JP6058706B2 - 調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法 - Google Patents

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Description

本発明は、調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法に関する。
現在、多くのサーモクロミック(熱着色型)材料が提案されているが、その中でも二酸化バナジウム(VO)が環境応答型調光材料の有力候補として考えられている。そして、この二酸化バナジウムを用いたサーモクロミック窓材が多く提案されており、これを単独或いは他の材料と組み合わせることで、光の可視波長域における透明性を保持しつつ、近赤外波長域或いは赤外波長域における光透過率を環境温度に応じて制御するガラス材が開示されている(特許文献1、2)。
又、環境温度に応じて透明状態と白濁遮光状態との間を可逆的に変わる曇天現象の材料を利用した調光材料が提案されている。この調光材料は、環境温度が特定の温度を超過すると、白濁化する水溶性化合物を水に溶解し、当該溶解した水溶性組成物をガラスに積層させることで得られる。環境温度が低温の場合、この調光材料は透明状態となるが、環境温度が高温になると、調光材料が白濁して、光の酸乱体となり、光の可視波長域を含む広い波長範囲で遮光する。そのため、調光性能が高く、且つ、調光温度も、生活温度を含む広い範囲で設定出来るという利点があり、既にこの調光材料は実用化されている(特許文献3)。
又、温度変化における液晶の特異な性質を利用して、太陽光線中の特定の波長の光線透過率及び光線反射率を制御可能な調光材料が開示されている。この調光材料として、例えば、スメクチックA相−カイラルネマティック相の熱相転移を示す低分子液晶からなる調光材料が挙げられている(特許文献4)。又、スメクチックA相では、複数の低分子液晶が相互に平行配向した場合に、入射光が殆ど反射されずに透過する。一方、カイラルネマティック相では、複数の低分子液晶が螺旋状に配列しており、螺旋軸方向に平行に入射する円偏光を反射するという性質を有する(非特許文献1)。又、螺旋構造のピッチ長を形成するための螺旋ねじれ力の影響について報告されている(非特許文献2)。このように、スメクチックA相−カイラルネマティック相の熱相転移を示す低分子液晶は、室温前後で特定波長の光線透過率及び光線反射率が変化するため、省エネルギー化に大きく貢献し得る調光材料として注目されている。
又、液晶材料を用いた調光材料において、低分子液晶に光重合性モノマーを含む液晶組成物からなる赤外線調光素子が開示されている(特許文献5、非特許文献3)。この赤外線調光素子では、平行配向したカイラルネマティック相状態で光重合性液晶モノマーを光重合させることで得られる。赤外線調光素子は、可視光に対して常時透明であり、可視光の波長よりも長波長の光に対して、広い波長領域にわたり、透過と選択反射との熱スイッチングを可逆的に示す。特に、赤外線調光素子は、環境温度の上昇に伴い、選択反射の長波長端が長波長側に移動する、又は、選択反射の短波長端が短波長側に移動する。
特開2004−4795号公報 特開2002−86606号公報 特開2000−155345号公報 特開平09−29882号公報 特開2002−357815号公報
H. F. Gleeson, et al., Cryst. Liq. Cryst., 1709-1734,(1989). M. R. Wilson, et al., J. Mater. Chem., 2672-2677, (2001). H. Yang, et al., Appl. Phys. Lett., 2407-2409, (2003).
二酸化バナジウムを用いたサーモクロミック窓材では、太陽光の室内に対する調光性能の課題として、(1)窓材としての可視透過性能が低い、(2)調光性能に改善の余地がある、(3)環境温度に対応する調光温度が生活温度の範囲よりも高い等の課題がある。これらの課題は、二酸化バナジウムの材料が持つ本質的な特性に強く結びつく課題であり、解決が容易では無い。(1)の課題は、二酸化バナジウムの光学バンドギャップが狭く、光吸収端の裾が波長500nm付近まで至っていることに起因する。又、この要因で可視透過率が全体的に低いとともに、光の短波長側での透過率が低いため、全体的に茶黄色に着色する傾向がある。(2)の課題は、二酸化バナジウムのサーモクロミック特性による透過率の変化が主に波長1000nmより長波長側にあることに起因する。地上に届く太陽光の強度は、可視波長域から赤外波長域にわたって、波長の増加とともに緩やかに減少する。従って、太陽光の輻射が大きい1000nmより短波長側で調光する方が、太陽光の近赤外波長域及び赤外波長域でより効果的な調光性能を有するが、上述のように、二酸化バナジウムの本質的な特性と関係するサーモクロミック特性を変えることは容易ではないという課題がある。
又、曇天現象の材料を利用した調光材料では、環境温度の上昇に伴う光散乱の発生により、可視波長域を含めて広い波長範囲で透過率が変わるため、調光性能が非常に良好であり、又、調光温度は生活温度域に対応して設計されるため、この調光材料は既に実用化されている。しかしながら、調光性能の原理上、環境温度が高温時の場合、可視光で不透明となるため、室外の景色を見ることが出来ず、窓の基本機能が失われるという課題がある。
又、スメクチックA相−カイラルネマティック相の熱相転移を示す低分子液晶を用いた調光材料は、室温前後で特定波長の光線透過率及び光線反射率が変化するため、省エネルギー化に有望である。しかしながら、スメクチックA相の透過率は、カイラルネマティック相からの冷却速度に強く依存し、冷却速度が速い程、スメクチックA相の透過率は低くなり、フォーカルコニック配向という白濁状態を形成し易い。そのため、上述と同様に、室外の景色を見ることが出来ないという課題がある。又、カイラルネマティック相は、選択反射の波長領域(波長幅)が狭く、選択反射の波長領域を任意に制御出来ないという課題もある。
又、カイラルネマティック相状態で光重合性液晶モノマーを光重合させた赤外線調光素子は、可視光に対して常に透明であり、更に、選択反射の波長の範囲を広く設定出来るため、室外の景色を視認することが出来るという窓の基本機能を満足している。しかしながら、選択反射の波長の範囲は、環境温度の増加に対応して、長波長端を長波長側に移動させるか、又は短波長端を短波長側に移動させるかのいずれかで行われる。そのため、連続した波長範囲での調光性能の設定に限定されるという課題がある。更に、光重合性液晶モノマーの光重合により、ポリマーネットワーク形成を前提としており、液晶相とポリマー相とが交互に配置された周期構造が形成・固定され、それに伴い選択反射の波長領域も決定される。そのため、選択波長の波長領域の制御がし難いという課題がある。そして、上述のように、太陽光の強度は、波長の増加とともに緩やかに減少するが、漸近的に減少する訳ではなく、特定の波長において強度が不連続に増減した凹凸の強度分布を持つ。そのため、太陽光に対して効率よく調光機能を発揮させるためには、連続した波長の範囲での調光性能よりも、広い波長の範囲にわたって透過率を増減可能な調光性能の方が好ましく、上述の赤外線調光素子では、調光機能の効率に限界があるという課題がある。
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成であるにもかかわらず、環境温度の変化に対して選択反射の波長領域を大きく制御することが可能な調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、本発明に係る新規な調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法を完成させた。本発明に係る調光素子の製造方法は、低分子液晶に、当該低分子液晶分子間の相互作用に右回り或いは左回りの螺旋ねじれ力を発生させる光学活性な液晶性化合物を二種類以上添加した液晶複合物を、透明な平行配向処理された二枚の透明シートの間に充填させることで、前記透明シートの面に対して垂直な螺旋軸を有する低分子液晶の螺旋構造を形成させるステップを備える。そして、本発明に係る調光素子の製造方法は、製造される調光素子が、環境温度の変化に対応する前記液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化に基づいて、前記環境温度の変化に対して可視光から赤外光までの選択反射の波長領域を変更させるように、前記二種類以上の液晶性化合物の添加濃度と選択反射の波長との関係を示す下記の式(2)に基づいて調光素子を製造する
λ(μm)は選択反射の波長であり、n(−)は前記低分子液晶の平均屈折率であり、N(−)は添加される前記液晶性化合物の数であり、β (μm −1 )は、N個目の前記液晶性化合物の螺旋ねじれ力を示す係数であり、c (重量%)はN個目の前記液晶性化合物の添加濃度であり、前記β (μm −1 )の符号は、右回りの螺旋ねじれ力と左回りの螺旋ねじれ力とで異なる符号となる。
又、本発明に係る積層調光素子の製造方法は、調光素子を少なくとも二つ以上積層させ、前記環境温度の変化に対する、第一の調光素子に添加された第一の液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化が、前記環境温度の変化に対する、第二の調光素子に添加された第二の液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化と異なることで、前記環境温度の変化に対して前記選択反射の波長領域を不連続に変更させる積層調光素子を製造する
又、本発明に係る調光方法は、前記積層調光素子を用いて、太陽光の透過率を制御する。
本発明に係る調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法によれば、簡単な構成であるにもかかわらず、環境温度の変化に対して選択反射の波長領域を大きく制御することが可能となる。
