恒温槽内の試験体に照射することができる。
【0016】
上記の試験体を恒温槽内に入れ、ケーブルの一次加速試験を実施する(ステップ1)。ケーブルは、電気を伝える導線を絶縁体で被覆したものである。劣化特性曲線の作成のために加速期間の異なる複数のデータを得るために、15本のケーブル(同じ種類)の試験体が恒温槽内の回転テーブル上に置かれる。恒温槽に設けられたヒータに電流を流し、試験体を加熱する。一次加速試験は加速期間が短くなるように高温度(100℃以上)で実施される。すなわち、高温度の設定温度に恒温槽内が保持され、試験体もその温度に加熱される。恒温槽内の温度を設定温度に調節するためには、恒温槽内の温度を測定し、ヒータに流す電流を調節することにより行われる。
【0017】
この加速試験では、密封容器内の放射線源から開口部を介して試験体に放射線を照射する。一次加速試験において、放射線照射と加熱は一緒に行われる。試験体の加熱が終わった後に、放射線の照射を行ってもよい。放射線照射における放射線の線量率は、恒温槽内で測定する。線量率は、実機の環境条件に比べて十分大きく試験期間での積算線量が少なくとも実機環境で60年相当の積算線量を網羅する値とする。放射線が試験体に均一に照射されるように、一次加速試験期間中は、試験体を載せた回転テーブルを回転させる。ただし、作業員が定期的に恒温槽内での試験体の位置を変えてもよい。
【0018】
一次加速試験を開始した後は、異なる長さで予め設定された加速期間(設定加速期間)経過毎に恒温槽より一部の試験体(本実施例では3本)を取り出して、試験体の伸びを伸び測定器により測定する。一次加速試験の開始前に試験体表面(絶縁体の表面)の中央部で試験体の軸方向に標線を記しておく。一次加速試験開始前の標線の長さを、標線の初期長さ(100%)とする。恒温槽から取り出した試験体を、伸び測定器によって所定速度で伸ばしていき、試験体が破断した時点での標線の伸び(伸びた長さの絶対値)を測定する。以下に示す標線の伸び(または試験体の伸び)は、伸び測定器によって試験体が伸ばされて破断したときにおける標線の長さである。測定された標線の伸びは、標線の初期長さからの標線の伸びを、標線の初期長さに対する割合で示す。例えば、伸び300%とは、試験体が標線の初期長さより標線の範囲内でさらに3倍伸びたことを示す。これは、標線の全長が標線の初期長さの4倍の長さになったことを意味する。標線の伸びの測定の際には、同じ設定加速期間について試験体を3本取り出し、それぞれについてその伸びを測定する。3本の試験体における標線の伸びの平均値を求めることにより、伸びのバラツキが少なくなる。
【0019】
標線の伸びの測定に際しては、恒温槽から試験体を取り出すまでの設定加速期間(任意の加速期間で取り出した場合はその加速期間)、及び取り出した試験体における標線の伸びの測定値を、その都度、記録する。標線の伸びは、長さが異なる少なくとも5つの設定加速期間のそれぞれが終了した時点でその伸びを測定する。例えば、長さが異なる5つの設定加速期間に対して標線の伸びを測定するためには、1つの設定加速期間で3つの試験体を用いて伸びを測定すると仮定すると、最初に恒温槽内に15本の試験体を入れる必要がある。最も長い加速期間は、標線の伸びが約50%程度まで低下する期間とする。標線の伸びは試験体であるケーブルの伸びである。一次加速試験における同じ種類の試験体の伸びの測定結果を用いて、図2に示すような、その種類の試験体に対する劣化特性曲線11を作成する。劣化特性曲線11は加速期間と試験体の伸びとの関係を示すものである。種類の異なるケーブルの試験体を恒温槽内に入れて、加熱及び放射線照射することによって、種類の異なる試験体に対して一次加速試験を同時に実施することができる。種類の異なる試験体における標線の伸びの測定値を用いることによって、種類の異なる試験体に対する劣化特性曲線11をそれぞれ作成することができる。
【0020】