太陽光中に含まれる波長のスペクトル分布を示す。 低分子液晶にカイラル剤のみを添加した実施例1の調光素子の分光透過率のグラフ(図2(a))と、低分子液晶にカイラル剤並びに光重合性液晶モノマーを添加して光重合した実施例1の調光素子の分光反射率のグラフ(図2(b))とである。 異方性屈折率が低い光重合性液晶モノマーの添加濃度を変化させた場合の実施例2の調光素子の分光透過率のグラフ(図3(a))と、異方性屈折率が高い光重合性液晶モノマーの添加濃度を変化させた場合の調光素子の分光透過率のグラフ(図3(b))とである。 異方性屈折率が低い光重合性液晶モノマーの添加濃度に対する日射制御能並びに可視光透過能のグラフ(図4(a))と、異方性屈折率が高い光重合性液晶モノマーの添加濃度に対する日射制御能並びに可視光透過能のグラフ(図4(b))とである。 環境温度を変化させた場合の左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤を添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフ(図5(a))と、環境温度を変化させた場合の右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤を添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフ(図5(b))とである。 環境温度を変化させた場合の光重合性液晶モノマーを5重量%添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフ(図6(a))と、環境温度を変化させた場合の光重合性液晶モノマーを8重量%添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフ(図6(b))とである。 環境温度を変化させた場合の一種類のカイラル剤を添加した実施例4の調光素子の分光透過率のグラフ(図7(a))と、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤を添加した実施例4の調光素子の分光透過率のグラフ(図7(b))とである。 環境温度を変化させた場合の一種類のカイラル剤(CNL617L、19.0重量%)を添加した実施例5の調光素子の分光透過率のグラフ(図8(a))と、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、20.0重量%、CB15、6.5重量%)を添加した実施例5の調光素子の分光透過率のグラフ(図8(b))と、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、29.5重量%、CB15、19.0重量%)を添加した実施例5の調光素子の分光透過率のグラフ(図8(c))とである。 二種類のカイラル剤の添加濃度を変化させた場合の調光素子において、環境温度の変化に対する選択反射の波長領域の中心波長のグラフである。 環境温度を変化させた場合の一種類のカイラル剤(CNL617L、19.0重量%)を添加した調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフ(図10(a))と、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、20.0重量%、CB15、6.5重量%)を添加した調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフ(図10(b))と、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、29.5重量%、CB15、19.0重量%)を添加した調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフ(図10(c))とである。 環境温度を変化させた場合の右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CB15)の添加濃度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフ(図11(a))と、環境温度を変化させた場合の左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CNL617L)の添加濃度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフ(図11(b))とである。 右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CB15)の添加濃度を増加させた場合の環境温度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフ(図12(a))と、左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CNL617L)の添加濃度を増加させた場合の環境温度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフ(図12(b))とである。 二種類のカイラル剤(CB15、CNL617L)の添加濃度をそれぞれ変化させた場合の環境温度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフである。 光の入射角度を増加させた場合の実施例6の調光素子の分光透過率のグラフ(図14(a))と、光の入射角度を増加させた場合の実施例6の調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフ(図14(b))とである。 環境温度が23度の場合の実施例7の第一の調光素子或いは第二の調光素子のみの分光透過率のグラフ(図15(a))と、環境温度を変化させた場合の実施例7の積層調光素子の分光透過率のグラフ(図15(b))とである。 環境温度を変化させた場合の実施例8の積層調光素子の分光透過率のグラフ(図16(a))と、環境温度を変化させた場合の実施例9の積層調光素子の分光透過率のグラフ(図16(b))とである。
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
本発明に係る調光素子は、低分子液晶に、当該低分子液晶の分子間の相互作用に右回り或いは左回りの螺旋ねじれ力を発生させる光学活性な液晶性化合物を少なくとも一種類添加した液晶複合物を作製し、当該作製した液晶複合物を、透明な平行配向処理された二枚の透明シートの間に充填させることで得られる。このようにして得られた調光素子は、前記透明シートの面に対して垂直な螺旋軸を有する低分子液晶の螺旋構造(螺旋ねじれ構造、カイラルネマティック相)を形成させ、環境温度の変化に対応する前記液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化に基づいて、前記環境温度の変化に対して可視光から赤外光までの選択反射の波長領域を変更させる。
通常、調光素子には、ネマティック液晶である低分子液晶が用いられ、この低分子液晶の分子間では、ネマティック相を形成する。この低分子液晶に、前記液晶性化合物を添加すると、前記液晶性化合物は、前記低分子液晶の分子間の相互作用に右回り或いは左回りの螺旋ねじれ力を発生させる。
ここで、前記液晶性化合物は、光学活性を有し、光学異性体と呼ばれる。光学異性体とは、不斉炭素の4本の結合部(手)に結合される原子が全て異なる原子の種類で構成される分子を意味し、4本の結合部に結合される原子の原子番号のうち、小さい原子番号から大きい原子番号の順番を考慮することで、Rectus(R体)とSinister(S体)との二種類に区別される。この光学異性体は、通常、キラル分子或いはカイラル分子と呼ばれる。又、前記光学異性体の液晶性化合物は、キラル剤或いはカイラル剤と呼ばれる。以下、前記液晶性化合物をカイラル剤と称する。
前記カイラル剤の種類(R体或いはS体)に応じて前記低分子液晶に作用する螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向が異なり、R体のカイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向は、S体のカイラル剤のそれと反対になる。このカイラル剤を低分子液晶に添加した場合、当該低分子液晶が構成する螺旋構造の螺旋の掌性(キラリティー)は、前記カイラル剤の種類(R体かS体か)によって決定される。
又、低分子液晶の螺旋構造の螺旋周期(ピッチ長)は、前記カイラル剤のキラリティーの強さ(螺旋ねじれ力を発生させる作用の強さ)、前記カイラル剤の添加濃度等に依存するが、この螺旋構造のピッチ長は、低分子液晶内部で屈折率の周期的な変化を生じさせるため、通常の結晶の周期的な配列や薄膜の多層膜構造と同様の物理的な現象が見られる。つまり、前記低分子液晶の螺旋構造に所定の波長を有する光を入射すると、当該螺旋構造のピッチ長に対応した波長の入射光に対してBragg反射が生じる。
このような低分子液晶の螺旋構造は、カイラルネマティック相と呼ばれ、当該低分子液晶の分子が螺旋状に配列され、螺旋周期のピッチ長と平均屈折率との積に等しい波長を有し、螺旋軸に対して平行に入射された光のうち、螺旋構造の螺旋ねじれ方向と同じ方向の円偏光を反射し、当該螺旋構造の螺旋ねじれ方向と反対方向(逆方向)の円偏光を透過させるという性質を有する。この性質は、選択反射と呼ばれ、選択反射される光の波長領域(反射スペクトル幅)は、通常、前記螺旋構造のピッチ長と、低分子液晶の光学的異方性を示す複屈折率との積で近似される。一般に、太陽光や白色光源光では、右回り並びに左回りの円偏光の成分が等分ずつ含まれると想定されるため、カイラルネマティック相の選択反射の効果(透過率の低減)は全入射光に対して約50%と見積もられる。
ここで、一般に、カイラルネマティック相において前記カイラル剤の添加濃度と選択反射の波長との関係は、下記の式(1)で表現される。
λ(μm)は選択反射の波長であり、p(μm)は螺旋構造のピッチ長であり、n(−)は低分子液晶の平均屈折率であり、β(μm−1)はカイラル剤の螺旋ねじれ力を示す係数であり、c(重量%)はカイラル剤の添加濃度である。