実際には、3台の恒温槽を用い、各々の恒温槽内に前述のように15本の試験体を入れ、前述と同様に試験体を放射線を照射しながら加熱する。各恒温槽での加熱温度は、100℃以上でかつ1つの恒温槽を基準に10℃以上毎に高くなる温度に設定される。1つの恒温槽から取り出された試験体における標線の伸びの測定値を用いて劣化特性曲線を作成する。3台の恒温槽を用いているので、3本の劣化特性曲線12,13、及び14が作成される(図3)。これらの劣化特性曲線は、結果として加熱温度が異なっており加熱温度をパラメータとした曲線となる。
【0021】
以上がステップ1の一次加速試験の内容である。この一次加速試験終了後に、活性化エネルギーを求める(ステップ2)。活性化エネルギーを求めるに当って、アレニウスプロットを作成する。ケーブルの寿命は、ケーブルの絶縁体の伸びが50%になった時点(以下、ケーブルの寿命時点という)である。図3及び図4を用いて、アレニウスプロットの作成を具体的に説明する。劣化特性曲線12,13及び14のそれぞれに対し、寿命時点15に達するまでの加速期間16,17及び18を求める。劣化特性曲線12,13及び14に対する各加熱温度(3台の恒温槽における試験体の各加熱温度)と加速期間16,17及び18とを用いて、加熱温度と加速期間の相関を示す直線19を作成する(図4)。この直線19がアレニウスプロットと呼ばれるものである。直線19の傾きが活性化エネルギーとなる。この活性化エネルギーはケーブルに使用される材料によって異なる。実際には、図4のように1本の直線1だけではなく、図6に示すように加熱温度と加速期間の相関を示す複数のアレニウスプロットの直線24,25,26及び27を作成する。これらの直線は、劣化特性曲線12,13、及び14において試験体の伸びが伸びの値20,21,22及び24(図5)になる時点までの加速期間と各試験体の加熱温度とを用いて得られる。各活性化エネルギーは、試験体の伸びの値によって異なり、直線24,25,26及び27におけるそれぞれの傾きである。
【0022】
活性化エネルギーを求めた後に、ケーブルの伸びと活性化エネルギーとの相関式を求める(ステップ3)。すなわち、一次加速試験により加速劣化させた試験体であるケーブルの伸びの値20,21,22及び24とそれぞれの伸びの値に対応した活性化エネルギーとを整理することにより、ケーブルの伸びと活性化エネルギーとの関係式である直線28を得る(図7)。この直線28は、活性化エネルギーをY,ケーブルの伸びをXとしたとき、Y=αX+Cで表される。ここで、αは直線28の傾きであり、Cは定数である。
【0023】
次に、ケーブルの二次加速試験が実施される(ステップ4)。二次加速試験にも、前述の恒温槽を用いる。二次加速試験における加熱温度は、原子力発電所の実際の環境温度(40℃程度)以上で100℃未満の範囲の低温度である。二次加速試験も、加熱しながら試験体に放射線を照射する。二次加速試験でも、加熱温度が約10℃ずつ異なる3台の恒温槽を用いる。それらの加熱温度は、当然、実際の環境温度以上で100℃未満の範囲にある。二次加速試験で用いられる試験体である試験用ケーブルは、一次加速試験で用いた試験体である試験用ケーブルと同じ種類であり、新しく製造されたものである。一次加速試験と同様に、標線が試験体の表面に記される。3本の試験体が3台の恒温槽内の回転テーブル上にそれぞれ置かれる。回転テーブルを回転させながら、各々の恒温槽内で各試験体に放射線を照射しながらそれらの試験体を加熱する。二次加速試験における加熱は、試験体の伸びが200〜300%までに低下したときに終了する。新品のケーブルの伸びは400〜600%程度あるので、二次加速試験において設定された加速期間は新品のケーブルの伸びが半分になるまでの期間である。試験体の伸びが200〜300%になる期間は予め想定できる。本実施例では第二次加速試験における設定された加速期間は試験体の伸びが300%になるまでの期間である。設定された加速期間に達した恒温槽から、順次、試験体を取り出して、伸び測定器により試験体の伸びを測定する。試験体の伸びの測定値と加速期間とを用いて、3台の恒温槽に対応した、すなわちそれぞれの加熱温度に対応した劣化特性曲線29,30及び31を作成する(図8)。