本発明者は、後述する実施例に基づいて、環境温度の変化に対応するカイラル剤の螺旋ねじれ力β(μm−1)の変化(変化量)を解明し、この螺旋ねじれ力β(μm−1)の変化に応じた変化量(移動量)で、前記選択反射の波長領域が移動されることを明らかにした。即ち、本発明は、添加するカイラル剤の種類や添加濃度を調整することで、低分子液晶の螺旋構造のピッチ長の変更に伴う選択反射の波長領域を大きく制御することが可能となる。又、環境温度の変化(例えば、低温から高温、高温から低温)に伴うカイラル剤の螺旋ねじれ力の変化を利用して、前記環境温度の変化に対応する前記選択反射の波長領域の変化(移動)を精度高く設計することが可能となり、環境温度に対応する自律型の調光素子を作製することが出来る。
例えば、本発明に係る調光素子を窓材に適用した際に、赤外光領域において、環境温度が高温の場合には、赤外光を優先的に選択反射させて、室内側へ熱線の入射を積極的に遮断し、室内の環境温度の上昇を防止することが出来る。一方、環境温度が低温の場合には、赤外光を優先的に透過させて、室内に熱線を有効に取り入れ、暖房効果を持たせ、空調の過剰利用を防止し、省エネルギー化を展開することが出来る。
ここで、前記低分子液晶は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、E7、E8等、K−15、K−18等、BLシリーズ等の低分子液晶(メルク社製)、RDP−98487等の低分子液晶(DIC製)等の幅広い液晶材料を採用することが出来る。又、前記カイラル剤は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、CNL617L、CNL611R等のカイラル剤(大立高分子社製)、CB15等のカイラル剤(メルク社製)等の液晶材料を採用することが出来る。
又、後述する実施例では、左回りの螺旋ねじれ力を有するカイラル剤の添加により、環境温度が上昇すると、調光素子の波長領域が短波長側に移動し、右回りの螺旋ねじれ力を有するカイラル剤の添加により、環境温度が上昇すると、調光素子の波長領域が長波長側に移動しているが、カイラル剤の種類、左回り或いは右回りの螺旋ねじれ力の強度、又は螺旋ねじれ力の環境温度依存性等に応じて、移動方向は逆方向になっても構わない。例えば、左回りの螺旋ねじれ力を有するカイラル剤の添加により、環境温度が上昇(或いは下降)すると、調光素子の波長領域が長波長側(短波長側)に移動し、右回りの螺旋ねじれ力を有するカイラル剤の添加により、環境温度が上昇(或いは下降)すると、調光素子の波長領域が短波長側(長波長側)に移動しても良い。
又、前記透明シートは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、透明ガラス、透明プラスチックシート等を採用することが出来る。又、前記透明シートのうち、液晶複合物と接する表面には、配向膜の形成、ラビング処理等の平行配向処理が施される。二枚の透明シートの間に、ガラス或いは光分子材料からなるスペーサーを挿入することで、当該スペーサーの厚みに対応する厚みの調光素子のセルが作製される。前記スペーサーの厚みは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、例えば、2μmから200μmの範囲内であると好ましく、2μmから100μmの範囲内であると更に好ましい。又、調光素子のセルは、公知のものを採用することが出来る。
又、前記調光素子のセルの内部(二枚の透明シートの間)に前記液晶複合物を充填する方法は、例えば、当該液晶複合物を大気中での毛細管現象や、真空中に置いたセルに対して真空注入することで成される。前記充填方法は、公知のものを採用することが出来る。前記液晶複合物が前記セルの内部に充填されると、当該液晶複合物の低分子液晶は、前記カイラル剤の添加により、螺旋配向して螺旋構造を形成させるとともに、当該螺旋構造の螺旋軸は、前記透明シートの面に対して垂直となる。前記液晶複合物を前記セルに封入すれば、本発明に係る調光素子が出来上がる。尚、調光素子の作製や液晶複合物の調整は、公知のものを採用することが出来る。
又、前記液晶複合物に対するカイラル剤の添加濃度は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、1重量%から50重量%の範囲内であると好ましく、5重量%から30重量%の範囲内であると更に好ましい。前記カイラル剤の添加濃度が50重量%を超過すると、螺旋構造となる低分子液晶の割合が半分以下となり、当該螺旋構造の内部にフォーカルコニック構造等の欠陥モードが発現し、当該螺旋構造の形成に不具合を生じさせる可能性があり、好ましくない。
ここで、本発明に係る調光素子は、前記低分子液晶に二種類以上のカイラル剤が添加され、前記カイラル剤の螺旋ねじれ力のうち、左回りの螺旋ねじれ力は、右回りの螺旋ねじれ力に付された符号とは逆の符号を付して、前記カイラル剤の螺旋ねじれ力と当該カイラル剤の添加濃度とを乗算し、全てのカイラル剤の乗算値を合算した合算値に基づいて、可視光から赤外光までの選択反射の波長領域を変更させることが出来る。即ち、本発明では、前記式(1)を拡張し、カイラルネマティック相において二種類以上のカイラル剤の添加濃度と選択反射の波長との関係を、下記の式(2)で表現することが出来る。
λ(μm)は選択反射の波長であり、n(−)は低分子液晶の平均屈折率であり、N(−)は添加されるカイラル剤の数(種類)であり、β(μm−1)はN個目のカイラル剤の螺旋ねじれ力を示す係数であり、c(重量%)はN個目のカイラル剤の添加濃度である。ここで、螺旋ねじれ力β(μm−1)の符号は、右回りの螺旋ねじれ力と左回りの螺旋ねじれ力とで異なる符号となる。例えば、右回りの螺旋ねじれ力β(μm−1)に正の符合を付せば、左回りの螺旋ねじれ力β(μm−1)に負の符号を付す。そして、前記カイラル剤の螺旋ねじれ力(μm−1)と当該カイラル剤の添加濃度c(重量%)とを乗算し、全てのカイラル剤の乗算値を合算することで、異種の螺旋ねじれ力を有するカイラル剤が複数添加されたとしても、前記符号の付与により、右回りの螺旋ねじれ力と左回りの螺旋ねじれ力とが相互に相殺され、過剰な螺旋ねじれ力が残り、その過剰な螺旋ねじれ力が調光素子における選択反射の波長に寄与することを意味する。言い換えると、前記合算値が、螺旋ねじれ方向を問わず、2種類以上の全てのカイラル剤の螺旋ねじれ力を反映させた値となる。もちろん、上述のように、各カイラル剤の螺旋ねじれ力は、前記環境温度の変化に対応して変化するため、前記合算値は、前記環境温度の変化に対して変化し得る。尚、選択反射の波長λ(μm)は、負の値を取り得ないため、全てのカイラル剤の合算値のうち、絶対値が当該選択反射の波長λ(μm)に寄与することになる。この式(2)を用いることで、二種類以上のカイラル剤が低分子液晶に添加された液晶複合物であっても、精度高く選択反射の波長を予測することが可能となり、可視光から赤外光までの波長領域の範囲での波長フィルターを自由に設計することが可能となる。特に、二種類以上のカイラル剤を添加することで、式(2)の分母の値(前記合算値)を小さく設計することで、選択反射の波長λ(μm)を顕著に大きくすることが出来る可能性があるという意味で、式(2)は、従来の設計方法では成し得ない選択反射の波長λ(μm)の設計をすることが出来る。
尚、前記低分子液晶に添加されるカイラル剤が二種類以上である場合、カイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向に特に限定は無く、全て右回り或いは左回りの螺旋ねじれ力を有するカイラル剤であっても、右回り並びに左回りの螺旋ねじれ力を有するカイラル剤が複数混在していても構わない。
又、前記低分子液晶に添加されるカイラル剤が二種類以上である場合、上述のように、欠陥モードの発現を抑制する観点から、全てのカイラル剤の添加濃度の合算値は、1重量%から50重量%の範囲内であると好ましく、5重量%から30重量%の範囲内であると更に好ましい。
本発明に係る調光素子の選択反射の波長領域は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、実用の観点から、前記環境温度の変化に対して波長領域の変化可能な範囲は、400nm−2000nmの範囲に設定すると好ましい。又、太陽光に対する調光制御機能の観点から、前記環境温度の変化に対して波長領域の変化可能な範囲は、700nm−1000nmの範囲に設定すると好ましい。
又、本発明に係る調光素子は、複数のカイラル剤の添加により、可視光透過能(%)を高い値に維持したまま、日射制御能(%)を調整することが出来る。ここで、太陽光に含まれる波長は300nm−2500nmの範囲内であり、太陽光は、紫外光線、可視光線、赤外光線を含む広い波長領域の光強度分布を有している。そのため、調光制御機能を定量的に評価するために、下記の式(3)(4)で定義される指標を用いる。
調光制御機能として重要な機能は、(1)室内に入射する太陽光の輻射エネルギーの温度による制御性能と、(2)室外の景色が見えるという可視光の透過性能の二点である。これらはそれぞれ式(3)(4)により定義され、日射制御能Tsol(%)並びに可視光透過能Tlum(%)に相当する。
図1は、太陽光中に含まれる波長のスペクトル分布を示す。図1に示すように、日射制御能とは、太陽光の波長のスペクトル分布を用い、JISR3106規格に基づき、日射エネルギー係数φsol(λ)で表示される。この日射エネルギーφsol(λ)は、全波長にわたる太陽光の透過エネルギーを制御する性能の指標であり、最大値を100%とする。上述した日射制御能Tsol(%)は、特定の温度(T)の変化に対して大きく変更されることが重要であり、例えば、低温時に高い値を示し、太陽光中の透過率を上昇させ、高温時に低い値を示し、太陽光中の透過率を降下させると好ましい。一方、上述した可視光透過能Tlum(%)は、人間の目で識別可能な波長に対する視感度曲線φlum(λ)と調光素子の透過率(%)とから算出され、透明度が高い程、100%に近づく。そのため、調光素子において、日射制御能Tsol(%)が低く、且つ、可視光透過能Tlum(%)が100%に近い程、透明性が高く、且つ、赤外光領域での調光制御機能が優れていることを意味する。一方、調光素子において、可視光透過能Tlum(%)が低くなれば、可視光領域での調光制御機能が高いことを意味し、色の変化や表示機能に関する性能を有することになる。このように、調光素子の調光制御機能を、日射制御能Tsol(%)並びに可視光透過能Tlum(%)を用いて定量的に評価することで、太陽光に対する光制御性能を詳細に評価することが出来て、調光素子に有効な利用方法を確立することが出来る。
本発明に係る調光素子では、複数のカイラル剤の添加により、可視光透過能Tlum(%)を高い値に維持したまま、日射制御能Tsol(%)を調整することが出来るため、例えば、ビルや家屋、事務所等の建築物の窓材、自動車、列車、船舶、飛行機等の移動体の窓材に好適に利用することが出来る。
又、本発明に係る調光素子は、前記低分子液晶に光重合性液晶モノマーが前記液晶複合物の重量に対して10重量%以下の添加濃度で添加され、前記液晶複合物は、前記二枚の透明シート間に充填された後に紫外線照射されるように構成することが出来る。ここで、光重合性液晶モノマーを紫外線照射によりポリマーにして、このポリマーのネットワーク形成により、当該光重合性液晶モノマーの種類に応じて、前記低分子液晶の螺旋構造のピッチ長を多種混在させて、選択反射の波長領域を実効的に拡張させることが出来る。又、前記ポリマーのネットワーク形成により、前記低分子液晶に作用する前記カイラル剤の螺旋ねじれ力を固定し、前記低分子液晶の螺旋構造のピッチ長を固定して、選択反射の特定の波長領域を固定することが可能となる。
ここで、前記光重合性液晶モノマーは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、HCM−003、HCM−005等のHCMシリーズのモノマー(JHディスプレイテクノロジー製)、NOA等の等方性液晶モノマー(NORLAND社製)、RM257等のモノマー(メルク社製)の液晶材料を採用することが出来る。
又、前記光重合性液晶モノマーの異方性屈折率Δn(−)は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、異方性屈折率Δn(−)を高く設計すると、調光素子の選択反射の波長領域を広く設計することが出来て、異方性屈折率Δn(−)を低く設計すると、調光素子の選択反射の波長領域を狭く設計することが出来る。更に、異方性屈折率Δn(−)を高く設計すると、可視光透過能Tlum(%)を高い値に維持したまま、日射制御能Tsol(%)を調整することが出来る。
又、前記光重合性液晶モノマーの添加濃度は、増加させると、選択反射の波長領域を短波長域に移動させることが出来るが、前記液晶複合物の重量に対して10重量%以下の範囲が好ましく、前記液晶複合物の重量に対して8重量%以下の範囲が更に好ましい。前記光重合性液晶モノマーの添加濃度が10重量%を超過すると、当該モノマーにより形成させるポリマーのネットワークが前記カイラル剤の螺旋ねじれ力を強固に固定し、環境温度の変化に対して前記カイラル剤の螺旋ねじれ力が変化せずに、選択反射の波長領域が全く移動しない可能性があり、好ましくない。
又、本発明に係る調光素子は、本調光素子の透明シートの面に対して垂直方向の入射角度を0度とし、入射角度の増加に伴い、前記選択反射の波長領域を変更させるよう構成することが出来る。これにより、例えば、本発明に係る調光素子を窓材に適用した際に、赤外光領域において、夏の太陽光の高度が高い場合、調光素子に対する太陽光の入射角度は増加するものの、これに対応して赤外光を優先的に選択反射させることで、室内の環境温度の上昇を防止することが出来る。一方、冬の太陽光の高度が低い場合、調光素子に対する太陽光の入射角度は減少するものの、これに対応して赤外光を優先的に透過させて、室内への熱線を有効に取り入れることが出来る。
又、本発明は、上述した調光素子を少なくとも二つ以上積層させた積層調光素子として応用することが出来る。この積層調光素子は、前記環境温度の変化に対する、第一の調光素子に添加された第一のカイラル剤の螺旋ねじれ力の変化が、前記環境温度の変化に対する、第二の調光素子に添加された第二の液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化と異なることで、前記環境温度の変化に対して前記選択反射の波長領域における透過率を不連続に増減させるよう構成することが出来る。つまり、螺旋ねじれ方向が異なる複数の調光素子を積層させることで、第一の調光素子における選択反射の波長領域を第二の調光素子における選択反射の波長領域の一部だけ重ね合わせて、前記環境温度の変化に対して前記選択反射の波長領域における透過率を不連続に増減させる。これにより、例えば、太陽光の波長のスペクトル分布のように、特定の波長領域において強度が不連続に増減した凹凸の強度分布を有する光であっても、効率的に選択反射させる積層調光素子を設計することが可能となる。
ここで、第二のカイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無く、第一のカイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向と同一であっても異なっていても構わない。又、2種類以上の第一のカイラル剤が第一の調光素子に添加された場合、上述した式(2)に基づいて、全ての第一のカイラル剤の螺旋ねじれ力を反映した合算値が、前記第一の調光素子に添加された全体の第一のカイラル剤の螺旋ねじれ力に対応し、環境温度の変化に対する前記合算値の変化が、前記第一の調光素子に添加された全体の第一のカイラル剤の螺旋ねじれ力の変化に対応する。2種類以上の第二のカイラル剤が第二の調光素子に添加された場合であっても同様である。
又、積層調光素子の積層方法は、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定は無いが、例えば、一つ一つの調光素子を積層させても良いし、二枚の透明シートの間の真ん中に、更に第三の透明シートを挿入し、その両側に、種類の異なるカイラル剤が添加された液晶複合物を注入し、全体として封入することで、積層調光素子を一つの調光素子用セルで形成しても良い。
又、本発明は、上述した積層調光素子を用いて、太陽光の透過率を制御する調光方法として応用することが出来る。上述のように、太陽光の透過率の制御では、例えば、積層調光素子を窓材に利用した場合、高温時に赤外光を積極的に選択反射させ、低温時に赤外光を積極的に透過させれば、省エネルギーに寄与することが出来る。
又、本発明は、上述の調光素子を製造する製造方法として応用することが出来る。即ち、本発明に係る製造方法は、低分子液晶に、当該低分子液晶分子間の相互作用に右回り或いは左回りの螺旋ねじれ力を発生させるカイラル剤を少なくとも一種類添加した液晶複合物を、透明な平行配向処理された二枚の透明シートの間に充填させることで、前記透明シートの面に対して垂直な螺旋軸を有する低分子液晶の螺旋構造を形成させるステップを備える。そして、本発明に係る製造方法は、環境温度の変化に対応する前記カイラル剤の螺旋ねじれ力の変化に基づいて、前記環境温度の変化に対して可視光から赤外光までの選択反射の波長領域を変更させる調光素子を製造する。これにより、簡単な手順により調光素子を製造することが出来るため、コストパフォーマンスに優れる。このステップの前後に、調光素子の製造に必要な公知のステップを適宜追加しても良い。
<実施例等>
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<作製方法>
<実施例1>
低分子液晶(E8 メルク社製)に、左回りの螺旋ねじれ力を発生させるカイラル剤(CNL617L 大立高分子社製)を、前記液晶複合物の重量に対して特定の添加濃度(10重量%、15重量%)で添加して液晶複合物を作製した。尚、以下より、添加濃度は、液晶複合物の重量を基準とする。又、特定のサイズ(2.54cm、1インチ)で平行配向処理が施された二枚のガラス基板の間に特定の厚み(25μm、50μm)を有するスペーサーを挿入して、試験用の調光素子のセルを組み立て、当該セルに前記液晶複合物を充填することで、実施例1の調光素子を作製した。
又、前記低分子液晶(E8)に、前記カイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(15重量%)で添加するとともに、光重合性液晶モノマー(HCM−003 JHディスプレイテクノロジー製)を特定の添加濃度(10重量%)で添加し、混合した液晶複合物を作製し、特定の厚み(25μm)を有するスペーサーを挿入した調光素子のセルに当該液晶複合物を充填し、その後に、紫外線照射による前記モノマーの光重合を行うことで、実施例1の調光素子を作製した。尚、以下より、光重合性液晶モノマーを添加した液晶複合物は、調光素子のセルに充填後、紫外線照射することとする。
<実施例2>
実施例1において、前記低分子液晶(E8)に、前記カイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(15重量%)で添加するとともに、光重合性液晶モノマー(RM257 メルク社製)を特定の添加濃度(0、1、3、5重量%)で添加し、混合して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、実施例2の調光素子を作製した。又、前記光重合性液晶モノマー(HCM−003)及び特定の添加濃度(0、5、8、10重量%)を変更して、上述と同様の方法で、実施例2の調光素子を作製した。尚、前記光重合性液晶モノマー(RM257)の異方性屈折率Δn(−)は0.18(−)であり、前記光重合性液晶モノマー(HCM−003)の異方性屈折率Δn(−)は0.20(−)である。
<実施例3>
実施例1において、前記低分子液晶(E8)に前記カイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(19重量%)で添加して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、実施例3の調光素子を作製した。