【0024】
二次加速試験結果を用いて活性化エネルギーを求める(ステップ5)。劣化特性曲線29,30及び31を用いて、劣化特性曲線29,30及び31のそれぞれに対し、図8に示す試験体の伸びの値32(300%)になる時点の実際の加速期間33,34及び35を求める。劣化特性曲線29,30及び31の各加熱温度と、求められた加速期間33,34及び35とを用いて、加熱温度と加速期間の相関を示すアレニウスプロットと呼ばれる直線36を作成する(図9)。直線36の傾きが活性化エネルギーである。
【0025】
ケーブルの寿命時点での活性化エネルギーを計算する(ステップ6)。すなわち、ステップ3で求めた相関式Y=αX+Cに、試験体の伸び300%、及びステップ5で求めた活性化エネルギーaを代入して、定数C(=a−300α)を求める。この定数をステップ3で求めた相関式に代入して得られた式Y=αX+a−300αを用いて、ケーブルの寿命時点での活性化エネルギーを計算する。この活性化エネルギーYは50α+a−300α(数値50は上記寿命時点でのケーブルの伸び50%を示す)となる。
【0026】
次に、環境試験が実施される(ステップ7)。ここで求められたケーブルの伸び50%に対する活性化エネルギーY(=50α+a−300α)を用いて原子力発電所の運転期間(40年または60年)相当分の加速条件を求める。この加速条件を用いて環境試験を実施する。この環境試験は、前述した電気学会奨励案の環境試験である。
【0027】
これにより、原子力発電所内での温度条件において、従来は、環境試験を実施する場合に、通常、ケーブルの寿命である伸びが50%まで低下した状態(図10での期間t2までの加速期間)までの加速期間が必要であったのに対し、本実施例によれば、試験体の伸びが300%程度まで低下した状態(図10での期間t1)までの加速試験を実施すればよい。本実施例は、活性化エネルギーと試験体の伸びとの相関式を用いて、伸び300%の二次加速試験結果から伸びが50%となるときの活性化エネルギーを計算し、この活性化エネルギーを用いてケーブルの供用期間相当の加速条件を求め、その加速条件下で環境試験を実施する。このため、本実施例は、ケーブルの試験期間を大幅に短縮できる。具体的には、(t2−t1)の期間が短縮される。具体的には、従来例では原子力発電所内の実記環境に近い条件下で5年以上にわたってケーブルの試験体に対して加速試験を行う必要があったが、本実施例の加速試験方法を適用することによって加速試験の期間を1年に短縮することができる。本実施例は、短期間ではあるが二次加速試験を行ってその試験結果を環境試験の加速条件の決定に反映するため、ケーブルを布設する実機環境下におけるケーブルの健全性を評価を適切に行うことができる。ケーブルの製造においては環境試験に合格したケーブルが出荷される。本実施例においては、ケーブルの試験期間が著しく短縮されるので、ケーブルの試験期間を含めたケーブル製造期間が大幅に短縮できる。また、新規にケーブルを開発する場合でも、本実施例の加速試験の適用により開発期間が大幅に短縮される。
【0028】
更に、現在布設されているケーブルについて、改めて実機条件下での健全性確認試験を実施する場合にも、本実施例の加速試験方法を適用することができる。すなわち、過去に実施した高温条件下での劣化特性曲線を利用してケーブルの伸びと活性化エネルギーの相関式を作成することにより、通常ケーブル寿命とされる伸びを得る加速試験期間でのケーブル健全性評価が、ケーブルの伸びが300%程度の時点までの加速期間での試験結果を用いて可能となり、試験期間が大幅に短縮できる。
【0029】
次に、難燃PNケーブルに対して適用した本発明の実施例である加速試験方法の具体的な内容について説明する。
【0030】