又、前記低分子液晶(E8)に、右回りの螺旋ねじれ力を発生させるカイラル剤(CB15 メルク社製)を特定の添加濃度(25重量%)で添加して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、実施例3の調光素子を作製した。そして、実施例3の調光素子において、環境温度を23度から50度まで上昇させた場合の分光透過率を測定した。更に、前記光重合性液晶モノマー(HCM−003)及び特定の添加濃度(5、8重量%)の実施例2の調光素子において、環境温度を23度から50度まで上昇させた場合の分光透過率を測定した。
<実施例4>
実施例1において、前記低分子液晶(E8)に、第一のカイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(19重量%)で添加するとともに、第二のカイラル剤(CB15)を特定の添加濃度(22重量%)で添加し、混合して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、実施例4の調光素子を作製した。そして、実施例4の調光素子において、環境温度を23度から35度まで上昇させた場合の分光透過率を測定した。
<実施例5>
実施例4において、前記低分子液晶(E8)に、第一のカイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(20.0、29.5、28.0重量%)で添加するとともに、第二のカイラル剤(CB15)を特定の添加濃度(6.5、19.0、23.0重量%)で添加し、混合して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、実施例5の調光素子を作製した。そして、実施例5の調光素子において、環境温度を23度から60度まで上昇させた場合の分光透過率を測定した。
<実施例6>
実施例1において、前記低分子液晶(E8)に、前記カイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(15重量%)で添加するとともに、光重合性液晶モノマー(NOA81 紫外線硬化型光学接着剤 NORLAND社製)を特定の添加濃度(1重量%)で添加し、混合して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、実施例6の調光素子を作製した。そして、実施例6において、光の入射角度の変化に対する分光透過率の変化を測定した。調光素子のガラス基板の表面に対して垂直方向の入射角度を0度と定義し、入射角度が0度の状態で、実施例6の調光素子が設置された回転ステージの水平に対する角度を70度まで次第に増加させながら、調光素子の分光透過率を測定した。尚、実施例1−5、7−9で測定された分光透過率の入射角度は全て0度に設定されている。
<実施例7>
実施例1において、前記低分子液晶(E8)に前記カイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(19重量%)で添加して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、第一の調光素子を作製した。次に、前記低分子液晶(E8)に、右回りの螺旋ねじれ力を発生させるカイラル剤(CNL611R 大立高分子社製)を特定の添加濃度(12重量%)で添加して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、第二の調光素子を作製した。そして、第一の調光素子と第二の調光素子とを積層させ、両者が当接するガラス基板の表面にオプティカルマッチング液を滴下し、第一の調光素子と第二の調光素子とを液浸して、実施例7の積層調光素子を作製した。
<実施例8>
実施例1において、前記低分子液晶(E8)に、第一のカイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(20.0重量%)で添加するとともに、第二のカイラル剤(CB15)を特定の添加濃度(6.5重量%)で添加し、混合して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、第一の調光素子を作製した。尚、前記第一のカイラル剤の添加濃度が前記第二のカイラル剤の添加濃度より多いため、前記第一の調光素子の全体のカイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向は、左回りである。又、前記低分子液晶(E8)に、左回りの螺旋ねじれ力を生じさせる第三のカイラル剤(NYC−22133L)を特定の添加濃度(10重量%)で添加して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、第二の調光素子を作製した。そして、第一の調光素子と第二の調光素子とを積層させ、上述の同様の方法で、実施例8の積層調光素子を作製した。
<実施例9>
実施例1において、前記低分子液晶(E8)に、第一のカイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(15重量%)で添加するとともに、前記光重合性液晶モノマー(RM257)を特定の添加濃度(3重量%)で添加し、混合して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、第一の調光素子を作製した。尚、前記第一の調光素子は、前記光重合性液晶モノマーを添加して光重合しているものの、前記第一の調光素子の全体のカイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向は、前記第一のカイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向と同様の左回りである。又、前記低分子液晶(E8)に、前記第一のカイラル剤(CNL617L)を特定の添加濃度(20重量%)で添加するとともに、第二のカイラル剤(CB15)を特定の添加濃度(6.5重量%)で添加し、混合して液晶複合物を作製し、上述と同様の方法で、第二の調光素子を作製した。尚、前記第一のカイラル剤の添加濃度が前記第二のカイラル剤の添加濃度より多いため、前記第二の調光素子の全体のカイラル剤の螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向は、左回りである。そして、第一の調光素子と第二の調光素子とを積層させ、上述の同様の方法で、実施例9の積層調光素子を作製した。
<評価方法>
実施例の(積層)調光素子の分光透過率或いは分光反射率は、下記の方法により測定した。先ず、白色のハロゲン光源からの光を光ファイバーによって案内し、コリメートレンズを介して平行光として、実施例の調光素子に照射する。一方、調光素子から透過される透過光を、もう一つのコリメートレンズ付の光ファイバーで受光し、この光ファイバーの特定の位置で二つに分岐して、一方に分岐された光ファイバーを可視域用の分光器の出力端子へ接続し、他方に分岐された光ファイバーを赤外域用の分光器の出力端子へ接続する。そして、これらの分光器内では、センサー感度に対応した波長域の分光強度がそれぞれのスペクトロメーターにより検出されて、端末装置へ送信される。これらの検出信号は端末装置内で合成されて表示されるため、可視光領域から赤外光領域までの広い範囲の波長領域において連続した分光透過率の解析を行うことが出来る(測定評価システム)。又、調光素子からの反射強度は、反射型の光ファイバー等を、当該調光素子の表面に接触させて測定される。尚、外部からペルチェ素子やシリコンラバーヒータ等を調光素子の周辺に接触させながら、環境温度の変化に対応する温度制御を行う場合は、前記調光素子の表面に対して反射型の光ファイバー等を直接接触させて測定することは困難であるため、この場合は、分光透過率を測定することで、調光素子の選択反射機能を評価した。
<評価結果>
<実施例1>
図2(a)は、低分子液晶にカイラル剤のみを添加した実施例1の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図2(a)に示すように、前記カイラル剤の添加濃度が10重量%である調光素子の透過率は、1400nmから1700nmまでの波長領域で50%まで減少しており、前記カイラル剤の濃度が15重量%である調光素子の透過率は、900nmから1100nmまでの波長領域で50%まで減少している。この透過率の減少領域が、実施例1の調光素子の選択反射の波長領域に対応する。図2(a)により、前記カイラル剤の添加濃度が10重量%から15重量%まで増加することで、当該カイラル剤の左回りの螺旋ねじれ力の制御により、前記低分子液晶の螺旋構造のピッチ長が短く設定され、選択反射の波長領域の中心波長が1500nmから1000nmまで短波長側に移動している。又、スペーサーの厚みが25μmから50μmに増加することで、選択反射の波長領域が長波長側に移動している。これは、スペーサーの厚みが厚くなると、ガラス基板の表面のラビング処理によるカイラル剤の螺旋ねじれ力の影響が減少したためと考えられる。ここで、太陽光に含まれる日射エネルギーは、波長領域が850nmから1200nmまでの範囲に大きな割合を占めているため、この波長領域での調光制御が省エネルギー化の観点で重要と考えられる。
図2(b)は、低分子液晶にカイラル剤並びに光重合性液晶モノマーを添加して光重合した実施例1の調光素子の分光反射率のグラフを示す。図2(b)に示すように、カイラル剤並びに光重合性液晶モノマーを添加した調光素子の分光反射率は、カイラル剤のみを添加した調光素子の選択反射の波長領域と同様の波長領域で、50%のピークを示し、選択反射機能を有することが理解される。又、カイラル剤並びに光重合性液晶モノマーを添加した調光素子における選択反射の波長領域の中心波長は、カイラル剤のみを添加した調光素子のそれと同様に、1050nm近傍に存在するものの、カイラル剤並びに光重合性液晶モノマーを添加した調光素子における選択反射の波長領域(波長幅)は、カイラル剤のみを添加した調光素子のそれと比較して、150nmから450nmまで約3倍拡張していることが理解される。これは、光重合性液晶モノマーの添加及び光重合により、液晶複合物の内部に形成されたポリマーのネットワークの形成に依存して、低分子液晶の螺旋構造のピッチ長が変化し、異なるピッチ長を有する螺旋構造の領域が混在した状態となり、その結果、選択反射の波長領域が実効的に拡張されたと考えられる。
<実施例2>
図3(a)は、異方性屈折率が低い光重合性液晶モノマーの添加濃度を変化させた場合の実施例2の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図3(a)に示すように、光重合性液晶モノマーを添加することで、選択反射の波長領域が短波長域に移動し、更に、添加濃度が増加することで、選択反射の波長領域が多少拡張していることが理解される。ここで、光重合性液晶モノマーの添加による選択反射の波長領域の短波長域への移動は、調光素子の内部でのポリマーのネットワーク形成に伴う内部収縮作用により、低分子液晶の螺旋構造のピッチ長が短くなったためと考えられる。
図3(b)は、異方性屈折率が高い光重合性液晶モノマーの添加濃度を変化させた場合の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図3(b)に示すように、光重合性液晶モノマーの添加濃度が増加すると、950nm〜1150nmの範囲の選択反射の波長領域が800nm〜1300nmの範囲まで拡大していることが理解される。これは、異方性屈折率が高い光重合性液晶モノマーを添加した場合の調光素子は、異方性屈折率が低い光重合性液晶モノマーを添加した場合の調光素子と比較して、選択反射の波長領域に対する添加濃度依存性が高く、添加濃度の増加とともに、低分子液晶の螺旋構造のうち、多種のピッチ長を有する複数の螺旋構造が次第に増加し、選択反射の波長領域が実効的に拡張されたと考えられる。
次に、実施例2の調光素子の分光透過率の測定結果に基づいて、上述した日射制御能Tsol(%)と可視光透過能Tlum(%)とを算出し、光重合性液晶モノマーの添加濃度の依存性について整理した。図4(a)は、異方性屈折率が低い光重合性液晶モノマーの添加濃度に対する日射制御能並びに可視光透過能のグラフを示す。図4(a)に示すように、可視光透過能Tlum(%)は、添加濃度の増加に伴い減少し、添加濃度が5重量%の場合、約80%であった。又、日射制御能Tsol(%)は、添加濃度の増加に伴い減少し、添加濃度が5重量%の場合は、72%となった。図4(b)は、異方性屈折率が高い光重合性液晶モノマーの添加濃度に対する日射制御能並びに可視光透過能のグラフを示す。図4(b)に示すように、可視光透過能Tlum(%)は、添加濃度の増加に伴い減少するものの、添加濃度が10重量%でも、80%以上を確保していた。一方、日射制御能Tsol(%)は、添加濃度の増加に伴い減少するものの、添加濃度が10重量%の場合は、約70%であった。これらの結果により、前記光重合性液晶モノマーの異方性屈折率や添加濃度を設計することで、調光素子の可視光透過能Tlum(%)を確保した上で、日射制御能Tsol(%)を大きく変化させることが出来ることが判明した。
尚、前記光重合性液晶モノマーの異方性屈折率に寄らず、添加濃度を増加させることで、選択反射の波長領域が拡張する傾向であったが、透過率が減少する傾向もあり、特に、短波長側での透過率の減少が顕著であった。これは、添加濃度の増加によりポリマーネットワーク構造が広がり、光拡散が生じ、透過強度が減少したと考えられる。従って、調光素子の可視光透過能Tlum(%)と日射制御能Tsol(%)を両立させるためには、前記光重合性液晶モノマーの添加濃度は10重量%までの範囲が好ましいことが判明した。
<実施例3>
図5(a)は、環境温度変化をさせた場合の左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤を添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図5(a)に示すように、環境温度が23度から50度まで上昇させた場合、調光素子の選択反射の中心波長は960nmから900nmまで短波長側に移動している。図5(b)は、環境温度を変化させた場合の右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤を添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図5(b)に示すように、環境温度が23度から35度まで上昇する場合、調光素子の選択反射の中心波長は870nmから910nmまで長波長側に移動している。このように、螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向の差異により、選択反射の波長領域の中心波長が短波長側か長波長側かのいずれかに移動することが判明した。
図6(a)は、環境温度を変化させた場合の光重合性液晶モノマーを5重量%添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフを示す。又、図6(b)は、環境温度を変化させた場合の光重合性液晶モノマーを8重量%添加した実施例3の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図6(a)に示すように、光重合性液晶モノマーの添加濃度が5重量%の場合、環境温度が23度から55度まで上昇すると、選択反射の中心波長が短波長側に移動していることが理解される。一方、図6(b)に示すように、光重合性液晶モノマーの添加濃度が8重量%の場合、選択反射の波長領域は拡張されるものの、環境温度が23度から55度まで上昇すると、選択反射の波長領域の中心波長が殆ど変化しないことが理解される。これは、光重合性液晶モノマーの添加濃度が増加することで、調光素子の内部に形成されたポリマーネットワークが低分子液晶の螺旋構造のピッチ長を強固に固定化し、環境温度の変化で、カイラル剤の螺旋ねじれ力が変化したとしても、当該低分子液晶の螺旋構造のピッチ長を変化させることが出来なかったためと考えられる。
<実施例4>
図7(a)は、環境温度を変化させた場合の一種類のカイラル剤を添加した実施例4の調光素子の分光透過率のグラフを示す。又、図7(b)は、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤を添加した実施例4の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図7(a)に示すように、一種類のカイラル剤を添加した調光素子において、環境温度が23度から35度まで上昇すると、選択反射の波長領域の中心波長は、960nmから970nmまで10nmだけ短波長側に移動している。一方、図7(b)に示すように、二種類のカイラル剤を添加した調光素子において、環境温度が23度から35度まで上昇すると、選択反射の波長領域の中心波長は、1900nmから1450nm付近まで短波長側に大きく移動していることが理解される。
つまり、二種類のカイラル剤を添加することで、環境温度に対する選択反射の波長領域の依存性を大きく変更することが出来ることが判明した。これは、カイラル剤の螺旋ねじれ力の環境温度依存性と、螺旋ねじれ力の螺旋ねじれ方向とがともに異なる二種類のカイラル剤を併用した結果によると考えられる。例えば、左回りの螺旋ねじれ力を生じさせる第一のカイラル剤は、低分子液晶に対して左回りの螺旋ねじれ力の相互作用を生じさせる一方、右回りの螺旋ねじれ力を生じさせる第二のカイラル剤も、当該低分子液晶に対して右回りの螺旋ねじれ力の相互作用を生じさせる。両者は相互に逆方向であるため、相殺され、過剰分の螺旋ねじれ力だけが、前記低分子液晶に対して螺旋ねじれ力の相互作用を生じさせる。そうすると、二種類のカイラル剤の添加濃度が全体として多い場合であっても、異なる螺旋ねじれ力を有するカイラル剤が混在すれば、相殺により、低分子液晶に与える総合的な螺旋ねじれ力は微小となって、当該低分子液晶の螺旋構造のピッチ長は長くなり、選択反射の波長領域が大きく変更されるのである。
そして、環境温度が増加すると、いずれのカイラル剤の螺旋ねじれ力は当該環境温度に応じて変化する。例えば、環境温度の変化により、第一のカイラル剤は、左回りの螺旋ねじれ力を増加させる(螺旋構造の右回りのピッチ長を長くする)ように作用し、第二のカイラル剤は、右回りの螺旋ねじれ力を増加させる(螺旋構造の左回りのピッチ長を長くする)ように作用したとする。すると、上述の相殺により、二種類の異なる螺旋ねじれ力が総合されて、過剰分の螺旋ねじれ力が低分子液晶の螺旋構造のピッチ長を決定することになる。そして、環境温度の増加とともに、二種類のカイラル剤の異なる螺旋ねじれ力の作用が顕著になり、選択反射の波長領域の中心波長における短波長側への移動量が、一種類のカイラル剤におけるそれと比較して、飛躍的に増加したと考えられる。この二種類の異なるカイラル剤の混合手法は、選択反射の波長領域の中心波長の環境温度依存性を大きく変化させることが出来るため、調光機能の制御に大きく寄与すると考えられる。
<実施例5>
図8(a)は、環境温度を変化させた場合の一種類のカイラル剤(CNL617L、19.0重量%)を添加した実施例5の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図8(b)は、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、20.0重量%、CB15、6.5重量%)を添加した実施例5の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図8(c)は、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、29.5重量%、CB15、19.0重量%)を添加した実施例5の調光素子の分光透過率のグラフを示す。図8(a)、図8(b)に示すように、環境温度が23度の調光素子における選択反射の波長領域の中心波長は、いずれも950nm近傍であるが、環境温度が増加すると、二種類のカイラル剤を添加した調光素子における選択反射の波長領域は、一種類のカイラル剤を添加した調光素子のそれと比較して、顕著に短波長側に移動している。又、図8(c)に示すように、二種類のカイラル剤の添加濃度をそれぞれ増加させた場合、環境温度が23度の調光素子における選択反射の波長領域の中心波長は、800nmと短波長側に移動し、環境温度の増加に伴って、選択反射の波長領域は、更に顕著に短波長側に移動していることが理解される。