最初に、難燃PNケーブルの試験体を作成する。試験体は、難燃PNケーブルの絶縁体をチューブ状で15cm程度に加工したものである。3台の恒温槽を用意し、試験体を各々の恒温槽内に10本程度を入れる。恒温槽は放射線照射設備内に設置する。恒温槽内での放射線量率は放射線遮蔽板を用いて約100Gy/hになるように調節した。一次及び二次加速試験の期間中、上記の放射線量率の値が保たれた。この条件下で3台の恒温槽の加熱温度をそれぞれ140,150,160℃の異なる温度に保持し、それぞれの恒温槽内で、放射線を照射しながら試験体に対する一次加速試験を実施した(ステップ1)。加熱温度が140℃の恒温槽内の試験体については、1回/1ヶ月程度の頻度で恒温槽から取り出して伸び測定器を用いて試験体の伸びを測定した。加熱温度が150℃、及び160℃の各恒温槽内の試験体については、1回/20日程度の頻度で恒温槽から取り出して同様に試験体の伸びの値を測定した。これらの測定結果から各々の加熱温度条件下での劣化特性曲線を作成した。図11に示された、加熱温度140℃に対する劣化特性曲線37,加熱温度150℃に対する劣化特性曲線38、及び加熱温度160℃に対する劣化特性曲線39が得られた。
【0031】
ステップ2の具体的内容を説明する。上記の各劣化特性曲線を用いて、試験体の伸びがそれぞれ50%,100%,200%,350%,500%となる時点の加速期間を求め、それぞれの加熱温度条件での試験体の伸びと加速期間との関係を表1にまとめた。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示された試験体の伸び(50%,100%,200%,350%,500%)と加速期間との相関を示す直線、すなわちアレニウスプロットを作成した(図12)。これらの直線の傾き、すなわち活性化エネルギーを計算した。各試験体の伸びに対して求められた活性化エネルギーを表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
これらの活性化エネルギーを用いてステップ3における活性化エネルギーと試験体の伸びとの相関式を求める。この時の直線を図13に示す。これより、難燃PNケーブルの加速劣化した伸びの値と活性化エネルギーの相関式としてY=−0.038X+Cを得る(Cは定数)。
【0036】
今度は実機のケーブル布設環境に近い温度条件でステップ4の二次加速試験を実施する。ステップ1の一次加速試験と同様に、3台の恒温槽内に難燃PNケーブルの絶縁体を加工した試験体を10本程度を恒温槽に入れ、それぞれの恒温槽内の試験体を3つの異なる加熱温度(60,80,100℃)で加熱する。この加熱は放射線を照射しながら行う。試験体の初期の伸びが700%であったので、それぞれの恒温槽において、試験体の伸びがその初期値の半分の伸び(伸び350%)まで低下した時点で加熱を終了する。加熱を終了した恒温槽から、順次、試験体を取り出して伸び測定器により各試験体の伸びを測定する。試験体の伸びの測定値を用いて図11と同様な劣化特性曲線を各加熱温度毎に作成する。
【0037】
各特性曲線を用いて、ステップ5の各伸びが350%になったときにおける各加速期間を求める。加速温度と加速期間の相関を示す直線、すなわちアレニウスプロットを作成する。この直線の傾きである活性化エネルギーを求める(ステップ5)。次に、ステップ6のケーブルの寿命時点での活性化エネルギーを計算する。すなわち、ステップ5で求めた活性化エネルギーが5.0 となった場合、この値をステップ3にて得られた、Y=−0.038X+Cに代入し、Y=−0.038X+18.3 を得る。この式に試験体の伸び50%を代入することにより、試験体の伸びが50%のときにおける活性化エネルギーY(=16.5)が得られた。
【0038】
環境試験が実施される(ステップ7)。原子力発電プラントの運転期間相当の環境試験を実施するには、この活性化エネルギー16.5を利用する。アレニウス則から、環境試験の加速試験条件は以下の式で表わすことができる。
【0039】
lnt2=lnt1+E/R(1/T2−1/T1) …(1)