次に、調光素子における選択反射の波長領域の中心波長の環境温度依存性について整理した。図9は、二種類のカイラル剤の添加濃度を変化させた場合の調光素子において、環境温度の変化に対する選択反射の波長領域の中心波長のグラフを示す。図9に示すように、23度の室温付近から60度まで環境温度を上昇させた場合、いずれの調光素子においても、選択反射の波長領域の中心波長は短波長側に移動して、環境温度変化に対する中心波長の移動量の傾きは右下がりとなった。又、二種類のカイラル剤を添加した調光素子における中心波長の移動量の傾きは、一種類のカイラル剤を添加した調光素子のそれと比較して急勾配となり、環境温度依存性が大きくなっていることが理解される。更に、二種類のカイラル剤の添加濃度を増加させると、中心波長の移動量は更に大きくなることが理解される。例えば、二種類のカイラル剤(CNL617L、29.5重量%、CB15、19.0重量%)を添加した一方の調光素子における中心波長は約800nmであるのに対し、二種類のカイラル剤(CNL617L、28.0重量%、CB15、23.0重量%)を添加した他方の調光素子における中心波長は約920nmであり、第一のカイラル剤(CNL617L)に対する第二のカイラル剤(CB15)の添加割合を変更することで(0.64から0.82)、室温での選択反射の波長領域の中心波長を変化させることが出来ることが理解される(800nmから920nm)。
又、実施例4、5の調光素子の分光透過率の測定結果に基づいて、日射制御能Tsol(%)と可視光透過能Tlum(%)とを算出し、環境温度依存性について整理した。図10(a)は、環境温度を変化させた場合の一種類のカイラル剤(CNL617L、19.0重量%)を添加した調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフを示す。図10(b)は、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、20.0重量%、CB15、6.5重量%)を添加した調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフを示す。図10(c)は、環境温度を変化させた場合の二種類のカイラル剤(CNL617L、29.5重量%、CB15、19.0重量%)を添加した調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフを示す。図10(a)に示すように、一種類のカイラル剤を添加した調光素子の日射制御能Tsol(%)は、環境温度の増加により徐々に減少するものの、可視光透過能Tlum(%)は、全体的に90%以上であり、高い透明性が確保されている。又、図10(b)に示すように、二種類のカイラル剤を添加した調光素子の日射制御能Tsol(%)及び可視光透過能Tlum(%)は、環境温度の増加に伴って次第に増加している。一方、図10(c)に示すように、二種類のカイラル剤を高い添加濃度で添加した調光素子の日射制御能Tsol(%)は、環境温度の増加に伴って次第に増加する一方、可視光透過能Tlum(%)は、次第に減少し、環境温度が50度近傍を境界に、両者の値が交差し、増減の傾向が逆転することが理解される。この場合、環境温度の増加により調光素子に発色を生じさせる効果があると考えられる。
以上のように、二種類のカイラル剤(CNL617L、CB15)を低分子液晶に添加した調光素子では、選択反射の波長領域の環境温度依存性を大きく変化させることが可能となり、更に、環境温度に対する日射制御能Tsol(%)並びに可視光透過能Tlum(%)を別々に制御し、幅広い調光特性を有する調光素子を提供することが出来ることが明らかになった。
次に、環境温度を変化させた場合のカイラル剤の添加濃度に対する調光素子の選択反射の中心波長の変化について整理した。図11(a)は、環境温度を変化させた場合の右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CB15)の添加濃度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフを示す。図11(b)は、環境温度を変化させた場合の左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CNL617L)の添加濃度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフを示す。
ここで、図11(a)、図11(b)の実験値に対して、上述した式(1)を適用し、最小二乗法により回帰分析を行って、各カイラル剤の螺旋ねじれ力β(μm−1)を算出した。尚、低分子液晶(E8)の異常光屈折率は1.771(−)であり、常光屈折率は1.525(−)であるため、平均屈折率n(−)は1.648(−)として算出した。左回りの螺旋ねじれ力を生じさせる第一のカイラル剤(CNL617L)の螺旋ねじれ力をβ(μm−1)とし、右回りの螺旋ねじれ力を生じさせる第二のカイラル剤(CB15)の螺旋ねじれ力をβ(μm−1)として算出した結果を表1に示す。
次に、カイラル剤の添加濃度を増加させた場合の環境温度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長の変化について整理した。図12(a)は、右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CB15)の添加濃度を増加させた場合の環境温度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフを示す。図12(b)は、左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CNL617L)の添加濃度を増加させた場合の環境温度の変化に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフを示す。図12(a)、図12(b)には、実験値に加えて、表1の結果の螺旋ねじれ力β(μm−1)と式(1)とから逆算される選択反射の波長(計算値)を示している。図12(a)に示すように、右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CB15)では、環境温度の増加に伴い、選択反射の波長領域が長波長側に移動し、このカイラル剤の添加濃度が増加すると、選択反射の波長領域が短波長側に移動している。又、図12(b)に示すように、左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CNL617L)では、環境温度の増加に伴い、選択反射の波長領域が短波長側に移動しており、このカイラル剤の添加濃度が増加すると、選択反射の波長領域が短波長側に移動している。更に、表1の結果と式(1)とに基づいて算出された計算値は実験値と概ね一致しており、表1の結果におけるカイラル剤の螺旋ねじれ力β(μm−1)は適切に算出されたと判断した。
更に、二種類のカイラル剤の添加濃度をそれぞれ増加させた場合の環境温度に対する調光素子の選択反射の中心波長の変化について整理した。図13は、二種類のカイラル剤(CB15、CNL617L)の添加濃度をそれぞれ変化させた場合の環境温度に対する調光素子の選択反射の中心波長のグラフを示す。ここで、右回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CB15)に対する左回りの螺旋ねじれ力を生じさせるカイラル剤(CNL617L)の添加割合の変化に対応して、環境温度の上昇に伴い、中心波長の変化の程度が異なることが理解される。
ここで、上述した式(2)を用いて、二種類のカイラル剤の添加濃度と選択反射の波長との関係を、下記の式(5)で表現する。
ここで、β(μm−1)は第一のカイラル剤(CNL617L)の螺旋ねじれ力の係数であり、c(重量%)は第一のカイラル剤(CNL617L)の添加濃度であり、β(μm−1)は第二のカイラル剤(CB15)の螺旋ねじれ力の係数であり、c(重量%)は第二のカイラル剤(CB15)の添加濃度である。
図13には、実験値に加えて、表1の結果の螺旋ねじれ力β(μm−1)と各カイラル剤の添加濃度c(重量%)と式(5)とから逆算される選択反射の波長(計算値)を示している。図13に示すように、計算値は実験値と概ね一致しており、式(5)は、二種類のカイラル剤の添加濃度と選択反射の中心波長とを適切に表現していることが判明した。このように、式(5)の拡張式である式(2)は、二種類以上のカイラル剤を添加した調光素子の選択反射の波長と環境温度依存性を予測する上で極めて重要な式であり、二種類以上のカイラル剤を添加する調光素子の特性の設計に不可欠な指標になることが理解される。
<実施例6>
図14(a)は、光の入射角度を増加させた場合の実施例6の調光素子の分光透過率のグラフを示す。尚、図14(a)には、調光素子の表面のガラス基板に対して垂直方向の入射角度を0度としている。図14(a)に示すように、入射角度が0度から増加するに従って、選択反射の中心波長は950nmから短波長側の700nmまで移動していることが理解される。尚、選択反射の波長は、入射角度θの増加に伴って、入射角度0度の選択反射の波長にcosθの係数を乗算した値だけ短波長側に移動すると考えられている。又、入射角度が増加すると、選択反射の中心波長の近傍で透過率が顕著に減少している部分が生じることが観察される。この部分は、右回りの円偏光でも左回りでの円偏光でも反射が生じる全反射帯を示している。
図14(b)は、光の入射角度を増加させた場合の実施例6の調光素子の日射制御能並びに可視光透過能のグラフを示す。図14(b)に示すように、入射角度の増加に伴い、日射制御能Tsol(%)及び可視光透過能Tlum(%)はともに減少するが、日射制御能Tsol(%)は顕著に減少することが理解される。又、入射角度が70度における可視光透過能Tlum(%)は、約80%の高い値を維持しており、調光素子として透明性を確保していることが理解される。一方、入射角度が70度における日射制御能Tsol(%)は、入射角度が0度である日射制御能Tsol(%)と比較して、約15%減少しており、日射制御能Tsol(%)の制御幅が広いことが理解される。
ここで、東京での夏至の日の南中高度(入射角度)は約75度であり、春分と秋分の日の南中高度は約50度であり、冬至の日の南中高度は約30度である。夏場では、太陽の高度が大きくなるに従って、環境温度も上昇する。夏場の南中高度が大きくなる時間帯で調光素子の日射制御能Tsol(%)を減少させることが出来れば、室内での赤外光の入射を低減することが可能となり、空調等の過剰利用を削減し、省エネルギー化に貢献することが出来る。従って、本発明に係る調光素子では、入射角度の増加に対して日射制御能Tsol(%)を低減させるとともに、可視光透過能Tlum(%)を高い値に維持させることが出来るため、省エネルギー化に貢献出来る調光素子として有効であることが理解される。特に、光の入射角度が0度である場合(垂直入射時)の調光素子の選択反射の波長が1000nm近傍に位置し、入射角度が約75度である場合(南中高度が高い場合)の調光素子の選択反射の波長が700nmまでに移動することが好ましいことが判明した。
<実施例7>
図15(a)は、環境温度が23度の場合の実施例7の第一の調光素子或いは第二の調光素子のみの分光透過率のグラフを示す。実施例7の第一の調光素子並びに第二の調光素子の選択反射の波長領域は、940nm−960nmの領域で重複している。図15(b)は、環境温度を変化させた場合の実施例7の積層調光素子の分光透過率のグラフを示す。図15(b)に示すように、環境温度が23度である積層調光素子の透過率は、上述した波長領域の重複領域(940nm−960nm)で約0%となっている。これは、螺旋ねじれ力の異なる二種類の調光素子を積層させることで、積層調光素子が、ハロゲンランプから発せられた光のうち、左回り並びに右回りの円偏光の両方を反射し、全ての光が反射され、透過光が殆ど生じなかったと考えられる。一方、重複領域以外の波長領域の850nm−1050nmの透過率は40%−50%であり、左回り並びに右回りの円偏光のいずれか一方を選択的に反射していると考えられる。又、環境温度が増加した場合、第一の調光素子のカイラル剤(CNL617L)並びに第二の調光素子のカイラル剤(CNL611R)は、いずれも螺旋ねじれ力を増加させる特性を有するため、選択反射の波長は短波長側に移動し、透過率が約0%の重複領域が900nm−920nmへ移動していることが理解される。
このように、積層調光素子では、特定の波長領域で透過率を0%とする(反射率を100%とする)ことが出来るため、帯域フィルターとして応用することが出来る。この帯域の幅は、二種類の調光素子における選択反射の波長領域が重複する重複領域に対応するため、目的の帯域が決まれば、この帯域に対応する選択反射の波長領域を有する調光素子をカイラル剤の種類や添加濃度を設計することで、所望の帯域を有する帯域フィルターを作製することが出来る。又、カイラル剤の種類や添加濃度の変更により、この帯域の幅を広くしたり狭くしたりすることが可能となる。これを利用することで、例えば、太陽光中に含まれる光の強度分布の大きい領域に対応する帯域フィルターも設計可能であり、色純度が高いカラーフィルターを作製することが可能となる。
<実施例8>
図16(a)は、環境温度を変化させた場合の実施例8の積層調光素子の分光透過率のグラフを示す。ここで、実施例8の調光素子のうち、第三のカイラル剤は、環境温度の増加に伴って、螺旋ねじれ力が減少し、選択反射の波長領域が長波長側に移動することが予め分かっている。この場合、図16(a)に示すように、環境温度が23度から35度まで上昇すると、選択反射の波長領域が、880nm−1040nmの範囲から900nm−1000nmの範囲まで一度狭くなるものの、環境温度が35度から50度まで上昇すると、選択反射の波長領域の範囲が800nm−1050nmの範囲まで広がるとともに、特定の波長領域の900nm−980nmの範囲では、選択反射が生じずに、透過率が増加するという不連続な選択反射の波長領域が観察される。つまり、二種類以上の調光素子を組み合わせることで、従来では成しえない不連続な選択反射の波長領域を有する帯域フィルターを作製することが出来ることが判明した。
<実施例9>
図16(b)は、環境温度を変化させた場合の実施例9の積層調光素子の分光透過率のグラフを示す。実施例9の積層調光素子では、二つの調光素子に左回りの円偏光を反射させる特性を有している。図16(b)に示すように、環境温度が上昇すると、選択反射の波長領域の長波長端が1150nm近傍に固定されたまま、短波長端が短波長側に移動して、選択反射の波長領域が広がっていくことが理解される。又、環境温度が50度の場合、特定の波長領域の900nm−1040nmの範囲では、選択反射が生じずに、透過率が増加している。これは、実施例9の積層調光素子のうち、光重合性液晶モノマーを添加した第一の調光素子は、環境温度が増加しても、ポリマーのネットワークにより、低分子液晶分子の螺旋構造のピッチ長が固定されるため、選択反射の波長領域は移動しないことに起因する。一方、光重合性液晶モノマーを添加していない第二の調光素子は、環境温度が増加すると、選択反射の波長領域が短波長側に移動する。そのため、第一の調光素子における選択反射の波長領域と第二の調光素子における選択反射の波長領域との重複領域が無くなり、両者が離れてしまうため、この離れた領域に対応する特定の波長領域の900nm−1040nmの範囲では、選択反射が生じずに、透過率が上昇したと考えられる。このように、複数の調光素子を組み合わせることで、選択反射の波長領域のうち、特定の波長領域を固定したり、環境温度の上昇に応じて、選択反射の波長領域を移動させたり、特定の波長領域だけ、選択反射させずに透過率を増加させたりすることが可能となる。つまり、カイラル剤の種類や添加濃度、調光素子の組み合わせ形態により、選択反射の波長領域を高い自由度で任意に設計することが出来ることが判明した。
以上のように、本発明では、簡単な構成であるにもかかわらず、環境温度の変化に対して選択反射の波長領域を大きく制御することが可能となる。又、本発明では、可視光透過能Tlum(%)を高く維持しつつ、環境温度の増加に対する日射制御能Tsol(%)を制御することが可能となり、幅広い技術分野に応用することが可能となる。例えば、可視光から赤外光までの幅広い波長領域において透過率を制御する帯域フィルター、波長フィルター、更に高度な調光素子、環境温度を自律的に感知して発色したり特定のパターンを発現させたりするメッセージ表示素子、光学センサー機能や表示機能を付与した光制御素子等へ展開することが可能であり、本発明は、より広い技術分野に貢献することが出来る。
又、上述のように、太陽光は、特定の波長領域において強度が不連続に増減した凹凸の強度分布を有するため、太陽光に対して効率的な調光機能を発揮させるためには、連続した波長領域に限定されず、広い波長領域において特定の波長領域の透過率を増減可能となる調光素子が必要となる。本発明では、広い波長領域において透過率の増減を自由に設計変更することが可能であり、更に、環境温度に対する選択反射の波長領域の制御も可能であるから、太陽光に対する調光素子として最適である。
そして、本発明に係る調光素子は、自動調光断熱窓材やこれを用いた調光方法或いは空調方法に応用することが出来る。つまり、本発明に係る調光素子を活用することで、幅広く調光方法として応用出来る。例えば、建築物、自動車、列車、船舶、飛行機等の移動体に、省エネルギー、快適住居性能、採光性能等の追加機能を付加することが可能となる。更に、本発明に係る調光素子は、温度による光反射率並びに波長の変化を利用した計測センサー並びにサーモスイッチに応用することが出来る。又、本発明に係る調光素子に対して、可視光波長域の調光機能を組み合わせることで、環境温度による室内外の模様換え用の表示素子、例えば、夏は青色にし、冬は赤色にして、ユーザーの目を楽しませる表示素子として応用することも可能である。
以上のように、本発明に係る調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法によれば、可視光から赤外光までの幅広い波長領域において透過率の制御を必要とするあらゆる技術分野の製造方法、調光方法として有用である。本発明に係る調光素子の製造方法、調光方法は、簡単な構成であるにもかかわらず、環境温度の変化に対して選択反射の波長領域を大きく制御することが可能な調光素子の製造方法、積層調光素子の製造方法、調光方法として有効である。

Claims (3)

  1. 低分子液晶に、当該低分子液晶分子間の相互作用に右回り或いは左回りの螺旋ねじれ力を発生させる光学活性な液晶性化合物を二種類以上添加した液晶複合物を、透明な平行配向処理された二枚の透明シートの間に充填させることで、前記透明シートの面に対して垂直な螺旋軸を有する低分子液晶の螺旋構造を形成させるステップを備え、
    製造される調光素子が、環境温度の変化に対応する前記液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化に基づいて、前記環境温度の変化に対して可視光から赤外光までの選択反射の波長領域を変更させるように、前記二種類以上の液晶性化合物の添加濃度と選択反射の波長との関係を示す下記の式(2)に基づいて調光素子を製造する調光素子の製造方法。
    λ(μm)は選択反射の波長であり、n(−)は前記低分子液晶の平均屈折率であり、N(−)は添加される前記液晶性化合物の数であり、β (μm −1 )は、N個目の前記液晶性化合物の螺旋ねじれ力を示す係数であり、c (重量%)はN個目の前記液晶性化合物の添加濃度であり、前記β (μm −1 )の符号は、右回りの螺旋ねじれ力と左回りの螺旋ねじれ力とで異なる符号となる。
  2. 請求項に記載の製造方法で製造された調光素子を少なくとも二つ以上積層させ、前記環境温度の変化に対する、第一の調光素子に添加された第一の液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化が、前記環境温度の変化に対する、第二の調光素子に添加された第二の液晶性化合物の螺旋ねじれ力の変化と異なることで、前記環境温度の変化に対して前記選択反射の波長領域を不連続に変更させる積層調光素子の製造方法
  3. 請求項に記載の製造方法で製造された積層調光素子を用いて、太陽光の透過率を制御する調光方法。
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