ただし、t1は実環境条件での運転年数、T1は実環境温度、t2は加速期間、T2は加熱温度、Eは活性化エネルギー、及びRは定数である。
【0040】
(1)式を用いて原子力発電プラントの運転期間中の加速条件を計算し、この条件により環境試験を実施する。運転年数t1が40年、実環境温度T1が40度、加熱温度T2が100度で加速試験を実施した場合、活性化エネルギーが16.5 であるので、加速期間t2は210日となる。従って難燃PNケーブルの環境試験は加速温度100度、加速時間210日にて実施し、この環境試験を満足した場合に40年相当の実機環境においてケーブルの健全性が確認されたことになる。
これにより、当初、試験体の伸び50%までの加速試験の実施を必要とするが、本実施例によれば、せいぜい試験体の伸びが300%程度まで低下した状態で必要な活性化エネルギーを求めることができ環境試験を実施に伴う時間の大幅な短縮が可能となる。
【0041】
他の線種(例えば難燃CVケーブル)の場合には、新たに高温度条件により試験体の伸びと活性化エネルギーとの相関式を作成し、実環境下での環境試験を実施する。その相関式を他の線種に適用し、試験体の伸び50%のときにおける活性化エネルギーを計算してもよい。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、試験期間を短縮でき、しかも実機における使用雰囲気でのケーブルの健全性を適切に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例であるケーブルの加速試験方法のフローチャートである。
【図2】一次加速試験で得られた結果をもとに作成された劣化特性曲線を示す特性図である。
【図3】温度条件の異なる一次加速試験で得られた結果をもとに作成された劣化特性曲線を示す特性図である。
【図4】図3の劣化特性曲線に基づいて作成されたアレニウスプロットを示す説明図である。
【図5】温度条件の異なる一次加速試験で得られた結果をもとに作成された劣化特性曲線を示す特性図である。
【図6】図5の劣化特性曲線に基づいて作成されたアレニウスプロットを示す説明図である。
【図7】図6のアレニウスプロットにより求められた活性化エネルギーと、試験体の伸びとの相関関係を示す説明図である。
【図8】二次加速試験で得られた結果をもとに作成された劣化特性曲線を示す特性図である。
【図9】図8の劣化特性曲線に基づいて作成されたアレニウスプロットを示す説明図である。
【図10】図1の実施例における試験期間の短縮を示す説明図である。
【図11】図1の実施例を難燃PNケーブルに適用した場合における、一次加速試験で得られた結果をもとに作成された劣化特性曲線を示す特性図である。
【図12】図11の劣化特性曲線に基づいて作成されたアレニウスプロットを示す説明図である。
【図13】図12のアレニウスプロットにより求められた活性化エネルギーと、試験体の伸びとの相関関係を示す説明図である。
Claims (2)
- 高温雰囲気においてケーブルの試験体による一次加速試験を行い、前記一次加速試験にて得られたデータを用いて第1活性化エネルギーを求め、100℃未満の雰囲気においてケーブルの試験体を用い、この試験体の寿命期間よりも短い設定期間で二次加速試験を行い、前記二次加速試験で得られたデータを用いて第2活性化エネルギーを求め、前記一次加速試験での前記試験体の伸びと前記第1活性化エネルギーの相関関係、及び前記第2活性化エネルギーに基づいて、前記
100℃未満の雰囲気における前記試験体の寿命時点付近での第3活性化エネルギーを求め、この第3活性化エネルギーを用いて環境試験での試験条件を求め、この試験条件で前記環境試験を実施することを特徴とするケーブルの加速試験方法。 - 前記高温雰囲気は100℃以上の雰囲気である請求項1のケーブルの加速試験方法。
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